研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-03 | - | 2,665 |
| 2024-03 | - | 2,694 |
| 2023-03 | - | 2,775 |
| 2022-03 | - | 3,050 |
| 2021-03 | - | 3,084 |
研究開発活動(本文)
FY2025|4,270 文字
6 【研究開発活動】当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、カーボンニュートラル達成に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。また、各事業会社において、AI・IoT・ビッグデータ等のデータサイエンス技術の活用を推進するための組織を設置し、ロボティクス技術を積極的に活用して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等を積極的に推進しています。グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「グループ経営戦略会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。当連結会計年度における研究開発費は42,987百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業38,946百万円、エンジニアリング事業4,041百万円であります。なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。 (1)鉄鋼事業鉄鋼事業では、社会の持続的な発展と人々の安全で快適な生活のために、「カーボンニュートラル」達成に向けたイノベーションの推進、「デジタル」による製造基盤強化と超革新的プロセス技術の開発、お客様のニーズを先取りした高付加価値品およびカーボンニュートラル社会の実現に繋がる新商品・利用技術の開発を強力に推進しております。 以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。 <プロセス分野>JFEスチール㈱は、自動車用薄鋼板を対象とした製造工程の操業データおよび品質データを収集し、品質に対する操業の影響を解析する仕組みとして、多工程一貫品質データ解析システム『J-astquad®』を構築し、運用を開始しました。本システムは、自動車用薄鋼板の安定製造を目的とした、薄鋼板製造における品質管理業務のためのDX基盤技術のひとつです。自動車用薄鋼板をはじめとした、多工程にわたる製造品から構築・運用を始め、今後順次、各種製品群への展開を予定しています。今回構築した『J-astquad®』では、自動車用薄鋼板の製造における製鋼工程、熱延工程、冷延工程、表面処理工程にわたって鋼板の長辺方向に変動する多数のセンサーデータ等の操業データおよび品質データ等を自動的に収集します。それらのデータから、圧延による鋼板の長さの変化や、工程毎の鋼板長辺方向の反転、鋼板先尾端部の切り落とし処理等を考慮して、細分化した鋼板長辺方向位置を、多工程で精緻に合わせた紐づけデータとして生成し、AI技術に基づく詳細な解析を行うことで、品質不良の要因の推定が可能となり、操業改善の迅速化を実現し、品質不良発生率の低減につながっています。 更に、JFEスチール㈱は仮想空間上に構築したデジタルツイン技術の活用により、革新的ラジアントチューブバーナーの短期開発に成功しました。本ラジアントチューブバーナーを東日本製鉄所(千葉地区)冷延工場で長期運用した結果、従来のラジアントチューブと比較して6倍程度の長寿命効果が見込まれるとともに、低NOx化、省エネ化を実現しています。今回の開発では、試験炉の燃焼実験から得られた試験データと物理モデルを元に、仮想空間上に試験炉を忠実に再現したデジタルツインを構築し、ラジアントチューブの炉内支持構造、チューブ形状、バーナー周り、伝熱促進体、熱交換器を独自に開発しました。その結果、従来のラジアントチューブバーナーに対して、長寿命(変形速度1/6)、低NOx(NOx発生量30%低減)、高効率(3%の省エネ化)の革新的ラジアントチューブバーナーの開発に至り、また、従来の約半分の期間での操業運用を実現しました。また、同社は鋼製配管上を吸着走行しながら減肉点検を行う、走行を妨げるケーブル類を不要とした点検ロボットである無線式「Scan-WALKER®」を開発しました。本ロボットは既存の配管点検ロボット有線式「Scan-WALKER®」を改良したものであり、今回製鉄所内の点検作業に試験導入し、遠隔操作による点検範囲拡大と高所作業負荷低減を実現しました。今回、各製鉄所内において、本ロボットを用いて地上からの遠隔操作による検証試験を実施し、局所的な減肉の発見に成功しました。今後は実運用を進め、配管以外の構造物にも展開することで、更なる鋼構造物の健全性確保と作業負荷低減を進めていきます。 <製品分野>JFEスチール㈱は、石油メジャー等が参画する「海洋石油・天然ガスに係る日本財団とDeepStarの連携技術開発助成プログラム」の水素関連技術開発Phase Iにおいて、同社製品の電縫鋼管(マイティーシーム®)を用いた、高圧水素輸送用ラインパイプ材の特性評価に関する研究開発を実施してまいりました。この度、約1年間のPhase Iにおける研究成果が認められ、引き続きPhase IIに採択されました。Phase IIでは、海底パイプラインを想定した厚肉高強度UOE鋼管へ研究対象を拡大し、引き続きDeepStarメンバーである石油メジャーのExxonMobil社、Chevron社(米国)、TotalEnergies社(フランス)と連携し、高圧水素輸送用の鋼管材料等の評価基準および方法を確立し、高圧水素輸送海底パイプラインの実用化を目指します。また、JFEスチール㈱が開発した『壁折リストライク工法』が、国内大手自動車メーカーの国内向け車両の骨格部品であるロッカーインナーの製造において、1180MPa級高張力鋼板のプレス成形時のスプリングバック抑制成形工法として採用されました。一般的に、プレス成形時に材料に残る応力を低減する、もしくはプレス部品にスプリングバックの要因応力を相殺させる応力を付与することでスプリングバックは小さくなります。今回採用された『壁折リストライク工法』は、多工程あるプレス工程の前工程形状を最適化し、スプリングバックの要因応力を相殺させる応力を付与することを特徴とする技術です。今回の工法が採用された対象として、ドアの車両下部に配置される骨格部品であるロッカーインナーは、㈱協豊製作所(以下、「協豊製作所」)が量産を実施しており、同社と協豊製作所の共同開発により『壁折リストライク工法』の量産金型への適用を実現しました。 更に、JFEスチール㈱はコーティングレスで高温水蒸気中での耐酸化性と導電性を両立する、固体酸化物形燃料電池(SOFC)のインターコネクタ用フェライト系ステンレス鋼『JFE―FC1』を開発し、サンプルの提供を開始いたしました。『JFE―FC1』は、セラミックスコーティングに要するコストと作業工程を削減することができるステンレス鋼です。このたび開発した『JFE―FC1』は、長期間の使用後にもバリア機能を持ち続け、かつ発電効率を低下させないよう導電性も維持できる特殊な構造を持った酸化皮膜が生成する、新たな材料設計に基づいて開発されたステンレス鋼です。『JFE―FC1』を適用することで、セラミックスコーティングに要するコストと工程を削減することができ、カーボンニュートラル実現に向けたSOFCの普及促進に大きく貢献します。 <表彰>JFEスチール㈱が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、「海岸近傍でも無塗装使用可能な高耐候性鋼の発明」により、令和6年度全国発明表彰発明賞を受賞しました。同社の全国発明表彰受賞は発足以来14回目となります。また、同社の開発した高濃度硫化水素含有天然ガス輸送鋼管用鋼材が、第71回(令和6年度)大河内記念技術賞を受賞しました。更に、JFEスチール㈱が開発した「連続鋳造における凝固完了位置測定装置」が、第59回機械振興賞 経済産業大臣賞を受賞しました。また、「長寿命・低NOx・高効率ラジアントチューブバーナー」が2023年度日本伝熱学会・技術賞を受賞しました。同社の日本伝熱学会・技術賞の受賞は初となります。 (2)エンジニアリング事業エンジニアリング事業では、「Waste to Resource」、「カーボンニュートラル」、「複合ユーティリティサービス」、「基幹インフラ」の4事業分野にそれらを支える技術基盤である「DX」を加えた5つを重点分野と位置付け研究開発を推進しています。当連結会計年度は、特に「カーボンニュートラル」を最注力分野として重点的な投資を実施しました。具体的には、廃棄物中の炭素を化学原料として最大限有効利用する「ガス化改質と微生物を用いたエタノール製造による廃棄物ケミカルリサイクル技術の開発」に現在取り組んでおります。本開発は、NEDOグリーンイノベーション基金事業「廃棄物・資源循環分野におけるカーボンニュートラル実現」に採択され、2024年11月より実証試験設備の建設を開始しました。本開発ではJFEエンジニアリング㈱のオンリーワン技術である廃棄物から安定的に精製合成ガスを製造する技術をベースに、廃棄物をプラスチック原料やSAF(Sustainable Aviation Fuel)の他、水素源としても有効利用する一連の資源循環プロセスの確立を目指しております。 更に、膜分離と物理吸着双方のメリットを活かしたハイブリッド型低消費エネルギーCO2分離回収技術や、水素混焼ガスエンジンコージェネレーションシステム等、カーボンニュートラルの実現に向けて様々な研究開発に取り組んでいます。また、JFEエンジニアリング㈱が開発した商品・技術は社外からも高く評価されており、廃棄物焼却施設の発電効率向上とボイラ長寿命化を目的とした「水噴射と圧力波を組み合わせた高効率ボイラクリーニング装置」は、(一社)日本産業機械工業会主催の第50回優秀環境装置表彰において、経済産業大臣賞を受賞しました。
FY2024|4,247 文字
