研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-03 | - | 573 |
| 2024-03 | - | 529 |
| 2023-03 | - | 334 |
| 2022-03 | - | 272 |
| 2021-03 | - | 693 |
研究開発活動(本文)
FY2025|6,358 文字
6【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげています。 技術開発本部では、①既存事業と新規事業創出に資する課題形成と解決、②足元/将来にわたり競争力の源泉となる技術の強化、③技術資産の掛け合わせによる総合力の発揮、の3点に注力します。技術力を軸に、2030年代以降の挑戦に資する技術分野の取組みを強化し、技術起点での新たなアイデアやビジネス機会を持続的に創出していきます。また、清水建設(株)及びシーカ・ジャパン(株)と共同で、構成材料における産業副産物の活用率を最大96%(重量比)まで高められる資源循環促進型のジオポリマーコンクリートの配合技術を開発しました。本技術では、ジオポリマーの活性フィラー(粉体)に利用する高炉スラグ微粉末やフライアッシュのみならず、コンクリートの骨材と練混ぜ水にも産業副産物を有効活用することで、産業副産物の活用率を最大化しています。同時に、ジオポリマーの課題とされてきた施工性や硬化後の強度発現についても、一般的なコンクリートと同等の性能を確保することに成功しました。 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は435億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行っている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用66億円が含まれています。主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。 [鉄鋼アルミ]鉄鋼アルミでは、特殊鋼線材、自動車用高強度鋼、ディスク用アルミ板などの戦略製品の差別化による拡販と生産性・歩留まり向上による収益改善のための技術開発に注力しています。また、CO₂排出量削減に直接貢献できる技術開発にも引き続き取り組んでいます。なお、当連結会計年度における研究開発費は72億円であります。 [素形材]素形材では、輸送機や半導体分野を中心に、特徴ある製品開発や生産技術開発に取り組んでいます。あわせてカーボンニュートラルや革新的ものづくりなど、将来の価値創造に向けた研究開発も推進しています。なお、当連結会計年度における研究開発費は22億円であります。 [溶接]溶接では、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、お客様の溶接に関する課題解決を図ります。溶接材料と溶接プロセス・溶接機器・ロボットによる「溶接ソリューション」を提供する溶接総合メーカとして、特徴ある製品の開発に注力しています。溶接システムでは、2018年にコベルコROBOTiX(株)よりREGARCTM搭載石松TMを建築鉄骨市場に投入し、その低スパッタ性と能率向上効果に対して高い評価を頂いてきました。この度、タッチパネルを採用した新型コントローラに、New REGARCTMを搭載したデジタル溶接電源SENSARCTMRA500と本プロセス専用ワイヤであるFAMILIARC™ MG-56R(A)を組み合わせたNew REGARCTM搭載石松TMを新たに商品化し、初号機をお客様に納入しました。更なる低スパッタ化と高能率化を実現するとともに、操作性も大きく向上しており、溶接技能者不足を課題としている建築鉄骨市場に対して、今後、技量レスや生産性向上、品質安定化を果たす溶接ソリューションとして提案していきます。また、大型仕口部材の溶接工程を自動化する「反転仕口・コア兼用溶接ロボットシステム」を新たに開発しました。近年、首都圏や都市部の再開発物件、データセンターや大規模倉庫などでは、構造部材の大型化が進み、柱-梁の交差部である仕口部材も大型化しています。一方、鉄骨ファブリケータでは、溶接技能者不足の中、ロボット溶接の適用拡大が望まれており、仕口部もその対象となっていました。当社は既に広く導入頂いている鉄骨溶接向けロボットシステムや溶接総合メーカとしてのノウハウを活かし、大型サイズにも適用可能な仕口溶接ロボットシステムを開発しました。本システムは、ウェブのすみ肉溶接にも当社独自のREGARCTMプロセスを適用し高品質で高能率な溶接を実現しています。本システムの初号機を2025年初めに納入しお客様の生産に寄与しています。今後も、お客様の溶接工程の自動化ニーズ・社会課題の解決に貢献すべく活動していきます。なお、当連結会計年度における研究開発費は42億円であります。 [機械]機械では、2030年に向けコアビジネスをより強化するとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向けた新規事業を創出・育成し、機械事業部門として取り組むべき社会課題に挑戦することで、全社の安定収益の最大の柱となることを目指します。回転機・機器関連分野では、高砂製作所において、液化水素用オープンラック式気化器(Open Rack Vaporizer、以下、ORV)※1を新たに設置し、気化性能の実証試験(以下、本実証)を2025年3月に開始することを決定しました。大規模液化水素気化器の候補であるORVで実際の液化水素を使用しての実証は、世界的にも先進的な取組みとなります。本実証では、当社グループが提案する「ハイブリッド型水素ガス供給システム」の実証試験を発展させる位置付けとして、液化水素気化器の製品ラインナップを以下3つのタイプへと拡充し、水素エネルギーの社会実装に向け、様々なニーズや陸上での使用から船舶への搭載といった使用環境での液化水素利用への対応を目指します。①中間媒体式気化器(Intermediate Fluid Vaporizer、以下、IFV):液化水素による気化実証試験は2023年3月に完了。②マイクロチャネル熱交換器(Diffusion-bonded Compact Heat Exchanger、以下、DCHE):液化水素による気化実証試験は2024年3月に完了。③オープンラック式気化器(ORV):2025年3月から液化水素による気化実証を開始(本実証)。なお、本実証では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業において、2023年3月末に完了した「液化水素冷熱の利用を可能とする中間媒体式液体水素気化器の開発」の液化水素供給設備を利用することにより、短い準備期間で液化水素用ORVの伝熱挙動や気化性能の確認を実現します。産業機械関連分野では、燃料電池用セパレータを代表とする燃料電池や水電解装置の構成部品に特化したPVD※2コーティングの受託事業に参入します。1986年からPVD事業を展開してきた当社は、600台以上の装置をグローバルに供給してPVD技術の普及に貢献して参りましたが、今後はこれまで培った技術を燃料電池や水電解装置という新たな分野に応用し、水素利活用の発展に貢献します。燃料電池や水電解装置は、セルを数十~数百枚積み重ねて構成されます。セルを構成する各部品の耐久性や電気的特性向上のためにPVDコーティングが近年注目されており、生産性の高いインライン型PVD装置※3が求められています。当社は本装置を導入し受託事業に参入することで、付加価値の高いPVDコーティングを低コストでお客様に提供することを目指しています。また、次世代の電池として期待される全固体電池※4の開発を手掛けるLASAGNA.ONE INC※5(所在地 : 米国カリフォルニア州・サンノゼ、以下、LO社)に資本参加しました。LO社の全固体電池は、シンプルな構造による電池セルの高電圧化、急速充電、広い温度範囲での安定作動などの特徴を有し、2023年には単セル構造での400Vの電池実証に成功しました。これを足掛かりに新たな資金調達のもと、将来の量産を見据えた新規設備投資により革新的な全固体電池の開発を加速させる計画です。また、分析・試験技術分野では、水素環境下の材料評価、新型二次電池の試作・評価、材料リサイクル等、グリーントランスフォーメーションに寄与する技術開発を進めています。また、ターゲット材料・半導体ウェハ検査装置分野に関しては、高移動度酸化物ターゲット材料の用途拡大や、半導体ウェハ向け検査・測定装置の高精度、高機能化のための開発にも取り組んでいます。なお、当連結会計年度における研究開発費は62億円であります。 ※1 ORVは、世界中のLNG受入基地において、海水を熱源とした主力のLNG気化器として使用されており、当社ORVは40年以上の実績と高い信頼性を有しています。 ※2 PVD(Physical Vapor Deposition)は、物理蒸着と呼ばれる薄膜コーティング技術の総称です。固体材料を真空中で気化もしくはプラズマ化して対象物にコーティングするプロセスで、形成される薄膜は密着性が高く緻密であることが特徴です。 ※3 PVDコーティング装置の形態の一つで、真空引き、エッチング、コーティング、大気解放の役割を持つ複数の炉を直列に繋げた構成になっており、装置に投入された対象物は、一つの処理が終わると次の炉に自動搬送されます。生産性の高さが特徴で、サイクルタイムは数分程度です。 ※4 従来型の液系電池は正極、負極、これらを隔てるセパレータと電解液(電解液+電解質塩)で構成されていますが、電解液を固体材料に置き換え、構成材の全てを固体とした電池が「全固体電池」です。出力(電気自動車では走行距離)、寿命、安全性等の点で、電解液を使用する電池を超える特性を持つことが期待されていますが、実用化に向けては克服すべき様々な課題が存在しています。 ※5 同社は、シリコンバレーに本社を構え、全固体電池の開発・製造を行うスタートアップです。全固体電池の強みを最大限に活かし、従来のリチウムイオン電池では実現が難しい電池構造や特性の追求に取り組んでいます。固体内におけるイオンの動きを活用することで、数分レベルの急速充電や広範な温度範囲における性能の安定性が期待されます。 [エンジニアリング]エンジニアリングでは、循環型社会、脱炭素社会の実現に向け、将来の成長が見込まれる分野における独自プロセス・技術の開発、更なる差別化、競争力強化に向けた開発を推進しています。還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とするMIDREX NG™に加え、天然ガスを最大100%まで柔軟に水素に置き換えることが出来るMIDREX Flex™や、水素を100%還元剤として用いるMIDREX H2™の競争力維持・強化に向けた開発を継続しています。水処理関連分野では、下水汚泥を固形燃料化する「湿式炭化」の実証実験を富士市西部浄化センターで行い、日本下水道事業団が定める新技術Ⅰ類に選定されました。湿式炭化では、汚泥を低温かつ湿式状態で炭化することで固形燃料化に要するエネルギーの大幅削減が可能となります。今後は下水汚泥のメタン発酵と本技術を組み合わせて導入することにより、下水処理におけるカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。廃棄物処理関連分野では、廃プラスチックのガス化及びメタノール化に関する開発を継続しています。これまで廃棄されていたプラスチックについて、ケミカルリサイクルによる資源循環システムの構築を目指します。水素事業では、グリーン水素需要の高まりを見据え、水電解式水素発生装置の大型化や次世代技術の開発を推進しています。水素の普及拡大及び低炭素化社会の実現に向け、水電解式水素発生装置の新商品開発に取り組んでいきます。なお、当連結会計年度における研究開発費は38億円であります。 [建設機械]建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーの活用により「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。また、カーボンニュートラルに向けた取組みの一環としてゼロエミッション建機の開発に取り組んでいます。ショベルでは、コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)は、燃料電池ショベルのプロトタイプ機を開発中であり、実用化に向けた取組みを進めています。2024年5月22日には幕張メッセで開催された「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO)」にプロトタイプ機を展示、水素を燃料に稼働するデモを初めて社外公開しました。また、コベルコ建機が、(株)冨島建設、鹿島建設(株)と取り組んだ、土砂災害対策工事現場での「K-DIVE®」を活用した重機遠隔操作の実用化検証が、一般社団法人日本建設機械施工協会が主催する「日本建設機械施工大賞部門 優秀賞」を受賞しました。また、コベルコ建機は、燃料電池ショベルの開発を加速するため、2025年2月に当社の高砂製作所に水素燃料電池ショベルの高圧水素充填設備の整備を完了し、水素燃料電池ショベル・プロトタイプ機に水素充填できることを確認しました。コベルコ建機の水素燃料電池ショベル・プロトタイプ機は、すでに広島事業所にて基礎評価を完了しています。今後は、2026年度に国内で行われる実証実験での活用に向けて、2025年3月以降、高砂製作所にて連続掘削作業など本格稼働評価を行い、水素燃料電池ショベルの現場導入に向けた取組みを推進していきます。クレーンでは、コベルコ建機は、Autodesk社製3D-CADのアドインソフトとして開発した、クレーン施工計画策定支援ソフト「K-D2 PLANNER®」に、コベルコ建機と(株)タダノのクレーンに加えて、新たに(株)加藤製作所と住友重機械建機クレーン(株)のクレーンを標準搭載しました。2社モデルを追加搭載したことにより、同社製クレーンを利用する現場において「K-D2 PLANNER®」を利用出来るようになりました。これにより、国が推進する働き方改革や現場の安全性・生産性向上へ貢献します。また、コベルコ建機は、ドローンを活用した移動式クレーンの点検ソリューション「K-AIR REAL」(ケイ・エア・リアル)を開発し、2024年5月末より提供を開始しました。クローラクレーンはブームを立ち上げると数十メートル以上になり、通常は地上にブームを伏せて点検を実施します。またブームを地上に伏せるスペースのない狭隘な現場では、双眼鏡で確認する手法が一般的ですが、見えない部分が多いという課題があり、本課題を解決するため、「K-AIR REAL」を開発しました。ドローンの自動飛行機能を活用し、確実に狙った場所を撮影でき、撮影予定の画角やアングルを3Dシミュレーションシステム上で事前に確認できるため、高所の点検作業を短時間で行うことができます。なお、当連結会計年度における研究開発費は129億円であります。 [電力]電力では、発電所設備の予防保全および低炭素化等に関する研究開発を行っています。なお、当連結会計年度における研究開発費は1億円であります。 [その他]上記外の事業セグメントに係る当連結会計年度における研究開発費は0億円であります。
FY2024|11,315 文字
6【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また、拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげています。 当社グループでは、2023年3月末に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)助成事業の大規模水素エネルギー利用技術開発プロジェクトとして2022年3月に採択された「液化水素冷熱の利用を可能とする中間媒体式液体水素気化器の開発」(以下、本事業)において、運転圧力1MPa以下での実証試験を予定通どおり完了しました。本事業では、液化天然ガス気化器で実績のある中間媒体式気化器※1の要素技術をベースに、CO2排出を冷熱回収の形で抑制する冷熱回収型液化水素気化器を採用しました。この実証試験において、実用規模では世界で初めて安定した気化性能及び冷熱回収が可能であることが確認できました。また、水素発電において求められる臨界圧(約1.3MPa)以上での課題点の抽出・検証を行うために、NEDOによる「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/(ロ)地域モデル構築技術開発」の2023年度第1回公募「水素CGSの地域モデルにおける水素燃料供給システムの効率化・高度化に向けた技術開発」に川崎重工業(株)と応募し、2023年6月に採択されました(実施期間:2023~2024年度)。また、「ハイブリッド型水素ガス供給システム」の実証試験を予定どおり2023年3月から当社高砂製作所(兵庫県高砂市)内で開始するとともに、2023年6月より試験用ボイラーへの水素供給による水素燃焼試験において、水素混焼を開始しました※2。さらにNEDOから調査委託として採択された「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発」に係る水素製造・利活用ポテンシャル調査では、主要なエネルギー消費設備であるボイラー及び加熱炉でのCO₂フリー水素の利活用について、当社高砂製作所で実稼働する設備を対象とした水素利用ポテンシャルの調査と水素利活用モデルの検討を行い、100基以上の加熱炉で消費される化石燃料を水素に置き換える場合、最大36,000t/年の水素利活用ポテンシャルがあるとの試算結果が得られました。本調査で抽出された課題解決に向けた方策として、実機規模のボイラー及び加熱炉での水素利活用を「ハイブリッド型水素ガス供給システム」を用いて実証することを、NEDOによる「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/(ロ)地域モデル構築技術開発」の2023年度第1回公募「熱エネルギー消費が主体の工場の脱炭素化に向けた燃焼式工業炉での水素利活用の実証」に応募し、2023年6月に採択されました(実施期間:2023~2025年度)。今後、各種実証試験において水素気化器と水電解式水素発生装置の同時運転等を行い、水素供給時の水素コストやCO₂発生量/炭素集約度を評価し、安価で安定した水素供給ができる運転マネジメントシステムの構築を行っていきます。また、加古川製鉄所の大型高炉(4,844 m3)でCO2排出量を25%削減(高炉単体、SCOPE1+2)できる技術の実機実証に成功しました。これは、2021年2月に当社が公表した「KOBELCOグループの製鉄工程におけるCO2低減ソリューション」での実証結果(約20%)を大幅に上回る結果であり、高炉実機でのCO2削減手法としてこれまで公表されている中では、世界最高水準のCO2削減効果を有する極めて先進的な技術です。多様な事業を営む企業としての特長を活かし、エンジニアリング事業のミドレックス技術※3と鉄鋼事業の高炉操業技術がより一層、融合・深化した結果となっています。当社グループは、今回の実機実証実験の成功も含めて、生産プロセスにおける2030年のCO2排出削減目標の実現に向けた取組みを着実に進展させていきます。※1 気化熱源として海水や工業用水を用い、プロパン等の中間媒体を介して、液化天然ガス(LNG)等の低温流体を気化させるタイプの気化器※2 本システム実証の一部は、NEDOによる「水素社会構築技術開発事業」に採択されています。※3 当社の100%子会社(Midrex Technologies, Inc.)が有する直接還元製鉄法に関する技術 本社部門では、2024年4月1日付で、2050年のCN(カーボンニュートラル)に向けた対応や、将来的な人材不足リスクへの対応(工場の省力化など)といった、中長期での全社共通課題に対する技術戦略立案を目的に、「技術戦略企画部」を新設しました。全社技術開発に関する機能及びものづくり力強化に関する機能に加え、全社活動である「研究開発委員会」や「ものづくり変革WG」の推進役を担うとともに、「GX戦略委員会」に設置する「CN技術検討部会」の推進役も担います。 技術開発本部では、①CNやデジタル化に関する先進技術の開発、②新規事業創出活動の加速、③既存事業の競争力向上、の3点に注力します。将来の成長分野・新規分野への取組みでは、未来洞察型の研究開発を推進することで、KOBELCOの事業ポートフォリオ変革に挑戦していきます。また、幅広い事業分野で培った技術資産を当社グループ内に広く展開し、複合経営ならではのシナジーを追求していきます。 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、404億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行っている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用66億円が含まれています。主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。 [鉄鋼アルミ]鉄鋼アルミでは、特殊鋼線材、自動車用高強度鋼、ディスク用アルミ板などの戦略製品の差別化による拡販と生産性・歩留まり向上による収益改善のための技術開発に注力しています。また、CO2排出量削減に直接貢献できる技術開発にも引き続き取り組んでいます。鉄鋼では、当社の低CO₂高炉鋼材「Kobenable Steel」が、トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ自動車)の競技車両「GR86(カーボンニュートラル燃料車)」に使用される(株)青山製作所製のエンジン部品締結ボルトに、自動車用特殊鋼線材としては初めて採用されました。採用された鋼材は、マスバランス方式により鋼材製造工程におけるCO2排出量を100%削減した「Kobenable Premier」です。