研究開発活動(本文)
FY2025|3,394 文字
6 【研究開発活動】当社グループは、「新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する」という企業理念の実践を通じて、世界を取り巻く社会課題の解決に貢献し、持続可能な「なめらかな社会」の実現を目指しています。2024年4月より中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalが始まり、「DRIVE NTN100」の基本方針である事業構造の変革(Transformation)を加速するため、事業軸から商品軸の新組織に体制変更し、軸受事業ではOEM・補修が一体となり供給能力の強化やソリューション提案を、CVJアクスル事業は、利益拡大と電動化などの新たなニーズへ対応できる体制にしました。研究開発では、当社の持続的成長を目的に「基盤商品、基盤技術の強化」と「新たな領域の展開」の二軸で活動し、当社のコアコンピタンスを活かした製品開発に取組んでいます。なお、研究開発は主として当社(日本)で行っており、当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で19,656百万円です。 (1) 「基盤商品、基盤技術の強化」持続可能な「なめらかな社会」実現に向けて当社が提供する付加価値は、1)止めない技術2)長寿命化技術3)エネルギーロスの低減です。1)止めない技術当社は2035年の姿として、売上高に占める補修事業の売上比率を40%に拡大する目標を掲げています。これを達成するためには、モノ売り(商品提供)だけでなくコト売り(サービス提供)に繋げるビジネスモデルの構築が必要となります。コト売り事例として、風力発電用に軸受状態監視システム(CMS)を開発し、組み込まれている軸受の故障予知診断を行うサービス事業を行っています。日本に設置されている陸上風力発電300機以上に本システムが設置されており、AIも活用し24時間の監視を行っています。最近では、軸受内部にセンサー、発電ユニットおよび無線デバイスを内蔵した「しゃべる軸受®」の小型化に取組むとともに、工作機用途ではスピンドルの主軸軸受用間座にこれらの機能を内蔵した「センサ内蔵ユニット」を開発中で、軸受の故障予知だけでなく工作機械の加工状態監視にも取組んでいます。今後、更にサービス・ソリューション分野の技術を磨き、モノ売り⇒コト売り⇒モノ売りに繋げる軸受ライフサイクルマネージメントの構築を進めます。 2)長寿命化技術長寿命化技術として特殊熱処理技術「HA-C」を開発しました。本技術は材料に硬く微細な析出物を多数分散させるなどの手法により、非常に高い表面硬さと高負荷容量化を実現し従来品と同等以上の寿命を確保しながら軸受の外径を約15%、幅寸法を約30%、質量を約55%軽量化することが可能になりました。本技術を適用した転がり軸受は、e-Axleなどの自動車用途での過酷な使用環境に適用することが可能です。また、電動車のモーター用軸受で生ずる問題に電食があります。バッテリーは車の航続距離延長や充電時間の短縮などを目的に高電圧化が進んでおり、将来的には800Vのバッテリー普及が予想されています。バッテリーが高電圧化すると通電による軸受の電食損傷が拡大すると想定しており、この対策として、既にセラミック球入り軸受を量産納入中ですが、コストダウンを図った樹脂モールド絶縁軸受を新たに開発し、2025年3月から量産を開始しました。 3)エネルギーロスの低減エネルギーロスの低減では、工作機械主軸軸受用高速・長寿命グリース、およびグリース潤滑軸受への潤滑油給油ユニットを開発しました。工作機械は加工時間の短縮を目的に、主軸の高速回転化が進んでいます。主軸を支える軸受の潤滑方法にはエアオイル潤滑とグリース潤滑があり、一般的にdmn値※1にして140万を超えるとエアオイル潤滑が用いられる傾向にあります。エアオイル潤滑は長期に安定した潤滑が可能である一方、圧縮空気やエアオイルの供給装置が必要となります。当社はグリースの基油と基油を半固体状に保持する増ちょう剤、添加剤を見直してグリース潤滑でdmn190万の高速回転を可能とすることで、圧縮空気の削減によりコンプレッサの使用を廃止しカーボンニュートラルに貢献します。自動車分野では、タイヤの回転を支えるハブベアリングにおいて軸受内部およびシールに塗布する低フリクショングリースを新たに開発し「低フリクションハブベアリング」シリーズを拡充しました。また、モーターなどのパワートレインユニットの動力をタイヤに伝えるドライブシャフトにおいても高効率・静粛性が求められており、当社は独自の「スフェリカル・クロスグルーブ構造※2」を採用した高効率固定式等速ジョイント「CFJ※3」と、内部部品の傾きを抑え振動につながるスライド動抵抗を従来比で50%削減した、低振動しゅう動式等速ジョイント「PTJ」の組み合わせを、EV向けに提案を開始しました。これからも独自の提案で電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV、PHEV)をはじめとする各種車両の省燃費・電動化に貢献します。※1.軸受の回転性能を表す指標で、軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(min-1) 2.ボールが通る転動溝を内輪・外輪で交差させボールが内部部品を押す力を相殺する構造 3.第74回自動車技術会 技術開発賞受賞 当社が展開している精密機器事業では、業界最速の直進フィーダ「クロスドライブリニアフィーダ」を開発し、その機構の独創性と業界最速の高速搬送速度、および製造現場のコンプレッサのエア使用量削減によるカーボンニュートラルへの寄与が認められ、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催する2024年“超”モノづくり部品大賞 奨励賞を受賞しました。 (2) 「新たな領域の展開」中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalでは、前中期経営計画に引き続き「モビリティ・モジュール」、「ロボットモジュール」、「再生可能エネルギー(自然エネルギー)」、「ライフサイエンス」、「サービス・ソリューション」および「次世代エネルギー(水素など)」の6分野を、新規事業の候補として事業化を検討中です。活動の一部として、モビリィリティ・モジュールでは電動車市場の拡大に伴い、電動油圧式ブレーキが伸長し、油圧を送り込む駆動部品としてボールねじの引き合いが増加しています。更に、将来的には電動機械式ブレーキへの移行が想定されており、ボールねじの需要は更なる拡大が予想されています。当社はこの変化に追随すべく、ボールねじの高効率化や小型化の開発に取組んでいます。ロボットモジュールでは、手首関節モジュール「i-WRIST®」を市場展開しています。