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レナサイエンス

医薬品 医薬品

事業の内容

レナサイエンスは、医療現場の課題解決を目指し、医薬品、医療機器、AIを活用したプログラム医療機器など多様な製品を研究開発しています。特に、老化関連疾患や女性・小児の疾患といった社会的課題に注力しており、がん、糖尿病、呼吸器疾患、循環器疾患の4大非感染性疾患を全て対象としています。大学などの研究機関と連携し、基礎研究から臨床開発(医師主導治験)までを一貫して行い、大手製薬企業などへのライセンスアウトを通じて収益を得るビジネスモデルです。契約一時金、開発進捗に応じたマイルストーン収入、製品上市後のロイヤリティ収入が主な収益源となります。

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FY2025|29,932 文字|出典 docID: S100W34E
3 【事業の内容】当社は、医療現場の課題を解決するための多様なモダリティ(*8)(医薬品、医療機器、人工知能(AI)を活用したプログラム医療機器)を医療現場で研究開発し、医療イノベーションの創出に貢献することで、ヒトが心身ともに生涯にわたって健康を享受できるための新しい医療を創造したいと考えています。少子・高齢化は、最重要の社会的及び医学的課題です。当社は老化関連疾患及び女性・小児の疾患など、社会的にも重要な医療課題を解決すべく研究開発や事業に取り組んでいます(図表1)。世界保健機関(WHO)では、高齢化や生活習慣に伴う疾患(老化関連疾患)を「非感染性疾患(NCDs)」として位置付け、がん・糖尿病・呼吸器疾患・循環器疾患が対象となっています。2024年の全世界の死亡者数の74%がこれら疾患で亡くなっており(世界保健機関、Health Topics)(*9)、当社の開発品目は、これら4疾患を全て対象としています。また、女性、小児の医療課題にも注力しています。< 図表1 当社が目指す新たな医療 > 当初、コンピューター工学及び低分子スクリーニングから創薬したプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(PAI)-1阻害薬など医薬品開発のみでしたが、研究・医療機関からの要請、更に医療現場の課題を解決するための必要性から、現在では当社の開発領域(モダリティ)は、医薬品のみならず、医療機器やAIを活用したプログラム医療機器など多岐にわたっています。医薬品産業も低分子医薬品を中心とした開発から、バイオ医薬品(抗体医薬、核酸医薬品、遺伝子治療、細胞治療)へとモダリティが多様化しつつあります。また、近年の工学系や情報系技術の進歩により情報・工学技術との融合による新たな医療の模索も進んでおり、欧米や国内の大手製薬企業では既に医薬品単体の事業から医療ソリューション全般にわたる事業への転換を迎えております。医薬品、医療機器、更にはAIを活用したプログラム医療機器など、医療現場での治療のオプションも大きく広がりつつあります。これまで主体であった化学系や生物系の研究に加えて、工学系や情報系の研究にも視野を広げ、医療課題を解決する多彩で魅力ある研究と事業のポートフォリオを創出したいと考えます。当社は、国内外の大学などの研究機関で着想された多くのモダリティにわたるコンセプトやシーズを、基礎研究から臨床開発(医師主導治験)まで一気通貫でつなげる研究開発を行い、大手製薬企業等につなぐことで医療イノベーション創出に貢献します(図表2)。臨床開発は販売の許可を受けるための承認申請に近いところまで自社で対応します。例えば、2022年12月に厚生労働省から承認を得た医療機器(極細内視鏡)は、製品コンセプトから試作品開発、非臨床試験の実施、検証のための医師主導治験まで複数の大学と共同で開発を進め、当社が取得した成績で薬事承認を得ることができました。また、血液がんの一種である慢性骨髄性白血病および悪性黒色腫の治療薬は承認申請に必要な検証試験である第Ⅲ相試験を実施中ですが、その他のパイプラインについても今後、可能な場合は第Ⅲ相試験まで自社で実施したいと考えています。その理由は、希少疾患などの治療薬は大手製薬企業からは注力されにくい場合が多いことや、更に第Ⅲ相試験まで自社で実施することで大きな事業収益が期待できるからです。 < 図表2 当社のビジネス・モデル > これまでの製薬企業や創薬ベンチャーの多くはパイプラインのバリューチェーン(開発の全ての工程の積み上げ)を自社で全て構築し、事業価値を高めることに注力してきました。しかし、医薬品のように成功確率が極めて低い一方で、開発期間が長く、投資が大きな分野では研究開発及び事業リスクが大きいため、多くのパイプラインを組み合わせたポートフォリオを形成し、リスクを分散することが不可欠です。大手製薬企業は潤沢な資金を背景に、多くのパイプラインのバリューチェーンを自社独自で形成するという既存の枠組みでの開発ができますが、ベンチャーのように資金が潤沢でない場合、なかなか難しいのが現状です。当社は外部機関(研究機関、医療機関)のリソースを活用してコストを抑えるなど、効率の高い開発を実践してきました。外部機関とのアライアンスをもとに多くのバリューチェーン構築を考えており、既存ベンチャーとは戦略、研究開発、人的資源管理などが異なります。少ない人的リソースや経費で多くのパイプラインを広げ、モダリティも展開できていますので、成果も出つつあります。自己資源や社内環境のみに注力するのではなく、むしろ外部資源や外部環境にも注力し、効率的にイノベーションを創出する枠組みを構築していきたいと考えます。オープンイノベーションラボ(東北大学、広島大学)の設立もその一環として推進しています。当社は、基礎研究から臨床試験まで広く研究を実施している医師(physician-scientistという)との共同研究を重視しています。基礎研究分野で共同研究を行っている多くの研究者は医師でもあり、自ら治験調整医師(治験責任者)として医師主導治験を実施することが可能です。基礎研究と臨床研究を実施する研究者が同じである場合が多いので、基礎研究から医師主導治験まで一気通貫で実施、効率的な開発ができます。当社の治験は基本的に医師主導治験で実施しています。当社は、これまで29件に及ぶ医師主導臨床試験(そのうち医師主導治験26件)等の実績がありますが、医師主導治験には多くの利点があります。医師自ら治験を立案及び実施できますので、医療現場での課題や実情に合った試験計画や枠組みで実施できます。2003年の薬事法改正によって、医師自らが治験を実施する医師主導治験の道が開けましたが、治験に必要な医薬品を安全性試験、製剤を含めて全て自ら準備することは依然として難しい状況です。当時は、海外承認国内未承認の新薬や適応外使用薬(いわゆるドラッグラグ)も数多く存在したので、国内未承認薬や適応外使用薬が医師主導治験の主流でした。治験の実施し易さ(製造から安全性試験など既存のデータで対応可能)という点からも、多くの大学等の医療機関の医師が海外承認(国内未承認)の新薬や適応外使用薬の治験を医師主導で取り組みました。また、製薬企業が取り組まない希少疾患を対象に既存医薬品を用いて医師主導治験として実施される場合もありました。そのような背景から、「医師主導治験は適応拡大やオーファン疾患が対象」という印象が定着していた時期もございます。しかし、当社が行う治験は全て未承認の薬剤(first-in-human)を対象としており、海外承認薬(国内未承認)や既存薬の適応拡大のための治験ではありません。当社の医薬品開発においては、非臨床試験はGLP(Good Laboratory Practice、医薬品の安全性の実施に関する基準)、治験薬の製造は治験薬GMP(Good Manufacturing Practice、治験薬の製造管理及び品質管理に関する基準)、医師主導治験は、企業治験と同様にGCP(Good Clinical Practice、医薬品の臨床試験の実施に関する基準)を遵守して実施していますので、医師主導治験でも、承認申請や許認可は問題なく得られます。 (1) 事業モデル自社開発品(自社シーズ)を有する一方で、大学等からの外部シーズを獲得し医師主導治験を活用しながら治療コンセプトの実証Proof-of-concept(POC)まで成長させ、製薬企業等へライセンスアウトすることが、当社のビジネス・モデルです。現パイプラインの中で、自社シーズは、PAI-1阻害薬及びピリドキサミン等の医薬品や極細内視鏡(医療機器)であり、外部シーズは核酸医薬品やプログラム医療機器(AI)が該当します(「事業の内容 (2) 当社のコア技術」をご参照ください)。多様なモダリティ(医薬品、医療機器、AIを活用したプログラム医療機器等)の研究開発を業務としていますが、大学等研究機関との共同研究で基礎研究を行い、その成果を活用して臨床開発(医師主導治験)までを一気通貫でつなげる開発を行っています。自社シーズに対する臨床応用の可能性を広げるために基礎研究を広く展開する必要があります。当社では、自社化合物をオープンリソースとして研究者に提供し研究いただくことで新たな用途の発見(適応拡大)に取組んでいます(オープンイノベーション)。