また、本ボルトは、非調質ボルト用鋼を使用することで「焼鈍(軟化熱処理)」と「調質(焼入れ焼戻し熱処理)」というボルト製造工程における熱処理を省略しており、鋼材の製造工程とボルトの製造工程の両面においてCO2排出量を低減した製法で製造されています。また、厚鋼板に疲労亀裂の発生を抑制する機能を付加し、疲労亀裂発生寿命を改善した耐疲労鋼板「EX-Facter®」を商品化しました。金属材料の疲労過程は、亀裂発生と亀裂進展に分けられます。当社は、厚鋼板の疲労亀裂発生までの損傷に着目し、最適成分設計とTMCP技術※1を駆使した製造法により、亀裂の発生を抑制可能とする業界初の鋼板を新たに開発しました。全厚試験片での疲労試験の結果、従来鋼に比べて繰返し数1千万回における疲労強度が36%向上したことを確認しました。「EX-Facter®」は特に造船分野における従来以上の燃費効率の改善及び橋梁分野における路面下の床構造部位である鋼床版の疲労損傷対策の課題解決に貢献でき、耐久性・安全性向上に関するお客様のニーズに応えるべく、「EX-Facter®」の特長を活かした利用技術の開発、提案活動を通じ、当社グループのマテリアリティのひとつである「安全・安心なまちづくり・ものづくりへの貢献」を推進していきます。また、塗装とのマッチング機能を具備させた高湿潤環境対応型耐食鋼板「エコビュー プラス®」を鉄鋼業界で初めて開発、商品化し、2024年2月20日付けで国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)※2に登録されました。鋼橋の桁端部は狭隘、閉鎖的空間のうえ、路面端部に設置されている伸縮装置が経年劣化した場合、路面からの凍結防止剤や雨水、土砂の流れ落ちや堆積により、高湿潤環境になり易いため、部材腐食が生じ易く、腐食進行も速いと考えられています。「エコビュー プラス®」は当社のロングライフ塗装用鋼板(商品名:エコビュー®)にTa、Mg、REMを適量添加することで、高湿潤環境下でも塗装弱点部からの腐食進行を抑制することが可能となり、従来鋼に比べて塗装塗り替え周期が1.5倍に長期化すると考えています。当社は、「エコビュー プラス®」の特長を活かした提案活動を通じ、当社グループのマテリアリティのひとつである「安全・安心なまちづくり・ものづくりへの貢献」を推進していきます。なお、当連結会計年度における研究開発費は、62億円であります。 ※1 Thermo Mechanical Control Process(熱加工制御)の略。鋼板圧延時の温度と圧下率、圧延後の冷却速度を管理する製造方法※2 NETIS(New Technology Information System):国土交通省が民間で開発された優れた新技術を公共工事に積極的に活用していくために、これらの新技術に関わる情報を広く開示・提供することを目的としたシステム。NETIS登録されることで、お客様が設計及び施工段階において容易に採用できるようになる。 [素形材]素形材では、自動車、航空機、船舶、半導体分野向けの主力製品の開発と、生産基盤の強化に注力しています。また、カーボンニュートラルに資するリサイクル関連の技術開発にも引き続き取り組んでいきます。チタンでは、燃料電池セパレータ用チタン圧延材「NCチタン」が、トヨタ自動車とともに「市村産業賞 功績賞」を受賞しました。NCチタンは、チタン表面の緻密な酸化皮膜中に導電性のカーボン粒子を分散含有させており、プレス成形でも皮膜が剥離せず、燃料電池内部の腐食環境でも表面導電性を維持できます。これにより、従来セパレータ製造において、律速となっていたプレス成形後の表面処理を省略できるプレコート型セパレータの実用化を可能としました。また、トヨタ自動車とともに、コイル状チタン材への連続表面処理技術を確立し、NCチタンの量産化を実現しました。NCチタンはトヨタ自動車の「MIRAI」に独占的に供給されています。今後、乗用車に限らず、商用車や鉄道、船舶等へと適用を拡大し、水素社会実現に貢献していきます。なお、当連結会計年度における研究開発費は、23億円であります。 [溶接]溶接では、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、突出した単一の技術もしくは複数技術の組合せにより、お客様の溶接に関する課題解決を図ります。溶接材料と溶接プロセス・溶接機器・ロボットによる「溶接ソリューション」を提供する企業として、引き続き特徴ある製品の開発に注力しています。 溶接材料では、NEW REGARC™プロセスに最適なソリッドワイヤを新たに2銘柄リリースしました。400MPa級鋼用FAMILIARC™ MG-50R(A)、550MPa級鋼用FAMILIARC™ MG-60R(A)では、新ワイヤ表面技術により、安定したワイヤ送給性、良好な耐チップ摩耗性を実現しました。従来よりも多様な鋼種で、NEW REGARC™プロセスによる高能率な溶接が可能になります。引き続き、溶接の自動化を課題とする国内外の建築鉄骨市場向けに生産性向上を提案していきます。溶接システムでは、新たな立向溶接法SESLA™へ対応した新エレクトロスラグ溶接装置SG-3用の「リモートモニタリング機能」を開発しました。溶接装置から離れた場所で、溶接波形のモニタリングや溶接完了予定時間の表示が可能となります。SG-3は、SESLA™法に加え、以前より定評のあるエレクトロガスアーク溶接を用いるSEGARC™法も適用可能であり、トーチや水冷摺動銅板の動作をすべてデジタル制御することで、溶接品質の向上に加え、操作性向上による作業負荷軽減と技能レス化を実現しており、造船分野への採用決定や、エネルギー分野でも洋上風力発電への採用の検討が進んでいます。モニタリングデータの活用により施工管理・品質管理を効率化することで、お客様の製造現場での、更なる生産性向上に貢献していきます。また、建築鉄骨市場向けに、「鉄骨梁CAD連係ソフトウェア SMART TEACHING™」を開発しました。一般的に溶接ロボットは、溶接線位置と溶接施工条件をロボットに記憶する教示作業が必要になります。特に梁部材はすみ肉溶接が主体の多様な形状であるため、建築構造物における梁部材数量は非常に多いものの、教示作業に時間を要するなどの課題から、溶接自動化が遅れています。これに対し、鉄骨製作のために設計されたモデルの梁部材の3Dデータから溶接に必要な情報を取り込み、ロボットの動作軌跡や溶接条件データを自動生成する機能を実現しました。既に鉄骨ファブリケータより受注しており、今後、国土交通省の建築BIMデータ利用拡大の推進も背景に、溶接の自動化を課題にする建築鉄骨市場向けでの拡販が期待されます。新たな溶接プロセスとして、短絡フリーワイヤ送給制御プロセス「AXELARC™」を開発しました。本プロセスは、ワイヤ送給方向を反転させた際の「慣性」を利用して溶滴移行を制御する、世界初のアーク溶接プロセスです。低電流から高電流にわたる広い条件範囲において低スパッタかつ低ヒューム溶接が可能となり、深い溶込みを維持します。同プロセスを用いることで、高溶着かつ高速度溶接をも実現することができ、中・厚板分野の溶接品質及び能率向上に大きく貢献します。今後、中・厚板溶接の市場に対し、これまでの溶接プロセスの枠を超える新たな溶接ソリューションとして提案していきます。なお、当連結会計年度における研究開発費は、34億円であります。 [機械]機械では、「2050年のカーボンニュートラルの実現に貢献する」をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術や商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面から更なるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり」の実現を目指しています。産業機械関連分野では、一般社団法人未来生産システム学協会が主催する岩木トライボコーティングネットワークアワード※1(以下、岩木賞)において事業賞を受賞しました。この度、主に切削工具の表面処理において、寿命向上や難加工を可能とするコーティング技術の確立と新型装置の設計、販売実績が評価され事業賞の受賞に至りました。当社は従来上限とされてきたAl含有率65at%に対して、高硬度かつ良好な皮膜構造を維持した状態でAl含有率70at%以上という画期的な皮膜開発に成功しました。また、精密加工に有効な皮膜の表面粗度を大幅に改善する技術も確立し、2023年の春に新型PVD※2コーティング装置(製品名:AIP-iX(アイピックス))の販売を開始しました。また、分析・試験技術分野では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。開発を効果的・効率的に進めるために、事業所別であった技術組織を要素技術別の組織へと再編を行いました。また、ターゲット材料・半導体ウェハ検査装置分野に関しては、高移動度酸化物ターゲット材料の用途拡大や、半導体ウェハ向け検査・測定装置の高精度、高機能化のための開発にも取り組んでいます。なお、当連結会計年度における研究開発費は、62億円であります。 ※1 トライボコーティング技術研究会(会長:大森整 理化学研究所 主任研究員)によって2008年度に創設され、表面改質、トライボコーティング分野で多大な業績を上げた故・岩木正哉博士(理化学研究所元主任研究員、トライボコーティング技術研究会前会長)の偉業を讃えて、当該技術分野とその関連分野での著しい業績を顕彰するものです。※2 PVD(Physical Vapor Deposition)は物理蒸着と呼ばれる薄膜形成技術の総称。AIP(Arc Ion Plating)はPVDの一種で、真空中のアーク放電によって材料を蒸発・イオン化させて、母材に薄膜をコーティングする技術。耐摩耗性、低摩擦化等の特性を母材に付与することが可能で、工具や金型、機械部品などに用いられる。 [エンジニアリング]エンジニアリングでは、循環型社会、脱炭素社会の実現に向け、将来の成長が見込まれる分野における独自プロセス・技術の開発、更なる差別化、競争力強化に向けた開発を推進しています。還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とするMIDREX NG™に加え、天然ガスを最大100%まで柔軟に水素に置き換えることが出来るMIDREX Flex™や、水素を100%還元剤として用いるMIDREX H2™の競争力維持・強化に向けた開発を継続しています。(株)神鋼環境ソリューションでは、長崎県長崎市にDX推進の新たな拠点として「デジタルイノベーションLab長崎」を新設することを決定しました。技術系大学等から優秀なIT関連人材を多く輩出し、IT企業も充実している長崎県に新拠点を設置し、2024年8月より事業を開始する予定です。新拠点を設置することで、研究開発等におけるDX推進(データ分析による課題提起・ソリューション提供等)を加速するとともに、産学官での連携によるイノベーション創出や更なる変革へ挑戦していきます。水処理関連分野では、日本下水道事業団と共同で、下水処理における「水熱炭化技術」の実証実験を富士市西部浄化センターで開始しました。従来、下水汚泥を炭化方式で固形燃料化する場合、乾燥工程と炭化工程で多くのエネルギーを必要としていましたが、本技術では汚泥を低温かつ湿式状態で炭化することで、固形燃料化に要するエネルギーの大幅削減が可能になります。下水汚泥のメタン発酵と本技術を組み合わせて導入することにより、CO2排出量を実質ゼロにすることを目指します。廃棄物処理関連分野では、大栄環境(株)、DINS関西(株)、三菱ガス化学(株)、三菱化工機(株)とともに、環境省の「令和4年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」に採択された「廃プラスチックのガス化及びメタノール化実証事業」に取り組みました。今後も開発を継続し、これまで廃棄されていたプラスチックについてケミカルリサイクルによる資源循環システム構築を目指します。水素事業においては、グリーン水素需要の高まりを見据え、水電解式水素発生装置の大型化や次世代技術の開発を推進しています。次世代エネルギーとして期待される水素の普及拡大及び低炭素化社会の実現に貢献できるよう、水電解式水素発生装置の新商品開発に取り組んでいきます。なお、当連結会計年度における研究開発費は、46億円であります。 [建設機械]建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーの活用により「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。ショベルでは、コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)は、(株)安藤・間(以下、安藤ハザマ)と、これまでの共同研究や現場実験を踏まえ、1人の作業管理者が2台の自動運転ショベルの運転管理を同時に行う実証実験を行いました。今回の実験では、ダンプトラックへの土砂積込みの作業時間について、有人運転(1人で1台)と自動運転で比較を行い、1人で2台の自動運転ショベルを管理することにより、1人あたりの土砂積込み量が有人運転時より約3割増加することを確認しました。このことで、建設現場での省人化と生産性の向上に寄与すると考えています。本件は、初期段階での結果であり、今後、お客様の現場毎に動作を最適化することで生産性をさらに向上できると考えています。コベルコ建機は遠隔就労を実現するプラットフォーム「JIZAIPAD」の開発を手掛ける(株)ジザイエ(以下、ジザイエ)に対し、Human Augmentation(人間拡張)を投資テーマに掲げるベンチャーキャピタルである15thRock Fund等とともに出資を行いました。今回の出資に合わせ、コベルコ建機はジザイエと遠隔技術分野における業務提携を行いました。本業務提携により、コベルコ建機は、自身が長年培ってきた遠隔技術分野に関する技術・ノウハウをジザイエに提供し、ジザイエが他業種展開も可能な知的財産・技術として発展させて活用することによって成長し、その技術を当社K-DIVE®等へ還元すること、さらには本取組みによって豊かな社会の建設に貢献していくことを期待しています。また、カーボンニュートラルに向けた取組みの一環として、燃料電池式電動ショベルの試作機を開発し、水素を駆動源とした稼働評価を開始しました。この試作機は、中型油圧ショベルに電気駆動システムを搭載し、トヨタ自動車の燃料電池ユニットと水素タンクを採用しています。評価結果では、従来のエンジン搭載機と遜色がない動作速度、圧倒的な低騒音、CO₂排出量がゼロであることを確認しました。今後、試作機での改善を進め、従来のエンジン搭載機と同等の作業性能を実現させ、商品化を目指す予定です。また、KOBELCOグループの総合力を活かし、安全性と信頼性の確立に向けた研究開発、及び水素供給と充填方法等インフラ面での課題解決に取り組み、上市販売に向けた環境構築を加速します。 コベルコ建機と(株)冨島建設は、国土交通省近畿地方整備局主催の「建設技術展2023近畿」の「2023年度インフラDX※1」で、K-DIVE®を活用した重機遠隔操作の実用化検証により「優秀技術賞」を受賞しました。今回の実用化検証では、土砂災害の対策工事現場でK-DIVE®を使用して油圧ショベルの無人化施工を問題なく、実施できることを確認しました。 K-DIVE®は、建設現場の生産性向上、多様な人材活用、働き方改革に加え、無人化施工により、災害現場での安全確保にも役立ちます。コベルコ建機と安藤ハザマは、K-DIVE®に自動運転機能を搭載し、コックピットから遠隔操作と自動運転を切り替えながら、2台の油圧ショベルを、同時に稼働させる現場検証を行いました。現在、建設現場の生産性向上等を実現するため、建設機械の自動化、遠隔化技術が期待される一方、現場における安全に関する新たなルールが必要となります。今回、国土交通省が募集した「建設機械施工の自動化・遠隔化技術に係る現場検証」として、油圧ショベルと人が混在するエリアでは、K-DIVE®の非常停止機能を使うというルールに基づき、2台の油圧ショベルを同時に稼働させ、ダンプトラックへの土砂積み込み作業を安全に実施できました。また、コベルコ建機と安藤ハザマは、現場人員が自動運転システムを扱うのは難しいという課題に対し、「システム設定に関する手順書を作成、加えてタブレット内アプリの設定に関するユーザーインターフェース(UI)を再設計」と、「システム操作に関しても直感的に扱えるようにUIを再設計、加えて分かりやすい取扱説明書を作成」の改良を加えたうえで、シールド工事にて自動運転ショベルでダンプトラックに土砂積込みを実施、その効果検証を行いました。結果、ショベル搬入から自動運転システムの初回設定迄を半日程度で完了でき、また、誤操作等によるトラブルは発生せず2週間自動運転ショベルを安全に稼働できました。本検証により、機能面と安全面に加え、実用面でも、自動運転ショベルの本格展開について一定の目途がついたと考えています。今後、さらに自動運転の適用工種の拡大と現場展開に向けた取り組みを加速させる予定です。クレーンでは、国土交通省が従前よりBIM/CIM※2の活用を推奨しており、2022年度に「建築BIM加速化事業」を創設、さらに2023年4月以降に入札を開始する小規模を除く、全ての公共工事へのBIM/CIM原則適用を開始しました。これらによりBIM活用の流れは加速しており、その潮流にこたえるべく、コベルコ建機は、安全性と生産性向上に貢献するためのツールとして、クレーン施工計画の策定支援ソフト『K-D2 PLANNER®』の一般販売を開始しました。開発にあたり多くのお客様のご意見をもとに製品改良を重ね、直感的な操作性や現場へ施工計画を共有するためのプレゼンテーションに加え、クレーンブームのたわみ・接地圧等のシミュレーションや最適クラスのクレーン選定等、建機メーカならではの機能も実装しました。これらにより施工計画が容易に作成でき、運用経費の削減に繋がるとともに、現場の安全性と生産性の向上が期待できます。また、クローラクレーン「Mastertech7200G NEO」が機械工業デザイン賞 IDEA※3の日本産業機械工業会賞を受賞しました。このクローラクレーンは、従来のコンパクトボディを継承しながらも、つり上げ能力が最大25%向上し、大幅な作業性能向上を達成しています。また、新型運転席「delight(デライト)キャブ」やオペレータアシスト機能等、安全性や快適性にも配慮しています。受賞理由として、ヒューマンコンセプト・クレーンを基軸に、輸送性・組立性・省エネ性等の既得性能を継承しつつ、機能・性能・品質をより向上させ、ハードとソフトにバランスの取れた完成度の高い仕上がりとした点が評価されました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、104億円であります。 ※1 国土交通省近畿地方整備局は、これまで生産性向上として取り組んできたi-Construction 等をより進化させるため、インフラ分野のDXに活用できる優れた技術を発掘、試行フィールドを提供することによってインフラDXを推進しています。※2 BIMはBuilding Information Modeling、CIMはConstruction Information Modelingの略を示します。※3 (株)日刊工業新聞社が、日本の工業製品におけるデザインの振興と発展を目的に1970年に創設した賞であり、製品の機能や外観だけではなく、市場性や社会性、安全性等、さまざまな面から総合的な審査を行います。審査委員会は関係省庁や大学、各工業団体の専門家等で構成されています。 [電力]電力では発電所設備の予防保全および低炭素化等に関する研究開発を行っています。なお、当連結会計年度における研究開発費は、1億円であります。 [その他]上記外の事業セグメントに係る当連結会計年度における研究開発費は、1億円であります。
FY2023|8,004 文字