自動車の電動化により大型ダイカスト部品の需要が拡大しており、更に部品を集約したギガキャストが将来技術として注目されています。現在、ダイカスト品の外観検査(キズや鋳巣など)は、人手による目視検査が殆どで、労働力不足や生産性の向上を背景に、外観検査の自動化が急務となっています。迅速な動きが特長の「i-WRIST®」は本用途に適しており、多くのお客様から注目を頂き、「i-WRIST®」を搭載した外観検査システムの開発を進めています。自然エネルギー事業では、当社の移動型独立電源「N3 エヌキューブ」が防災ニーズの高まりから、各省庁・自治体から高評価を得ています。2025年3月期には「N3 エヌキューブ」レストルームモデルの循環式水洗トイレ(通称:空飛ぶトイレ)が、奈良県五條市から能登半島地震で被害を受けた石川県鳳珠郡能登町へ無償貸与されました。また、国土交通省が選定した「防災道の駅」の一つである徳島県の道の駅「いたの」で災害発生を想定した「N3 エヌキューブ」の移動・設置・発電といった一連の動作を実演し検証しました。本検証のほかにも、自治体や防災関連団体と協業の下、「N3 エヌキューブ」の提案を行い、自治体や地域住民の方々に防災意識を高めていただく活動に取組んでいます。当社は、国土交通省がガイドラインを制定し推進する、災害時だけでなく平常時でも有効活用可能な高付加価値コンテナとして「N3 エヌキューブ」を提供し、再生可能エネルギーの普及および安心で安全な社会の実現に貢献してまいります。
FY2024|2,352 文字
6【研究開発活動】当社は、2021年4月より、中期経営計画「DRIVE NTN100」Phase 2に取組んできました。「DRIVE NTN100」Phase 2では、持続可能な社会の実現に向けて13項目のマテリアリティを設定し、そのうちの3項目は、「エネルギーロスの低減」「自然エネルギーを利用した持続可能な社会の実現」「安全と快適の提供」とし、当社の独創的技術の創造を通じて社会に貢献するポジティブインパクトの強化に注力してきました。研究開発では、上記3つのマテリアリティに対して、当社の持続的成長を目的に「基盤商品、基盤技術の強化」と「新たな領域の展開」の二軸で活動し、当社のコアコンピタンスを活かした製品開発に取り組みました。なお、当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で18,234百万円です。 (1)「基盤商品、基盤技術の強化」:自動車事業カーボンニュートラルの達成には、自動車の電動化、EV化が必須であり、車両駆動に必要な電動駆動ユニットにはさらなる高効率化、小型・軽量化が求められており、中でもモータをインバータ及び減速機と一体化したe-Axleの開発が活発化しています。e-Axleはバッテリーから供給される電気により駆動しますが、軸受内部に高電圧が印加され、過電流が流れる(スパーク)ことにより、はく離などの軸受損傷が発生することがあります。軸受内部へ流れる過電流を低減するため、絶縁被膜加工を軸受の外輪外径と幅面に施した「耐電食軸受(耐電圧100V)」を開発しました。モータ内の軸受にかかる電圧はバッテリー電圧の10%程度と想定されるため、今後、増加が見込まれるバッテリー電圧800Vに対応可能な耐電圧を有しています。また、ニードル軸受とシャフトをセットにした、「同軸e-Axle遊星減速機用ニードル軸受ユニット」を開発しました。同軸e-Axleには、断面高さが小さく高い負荷容量を有するニードル軸受が使用されますが、高効率化のため、潤滑油の低粘度化が進んでいます。低粘度化により、油膜が薄くなると軸受の軌道面ところが金属接触し、軸受損傷の原因となるピーリング(微小な表層はく離)や亀裂の発生リスクが高まります。シャフトの熱処理条件を最適化し、ピーリング寿命を当社従来比で約30%向上させるとともに、使用する保持器の材料・設計・熱処理条件を最適化することで疲労強度も高めることに成功し、高速回転性能を当社従来比で約10%向上させたニードル軸受ユニットを開発しました。当社は自動車の電動化に関わる周辺製品の開発に取り組み、電費向上に貢献します。 (2)「基盤商品、基盤技術の強化」:産業機械事業製造現場では生産性向上に向けて、設備の稼働状態を監視し、そのデータに基づいて計画的にメンテナンスや部品交換をすることで、設備のダウンタイム(稼働停止時間)を抑制しています。さらに近年は、AI技術やセンシング技術の向上により、設備の予知保全への関心が高まり、いつ故障するかを予測し、より的確な時期に部品交換や修理を実施したいという要求が高まっています。当社では、このような予知保全のニーズに対応するため、複数のAI手法からディープラーニング(深層学習)とベイズ学習を選択・組合せ、軸受のはく離が発生してから破損するまでの余寿命推定精度を、従来技術と比較して約30%向上させた「余寿命推定技術」を開発しました。さらに、軸受や周辺部品の早期の異常検知を可能とし、設備の稼働率および生産性の向上に貢献可能なセンサを内蔵した「しゃべる軸受®」を開発し、市場マーケティングを開始しています。軸受の温度・振動・回転速度を検知するセンサを標準軸受に内蔵する業界初の構造により、設備設計を変更することなく搭載可能で、各種装置の状態監視に幅広く適用可能です。産業の脱炭素化への貢献に加えて、センサを内蔵させた本技術の独創性などを評価いただき、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催する「2023年“超”モノづくり部品大賞」において、「機械・ロボット部品賞」を受賞しました。当社は高精度な状態監視を実現することで、製造設備の高効率化、生産性向上に貢献します。 (3)「新たな領域の展開」生産年齢人口の減少やカーボンニュートラルを背景に、生産現場では供給部品の安定搬送、搬送速度の向上、消費電力削減などの要求があります。当社ではそれらに対応するため、使用するエア量を従来比で最大1/5に削減しつつ、業界最速となる最大18m/分の高速搬送を実現した、部品供給用の直進フィーダ「クロスドライブリニアフィーダ」を開発しました。さらに、手首関節モジュール「i-WRIST®」は、すでに市場で活用されていますが、本製品を初めてご使用いただくお客様向けに、装置導入を支援するスタータパッケージの販売を開始しました。電源投入後すぐに使用可能で、配線・制御セットアップなどの工数を大幅に削減できると好評をいただいています。また、水素関連分野では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」において、国立大学法人九州大学などの法人・機関とともに「水素ステーションの低コスト化・高度化基盤技術開発プロジェクト」に参画しています。当社は本プロジェクトにおいて、高圧水素ガス圧縮機に使用される樹脂製ピストンリングの耐久性・信頼性向上の技術開発に関わっています。エンジニアリングプラスチック製しゅう動部品の開発、製造を通じて培ってきた樹脂材料のトライボロジー技術を活用することで、水素インフラ整備の進展や次世代エネルギーの普及に貢献します。