そして、この中から、科学・医学的、事業性の観点から適切な適応疾患を選別し、医師主導治験で検証します(図表3)。基礎研究成果は、共同研究を実施した大学等研究機関と共同で特許を出願し、当社事業の基盤となる知的財産の確保に努め、当社が独占的な実施権の許諾を受けた後に事業化開発を進めます。 < 図表3 当社の事業戦略 > TREx:東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボHiREx:広島大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ 自社若しくは大学等研究機関と共同で、製造方法の開発、非臨床薬効薬理試験、安全性試験、医師主導治験(第Ⅰ相〜第Ⅲ相)までを実施し、有効性と安全性の確認と知的財産価値を高めた上で、国内・海外の製薬企業等(出口企業)に対して、製品の開発権、製造権、販売権等をライセンスアウトすることで、契約一時金、開発の進捗に応じて支払われるマイルストーン収入、製品上市後に売上高の一定割合が支払われるロイヤリティ収入、売上高に対する目標値を達成するごとに支払われる販売マイルストーン収入等を得る事業モデルを採用しています(図表4)。出口企業とは、ライセンス契約に至る前の比較的早期の研究開発段階において、将来のライセンス契約を前提としたオプション権付き共同研究契約(オプション契約)を締結することもあります(事業系統図の(共同研究))。この場合、当社は、出口企業から共同研究費を得ることで、自社の費用負担を抑えつつ研究開発を実施できるメリットを得られます。 当社の事業セグメントは、医薬品、医療機器などの開発・販売等のみの単一セグメントであり、事業系統図及び事業収入の形態は以下のとおりです。 < 図表4 事業系統図及び事業収益形態 >(事業系統図) (事業収入の形態) 収入形態内容a.アップフロント収入(契約一時金収入)オプション契約(第一交渉権付与)やライセンス許諾の契約時に一時金として得られる収入b.マイルストーン収入開発段階ごとに設定した目標(開発マイルストーン)を達成するごとに得られる一時金収入。また、製品上市後に、売上高に対する目標値(販売マイルストーン)を達成するごとに得られる一時金収入c.ロイヤリティ収入製品が上市された後に、ライセンス許諾の契約を締結した導出先事業会社より当該製品の売上高に対して予め契約によって設定した一定割合を得られる収入d.共同研究・受託研究収入当社の知的財産を活用した共同研究・受託研究実施の対価として得られる収入 < 図表5 当社の事業戦略 >1 研究開発・研究機関や医療機関とのネットワーク・多様なモダリティ開発・豊富なパイプラインを構築・医師主導治験の実績と経験・重点開発領域■20件の医師主導治験(第Ⅰ相、第Ⅱ相)を実施済み■9件の医師主導の治験等臨床試験及び企業治験を2025年度中実施(6件の医師主導治験及び企業治験(第Ⅱ相及び第Ⅲ相)、1件の臨床性能試験、2件の治験外臨床試験)・国内バイオベンチャーとして最大級の医師主導治験実績■基礎研究・非臨床試験・臨床試験においてアカデミアとの共同研究を活用し効率的に実施(図表6)・自社シーズに対する臨床応用の可能性を広げるために、自社化合物をオープンリソースとして基礎研究者に提供し新たな用途の発見に取組み、適応疾患を選別し医師主導治験を実施・各適応症に最も適した医療機関を中心とした医師主導治験を活用し、複数の臨床開発を同時並行で実施■独自のコンセプトに基づく多様なモダリティ・医薬品、医療機器、プログラム医療機器など多様なモダリティ開発・がん幹細胞に着目した慢性骨髄性白血病治療薬・免疫チェックポイント阻害機序に基づくがん治療薬(悪性黒色腫、肺がん、血管肉腫)・抗線維化作用、抗炎症作用に基づく肺疾患治療薬(全身性強皮症)・男性型脱毛症治療薬・抗老化、長寿研究(医薬品開発):XPRIZE Healthspan臨床試験・人工核酸を用いた神経・筋難病治療薬の開発・腹膜透析用の極細内視鏡の開発(径1mm程度)・AIを活用した診断や治療を支援する多様なプログラム医療機器■医薬品ではPAI-1阻害薬のがん、呼吸器疾患、抗老化、長寿領域での臨床開発に注力2企業提携・POC取得後のライセンスアウトによる開発コストの低減・企業価値の最大化・ライセンスアウトの確度を高めるためのオプション契約等出口戦略を重視■PAI-1阻害薬(RS5441)の男性型脱毛症治療薬としての権利を米国Eirion Therapeutics, Inc.(エイリオン社)に導出■ディスポーザブル極細内視鏡(RS9001)を株式会社ハイレックスメディカルに導出■AIを用いた呼吸機能検査診断プロジェクトについてチェスト株式会社と共同開発及び事業化に関する契約を締結(ライセンス契約)■維持血液透析医療支援プログラム医療機器において、ニプロ株式会社と共同開発契約を締結■透析装置搭載型AIについて東レ・メディカル株式会社と共同開発契約を締結■人工心臓における血栓予測プログラム医療機器、ディスポーザブル極細内視鏡におけるガイドカテーテルなどについて、株式会社ハイレックスコーポレーション及び株式会社ハイレックスメディカルと共同研究契約を締結3公的資金活用による自社研究開発費用の削減■医薬品では、慢性骨髄性白血病、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患及び更年期障害で公的資金活用■プログラム医療機器では、糖尿病治療支援プログラム医療機器及び維持血液透析医療支援プログラム医療機器で公的資金活用4多様なモダリティのポートフォリオ形成による事業リスクの低減、早期の黒字化と将来の収益確保■医薬品事業は、研究開発費や研究開発期間が大きく事業リスクは高いが、上市後には極めて高い収益が期待できる事業■医療機器やプログラム医療機器の事業収益は医薬品と比べると小さいが、研究開発費や研究開発期間のリスクは小さく、早期に当社収益につながる事業■これら2つの事業ポートフォリオを、同時に複数のパイプラインで進めることでリスクを分散し、早期の黒字化と将来の収益を確保5オープンイノベーションの推進■2022年1月東北大学にオープンイノベーションラボ(Tohoku University x Renascience Open innovation Labo:TREx)を開設■2023年4月広島大学にオープンイノベーションラボ(Hiroshima University x Renascience Open innovation Labo:HiREx)を開設■2025年1月ノースウエスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)の日本の研究室を東北大学内のオープンイノベーション拠点である東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(TREx)内に設立合意■過半数の社員がオープンイノベーションの場に参画(人材育成と事業加速) < 図表6 当社が有する研究機関・医療機関ネットワーク > (出典:当社作成) (2) 当社のコア技術① 当社のパイプライン概況(2025年5月末現在) < 図表7 パイプライン > 低分子医薬品 PAI-1阻害薬 医薬品 ピリドキサミン 医療機器、診断薬 AIソリューション:プログラム医療機器(SaMD) ② パイプラインの概要(a) RS5614(PAI-1阻害薬)〔 PAI-1と老化 〕我が国を含めて先進国は超高齢化に直面しており、老化は医学的のみならず社会的にも喫緊の課題となっています。当社は、細胞の老化(Senescence)を分子レベルで明らかにし、組織や個体の老化(Aging)に関連する疾病を治療する新たな医薬品を開発し、究極的にはヒトの老化を改善するためのイノベーションに寄与したいと考えます。 細胞の老化(Senescence) 生物の細胞は、細胞老化と呼ばれる現象のために、無制限に増殖することはできません。この現象には、遺伝子のテロメア長の短縮、p53,p21,p16ink4aなどの細胞老化因子が関与しています。老化した細胞は、PAI-1の発現が極めて高いことが分かっています。当社が開発したPAI-1阻害薬は、細胞周期調節因子(p16ink4a,p21, p53, p16,IGFPB3)、老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-gal)染色、IL-6等インターロイキンなどの細胞老化随伴分泌現象(SASP:senescence-associated secretory phenotype)、DNA損傷応答などの老化バイオマーカーを改善し、心筋細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞の細胞老化を阻害します。また、ヒトの早老症であるハッチンソン-ギルフォード症候群(指定難病333)の線維芽細胞のDNA損傷を減少し、ミトコンドリア障害を改善し、細胞の老化を改善することが報告されました。 組織や個体の老化(Aging)細胞のみならず、老化した組織や個体(klothoマウス、早老症として有名なウェルナー症候群のヒト)でも、PAI-1の発現が高いことが報告されました。