6【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげております。2050年のカーボンニュートラル達成に向け、「ハイブリッド型水素ガス供給システム」の検討を進め、実証設備を建設した上で、2023年4月から当社高砂製作所内で実証試験を開始します。今後、工場の脱炭素化に向けた手段の一つとして、主要な熱エネルギー消費設備である工業炉・ボイラー等でのCO₂フリー水素の利用が期待されています。当社グループが提案するハイブリッド型水素ガス供給システムは、中小規模の事業者様にとって導入のカギとなる「安定かつ安価な水素づくり」に対するソリューションを提供するもので、機械事業部門の気化器、(株)神鋼環境ソリューションの水電解式水素製造装置、エンジニアリング事業部門の運転マネジメント技術といった、三つの製品・技術より構成されています。なお、本システム実証の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構による「水素社会構築技術開発事業」における調査委託及び助成事業に採択されています。※ ※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素社会構築技術開発事業」採択案件 a.「熱によるエネルギー消費が主体の工場の脱炭素化に向けた水素利活用モデルに関する調査」 b.「液化水素冷熱の利用を可能とする中間媒体式液体水素気化器の開発」 技術開発本部では、①カーボンニュートラルやデジタル化に関する先進技術の開発、②新規事業創出活動の加速、③既存事業の競争力向上、の3点に注力します。特に、将来の成長分野・新規分野への取組みを強化することで、KOBELCOの事業ポートフォリオ変革に挑戦していきます。また、開発した技術を積極的にグループ内に水平展開していくことで、複合経営ならではのシナジーを追求していきます。2022年10月1日に、国立大学法人大阪大学産業科学研究所(以下、阪大産研)と「KOBELCO未来協働研究所」を設立しました。本協働研究所は、当社グループの多様な技術と阪大産研のAIの知見を掛け合わせて「ものづくりを革新するソリューション」の共創と社会実装に取り組む、産学連携のオープンイノベーションの場です。「人がシステムと共に成長しながら、創造性豊かにイキイキと活躍できる“ものづくりの世界”の実現」をビジョンに掲げ、広範な産業における課題解決と、新規事業創出による企業価値向上を目指していきます。当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、367億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行っている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用57億円が含まれております。主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。 [鉄鋼アルミ]鉄鋼アルミでは、特殊鋼線材、自動車用高強度鋼、ディスク用アルミ板などの戦略製品の差別化による拡販と生産性・歩留まり向上による収益改善のための技術開発に注力しています。また、CO₂排出量削減に直接貢献できる技術開発にも引き続き取り組んでおります。鉄鋼では、高炉工程におけるCO₂排出量を大幅に削減した低CO₂高炉鋼材「Kobenable Steel」を国内で初めて商品化しました。本商品は、2021年2月16日に公表した「KOBELCOグループの製鉄工程におけるCO₂低減ソリューション」に基づくものであり、エンジニアリング事業部門のミドレックス技術(天然ガスを使った還元鉄製鉄法)を用いて製造したHBI(熱間成形還元鉄)を加古川製鉄所の高炉に多量に装入することで、高炉からのCO₂排出量を大幅に削減できる技術を活用したものです。低CO₂高炉鋼材「Kobenable Steel」を社会に先駆けてご提供することにより、グリーン社会の実現に貢献していきます。この「Kobenable Steel」が、日産自動車(株)の2023年1月以降の量産車及び(株)IHI、三菱地所(株)、鹿島建設(株)による「(仮称)豊洲4-2街区開発計画B棟(東京都江東区豊洲)」の新築工事に採用されることが決まりました。今回の採用では、製造時のCO₂排出量をマスバランス方式により100%削減した「Kobenable Premier」を使用する予定です。また、加古川製鉄所において、UDトラックス開発のレベル4自動運転技術を搭載した大型トラック「クオン」を用いて自動搬送の実証実験を2022年に実施しました。重さ約17トンのスラグを積み、複数の異なる地点を自動搬送し、所定内での停止・搬送物の積み下ろしといった複雑な運行作業も自動で行いました。今回の実証実験で得た知見を活用し、自動運転技術を通した製造現場のDXを推進し、生産の効率化や人手不足などの課題解決を目指します。なお、当連結会計年度における研究開発費は、63億円であります。 [素形材]素形材では、今中期の研究開発方針として、①将来においても事業の中核をなす製品の探索と製品開発への経営資源の選択と集中、②DX推進によるものづくり基盤の強化、③カーボンニュートラルに向けた技術開発の推進、を掲げ、各々の方針に対して、以下の取組みに重点を置いて研究開発活動を推進しております。①コロナ禍やロシアウクライナ問題に端を発する世界的なサプライチェーンの変化に対応すべく、半導体向けのアルミ加工品や、航空機向けのチタン鍛造品に関連する研究開発に取り組んでおります。②サスペンションの生産能力最大化(ものづくり力強化)に向けて、生産工程の自動化などの研究開発に取り組んでおります。③アルミをはじめとするリサイクル・資源循環比率の向上に資する研究開発に取り組んでおります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、16億円であります。 [溶接]溶接では、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、突出した単一の技術もしくは複数技術の組合せにより、お客様の溶接に関する課題解決を図ります。溶接材料と溶接プロセス・溶接機器・ロボットによる「溶接ソリューション」を提供する企業として、引き続き特徴ある製品の開発に注力しています。溶接システムでは、新型多関節型ロボットARCMAN™ A60、新型ハイエンド溶接電源SENSARC™ RA500及びNEW REGARC™プロセスを搭載した、新・鉄骨溶接システムを開発しました。溶接品質をしっかり確保しながらも、NEW REGARC™の性能を最大限に活かす溶接施工条件の開発により溶接時間を短縮し、加えて、改良した周辺機器により非溶接時間も短縮することで、従来比10%以上のサイクルタイム短縮を実現しています。溶接技能者不足、溶接の自動化を課題にする国内外の建築鉄骨市場向けに、専用ワイヤFAMILIARC™ MG-56R(A)との組合せによる生産性向上を提案してまいります。また、9%Ni鋼製LNGタンク用Ni基合金フラックス入りワイヤPREMIARC™ DW-N609SV、PREMIARC™ DW-N709SPで立向姿勢の自動溶接を可能にする小型可搬型ロボットKI-700を開発しました。タッチセンシングによる開先形状検知機能、検知した開先形状から最適な積層パターン及び溶接条件を自動生成する機能を有します。Ni基合金モードを搭載したデジタル溶接電源SENSARC™ AB500との組合せにより、難易度の高い9%Ni鋼の溶接でオペレータの技量に依らず安定した品質の溶接を行うことが可能です。さらに人手では不可能な長尺の連続溶接による高能率化にも寄与します。ARCMAN™ Offline-Teaching Systemは、ARCMAN™と同じソフトを使用することで動作を正確に表現することができるオフラインティーチングソフトです。この度、新機能として従来では確認の難しかったケーブルの干渉や巻き付きを簡単かつ高速で確認することのできる「ケーブルシミュレーション機能」を開発しました。溶接品質低下や自動化を阻害する要因となっていたワイヤ送給ケーブルのワーク等への絡まりなどをPC上にてシミュレーションで確認、改善することが可能となります。ライン停止時間の短縮、実機での溶接確認作業の負荷軽減及び優れた溶接品質の確保に貢献することで、溶接ロボットシステムの更なる生産性向上に貢献してまいります。溶接材料では、HT780MPa級鋼の溶接後熱処理に対応した被覆アーク溶接棒「TRUSTARC™ LB-80LSR」を開発しました。溶接金属部の組織制御のため化学成分を最適化し、従来困難であった溶接熱処理後の優れた機械的性質を実現しています。欧州北海でのCO₂回収・貯留プロジェクトにて建造される舶置液化CO₂タンクの要求事項に対応し、溶接部に同製品が採用されました。今後も世界各国のエネルギー産業に向け、気候変動問題の解決に貢献する製品の提案に積極的に取り組んでまいります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、38億円であります。 [機械]機械では、「2050年のカーボンニュートラルの実現に貢献する」をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術や商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面から更なるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり」の実現を目指しています。カーボンニュートラルに関わる事業活動や新事業創出活動をさらに加速させる目的の下、2022年4月1日付けで「新事業推進本部」を新設しました。カーボンニュートラルに関わる事業活動や新事業創出活動をさらに加速させる目的の下、新事業を担う開発・技術・営業の専任部署を統合することで、目まぐるしく変化する事業環境への対応力を高め、既存の枠にとらわれないイノベーション創出に取り組んでまいります。産業機械関連分野では、日本理化学工業(株)向けに積層型多流路反応器(製品名:SMCR Stacked Multi-Channel Reactor)を納入し、運転を開始しました。SMCRは当社の50年以上にわたる熱交換器の設計・製造に関する技術を活かし、2012年に開発した小型反応器の一種です。ステンレスのプレートに幅1~2㎜の微細な流路を加工・積層し拡散接合※1をすることで流路の本数を増やし、コンパクトでありながら工業規模での大容量生産に対応可能としています。従来、医薬品・ファインケミカル分野の製造プロセスにおいては「バッチ生産」が主流でしたが、近年は省エネルギー性や生産効率の観点から「連続生産」が志向されています。日本理化学工業(株)では連続生産方式を積極的に導入されており、今回SMCRの特長である大容量で高効率、かつコンパクトである点を評価頂いたことで採用に至りました。また、アークイオンプレーティング装置(AIP※2)において、従来品と比較し、生成する皮膜の長寿命化を達成した「AIP-iX」シリーズを開発しました。切削工具向けの代表的な皮膜であるAlCrN(窒化アルミクロム)は、コーティング皮膜中のAlの含有量が多いほど耐酸化性に優れ、高速切削や高切込みなどの難加工条件に適していますが、Alの含有量が多くなりすぎると(概ね65at%以上※3)、皮膜構造が高硬度な立方晶から六方晶へと変化し硬度が低下するという課題がありました。この課題に対し「AIP-iX」では、新開発した装置や成膜プロセスにより、皮膜の金属元素のうちAl含有率が70at%以上であっても立方晶を維持し、硬質なAlCrN皮膜のコーティングが可能となったことで、性能に特化したハイエンド工具と比較して約1.5倍の寿命向上を確認しました。来春より「AIP-iX」の販売を開始し、世界中の切削工具の寿命向上並びに機械加工の高速化へ貢献いたします。圧縮機関連分野では、2022年7月4日に三浦工業(株)(以下、三浦工業)と船舶向けに搭載する舶用バイナリー発電システム(以下、舶用バイナリー発電)の技術ライセンス契約(開発・製造・販売)を締結しました。三浦工業とは主機エンジンに供給する高温の過給機からの排熱を利用した舶用バイナリー発電の共同開発を行い、実船搭載での海上試験を2017年に実施しました。また、当社ではこれを含む計4隻の長期実船運用試験を行い、実際の運用における性能や耐久性において確認を行ってきました。ライセンスを受けた三浦工業は舶用バイナリー発電について、2025年頃の販売開始を目指します。なお、当連結会計年度における研究開発費は、54億円であります。 ※1 溶接など接合方法の一種。材料同士を密着させ、高温で加熱しながら加圧する事で、原子レベルで結びつける接合方法。一般的な溶接とは違い母材を溶かす事なく接合するため、微細な流路や複雑な三次元構造体の接合に適する。※2 AIP(Arc Ion Plating)は物理蒸着と呼ばれる薄膜形成技術であるPVD(Physical Vapor Deposition)の一種で、真空中のアーク放電によって材料を蒸発・イオン化させて、母材に薄膜をコーティングする技術。耐摩耗性、低摩擦化等の特性を母材に付与することが可能で、工具や金型、機械部品などに用いられる。※3 at%は物質に含まれる原子の数の比率。65at%は100個の原子があればそのうち65個を占めることを意味する。 [エンジニアリング]エンジニアリングでは、循環型社会、脱炭素社会の実現に向け、将来の成長が見込まれる分野における独自プロセス・技術の開発、更なる差別化、競争力強化に向けた開発を推進しております。廃棄物処理関連分野では、大栄環境(株)、DINS関西(株)、三菱ガス化学(株)、三菱化工機(株)との5社にて提案した「廃プラスチックのガス化及びメタノール化実証事業」が、環境省の「令和4年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」に採択され、国内初となる当該実証事業を開始しました。世界では海洋プラスチック問題が社会問題化するなど環境保護等の観点から、プラスチックのリサイクル方法確立の必要性が急速に高まっており、本事業はこれまで廃棄されていたプラスチックについて、ケミカルリサイクルによる資源循環システム構築を目指すものです。還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とするMIDREX NG™に加え、天然ガスを最大100%まで柔軟に水素に置き換えることが出来るMIDREX Flex™や、水素を100%還元剤として用いるMIDREX H2™の競争力維持・強化に向けた開発を継続しております。こうした開発の成果として、MIDREX Flex™はドイツthyssenkrupp社から、MIDREX H2™はスウェーデン・H2グリーンスチール社から、それぞれ世界初となる商業機を受注しました。水処理関連分野では、汚泥燃料化をはじめとするバイオマス・下水汚泥のエネルギー化技術の多様化を推進しております。水素事業においては、グリーン水素需要の高まりを見据え、水電解式水素発生装置の大型化や次世代技術の開発を加速しております。なお、当連結会計年度における研究開発費は、35億円であります。 [建設機械]建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでおります。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーの活用により「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。ショベルでは、コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)は、2022年12月5日より重機ショベルの遠隔操作と稼働データを用いた現場改善ソリューションが実現できるK-DIVEサービスの提供を開始しました。本サービスでは、コックピットにモーションシート、音のフィードバック、可動式メインカメラ、よそ見検知機能などの機能を搭載しており、安全で快適な現場作業を行うことが可能となります。K-DIVEは多様な人を集め・活かし・育てる現場を作ることで「人」を起点に組織を活性化し、経営効率を上げ、お客様の業界全体を変えていくという未来像のもと、「働く人を中心とした、建設現場のテレワークシステム」をコンセプトとしています。建設機械の遠隔操作とマッチングサービスを融合させることで、特定の人・場所・時間などの制約を受けずに、建設現場での施工が可能となり、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保が可能になる未来の実現を目指しています。また、コベルコ建機は2022年11月16日~17日にオーストリアのウィーンで開催された、解体業界のための国際的なネットワーク構築と教育を目的として毎年開催されるイベントであるWORLD DEMOLITION SUMMIT 2022において、Innovation Awardを受賞しました。今回、2021年4月1日より販売を開始した超大型建物解体専用機「SK1300DLC」の分解・組立性と搬送性を向上し、最大ピン高さと先端アタッチ最大装着可能質量のバランスを高次元で達成した革新性が、専門家によって構成される審査委員会に評価されました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、91億円であります。 [その他](株)コベルコ科研では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。受託試験研究事業では、カーボンニュートラルやDXなどの成長分野での事業拡大とソリューションビジネス強化に向けた技術開発に取り組んでおります。また、国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同で、高精度なホットディスク法を用いた溶融アルミニウムの熱伝導率評価技術を確立しました。これまで測定できなかった材料の熱伝導率や比熱などの物性値を得ることにより、金属材料の鋳造や溶接に関するシミュレーションの精度向上が期待されます。特殊溶解材料事業では、ディスプレイ向けや半導体デバイス向けのスパッタリングターゲット材の開発や、高付加価値の特殊合金素材の開発・商品化に向けて取り組んでおります。特殊溶解材料事業において、電子放出源向けの新材料としてCeIr2を開発しました。イリジウム(Ir)とセリウム(Ce)を原料として化合物化したものであり、一般的な電子放出源と比較し同等以上の電子放出効率と、低温域での動作という特徴を有しています。人工衛星等の電気推進機のコスト低減や長寿命化、X線CT装置の高解像度化や検査時間短縮、金属3Dプリンターの高出力化などに寄与することが期待されます。半導体検査・測定装置事業では、半導体ウェハ向け装置の更なる高精度化・高機能化のための開発に取り組んでいます。なお、当連結会計年度における研究開発費は、8億円であります。
FY2022|8,910 文字
5【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげております。本社部門では、2021年4月1日付で、全社横断で新製品・新事業の企画を担当する「事業開発部」を新設しました。事業開発部ではグループ内の多様な知的資産を掛け合せ、新規事業化を推進しております。特に、水素社会への移行については、これを成長機会と捉え、当社グループの機械・エンジニアリングの技術を組み合わせた新規事業化に取り組んでおります。技術開発本部では、幅広い事業分野で培った技術蓄積を活かし、素材系・機械系・電力の各事業部門において、真に競争力のある製品・サービスの優位性強化に向けた研究開発を行っていきます。また、カーボンニュートラルやデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)などの急激な外部環境変化に対応すべく、グループ連携での新事業企画など、将来の成長分野・新規分野への取組みを強化していきます。将来の成長分野・新規分野への取組みの一環として、2021年4月1日付で、「デジタルイノベーション技術センター」を新設しました。KOBELCOグループが推進するDX戦略において、ICT・AI分野の先端技術の開発と事業適用を強化・加速する目的で、デジタル分野の人材・技術・情報を集約しました。お客様との共創やサプライチェーン連携、開発及び設計業務の革新、生産現場の自動化や多品種変量生産の高度化など、グループのバリューチェーンをデータでつなぎ、お客様起点で新たな価値創出を推進します。また、活動を通してDXを推進できる人材を育成します。また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発」において「製鋼スラグを活用したCO2固定化プロセスの開発」のテーマを提案し、採択されました。鉄鋼製品の製造過程で発生する鉄鋼スラグは中に含まれるアルカリ成分がCO2と反応しやすく、CO2固定化に有用な素材として注目されています。カーボンニュートラルの実現や環境負荷低減への更なる貢献を目指し、CO2固定化技術の開発を進めていきます。また、従来品と比べて高い流動性の保持と強度を確保したジオポリマーを建設化学品メーカーのポゾリスソリューションズ(株)と共同開発しました。従来のジオポリマーは、通常のコンクリートやモルタルと比べて流動性と強度に課題があり、使用用途が限られていました。鉄鋼製品の製造過程で使用した後のアルカリ性溶液も活用した独自の添加物によって課題を解消し、多用途化と低価格化に繋がる技術を開発しました。今後も製品化に向けて開発を進めてまいります。当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、332億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行っている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用57億円が含まれております。主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。 [鉄鋼アルミ]鉄鋼アルミでは、特殊鋼線材、自動車用高強度鋼、ディスク用アルミ板などの戦略製品の差別化による拡販と生産性・歩留まり向上による収益改善のための技術開発に注力しています。また、CO₂排出量削減に直接貢献できる技術開発にも引き続き取り組んでおります。鉄鋼では、厚板分野において2023年度下期に加古川製鉄所厚板工場の仕上圧延機のリフレッシュ工事を実施することを決定しました。仕上圧延機は、加熱炉で加熱したスラブを粗圧延機で幅出し圧延後、製品の板厚まで圧延する設備です。リフレッシュ工事によって圧延機の剛性が向上し、圧延成形する際の変形が低減することで、寸法ばらつきが少ない厚鋼板の製造が可能となります。今後、圧延機の高剛性化を活かした更なる高機能厚鋼板、製造技術の開発を進めていきます。また、加古川製鉄所内において、UDトラックス(株)と、同社が開発したレベル4自動運転技術(特定条件下における完全自動運転技術)搭載の大型トラックを用いた自動運搬技術の実証実験を行うことに基本合意しました。デジタルテクノロジーを活用することで、深刻化する製造現場のドライバー不足への一つのソリューションを創出することを目的としています。本実証実験を通じ、「超スマート社会」に不可欠となるスマート物流サービスと製造・物流現場のDXの促進を目指します。また、NEDOから公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」に、日本製鉄(株)、JFEスチール(株)、一般財団法人金属系材料研究開発センターらとともに共同提案した開発項目が2021年12月24日に採択されました。「グリーンイノベーション基金」は、2020年12月25日に経済産業省が関係省庁と策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で「経済と環境の好循環」を作り出すために組成された基金です。