FY2023|3,169 文字
6【研究開発活動】当社は、2021年4月より、中期経営計画「DRIVE NTN100」Phase 2に取組んでおります。「DRIVE NTN100」Phase 2では、持続可能な社会の実現に向けて13項目のマテリアリティを設定し、そのうちの3項目は、「エネルギーロスの低減」「自然エネルギーを利用した持続可能な社会の実現」「安全と快適の提供」とし、当社の独創的技術の創造を通じて社会に貢献するポジティブインパクトの強化として取組んでいます。研究開発活動は、上記3つのマテリアリティに対して、当社の持続的成長を目的に「基盤商品、基盤技術の強化」と「新たな領域の展開」の二軸で進めています。「新たな領域の展開」では、成長が期待される6つのターゲット分野を設定し、それら分野に対して、当社のコアコンピタンスを活かした製品の開発に取組んでいます。なお、当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で18,678百万円です。 (1)自動車事業カーボンニュートラルの達成には、自動車の電動化、EV化が必須であり、車両駆動に必要な電動駆動ユニットには、さらなる高効率化、小型・軽量化が求められて、モータをインバータ及び減速機と一体化したeアクスルの開発が活発化しています。これらに用いられる転がり軸受には、優れた高速回転性能が求められています。当社では、dmn値※1180万のEV・HEV用高速深溝玉軸受をすでに市場展開し、お客様より高い評価を得ています。更なる高速回転性能を追求するため、軸受の発熱と潤滑条件による熱収支のバランスを最適化する供給油量の計算手法の確立、遠心力による変形を抑制するための保持器形状の見直し、軸受の内部諸元の最適化に取組み、オイル潤滑下でdmn値220万の高速運転が可能な深溝玉軸受を開発しました。自動車事業の大きな柱である等速ジョイント(CVJ)においては、世界最高水準の伝達効率により自動車の省燃費・電費化に貢献する固定式等速ジョイント「CFJ」を製品化し、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催する2022年「“超”モノづくり部品大賞」、及び日本トライボロジー学会の技術賞を受賞しました。従来のCVJの基本構造を大きく変え、内部部品にかかる力を相殺する独自の「スフェリカル・クロスグルーブ構造※2」を採用することにより、従来品の世界最高水準の軽量・コンパクト性はそのままに、トルク損失率を50%以上低減し、さらに高作動角時におけるトルク損失率の増加を大幅に抑えることを可能としました。自動車業界における、カーボンニュートラル達成に向けた、省燃費・省電費に寄与する独創性のある技術として高く評価していただき受賞となりました。※1.dmn値:軸受の回転性能を表す指標で、軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(min-1)2.スフェリカル・クロスグルーブ構造:隣り合う転動溝を互い違いに傾斜させることで、ボールが内部部品を押す力の向きを交互に振分け、互いに相殺させる構造 (2)産業機械事業製造現場の生産性向上に向けて、設備の稼働状態を監視し、そのデータに基づいて的確かつ計画的にメンテナンスや部品交換をすることで、設備のダウンタイム(稼働停止時間)を出来るだけ抑えたいという要望があります。さらに近年では、DXやIoT技術の進展に伴って、場所や時間の制約を受けない装置の遠隔監視や自動モニタリング、さらには、入手した状態監視情報の活用による製造品質の安定化や向上へのニーズも高まっています。当社では、このような状態監視ニーズに対するため、工作機械主軸用「センサ内蔵軸受ユニット」、「産業用IoTプラットフォーム向け軸受診断アプリ」、「NTNポータブル異常検知装置」を開発し、製造現場で多数採用いただいています。さらに、標準転がり軸受に、軸受寸法及び負荷容量を変更することなく、発電ユニット、無線通信デバイスを内蔵し、温度・振動・回転速度のセンシング情報を無線送信する「しゃべる軸受Ⓡ」を開発しました。軸受の回転により発電する電力を用いて、センサや無線通信デバイスを動作させ、センシング情報を自動で発信します。しゃべる軸受は、センサを内蔵しているため、装置ハウジングにセンサを外付けする場合に比べ、感度よく軸受の状態を検出し、より早期での異常検知が可能です。これら製品群により、当社は高度な状態監視を実現し、製造設備の高効率化、生産性向上に貢献します。産業用ロボット分野では、ロボットが担う作業の多様化に伴い、動作精度の向上に対する要求が高まる一方で、構成部品点数の削減、部品の小型・軽量化も求められています。当社はロボットの関節機構を支持する深溝玉軸受に磁気リングとセンサを取り付け、回転速度や方向、絶対角の検出機能を持たせた「複列磁気エンコーダ付転がり軸受」を開発しました。当社独自の薄型・高精度角度センサを軸受の内輪に取り付け、外輪に搭載した磁気センサICで「複列磁気リング」の磁極変化を読み取ることで、業界最高水準の角度検出精度(最大20bit、分解能約0.0005°未満)でロボット関節の回転速度や絶対角を検出します。また、本品の適用により、関節機構の軸とロータリーエンコーダを繋ぐ動力伝達装置が不要となり、関節機構の小型・軽量化も合わせて実現します。 (3)新たな6つのターゲット分野ロボット周辺モジュール分野では、回転円盤上から部品を供給し、自動で供給できる当社独自のピッキングロボット用フィーダ「TRINITTEⓇ」を発売し、ご好評をいただいています。「TRINITTEⓇ」は、カメラ、ピッキングロボットと連携接続し、円弧軌道上のワークに追従して移動中のワークを連続ピッキングするのが特徴です。また、「TRINITTEⓇ」と組み合わせて用いるピッキングロボット向けの小型・軽量な「ロータリアクチュエータ式ハンド」も開発しました。ロータリーアクチュエータの回転軸を中心にワークを掴むチャック部との締結部が回転することで、位置や姿勢を0から100°の範囲で設定可能です。スカラロボットに装着することで、横方向や斜め方向からのピッキングが可能となります。部品の取り逃がしを大幅に軽減でき、安価な装置構成で、部品の安定した連続ピッキングを実現します。また、すでに市場展開しているロボット向け手首関節モジュール「i-WRISTⓇ」については、多数ご要望をいただいた可搬性能の向上に対応するため、最大可搬重量を1kgから3kgに増加させた「IWS-C01」を開発しました。用途の幅が広がったと、市場からご好評を得ています。水素関連分野では、水素の活用のために「つくる、はこぶ、ためる、つかう」のあらゆる場面で技術開発が活発に進められています。燃料電池自動車(FCV)の普及に欠かせない水素ステーションの高圧水素圧縮機に用いられる製品は、水素暴露や高圧など特殊環境下で使用されるため、より高信頼性、高耐久性が求められます。当社では、軸受の軌道輪表面に硬質で微細な金属化合物を多数分散させた新規鋼材を開発するとともに、新たに開発した特殊熱処理技術を組合せることにより、水素に起因する軸受の早期破損に対して、当社標準軸受と比較して3倍以上の長寿命化を実現した耐水素脆性軸受を開発し、サンプル納入を開始しました。また、当社の複合材料技術を駆使して開発した樹脂製品が水素環境用シール部材として採用されています。これら製品の更なる高機能化を産学連携で進めるとともに、さらに、水素関連分野のグローバルな連携やサプライチェーンの形成を推進する「水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)」にも参画し、水素化社会の実現に貢献します。