当社、東北大学や米国ノースウェスタン大学との共同研究で、老化モデルとして有名なklothoマウスでは、PAI-1の発現や活性を遺伝子あるいはタンパク質レベルで阻害することにより、老化の主症状を改善できることを明らかにしました。 加齢に関連する疾患加齢とともに、がん、血管(動脈硬化)、肺(肺気腫、慢性閉塞性肺疾患)、代謝(糖尿病、肥満)、腎臓(慢性腎臓病)、骨・関節(骨粗鬆症、変形性関節症)、脳(脳血管障害、アルツハイマー病・認知症)などの関連した様々な疾患が発症します。興味深いことに、これら疾患の組織ではPAI-1の発現は極めて高く、PAI-1阻害薬を投与することで病態が改善できることが明らかとなりました(図表8に共同研究成績一覧を記載)。 長寿家系の疫学的調査米中西部に暮らすキリスト教の一派アーミッシュの人々の健康な老い方については、10年以上にわたって研究が行われました。米国ノースウェスタン大学、東北大学との共同研究で、アーミッシュコミュニティーの人々を調査し、PAI-1遺伝子を持たない人(56名)は、持っている人(165名)に比べて10年長生きすることを見出しました。また、欠損する人々は糖尿病など病気にもかかりにくいことも分かりました。この事実は、2017年11月にニューヨーク・タイムズを始め、多くの新聞で報道されました。研究代表者のノースウエスタン大学の主任教授は「彼らはより長く生きているだけではない。より健康的に生きている。長生きの理想型だ」と述べました。このヒトでの疫学調査は、細胞やマウスでの実験結果を裏づけています。さらに、アーミッシュのヒトと同じPAI-1遺伝子の異常を有するマウスの寿命は、正常のマウスに比べて20 %程度長いことも示されました。 < 図表8 PAI-1に関する共同研究成績一覧 >疾患文献共同研究がん(慢性骨髄性白血病)□ Blood 2012□ Stem Cells. 2014□ Blood. 2017□ Biochem ,Biophys Res Commun. 2019□ Haematologica 2021 □ BBRC 2021□ Tohoku J Exp Med. 2022□ Cancer Med. 2023□ 東京大学、東北大学□ 東海大学、東北大学□ 東海大学、ノースウェスタン大学、東北大学□ 東海大学、東北大学、国立がんセンター中央病院□ 東海大学、ノースウェスタン大学、広島大学、東北大学□ 東海大学、東北大学□ 東北大学、東北大学病院、ART□ 秋田大学、東海大学、東北大学、岩手医科大学がん(悪性黒色腫)□ PLoS One. 2015□ Cancer Biol Ther. 2015□ 南カリフォルニア大学、東北大学□ 東北大学、山形大学がん(皮膚血管肉腫)□ Exp Dermatol 2024□ 東北大学、がん研究会有明病院、名古屋市立大学、九州大学、自治医科大学、愛媛大学、国立病院機構鹿児島医療センター、国立がん研究センター中央病院肺(肺気腫、慢性閉塞性肺疾患)□ Arterioscler Thromb Vasc Biol 2008 □ Am J Respir Cell Mol Biol 2012 □ Proc Natl Acad Sci USA. 2014□ PLos One 2015□ Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2016□ Am J Respir Cell Mol Bio 2020□ Environ Pollut 2021□ Scientific Reports 2024□ 東海大学、東京大学、筑波大学、ルーヴァンカトリック大学、東北大学□ アラバマ大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校、東北大学□ ノースウェスタン大学、東北大学□ ノースウェスタン大学、シカゴ大学、東北大学□ アラバマ大学、東北大学 □ アラバマ大学、東北大学□ ノースウェスタン大学、東北大学□ 京都大学、東海大学、東京科学大学、東北大学、メディニエット大学、日本赤十字石巻病院、大崎市民病院、東北医科薬科大学、横須賀共済病院、横浜市みなと赤十字病院、青梅私立総合病院、東海大学大磯病院、東海大学八王子病院、聖マリアンナ大学、海老名総合病院、国立病院機構相模原病院、神戸市立医療センター中央市民病院、神戸市立医療センター西市民病院、高槻赤十字病院、大阪赤十字病院、田附興風会医学研究所北野病院 血管(動脈硬化)□ Circulation. 2013 □ Oncotarget. 2016□ Science Advances. 2017□ ノースウェスタン大学、東北大学、サンフォードバンナム研究所□ ノースウェスタン大学、東北大学□ ノースウェスタン大学、ニュージャージー医科大学、ブリティッシュコロンビア大学、インディアナ血友病血栓症センター、東北大学代謝(糖尿病、肥満)□ Br J Pharmacol 2016□ Oncotarget 2017□ Hepatol Commun 2018□ Front Pharmacol 2020□ Mol Med Rep 2020□ Science Reports 2021 □ Obesity 2021 □ FEBS Open Bio 2024 □ 梨花女子大学、全南大学、東北大学□ 梨花女子大学、東北大学□ ノースウェスタン大学、東北大学□ 東北大学□ 奈良県立医科大学、東北大学□ ノースウェスタン大学、オレゴン健康科学大学、ジェシーブラウン退役軍人メディカルセンター、東北大学□ ノースウエスタン大学、ジェシーブラウン退役軍人メディカルセンター、東北大学□ 東京科学大学、東京大学、東北大学、上海大学骨・関節(骨粗鬆症、変形性関節症)□ FEBS Open Bio 2018□ BBRC 2021□ 東京科学大学、延辺大学、東北大学□ 東京科学大学、東北大学、国立障害者リハビリテーションセンター脳(アルツハイマー病等)□ PLoS One 2015 □ J Alzheimers Dis 2018□ Psychopharmacology 2023□ ノースウェスタン大学、セントルーク大学病院、東北大学□ アラバマ大学、東北大学□ ノースウェスタン大学、東北大学腎臓(慢性腎臓病)□ Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2013 □ PLos One 2016□ 東京大学、南方医院、ノースウェスタン大学、ルーヴァンカトリック大学、東北大学□ 梨花女子大学、キム医院、東北大学 XPRIZE HEALTHSPANコンペティションXPRIZE HEALTHSPAN(https://www.xprize.org/prizes/healthspan)は、人間の老化や長寿に対する治療アプローチに革命を起こし、健康寿命を積極的に10年以上延伸することを目的とし、2030年までに健康寿命を延ばすことができた研究チームに対して、総額1億米ドルを支払うという長寿を課題としたコンペティションです。世界から600を超える応募があり、人間の長寿に対する治療アプローチとして、低分子医薬品、バイオ医薬品(ワクチン、免疫調節剤、モノクローナル抗体、および組み換えタンパク質治療薬)、遺伝子治療、細胞治療、医療機器(医療治療機器、ゲームベースのデバイス、デジタルヘルスデバイス)、電気医療機器、磁気医療機器、サプリメント、機能性食品、食事療法、運動療法、さらにそれらの組み合わせなど様々なモダリティが提案されました。当社は、PAI-1阻害薬RS5614の抗老化・長寿作用に基づき、「老化細胞を除去し、がん化を促進する事なく老化関連疾患を抑制する新たな新規低分子医薬品」のコンセプト(Senolytic drug*10)で、東北大学、東海大学、広島大学など国内外の研究機関及び医療機関との共同で、昨年末にこのXPRIZE HEALTHSPANに応募し、TOP40(セミファイナリスト)に入賞し、賞金25万米ドルを獲得しました。セミファイナリストは、2026年3月末までに1年以内のセミファイナル臨床試験を実施し、その報告書をXPRIZE HEALTHSPAN評価委員会に提出します。このセミファイナル臨床研究成績を元に、2026年後半にTOP10(ファイナリスト)が選出され(賞金100万米ドル)、最終コンペティションのための4年のファイナル臨床研究が実施されます。ファイナル臨床研究を実施したTOP10のチームの中で最も優れた研究に対しては、寿命を延ばした年数に応じて賞金が与えられます(最大8,100万米ドル)。 〔 PAI-1阻害薬 〕PAI-1は血栓の分解(線溶系という)に必要な分子ですが、近年ではがんや老化(加齢)に関連して発症する種々の疾患に関与することを強く示唆する一連の知見が明らかとなっており、がんや抗老化・長寿に関わる創薬の標的と考えられます。しかし、これまでヒトのPAI-1分子の活性を阻害できる医薬品は、臨床応用されていません。当社は、加齢に伴い生じる一連の疾患を治療できる可能性を持ったPAI-1阻害薬の開発に取り組んできました。ヒトのPAI-1分子の結晶構造を基に、コンピューター工学を利用した約200万バーチャル化合物ライブラリーの探索から約96個のPAI-1阻害候補化合物を取得しました(図表9)。