製鉄プロセスの脱炭素化の実現に向けて、4社で所内水素を活用した水素還元技術等の開発、外部水素や高炉排ガスに含まれるCO₂を活用した低炭素技術等の開発、直接還元鉄を活用した電炉の不純物除去技術開発等に取り組み、本プロジェクトを推進してまいります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、62億円であります。 [素形材]素形材では、輸送機分野(自動車、船舶、航空機)を中心に、将来においても事業の中核をなす製品開発や新製品の探索に注力しております。また、DX推進によるものづくり基盤の強化、CO₂削減に資する技術開発にも積極的に取り組んでおります。チタンでは、燃料電池セパレータ用チタン圧延材である「NC(Nano-Carbon composite coat)チタン」(以下、NCチタン)を開発し、2020年12月より販売されているトヨタ自動車(株)(以下、トヨタ自動車)の新型MIRAI向けに出荷しています。NCチタンはセパレータに求められる高い耐食性と導電性に加えプレス成型性も兼ね備えており、燃料電池スタックの小型・高性能化のみならず、お客様の生産性向上にも貢献することが可能であり、トヨタ自動車とともに世界で初めて量産化に成功したものです。このたび、NCチタンが素形材産業の技術水準の進歩向上に著しく貢献したことを評価され、一般財団法人素形材センター主催の「第37回 素形材産業技術賞」において、トヨタ自動車とともに「経済産業大臣賞」を受賞しました。今後もCO₂削減に資する技術・製品・サービスを提供してまいります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、25億円であります。 [溶接]溶接では、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、溶接材料と溶接ロボット・装置・電源を組合せ、さらに溶接プロセスを加えた「溶接ソリューション」を提供する企業として、引き続き開発に注力しています。溶接材料では、造船や橋梁等で使用される防錆塗装鋼板の水平すみ肉溶接における気孔欠陥の大幅な抑制と、深溶け込み特性を特長とする2電極の「ハイブリッドタンデムマグ溶接法」を開発しました。先行極では、専用のソリッドワイヤ「FAMILIARC™ MG-50HM」の埋もれアークにより、深溶け込みと大電流炭酸ガス溶接での低スパッタを両立します。後行極では、専用のスラグ系FCWである「FAMILIARC™ MX-50HM」により、形状良好なビードを形成します。従来はSAW法が適用されていた下向き突合せ溶接でも、本施工法の深溶け込み特性を活かした高速溶接により、溶接ひずみの低減が可能になります。溶接システムでは、制御時間、フィードバック周期に優れたハイエンドアーク溶接電源「SENSARC™ RA500」を開発し、販売開始しました。本電源では、新たなパルス制御法を採用し、小電流から500A程度の大電流まで安定したアークを提供することにより、溶接の「高品質化」・「高能率化」・「環境負荷低減」に貢献します。また、今後、当社の高能率溶接法である「大電流MAGプロセス」や「タンデムアークプロセス」なども順次搭載してまいります。インターフェイス機能も充実させ、当社多関節型ロボットARCMAN™(CBコントローラ)との接続だけでなく、可搬型溶接ロボット「石松」や各種自動溶接装置との接続が可能です。また、建築鉄骨や建設機械、橋梁、造船など中厚板向けロボットシステムの安定した溶接を支援するためのパッケージソフト「AP-SUPPORT™」に、生産データや溶接データをレポート化、グラフ表示する機能に加えて、溶接ロボットシステムに設置したカメラで、ロボットのトーチ先端位置を追従しながら常時撮影し、生産データと映像を連携する機能を開発しました。安定生産支援ソフト「AP-SUPPORT™」によって溶接施工記録など生産情報を見える化し、チョコ停や溶接不良の原因分析を支援することで溶接ロボットシステムの更なる生産性向上に貢献します。また、新型ハイエンド溶接電源SENSARC™ RA500と、専用ワイヤFAMILIARC™ MG-56R(A)とを組み合わせることで、更なるスパッタ低減と施工能率向上を実現するNEW REGARC™を開発しました。REGARC™法とは、溶接電源の波形制御と専用ワイヤにより、炭酸ガスアーク溶接においても低スパッタ、低ヒュームを実現する当社独自の溶接プロセスです。今後、当社の多関節型ロボットARCMAN™や小型可搬型溶接ロボット「石松」に順次搭載し、お客様の製造現場での、更なる施工能率の向上に努めてまいります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、31億円であります。 [機械]機械では、環境、省エネ(CO₂削減)をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術や商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面から更なるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり」の実現を目指しています。産業機械関連分野では、当社社員が2000年からアメリカ機械学会(The American Society of Mechanical Engineers(以下、ASME))※ のボイラー及び圧力容器コード委員会のメンバーとして、特に高圧技術におけるASMEボイラー及び圧力容器コードの開発と規格の改良に取り組み、主に海外での石油・エンジニアリングメーカー向け高圧圧力容器の製造に活かされております。このたび、これまでの長年の圧力容器での開発・製造及びASMEでの活動において多大なる貢献が評価され、ASMEより圧力容器分野での規格化に貢献した人に贈られる「ASME J. Hall Taylor Medal」及び、圧力容器に関する優秀な技術論文での「PVPD Conference Award」を受賞いたしました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、36億円であります。 ※ASME(The American Society of Mechanical Engineers、アメリカ機械学会)とは機械工学を中心とした分野の規格化や標準化、工場認定などの活動を推進するアメリカの民間団体です。1914年に動力用ボイラーの規格をつくり、現在ではボイラーをはじめ圧力容器や原子力発電所用機器などの規格を発行し、それが世界標準になっております。 [エンジニアリング]エンジニアリングでは、循環型社会、脱炭素社会の実現に向け、将来の成長が見込まれる分野における独自プロセス・技術の更なる差別化、競争力強化に向けた開発を推進しております。還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とした製鉄法(MIDREX®プロセス)の競争力維持・強化に向けた開発を継続しております。水処理関連分野では、下水汚泥燃料化をはじめとするバイオマス・下水汚泥のエネルギー化技術の多様化を推進しております。廃棄物処理関連分野では、CO₂回収・有効利用技術として焼却飛灰炭酸化技術の実証試験を完遂するとともに、廃プラスチックリサイクル技術の開発を開始しております。水素事業においては、グリーン水素需要の高まりを見据え、水電解式水素発生装置の大型化等の開発を加速しております。なお、当連結会計年度における研究開発費は、23億円であります。 [建設機械]建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでおります。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーの活用により「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。ショベルでは、コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)が目指す“K-DIVE CONCEPT”「働く人を中心とした建設現場のテレワークシステム」(以下、K-DIVE)を推進するため(株)センシンロボティクス(以下、センシンロボティクス)と遠隔操作における現場見える化の開発に向けて協業することにしました。コベルコ建機は「誰でも働ける現場へKOBELCO IoT」をテーマにICTロードマップを策定、その実現に向けて中長期的な研究・開発を進めています。現在開発を進めている遠隔操作システム、K-DIVEはそのひとつの柱であり、クラウドマッチングシステムと建設機械の遠隔操作を融合させることで特定の人・場所・時間などの制約を受けずに建設現場での施工が可能となる「建設現場のテレワーク化」を目指しています。この実現により深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保等が可能になると考えています。今回の協業ではセンシンロボティクスの得意とするドローンやLiDAR※1を活用した各種データの収集、3D点群マップを基にした測量結果や水流シミュレーションの3D図面への反映による情報可視化、それらのコックピットへのリアルタイム伝送等のシステム構築と実装に向けた開発を共同で進めます。これらがK-DIVEに実装されることで稼働現場の様々な情報、例えば機械周辺の状況や埋設物の有無、土の形状や体積等を可視化し、オペレータが効率的かつ安全・安心して働ける遠隔施工現場が実現するとともに現場状況の確認や作業指示等に利用することで現場関係者のコミュニケーションが飛躍的に高まるものと考えています。また、同じくK-DIVEの技術確立のため、コベルコ建機と北海道総合通信網(株)(以下、HOTnet)は建設機械の超長距離及び多接続切り替え遠隔操作に関する実証実験を実施しました。今回の実証実験は、2020年9月に実施した札幌・帯広間での総距離約300㎞の遠隔操作実証実験に続くもので、札幌市内に建機の操縦席、コックピットを設置し、コックピットとの総距離300㎞となる北海道帯広市とコックピットとの総距離1,800㎞となる広島市のコベルコ建機五日市工場内にある2台の建設機械をコックピットで切り替えながら遠隔操作しました。HOTnetは通信事業者としてのノウハウや強みを活かし、K-DIVEに必要不可欠なネットワーク構築と自社データセンター及びクラウドサービスの連携実現に協力しました。実証実験では約1,800㎞の遠隔地でも実際に機械に搭乗して操作した場合とほぼ同等の品質(通信遅延、作業効率等)で遠隔操作が可能であることに加え、オペレータが異なる場所にある複数の機械を切り替えながら効率的に作業できることを確認し、2022年以降の段階的な実用化に向けた大きな成果となりました。また、同じくK-DIVEの推進のため、コベルコ建機と日本電気(株)(以下、NEC)は建設機械の遠隔操作の普及に向けた技術開発協定を締結しました。NECは建設機械の操縦者が長時間にわたって安定した遠隔操作を行うことができる重機遠隔操縦サービス※2を提供しています。本サービスは、適応遠隔制御技術※3によって建設機械の遠隔操作に最も重要となる無線環境下での安定的な映像配信とスムーズな遠隔操作を可能にします。両社は本協定に基づく取組みの第一弾として、コベルコ建機五日市工場(広島)に設置したK-DIVEのコックピットとNEC我孫子事業場(千葉)の実証フィールドにある油圧ショベルを、NECの重機遠隔操縦サービスを用いて接続し、安定した映像配信とスムーズな作業操作が可能か検証する実証実験を実施しました。結果として、両社のシステムを連携した場合でも、お互いのシステムの性能(通信状況、作業性等)を損なうことなく遠隔操作が可能であることを実証できたとともに、より多くのお客様が遠隔操作可能な環境の提供に向けて大きく前進しました。また、同じくICTロードマップの実現に向けて建設機械の自動運転技術の確立を目指しています。その取組みとして、この度、コベルコ建機と(株)安藤・間(以下、安藤ハザマ)は、工事現場における実作業環境において油圧ショベルの自動運転に関する実証実験を実施しました。具体的には、2021年12月、安藤ハザマが施工中の工事現場の実作業環境において油圧ショベルの自動運転の実証実験を行いました。今回の実証実験は、2019年より両社が共同で実施している建設機械の自動運転技術の確立に向けた取組みをより高度化したもので、実作業現場で求められる様々な制約条件である、ダンプトラックへの横方向からの積み込み、土砂をこぼさないような滑らかな動作、周辺物との接触回避に適応させました。また、ペイロード機能※4を搭載することにより、積み込んだ積算重量が目標値となるまで自動運転が継続され、掘削毎に変化する掘削重量を把握しながら最適な積み込み作業が可能となっています。安全面では、油圧ショベルの稼働範囲に近づく物体を監視支援する装置を現場に設置し、その有効性検証も同時に行いました。AIにより侵入物体や人を検知・認識、距離測定することで、その情報から危険度に応じた各種警報を自動的に発報し、安全性の向上と常に人間が目で見て判断する監視作業の負担軽減につながります。今回の実証実験により、実作業環境においても自動運転に必要とされる基本的な機能や安全確保の仕組みが問題なく動作することを確認できたことで、建設現場での生産性向上や安全確保に向けた自動運転の実用化に大きく近づきました。クレーンでは、クローラクレーンとして求められる基本性能の進化、安全性の向上、快適な作業環境等を追求したモデルチェンジ機「Mastertech7200G NEO」を2021年10月1日より販売開始しました。本機では、新規開発したつり荷水平移動アシスト機能(ブームの動きに合わせてフック高さを自動で調整、つり荷の水平移動をアシストする)、タワー自立アシスト機能(格納状態からタワー自立までの作業及びタワー自立から格納までの作業を1レバーで可能とする)、アクセルコントロール機能(アクセルを絞った状態では操作レバーを大きく動かしてもウインチドラムは動かず、アクセルの開放状態によって自動変速する)、傾斜ジブキャッチ機能(従来、タワー角度90度にて行っていたジブの張出・格納作業を80度の状態で安全に作業可能とする)を搭載しました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、84億円であります。 ※1 LiDARとは「Light Detection and Ranging」の略称でレーザ光により対象物までの距離や性質を計測・特定などを行う光センサー技術です。※2 重機遠隔操縦サービスとは建設現場にWi-Fiやローカル5Gなどの無線ネットワークを構築し、現場のカメラ映像を遠隔地にいる操縦者がリアルタイムに確認しながら重機を操縦できるようにするものです。※3 適応遠隔制御技術とは通信の実効伝送量を予測し、伝送量に見合う安定した映像配信と制御が可能な技術です。本技術の活用により、映像配信の遅延を予測して安定した映像を伝送するとともに、建機操作コマンドの到達遅延も予測し、操作の行き過ぎの発生を抑制することができます。※4 ペイロード機能とはバケットで掘削した土砂の重量を自動的に計量・積算する機能で、自動運転時の目標値設定に活用することで、より最適な作業が可能となります。 [その他](株)コベルコ科研では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。受託試験研究事業では、成長市場分野への事業拡大を目指し、特に脱炭素化やDXに関連した技術開発に注力しています。脱炭素関連では、電気自動車、燃料電池、二次電池、水素関連の評価・解析技術の開発、DX関連では計算科学と実際の試験データとを組み合わせた技術サービスの開発に取り組んでおります。特殊溶解材料事業においては、ディスプレイ向け及び半導体デバイス向けの高移動度酸化物ターゲット材の開発に取り組んでおります。また、半導体検査・測定装置事業では、装置の更なる高精度化・高機能化に取り組んでおります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、9億円であります。
FY2021|8,683 文字
5【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげております。技術開発本部では、各事業の基盤と競争力強化に向けた研究開発に加え、将来に向けた新製品・プロセスを具現化する高度で先端的な技術の開発も先導して行っており、自動車分野、航空機分野、エネルギー分野、人工知能(AI)含むICT分野などでの新たなメニュー創出とそれらを支えるものづくり力を強化していきます。さらに、ソリューション提案力の強化による当社材の需要拡大・拡販及び素材系事業のプロセス技術開発力と現場適用力を強化するため、2020年4月1日付で、「ソリューション技術センター」と「プロセス技術センター」を新設しました。ソリューション技術センターは、ソリューション開発力及び提案力の強化による当社材の需要拡大・拡販を狙って、事業部門と技術開発本部のソリューション開発組織を技術開発本部に統合・集約して新設しました。自動車の車体軽量化に資するソリューション技術(構造、接合、加工)の研究開発と迅速なユーザ支援、自動車の将来技術調査とそれらを活かした幅広い新規メニュー・新規事業の開拓、非自動車用途の製品メニューやものづくり支援へのソリューション技術の展開を行います。プロセス技術センターは、素材系事業の各工場のものづくり力強化を狙いに、事業部門と技術開発本部の熱、圧延プロセス、計測分野の専門家を集約して新設しました。素材系の各工場に専門家が駐在する形とし、現場の知見と専門技術を融合させて、技術課題の迅速な解決、潜在課題の早期発見、プロセス技術力の強化を進めます。両組織とも、集約のメリットを活かし、技術の担保と高度化、人材育成を計画的に推進します。また、1996年に流行した「O-157」食中毒事件をきっかけに、独自に開発した「高機能抗菌めっき技術KENIFINE™」が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因となる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対してもウイルスの感染力を低下させることを確認いたしました。第三者機関にて効果検証を実施し、ステンレス鋼と比較してウイルスの感染力が1/1000程度になる結果が得られております。今後もKENIFINE™技術を進化させるとともに、Withコロナ・Afterコロナの時代に人々がより安全・安心で豊かに暮らせる世界をつくることへの貢献を目指し、新たな用途開発などに取り組んでまいります。当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、310億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行っている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用57億円が含まれております。主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。 [鉄鋼アルミ]鉄鋼アルミでは、特殊鋼線材、自動車用高強度鋼、ディスク用アルミ板などの戦略製品の差別化による拡販と生産性・歩留まり向上による収益改善のための技術開発に注力しています。また、CO2排出量削減に直接貢献できる技術開発にも引き続き取り組んでおります。鉄鋼では、AIによる高炉の炉熱予測システムを開発し、2020年8月より加古川製鉄所第2高炉にて運用を開始しました。これにより、5時間先の溶銑の温度が自動かつ高精度で予測可能となり、炉内温度低下などの操業トラブルを未然に防止し、更なる安定操業に繋がります。今後は、より高度な炉況制御を行える「AI操炉®」の実現を目指し、開発を進めてまいります。また、天然ガスを使った還元鉄製鉄法(MIDREX®プロセス)で形成した熱間成形還元鉄(HBI:Hot Briquetted Iron)を高炉に多量に装入し、高炉からのCO2排出量を決める還元材比を安定的に低減でき、高炉工程でのCO2排出量を約20%削減できる技術の実証に成功しました。今後も引き続き、CO2排出量の更なる削減、並びに、CO2削減コストの低廉化など、低CO2排出高炉操業技術のブラッシュアップにチャレンジしてまいります。加えて、冷延及び溶融亜鉛めっきの高加工性超ハイテン鋼板を安定して生産するプロセス技術を開発し、2021年3月より、加古川製鉄所薄板工場において、第3CGL(溶融亜鉛めっきライン:Continuous Galvanizing Line)の営業運転を開始しました。本設備は、自動車用超ハイテン鋼板(強度:TS≧780MPa)の需要拡大を見据えた生産能力の拡大と生産性向上、また将来的な更なる高強度化、高加工性ニーズへの対応を実現可能とする設備です。今後お客様である自動車メーカーと量産に向けた材料承認を進めてまいります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、64億円であります。[素形材]素形材では、輸送機分野(自動車、船舶、航空機)を中心に、将来においても事業の中核をなす製品に関する研究開発や新製品の探索を推進しています。また、品質改善や生産性改善に向けた生産基盤の強化に資する研究開発にも注力して取り組んでおります。鋳鍛鋼では、今治造船(株)が建造する11,000TEU(注1)大型コンテナ船シリーズに、当社船舶用製品(エンジン回りの部品である「クランク軸」と「中間軸」(注2)))が採用されました(2021年3月末時点で、船社のEver Greenにて5隻就航済)。近年、船舶業界では環境問題へ対応するために、船舶から排出されるNOX、SOX、CO2等に高い排出規制が課されるなど環境規制が進み、燃費向上や、環境機器等のスペース確保のため、搭載する各機器・部品においては、軽量化・短尺化が求められています。今回採用された製品では、従来品と比較し、クランク軸の全長を約6%(1m)短尺化し、重量は2製品それぞれ約10%(合計約40トン)軽量化しています。クランク軸においては、本船向けのエンジンを製造する(株)三井E&Sマシナリーと共同で「結合型」クランク軸を1本で製造する「一本型」クランク軸を開発し、新たな生産技術を確立するとともに設備投資することにより、製造可能となりました。