FY2022|2,335 文字
5【研究開発活動】当社は、2021年4月より、中期経営計画「DRIVE NTN100」Phase 2をスタートしました。「DRIVE NTN100」Phase 2では、持続可能な社会の実現に向けて13項目のマテリアリティを設定していますが、そのひとつとして、「エネルギーロスの低減(当社の商品やサービスを提供からCO2排出量を低減)」を挙げています。また、当社の持続的成長を目的に「基盤商品、基盤技術の強化」と「新たな領域の展開」の二軸で研究開発活動を進めています。「DRIVE NTN100」Phase 2では、「サービスソリューション」「ロボット周辺モジュール」「次世代モビリティ・モジュール」「再生可能エネルギー関連」「水素関連」「ライフサイエンス関連」の6つのターゲット分野を設定し、将来の成長市場に当社のコアコンピタンスを活かした製品開発に取組んでいます。当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で17,444百万円です。 (1)自動車事業燃費基準やCO2の排出規制規格が厳格化する中、ガソリンエンジン車に代わる、電動駆動ユニットで車両駆動する電気自動車の開発が活発化しています。電動駆動ユニット用転がり軸受には省エネルギー化が求められ、さらなる低フリクション化、小型・軽量化の要求が高まっています。電動駆動ユニットの小型化を目的とする、モータ高速回転に対応した「EV・HEV用高速深溝玉軸受(モータ減速機用超高速対応)」を製品化し、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催する2021年“超”モノづくり部品大賞の「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞しました。従来の常識にとらわれず保持器の材料や設計を大幅に見直すことで、dmn※180万の高速回転対応を実現しています。さらに、将来の超高速回転を視野に入れて、軸受内の熱収支のバランスに配慮するとともに、内部設計諸元を最適化して、dmn220万までの超高速化の目途立てを完了しました。(※dmn値:軸受の回転性能を表す指標 転動体ピッチ円直径mm×回転速度min-1)また、駆動装置全体の軽量化に伴い、ハウジングが薄肉化される傾向がありますが、その場合、負荷による外輪変形を起点に、ハウジングと軸受のはめあい面で軸受が緩やかに回転してずれる「クリープ現象」が発生することがあります。これを抑止した「クリープレス軸受」を開発しました。軸受外輪の外径面の一部に逃げ部を設けて、ハウジングと軸受のはめあい面を不連続とする設計とし、クリープを停止させ、装置の異音や振動、軸受の寿命低下を防ぐ効果があります。ドライブシャフトは、グローバル市場でのSUV車の成長、さらにEV化に対して、高常用角度化、高効率化によるCO2の排出削減が期待できる、固定式等速ジョイント「CFJ」を市場展開し、多くの引き合いをいただき、2022年より量産が開始されます。グローバルシェアNo1のハブベアリングでは、当社の機械設計、製造技術とモータ制御技術を融合し、左右各輪の転舵角を独立制御可能にした「Ra-sHUB」を開発しました。「Ra-sHUB」は前輪駆動車の後輪に取り付け、ハンドルを切る転舵角度や車速から左右の車輪ごとに最適な角度を算出し、車輪角度を変えることが可能です。自動車メーカからは、将来の自動運転での貢献が期待されると、高い評価をいただいています。 (2)産業機械事業大型風力発電分野では、主軸受として自動調心ころ軸受が多く用いられていますが、風によるモーメント荷重下での寿命向上を目的として、「左右非対称自動調心ころ軸受」を市場展開しています。自動調心ころ軸受では、本軸受形式特有の差動すべりによるころの摩耗が問題になることがあります。当社では、ころ表面を耐摩耗に優れるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜で被覆し、軸受の信頼性を高めました。この風力発電装置主軸用「DLCコーティング自動調心ころ軸受」が、一般財団法人新エネルギー財団が主催する令和3年度「新エネ大賞」で「新エネルギー財団会長賞」を受賞しました。本商品の生産、販売を通じて、再生可能エネルギーの普及に貢献しています。 (3)新たな6つのターゲット分野サービスソリューション分野では、製造設備関連のIoTプラットフォーム「Edgecross」に対応した、軸受診断アプリケーションを開発しました。軸受近傍に設置された振動センサのデータを収集し、軸受の異常を診断するソフトウエアです。設備の稼働状況を監視し、生産現場でデータをリアルタイムに収集・分析することで、設備の不具合をいち早く察知し、計画的なメンテナンスが可能となります。各産業の設備のIoT化に貢献するとともに、事業拡大を図っています。自動車のEV化・電動化を背景に、潤滑油の低粘度化や供給量の削減が採用される傾向にあり、軸受使用条件は過酷になっています。この稀薄潤滑のもと、稀に水素脆性による軸受の早期破損が発生します。新規鋼材の採用と、新たに開発した特殊熱処理技術により、水素脆性による軸受の早期破損を抑制し、長寿命化を実現しました。この技術は、水素化社会の実現に向けた種々のインフラ設備への適用も期待されています。ロボティクス分野では、人の手首の動きを実現するモジュール製品「i-WRIST」の拡販活動を継続しています。モジュール先端部にカメラやディスペンサを搭載し、装置化することで、人が行ってきた外観検査やグリース塗布の作業を代替することが可能です。すでに多くの引き合い、採用をいただいており、省人化、IoT化が進む生産現場の多様なニーズに応えつつ、販売拡大を図ってまいります。
FY2021|2,032 文字