PAI-1活性阻害作用(PAI-1による組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)(*11)阻害抑制)及びPAI-1/tPA複合体の形成阻害を指標として、新規阻害化合物を10年以上かけてこれまで1,400個以上合成スクリーニングし、更にそれらの活性や安全性などを評価する中で、安全性に優れた経口投与可能な臨床開発候補化合物RS5614を取得いたしました。当社のPAI-1阻害薬はPAI-1分子内のビトロネクチン結合部に結合し、PAI-1を不安定化してその分解を促進する可能性が示されました(図表10にRS5484を例示、International Journal of Molecular Sciences 2021)。 < 図表9 新規PAI-1阻害薬の合成と構造最適化による臨床開発候補品の取得 >(出典:東北大学) < 図表10 PAI-1とPAI-1阻害薬RS5484複合体のX線構造解析 >(出典:東北大学) リード化合物であるRS5275から合成展開を行い、4つの臨床候補化合物RS5441、RS5484、RS5509、RS5614を取得しました。これらは、経口吸収性や体内動態(組織移行性)などそれぞれに特色を持つ化合物で、異なる適応症において有用と考えられます(図表9)。過去に国内外大手を含む多くの製薬会社やバイオベンチャーが低分子PAI-1阻害薬の創製に挑戦しました。幾つかの薬剤はマウスやラットの動物モデルで有効性が報告され、Wyeth社(現Pfizer社)の製品PAI-749(Diaplasinin)は臨床ステージまで進みましたが、臨床第Ⅰ相試験で開発は中止されました。これまでサルの病態モデルで薬効を示す論文は、当社のRS5275しかありません(J Cereb Blood Flow Metab 2010)。経口での吸収性が極めて高い低分子化合物のために、経口投与でも十分な血中濃度に達します。薬効、動態、安全性、物性の指標でスクリーニングし、最終的に選択された臨床開発品がRS5614です。探索からGLP非臨床安全性試験、GMP合成・製剤、医師主導治験まで、一貫して当社と大学(東北大学、東海大学など)との共同研究で開発しました。 〔 RS5614の薬剤概要 〕臨床開発品のRS5614の製造販売承認申請に必要となる非臨床試験の成績は、薬機法(*12)に基づく医薬品GLP(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令)とICH(医薬品規制調和国際会議)のガイドラインに従って収集しました。 非臨床安全性GLP試験1)安全性薬理試験ではhERG試験(10 µM)、ラットの中枢神経系(300 mg/kg)、サルの心血管系及び呼吸器系試験(300 mg/kg)で陰性、2)一般毒性試験ではラットの26週間経口投与試験(無毒性量400 mg/kg/日)、サルの39週間経口投与試験(無毒性量30 mg/kg/日)で陰性、3)遺伝毒性試験では法定3試験で陰性、4)光毒性試験陰性、5)生殖・発生毒性試験も陰性です。以上の安全性試験の成績を含めて、薬物動態試験や物性データなどの製造販売承認を行うために必要な非臨床試験成績を有しています。 第Ⅰ相臨床試験(健常成人男子)薬機法に基づくGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)条件下での医師主導治験で、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理に関する基準)で製造された治験薬を用いて実施しました。第Ⅰ相単回投与試験では、RS5614の240 mgまでの安全性が確認され、第Ⅰ相反復投与試験においては、120 mgを7日間経口投与した際に発現した有害事象はいずれも軽度でした。 知的財産権RS5614に関して、物質特許(出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本・米国・欧州・カナダ・豪州・中国・韓国・インド 登録済、存続期間満了日:米国 2030年8月7日、日本を含むその他各国 2030年3月31日)に加えて、非臨床試験から複数の用途特許(①慢性骨髄性白血病治療用途、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本・米国・欧州 登録済、存続期間満了日:2034年4月15日、②免疫チェックポイント分子の発現抑制、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本 登録済、米国・欧州 出願中、存続期間満了日:2040年9月30日)、③線溶系亢進薬、及びその用途、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本 登録済、米国・欧州 出願中、存続期間満了日:2041年5月30日(見込)、④エフェロサイトーシス亢進剤、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本出願中)を出願することで、知的財産権の有効期間を延長しています。RS5441に関して、物質特許(出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本、米国 登録済、存続期間満了日:2029年3月31日)を出願しています。 適応症RS5614は、非臨床試験では加齢に関連する疾患に広く有効である可能性が示唆されていますが、現在臨床試験(医師主導治験)としては、がん領域では慢性骨髄性白血病(CML:前期及び後期第Ⅱ相試験終了、第Ⅲ相試験実施中)、悪性黒色腫(メラノーマ:第Ⅱ相試験終了、第Ⅲ相試験実施中)、非小細胞肺がん(第Ⅱ相試験実施中)及び皮膚血管肉腫(第Ⅱ相試験実施中)を対象とし、呼吸器疾患ではCOVID-19に伴う肺傷害(前期及び後期第Ⅱ相試験終了)、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(第Ⅱ相試験実施中、患者登録完了)及び抗老化・長寿(特定臨床研究)を対象とします。RS5441は、男性型脱毛症治療(第Ⅱ相試験準備中)が対象です。 導出男性型脱毛症治療を含めた皮膚疾患領域でのRS5441の用途については、2016年6月に独占的権利をエイリオン社に許諾しました。その他、がん領域(CML、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、血管肉腫)でのRS5614の用途については最終的に別の製薬企業に導出し、商業化する予定です。 〔 慢性骨髄性白血病(CML)治療薬 〕(対象疾患)CMLは、造血幹細胞の染色体に異常が起こり、がん化した白血病細胞が無制限に増殖することで発症します。治療の中心となるのはイマチニブなどの分子標的治療薬(チロシンキナーゼ(*13)阻害薬(TKI))です。TKI投与により長期間の寛解を導入しても、休薬すると再発することが示されました。日本におけるCMLの発症は、10万人に毎年1人程度であり、人数にすると年間約1,300人となります。また、年齢別の発症頻度をみると、小児では稀で、60歳を超える頃から増加します。高齢者人口の増加に伴う発症人数の増加とTKI治療の進歩による死亡率の低下により、総患者数は約15,000人以上と推定され、年々増加傾向にあります。(概要)当社は、東海大学との共同研究で、PAI-1欠損マウスにおいて造血幹細胞が末梢血中に動員されること、すなわち、PAI-1が造血を抑制していることを見出しました。また、正常マウスに当社のPAI-1阻害薬RS5509を経口投与すると幹細胞を骨髄ニッチ(*14)から動員できることから、当社のPAI-1阻害薬が造血「再生」を促進することが明らかになりました(Blood 2017)。骨髄ニッチにある幹細胞ではTGF-β(*15)の作用を受けてPAI-1が細胞内(ゴルジ体という細胞内小器官)に高発現します。マウス幹細胞(Lineageマーカー陰性、Sca-1陽性、c-Kit陽性)だけでなく、ヒト幹細胞(CD33陽性、CD34陽性)においてもPAI-1が高発現することを証明しました。ゴルジ体の中でPAI-1は細胞内酵素furin(*16)に結合してこれを阻害すると考えられます。その結果、膜型マトリックスメタロプロテアーゼ(*17)の活性化が阻害され、骨髄ニッチからの幹細胞の遊離が阻害されます。実際、移植モデルにおいてPAI-1を過剰発現させた白血病細胞はTKIイマチニブに抵抗性を示します。PAI-1阻害薬は、PAI-1とfurinとの結合を阻害し、膜型マトリックスメタロプロテアーゼを活性化し、骨髄ニッチからの幹細胞の動員を促進する作用を有します(図表11)。 < 図表11 PAI-1阻害薬によるがん幹細胞動員の分子機序 >(出典:東海大学) CMLに対する治療薬はTKI(イマチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、ポナチニブなど)が主流ですが、TKIは、この骨髄ニッチに潜むがん幹細胞には作用しないことから、CMLの根治には至らず、多くの場合TKIを休薬するとCMLは再発します。