6 【研究開発活動】 当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、カーボンニュートラル達成に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。また、各事業会社において、AI・IoT・ビッグデータ等のデータサイエンス技術の活用を推進するための組織を設置し、ロボティクス技術を積極的に活用して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等を積極的に推進しています。グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「グループ経営戦略会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。当連結会計年度における研究開発費は43,838百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業40,200百万円、エンジニアリング事業3,637百万円であります。なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。 (1)鉄鋼事業鉄鋼事業では、社会の持続的な発展と人々の安全で快適な生活のために、「カーボンニュートラル」達成に向けたイノベーションの推進、および「デジタル」による製造基盤強化と新たな成長戦略の実行に向け、CO2削減に大きく貢献する超革新プロセス技術の検討、お客様や社会のニーズを先取りした新商品・利用技術の開発を強力に推進しております。以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。 <プロセス分野>JFEスチール㈱は、デジタルツイン技術を活用した設備設計により、同社の西日本製鉄所(福山地区)のコークス炉において、省エネルギー効果とCO2削減効果のある新設備の技術開発を行い、このたび工程運用を開始しました。本件は、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)助成金事業に採択されています。製鉄業においては、製銑工程でのエネルギー利用とCO2排出割合が大きく、高効率運転と均質で高品質な原料の製造は、カーボンニュートラルの実現に向けて重要な役割を担っています。同社の西日本製鉄所(福山地区)の5コークス炉D団においては、仮想空間上に構築したコークス炉のデジタルツインの情報から、部分的に燃焼用の空気の不足による燃料の未燃が発生し、燃料原単位に影響を与えていることを解明しました。従来、炉内の空気量の調整は全体量で行っていましたが、デジタルツイン技術を用いたことで、部分的に空気供給量を制御する機構が高効率操業に有効であることを確認でき、更に燃焼最適化のための補助空気量の算出にも成功しました。部分燃焼最適化の実現により、従来比で燃料使用削減量約5%、CO2排出削減量6,600トン/年の効果を達成しました。また、JFEスチール㈱は最新のDX・ロボティクス技術を活用し、グラインダー研削作業を自動で行うロボットシステムを知多製造所の小径シームレス管工場に導入しました。同社が独自開発した「ティーチングレス技術」により、手入れ工程において微細なきず等の不良部位検出から研削作業までをロボットが自動で行うことが可能となりました。今後は、本システムを他工場・他製造プロセスにも展開していくことで、より安全で快適な職場環境を提供し、生産性の向上につなげていきます。更に、JFEスチール㈱は最新のデータサイエンス技術により、原料ベルトコンベアの設備異常および操業異常を自動監視するシステムを開発し、同社の東日本製鉄所(千葉地区)と西日本製鉄所(倉敷地区)の原料ヤードに導入しました。今後は、本システムを全地区に展開していくことで、原料ヤードにおける搬送トラブルの未然防止を通じた更なる生産性向上と操業の安定化を推進します。 <製品分野>石油メジャー等が参画する「海洋石油・天然ガスに係る日本財団とDeepStarの連携技術開発助成プログラム(以下、「本プロジェクト」)の水素関連技術開発において、JFEスチール㈱製品の電縫鋼管(マイティーシーム®)を用いた、高圧水素輸送用ラインパイプ材の特性評価に関する研究開発が採択されました。本プロジェクトにおいて、DeepStarメンバーである石油メジャーのExxonMobil社(米国)、TotalEnergies社(仏国)と連携し、高圧水素輸送用の鋼管材料等の評価基準および方法を確立し、世界初の高圧水素輸送向けパイプラインの実用化を目指します。今回の研究開発は、JFEスチール㈱の東日本製鉄所(千葉地区)にあるスチール研究所で、高圧水素パイプラインに求められる必要特性についてECA技術等を用いた研究を実施するとともに、鋼管材料から切り出した材料試験片を用いて、高圧水素環境試験での性能評価を行います。石油メジャーのニーズを踏まえた技術開発を推進し、各社と共同で脱炭素化に貢献するべく、連携強化を図っていきます。また、JFEスチール㈱の「JFEトポロジー最適化技術」が、いすゞ自動車㈱(以下、「いすゞ」)の「新型エルフ」のトラックの乗車部分であるキャブ設計手法として採用されました。両社は共同でキャブの構造最適化に取り組み、「JFEトポロジー最適化技術」を用いた設計により、室内空間の最大化と車体の軽量化の両立を達成しました。本技術はこれまで普通乗用車や軽自動車に採用されてきましたが、トラックのような商用小型貨物車への採用は今回が初となります。新型エルフのフルモデルチェンジに伴い、居住性を向上させるために室内空間を最大限広げる一方で、車体を軽量化するため、いすゞは「JFEトポロジー最適化技術」を採用し、両社が協業で主要骨格の新設計を実施いたしました。新部品形状の設計および高効率接合位置の検出のためにトポロジー最適化からなるCAE技術を駆使した結果、前モデルに対し大幅な軽量化を達成いたしました。なお、本成果については、いすゞより2023年7月の自動車技術会フォーラム「車体の最新技術2023」にて発表されています。更に、JFEスチール㈱は橋梁等の鋼構造物の耐久性を高める新たな溶接施工法「FLExB®溶接」を開発しました。本溶接施工法は、2023年5月に国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録されました。今回、新しく開発したFLExB®溶接は、ガセットプレート(補強用鋼板)と呼ばれる接合部材の短辺側を先に溶接し、その短辺溶接部を挟み込むように長辺側を溶接します。更に溶接ビードを延ばすことで疲労損傷を抑制できる技術です。これにより、溶接部の疲労き裂の起点になる箇所の応力レベルを軽減し、疲労き裂の発生を遅らせるとともに、疲労き裂の進展を抑えることで、疲労損傷への耐久性を高めることを実現しました。FLExB®溶接による耐久性向上の効果により、従来よりもJSSCの疲労等級が1等級向上しました。従来の溶接施工法より作業を単純化できることに加え、溶接施工後に疲労強度向上を目的として実施していた表面処理等の作業工程を省略でき、施工能率の向上にも寄与します。 <表彰>JFEスチール㈱が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、「超大型コンテナ船の建造を実現した極厚高強度鋼板の開発」の成果が認められ、令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。同社の同賞受賞は6年連続となります。また、「自動車の燃費と衝突安全性を向上する超高強度薄鋼板」の成果が認められ、令和5年度全国発明表彰経済産業大臣賞を受賞しました。また、JFEスチール㈱が開発した「サイバーフィジカルシステムによる高炉操業の自動化」が、第70回(令和5年度)大河内記念技術賞を受賞しました。更に、「鋼と炭素繊維強化樹脂層を複合させた超高圧水素蓄圧器の開発」の成果が認められ、環境省主催の令和5年度気候変動アクション環境大臣表彰を開発・製品化部門(緩和分野)で受賞しました。 (2)エンジニアリング事業エンジニアリング事業では、「Waste to Resource」、「カーボンニュートラル」、「複合ユーティリティサービス」、「基幹インフラ」の4事業分野にそれらを支える技術基盤である「DX」を加えた5つを重点分野と位置付け研究開発を推進しています。当連結会計年度は、特に「カーボンニュートラル」を最注力分野として重点的な投資を実施しました。具体的には、急拡大する日本の洋上風力発電事業の発展に大きく貢献するべく洋上風力のモノパイル基礎の製造技術に取り組む他、膜分離法と物理吸着法のハイブリッド型を用いた低消費エネルギーCO2分離回収技術等、脱炭素社会の実現に貢献する新規技術開発に取り組んでおります。また、JFEエンジニアリング㈱は積水化学工業㈱と共同で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/廃棄物・資源循環分野におけるカーボンニュートラル実現」を受託し、廃棄物から化学品原料を製造する「廃棄物のケミカルリサイクル(Waste-to-Chemical)プロセス」の確立に取り組んでいます。本開発は、JFEエンジニアリング㈱が開発中である幅広い廃棄物をガス化し高品質な精製合成ガスを安定供給する技術と、積水化学工業㈱が開発中である廃棄物由来の精製合成ガスからエタノールを製造する技術を組み合わせたプロセスです。化学品合成に必要な水素も自らのプロセス内で生成するため、水素ネットワークの構築を待たずに早期の社会実装が期待される革新的な技術となります。JFEエンジニアリング㈱が開発した商品・技術は社外からも高く評価されております。基幹インフラ分野においては、「簡便な杭式桟橋の補強工法」の成果が認められ、第25回国土技術開発賞に入賞しました。
FY2023|4,153 文字