5【研究開発活動】創業100周年を迎えた2018年から、新しい100年に向けた事業構造の変革の加速を基本方針とした中期経営計画「DRIVE NTN100」に取組んでまいりました。基盤事業における最先端技術の研究と蓄積、製品開発、新たな事業領域での新商品やサービス創出を通し、さまざまな社会課題解決に貢献するとともに、新たな100年に向けた技術基盤づくりと事業変革の基礎を構築しました。当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で17,485百万円です。 (1)自動車事業自動車分野では、100年に一度の大変革といわれるCASEへの対応が重要な課題です。低燃費や自動運転等に対し、当社の製品に求められる市場ニーズを先取りした研究開発を進めてきました。市場では電動化を背景に、動力伝達装置の高効率化が要求されています。また、装置内の潤滑油量の低減、低粘度油化もあり、軸受には、より過酷な潤滑条件への対応、低フリクション化が求められています。これらに対して、トランスミッションやデファレンシャル用の「自動車用ULTAGE円すいころ軸受」を開発しました。新設計の樹脂保持器、軸受内部設計の最適化により、世界最高水準の低昇温性(耐焼付き性)と低トルク性を実現しています。動力伝達装置の高効率化や車両の省燃費・省電費化だけではなく、装置の小型・軽量化、さらに車内スペースの拡大や運転時の快適性の向上等が評価されています。また、ハブベアリングでは、長寿命化と低フリクション化を実現した「低フリクションハブベアリングⅢ」を製品化し、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催する2020年「“超”モノづくり部品大賞の「モビリティー関連部品賞」を受賞しました。シール、グリース、内部設計の大幅な見直しにより、回転フリクションを従来品比約60%低減し、車両燃費を約0.53%改善しました。これらの製品を今後、グローバルに提案、市場展開し、自動車の低燃費化並びに環境性能の向上に貢献してまいります。 (2)産業機械事業産業機械分野では、カーボンニュートラルの実現に向けた環境負荷低減活動の活発化、IoTやAI技術を駆使したデータ活用による業務効率や生産性の向上など、事業を取り巻く環境が大きく変化しています。当社では、これらの変化に対応する研究開発を進めています。ロボット技術分野では、省力化や自動化を支える産業ロボットの関節部に用いられる「サーボモータ用低発塵軸受」を開発しました。一般的に、モータ近傍には回転検出器やブレーキなどの制御機器が配置されますが、モータ軸受の油分が飛沫発塵し、制御機器に付着することで、検出精度や制動性を低下させることがありました。これを防ぐために、モータ本体に密封装置(シール)が用いられており、小型化できない課題がありました。新設計のシールと低発塵グリースの採用により、軸受からの発塵量を約90%低減し、回転トルクも約50%低減させました(当社従来品比)。これにより、モータの小型化、軸受回転トルクのさらなる低減が可能となり、環境負荷低減に貢献しています。また、工作機械技術分野では、工作機械の基幹部品である、主軸用軸受の焼付き損傷等による工場の稼働停止を未然に防ぎ、生産性を安定させたいニーズが高まっています。2018年に発表した工作機械主軸用「センサ内蔵軸受ユニット」に改良を加えてワイヤレス化するとともに、荷重センサを内蔵した製品を開発しました。これにより、稼働現場から離れた場所で、軸受への荷重負荷やその変化等をリアルタイムに状態監視することが可能となりました。製品の加工品質や生産性向上に繋がることが評価されています。 (3)新事業近年、持続可能な社会実現に向け、環境課題の解決手段として自然エネルギーの活用が注目されています。大型風力発電は、環境負荷の少ない発電方法として、陸上に加え洋上への設置拡大が期待されています。当社では、これまでに培ったIoTやセンシング技術を応用した予知保全のための状態監視サービス(CMS:Condition Monitoring System)の拡充を進めています。すでに、風力発電分野では、風力発電装置に組み込まれている軸受の状態監視システム「Wind Doctor®」を開発し、高い評価をいただいています。今後、CMSを通じて、風力発電事業のメンテナンスコストの低減および設備利用率の向上に貢献できるCMS技術の、さらなる開発を推進します。また、鉄道車両、工作機械、機械設備分野などへもCMSを提案していきます。また、当社では、風と太陽光を利用して発電する「グリーンパワーステーション」、輸送用コンテナに風力、水力、太陽光の3種類の自然エネルギーによる発電装置と蓄電池を格納した移動型独立電源装置「N3エヌキューブ」を開発しました。自治体などを中心に本商品の提案を進め、多数ご採用いただいています。
FY2020|2,497 文字
5【研究開発活動】中期経営計画「DRIVE NTN100」では、次の100年に向けた取組みとして、当社の経営基盤を支える基盤技術・基盤商品の強化と、新たな領域への展開を目的とした新事業開発の強化を二軸として研究開発活動を推進しています。当社の技術領域の強みである、トライボロジー、熱処理、精密加工、精密測定、CAEなどを駆使して、新技術および高機能商品の開発に取組むことにより、クリーンで環境負荷低減に貢献可能な商品を提供し、お客様満足度を向上させるとともに当社の持続的成長を図っています。なお、当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で19,961百万円です。 (1)自動車事業100年に一度の変革期を迎えている自動車業界の動向はCASE(Connected(接続性)、Autonomous(自動化)、Shared/Service(ライドシェア・カーシェア/サービス)、Electric(電動化))に代表されます。当社は、CASEの加速と共に必要とされる周辺技術に着目し、市場ニーズを先取りした研究開発を行っています。世界No.1シェアを誇るハブベアリングにおいて、新たに開発したシールとグリースを用いることにより、回転フリクションを従来品比で62%低減し、車両燃費を0.53%改善できる「低フリクションハブベアリングⅢ」を開発しました。本開発品は、グローバルに提案、市場展開し、自動車の低燃費(電費)化、並びに、環境性能の向上に貢献しています。また、ハブベアリングの多機能開発として、ハブベアリングにモータ・ジェネレータ機能を組み合わせ、減速時には発電機としてエネルギーを電力に回生し、加速時には駆動アシストできる「eHUB」も開発しています。前輪駆動車の場合、後輪に搭載することにより、エンジン負荷低減(燃費改善)を実現しました。さらに、モータとアクチュエータを搭載し、タイヤの転舵角度を調整可能としたステアリング補助機能付ハブベアリング「sHUB」は、2019年度モノづくり日本会議/日刊工業新聞社主催の“超”モノづくり部品大賞において、にっぽん力(にっぽんぶらんど)賞を受賞しました。また、コア技術である軸受やボールねじの製品技術とモータの設計技術、車両制御のための電子制御技術とを組み合わせた「電動モータ・アクチュエータ」を起点とするCASE適応製品がトランスミッション用電動オイルポンプです。