東海大学との共同研究で、PAI-1阻害薬が骨髄ニッチからがん幹細胞を遊離させ、TKIの作用を増強させることで、CMLの根治をもたらす可能性が強く示唆されました。実際に、CMLモデルマウスにPAI-1阻害薬(RS5614)とTKI(イマチニブ)とを併用すると、TKI単独投与に比べて骨髄に残るがん幹細胞数が著明に減少し、生存率が大きく増加しました(図表12)。以上、RS5614は、正常骨髄幹細胞と同様にがん幹細胞を骨髄ニッチから遊離させ、結果的にTKIの治療効果を高めることで、CMLを根治させる薬剤となる可能性があることが分かりました。 < 図表12 CMLモデルにおけるチロシンキナーゼ阻害薬とRS5614併用の治療効果 > (出典:東北大学) TKIの開発によりCML患者の予後は大きく改善しましたが、新たな課題が明らかとなっています。CMLを治癒するためには30年以上という長期にわたる高額なTKI治療の継続が必要であり、医療経済的な負担につながっています。長期継続服用による副作用も問題となっており、心筋梗塞や脳梗塞により死亡する例や網膜動脈閉塞症により失明する例も報告されています。したがって、可能な限り早期にTKI服用を必要としない治癒(Treatment free remission、TFR)に導くことが重要です。最近、深い分子寛解状態(*18)であるDeep molecular response (DMR) (MR4.5; BCR-ABL ISで0.0032%以下のクローンの縮小)が一定期間継続しているCML患者では、TKIの中止後も分子遺伝学的再発がない状態、すなわちTFRが得られることが明らかになりましたが、3年間という最短の治療期間でTFRを目指すことのできる症例の割合は年間5〜10%にしか過ぎません。更に、TFRを得る条件として、DMR到達後少なくとも2年以上のDMRの維持が必要とされています。RS5614は、早期に多くのCML患者をTFRに導く新たな作用機序の安全な医薬品候補です。前期第Ⅱ相試験では、TKI治療を2年間以上実施している慢性期CML患者を対象に、120 mg/日のRS5614を4週間併用投与することにより、12週間後のDMR達成率を指標とする医師主導治験を東北大学、秋田大学、東海大学において実施しました。21例が組み入れられ、脱落や中止例はなく、全例が解析対象例となりました。主要評価項目の結果は、21例中DMRを達成した症例は4例で、12週時の累積DMR達成率は20.0%でした(ヒストリカルコントロールとして3か月時点での閾値に設定した平均的累積DMR達成率は2%)。安全性評価では、解析対象例の全21例に副作用は認められませんでした。以上の結果より、有効性では、12週間後の累積DMR達成率20.0%がTKI治療におけるヒストリカルコントロールとして3か月時点での閾値に設定した平均的累積DMR達成率2%以上の成績であったことから、RS5614併用投与により累積DMR達成率の上昇効果が確認できました。また、本治験のRS5614投与期間は4週間でしたが、BCR-ABL値が投与期間の経過に伴い低下し4週時には有意(対応のあるt検定;P = 0.0386)に低下しました。このことから、RS5614の投与を更に継続した場合、累積DMR達成率の更なる上昇効果が期待できると考えられました。後期第Ⅱ相試験では、慢性期CML患者を対象にTKIとRS5614(150 mg/日より開始し、180 ㎎/日に増量可)を併用し、RS5614投与開始後48週のDMRの累積達成率をヒストリカルコントロール8%と比較して33%に上昇させることを確認することと、RS5614及びTKIの長期併用時におけるRS5614の薬物動態及び安全性の確認を目的に実施しました。33例中DMRを達成した症例は11例で、48週時の累積DMR達成率は33.3%でした(POC取得)。特筆すべきは、TKI治療期間が3年以上5年以下の患者では累積DMR達成率は50.0%に達しました。安全性は、治験薬との因果関係で重篤な有害事象はありませんでした。後期第Ⅱ相試験の成績に基づいて、東北大学、東海大学、秋田大学など12の医療機関と共同で、慢性期CML患者を対象としたTKIとRS5614の併用効果を検証するプラセボ対照二重盲検の第Ⅲ相医師主導治験を、AMED「革新的がん医療実用化研究事業」の支援を受けて実施し、2024年12月の最終年度評価の結果、第Ⅲ相試験の目標症例数の登録が終了し、2年の延長期間内に試験を完了する目処が立っているとの理由から、さらに助成期間の2年間延長が承認されました。これにより、2026年3月期及び2027年3月期に見込んでいた費用計上がなくなり収益性が改善する見込みです。また、後期第Ⅱ相医師主導治験の結果が、2022年9月に科学誌『Cancer Medicine』に掲載され、CMLを含む当社のがん治療薬の取組みが、2023年9月科学誌『Nature』に取材記事として掲載されました(「第2 事業の状況 6 研究開発活動」をご参照ください)。 〔 悪性黒色腫(メラノーマ) 〕(対象疾患)悪性黒色腫は、表皮にあるメラノサイトと呼ばれる色素を作る細胞又は母斑細胞が悪性化した腫瘍で、皮膚がんの中でも転移率が高く極めて悪性度が高いとされています。日本における罹患率は10万人当たり1~2人で、海外に比較すると少なく、国内の患者数は約5,000人、年間約700人が悪性黒色腫により死亡していると報告されています。国内の患者では、海外とは異なるサブタイプの悪性黒色腫が多いことから、国内の根治切除不能悪性黒色腫患者では、米国のNCCNガイドラインで推奨されている抗PD-1抗体(ニボルマブ、商品名:オプジーボ)単剤療法による治療が奏効しづらいとされています。特に、根治切除不能かつニボルマブ不応答の患者に対して、2次治療として、ニボルマブと抗CTLA4抗体(イピリムマブ、商品名:ヤーボイ)の併用が保険適応され、国内における奏効率(*19)が13.5%と報告されました。しかし、併用患者の50%以上で重度の免疫関連副作用が起こることが社会問題になっています。更に、2種類の抗体医薬併用による高額医療費の課題もあり、抗体医薬とはモダリティが異なる、経口投与可能で、副作用がなく、奏効率を上昇させ、抗体医薬より安価な併用薬が望まれています。(概要)がんの治療には、①手術療法、②放射線療法、③化学療法(抗がん剤)、④免疫療法があり、4大治療法と呼ばれています。このうち免疫療法は体に備わっている免疫本来の力を利用してがんを攻撃する治療法です。様々な免疫療法が提案されましたが、効果が証明された免疫療法の中でも免疫のブレーキを阻害する免疫チェックポイント阻害薬(*20)が主なものです。過剰な免疫反応は有害ですので、体内にはそれを抑える機構が備わっています。そのようなブレーキ機能を担う分子は免疫チェックポイント分子と呼ばれています。実は、がんはこの免疫チェックポイント分子を悪用することで自分自身に対する免疫が働かないようにしています。抗体医薬である抗PD-1抗体など免疫チェックポイント阻害薬は、免疫チェックポイント分子を阻害することでこのブレーキを解除し、がんに対する免疫応答を賦活化します。抗がん剤はがん細胞を直接殺傷します。これに対して免疫チェックポイント阻害薬は生体内の免疫チェックポイント分子を阻害して、もともと体が持つ免疫を活性化してがんを攻撃します。東海大学との共同研究から、RS5614が免疫チェックポイント分子の発現を阻害し、細胞障害性T細胞を活性化し、腫瘍関連マクロファージの腫瘍浸潤を軽減するなど、免疫チェックポイント阻害薬と同様な作用機序を有する事実が明らかとなりました(図表13)。実際に、大腸がん(東海大学)、悪性黒色腫(東北大学)、非小細胞性肺がん(広島大学)を移植したマウス担がんモデルにおいて、RS5614が抗PD-1抗体の悪性黒色腫に対する治療効果を増強することが証明されました。 < 図表13 RS5614の免疫チェックポイント分子阻害作用 >(出典:当社作成) 抗PD-1/PD-L1抗体など免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法は、がん治療を大きく発展させる画期的な治療です。しかし抗体医薬であるため高額医薬品であり、更にその治療効果も限定的であるために抗CTLA-4抗体など複数の抗体医薬の組み合わせが提唱されていますが、併用治療は肺臓炎や高サイトカイン血症などの致死的な免疫関連の副作用が増えること、医療費が高額となることが問題になっています。そのため、副作用が少なく、医療経済的にも安価な抗PD-1/PD-L1抗体の奏効率を上昇させる併用薬が待ち望まれており、抗PD-1抗体との併用で相乗的に抗腫瘍免疫を増強するRS5614はこのアンメットニーズを解決できる医薬品と考えます。NPO法人「Japan Skin Cancer Network(JSCaN)」を立ち上げて悪性黒色腫の治療成績向上のために連携している東北大学、筑波大学、がん研究会有明病院、都立駒込病院、近畿大学、名古屋市立大学、熊本大学の7大学/医療機関との多施設共同で、AMED「橋渡し研究プログラムシーズC(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の支援を受けて、RS5614とニボルマブとの併用による有効性及び安全性を確認する第Ⅱ相試験(医師主導治験)を2021年7月から実施しました。