6 【研究開発活動】当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、カーボンニュートラル達成に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。また、各事業会社において、AI・IoT・ビッグデータ等のデータサイエンス技術の活用を推進するための組織を設置し、ロボティクス技術を積極的に活用して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等を積極的に推進しています。グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「グループ経営戦略会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。当連結会計年度における研究開発費は43,018百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業39,577百万円、エンジニアリング事業3,440百万円であります。なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。 (1)鉄鋼事業鉄鋼事業では、社会の持続的な発展と人々の安全で快適な生活のために、「カーボンニュートラル」達成に向けたイノベーションの推進、および「デジタル」による製造基盤強化と新たな成長戦略の実行に向け、CO2削減に大きく貢献する超革新プロセス技術の検討、お客様や社会のニーズを先取りした新商品・利用技術の開発を強力に推進しております。以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。 <プロセス分野>JFEスチール㈱は、日本製鉄㈱、㈱神戸製鋼所、一般財団法人金属系材料研究開発センターの3社とコンソーシアムを結成し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」(以下、本プロジェクト)を共同で受託し、2050年のカーボンニュートラルに向けた取り組みを推進しています。JFEスチール㈱は、カーボンリサイクル高炉をはじめとした本プロジェクトに関する実証試験を行うための各種設備をJFEスチール㈱ 東日本製鉄所(千葉地区)に建設することを決定しました。開発設備を同一地区へ集中して建設し、効率的な開発を推進することで、コンソーシアムメンバーと共同で超革新技術の開発を加速させてまいります。また、JFEスチール㈱は公益財団法人地球環境産業技術研究機構と共同で研究開発を推進している「CO2を用いたメタノール合成における最適システム開発」、ならびに国立大学法人愛媛大学と共同で研究開発を推進している「製鋼スラグの高速多量炭酸化による革新的CO2固定技術の研究開発」を実施しております。今回、これらの研究開発にあたり、製鉄プロセスにおける高炉ガス等の可燃性ガスやスラグをはじめとする副産物の有効利用に関する各種試験設備の建設を決定しました。具体的には、JFEスチール㈱ 西日本製鉄所(福山地区)および東日本製鉄所(千葉地区)にて試験設備を建設し、研究開発を加速させていきます。本研究開発では、これらの副産物の有効利用等を通じて、CO2排出の大幅な削減を目指します。 <製品分野>JFEスチール㈱およびドイツ最大の鉄鋼メーカーであるティッセン・クルップ・スチール・ヨーロッパ,AG社は、冷間加工用に新たな980~1180MPa級高張力鋼板(以下、ハイテン)を共同で開発しました。当製品は、従来の汎用ハイテンと比較し、より高い降伏強度と高い延性、特に優れた局部延性を有しています。これらの特性により、自動車骨格(ホワイトボディー)の更なる軽量化と、衝突安全性能の向上に寄与するとともに、熱間プレス工法を用いず従来の冷間加工(プレス成形・ロールフォーミング)で難成形部品を製造することが可能となるため、生産性の向上と製造コスト低減にも貢献します。また、疲労損傷への耐久性を高めた薄物耐疲労鋼(商品名:『AFD®』鋼 以下、AFD鋼)を開発しました。長期間にわたって使用される鋼構造物は、老朽化に伴うメンテナンスコストや更新コストの低減が求められています。特に橋梁は薄肉部材が多いことから、自動車等の交通荷重により疲労き裂が発生する場合があり、点検や補修までの期間において、き裂が進展するリスクがありました。AFD鋼を開発したことで、これまで疲労き裂が問題となり易かった部材への適用が可能となるため、鋼構造物の耐久性向上を実現することができます。橋梁・船舶・建設機械・産業機械等の鋼構造物のさらなる耐久性、安全性、経済性の向上に寄与する高機能・高品質な鋼材の開発・供給を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。更に、JFEスチール㈱、日本製鉄㈱、五洋建設㈱、東亜建設工業㈱、および日本海工㈱の5社は、軟弱な海底地盤の表層改良を可能とする「カルシア改質土のバッチ式原位置混合工法」の共同開発を進めてまいりました。カルシア改質土は、軟弱な浚渫土に製鋼スラグを原料としたカルシア改質材を混合することにより、物理的・化学的性状を改質した材料です。今回開発した「バッチ式原位置混合工法」は、既存の海上地盤改良工法であるサンドコンパクションパイル工法の専用船に取り付けた密閉式バケットを用いて、バケット内で粘土とカルシア改質材を混合し、その場(原位置)において海底地盤の表層3m程度をカルシア改質土に改良する工法です。本工法の開発により、カルシア改質土の用途拡大が考えられます。2022年7月より約2か月に亘り国土交通省中国地方整備局と広島県の協力のもと、広島港出島地区の実海域において実証試験を実施しました。今後は、本工法の公的評価の取得と実用化を進め、カルシア改質土の普及拡大を推進します。更に、国立大学法人東北大学、学校法人日本大学、西松建設㈱、共和コンクリート工業㈱と共同で、通常のコンクリートと比べて製造時のCO2排出量を約75%削減可能なアルカリ活性材料コンクリートを素材とした、意匠性を有する複雑な形状のプレキャストコンクリート製品の試験製造に成功しました。JFEスチール㈱を中心とする研究チームは、高炉スラグ微粉末や高炉スラグ細骨材の活用、および特殊な混和剤の適用などによって、流動性を安定的に確保しつつ、耐凍害性を大幅に向上させた独自のアルカリ活性材料コンクリートを開発し、実用化に向けた研究を進めてまいりました。本試験製造の成功により、さまざまな形状のプレキャストコンクリート製品への展開が進むことで、コンクリート分野でのCO2排出量を大幅に削減することが可能となります。試作したプレキャストコンクリート製品は、今後、比較的過酷な寒冷環境において試験し、実用化に向け、耐久性の検証を進めてまいります。 <表彰>JFEスチール㈱が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、「電気機器の省エネに貢献する省資源型Si傾斜磁性材料」の成果が認められ、令和4年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞しました。同賞受賞は5年連続となります。また、横浜市との「公民連携による豊かな海づくり」の活動が評価され、令和3年度土木学会環境賞、および第5回エコプロアワード 国土交通大臣賞を受賞しました。また、「自走式精密検査ロボット」が、一般財団法人機械振興協会から第57回機械振興賞 機械振興協会会長賞を受賞しました。機械振興賞の受賞は5年連続12回目となります。更に、「製鉄所における燃料・電力運用ガイダンスシステムの開発」の成果が認められ、一般社団法人日本エネルギー学会から2022年度日本エネルギー学会・学会賞(技術部門)を受賞しました。 (2)エンジニアリング事業エンジニアリング事業では、「Waste to Resource」、「カーボンニュートラル」、「複合ユーティリティサービス」、「基幹インフラ」の4事業分野にそれらを支える技術基盤であるDXを加えた5つを重点分野と位置づけ研究開発を推進しています。当連結会計年度は、特に「カーボンニュートラル」を最注力分野として重点的な投資を実施しました。具体的には、洋上風力のモノパイル基礎の製造技術、清掃工場の排ガスからのCO2回収技術および回収したCO2からのメタノール製造技術等に取り組んでおります。更に、開発のスピードアップや合理的な開発投資を目的に、国内外の大学や研究機関および他企業との連携・共同開発を推進しております。その一例として、国立大学法人東京工業大学(以下「東京工業大学」)との連携により「JFEエンジニアリング カーボンニュートラル協働研究拠点」を開設し、JFEエンジニアリング㈱が有するエネルギー・環境分野などにおけるプラントおよび各種インフラ建設に関連するエンジニアリング技術と、東京工業大学が有する幅広い領域における高度な学術的知見を融合することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する新規技術開発を推進しております。JFEエンジニアリング㈱が開発した商品・技術は社外からも高く評価されており、DX分野においては、ボイラ発電プラント向けDXサービスパッケージ 「RODAS®」が、省エネ大賞 経済産業大臣賞を受賞しました。これは、高効率な運営に加え、複数拠点間のタイムリーな情報共有や同社が有するグローバルリモートセンターでの運転状況のモニタリング、同社エンジニアによる効率的・効果的な遠隔サポートによるプラントの予防保全と稼働率向上に向けた取り組み等が高く評価されたものです。
FY2022|4,411 文字