アイドリングストップは燃費向上のひとつの方法ですが、電動オイルポンプのさらなる軽量コンパクト化、高効率、省エネルギーに期待されています。その他、自動車のタイミングチェーンの張力を維持する油圧式オートテンショナ(以下、チェーンテンショナ)において、構造の簡素化によるチェーンテンショナの小型化と、作動に必要なオイル量の大幅な削減によるエンジンの低燃費化を「低燃費対応小型チェーンテンショナ」で実現しました。新規オイル貯留構造の採用でオイル使用量を従来の1/10とし、オイルポンプの小型化、低燃費化に貢献します。 (2)産業機械事業産業機械業界では、IoT、センシング、ロボティクスに関わる研究開発が求められています。2012年から運用を始めた風力発電装置用の状態監視システム(CMS)である「Wind Doctor®」は、国内を中心に高評価をいただき、適用も大幅に増加し、風車の稼働率向上に確実に貢献しています。工作機械用精密転がり軸受「ULTAGEシリーズ」を始めとし、ロボット関連軸受やその周辺製品は、お客様に高い評価をいただいていますが、お客様からは工作機械主軸の高度な状態監視と焼付きの未然防止が求められています。工作機械主軸用に開発した「センサ内蔵軸受ユニット」は、軸受軌道面周辺のセンシングにより、主軸が焼付く前にアラームの発信が可能なため、主軸交換に至る破損を回避し、装置の稼働停止期間を最小限に抑えることが可能な軸受です。工作機械用ではさらに、高負荷容量、高速性を実現した、「高速・重切削工作機械主軸用アンギュラ玉軸受」を開発しました。高速回転性能と負荷容量を従来品比約1.3倍に向上させることで、荒加工から仕上げ加工までの工程を1台の工作機械で対応可能となり、マシニングセンタ、旋盤、複合加工機の生産性向上に貢献しています。ロボティクス分野では、人の手首に類似した動きを実現するモジュール製品「i-WRIST®」を量産しています。「i-WRIST®」は当社独自のメカリンク機構の採用により、小型、省スペースで広い可動範囲を実現するとともに、人の手首と類似の動きで、細かな角度変更を高速に行うことができます。先端部にカメラやディスペンサを搭載し、装置化することによって、これまで人が行ってきた外観検査やグリース塗布の作業を代替するモジュールとして注目を集め、多くの引き合いをいただいています。モノづくりの現場における、人手不足の改善や、品質向上に対する市場要求に応えています。また、ロボット関節用の絶対角度検出部品である「複列着磁リング」も協働型ロボットの普及に伴い引き合いが多く、現在、シリーズを拡充中です。 (3)新事業自然エネルギー事業の新たな展開として、大阪大学と一般社団法人全国自治会活動支援ネット及び企業と連携し、ITを活用した、防災や見守りに関する通信システム構築のための共同研究に参画しています。2019年11月には、大阪大学内に設置された、風力や太陽光で発電する独立電源装置「NTNグリーンパワーステーション」を基点として、2.5Km離れた地点への情報送受信実験を成功させています。これら活動を通じて、地域社会の安心・安全に貢献していきます。また、大阪大学には2017年からNTN次世代協働研究所を設置し、AI技術に関わるあらたなコアコンピタンスの構築を進めています。さらに、共同研究講座を活用して、当社独自の微細塗布技術を用いたiPS由来細胞の3次元積層化技術の研究開発と製品実現を進め、新しい領域である創薬、再生医療への展開を目指しています。
FY2019|2,298 文字
5【研究開発活動】当社グループの企業理念「新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する」に基づき、2018年4月よりスタートした新中期経営計画「DRIVE NTN100」では、次の100年にむけた取組みとして、当社の商品開発を支える基盤技術・基盤商品の強化と、新たな領域への展開として新事業開発の強化を両軸とした研究開発活動を推進しています。当社の技術領域の強みである、トライボロジー、熱処理、精密加工、精密測定、CAEなどを駆使した高機能、高精度製品の開発に取り組むことにより、低炭素化社会に適応した商品を提供し、お客様満足度を持続的に向上させるとともに当社の持続的成長を図っていきます。なお、当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で21,661百万円です。 (1)自動車事業100年に1度の変革期を迎えている自動車業界の動向はCASEに代表されます。当社は、CASEのなかで、Cコネクト、A自動化、E電動化に必要な技術に着目し、市場トレンドを先取りした研究開発を行っています。世界No.1シェアを誇るハブベアリングにタイヤの転舵角度を調整するモータ及びその制御機構を組み合わせ、業界で初めて前輪に搭載可能なステアリング補助機能付ハブベアリング「sHUB」を開発しました。「sHUB」はハンドル操作角と車速のデータをもとにタイヤの転舵角を最適に補正することが可能なため、高速直線走行、コーナリング、スリップ時などに車体姿勢を安定化させ、燃費改善にも貢献することが可能です。さらに、ハブベアリングにモータ・ジェネレータを組み合わせた「eHUB」も開発しました。欧州を中心に燃費向上や排ガス規制の強化が進むなか、発進や加速時にエンジンの駆動力を補助して燃費を改善する48Vマイルドハイブリッドシステム(48V MHEV)の普及が拡大しています。「eHUB」は前輪駆動車の場合、後輪に搭載し、モータで駆動アシストしてエンジン負荷を低減し、減速時には発電機としてエネルギーを電力に回生します。48V MHEVとの組み合わせにより、最大25%の燃費を改善することが可能です。また、「電動オイルポンプ」の開発も進めており、自動車業界から多くの引き合いをいただいております。一方、自動車の前輪用ドライブシャフトとして、高効率で世界最高の作動角55°となる固定式等速ジョイント「CFJ-W」を開発しました。これにより、ハンドル操作に伴う車両の回転半径をより縮小し、かつ、当社独自の内部構造の採用で、当社従来品比でトルク損失率を50%削減することが可能となり、燃費改善に役立っています。また、従来の接触シールタイプのトランスミッション用軸受よりトルクを80%低減した「超低フリクションシール付玉軸受」は、2018年度 モノづくり日本会議/日刊工業新聞社主催の “超”モノづくり部品大賞において、モビリティー関連賞を受賞しました。 (2)産業機械事業産業機械業界では、IoT、センシング、ロボティクスに関わる研究開発が求められています。当年度は工作機械とロボットの協働・協調をテーマとしてJIMTOFに出展、工作機械用精密転がり軸受「ULTAGEシリーズ」を始めとし、ロボット関連軸受やその周辺製品は、お客様に高い評価をいただきました。なかでも、工作機械主軸用に開発した「センサ内蔵軸受ユニット」は、軸受軌道面周辺のセンシングにより、工作機械主軸の高度な状態監視と焼付きの未然防止を可能にします。