ニボルマブが無効であった悪性黒色腫患者29例に、RS5614とニボルマブを8週間併用した結果7例で奏功が見られました(奏効率 24.1%)。また治験薬と因果関係の可能性がある有害事象は2例(5.9%)と少なくRS5614とニボルマブ併用の安全性も確認されました。これは、ニボルマブ無効例患者の2次治療において、RS5614とニボルマブの併用が既存治療であるイピリムマブとニボルマブの併用よりも有効性と安全性に優れることを示す結果でした。また、2024年6月に、本治験の結果が科学誌『British Journal of Dermatology』に掲載されました。悪性黒色腫の次相試験に関して、2023年12月にPMDA対面助言を実施し、臨床プロトコールを確定し、2024年8月には厚生労働省より悪性黒色腫に対する希少疾患用医薬品の指定を受け、2024年12月には第Ⅲ相医師主導治験の実施について東北大学病院治験審査委員会(IRB)から承認されました。PMDAに治験計画届を提出し、2025年2月に最初の被験者への投与が東北大学病院で実施され、根治切除不能悪性黒色(メラノーマ)患者124例を対象にニボルマブとのRS5614の併用の有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相医師主導治験を開始しました。本治験は薬事申請へ向けた検証的な第Ⅲ相試験であり、東北大学を含む18施設による多施設共同試験で実施しています。また、悪性黒色腫を含む当社のがん治療薬の取組みが、2023年9月科学誌『Nature』の取材記事として掲載されました(「第2 事業の状況 6 研究開発活動」をご参照ください)。 〔 非小細胞肺がんの治療 〕(対象疾患)我が国において、1年間にドライバー遺伝子(*21)変異陰性・進行非小細胞肺がんと診断される患者の推計数は23,000人です。現在、その1次治療には、プラチナ製剤併用化学療法と抗PD-1/PD-L1抗体が用いられていますが治癒に至る症例は少なく、2次治療としてドセタキセル等の化学療法が実施されますが、無増悪生存期間は3か月と短く、3次治療が必要となります。3次治療では、抗PD-1抗体(ニボルマブ)再投与も選択肢となっていますが、抗PD-1抗体治療歴のある患者での効果は限定的です。抗PD-1抗体の腫瘍免疫応答を増強するために、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)を追加する治療開発が行われていますが、免疫に関連した副作用が増えること、更に医療費が高額となることなど課題が大きく、悪性黒色腫治療と同様の問題が生じることから、副作用が少なく、医療経済的にも抗PD-1/PD-L1抗体の奏効率を上昇させる安価な併用薬が待ち望まれています。(概要)本研究は、悪性黒色腫同様、RS5614が有する免疫チェックポイント阻害作用に基づいて実施されています。広島大学での研究から、PAI-1が肺がんの腫瘍進展、更にはがん細胞の増殖能亢進や血管新生に関与していること、更に抗PD-1抗体に耐性となった肺がん細胞がPAI-1を高発現することなど事実が明らかとなりました。当社と広島大学との共同研究で小細胞性肺がんモデルマウスを用いた非臨床試験を実施した結果、抗PD-1抗体とRS5614の併用投与は抗PD-1抗体単剤投与よりも高い抗腫瘍効果を示すことを確認しました。そこで、2023年9月から、2つ以上の化学療法歴を有する切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者(3次治療以降の患者)39例を対象に、ニボルマブとRS5614との併用投与の有効性及び安全性を検討することを目的とした国内第Ⅱ相医師主導治験を実施しています。治験期間は3年間を見込んでおり、広島大学、島根大学、岡山大学、鳥取大学、四国がんセンター、広島市民病院などの医療機関で実施中です。本治験治療の有効性が確認できれば、3次治療以降で有効な治療法を提案できます。悪性黒色腫から肺がんへの適応拡大は、抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬と同じ展開です。当社は、2022年10月に国立大学法人広島大学と非小細胞肺がんに対する非臨床試験及び臨床試験に向けての共同研究契約を締結しました。研究段階が非臨床試験から臨床試験(医師主導治験)に移行したこと、更には広島大学の特色や強みを生かし、医師主導治験実施を含めた医薬品及びプログラム医療機器の共同研究開発を行い、研究開発の効率化及び推進並びに人材育成などを目的としたオープンイノベーション拠点(Hiroshima University x Renascience Open innovation Labo:HiREx)を設けるため、2023年4月に広島大学と包括的研究協力に関する協定書を締結しました。本治験はHiRExを主体に実施され、第Ⅱ相試験(医師主導治験)を実施中です。 〔 血管肉腫の治療 〕(対象疾患)血管肉腫は極めてまれな軟部腫瘍で、発症頻度としては、米国において100万人当たり2.1人、英国において100万人当たり1.5人と報告され、日本では100万人当たり2.5人程度と推定されています。部位別では、皮膚が約49.6%と最も多く、その50~60%が頭頸部に発症しています。血管肉腫の治療法には免疫療法、外科療法、放射線療法、化学療法がありますが、予後が悪いため、直ちに集学的治療を実施すべきとの考えが強く、各施設で可能な治療を、病期を問わず実施されている状況です(頭部血管肉腫診療ガイドライン)。血管肉腫の初期治療における化学療法は、国内で公知申請によりタキサン系抗がん剤のパクリタキセル(PTX)が保険適応となり、第1選択薬となっています。しかし、タキサン系抗がん剤を用いた放射線化学療法後においても、その全生存期間の中央値は649日であり、大半の症例において1次治療で長期寛解を得ることは困難な状況です。したがって、2次治療の重要性が認識されていますが確立されておらず、有効性・安全性の高い治療法や治療薬の開発が望まれています。(概要)PAI-1は血管内皮に強く発現しており、その病態生理に深く関わることが知られています。東北大学との共同研究において、血管内皮細胞の腫瘍である血管肉腫はPAI-1を高発現しており、その発現頻度が高い患者では1次治療でのタキサン系抗がん剤の効果が得られにくいことが報告されています。タキサン系抗がん剤の作用機序としては、アポトーシス(*22)(細胞死)の誘導が考えられていますが、1)PAI-1は主として血管内皮から産生され、2)PAI-1を高発現しているがん細胞はアポトーシス耐性であることから、タキサン系抗がん剤とPAI-1阻害薬RS5614を併用することにより、タキサン系抗がん剤の血管肉腫治療効果を増強できる可能性が強く示唆されます。そこで、2023年10月から、タキサン系抗がん剤パクリタキセルが無効となった皮膚血管肉腫患者16例を対象にパクリタキセルとRS5614の併用による有効性及び安全性を評価する第Ⅱ相医師主導治験を実施中です。治験期間は2年間を見込んでおり、東北大学、自治医科大学、九州大学、名古屋市立大学、国立がん研究センター中央病院、がん研究会有明病院などの医療機関で実施しています。本研究で有効性を検証できれば、有効な治療薬のない皮膚血管肉腫患者に対して新たな治療法が提案できます。 〔 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う肺傷害治療薬 〕(対象疾患)新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)の感染者の大部分は軽症で経過しますが、高齢者や基礎疾患を持つ患者などでは重症化し、重症の肺炎や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に至る場合があります。軽症例では自宅療養や宿泊療養の措置がとられましたが、発病当初は軽症であっても一部、急速に肺炎を伴い重症化する患者の存在が問題になりました。現在は、重症化しにくいオミクロン株への変化やワクチンの普及などにより、COVID-19の重症化は減少しています。また、2023年5月に、COVID-19の感染症法上の分類が「2類」から「5類」に引き下げられましたが、変異株の問題等、なおも今後の状況を注視する必要があります。自宅あるいは外来で治療を受ける患者の悪化を防ぎ、入院患者の重症化を予防する治療薬は必要であり、当社はこれらの課題を解決するための内服薬を開発し、患者の延命のみならず、医療現場の負担軽減に寄与したいと考えます。(概要)COVID-19による重症肺炎患者では、微小血栓、炎症、線維化など病変が認められます。COVID-19肺炎に極めて特徴的な所見は、凝固系の亢進及び線溶系の低下です。COVID-19肺炎では、インフルエンザ肺炎に比べて肺の微小血栓の形成能が9倍も高いことが知られています。