5 【研究開発活動】当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、カーボンニュートラル達成に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「グループ経営戦略会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。また、各事業会社において、AI・IoT・ビッグデータ等のデータサイエンス技術の活用を推進するための組織を設置し、ロボティクス技術を積極的に活用して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等にも積極的に取り組んでいます。当連結会計年度における研究開発費は39,658百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業35,779百万円、エンジニアリング事業3,879百万円であります。なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。 (1)鉄鋼事業鉄鋼事業では、社会の持続的な発展と人々の安全で快適な生活のために、「カーボンニュートラル」達成に向けたイノベーションの推進、および「デジタル」による製造基盤強化と新たな成長戦略の実行に向け、CO2削減に大きく貢献する超革新的プロセス技術の検討、お客様や社会のニーズを先取りした新商品・利用技術の開発を強力に推進しております。以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。 <プロセス分野>JFEスチール㈱と、日本製鉄㈱、㈱神戸製鋼所、一般財団法人金属系材料研究開発センターの4社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」に4つの開発項目を共同提案し、2021年12月24日に採択されました。「グリーンイノベーション基金」は、2020年12月25日に経済産業省が関係省庁と策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で「経済と環境の好循環」を作り出すために組成された基金であり、製鉄プロセスの脱炭素化の実現に向けて、4社で本プロジェクトを推進してまいります。加えてJFEスチール㈱は、国立大学法人東北大学と、カーボンニュートラル時代を見据えた研究活動の推進を目的として、2022年2月1日に「JFEスチール×東北大学グリーンスチール共創研究所」を設置しました。今後両者は、強固な産学連携体制のもと、企業技術者と大学研究者の部門横断的な連携を通じて、低炭素製鉄プロセスに関する共同研究をさらに加速させるとともに、新材料開発をはじめとする新規開発テーマの発掘を推進します。また、高張力鋼板(以下、ハイテン)の熱間連続圧延技術(以下、エンドレス圧延)を世界で初めて開発しました。エンドレス圧延は、1996年に世界に先駆けて開発し、JFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)に導入した技術で 、粗圧延機と仕上げ圧延機との間に設置した接合装置でコイルの先尾端を接合し、仕上げ圧延機に複数のコイルを連続的に装入することができます 。ハイテンへのエンドレス圧延適用にあたっては、機械的特性の向上を目的に添加している合金元素(Si・Mn 等)の影響で、接合部の強度および延性が低下するため、仕上げ圧延時に破断してしまうという課題がありました。そこで当社は、接合部の強度および延性の低下を防ぐ技術を開発し、仕上げ圧延時の破断を抑制することに成功しました。これにより、ハイテンのエンドレス圧延が可能となり、通板性の改善等を通じて、ハイテンの安定生産および生産性向上に大きく寄与しております。今後もハイテンの技術開発、安定生産を通じて、自動車の車体軽量化に伴うCO2削減、省エネに貢献してまいります。さらに、最新のデータサイエンス技術により、製鉄所の設備異常予兆を検知するシステム(J-dscom® )を、JFEスチール全地区熱延工場に展開しました。2018年度に最初に導入した西日本製鉄所(倉敷地区)熱延工場においては、年間50時間以上(生産量3万t以上)相当のトラブル抑止効果が確認されています。これまでに、西日本製鉄所(倉敷・福山地区)および東日本製鉄所(千葉・京浜地区)の全地区熱延工場に本システムを導入しました。全地区共通のシステムを導入し、異常診断モデル等を全地区で容易に共有できるようにすることで、全社レベルで最適なモデルの構築を推進しております。今後は、製銑や製鋼をはじめとする他製造プロセスにも展開してまいります。 <製品分野>JFEスチール㈱は、板厚22~100mmの建築構造用低降伏比780N/mm²級 厚鋼板「HBL® 630」を開発し、国土交通大臣認定を取得しました。主な用途は高層建築物の低層部の鉄骨柱に用いられる溶接組立箱形断面柱です。「HBL®630」を高層建築物の低層部のボックス柱に採用することで、お客様はこれまで実現できなかった建築物の超高層化や大スパン化(建造物の柱間の距離拡張)が可能となり、低層部における快適な大空間の確保等、自由で最適な設計、デザインを実現することができます。また、建設業界で深刻化する現場溶接工の不足に対する省力化のニーズに応えるため、「HBL®630」では高能率な大入熱溶接を可能にし、ボックス柱の溶接に要する時間の大幅な短縮を実現しました。また、国立大学法人東北大学、および学校法人日本大学と共同で、通常のコンクリートと比べて、製造時のCO2排出量を大幅に削減可能なアルカリ活性材料を開発しました。さらに、西松建設㈱および共和コンクリート工業㈱を加えた5者で、本材料の早期実用化に向けた試験体制を構築しました。セメント代替となるフライアッシュ(石炭灰)と高炉スラグ微粉末の配合量最適化、高炉スラグ細骨材の活用、および特殊な混和剤の適用等によって、流動性を安定的に確保しつつ、耐凍害性を大幅に向上させた独自のアルカリ活性材料を開発しました。開発したアルカリ活性材料は、凍結融解試験において、JISで規定されている300サイクルを経過しても、ほとんど劣化しないことが確認されました。さらに、凍結防止剤の影響も想定した塩水環境下での凍結融解試験においても、従来品を大幅に超える凍結融解抵抗性を示しました。自動車の軽量化、安全性向上を目的に利用されるハイテンにおいて、加工後のスプリングバックを抑制する成形工法が強く望まれています。それに応えるためJFEスチール㈱は「ストレスリバース™工法」を開発しました。開発した「ストレスリバース™工法」は、「レクサスNXルーフセンターリンフォース」において、冷間プレスによる車体骨格部品の強度としては世界最高レベルとなる、1.5GPa(1470MPa)級ハイテンのスプリングバック抑制成形工法として採用されました。また、電気自動車等に用いられるアキシャルギャップモータ用の重要素材として、圧粉磁心用絶縁被覆純鉄粉「電磁郎™」を開発しました。これにより、JFEグループは電磁鋼板からソフトフェライトコアまで幅広い軟磁性材料をラインアップし、モータを含むあらゆる電源機器に対してワンストップで最適なソリューションを提供できる、世界唯一の総合サプライヤーとなりました。 <表彰>JFEスチール㈱が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、「革新的雰囲気制御による溶融亜鉛めっき薄鋼板製造技術の開発」の成果が認められ、令和3年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。JFEスチール㈱の同賞受賞は4年連続となります。また、船舶の安全性を高めた溶接構造体「構造アレスト」の発明により、令和3年度全国発明表彰日本経済団体連合会会長賞を、ジャパン マリンユナイテッド㈱および㈱IHIと共同で受賞しました。JFEスチール㈱の全国発明表彰受賞は8年連続で、同社発足以来12回目となります。さらに、JFEスチール㈱が開発した「高能率超狭開先溶接システムの開発」が、このたび一般財団法人機械振興協会から第56回機械振興賞機械振興協会会長賞を受賞しました。同社の機械振興賞の受賞は4年連続11回目となります。また、建築構造用低降伏比高強度厚鋼板「HBL®シリーズ」が、第68回(令和3年度)大河内記念技術賞を受賞しました。 (2)エンジニアリング事業エンジニアリング事業では、「Waste to Resource」、「カーボンニュートラル」、「複合ユーティリティサービス」、「基幹インフラ」の4事業分野にそれらを支える技術基盤であるDXを加えた5つを重点分野と位置づけ研究開発を推進しています。当連結会計年度は、特に「カーボンニュートラル」を最注力分野として重点的な投資を実施しました。具体的には、洋上風力のモノパイル基礎の製造技術、清掃工場の排ガスからのCO2回収技術および回収したCO2からのメタノール製造技術等に取り組んでおります。さらに、開発のスピードアップや合理的な開発投資を目的に、国内外の大学や研究機関および他企業との連携・共同開発を推進しております。その一例として、2018年度に開設したシンガポールの研究拠点では、カーボンニュートラル分野を軸にしながら当該国の大学・研究機関と様々な分野における共同開発事業の探索・創出に向け取り組みを加速しております。加えて、第5世代移動通信システム(以下「5G」)を活用したプラントの建設や操業・メンテナンスの無人化・省人化を実現する新技術の探索や共同開発事業の創出に向け、実物大の模擬プラントに5Gの通信環境を整備した「5G Innovation Plant」を横浜本社内に開設しました。JFEエンジニアリング㈱が開発した商品・技術は社外からも高く評価されており、橋梁分野においては、画像認識AIによる配筋検査技術を適用した工事が「国土交通省関東地方整備局 新技術推進技術者表彰」を受賞しました。これは、出来形確認に要する労務の縮減や出来形管理の信頼性向上等、活用技術の有効性が高く評価されたものです。
FY2020|4,270 文字
5 【研究開発活動】当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、地球環境保全に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「技術開発会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。また、各事業会社において、AI・IoT・ビッグデータ等のデータサイエンス技術の活用を推進するための組織を設置し、またロボティクス技術を積極的に活用して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等にも積極的に取り組んでいます。当連結会計年度における研究開発費は38,716百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業34,322百万円、エンジニアリング事業4,394百万円であります。なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。 (1)鉄鋼事業鉄鋼事業では、10年先を見据えてお客様や社会のニーズを先取りした新商品・利用技術開発、世界最高水準の地球環境技術や省資源技術の開発を加速するとともに、プロセス革新による画期的新商品の創出と高品質商品製造技術の確立を強力に推進しております。以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。 <プロセス分野> JFEスチール㈱における製鉄プロセスへのデータサイエンス(以下、DS)技術の適用に関して、以下の技術導入を進めています。 