中間軸については従来の炭素鋼と比較し軸径の低減により軽量化させた高強度中間軸が採用されました。本製品は2014年に開発し世界統一規則(IACS)として採択されています。チタンでは、当社が開発し世界で初めて量産化に成功した「NC(Nano-Carbon composite coat)チタン」(以下、NCチタン)が、2020年12月に発売されたトヨタ自動車(株)(以下、トヨタ自動車)の新型「MIRAI」の燃料電池セパレータ用材料として採用されました。また、優れた技術により新型「MIRAI」の商品力向上に貢献したことを評価され、トヨタ自動車よりプロジェクト表彰を受賞しました。セパレータは、燃料電池内で燃料ガスや空気の流路を形成するとともに、発生した電気を流す役割を担う板状の部品で、耐食性、表面導電性、成形性等の性能が求められます。NCチタンは、比重が鉄の60%程度と軽量で耐食性も兼ね備えたチタン圧延材の表面に導電性が付与されており、プレス成形性にも優れています。これまではプレス成形後に導電性を付与する表面処理が必要でしたが、開発したNCチタンによりこの表面処理工程の省略が可能となりました。NCチタンの量産開発はトヨタ自動車と共同で行いました。その開発過程において当社機械事業部門の真空表面処理技術をNCチタン製造工程に適用し、当社独自の連続表面処理設備を製作するなど、当社ならではのシナジー効果を発揮しています。NCチタンは小型・高性能な燃料電池を通してカーボンニュートラルなグリーン社会の実現、並びに、お客様における飛躍的な生産性向上に貢献しています。なお、当連結会計年度における研究開発費は、26億円であります。 (注1)TEU20フィートコンテナ1個分を1TEUとしたコンテナ搭載量のことです。(注2)クランク軸と中間軸クランク軸はエンジンで発生させた往復運動を回転運動へ変換する部品です。中間軸はその動力をスクリュへ伝える部品の一部です。 [溶接]溶接では、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、溶接材料と溶接ロボット・装置・電源を組合せ、さらに溶接プロセスを加えた「溶接ソリューション」を提供する企業として、引続き開発に注力しています。溶接材料では、自動車足回り部品向けに、電着塗装性を向上させた専用ソリッドワイヤ「FAMILIARC™ MIX-1TR」を開発しました。これまでの溶接部は、生成したスラグが電着塗装工程で塗膜の形成を阻害し、塗装不良となり、防錆性能が劣化することが課題となっていました。MIX-1TRは、溶接部にスラグが残存しても電着塗装性に優れるように成分設計された溶接ワイヤです。現有設備やシールドガス組成などの変更なく適用が可能で、GA鋼板にも溶接可能です。また、従来製品と同等以上の高速溶接性が得られることなど、自動車製造ラインの生産性を損なうことなく、部品の防錆性能を向上できます。MIX-1TRは2020年度より自動車メーカーで初採用となり、国内外で今後の需要拡大が期待されます。加えて、洋上風力発電の造管工程向けに狭開先用サブマージ溶接フラックス「TRUSTARC™ PF-H55LT-N」を開発し、販売を開始しました。ソリッドワイヤ「FAMILIARC™ US-29HK」と組合せることで、狭開先で課題となるスラグ剥離性や耐欠陥性に優れ、良好な溶接金属の機械的性質が得られます。近年大型化が進む洋上風力発電設備において、更なるパイルの太径化や厚板化が要求されています。造管工程では、溶接施工効率向上を目的に狭開先の採用も検討されており、同分野への拡販が期待されます。溶接システムでは、小型可搬型溶接ロボット「石松」とティーチングBOX(ロボット操作)に改良を施し、ケーブルレスとしました。REGARC™プロセス搭載のケーブルレス石松は2020年10月より受注を開始しました。ケーブルレスとすることで、約5kg軽量化され、ロボットの搬入出・設置作業が更に楽になり、ケーブルを気にすることなく便利に操作が行えます。これまでの石松と全く同じ機能を有し、取得済の建築鉄骨溶接ロボット型式認証がそのまま適用できます。今後、より利便性を高め、高品質な溶接施工が提供できるように、引続き努めてまいります。また、新たなエレクトロスラグ溶接法(ESW)として立向溶接法「SESLA™」を開発しました。従来のエレクトロガスアーク溶接法(EGW)である「SEGARC™」と比べ、溶融スラグの抵抗発熱を熱源とする溶接法であるため、アーク光が発生せず、スパッタやヒュームが極めて少ない特長を有し、溶接作業環境の改善ができます。また、新装置開発により、フラックス自動投入など自動化レベルを向上させる装置機能を搭載しました。専用の溶接材料としてはフラックス「FAMILIARC™ EF-4」及びフラックス入りワイヤ「FAMILIARC™ ES-X55E」を開発し、従来施工法では不可能なレベルまで溶接部のじん性を大幅に向上しています。現在、主要造船所で実船への適用試験を進めており、今後、造船業に限らず高能率・高品質な立向溶接法として普及に努めてまいります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、29億円であります。 [機械]機械では、環境、省エネ(CO2削減)をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術や商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面から更なるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり」の実現を目指しています。圧縮機関連分野では、開発中の「舶用バイナリー発電システム」について、(株)商船三井と共同で、春山海運(株)のケープサイズのばら積み貨物船(今治造船(株)建造)に搭載し、約3年間の実船運用に関する共同研究を行います。本システムは、従来、大部分が廃棄されていた船舶の主エンジンの掃気冷却に伴う廃熱を熱源に、最大約100kWの発電が可能です。発電した電力は船舶における動力の補助電源などに有効活用することで、発電機エンジンのCO2排出量及び燃料の削減に貢献します。本システムは、日本海事協会(日本)、Lloyd(イギリス)、DNV・GL(ノルウェー)及びABS(米国)の認証機関の基本承認を取得しています。なお、当連結会計年度における研究開発費は、38億円であります。 [エンジニアリング]エンジニアリングでは、将来の成長が見込まれる低炭素(CO2削減)、環境、エネルギー等の有望分野における独自プロセス・技術の更なる差別化、競争力強化に向けた開発を継続しております。還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とした製鉄法(MIDREX®プロセス)の競争力維持・強化に向けた開発を継続しております。水処理関連分野では、温室効果ガス削減・未利用エネルギーの有効活用に向けた下水汚泥エネルギー化技術の開発を推進し、電熱スクリュ式炭化炉を用いた汚泥燃料化技術が日本下水道事業団の新技術Ⅰ類に選定されました。本技術は、脱水汚泥を乾燥後、還元状態で電気を熱源として加熱し、汚泥燃料を製造するものです。電熱スクリュを活用したコンパクトな炭化炉と熱風発生炉等が不要となるシンプルなフローによる放熱量の低減で、従来技術である外熱キルン式炭化炉よりも投入エネルギーを少なくすることが可能な技術です。また、神奈川県との「環境配慮型創エネ焼却システムに関する共同研究」を終了し、流動タービン及びバイナリー発電等の省エネ・創エネシステム導入により、従来と比較し、焼却設備全体で消費電力を6割、温室効果ガス排出量を1割弱削減可能であることを確認しました。本研究は、焼却炉の廃熱を利用した環境配慮型創エネ焼却システムの技術を実機へ適用することにより、期待される「省エネルギー」・「創エネルギー」の性能及び「温室効果ガスの排出量の低減効果」を検証するとともに、神奈川県流域下水道事業の地球温暖化対策の推進に寄与することを評価するために実施したものです。他、高濃度汚泥消化技術や環境配慮型創エネ汚泥焼却システムなどの技術開発を完了しました。廃棄物処理関連分野では、機種性能向上への取り組みに加え、脱炭素化に向けたCO2有効利用技術の開発に着手しました。藻類事業においては、ユーグレナグラシリスEOD-1株由来パラミロンの機能評価のためヒト試験を実施し、科学的根拠に基づく安全性・機能性として、従来の「身体的疲労感の軽減」に加え「精神的疲労感の軽減」を確認しました。本件を表示内容とする機能性表示食品の消費者庁への届け出が完了しました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、21億円であります。 [建設機械]建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーの活用により「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。ショベルでは、日本マイクロソフト(株)と共同でIoTや画像・音声の認識技術、人工知能などを活用し、施工現場が映るモニターと建機操作のレバーを備えたコックピットから油圧ショベルなどを操作し、あたかも運転者が実際に操縦しているような作業を実現するための技術、建機遠隔操作システムの開発を進めています。今年度は本システムの開発を加速させ、現場事務所からの建機操縦など近距離環境の無線操縦システムを2021年度末までに完成させる計画です。また光ファイバーケーブルなどの長距離環境の操縦に取り組み、2025年度末に「建機テレワークサービス」の完成を目指しています。本開発は建機を操縦できるベテラン作業員の定年退職や人手不足に備えることを1つの目的としています。また、コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)が目指す“K-DIVE CONCEPT”「働く人を中心とした建設現場のテレワークシステム」を推進するため、北海道総合通信網(株)(以下、HOTnet)と建設機械の遠隔操作に関する開発協定を締結し、本協定に基づいた実証実験を実施しました。今回、HOTnetが所有する北海道札幌市から北海道帯広市に至る光ファイバーネットワークを経由して総距離300kmに及ぶ油圧ショベルの遠隔操作を行うと同時に耐災害性に優れ、強固なセキュリティ性を備えたHOTnet所有の札幌データセンターに稼働データを蓄積し、Microsoft Azureとの接続を行いました。油圧ショベルにて土砂をダンプトラック荷台へ積込む実証実験により、実機に搭乗して操作した場合とほぼ同等の作業効率で遠隔操作が可能であることを確認し、建機テレワークサービスの実用化に向け大きく進展しました。加えて、実際の稼働現場における遠隔操作検証を2020年11月より開始しました。今回の検証である近距離での遠隔操作はK-DIVE CONCEPTに強く関心を持つ産業振興(株)(以下、産業振興)の協力により実現したもので、過去何度かのトライアルを経て、今回の継続的な実作業による検証開始となりました。具体的には産業振興の事業所内スクラップヤードにて、ローカル無線通信環境を利用し、ヤード内事務所から約100m離れた現場にあるリフティングマグネット仕様機(35t油圧ショベルをベースとしたハンドリング機械)を「近距離」遠隔操作するものです。K-DIVE CONCEPTの「近距離」遠隔操作は実際に機械に搭乗して操作した場合とほぼ同等の品質(通信速度、作業効率等)での操作が可能な段階にあり、今回の検証は1年程度の長期に渡った実作業での検証を行う、商用化に向けた最終確認と位置付けています。またK-DIVE CONCEPTを推進するため、ライカジオシステムズ(株)(本社:スイス ヘルブルグ、以下、ライカ)とマシンガイダンス(以下、MG)の遠隔操作技術の開発に向けて協業することになりました。ライカのMGシステムは操縦席のスクリーンに表示される設計モデルと実際の切土盛土状況を確認しながら、経験の浅いオペレータでも、設計モデルどおりに迅速に掘削作業を行うことができるのが特徴です。今回の協業はMGをK-DIVE CONCEPTによる遠隔操作で使用した場合でも、実際に機械に搭乗して操作した場合と同等の品質(通信遅延、作業効率等)にすることで、安全で誰でも働ける遠隔施工現場を実現することを目的としています。またMGの遠隔操作が可能となればオペレータは時間や場所だけでなく、技量による制約も同時に解消することが可能となります。さらに、2020年11月に(株)安藤・間(以下、安藤ハザマ)と油圧ショベルの自動運転技術の確立に向けた実証実験を実施いたしました。両社はお互いの強みを生かして油圧ショベルの自動運転推進に向けた研究開発を促進するため、2019年4月に共同研究に関する協定を締結しました。コベルコ建機は主に自動運転の油圧ショベルシステム開発を、安藤ハザマは現場へ適用するための施工と安全に対する管理システム開発や現場運用ルール化を担います。実験では自動運転に必要とされる「認知」「判断」「操作」などの要素技術のうち、「認知」にAIを適用させることで、物体認識、距離測定等を行い、その情報から目標位置を自動調整することで現場での状況変化に対応できることを確認しました。またプレイバック中の自動運転状況は、作業者がリアルアイムにタブレット端末で確認可能としました。加えて、バケット爪先の3次元軌跡をリアルタイムに計測しており、将来的に自動運転の監視や施工状況の管理に利用可能であると考えています。なお、当連結会計年度における研究開発費は、64億円であります。 [その他](株)コベルコ科研では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。また高付加価値なフラットパネルディスプレイ向けの高移動度酸化物ターゲット材料や半導体検査装置の高精度、高機能化の開発に取り組んでいます。さらに成長市場分野への事業拡大を目指し、自動車分野におけるFCV関連評価技術、モータ・インバータや電池などの駆動電子部品に関する評価技術の開発、また近年発達著しいAI、MIを活用した研究開発支援のメニュー開発などを進めております。なお、当連結会計年度における研究開発費は、7億円であります。
FY2020|6,314 文字
5【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげております。当社技術開発本部では、各事業の基盤と競争力強化に向けた研究開発に加え、将来に向けた新製品・プロセスを具現化する高度で先端的な技術の開発も先導して行なっており、自動車分野、航空機分野、エネルギー分野、人工知能(AI)含むICT分野などでの新たなメニュー創出とそれらを支えるものづくり力を強化していきます。また、当社各部門及び連結子会社の技術開発部門では、事業の競争力強化に直結する製品及び生産技術の開発を行なっております。今後とも、グループ全体にわたる研究開発への経営資源の投入を効果的に行なってまいります。当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、358億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行なっている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用68億円が含まれております。主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。 [鉄鋼]鉄鋼では、輸送機分野(自動車、船舶、航空機)や建設分野を中心に特殊鋼や高強度鋼、鋳鍛鋼、チタン、鉄粉の商品力・強みを生かした商品開発と「ものづくり力」の強化に向けた生産技術の開発に引き続き注力して取り組んでおります。薄板分野では、プレスの生産性に優れたホットスタンプ用めっき鋼板(焼入れ後強度1500MPa級)を開発しました。本製品とスペインの自動車部品会社であるGestamp社の加工技術を組み合わせることで、欧州自動車メーカーへ初めて適用され、量産化に至りました。本製品は、2017年に開発した高生産性ホットスタンプ用冷延鋼板(注1)に亜鉛めっき処理を施したものであり、高生産性ホットスタンプ用冷延鋼板の適用部品の拡大の可能性を大きく広げるものです。また、優れた耐食性、耐疵付き性、加工性を有し、構造用から建築、電機、自動車分野など広く適用可能なアルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板である「KOBEMAG®」については、日鉄日新製鋼(株)(注2)への製造委託から、同社へのめっき委託(原板となる熱延鋼板は当社材)へ移行を進めていますが、今般、めっき委託材について、建築基準法(第37条第二号)に適合するものとして国土交通大臣の認定を取得しました。これにより、「KOBEMAG®」はめっき委託材においても建築構造部材を含む幅広い用途へ採用できる素材となりました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、78億円であります。 (注1) 高生産性ホットスタンプ用冷延鋼板従来のホットスタンプ用鋼板と比べて焼入れ性を向上させることで、お客様でのプレス生産性の改善、加工後の冷却ムラによる強度不足の軽減、プレス部品形状の自由度向上、プレス後のレーザーカット工程の省略を可能とした鋼板(注2) 2020年4月1日付で製造委託契約の相手会社である日鉄日新製鋼(株)が日本製鉄(株)に吸収合併されたことに伴い、契約相手先が日本製鉄(株)に変更となりました。 [溶接]溶接では、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、溶接材料と溶接ロボット・装置・電源を組合せ、さらに溶接プロセスを加えた「溶接ソリューション」を提供する企業として、引続き開発に注力しています。溶接材料分野では、舶用LNG燃料タンクに用いられる9%Ni鋼の溶接に適したNi基合金のフラックス入りワイヤ「PREMIARCTM DW-N609SV」を開発しました。本製品は、Ni基合金溶接で問題となる高温割れが生じ難く、溶接作業性、特に立向溶接性に優れるという特長を有しています。既にメガコンテナ船LNG燃料タンクで採用され、今後、需要の拡大が見込まれます。また、造船向けに、小型可搬型溶接ロボット「石松」での自動溶接用フラックス入りワイヤ「FAMILIARCTM MX-100ER」を開発しました。「MX-100ER」はソリッドワイヤに比べ大粒スパッタを大幅に削減し、スラグが少ないことにより2~3パスの連続溶接が可能で、自動溶接に適しています。また、石松にはMX-100ERの溶接パラメータが搭載されており、コントローラでMX-100ERを選択すれば、姿勢・板厚・開先形状に応じた溶接条件が自動設定され、最適な条件で優れた溶接品質が得られます。溶接システム分野では、アーク溶接ロボットの小型機種「ARCMANTM A40」を開発しました。同機は、従来機種「ARCMANTM SR」の後継機で、アーム長さや中厚板溶接機能など基本スペックは従来機を継承しました。新たな特長として、ロボット旋回軸を中空化して溶接ケーブルを内挿する構造を採用しました。これにより溶接品質の向上と自動化を阻害する同ケーブルの巻きつきを解消しました。また動作範囲を大幅に拡大し、より様々な形状のワークを溶接することが可能になりました。さらに、当社アーク溶接ロボットのスタンダード機「ARCMANTM MP」の後継機となる「ARCMANTM A60」を開発しました。A60はアーム長がMPと同等で、既存の周辺装置や教示プログラムを活かした設備リニューアルに対応することが可能です。A60はA40と同様にロボット旋回軸を中空化することでケーブル類の干渉を防止し、また3軸目の動作範囲をMP比で約23%拡大することでワークとの干渉を回避したアプローチが可能となり、さらなる自動化率の向上につながります。ARCMANTMシリーズ各ロボットの特長を活かし、国内外の中厚板溶接の分野で対象ワークやユーザニーズに最適なシステムを提案してまいります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、40億円であります。 [アルミ・銅]アルミ・銅では、中長期事業競争力の強化に向け、自動車関連部材等「成長分野」の技術開発と品質及び生産技術に注力して研究開発を進めております。また、缶用材料、電子機器材料等の「コア製品分野」では、安定した生産性確保とさらなる品質向上を継続的に推進しています。アルミ板分野では、自動車パネル材において、真岡製造所・神鋼汽車鋁材(天津)有限公司の両拠点に加え、真岡製造所に新熱処理・表面処理設備の建設が完了し、量産に向けた準備を進めています。また、当社の特徴である接合や解析技術のソリューション提案力も高く評価されており、自動車へのアルミ板材の採用拡大に貢献しています。飲料缶材料では、市場シェア維持・拡大のため品質向上や薄肉化に対応できる材料開発を推進しました。また、HDD用ディスク基板では今後進展する薄肉化に対応した材料及び生産技術の開発に注力しております。鋳鍛分野では、自動車サスペンション用アルミ鍛造部品において北米・中国を始めとしてグローバルに需要が拡大しており、サスペンション部品の生産性向上、さらなる品質向上のための技術開発を推進しています。また、他社との差別化を図るために、高強度合金開発と構造設計の両面から軽量化提案を行ない、お客様から高い評価を得ています。さらに自動車分野以外でも、高性能な耐熱材料の開発や、競争力向上のためのプロセス技術の開発を行なっています。押出分野では、アルミ製バンパーシステムや車両骨格部材などの自動車用押出形材に対して、軽量で衝突安全性に優れた材料のニーズが高まっています。当社では高強度でかつ耐応力腐食割れ性に優れた独自の7000系合金押出形材を開発し、日本だけではなく米国でも溶解鋳造から押出、加工までの一貫生産を開始しています。将来の差別化・競争力強化に向けて、更なる高強度合金開発やその生産技術開発にも注力しております。銅板分野では、自動車向け電装部品用端子材料の需要が好調であり、低摩擦係数と耐熱性に優れた錫めっき(新リフローめっき)技術が高く評価され、国内外で採用が拡大しています。