実際に、COVID-19の中程度から重篤の肺傷害を呈するCOVID-19肺炎患者にプラスミノーゲンを投与すると肺傷害が速やかに改善されること、またCOVID-19成人患者では血中t-PA/PAI-1、d-dimer高値など、血液凝固亢進と死亡率が有意に相関することが報告され、線溶系を活性化させるRS5614の有効性が強く示唆されます。実際に、数々の国内外との共同研究で実施した多くの非臨床試験から、RS5614が種々の肺傷害マウスモデルでの病態(気腫、線維化、炎症)を改善し、上皮細胞保護作用を示すことが明らかとなりました。更に、RS5614のヒト第Ⅰ相試験(反復投与)において、RS5614の120 mg投与後8時間をピークとしてPAI-1活性が低下しtPA活性が上昇すること、またこの作用は投与7日目まで維持されることが分かりました。以上、RS5614は線溶系を活性化することでCOVID-19肺炎での微小血栓を溶解し、線維化や炎症などの肺傷害を阻害する可能性が示唆されました。RS5614は、COVID-19の治療に用いられている抗ウイルス薬、ステロイド、中和抗体治療薬などとは作用機序が全く異なります。また、COVID-19に伴う肺傷害の治療として、トシリズマブ等の抗体医薬(注射薬)が治療に用いられていますが、RS5614は経口投与可能な低分子薬剤です。なお、トシリズマブは、炎症を促進する因子のひとつであるIL-6を抑えることにより、炎症性因子の過剰な上昇による肺炎重症化を防ぐことが示唆されていますが、COVID-19の重症化において、上昇した生じた血中のIL-6がPAI-1を介して血栓形成を促進することが重要であると報告されています。COVID-19に伴う肺傷害に対するRS5614の有効性及び安全性を評価するために、国内の7か所の医療機関で多施設共同での前期第Ⅱ相医師主導治験(非盲検試験)を実施しました(AMED「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(第4次)(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」に採択)。本治験は、2020年10月に最初の被験者が登録され、2021年3月に26名で完了という迅速かつ効率的な治験となりました。非盲検試験であることから有効性の検証は困難ですが、主要評価項目(人工呼吸器管理が必要となる酸素化の悪化の有無)では悪化した患者は無く、また副次項目(治験薬投与28日間の生存)では全症例生存、副次項目(治験薬投与開始後の酸素投与必要日数)では5L以上の酸素投与量を必要とする患者は1日目3名から3日目0名に、また2Lより多く5L未満の酸素投与量を必要とする患者は1日目5名から10日目0名になりました。更に、副次項目(治験薬投与前後の胸部CT画像上の肺野病変の割合の変化)では、中止例及び未登録例を除く18例について有意な変化を認めました(p = 0.0018)。治験薬との因果関係の可能性がある重篤な有害事象は無く、安全性が確認されました。後期第Ⅱ相試験(医師主導治験)は、2021年6月から国内主要医療機関(20施設)で開始しました(AMED「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(第5次)(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」に採択)。また、国内の治験と並行して、米国、トルコ共和国でも同薬剤を用いた類似のプロトコールで第Ⅱ相試験(医師主導治験)を実施しました。RS5614は抗ウイルス薬とは作用機序が全く異なり、肺炎に対する内服薬です。現時点で、抗ウイルス薬以外のCOVID-19に伴う肺傷害に対する治療薬は高額な注射薬ですが、RS5614は経口投与が可能であり、化学合成で製造される低分子医薬品であるため、その価格も低く抑えられます。現在、COVID-19は落ち着いていますが、COVID-19の感染症法上の分類が「2類」から「5類」に引き下げられたことに伴い、自宅あるいは外来で治療を受ける患者が更に増加すると考えられます。肺炎を惹起する新たな株の発生に際して、速やかに次相臨床試験(軽症から中等症Ⅰの肺炎患者を対象)を実施できるよう準備をしています。なお、前期及び後期第Ⅱ相医師主導治験の結果は、2024年1月に科学誌『Science Report』に掲載されました。 〔 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)の治療 〕(対象疾患)全身性強皮症(Systemic sclerosis、SSc)は、皮膚と多くの臓器の血管障害と線維化を特徴とする全身性の自己免疫疾患です。その病因は不明で、病態に立脚した根治的治療は存在しません。SScに伴う線維化は、皮膚の硬化や間質性肺疾患(Interstitial lung disease; ILD)などの臨床症状を引き起こします。国内では、3万人以上が罹患していると推測されており、その死因の7割は疾患関連死で、この内の3割以上はILDによるものです。SSc-ILD患者は、17,000人適度と推定されています。また、ILDは、直接の死因とならない場合にも、高度呼吸機能低下によって日常生活が著しく制限される患者を一定数生むことがわかっています。SSc-ILDに対する治療は、従来、経口ステロイドと細胞の核酸の合成を阻害するシクロホスファミドとの併用が第一選択とされてきましたが、その効果は極めて限定的です。近年、抗線維化薬(*23)であるニンテダニブや抗体医薬品のリツキシマブが保険適用となりましたが、前者の効果はSSc-ILDの進行抑制作用に留まっており、後者はSSc-ILD患者への投与後に間質性肺炎の増悪により死亡に至った例が報告されています(中外製薬株式会社による『適正使用ガイド』より)。したがって、単剤あるいは既存薬との併用において、既に形成された線維化を改善する作用を持つ安価で安全な新規治療薬の開発が望まれています。(概要)SScは炎症、血管障害、線維化を主要3病態とします。RS5614はこれら病態を改善し、特に肺傷害(線維化、炎症)の改善と肺上皮保護作用を有することから(「事業の内容 (2) 当社のコア技術 ②パイプラインの概要 (a) RS5614(PAI-1阻害薬) 〔 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う肺傷害治療薬 〕(概要)」をご参照ください)、SSc-ILDの線維化を抑制する可能性が示唆されます。東北大学との共同研究でブレオマイシン投与による誘導皮膚/肺線維化モデルマウスを用いた非臨床試験の結果、ブレオマイシン皮下投与開始同日からRS5614の1、5mg/kgあるいは対照薬のニンテダニブの10、50 mg/kgを連日経口投与した結果、肺傷害のマーカーである肺ヒドロキシプロリン量をRS5614は用量依存性に低下させ、その効果はニンテダニブより強いことが明らかとなり、RS5614の全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)の有効性が示唆されました。そこで、SSc-ILD患者50例を対象として、RS5614の有効性と安全性を確認するための探索的第Ⅱ相試験(医師主導治験)を、東北大学、東京大学、金沢大学、福井大学、大阪大学、和歌山県立医科大学、群馬大学など複数の国内医療機関で実施中です。本治験は、AMED「難治性疾患実用化研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の支援を受けて実施しています。2024年12月には、目標症例数である50症例の登録が完了しました。 〔抗老化・長寿研究〕(概要)XPRIZE HEALTHSPAN(https://www.xprize.org/prizes/healthspan)は、人間の老化や長寿に対する治療アプローチに革命を起こし、健康寿命を積極的に10年以上延伸することを目的とし、2030年までに健康寿命を延ばすことができた研究チームに対して、総額1億米ドルを支払うという長寿を課題としたコンペティションです。世界から600を超える応募があり、人間の長寿に対する治療アプローチとして、低分子医薬品、バイオ医薬品(ワクチン、免疫調節剤、モノクローナル抗体、および組み換えタンパク質治療薬)、遺伝子治療、細胞治療、医療機器(医療治療機器、ゲームベースのデバイス、デジタルヘルスデバイス)、電気医療機器、磁気医療機器、サプリメント、機能性食品、食事療法、運動療法、さらにそれらの組み合わせなど様々なモダリティが提案されました。当社は、PAI-1阻害薬RS5614の抗老化・長寿作用に基づき、「老化細胞を除去し、がん化を促進する事なく老化関連疾患を抑制する新たな新規低分子医薬品」のコンセプト(Senolytic drug)で、東北大学、東海大学、広島大学など国内外の研究機関及び医療機関との共同で、昨年末にこのXPRIZE HEALTHSPANに応募し、TOP40(セミファイナリスト)に入賞し、賞金25万米ドルを獲得しました。