主軸が焼付く前にアラームの発信が可能なため、主軸交換に至る破損を回避し、生産性向上を実現します。また、ロボティクス分野向けに、人の手首に類似した動きを実現するモジュール製品「i-WRIST™」の量産を開始しました。「i-WRIST™」は当社独自のメカリンク機構の採用により、小型、省スペースで広い可動範囲を実現するとともに、細かな角度変更も人の手首と類似の動きで高速に行うことができます。カメラやディスペンサを搭載し、装置化することによって、これまで人が行ってきた外観検査やグリス塗布の作業を代替するモジュールとして注目を集めています。人手不足の改善や品質向上に対する市場要求に応えていきます。さらに、高負荷容量、高速性を実現した、「高速・重切削工作機械主軸用アンギュラ玉軸受」を開発しました。高速回転性能と負荷容量を従来品比約1.3倍に向上させることで、荒加工から仕上げ加工までの工程を1台の工作機械で対応可能となり、マシニングセンタ、旋盤、複合加工機の生産性向上に貢献します。 (3)新事業自然エネルギーを活用して防犯・防災用の独立非常電源「NTNグリーンパワーステーション」及び、水路に置くだけで発電し、その電力を売電系統に送電可能な「系統連系用NTNマイクロ水車」を開発しました。地産地消型の再生エネルギー提案を進め、低炭素化社会に貢献しています。また、将来の業態変革と事業拡大を視野に、大阪大学のNTN次世代協働研究所では、AIアルゴリズムを用いた軸受の余寿命予測の研究を行ない、サービスソリューション事業の拡充に繋げていきます。同様に同大学において、当社独自技術である微細塗布装置を用いたiPS由来細胞の3次元積層化技術の研究開発を進め、創薬や再生医療への展開を目指しています。2018年10月に研究技術開発活動のさらなる高効率,高精度化を目指し、CAE開発研究所を設立しました。設計工数の削減、実験工数の削減も実現して開発のスピードアップと他社優位性技術の確立を進めてまいります。
FY2018|1,630 文字
5【研究開発活動】平成27年4月から平成30年3月までの3年間にわたり中期経営計画「NTN100」の3つの基本方針である「攻める経営」、「稼ぐ経営」、「築く経営」を柱として、基盤事業の強化、新規事業の創出に取り組みました。その結果、顧客満足度をさらに向上した高機能軸受の製品化や新しい事業構造を確立し、次の100年に向けた会社を支える技術と事業の礎を築くことができました。なお、当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で21,007百万円であり、グループ全体の研究開発費の研究目的、主要課題及び研究成果は以下のとおりです。 (1)基盤事業自動車事業では、電動化に対する低燃費化や車両レイアウトの設計自由度向上に貢献した製品を多く開発しました。ハブベアリングやドライブシャフトの「低トルク化」、「小型・軽量化」と共に、モジュール商品の開発を推進し、新商品をグローバルに展開してきました。産業機械事業では、さらなる「長寿命」、「高負荷容量」及び「高速性」などが求められている中で、風力発電装置用として耐摩耗性能が大幅に向上した主軸受を開発しました。同様に建設機械、工作機械、鉄道車両、航空宇宙など、産業のあらゆる分野において顧客ニーズに対応した新商品を開発、提案してきました。また、世界最高水準の新世代軸受“ULTAGEシリーズ”では商品領域を拡大し高い評価を得ており、昨年、新商品として発表した“自動車用ULTAGE円すいころ軸受”は、モノづくり日本会議/日刊工業新聞社主催の「2017年“超”モノづくり部品大賞 自動車部品賞」を受賞しました。 (2)新規事業「NTN100」では、「エネルギー事業」、「EV事業」、「ロボット関連事業」、「サービス・ソリューション事業」を新たな事業領域として定めてきました。「エネルギー事業」では、ハイブリッド街路灯を大阪大学、全国自治体と連携し、災害時の危機管理設備として、実証実験を開始しました。「EV事業」では、自動車の電動化・自動運転に向かって、“電動モータ・アクチュエータ”をシリーズ開発し、顧客のカスタマイズニーズに即時対応できる事業体制を確立し、多数の案件を得ています。また、“インホイールモータ駆動システム”と“車両運動制御技術”を開発し、本年4月、中国大手自動車メーカとのライセンス契約を締結しました。「ロボット関連事業」では、生産現場での人手不足、品質向上ニーズに着眼し、当社独自のリンク機構を有する手首関節型モジュール“i-WRIST”とカメラを組み合わせた、コンパクトで高速動作可能な外観検査装置を提案し、平成30年度の販売開始を目指します。「サービス・ソリューション事業」では、大型風力発電装置へのモニタリング機器の設置とサービス事業を拡充させるため、販売戦略、収益構造の強化を行いました。さらに、新規事業を駆使し、低炭素化社会に貢献するため、小型風力発電装置により発電した電力を、EV自動車や野菜工場に使用する、自然エネルギー循環モデル“グリーンパワーパーク”も設立し、伊勢志摩サミット以降、多くの来場者の方に見学いただいています。 平成29年9月には、基盤、新規事業を支える要素技術開発力のさらなる強化、最先端技術獲得のため、大阪大学にNTN次世代協働研究所を設立し、5年、10年先の事業拡大に向けた新たな一歩を踏み出しました。また、研究開発体制のグローバル化のため、日本、欧州、米国の研究開発拠点との技術・人材交流を行い、新規技術・新規製品の創出を加速させています。グローバル企業として世界各国のお客様のニーズに応えられる、ものづくり体制を構築していきます。創業100周年を迎えた企業として、事業を支える企業理念の下、持続的成長を目指すため、他にない優位性を持った基盤事業の強化とコアコンピタンスを活用した新事業の創出を両輪として、新たな100年を支える研究技術開発を進めてまいります。
FY2017|1,341 文字
6【研究開発活動】平成27年4月から来年3月までの3年間にわたり中期経営計画「NTN100」の重点施策「攻める経営」として、新事業の創出に取組んでいます。昨年4月に電動モジュール商品事業部、自然エネルギー商品事業部を設立し事業化を進めています。当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で19,196百万円であり、グループ全体の研究開発費の研究目的、主要課題及び研究成果は以下のとおりです。(1)基盤事業自動車事業では、転がり軸受やドライブシャフトの「低トルク化」、「小型・軽量化」とともに、モジュール商品の開発を推進しています。回転トルクを80%低減できる「トランスミッション用超低フリクションシール付玉軸受」、高負荷容量、長寿命の「自動車用ULTAGE円すいころ軸受」などの商品を発表しました。新商品をグローバルに展開し、自動車の低燃費化や乗り心地の向上に貢献しています。産業機械用軸受は、さらなる「長寿命」、「高負荷容量」及び「高速性」などが求められています。