欧州につづき米国伸銅メーカーへも「新リフローめっき」技術のライセンスを供与し、現地からの供給を始めています。今後も更なるグローバル供給体制の拡充を推進します。また、自動運転化に伴う電装化の進展から、端子の小型化、多極化に最適な高強度、薄板材料の開発を推進しています。さらに、スマートフォン用などの散熱部材への開発合金の採用も順調に増加しています。なお、当連結会計年度における研究開発費は、33億円であります。 [機械]機械では、環境、省エネ(CO2削減)をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術や商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面からさらなるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり」の実現を目指しています。圧縮機関連分野では、グリーン冷媒(低GWP冷媒)を採用し、環境性と高い省エネ性を両立した高温ヒートポンプ「HEM-HR-GN/GLシリーズ」を開発しました。55℃から95℃の温水取出機ラインアップのうち、95℃温水取出機は、木村化工機(株)と共同開発したモデルで、本年パイロットプラントでの検証試験を行ないます。また、東京ガス(株)、三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株)、三浦工業(株)、当社の4社が2015年に開発したガスエンジンの廃温水を蒸気として回収する「全蒸気回収ガスエンジンコージェネレーションシステム」が、一般社団法人日本ガス協会が主催する2019年度「技術賞」を受賞しました。本システムは発電効率と蒸気回収効率を合わせた総合効率で世界最高を達成しています。なお、当連結会計年度における研究開発費は、35億円であります。 [エンジニアリング]エンジニアリングでは、独自プロセス・技術のさらなる差別化、競争力強化に向けた開発を継続するとともに、将来の成長が見込まれる、環境、エネルギー等の有望分野において、積極的に開発を推進しております。還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とした製鉄法(MIDREXプロセス)の競争力維持・強化に向けた開発を継続しております。2019年9月には、当社子会社であるMidrex Technologies, Inc.が、世界最大の鉄鋼メーカーであるArcelorMittal(以下、アルセロール・ミッタル社)が進める水素を活用した低炭素製鉄の研究・開発において、水素を活用した直接還元製鉄法の技術サプライヤーとして採用され、アルセロール・ミッタル社と共同開発契約を締結しました。水処理関連分野では、下水道におけるバイオマスエネルギーの利活用を目指した高濃度汚泥消化技術、環境配慮型創エネ汚泥焼却システムなど、ライフサイクルコストの低減に向けた技術開発を継続して推進しております。廃棄物処理関連分野では、ごみクレーンの自動化やAIや通信技術を利用した操業の省力化・安定化、CO2有効利用技術の開発に取り組んでおります。化学・食品機械関連分野では、機能性グラスライニング、撹拌式凍結乾燥機等、競争力強化に向けた商品開発に取り組んでおります。新規事業関連分野では、水素発生装置のブラッシュアップを推進し、水素の利用拡大が見込まれるモビリティ分野向けの装置を受注いたしました。また、ユーグレナ(微細藻類)については、ユーグレナグラシリスEOD-1の機能性表示食品の商品化等に取り組んでおります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、24億円であります。 [建設機械]建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーを活用して、「働く人を中心とした、建設現場のテレワークシステム」を意味するK-DIVE CONCEPT推進のために、日本マイクロソフト(株)と協業することを2019年5月22日の「建設・測量生産性向上展2019」にて発表いたしました。クラウドマッチングシステムにより、特定の人・場所・時間などの制約を受けずに、現場の施工が可能となる「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。ショベル関連分野では、機能性・快適性を大幅に向上させた7トン級油圧ショベルSK75SR-7の販売を2019年5月1日より開始しました。燃費改善開発により従来機比で登坂走行速度を27%、アーム掘削速度を15%向上させ生産性を改善しています。また、筋電位の計測データに基づき、人間工学や感性工学的な視点を盛り込みながらシートやレバー、スイッチ類のポジションの最適化を行なうことで、作業時の快適性も大幅に向上させました。クレーン関連分野では、国立大学法人豊橋技術科学大学と、クローラクレーンに関する両者の知識、経験及び人的資源、物的資源を相互に活用した研究の推進、研究成果の社会活用促進、高度な人材の育成を目的として、包括連携協定を2019年2月5日に締結しており、2019年4月1日に豊橋技術科学大学に「コベルコ建機次世代クレーン共同研究講座」を開設しました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、69億円であります。 [その他](株)コベルコ科研では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。さらに、液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイ用の配線に用いられる薄膜用のターゲット材料や半導体等の検査装置の開発に取り組んでいます。近年発達著しいAI(Artificial Intelligence)、MI(Materials Informatics)、ビッグデータを用いた解析等の研究開発、自動車分野におけるモータ・インバータや電池などの駆動電子部品に関する研究開発を効果的・効率的に進めるために、分散していた計算科学に関する技術と人材、EVモーター、自動車用電子部品、二次電池に関する技術、人材を集約し、「計算科学センター(Computational Science Department)」と「EV・電池プロジェクト室」を新設しました。両室においては、構造解析、熱流体等の分野での機械学習を活用したCAEのメニュー開発、EV用高容量電池の電池試作や分析技術、CAE、安全性試験の複合解析評価技術開発等の市場に即したメニュー開発に取り組んでおります。また、「パルス渦流法を用いた非破壊検査技術」が、国土交通省の公共工事等における新技術活用システム「NETIS-VE」に登録され、併せて「活用促進技術」に指定されました。この技術は主に、土砂・アスファルト・コンクリート等に埋設された道路附属物(照明柱、標識柱等)の地際部腐食を掘削することなく測定できる技術で、現状の掘削後に4か所の板厚測定をする技術に対し、測定時間の大幅な短縮が可能となります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、9億円であります。
FY2019|5,820 文字
5【研究開発活動】当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげております。当社技術開発本部では、各事業の基盤と競争力強化に向けた研究開発に加え、将来に向けた新製品・プロセスを具現化する高度で先端的な技術の開発も先導して行なっており、自動車分野、航空機分野、エネルギー分野、人工知能(AI)含むICT分野などでの新たなメニュー創出とそれらを支えるものづくり力を強化していきます。2018年10月に人工知能(AI)を活用して製品開発力とものづくり力の強化を目指す専任組織「AI推進プロジェクト部」を新設しました。産業界におけるAI技術の応用が急速に進む中、当社の幅広い事業分野で培われた多様な経験と専門性を持つ技術者約20名を専任者として配置し、事業競争力の根幹である材料や機械製品の開発とものづくりにおいて、他社との差別化が可能となる技術の確立を目指します。当社各部門及び連結子会社の技術開発部門では、事業の競争力強化に直結する製品及び生産技術の開発を行なっております。今後とも、グループ全体にわたる研究開発への経営資源の投入を効果的に行なってまいります。当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、344億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行なっている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用97億円が含まれております。主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。 [鉄鋼]鉄鋼では、輸送機分野(自動車、船舶、航空機)や建設分野を中心に特殊鋼や高強度鋼、鋳鍛鋼、チタン、鉄粉の商品力・強みを生かした商品開発と「ものづくり力」の強化に向けた生産技術の開発に引き続き注力して取り組んでおります。特殊鋼分野では、自動車の電動化や燃費改善に貢献可能な鋼材の開発と、加古川製鉄所への上工程集約を起点とした生産技術力の強化を進めております。厚板分野では、建設業を中心としたお客様の合理化と工期短縮の要望に対応するために、切断・曲げ・溶接等の厚板加工を高効率で行なうことができる熱加工制御(TMCP)鋼を商品化するとともに、それらの新商品の実現と安定生産の基盤となる圧延や冷却を始めとする生産技術の高度化に取り組んでおります。薄板分野では、自動車ボディ骨格用高強度鋼板(ハイテン)の適用拡大やさらなる高機能化の要望に対応するために、高強度に加えて加工性、溶接性、衝突特性等を兼備したハイテンの新商品開発を推進しています。これらを具現化する高度なミクロ組織制御を実現するため新連続焼鈍設備の導入を決定し、2021年2月稼動に向けて建設を進めております。鋳鍛鋼品については、舶用主機関や陸上発電機に使用されるディーゼルエンジンの燃料効率改善等に寄与することを目的として、クランク軸用高強度鋼の開発を進めてきました。その結果、新開発鋼の実機サイズでの特性評価が完了し、船級協会による承認を取得しました。チタン分野では、航空機向けチタン鍛造品について内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を活用し、鍛造における形状並びに組織・材質予測技術を構築することで、品質・工程・設計技術をさらに向上させる取り組みを行ないました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、52億円であります。 [溶接]溶接では、画期的な溶接プロセスである「REGARCTM」を搭載した小型可搬型溶接ロボット「石松」を開発しました。炭酸ガスアーク溶接の大電流域におけるスパッタ・ヒューム発生量を大幅に低減した「REGARCTM」プロセスと人が持ち運べる軽さの「石松」との組合せにより、溶接の自動化ソリューション提案力をさらに充実させました。建築鉄骨溶接ロボット型式認証は取得済みであり、2018年4月の「2018国際ウエルディングショー」でのプレスリリースを経て、2018年7月より受注を開始しました。また、大型ロボット「ARCMANTM XLmkⅡ」の後継機である「ARCMANTM A80」を開発しました。特長として、下腕フレーム構造をシリアルリンク化することによって従来機を超えた広い動作範囲を実現、また、スリム化、軽量化、ケーブル経路の簡潔化ができております。さらに、新型CBコントローラと接続することにより、センシング動作時間を短縮し、タクトタイムの削減が可能となります。さらに、溶接材料の面からも溶接の自動化を推進するために、造船大組立ロボット溶接システム専用の溶接ワイヤとして「FAMILIARCTM DW-100R」を開発しました。大組立工程では立向上進溶接が多く、加えて従来技術では溶接困難なルートギャップが自動化を阻害する要因となっていました。「FAMILIARCTM DW-100R」は、立向上進溶接の溶接時間を半減させ、また耐ギャップ性を向上しています。また、水平すみ肉姿勢でも良好なビード形状が得られ、立向/水平姿勢で兼用できるロボット専用ワイヤとなります。加えて、造船の板継工程に用いられている当社「FCBTM」での溶接品質のさらなる向上、手直し時間の低減による効率化を実現させる「終端割れ防止技術」を開発しました。変形シミュレーションを駆使し、終端割れに影響する諸因子を抽出、引張の塑性ひずみを低減させ、終端割れを防止する施工法を確立しました。なお、本施工法はジャパン マリンユナイテッド(株)と共同で、国土交通省が推進する海事生産性革命(i-Shipping)の革新的造船技術研究開発事業で2017-2018年度に採択されており、その研究成果となります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、37億円であります。 [アルミ・銅]アルミ・銅では、中長期事業競争力の強化に向け、自動車関連部材等「成長分野」への技術開発と品質及び生産技術の向上に注力して研究開発を進めております。また、缶用材料、電子機器材料等の「ボリュームゾーン」では、安定した生産性確保とさらなる品質向上を継続的に推進しています。アルミ板分野では、自動車パネル材の需要が拡大しており、真岡製造所・神鋼汽車鋁材(天津)有限公司の両拠点での生産が増加しています。また、真岡製造所では熱処理・表面処理設備を建設中で、2020年から稼働開始する予定です。材料・表面処理技術に加えて、当社の特徴である接合や解析技術のソリューション提案力も高く評価されており、自動車へのアルミ板材の採用拡大に貢献しています。飲料缶材料では、進展する薄肉軽量化に対応した高強度・高成形性材料の開発を推進し、高い評価を得ており市場シェアの維持に貢献しています。鋳鍛分野では、自動車サスペンション用アルミ鍛造部品において北米・中国を始めとしてグローバルに需要が拡大しており、サスペンション部品の生産性向上、さらなる品質向上のための技術開発を推進しています。また、他社との差別化を図るために、高強度合金開発と構造設計の両面から軽量化提案を行い、お客様から高い評価を得ています。さらに自動車分野以外でも、高性能な耐熱材料の開発や、競争力向上のためのプロセス技術の開発を行なっています。押出分野では、アルミ製バンパーシステムや車両骨格部材などの自動車用押出形材に対して、軽量で衝突安全性に優れた材料のニーズが高まっています。当社では高強度でかつ耐応力腐食割れ性に優れた独自7000系合金押出形材を開発し、日本だけではなく米国でも溶解鋳造から押出、加工までの一貫生産を開始しています。将来の差別化・競争力強化に向けて、さらなる高強度合金開発やその生産技術開発にも注力しております。銅板分野では、自動車向け電装部品用端子材料の需要が好調であり、低摩擦係数と耐熱性に優れた錫めっき(新リフローめっき)技術が高く評価され、国内外で採用が拡大しています。欧州につづき米国伸銅メーカーへも「新リフローめっき」技術のライセンスを供与し、現地からの供給を始めています。今後もさらなるグローバル供給体制の拡充を推進します。また、自動運転化に伴う電装化の進展から、端子の小型化、多極化に最適な高強度、薄板材料の開発を推進しています。さらに、スマートフォン用などの散熱部材への開発合金の採用も順調に増加しています。なお、当連結会計年度における研究開発費は、29億円であります。 [機械]機械では、環境、省エネ(CO2削減)をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術や商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面からさらなるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり」の実現を目指しています。圧縮機関連分野では、当社が開発中の「舶用バイナリー発電システム」について、川崎汽船(株)の協力の下、約3年間の実船運用のフィールド試験を行ないます。本技術をグローバルに展開し、舶用業界における環境負荷低減に貢献してまいります。産業機械関連分野では、樹脂用混練造粒装置のたゆまぬ技術開発がもたらす、優れた混練性能を評価いただき、当社のポリプロピレン向け装置としては過去最大生産規模の「LCM350EX」を受注しました。加えて、当社子会社のQuintus Technologies ABにて航空機用チタン合金(Ti-6Al-4V)に適用できる高圧熱間成形(High Pressure Warm Forming)プロセスを開発しました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、27億円であります。 [エンジニアリング]エンジニアリングでは、独自プロセス・技術のさらなる差別化、競争力強化に向けた開発を継続するとともに、将来の成長が見込まれる、環境、エネルギー等の有望分野において、積極的に開発を推進しております。原子力関連分野では、原子力発電所の廃炉に伴う廃棄物の処理技術の開発に取り組んでおります。還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とした製鉄法(MIDREXプロセス:世界No.1シェア)の競争力維持・強化に向けた開発を継続しております。水処理関連分野では、新下水道ビジョンに沿ったバイオマスエネルギー利活用を目指し、高濃度汚泥消化技術など低LCC(ライフサイクルコスト)を実現できる技術開発を実施しています。また、ユーグレナグラシリスEOD-1の機能性の実証に取り組んでいます。廃棄物処理関連分野では、AIやICTを活用した操業安定化によるプラント運転の省力化に継続的に取り組んでおります。また、従来よりも高温高圧の廃熱ボイラを備えた高効率発電を可能とする流動床式ガス化燃焼炉の第一号機を納入いたしました。化学・食品機械関連分野では、機能性グラスライニングの開発をさらに進め、また粉体機器の改良など医薬品市場向けに競争力を高める開発や、撹拌式凍結乾燥機の商品化を進める開発に取り組んでおります。水素関連分野では、水素発生装置において、メンテナンススペースを削減し操作性を向上させた新機種を上市し、従来機種についてもブラッシュアップ、リニューアルにより、コストダウンと省スペース並びに消費電力の削減を実現しました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、23億円であります。 [建設機械]建設機械では、広島大学と、「コベルコ建機夢源力共創研究所」を2018年4月に広島大学内に設置しました。本研究所は、複数の共同研究講座等を統括・マネジメントする機能を持った研究所として、今まで以上に高い次元での組織対組織の研究活動を可能とするとともに、産業・学術の両面で高い成果に結び付けていくものとなります。クレーン関連分野では、ミニラフテレーンクレーン「LYNX130」(型式:RK130-2/RK130M-2)を2018年5月より国内向けに販売を開始しました。最新のディーゼル特殊自動車2014年排出ガス規制適合エンジンを搭載しており、従来の2ウインチからパワフルな1ウインチに集約することで、操作性・作業効率を大幅にアップしました。また、テレスコピッククローラクレーン「TK550G(最大つり上げ能力55t)」(型式:TK550G)を2018年6月より国内向けに販売を開始しました。2014年排出ガス規制適合エンジンを搭載しており、クローラならではの安定性とつり上げ能力に、全段シリンダ伸縮のテレスコピックブームの作業性を兼ね備えたモデルとして、さまざまな基礎工事から相番作業まで幅広く活用いただけます。さらに輸送幅2.99mを達成し、最新の輸送規制に対応しました。さらに、ショベル関連分野において後方超旋回ミニショベル「SK20SR-6」を2018年10月より販売を開始しました。省エネ運転機能である「エコモード」や「オートデセル機能」を標準装備しており、液晶ディスプレイを標準設定することで、機械のメンテナンス情報、異常情報などのマシン情報が一目で確認できるようになりました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、65億円であります。 [その他](株)コベルコ科研では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。さらに、液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイ用の配線に用いられる薄膜用のターゲット材料や半導体等の検査装置の開発に取り組んでいます。当連結会計年度においては、各自動車メーカーはEV化開発を進めており、当社は「EV駆動モータの評価技術」の開発に取り組んでおります。また、パネルメーカーからのニーズであった、既存のIGZO(In-Ga-Zn-O)をさらに進化させた、8K-TV等の次世代高精細大型フラットパネルディスプレイの用途に適した高電子移動度酸化物半導体用スパッタリングターゲット材を上市しました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、10億円であります。
FY2018|5,333 文字