国内に保有・稼働するすべての高炉に、サイバーフィジカルシステム(Cyber-Physical System)化を目的としたDS技術の展開を進め、異常予兆の検知や、安定操業において重要な炉内の熱の状態を最大12時間先まで予測できるなどの成果が確認されています。また、製鉄所の設備異常予兆を検知するシステム(「J-dscom™」)を開発し、全社的に展開を進めることを決定しました。DS技術を用いた設備異常予兆検知システムの生産設備への導入は業界初です。設備異常予兆検知システム「J-dscom™」は、正常時の基準値に対する外れ度合いを異常度として指標化し、早期に検知するものです。すでに導入した一部の設備では、異常予兆を早期に捉え補修することで正常状態に復帰した事例が確認されています。今後、DS技術の活用を通じ、高炉の安定・高効率操業及び製鉄所の設備安定化を実現し、生産性を向上させていきます。また、JFEスチール㈱は凹凸欠陥のみを強調し検出できる新しい技術「ツイン投光差分型検査技術」を独自に研究開発し、複数の黒皮鋼材の製造ラインへ導入しました。黒皮鋼材の実用的な表面検査装置の導入は業界初です。この技術は、欠陥が凹凸であるのに対し、製品表面の模様部分は平らであることに着目し、2方向から光を高速に交互に照射しながら撮像し、撮像された画像を差分(差を計算)することを特徴としています。知多製造所のシームレス管工場や東日本製鉄所(京浜地区)の厚板工場に導入し運用を開始しています。導入した製造ラインでは、連続的に発生する凹凸欠陥の早期検出や、確実な凹凸欠陥検出による流出防止など、製品の表面品質向上に寄与しています。 <製品分野> 自動車用鋼板においては、独自の利用技術を「JESOLVA™」(JFE Excellent SOLution for Vehicle Application)として体系化しました。これにより、高強度鋼板の適用において、設計から量産に至るまでの様々な課題に対し、総合的なソリューションを提案することが可能となりました。「JESOLVA™」は、車体設計を支援する「Design」、部品に成形する「Forming」、部品同士を接合する「Joining」の3つのグループで構成されます。JFEスチール㈱は多数の独自技術を保有しており、代表例として、「Design」では軽くて強い車体構造を創出するトポロジー最適化技術、「Forming」では複雑な形状を高精度に成形する最適予成形技術、「Joining」では超ハイテン材部品を高強度に安定して接合するパルススポット溶接技術などが挙げられます。また、自動車用車体性能評価技術が、スズキ㈱が発表した新機種「新型ハスラー」の車体開発において採用されました。「新型ハスラー」では、スズキ㈱で初めて車体の接合に構造用接着剤が本格採用されています。採用に当たってJFEスチール㈱はスズキ㈱と共同で検討を行い、試験体レベルの基礎的な特性把握から車体構造の性能評価に至る各段階において、JFEスチール㈱の持つ振動や剛性、接合構造に関する特性・性能の評価技術を広範囲に総合的に活用し、新機種における操縦安定性・乗り心地性能といったパフォーマンスを向上させました。厚板分野においては、飛来塩分が高く腐食環境下にある橋梁に従来用いられてきたニッケル系高耐候性鋼板よりもコストパフォーマンスに優れた高塩分対応型の高耐候性鋼板「LALAC®-HS」を開発しました。ニッケル系高耐候性鋼板はニッケルを1~3%添加するため高コストという課題がありました。これに対し、ニッケルの添加量を抑制しつつ、塩分環境での耐食性を低下させると言われるクロムを添加せず、耐食元素であるスズ、ニオブを微量複合添加することで、コストパフォーマンスに優れながらも従来のニッケル系高耐候性鋼とほぼ同等の耐候性を得ることに成功しました。缶用鋼板分野においては、高強度と高延性を兼ね備えた缶用鋼板「JATT®」の量産化に成功しました。本製品は高強度かつ、伸びの低下がないため、従来のDR材で見られた加工不具合が軽減されます。伸びに余裕があることから、加工の自由度が上がり、缶デザインの可能性が広がります。更に、強度が高く座屈やデント変形を軽減できるため、薄ゲージ化への活用も期待されます。溶接・接合分野においては、定格出力30kWの大出力レーザによる真空中でのレーザ溶接技術を開発し、クラッド鋼板の生産性向上を目的として、西日本製鉄所(福山地区)厚板工場のクラッド鋼板製造工程に導入しました。レーザビームの形状およびレーザ出力、溶接速度などの溶接条件を適切に調整することにより、溶込み形状を制御する技術を構築し、最適な形状が安定して得られる大出力真空レーザ溶接条件を確立することに成功しました。鉄粉分野では、メッシュベルト炉で焼結した状態のままで引張強さが800MPa級を示す粉末冶金用途向けのニッケルフリー合金鋼粉「FM800」を新たに開発しました。Cuを3%、Moを1.3%予合金添加した今までにない合金鋼粉「FM800」を開発し、メッシュベルト炉で焼結した状態のままで引張強さが800MPa級を超える高強度を出すことに成功しました。また、一般的に合金元素の予合金添加によって、粉末の圧縮性は低下しますが、製造プロセスを制御することにより高い圧縮性を兼ね備えさせることに成功しました。 <表彰> JFEスチール㈱が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、「革新的ミクロ組織制御による高強度・高加工性薄鋼板群の開発」の成果が認められ、平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。JFEスチール㈱の同賞受賞は2年連続となります。また、JFEスチール㈱の開発した電気機器の小型高効率化に寄与する電磁鋼板「JNSF コア®」が令和元年度全国発明表彰を受賞しました。この全国発明表彰受賞は6年連続で、JFEスチール㈱発足以来10回目となります。JFEスチール㈱の開発した超大型コンテナ船用極厚高アレスト鋼板「ARRESTEX」が、公益財団法人 大河内記念会より、第66回(令和元年度)大河内記念賞を受賞しました。大河内記念賞は、生産工学上優れた独創的研究成果をあげ、学術の進歩と産業の発展に多大な貢献をした業績に与えられるもので、大河内賞の中で最上位に位置付けられています。鉄鋼業界からの記念賞受賞は、平成22年度のJFEスチール㈱の受賞以来9年ぶりです。また、第8回ものづくり日本大賞の製品・技術開発部門にて、JFEスチール㈱の高機能電磁鋼板の開発(受賞件名:「電気機器の省エネに貢献する省資源型Si傾斜磁性材料の開発」)が内閣総理大臣賞を受賞しました。内閣総理大臣賞は、各部門における最高位の賞です。JFEスチール㈱はものづくり日本大賞をこれまで8件受賞しており、内閣総理大臣賞は2件を受賞した前回(第7回)に続き、2回連続3件目です。 (2)エンジニアリング事業エンジニアリング事業では、「モノとサービスの融合で、他社に先駆け新たな価値を提供」という方針に基づき、研究開発を推進しています。当連結会計年度は、主力事業である環境、エネルギー、社会インフラ分野に加え、今後益々の発展が期待されているICT分野に重点的な投資を実施しました。具体的には、海外EPC向け環境プラント商品開発、AI技術を活用したプラントの最適操業と自動化、製作所や施工現場の省力化・効率化に関する技術等に取り組んでおります。さらに、開発のスピードアップや合理的な開発投資を目的に、国内外の大学や研究機関および他企業との連携・共同開発を推進しております。その一例として、前連結会計年度に開設したシンガポールの研究拠点では、次世代の廃棄物処理技術開発に加え、研究員を増員し、当該国の大学・研究機関と様々な分野における共同開発事業の探索・創出に向け、取り組みを加速しております。開発成果は社外からも高く評価されており、環境プラント分野において、「廃棄物焼却施設におけるボイラ腐食対策技術の確立と発電量増大」にて「日本エネルギー学会 進歩賞(技術部門)」を受賞しました。
FY2019|3,398 文字
5 【研究開発活動】当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、地球環境保全に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「技術開発会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。また、各事業会社において、AI・IoT・ビッグデータ等のデータサイエンス技術の活用を推進するための組織を設置し、またロボティクス技術を積極的に活用して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等にも積極的に取り組んでいます。当連結会計年度における研究開発費は37,271百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業34,066百万円、エンジニアリング事業3,204百万円であります。なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。 (1)鉄鋼事業鉄鋼事業では、10年先を見据えてお客様や社会のニーズを先取りした新商品・利用技術開発、世界最高水準の地球環境技術や省資源技術の開発を加速するとともに、プロセス革新による画期的新商品の創出と高品質商品製造技術の確立を強力に推進しております。以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。 <プロセス分野> JFEスチール㈱は、国立大学法人大阪大学と共同で、鉄鋼材料の溶接・接合に関する課題解決やメカニズム解明と、溶接・接合分野の新たなオープンイノベーションの創出を目的として、「JFEウエルディング協働研究所」(以下、「協働研究所」)を設立しました。鉄鋼という産業の基礎素材が有する魅力を最大限引き出すため、より深化した形で溶接・接合技術の技術開発を進める必要があると考え、今回これまでの連携をさらに強化した協働研究所の設立に合意しました。 また、鉄鋼材料の破壊・疲労に関する研究開発活動と、同分野の新たなイノベーションの創出を目的として、「大型破壊・疲労評価センター(JWI-CIF2)」をスチール研究所・千葉地区に開設しました。「JWI-CIF2」は、8,000トン引張試験機等の大型破壊、疲労破壊等の実験設備を多数備え、鉄鋼分野において国内では圧倒的な規模を誇る世界最大級の施設です。