セミファイナリストは、2026年3月末までに1年以内のセミファイナル臨床試験を実施し、その報告書をXPRIZE HEALTHSPAN評価委員会に提出します。このセミファイナル臨床研究成績を元に、2026年後半にTOP10(ファイナリスト)が選出され(賞金100万米ドル)、最終コンペティションのための4年のファイナル臨床研究が実施されます。ファイナル臨床研究を実施したTOP10のチームの中で最も優れた研究に対しては、寿命を延ばした年数に応じて賞金が与えられます(最大8,100万米ドル)。 XPRIZE Healthspansスケジュール2025年5月12日 セミファイナリスト発表(40チーム、賞金25万米ドル)2025年8月1日~ 2026年3月 セミファイナル臨床試験実施2026年3月末 セミファイナル臨床試験報告書提出2026年7月~9月 ファイナリスト発表(10チーム、賞金100万米ドル)2026年10月~2029年12月 ファイナル臨床試験実施2030年2月 ファイナル臨床試験報告書提出2030年12月 グランプリ発表 〔 RS5441_男性型脱毛症及び加齢性脱毛症外用薬 〕(対象疾患)毛髪は複数の相からなる周期を持って成長し、毛が伸びる成長期、毛が抜けやすくなる退行期、毛が抜ける休止期があります。男性型脱毛症(AGA)は,毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり,休止期にとどまる毛包(毛根を包み成長させる組織)が多くなることを病態の基盤とし,臨床的には前頭部や頭頂部の頭髪が,軟毛化して細く短くなり,最終的には頭髪が皮表に現れなくなる現象で、いわゆる禿げになります。外見上の印象を大きく左右するのでQOLに与える影響は大きいと考えられます。日本人男性の場合は、20歳代後半から徐々に進行して40歳代以後に完成され、その頻度は50代以降で40%以上になります。男性型脱毛症の発症には遺伝と男性ホルモンが関与しますが、遺伝的背景としては X 染色体上に存在する男性ホルモンが関与します。男性型脱毛症(AGA)に対して著明な発毛・育毛効果を認める薬はまだありません。外用薬で処方薬として認められているミノキシジルの効果は弱く、男性ホルモンの代謝に関わる酵素の阻害剤であるフィナステリドは性欲減退や勃起不全などの副作用があります。(概要)米国ノースウェスタン大学でPAI-1を過剰発現するマウスを作成したところ、脱毛が著しいことが明らかとなりました(J Thromb Haemost 2007)。当社のPAI-1阻害薬RS5441を当該マウスに与えたところ、著明な発毛が認められました。RS5441の投与により総毛包数が93.5%増加し、退行期の毛包数は64%減少しましたが、成長期と休止期の毛包数はそれぞれ62%と80%増加し、8週間の投与期間にわたって外観は正常化しました。この効果は、毛包細胞の増殖と関連することが示されています。以上のことから、PAI-1は脱毛症及び毛包の循環と成長の障害に関連しており、PAI-1阻害薬が脱毛症の予防と治療に役立つ可能性が示唆されました。当社は、2016年6月に皮膚科疾患用途におけるRS5441の独占的権利をエイリオン社に許諾しました。2023年4月及び6月にエイリオン社が行使したオプション権の対価を受領し、2024年7月から同社は第Ⅰ相試験を開始したため、2024年7月に追加のマイルストーンを受領しました。第Ⅰ相臨床試験に先駆けて実施された非臨床試験では、男性型脱毛症患者の頭皮組織移植片60検体が5%溶液ET-02(RS5441)に暴露され、治療4ヶ月目の発毛率が同じ実験移植モデルを用いた標準治療薬ミノキシジル(N=103)による発毛率の4倍高いという結果が得られました。非臨床試験成績を踏まえて、2024年7月1日、外用薬ET-02(RS5441)の男性型脱毛症(加齢性脱毛症)治療に対する安全性と有効性を評価する第Ⅰ相臨床試験が開始されました。この二重盲検プラセボ対照試験は、プラセボ、ET-02の1.25%または5%溶液のいずれかで構成される二重盲検プラセボ対照試験を米国の3つの医療機関、合計24人の被験者で実施しました(1日1回の外用、28日間投与)。その結果、ET-02(RS5441)は安全で、良好な耐容性を示し、高用量の5%ET-02群で有意な反応が観察されました。5%ET-02群は、5週目の終了時点において、プラセボ群と比較して非軟毛(または正常)の毛数が6倍に増加しました。1か月の治療後、5%ET-02は、男性型脱毛症の治療薬であるミノキシジルの別の臨床試験で測定された4か月の治療後の局所ミノキシジルよりも多くの非軟毛の成長を示し、実質的に変化のなかったプラセボ群と比較して、非軟毛の毛髪の太さを約10ポイント改善しました。この第Ⅰ相臨床試験の結果は、非臨床試験で確認された5%ET-02 の有効性を実証しています。ET-02(RS5441)の安全性と有効性を確認することを目的に今後、第Ⅱ相臨床試験(N=150)を開始する予定です。第Ⅱ相試験における最初の患者登録が行われた際にマイルストーンを受領し、その後も試験の進捗によってマイルストーンに応じて一時金を受領する予定です。また、将来的にET-02が商業化された場合にはエイリオン社からロイヤリティを受領する予定です。なお、特許期間満了(2029年3月31日)後も一定期間((a) ET-02の製品が当社許諾特許の有効な請求範囲でカバーされる最終日、(b)ET-02の製品に関する規制またはデータ独占権の満了日、および(c)ET-02の製品の最初の販売から10年後、のいずれか遅い日まで)ロイヤリティが受領できる契約となっております。 (b) RS8001(ピリドキサミン)〔 ピリドキサミンと精神疾患 〕私たちが喜怒哀楽を感じたり、様々なことを感じたりする時、脳内では「神経伝達物質」が行き交っています。神経伝達物質は神経細胞と神経細胞を接続する部分(シナプス)から分泌され、他の神経細胞へ情報を伝達します。神経伝達物質には様々な種類があり、その中でアミノ基を有した物質を脳内モノアミン(*24)と言います。代表的なものとして、抗ストレス作用を有するγ-アミノ酪酸(GABA)(*25)、精神安定をもたらすセロトニン(*26)、意欲や多幸感を高めるドーパミン(*27)などがあり、これらは月経前症候群 / 月経前不快気分障害、更年期障害の精神疾患などの発症に関与することが知られています。当社で開発中のRS8001(ピリドキサミン)は、天然ビタミンB6のひとつのタイプです。水溶性のビタミンで、極めて安全な医薬品ですが、日本を含めて先進国では未承認の医薬品です。ピリドキサミンは、GABAやセロトニンの産生や代謝を改善し、脳内でのこれら神経伝達物質の増加をもたらすことが、化学反応や動物試験から推測されています。当社は、東京都医学総合研究所と共同で、自殺や殺人といった自傷他害行為を伴う重篤な統合失調症の多発家系からグリオキサラーゼ1(GLO1)遺伝子変異が原因であることを見出したことを皮切りに精神疾患領域における検討を開始しました。グリオキサラーゼは解糖系から生成する反応性カルボニル化合物(RCOs)であるメチルグリオキサールを無毒化するので、グリオキサラーゼの活性低下に伴い蓄積するRCOsにより脳内モノアミンが捕捉されてしまうことが、統合失調症の一部の発症機序であると示唆されました。また、東北大学との共同研究で、ピリドキサミンがカルボニル化合物と脳内モノアミンの反応を阻止することを発見しました。ピリドキサミンは、脳内モノアミン生合成に不可欠な補酵素としてその産生を促進するだけでなく、カルボニル化合物による脳内モノアミンの分解を阻害することで、脳内モノアミンの量を調節する作用を有すると考えられます(図表14)。 < 図表14 ピリドキサミンの作用機序と天然ビタミンB6の構造 >■ピリドキサミンの作用コンセプト (出典:東北大学) 実際に、マウスを用いた実験において、脳の細胞外液に含まれる各種伝達物質を、最新の質量分析技術で解析したところ、ピリドキサミン投与により、額のすぐ後ろにある前頭前皮質ではGABA濃度は変化しませんでしたが、脳の深いところにある海馬及び線条体では脳内GABA濃度が上昇していました。神経細胞に光感受性分子を発現するラットを使い、光ファイバーを介して海馬の神経細胞を刺激してピリドキサミンの作用を検討したところ、光刺激を繰り返すとラットは興奮性の発作を引き起こしますが(4日目がピークとなる)、ピリドキサミン投与により発作は著明に抑制されました。このようにピリドキサミンは神経細胞の過剰な興奮性を抑制します。 〔 ピリドキサミンの薬剤概要 〕ピリドキサミンの製造販売承認申請に必要となる非臨床試験の成績は、薬機法に基づく医薬品GLP(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令)とICH(医薬品規制調和国際会議)のガイドラインに従って収集しました。 非臨床安全性GLP試験1)安全性薬理試験ではhERG試験で陰性、2)ラットの中枢神経系(1,000 mg/kg)、イヌの心血管系及び呼吸器系試験(300 mg/kg)で陰性、3)一般毒性試験ではラットの

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