5【研究開発活動】 当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげております。 当社技術開発本部では、各事業の基盤と競争力強化に向けた研究開発に加え、将来に向けた新製品・プロセスを具現化する高度で先端的な技術の開発も先導して行なっており、自動車分野、航空機分野、エネルギー分野、人工知能(AI)含むICT分野などでの新たなメニュー創出とそれらを支えるものづくり力を強化していきます。 また、当社各部門及び連結子会社の技術開発部門では、事業の競争力強化に直結する製品及び生産技術の開発を行なっております。今後とも、グループ全体にわたる研究開発への経営資源の投入を効果的に行なってまいります。 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、320億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行なっている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用88億円が含まれております。 主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、以下のとおりであります。 [鉄鋼] 鉄鋼では、輸送機分野(自動車、船舶、航空機)を中心に特殊鋼や高強度鋼、鋳鍛鋼、チタン、鉄粉の商品力・強みを生かした商品開発と「ものづくり力」の強化に向けた生産技術の開発に引き続き注力して取り組んでおります。 鋳鍛鋼分野では、超大型コンテナ船用クランクシャフト(全長22m、重量約500t)一式を三井造船(株)(現在の三井E&S造船(株))へ納入しました。本製品は、当社が平成26年に開発した設計疲労強度を20%向上させる「型入れ鍛造法」を適用し製造したものです。また、船舶エンジン用組立型クランク軸の主要部材であるスローの製造方法において、平成29年5月に日本海事協会より、世界で初めてK-factor1.15の認証を取得しました。当社のクランク軸を用いることで、高出力かつコンパクトな船舶エンジンの設計への可能性を拓きます。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、52億円であります。 [溶接] 溶接では、建築鉄骨市場向けに、「鉄骨H柱溶接ロボットシステム」を新たにリリースしました。一般的な溶接ロボットは、溶接線位置と溶接施工条件をロボットに記憶する教示作業が必要になりますが、H柱継手は多様な形状であるため、頻繁な教示作業を要しロボット化が定着しませんでした。この課題に対し、教示データを自動生成する機能を開発しました。加えて溶接施工は、H柱継手に最適な溶接条件と溶接ワイヤを用い、高品質溶接を確立し、システムとして提供します。 また、建築鉄骨市場向けに、新たに溶接材料の3品種をリリースしました。フラックス入りワイヤ「FAMILIARC™ MX-Z50F」は、下向・水平すみ肉姿勢での黒皮鋼板に対して、ビードのなじみやスラグはく離性に優れます。ソリッドワイヤ「FAMILIARC™ MG-56」は、従来の「JIS Z3312 YGW18」に対し、ワイヤ送給性と溶接作業性に優れ、溶接作業者の負荷軽減につながると期待されます。被覆棒「FAMILIARC™ LB-50FT」は、ソフトなアークと安定性、優れたスラグはく離性が特長で、アルミラミネート脱気包装を採用することで開封後の乾燥を省略可能としました。 さらに、液化エタンガス(LEG、-104℃)タンクに使用される5%Ni鋼に対し、オーステナイトステンレス系フラックス入りワイヤ「PREMIARC™ DW-316LE」を開発しました。従来のNi基合金溶接材料と比べ、大幅にNi添加量を低減でき、環境温度において靭性など優れた溶接金属の機械的性質が得られます。特にタンクの立向溶接の効率化が図れることから、今後、世界的なLEGの需要増加に伴い、当製品の国内外からの受注が期待されます。 加えて、自動車の足廻り部品のアーク溶接において普及拡大しているワイヤ送給制御法に対し、専用ワイヤ「FAMILIARC™ MG-1T(F)」の販売を開始しました。ワイヤ送給制御法で課題となる連続・断続溶接時のチップ磨耗に対し、ワイヤ表面処理の最適化により、耐チップ磨耗性を向上させました。さらに、電流波形に同期したワイヤの正送・逆送の送給追従性にも優れています。「FAMILIARC™ MG-1T(F)」はシリーズ化を計画しています。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、34億円であります。 [アルミ・銅] アルミ・銅では、中長期事業競争力の強化に向け自動車関連部材等「成長分野」への技術開発と品質及び生産技術の向上に注力し、技術力強化を優先し進めております。また、缶用材料、電子機器材料等の「ボリュームゾーン分野」では、安定した生産性確保とさらなる品質向上を継続的に推進しています。 アルミ板分野では、神鋼汽車鋁材(天津)有限公司において、中国市場向けを中心とした自動車パネル材の本格量産を開始しており、新規採用も引き続き順調に増加しています。日系自動車メーカーではアルミパネル採用部位拡大の動きがあり、ドアやルーフなどのアルミ化に向け開発・提案しています。材料・表面処理技術の他、当社の特徴である接合や解析技術などのソリューション技術も提案し、アルミパネル材の採用部位拡大に大きく貢献しています。飲料缶材料では、ボトル缶需要拡大と継続した薄肉軽量化のニーズに対応した高強度・高成形性材料の開発を推進し、お客様から高い評価を得ており、特にボトル缶では高い市場シェアの維持に貢献しています。 鋳鍛分野では、自動車サスペンション用アルミ鍛造部品において北米・中国での需要が拡大しており、サスペンション部品の生産性向上、さらなる品質向上のための技術開発を推進しています。また、他社との差別化を図るために、高強度合金開発や構造設計の両面から材料の軽量化に注力し、お客様から高い評価を得ています。さらに、自動車分野以外でも、将来の差別化と当社の優位性確保のため耐熱材料の開発も進めています。 押出分野では、アルミ製バンパーシステムや車両骨格部材などの自動車用押出形材に対して、軽量で衝突安全性に優れた材料のニーズが高まっています。当社が開発した高強度でかつ耐応力腐食割れ性に優れた独自7000系合金押出形材は、北米自動車メーカーにて骨格部材として採用され、供給(輸出)を開始しました。また、米国の生産拠点として溶解鋳造から押出、加工まで一貫した生産工場を建設中(平成30年度下期稼働予定)であり、日米両極での供給体制整備を進めています。 銅板分野では、自動車向け電装部品用端子材料の需要が好調であり、低摩擦係数と耐熱性に優れた錫めっき(新リフローめっき)技術が高く評価され、国内外で採用が拡大しています。欧州につづき米国伸銅メーカーへも「新リフローめっき」技術のライセンスを供与し、グローバル供給体制の拡充を構築しています。また、自動運転化に伴う電装化の進展から、端子の小型化、多極化に最適な高強度、薄板材料の開発を推進しています。さらに、スマートフォン用などの散熱部材への開発合金の採用も順調に増加しています。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、26億円であります。 [機械] 機械では、環境、省エネ(CO2削減)をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術や商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面からさらなるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり」の実現を目指しています。 圧縮機関連分野では、当社が開発した「圧縮空気エネルギー貯蔵システム(製品名:空圧電池)」を、静岡県賀茂郡河津町の実証地に納入し、一般財団法人エネルギー総合工学研究所及び早稲田大学を支援して、NEDOプロジェクトとして風力発電所の出力変動抑制に関わる実証試験を開始しました。 産業機械関連分野では、「水素ステーション向け拡散接合型コンパクト熱交換器(製品名:DCHE)」で、日本冶金工業(株)とともに、ISSF(International Stainless Steel Forum)が主催するニューアプリケーション賞「新技術」分野の「銀賞」を受賞しました。 さらに、少量多品種生産向けに開発したコーティング装置「AIPocket®」の外販初号機を平成29年8月に国内の工具メーカーへ納入しました。 加えて、今後は平成29年4月に買収したQuintus Technologies ABとの協業を拡大し、等方圧加圧装置の製品ラインアップを拡充する他、超大型装置の開発を加速し、世界市場をターゲットにさらなる事業拡大を目指します。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、33億円であります。 [エンジニアリング] エンジニアリングでは、独自プロセス・技術のさらなる差異化、競争力強化に向けた開発を継続するとともに、将来の成長が見込まれる環境・エネルギー等の有望分野において、積極的に開発を推進しております。 原子力関連分野では、原子力発電所の廃炉に伴う廃棄物の処理技術の開発に取り組んでおります。 還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とした製鉄法(MIDREXプロセス:世界No.1シェア)の競争力維持・強化に向けた開発を継続しております。 水処理関連分野では、新下水道ビジョンに沿ったバイオマスエネルギー利活用などの下水道付加価値向上に向けた開発や、環境配慮型創エネ汚泥焼却システムの開発を継続して実施しています。また、ユーグレナEOD-1の食品としての機能性を追求しています。 廃棄物処理関連分野では、AIを利用した操業の安定化及びICTを活用したメンテナンスや操業の最適化に取り組んでおります。 化学・食品機械関連分野では、グラスライニング機器の高機能化に取り組み、高伝熱性グラス「9000HTⅡ」、伝熱性と帯電防止の2つの機能を有する「ハイブリッドグラスライニング」を開発し、商品競争力を強化しました。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、19億円であります。 [建設機械] 建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。 ショベル関連分野において、オフロード法平成26年基準に適合し、機器類の故障予兆を検知できる予防保全機能の搭載、新車保証期間の延長などにより、お客様のライフサイクルコスト低減を可能にした新型13tクラス油圧ショベル4機種「SK125SR-5、SK135SR-5、SK130UR-5、SK130SR+-5」、23tクラス油圧ショベル2機種「SK225SR-5、SK235SR-5」を平成29年9月に販売開始しました。また、オフロード法平成26年基準に適合し、より一層の燃費性能向上を達成するとともに、高い耐久性を持った機械とし、さらに安全性の向上として衝突軽減システム「K-EYEPRO」を新たにオプション設定した20tクラス油圧ショベル「SK200-10」を平成29年9月に販売開始しました。 クレーン関連分野では、頑丈な構造・作業性に優れたコンパクトなレイアウト・高いつり上げ能力の両立と輸送幅3m未満を実現し、排出ガス平成26年規制に適合したテレスコピッククローラクレーン「TK750G/TK750GFS」を平成29年6月より国内向けに販売を開始しました。また、排出ガス平成26年規制に適合し、さらなる安全性と省スペースでの作業を可能とし、安全走行をアシストする機能やセットアップラジコンを新規設定したラフテレーンクレーン「LYNX160」を開発し、平成29年7月より国内向けに販売開始しました。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、56億円であります。 [その他] (株)コベルコ科研では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。さらに、フラットパネルディスプレイ(FPD)用の配線に用いられる薄膜用のターゲット材料や半導体等の検査装置の開発に取り組んでいます。 当連結会計年度においては、人工知能(AI)技術の研究開発を目的に、名古屋大学にコベルコ科研インフォアナリシス産学共同研究部門を開設しました。また、「新次元の超軽量ハイエントロピー合金等の研究開発」が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の「未踏チャレンジ2050」に採択され、超軽量合金の試作に取り組みました。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、9億円であります。
FY2017|6,768 文字
6【研究開発活動】 当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を原動力として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販における技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげております。 当社技術開発本部では、各事業の基盤と競争力強化に向けた研究開発に加え、将来に向けた新製品・プロセスを具現化する高度で先端的な技術の開発も先導して行なっており、自動車分野、航空機分野、エネルギー分野などでの新たなメニュー創出とそれらを支えるものづくり力を強化していきます。 また、当社各部門及び連結子会社の技術開発部門では、事業の競争力強化に直結する製品及び生産技術の開発を行なっております。今後とも、グループ全体にわたる研究開発への経営資源の投入を効果的に行なってまいります。 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、301億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行なっている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用52億円が含まれております。 主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、以下のとおりであります。 [鉄鋼] 鉄鋼では、輸送機分野(自動車、船舶、航空機)を中心に特殊鋼や高強度鋼、鋳鍛鋼、チタン、鉄粉の商品力・強みを生かした商品開発と「ものづくり力」の強化に向けた生産技術の開発に引き続き注力して取り組んでおります。 当連結会計年度の主な成果として、鋼材分野では、須磨地区潜堤築造工事(神戸市)において、鉄鋼スラグ製品である鉄鋼スラグ水和固化体を海域工事で初めて納入しました。これまでの海域実証試験で海藻付着性が良好であったことを評価頂いた結果であり、県内の海域工事で初めて鉄鋼スラグ製品が適用されました。 また、当社の橋梁用鋼板のひとつである、ロングライフ塗装用鋼板(商品名:エコビュー®)が、平成28年12月6日付けで橋梁用厚鋼板としては初めて国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)の「VR」技術認定を受けました。「エコビュー®」は、鋼橋の塗装の塗り替え周期延長を可能とするとともに耐久性向上にもつながる厚鋼板で、約40橋の実績があります。これは、「エコビュー®」が複数の国土交通省直轄工事で採用され、国土交通省が直接、「エコビュー®」の優れた耐食性能を評価、確認した技術であることが証明されたことを示すものです。 さらに、プレスの生産性に優れたホットスタンプ用冷延鋼板(焼入れ後強度1470MPa級)を開発し、トヨタ自動車(株)・プリウス向けのボディ骨格部品を受注し、順調に量産を行なっています。今回当社が開発したホットスタンプ用鋼板は、主に鋼板の成分を工夫することにより焼入れ性(高温加熱の後冷却することによる鋼板の硬化のし易さのこと)を大幅に向上させております。そのため、従来のホットスタンプ用鋼板の課題であったプレスの生産性を従来比で2~4倍程度、改善することが可能になりました。加えて、冷却ムラによる強度不足の問題が発生しにくい特長も有しています。 鋳鍛鋼分野では、世界最大クラスのコンテナ船・タンカーに搭載されるエンジン向け超大型クランク軸のスローに対して、従来法より疲労強度を約20%向上させる「型入れ鍛造法」(平成26年当社開発済)を適用することに成功し、一般財団法人日本海事協会より設計上の余裕度であるK-factor1.05の認証を取得しました。これにより、当社材は設計段階で疲労強度に5%の余裕度が認められ、高強度な軽量部材の提供が可能となります。既に取得済の中・小型クランク軸スローに対する同認証と合わせて、世界で唯一、大型から小型まで全ての2サイクルエンジンにおける認証を取得したこととなります。 また、船舶の舵廻り部品であるラダーホーンやラダーストック等向けの部材においては、高強度に加えて、本部品と船体の溶接工程における熱処理を必要としない「予熱レス高強度鋳鋼」を開発しました。これにより、造船所での溶接工程を阻害せず高強度化(薄肉化)が図れるものと期待されます。 チタン分野では、当社と日本エアロフォージ(株)は、日本で初めて着陸装置用チタン大型鍛造品の開発・量産に成功し、航空機用着陸装置製造の世界最大手であるサフラン・ランディング・システムズ社向けに、エアバス社の最新鋭中型ワイドボディ機「A350 XWB」の着陸装置に使用されるチタン大型鍛造品の量産供給を開始しました。 また、米GE社が製造する民間航空機向け大型エンジンに使用されるチタン合金鍛造品のサプライヤーとして、同エンジンの共同開発パートナーである(株)IHI社より認定を頂き、同社にチタン合金鍛造品(シャフト)の供給を開始いたしました。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、70億円であります。 [溶接] 溶接では、HT610MPa級鋼に溶接後熱処理が必要とされる案件に対応したフラックス入りワイヤ「TRUSTARCTM DW-A62LSR」を開発しました。溶接金属部の組成及び組織を最適化し、従来困難であった溶接熱処理後の機械的性質を確保しました。これにより、大型・高圧化が進む球形タンクや圧力容器等の構造物への拡販が期待されます。 また、台北市の超高層デザイナーズマンション「陶朱隠園」に、「建築用780N/mm2厚鋼板(KBSA630®)」及びこれに対応する溶接材料「TRUSTARCTM MG-S88A」「TRUSTARCTM US-80LT/TRUSTARCTM PF-H80AK」を受注・納入しました。「陶朱隠園」では高い意匠性と優れた耐震性の両立が求められ、台湾で引張強度780N/mm2級の厚鋼板・溶接材料が建築用途で適用された初めての事例となります。 また、従来にないウィービング動作により高速・高品質な溶接施工を可能にし、顧客の生産性向上に貢献するとともに、教示ペンダントの使いやすさなど、溶接初心者から熟練者まで安心して使用できるように操作性を追求したアーク溶接ロボット向けの新型コントローラ「CBコントローラ」を開発しました。 さらに、情報技術を活用した「造船大組立ロボット溶接システム」を新たにリリースしました。一般的な溶接ロボットでは、溶接線位置をロボットに記憶する教示作業が必要になりますが、設計された船の3D-CADデータから教示データを自動生成する「CAD連係機能」を開発しました。小さなスペースへの進入を可能にする「小型ロボット」と「ロボットキャリー」や、最適な溶接ワイヤとその溶接施工条件も合わせて開発しました。溶接工不足、溶接品質向上を課題にする国内外の造船市場向けに拡販が期待されます。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、35億円であります。[アルミ・銅] アルミ・銅では、短期収益力と中長期事業競争力の強化に向け自動車関連部材等「成長分野」への効率的な技術開発に注力しております。あわせて缶用材料、電子機器材料等の「ボリュームゾーン分野」でのさらなる品質向上と生産技術の開発を継続的に推進しております。 アルミ板分野では、中国の新会社である神鋼汽車鋁材(天津)有限公司において、中国市場を中心に欧州や北米の自動車メーカーの要求特性に合わせて独自開発した自動車パネル材の認定取得がほぼ完了し量産を開始しました。新規採用が引き続き順調に増加しております。また、日系自動車メーカー向けには材料・表面処理技術の開発とともに接合や解析技術の提案によるソリューション技術も充実させ、アルミパネル採用部位の拡大に大きく貢献しております。飲料缶用材料では、当社の高い技術力により高強度・薄肉化やボトル缶用高成形性材料の開発を推進しており、需要家からも高い評価を得ております。 鋳鍛分野では、自動車サスペンション用アルミ鍛造部品において北米・中国での需要が拡大しており、サスペンション部品の生産性向上、さらなる品質向上のための技術開発を推進しています。また、他社との差別化を図るために、高強度合金開発や構造設計の両面から材料の軽量化に注力し、需要家からも高く評価されています。航空機用部品においても軽量化ニーズは高まっており、砂型鋳造品のさらなる品質向上と生産性改善を図り、採用拡大を目指しています。さらに将来の差別化と当社の優位性確保のため、耐熱材料の開発も進めています。 押出分野でも、アルミ製バンパーシステムや車両骨格部材などの自動車用押出形材に対して、軽量で衝突安全性に優れた材料のニーズが高まっております。当社が開発した耐応力腐食割れ性と強度を高次に兼ね備えた独自7000系合金の押出形材は、北米自動車メーカーに採用され供給(輸出)を開始しました。また、米国の生産拠点として溶解鋳造から押出、加工まで一貫で生産する工場を建設中(平成30年度下期稼働予定)であり、日米両極での供給体制整備を進めております。 銅板分野では、低摩擦係数と耐熱性に優れた錫めっき(新リフローめっき)技術が高く評価され、自動車向け電装部品用端子材料として国内外で採用が拡大しております。欧州につづき米国伸銅メーカーへも「新リフローめっき」技術のライセンスを供与し、グローバル供給体制の拡充を構築しました。また、導電率と耐熱性を兼備した高性能合金を、HEV、EVなど次世代自動車用の電子部品向けに開発し、需要家での評価が進んでおります。さらに、スマートフォン用などの散熱部材への開発合金の採用も拡大しております。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、28億円であります。 [機械] 機械では、環境、省エネ(CO2削減)をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術/商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面からさらなるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり力」の実現を目指しています。 当連結会計年度では、(株)神鋼環境ソリューション、(株)神鋼エンジニアリング&メンテナンス、筑波大学と共同で環境省の技術開発・実証事業として、「中規模(1.5kg/h 程度)の高圧水素を製造する再エネ由来水素ステーション関連技術の開発・実証」を開始しました。水電解装置を当社水素ステーション設備に併設し、水電解水素を従来型水素ステーションの水素と混合しFCVへ供給するシステムを検証することに向け、実証設備の建設に入ります。 また、旭海運(株)、三浦工業(株)との共同で開発を進めていた、「舶用バイナリー発電システム」について、平成27年9月の陸上試験合格に続き、平成28年12月に実船搭載での海上試験に合格し、一般社団法人日本海事協会の認証を取得しました。 さらに、世界最速のサイクルタイムと、世界最高の繰り返し測定精度とを両立させたタイヤ試験機「Librota-GS」、世界最高クラスのエネルギー効率と低騒音を実現し、最新のIoT技術による遠隔通信サービスを搭載したオイルフリー式汎用空気圧縮機「Emeraude-ALE」及び米国の定置式水素ステーション向けに高圧水素圧縮機、冷凍機、蓄圧器に加え、ディスペンサーをセットにした「HyAC mini-A」の販売を開始しました。その他、LNG船向け舶用二元燃料焚きエンジンへの燃料供給用途としては世界で初めて、スクリュ式の圧縮機を受注しました。 なお、当連結会計年度における研究開発費は37億円であります。 [エンジニアリング] エンジニアリングでは、独自プロセス・技術のさらなる差別化、競争力強化に向けた開発を継続するとともに、将来の成長が見込まれる有望分野において、積極的に開発を推進しております。 原子力関連分野では、原子力発電所の廃炉に伴う廃棄物の処理技術の開発に取り組んでおります。 還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とした製鉄法(MIDREXプロセス:世界No.1シェア)の競争力維持・強化に向けた開発を継続しております。 水処理関連分野では、下水汚泥から得られたバイオガスを原料にして水素を製造する技術の開発を開始しました。また、これまで研究開発を進めてきたユーグレナを食品原料として供給開始しました。 廃棄物処理関連分野では、廃棄物発電の高効率化を達成するために廃熱ボイラの高温高圧化の開発に取り組み、実機でのボイラ過熱器管材料の耐食性評価試験を実施しました。その結果、流動床炉においては従来よりも高温高圧の蒸気条件が採用可能となりました。 化学・食品機械関連分野では、グラスライニング製機器について、業界をリードする機能性グラスの改良、洗浄技術の開発などに取り組み、差別化技術を磨きました。また、無摺動コンタミフリー撹拌装置「スイングスター」の大型化に取り組み、商品ラインナップの充実を図っています。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、20億円であります。 [建設機械] 建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。また、コベルコ建機(株)は、国立大学法人広島大学と包括的な連携を行うことで合意し、平成28年6月に包括的研究協力に関する協定書を締結しました。 ショベル関連分野では、25t・33t・47tの3クラスにおいて、オフロード法平成26年基準に適合した中大型油圧ショベルを、平成28年9月より順次販売を開始しました。また、「低燃費のコベルコ」としてのフラッグシップ機として「SK200H-10」を開発、平成28年11月より販売開始しました。今回販売を開始した製品は、より一層の燃費性向上を達成するとともに、予防保全機能の搭載、新車保証期間の延長などにより高い耐久性を持った機械となります。 クレーン関連分野では、クレーン能力の向上と、効率のよい分解・輸送性能を実現した国内最大級のクローラクレーン「SL16000J(最大つり上げ能力1,000t)」/「SL16000J-H(最大つり上げ能力1,250t)」を開発し、平成28年5月より国内向けに販売を開始しました。 また、最新の排出ガス平成26年規制適合エンジンを搭載し、独自開発の省エネシステム「Gモード」を機能アップ、輸送性能・操作性能をさらに改善したクローラクレーン「Mastertech7070G(最大つり上げ能力70t)」「Mastertech7090G(最大つり上げ能力90t)」「Mastertech7120G(最大つり上げ能力120t)」を開発し、平成28年9月より国内向けに販売を開始しました。また、「Mastertech7050G(最大つり上げ能力50t)」、基礎土木対応クローラクレーン「BM800G(最大つり上げ能力80t)」、「BM1000G(最大つり上げ能力100t)」を開発し、平成29年1月より国内向けに販売を開始しました。 同じく最新の排出ガス平成26年規制適合エンジンを搭載し、安全性と作業領域の広さを誇るラフテレーンクレーン「PANTHER250(最大つり上げ能力25t)」、「PANTHER700(最大つり上げ能力70t)」を開発し、平成29年1月より国内向けに販売を開始しました。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、47億円であります。 [その他] (株)コベルコ科研では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。さらに、液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用の配線に用いられる薄膜用のターゲット材料や半導体等の検査装置の開発に取り組んでおります。 当連結会計年度においては、世界的な温室効果ガスの排出削減から電動駆動化が拡大している自動車分野で、インバータの大容量化など開発が活況な車載用パワーデバイス・モジュール関連の故障箇所解析並びにパワーサイクル試験技術を確立し、上市しました。また、検査装置では前年度に上市したサブナノ精度でシリコンウェーハの平坦度が測定できる装置の高精度化に取り組むとともに、微小表面形状測定装置を開発し、上市しました。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、9億円であります。
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6【研究開発活動】 当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を原動力として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販における技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげております。 当社技術開発本部では、各事業の基盤と競争力強化に向けた研究開発に加え、将来に向けた新製品・プロセスを具現化する高度で先端的な技術の開発も先導して行なっており、自動車分野、航空機分野、エネルギー分野などでの新たなメニュー創出とそれらを支えるものづくり力を強化していきます。 また、当社各部門及び連結子会社の技術開発部門では、事業の競争力強化に直結する製品及び生産技術の開発を行なっております。今後とも、グループ全体にわたる研究開発への経営資源の投入を効果的に行なってまいります。 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、298億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行なっている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用51億円が含まれております。 主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、以下のとおりであります。 [鉄鋼事業部門] 鉄鋼事業部門では、輸送機分野(自動車、船舶、航空機)を中心に特殊鋼や高強度鋼、鋳鍛鋼、チタン、鉄粉の商品力・強みを生かした商品開発と「ものづくり力」の強化に向けた生産技術の開発に引き続き注力して取り組んでおります。 線材分野では、公益社団法人発明協会主催の平成27年度全国発明表彰において、「疲労特性に優れたばね用線材の発明」にて発明賞を受賞しました。今回受賞した発明は、高い信頼性と軽量性が要求される自動車用懸架ばねに必要不可欠なばね用鋼材の鋼材成分や製造方法に関する独創的な技術です。この新開発のばね用鋼材を用いた懸架ばねでは、大気疲労特性と腐食疲労特性を高い信頼性で確保し、ばね設計応力の高強度化やばね重量の軽量化を実現する事が可能となりました。 鋳鍛鋼分野では、一般財団法人日本海事協会が「特別承認材」として採用していた当社独自開発の高強度の船舶エンジン用中間軸が、国際船級協会連合(以下、IACS)に国際規格の『IACS統一規則』として世界で初めて採用されました。 中間軸とはエンジンの動力をプロペラシャフトに伝える重要な部品で、最近の大型船舶用エンジンの高出力・高効率化に対応するために、中間軸には高強度化が求められています。今回の高強度中間軸のIACS統一規則化により、エンジンのさらなる高出力化、軽量化が可能となります。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、66億円であります。 [溶接事業部門] 溶接事業部門では、火力発電ボイラ等に適用される高フェライト系耐熱鋼P91鋼の業界規制厳格化に対応した被覆アーク溶接棒「TRUSTARCTM CM-95B91」「TRUSTARCTM CM-96B91」を開発しました。化学成分と機械的性質の厳しい規格を満足するのに加え、溶接金属の拡散性水素量、耐棒焼け性、再アーク性も従来材と比較して改善を図り、顧客の高い評価を得ています。その特長を活かし、日本だけでなく、中国、インドの火力発電ボイラ市場での拡販が期待されます。 また、鋼橋溶接継手部の耐疲労性改善を図った「TRUSTARCTM MX-4AD」及び「TRUSTARCTM LB-3AD」を開発しました。溶接金属の相変態膨張を利用して、溶接止端部における引張残留応力低減もしくは圧縮化による疲労強度の改善に加え、従来の組成に対して、Niを低減することにより、安価かつ耐高温割れ性の改善を実現しました。 さらに、建築土木工事の現場溶接ニーズをとらえ、シールドガスが不要なセルフシールドワイヤ「FAMILIARCTM OW-S50H」の1.6mmφを開発しました。従来ワイヤ径2.4mmφでは溶接が難しかった薄板の溶接も可能となり、現場溶接における幅広い適用が期待されます。 加えて、鉄骨向550MPa級フラックス入りワイヤ「FAMILIARCTM MX-55K」を開発しました。ソリッドワイヤのJIS Z3312 YGW18規格に相当する550MPa級であり、鉄骨仕口部の下向多層溶接において、入熱・パス間温度を高く管理できるので、高能率な施工が可能となります。ソリッドワイヤに比べて極めて低スパッタで、製品品質の向上、スパッタ除去作業の負荷・時間の削減に繋がります。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、29億円であります。 [アルミ・銅事業部門] アルミ・銅事業部門では、短期収益力と中長期事業競争力の強化に向け「選択と集中」「グローバル対応」をキーワードに自動車関連部材等「成長分野」への効率的な技術開発に注力しています。あわせて缶用材料、電子機器材料等の「ボリュームゾーン分野」での更なる品質向上と生産技術の開発を継続的に推進しています。 事業分野別では、アルミ板分野では、中国市場を中心に欧州や北米の自動車メーカーの要求仕様に合わせて独自開発した自動車パネル材の採用が順調に増加しています。また、自動車パネル材の採用部位拡大に向け、日本の自動車メーカーとの設計開発支援にも引き続き注力しています。缶用材料では、高強度化や新規形状のニーズに合わせた材料開発を行ない、需要家からも高く評価されています。 押出分野では、当社従来品が持つ高い耐応力腐食割れ性を維持しつつ約30%高強度となる7K55合金材料の開発に成功しました。自動車用押出型材には軽量化と衝突安全性の両立が求められており、もともと当社が得意としているアルミ製バンパーシステムだけでなく側面衝突対応のドアビームなどの部材へも当社アルミ材の採用が拡大しています。開発した7K55材料はすでに日系自動車メーカーでバンパー用に採用が決まっており、更なる採用拡大を目指します。 鋳鍛分野では、自動車サスペンション用アルミ鍛造部品のグローバル3極にて受注が拡大しております。他社とのより一層の差別化を図るために、高強度合金、軽量化設計技術、生産性向上技術の開発を推進しています。また、航空機エンジン部品では大型マグネシウム鋳造品の生産を開始し、さらなる受注拡大を目指し品質・生産性向上技術の開発を進めています。 銅板分野では、低摩擦係数と耐熱性に優れた錫めっき技術である「新リフローめっき」技術が高く評価され、自動車向け電装部品用端子材料として国内外で採用が拡大しています。欧州につづき米国伸銅メーカーへも「新リフローめっき」技術のライセンスを供与し、グローバル供給体制の拡充を構築しました。また、導電率と耐熱性を兼備した高性能合金を、HEV、EVなど次世代自動車用の電子部品向けに開発し、需要家での評価が進んでいます。さらに、自動車分野の電子材料用銅合金に加え、スマートフォン用などの散熱部材への開発合金の採用も拡大しています。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、26億円であります。 [機械事業部門] 機械事業部門では、環境、省エネ(CO2削減)をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術/商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面からさらなるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり力」の実現を目指しています。 当連結会計年度では、水素ステーション向け拡散接合型コンパクト熱交換器「DCHE」がステンレス協会賞 機能性部材カテゴリー「最優秀賞」を受賞しました。並びに、タイヤ・ゴム混練機の新型接線ロータ「5THR」が、ドイツのハノーヴァー市で開催された「Tire Technology EXPO」にて、「Tire Manufacturing Innovation of the Year」を受賞しました。 また、ガスエンジンの廃温水を蒸気として回収することによってコージェネレーションシステムの効率を向上するシステムを、東京瓦斯(株)、三菱重工業(株)、三浦工業(株)と4社共同で開発しました。及び、高いメンテナンス性や装置拡張性を持つ新型スパッタロールコータ生産機「W60S」の販売を開始し、桃浦かき生産者合同会社と共同でカキむき専用の横型HPP超高圧処理装置を開発・納入しました。 加えて、早稲田大学、一般財団法人エネルギー総合工学研究所と共同で、長寿命で信頼性・環境性に優れる「断熱圧縮空気蓄電システム(商品名:空圧電池)」の開発に着手しました。 さらに、旭海運(株)、三浦工業(株)との共同で開発を進めていた、「舶用バイナリー発電システム」について、陸上での試験が完了し、一般財団法人日本海事協会の承認を取得しました。 そのほか、「水素ステーション総合テストセンター」を機械事業部門の生産拠点である高砂製作所内に新設しました。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、41億円であります。 [エンジニアリング事業部門] エンジニアリング事業部門では、天然ガスを還元剤とした製鉄法(世界No.1シェア)の競争力維持・強化に向けた開発を継続するとともに、放射性廃棄物の処理技術や処分容器の開発に取り組んでおります。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、5億円であります。 [神鋼環境ソリューション](株)神鋼環境ソリューションでは、技術開発センターを核として、各事業部門との緊密な連携を保ちながら、新製品、新技術並びに全社共通の基盤技術についての研究開発を行なっております。水処理関連事業では、同社技術研究所内に設置した閉鎖型の1㎥培養槽を用い、従属栄養培養方式(生育に必要な炭素を有機化合物の形で生物に与える培養方法)によるユーグレナ(光合成を行なう植物的性質と“すじりもじり”運動をする動物的性質を兼ね備えた生物)の培養を、回分培養(1回毎に新たな培地を用いる培養方法)から流加培養(培養中に培地成分を追加供給し、生産性を維持・向上させる培養方法)に改良することで、バイオマス生産性が約2倍(同社比)となることを確認しました。ユーグレナ由来バイオマスの製造設備を、食品原料としての安定的な品質及び安全性の維持を目的とした設備へと改造したうえで、「営業開始届書」を神戸市保健所に提出し、届出済証を受領しました。食品原料として食品関係の企業にバイオマスサンプルを提供し、来年度の商品化を目指して取り組んでいます。廃棄物処理関連事業では、既存の流動床式焼却炉を改良して最適なガス化・燃焼方法を実現する流動床式ガス化燃焼炉の開発に取り組み、実証試験を通して安定性能、環境負荷の低減に関する技術を確立しました。放射性セシウムで汚染された土壌に対し加熱化学処理パイロット試験を実施し、ベンチ試験と同等のセシウム除去性能を確認しました。来年度以降に「加熱化学処理」の実証事業化を目指して取り組んでいます。化学・食品機械関連事業において、プロセス機器分野では、グラスライニング製機器の高機能化やコストダウン、無摺動撹拌装置「スイングスター」の性能向上並びに新型着脱式攪拌翼「スマートロック」の開発に取り組み、商品競争力を強化しました。なお、当連結会計年度における研究開発費は、12億円であります。 [コベルコ建機]コベルコ建機(株)では、技術開発部門において、主力製品である油圧ショベルなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。当連結会計年度では、広島大学とともに平成27年7月より広島大学大学院工学研究院に共同研究講座「コベルコ建機次世代先端技術共同研究講座」を設置することとしました。複数のテーマを有機的に連携させ、「疲れない」、「使い易い」といった快適性や感性を数値化して技術開発に反映し、次期モデルでの実装を予定しています。また、独自の低騒音技術「iNDr(エンジン冷却システム)」を発展させて開発した下方排気式の「iNDr+E」を装備し、低騒音性能とメンテナンス性を向上させるとともに、燃費をさらに向上させた3~5トン級の超小旋回ミニショベルACERA GEOSPEC「SK30UR」「SK38UR」「SK50UR」と4~5トン級の後方超小旋回ミニショベル「SK45SR」「SK55SR」を開発しました。また4トン以上の3機種はオフロード法2014年基準に適合しています。これらのショベルの販売を平成27年7月より順次開始しました。さらに作業負荷に合わせた作業モードを新たに設定したことで大幅な燃費低減を実現し、植栽の枯れを抑制する上方排気を採用した2トン級超小旋回ミニショベル「SK20UR」を開発し、平成28年4月より販売いたしました。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、41億円であります。 [コベルコクレーン]コベルコクレーン(株)では、つり上げ能力300トン以上の大型クローラクレーン事業強化方針に基づき、海外市場調査、長期商品戦略立案のため平成27年7月にドイツ・フランクフルトに駐在員事務所を開設しました。また、本格基礎土木向けクローラクレーン「BM1500G(型式BM1500G)」(最大つり上げ能力150トン)を開発し、平成27年8月より国内向けに販売を開始しました。当機は、より安全に余裕を持ってハンドリングでき、より大きなパワーを持つハンマーグラブ作業などを行なえる重作業用クレーンのニーズが高まるなか、国内最大の基礎土木ベースマシンとなります。汎用クローラクレーン(50~250トンクラス)では、平成23年度に発売を開始した北米向けCK-Gシリーズのモデルチェンジとなる北米EPA排出ガス4次規制(U.S.EPA Tier4 Final)に適合した新型CK-Gシリーズを開発し出荷を開始しました。これからも安全性向上、排ガス規制、騒音低減、燃費向上等の地球環境に優しいクレーンを目指し、技術開発を進めてまいります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、14億円であります。 [その他] (株)コベルコ科研では、輸送機、エネルギー、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。さらに、液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)に用いられる薄膜用のターゲット材料や半導体等の検査装置の開発に取り組んでいます。 当連結会計年度においては、世界的に環境・燃費規制が強化されている自動車分野で、マルチマテリアル化に対応する接合評価技術の開発や燃料電池評価技術の開発並びに高度化に取り組みました。また、主に有機EL用途で高精細(高移動度)ニーズが高まっているFPD分野では、独自の酸化物半導体ターゲット材料を開発し、顧客評価を開始しております。さらに、検査装置ではサブナノ精度でシリコンウェーハの平坦度が測定できる装置を開発し、上市しております。 なお、当連結会計年度における研究開発費は、8億円であります。