世界最高水準の新世代軸受「ULTAGEシリーズ」の商品化を拡大し、高い評価を得ています。同シリーズに「ULTAGE鉱山コンベヤ用薄型シール付自動調心ころ軸受」や「ULTAGE工作機主軸用小径高速アンギュラ玉軸受」を新たに加えました。また、当社は転がり軸受に加え、樹脂材料、焼結材料からなるすべり軸受も開発・製造・販売しています。自動車用トランスミッション向けに、トルクを当社従来品比60%低減した「低トルクシールリング」の量産を開始し、日刊工業新聞社主催の「2016年“超”モノづくり部品大賞 環境関連部品賞」を受賞しました。(2)新事業展開「NTN100」では「エネルギー事業」、「EV事業」、「ロボット関連事業」、「サービス・ソリューション事業」を新たな事業領域と定めています。「エネルギー事業」では、風力と太陽光の2つの自然エネルギーを活用した静粛性の高いハイブリッド街路灯を昨年、販売開始しました。また、農業用水路などの流水エネルギーを高効率で電力へ変換できる小水力発電装置「NTNマイクロ水車」を販売開始します。「EV事業」では、自動車の電動化、さらに自動運転に向かって、ボールねじ、モータ、制御装置からなる「電動モータ・アクチュエータ」シリーズを開発しました。今後、適用部位を広げて事業化を推進します。また、省人化や協働型ロボットで普及が進む「ロボット関連事業」では、当社独自のパラレルリンク機構を有した角度制御装置をコア部材として、省スペースで超小型部品を高精度で組み立てるロボットを開発しています。 当社では、海外販売の拡大に対応するため、研究開発体制のグローバル化をさらに推進しています。日本での最先端技術研究を産学官の連携を活用しながら進め、海外研究開発拠点とのグローバルな新技術・新商品の開発網を構築するとともに、米州、欧州、アジア他の各地域において拡販に即応した技術サービス、認定評価、調査、分析等、顧客対応の加速化を図っています。来年3月に迎える創業100周年を機に、基盤事業及び新たな事業領域のさらなる拡大、成長を目指して、NTNの次の100年を支える研究開発を進めてまいります。
FY2016|2,055 文字
6【研究開発活動】当社グループは、産業機械、自動車及び補修・市販市場向けに、軸受、ドライブシャフト等の開発と、当社の基盤技術である精密加工技術、材料・熱処理技術、トライボロジー技術を核とした新技術の創出に積極的に取り組んでおり、他社の追随を許さないオンリーワンを目指した技術・商品開発、先端技術開発及び生産技術開発を進めています。転がり軸受、ドライブシャフトでは、低トルク化等の高機能化開発とともに、軸受の周辺部品を融合させたモジュール・ユニット製品の開発を推進しており、これらの開発を通じ、適正な価格で高精度・高品質の商品を市場に提供することにより、産業界に貢献しております。平成27年4月から平成30年3月までの3年間にわたり中期経営計画「NTN100」を推進中で、「攻める経営」として新しい事業の創出に精力的に取り組んでいます。例えば、自然エネルギーを活用した高効率な小形風力発電装置と小水力発電装置を開発、実証試験を行うとともに、並行して事業化の準備も進めています。その他、電気自動車用インホイールモータシステムや、車載用電動アクチュエータなど、新たな領域における新事業展開を積極的に推進しております。グローバルでの研究開発体制として、日本では最先端技術の研究開発を行い、グローバル市場に向けた研究開発活動をリードしています。欧州では現地生産品に関する研究開発を行っており、さらに日本、米州、欧州、アジア他の各地域において拡販に即応した技術サービス、認定評価、調査、分析等、顧客対応のスピードアップを図っています。当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で18,480百万円であり、その研究目的、主要課題及び研究成果は以下のとおりです。(1)基盤事業自動車事業では、転がり軸受、ドライブシャフトの低トルク化、小型・軽量化とともに、モジュール商品・システム商品の開発を推進し、欧州をはじめ世界各国で自動車の燃費規制が強化される中、低燃費化を目的にしたいくつかの新商品を発表しました。そのひとつが「アドバンスド ドライブシャフト モジュール」で、CVJとハブベアリングをプレスコネクト方式で接合することで軽量化と高性能化を実現した新商品です。また、電気自動車向け駆動システムとして、左右の車輪をそれぞれ専用のモータで駆動する「2モータオンボード駆動システム」を開発しました。1モータ式電気自動車に比較して、左右の駆動力を適正に制御することができ、旋回性能やスリップ路面での走行性能、安全性等が大きく向上します。このような新商品をグローバルに展開し、自動車に対する低燃費化や乗り心地の向上に貢献してまいります。産業機械事業では大型化され洋上でも使用される風力発電装置用に、異常診断装置を付加した高耐久性転がり軸受を展開しているほか、鉄道車両、航空機、ロボット等の各分野で、低トルク化、小型・軽量化とともに軸受による環境負荷低減を推進しています。近年では、当社の高性能軸受シリーズである「ULTAGE」に、従来品に対し基本動定格荷重を最大20%向上した世界最高水準の高負荷容量を持つ「ULTAGE自動調心ころ軸受」を新たに加え、鉄鉱石や石炭等の地下資源の採掘に使用される鉱山機械向けとして採用されています。さらなる高精度、高速化等の市場ニーズに対応するため、今後も軸受の要素技術開発とともに、軸受周辺部品とのユニット化・システム化による高付加価値商品の開発を推進してまいります。また、当社は転がり軸受に加え、焼結材料、樹脂材料からなるすべり軸受、磁性材料からなる磁性製品も開発・製造・販売しており、この強みを活かし、転がり軸受に樹脂製のフィルタと鉄粉を検出するセンサを設けた「早期異常検知機能付き円すいころ軸受」を開発しました。磁性材料では電気自動車の電源装置用に大電流・高周波に対応できるアモルファスコアなど、次世代商品の開発を進めているほか、当社内のモジュール開発商品、システム開発商品へも活用展開し、差別化を図っています。(2)新事業展開「エネルギー事業」、「EV事業」、「ロボット関連事業」、「サービス・ソリューション事業」を目指すべき新事業領域と位置付けています。このうち、「エネルギー事業」は小形風力発電装置、小水力発電装置で商品化の目処が立ち、自然エネルギー商品事業部を新設しました。「EV事業」では同様にインホイールモータシステムや電動モータ・アクチュエータの商品化に目処が立ち、電動モジュール商品事業部を新設しました。また、「ロボット関連事業」では当社独自のパラレルリンク機構を有した角度制御装置を商品化しており、「サービス・ソリューション事業」では、稼働中の軸受の状態を常時監視するCMS装置を既に商品化していますが、さらに新商品開発を継続して事業拡大を図ります。NTNの次の100年を支える新たな領域での事業展開に向けて、研究・開発のトランスフォーメーションを進めてまいります。