これにより、大型の鋼構造物の様々な研究試験をOne Stopで実行することを可能にし、試験対象の大型化への対応や研究効率の飛躍的な向上を実現します。 更に溶接・接合分野に関して、JFEスチール㈱は高施工性CO2アーク溶接技術「超狭開先J-STAR®溶接」を開発しました。この技術は「J-STAR®溶接」を活用し、溶接ノズル構造の最適化により、開先の断面積を従来の約半分まで低減できます。これにより、溶接変形抑制および溶接施工期間短縮を達成可能としました。この技術のメリットが高く評価された結果、熊本城天守閣復旧整備事業のうち、大天守6階鉄骨造の溶接組立箱形断面柱の各部溶接に採用されました。 <製品分野> 薄板分野においては、欧米系自動車メーカー向けにプレス成形性を飛躍的に向上させた高潤滑自動車用溶融亜鉛めっき(GI)鋼板「GI JAZ®」を開発し、西日本製鉄所において営業生産を開始しました。すでに量産している「JAZ®」と同様に、自動車メーカーの設計における車両構造やデザインの自由度の拡大、ならびにプレス加工工程における不良削減などの安定化に寄与します。 また、JFEスチール㈱のJFEトポロジー最適化技術が、スズキ㈱が発売した「スイフトスポーツ」に、部品形状の設計手法として採用されました。設計空間(当該部品を配置する空間)を車体の一部として組み込んで解析することで、車体全体の荷重伝達を考慮した正確な伝達計算が可能になり、少ない重量で車体の衝突安全性能を効率的に向上させる最適な部品形状を作成することができます。 更に、JFEスチール㈱が開発した1310MPa級高張力鋼板が、マツダ㈱の新型「MAZDA3」の車体骨格部品に冷間プレス成形用途として世界で初めて採用されました。冷間プレス成形による車体骨格部品の強度としては、世界最高レベルとなります。従来、1310MPa級高張力鋼板はロール成形などに加工方法が限定されバンパー部品などに適用が留まっていましたが、マツダ㈱と共同で技術開発に取り組み、プレス成形性、部品の寸法精度などの技術課題を解決したことにより車体骨格部品への採用が可能となりました。 2013年から神奈川県横浜市とともに、鉄鋼スラグ製品を用いた山下公園前海域の水質浄化の回復に関する共同研究を行ってまいりました。この共同研究は、生物付着基盤や底質改善の効果が期待される鉄鋼スラグ製品を沿岸域に配置し、海域が本来持っている生物による水質浄化能力の回復に向けた生物生息環境の改善手法を検討することを目的とし、「マリンブロック®」等を設置して約4年半にわたり調査しました。その結果、生物が棲みつくほど水質が改善される成果を得ることができました。共同研究は2018年3月に終了しましたが、この成果に基づき海の環境改善や賑わい創出を推進するための協力を継続してまいります。 <表彰> JFEスチール㈱が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、「CO2排出量削減に適した製鉄原料製造プロセス(Super-SINTER®)の開発」の成果が認められ、平成30年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。この賞は2016年度以来の受賞となります。また、JFEスチール㈱の開発したコンテナ船用「高アレスト鋼」が平成30年度全国発明表彰を受賞しました。この全国発明表彰受賞は5年連続で、JFEスチール㈱発足以来9回目となります。 JFEスチール㈱の開発した重貨物鉄道用高耐久熱処理レール「SP3」が、公益財団法人 大河内記念会より第65回(平成30年度)大河内記念技術賞を受賞しました。また、JFEスチール㈱が開発した「漏洩磁束法による鋼板微小凹凸表面探傷装置」が、一般社団法人機械振興協会から第53回機械振興賞 機械振興協会会長賞を受賞しました。JFEスチール㈱の機械振興賞の受賞は2年ぶり8回目となります。 (2)エンジニアリング事業エンジニアリング事業では、「モノとサービスの融合で、他社に先駆け新たな価値を提供」という方針に基づき、研究開発を推進しています。当連結会計年度は、主力事業である環境、エネルギー、社会インフラ分野に加え、今後益々の発展が期待されているICT分野に重点的な投資を実施しました。具体的には、廃棄物発電プラントの発電量最大化に関する技術、AI技術を活用したプラントの最適操業と自動化、製作所や施工現場の省力化・効率化に関する技術等に取り組んでおります。さらに、開発のスピードアップや合理的な開発投資を目的に、国内外の大学や研究機関および他企業との連携・共同開発を推進しております。その一例として、次世代の廃棄物処理技術の研究を目的としてシンガポールに研究拠点を開設するなど、積極的に取り組んでおります。開発成果は社外からも高く評価されており、環境プラント分野においては、対向流燃焼方式を適用した廃棄物焼却炉が「第44回優秀環境装置表彰 経済産業大臣賞」を受賞しました。また、エネルギー分野においてはBOG再液化設備「MiReLiS®」(ミレリス)にて「地球温暖化防止活動環境大臣表彰」を、微粒化技術を適用した都市ガス熱量調整設備「AtoMS®」(アトムス)にて「日本機械学会賞(技術)」をそれぞれ受賞しました。
FY2018|3,485 文字
5【研究開発活動】当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、地球環境保全に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。 グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「技術開発会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。また、各事業会社において、AI・IoT・ビッグデータ等のデータサイエンス技術の活用を推進するための部門横断組織を設置し、またロボティクス技術を積極的に活用して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等にも積極的に取り組んでいます。当連結会計年度における研究開発費は34,714百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業31,372百万円、エンジニアリング事業3,341百万円であります。なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。 (1) 鉄鋼事業鉄鋼事業では、10年先を見据えてお客様や社会のニーズを先取りした新商品・利用技術開発、世界最高水準の地球環境技術や省資源技術の開発を加速するとともに、プロセス革新による画期的新商品の創出と高品質商品製造技術の確立を強力に推進しております。以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。 <プロセス分野>高炉分野では、フェロコークス製造のパイロットプラントを西日本製鉄所(福山地区)に建設することを決定しました。フェロコークスは、一般炭と低品位鉄鉱石の混合成型・乾留により製造され、高炉内の還元効率を飛躍的に高めることができます。このパイロットプラントは、製造量300トン/日の中規模製造設備で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」)による「環境調和型製鉄プロセス技術の開発/フェロコークス活用製銑プロセス技術開発」プロジェクトとして建設します。今後、実証研究を経て、5年後を目途に製銑プロセスのエネルギー消費量の約10%を削減する技術の確立を目指します。また、㈱神戸製鋼所および新日鐵住金㈱等とともに、NEDOによる「環境調和型製鉄プロセス技術の開発/水素還元活用製鉄プロセス技術開発(PhaseI STEP2)」プロジェクトとして、新日鐵住金㈱の君津製鉄所構内に試験高炉を建設し、水素を活用した高炉からのCO2排出削減技術と高炉ガスからのCO2分離回収技術の検証試験を完了しました。10年後を目途に高炉からのCO2排出量を約30%削減する技術確立と実機1号機の実用化、30年後目途の普及を目指します。JFEスチール㈱の設備メンテナンスにおいて、AI技術を全社導入することを決定しました。国内業界で初めての取り組みになります。ものづくり企業の競争力の維持・向上のため、技能伝承、生産性向上等攻守両面で、AI技術等のデータサイエンス活用は必要不可欠と考えています。急速な発展を遂げているデータサイエンス技術に関して、「データサイエンスプロジェクト部」を新設し、更なる新技術の開発と実用化を進めてまいります。 <製品分野>薄板分野では、自動車部品用の高い加工性を有する高強度鋼板を「JEFORMA®」(JFE Excellent FORMAbility)として、国内業界で初めてシリーズ化しました。「JEFORMA®」シリーズは、お客様のニーズに応えるべく、伸びの高いType1、伸びおよび伸びフランジ性が高いType2、更に伸びが高いType3の3タイプで、それぞれ590~1180MPa級までラインナップしました。また、CO2排出量削減や燃費向上を目的とした車体軽量化のニーズに対し、「JFEトポロジー最適化技術」を開発いたしました。与えられた設計空間から要求特性に対し、最も効率のよい材料のレイアウトを求めることができます。今後もEVI(Early Vendor Involvement)活動をさらに深め、お客様との協業に注力し、お客様のニーズに合ったソリューションを提案することで、最先端の車体開発に貢献してまいります。5%アルミ-亜鉛系高耐食溶融めっき鋼板「エコガルNeo®」を開発し、生産を開始しました。GI同等の溶接性・加工性を維持しながら、表面外観を向上させた鋼板であり、強度は490MPa級まで製造可能です。これにより、電機・建材・自動車向けに、幅広く適用できる商品ラインナップとなりました。鋼材分野では、ケミカルタンカーのカーゴタンクに使用可能な、二相ステンレス鋼「SUS329J3L」を合せ材とする「TMCP型SUS329J3Lステンレスクラッド鋼板」を開発し、一般財団法人日本海事協会より製造法承認を取得しました。圧延時にTMCP技術を適用することで、優れた耐食性と機械的特性を両立させております。今後とも、高機能・高品質な鋼材の供給を通じて、船舶の更なる経済性、安全性、信頼性向上に努めてまいります。建材分野では、JFEシビル㈱および㈱ブリヂストンとともに、新たな制振装置「間柱型粘弾性ダンパー」を共同開発しました。風揺れ等の微小振動、大地震による建物の揺れや変形を低減し、建物の構造種別に関わらず適用が可能です。今後も安心・安全を支える制振・免震商品ならびに利用技術の開発を通じて、社会に貢献してまいります。 <表彰>JFEスチール㈱が世界で初めて実用化に成功した「CO2排出量削減に適した製鉄原料製造プロセス(Super-SINTER®)の開発」が第7回ものづくり日本大賞の製造・生産プロセス部門で内閣総理大臣賞を受賞、また、「革新的構造・施工技術『構造アレスト』で実現した安全・環境性能に優れるメガコンテナ船」が同じく製品・技術開発部門で内閣総理大臣賞を、ジャパン マリンユナイテッド㈱および㈱IHIとともに受賞しました。この他、「省エネと衝突性能を両立させた1.5ギガパスカル級自動車用冷延鋼板」が、一般財団法人省エネルギーセンターから、平成29年度省エネ大賞製品・ビジネスモデル部門の資源エネルギー庁長官賞を受賞しました。当社が世界で初めて開発・実用化した省資源型Si傾斜磁性材料「JNHFコア®」および「JNSFコア®」が、公益財団法人新技術開発財団から「第49回市村産業賞貢献賞」を受賞しました。また、「高靱性電縫鋼管マイティーシーム®の超音波オンライン検査技術」が、平成29年度全国発明表彰文部科学大臣賞を受賞しました。 (2) エンジニアリング事業エンジニアリング事業では、「モノとサービスの融合で、他社に先駆け新たな価値を提供」という方針に基づき、研究開発を推進しています。当連結会計年度は、主力事業である環境、エネルギー分野に加え、今後益々の発展が期待されているICT分野に重点的な投資を実施しました。具体的には、環境プラントの発電量最大化に関する技術、AI技術を用いた廃棄物発電施設の運転・管理、製作所や施工現場の省力化・効率化に関する技術等に取り組んでおります。さらに、各種プラントの統合監視センター「グローバルリモートセンター(以下、GRC)」を開設し、商品ごとに実施している各種遠隔監視サービスをGRCに集約するとともに、AI・ビッグデータを活用しプラント運転の負荷低減や自動化を行い、プラント運営のソリューションを全世界に提供する体制を構築しました。開発成果は社外からも高く評価されており、環境プラント分野においては、対向流燃焼を適用した低NOx型ストーカ式焼却炉の開発にて「日本エネルギー学会学会賞(技術部門)」を受賞しました。また、アクア分野においては断層用水道鋼管にて「グッドデザイン賞」を、エネルギー分野においてはBOG再液化設備「MiReLiS®」(ミレリス)にて「日本ガス協会技術賞」及び「省エネルギーセンター省エネ大賞経済産業大臣賞」をそれぞれ受賞しました。
FY2017|3,747 文字
6【研究開発活動】当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、地球環境保全に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「グループ技術開発会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。また、各事業会社において、IoTやビッグデータの活用を推進するための部門横断組織を設置して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等にも積極的に取り組んでいます。当連結会計年度における研究開発費は35,536百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業33,055百万円、エンジニアリング事業2,481百万円であります。なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。 (1) 鉄鋼事業鉄鋼事業では、10年先を見据えてお客様や社会のニーズを先取りした新商品・利用技術開発、世界最高水準の地球環境技術や省資源技術の開発を加速するとともに、プロセス革新による画期的新商品の創出と高品質商品製造技術の確立を強力に推進しております。以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。 <プロセス分野>高炉プロセスでは、CO2大幅削減に向け、製鉄原料であるコークスの技術革新を進めています。低品位の石炭と鉄鉱石を混ぜ合わせた「フェロコークス」を還元反応を促進する触媒として利用することにより、鉄鉱石の還元速度を高め、通常使用するコークス量を低減することができます。コークス使用量の約10%をフェロコークスに置き換えた実証実験においてエネルギー削減効果を確認できており、引き続き実用化に向けた検討を進めていく予定です。圧延プロセスでは、お客様からの更なる品質向上に対するご要望にお応えするため、「スマート制御技術」を活用した世界初のインテリジェント制御熱延スキンパス設備を自社開発し、世界最速の圧延速度を実現しました。「スマート制御技術」とは、IT技術を最大限に活用し、Cyber(仮想世界=各種シミュレーション)とPhysical(現実世界=各種センサーデータ)を融合させた、高度な制御を行う技術のことです。新スキンパスでは、板厚や形状ならびに通板時の蛇行など多くの変数を最適制御することで、世界最速での自動運転による圧延を可能にし、能率向上と品質安定化を同時に実現することに成功しております。高度情報化により生み出された質的・量的に膨大なデジタルデータを高速処理・連携活用するビッグデータ解析、センシング・モニタリング技術とデバイス開発に関し、引き続き戦略的な研究開発と実用化を推進してまいります。 <製品分野>薄板分野では、1470MPa級冷延ハイテンを新たに開発し、耐衝撃用部品として高い強度が要求される、バンパーレインフォースメントとして実用化しました。常温で成形する自動車部品の強度としては、世界最高強度となります。高強度化するほど成形加工が難しく、またプレス成形後に脆性割れの懸念も出てくることから、これまでは主に980MPa級ハイテンが使用されていました。今回、西日本製鉄所の水焼き入れ方式の連続焼鈍プロセスを活用し、合金の添加を極限まで低減することで高強度と割れ防止を両立させることに成功しました。本鋼板は、車体軽量化によるCO2削減に寄与することが評価され、第13回エコプロダクツ大賞の経済産業大臣賞を受賞しました。当社およびドイツ最大の鉄鋼メーカーであるティッセン・クルップ・スチール・ヨーロッパ,AG(以下、「tkSE」)は、ハイテン材を含めた自動車部品用鋼板の新成形技術のクロスライセンス契約を締結しました。これにより、当社が開発した「CP-F™」(Closed Profile - Forming)およびtkSEが開発した「T3」(thyssenkrupp Tailored Tubes)の組合せによる新しい成形技術を、自動車メーカーや自動車部品メーカーに対してグローバルに提案してまいります。 鋼材分野では、超大型コンテナ船に適用可能な、世界最大厚となる板厚100㎜の降伏応力460MPa級高アレスト鋼を新開発しました。超極厚鋼板においては世界で初めて、溶接性とアレスト性能の両立を実現しました。加熱温度や圧延温度を精緻に制御するTMCP(熱加工制御)技術の発展はもちろん、圧延時に組織中の結晶粒の向きを調整しやすいような成分設計とし、き裂の伝播に抵抗する向きの結晶粒比率を高める独自の技術により、板厚100mmでも高アレスト性能の確保を可能としました。ジャパン マリンユナイテッド㈱と共同で、「狭開先アーク溶接技術」を開発しました。開先とは、鋼板を突き合わせて溶接する際の斜めにカットされた溝のことで、板厚が大きくなるほど開先の断面積が大きくなり、溶接工数が増えてしまいます。溶接時に飛散するスパッタが少なく、かつアークの指向性に優れた、当社のJ-STAR®溶接を用いることで、板厚の大きな鋼板であっても、従来と同等の溶接工数で溶接できるようになり、船体の製造効率向上に大きく寄与します。 建材分野では、JFEシビル㈱と共同で、座屈拘束ブレース「J-ROD®ブレース」を新たに開発しました。ブレースとは、一般的に柱や梁の間に斜めに設置し、鉄骨造の建築物に強度を持たせる部材のことです。座屈拘束ブレースは柱や梁から伝わる圧縮力を負担する芯材と、圧縮時に芯材の座屈を防止するための補剛材で構成されています。JFEシビル㈱が、芯材および補剛材ともに鋼管を用いた「二重鋼管座屈補剛ブレース」を製造・販売していますが、今回開発した「J-ROD®ブレース」は芯材に棒鋼を使用することで外径を2~3割小さくし、非常にスリムな外観を実現しました。このため、建物の外壁、窓面に取り付けるブレースとして、デザイン性を更に高めた形状となっております。 <表彰>当社が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、当社が世界で初めて開発・実用化した省資源型Si傾斜磁性材料「JNHFコア®」、「JNSFコア®」が、公益財団法人新技術開発財団から「第49回市村産業賞貢献賞」を受賞しました。また、「表面処理鋼板の非接触通板制御装置」が、一般財団法人機械振興協会の「第14回新機械振興賞 機械振興協会会長賞」を受賞しております。当社の新機械振興賞受賞は昨年の会長賞に続き、4年連続6回目となります。そのほか、「新たな潤滑制御による冷間タンデムミルの高速圧延技術の開発」の成果が認められ、平成28年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。当社の同賞受賞は4年連続となります。また、従来に比べて高い成形性を有する「プレス成形性に優れた590~980MPa級GA鋼板」が、公益社団法人発明協会から、「平成28年度全国発明表彰 発明賞」を受賞しました。当社の全国発明表彰受賞は3年連続で、当社発足以来7回目となります。更に、リサイクル資材「マリンストーン®」を用いた海域環境改善技術が「2016年(第26回)日経地球環境技術賞」の「優秀賞」を受賞しました。 (2) エンジニアリング事業エンジニアリング事業では、「新商品創出と既存商品競争力強化」という方針に基づき、研究開発を推進しています。当連結会計年度は、主力事業である環境、エネルギー分野に加え、将来の成長が期待されている医療分野、ICT分野に重点的な投資を実施しました。具体的には、環境プラントの発電量最大化に関する技術、正浸透(FO)膜を用いた海水淡水化技術、がん検査用PETシステムの適用領域拡大、AI技術を用いた廃棄物発電施設の運転・管理等に取り組んでおります。当連結会計年度の主な成果として、環境プラント分野においては、対向流燃焼を適用した低NOx型ストーカ式焼却炉の開発にて「日本燃焼学会技術賞」を受賞しました。さらに、廃棄物焼却施設のボイラークリーニングシステムのラインナップを拡充した他、遠隔操業支援システム「JFEハイパーリモート®」を強化し、安定操業を維持しながら有利な売電サービスを提供することを可能としました。また、エネルギー分野においては、新型熱量調整装置「AtoMS®」(アトムス)で「日本ガス協会技術大賞」、高圧マイクロ減圧設備「MiReMo®」(ミレモ)にて「日本ガス協会技術賞」受賞を果たしております。
FY2016|4,305 文字
6【研究開発活動】当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、地球環境保全に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「グループ技術開発会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。当連結会計年度における研究開発費は35,153百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業32,588百万円、エンジニアリング事業2,564百万円であります。また、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。 (1) 鉄鋼事業鉄鋼事業では、10年先を見据えてお客様や社会のニーズを先取りした新商品・利用技術開発、世界最高水準の地球環境技術や省資源技術の開発を加速するとともに、プロセス革新による画期的新商品の創出と高品質商品製造技術の確立を強力に推進しております。以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。 <プロセス分野>高炉プロセスにおいて、コークスと鉄鉱石を混合して装入することにより投入原料を節約できる操業方法を、実証実験を経て東日本製鉄所(千葉地区)第6高炉にて実施しておりますが、このたび、離散要素法(DEM)による数値シミュレーションにて、本装入方法によるコークスや鉄鉱石の粒子の挙動を計算し、鉄鉱石中のコークスの分散挙動の再現に成功いたしました。DEMは、高炉内の粒状体挙動の計算精度に優れており、今後は、混合コークスの分散挙動だけでなく、高炉内での原料降下挙動にも適用し、高炉操業の最適化と安定化に活用してまいります。製鋼プロセスの溶銑予備処理工程において、新たに「脱硫剤投射法」を開発し、東日本製鉄所および西日本製鉄所の製鋼工場内の機械撹拌式溶銑脱硫設備に導入しました。また、脱硫処理後のスラグを再利用する「スラグホットリサイクル法」を開発、実用化しました。これらの技術により、脱硫効率の向上、および環境負荷低減に寄与します。 <製品分野>薄板分野では、優れた伸び特性と穴広げ性を両立する980MPa級の高張力冷延鋼板を開発しました。独自の熱処理技術により、金属組織中に軟質相と硬質相に加えて、中間的な硬度の相を分散し、組織中の硬度差を低減しました。合金化溶融亜鉛鍍金鋼板に続き、冷延鋼板でも高伸びと高穴広げを両立した980MPa級ハイテンがラインナップに加わりました。また、プレス加工が難しい部品に適用できる、新しい成形技術を開発、通常二段階でのプレス加工のうち、一工程目の形状を最適形状に設計することで、難形状部の加工を可能にしました。一例として、エアスポイラーを一体で成形し、デザイン性が高く、かつ低コストのバックドアの試作に成功しました。鋼材分野では、ジャパン マリンユナイテッド㈱と共同で大型コンテナ船向け構造アレスト技術(脆性き裂伝播停止技術)を開発し、構造アレスト技術として世界で初めてジャパン マリンユナイテッド㈱呉事業所で建造中の14,000TEU級大型コンテナ船に適用しました。本技術の開発によって、当社は厚鋼板が使用される大型コンテナ船のアレスト設計に対して、高アレスト鋼を適用する材料アレスト技術と構造アレスト技術の両方のラインナップを有することとなりました。また、三菱重工船舶海洋㈱と共同で、船舶衝突時の安全性を高めることができる高強度厚鋼板「KA32-HD20」および「KD32-HD20」(商品名:「 SAFEED セイフィード TM」)を新たに開発し、飯野海運㈱が所有するアストモスエネルギー㈱向けLPG(液化石油ガス)運搬船に、世界で初めて適用しました。また、当社が開発した建築構造用低降伏比780N/mm2級高張力厚鋼板「HBL®630-L」が、新宿東宝ビル新築工事の溶接4面BOX柱材として採用されました。「HBL®630-L」は、当社オンリーワン技術である厚板オンライン熱処理設備「HOP®」を適用し、工期の大幅短縮を実現しました。また、㈱セイケイと共同で開発した建築構造用高性能590N/mm2級冷間プレス成形角形鋼管「PコラムG440」が、「ダイワロイネットホテル銀座」の柱材として採用されました。「PコラムG440」の原板である「HBL®440」は先端技術であるオンライン加速冷却装置「Super-OLAC®」を活用して、従来必要だった複数回の熱処理工程を省略し、製造工期の大幅な短縮を実現しました。ノルウェーの石油ガス会社であるSTATOIL社が北海で展開するGullfaks Rimfaksdalen(ガルファクス リムファクスダレン) Project向けのパイプライン敷設には、Pipe-In-Pipe (二重管)方式、かつリール工法が採用される予定です。外管に当社が開発した電縫鋼管「マイティーシーム®」1,400トン、内管にラインパイプ用13%クロム継目無鋼管800トンが採用され、伊藤忠丸紅鉄鋼㈱と共同で受注し、「マイティーシーム®」を東日本製鉄所(京浜地区)で、13%クロム継目無鋼管を知多製造所で製造し、平成27年6月に出荷しました。鉄粉分野では、東日本製鉄所(千葉地区)鉄粉工場において、自動車用焼結機械部品向け高機能鉄粉商品である「クリーンミックス®」を製造するNo.2クリーンミックス製造設備を稼働させました。平成元年に販売を開始した本製品は、黒鉛粉や銅粉を特殊な処理によって鉄粉に付着させたプレミックス鉄粉で、商品ラインナップの拡充によるお客様からの高評価と世界の自動車生産台数の増加に伴う焼結部品市場の伸長もあり、今後も需要は増加することが見込まれます。燃料電池自動車の販売開始や東京五輪選手村の水素タウン構想など、クリーンエネルギー源としての水素の重要性は増しつつあります。このたび、世界最高圧となる100MPa、従来比100倍以上の高圧水素ガス透過試験装置を開発し、高圧水素ガス環境下において、水素が鋼材内へ侵入・拡散する速度の計測および、鋼材内を透過する水素量の検出が可能となりました。得られるデータは、JFEコンテイナー㈱、三菱レイヨン㈱と共同開発中の水素ステーション用Type2蓄圧器をはじめとする各種水素社会用インフラに適した鋼材開発に適用されます。 <環境分野>鉄鋼スラグ製品である水・底質浄化資材「マリンストーン®」が、このたび広島県が実施する「福山港 港湾海域環境創造工事(内港地区)」における底質改善材として採用されました。平成27年11月から平成28年3月までの期間で、福山港内港の約66,000㎡にわたり本製品が敷設されました。本製品は、閉鎖性海域の環境改善に寄与することが評価され、「第12回エコプロダクツ大賞」(主催:エコプロダクツ大賞推進協議会)の農林水産大臣賞(大賞)を受賞しました。今後も、地球環境保全に貢献する技術開発に努めてまいります。 <表彰>当社が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、溶接部性能を飛躍的に向上させた電縫鋼管「マイティーシーム®」が、公益財団法人大河内記念会より「第62回大河内記念技術賞」を受賞しました。大河内賞は6年連続での受賞になります。また、世界で初めて開発・実用化した、厚鋼板の新冷却設備「Super-CR(Super - Controlled Rolling)」が、公益財団法人新技術開発財団から「第48回市村産業賞貢献賞」を受賞しました。更に、炭化水素燃料バーナーを利用したステンレス鋼用クロム鉱石溶融還元プロセスが、「第42回岩谷直治記念賞」を受賞しました。平成27年度は、大河内賞、市村産業賞、岩谷直治記念賞の同時受賞となりました。3賞同時受賞は、平成24年度以来3度目となります。そのほか、西日本製鉄所の大径鋼管製造設備「NEOプレス」を活用した「プレスベンド鋼管の高能率製造プロセス」が、一般財団法人機械振興協会の「第13回新機械振興賞 機械振興協会会長賞」を受賞しました。当社の新機械振興賞受賞は昨年の経済産業大臣賞に続き、3年連続5回目となります。そのほか、「建築構造用高性能鋼を用いた巨大地震対策技術の開発」の成果が認められ、平成27年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞いたしました。当社の同賞受賞は3年連続となります。また、従来に比べて高い耐座屈性能を有する「耐震ラインパイプHIPER®」が、公益社団法人発明協会から、「平成27年度全国発明表彰 発明賞」を受賞しました。当社の全国発明表彰受賞は、昨年の経済産業大臣発明賞に続き2年連続で、通算6回目となります。 (2) エンジニアリング事業エンジニアリング事業では、「新商品創出と既存商品競争力強化」という方針に基づき、研究開発を推進しています。当連結会計年度は、主力事業である環境・エネルギー分野に加え、将来の成長が期待されている医療分野やICT技術の活用に重点的な投資を実施しました。具体的には、環境プラントの発電量最大化に資する技術、その発電を活用した「ゼロ・エミッションシステム」によるごみ収集、水道スマートメータの有効性検証等に取り組んでおります。当連結会計年度の主な成果として、環境プラント分野においては排ガス中の水銀除去システムおよびボイラークリーニングシステム、エネルギー分野においてはLNGタンクで発生するBOG(ボイルオフガス)の再液化設備および製油所等の防爆エリアで使用可能なスマートフォン等、続々と市場投入しております。また、国土強靭化に資する技術として、ガス導管ネットワークの高速耐震診断プログラム「NeEX」が「日本ガス協会技術賞」を東日本大震災からの復興に貢献している「ハイブリッド防潮堤」が「国土技術開発優秀賞」をそれぞれ受賞いたしました。