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ステムリム(4599)は何で稼いでいるか — 事業の柱と依存度

医薬品 医薬品

事業の概要

  • 再生誘導医薬の研究開発
    ステムリム社は、損傷した生体組織の機能回復を促す「再生誘導医薬®」の研究開発を主な事業としています。この医薬品は、患者自身の体内に存在する幹細胞を活性化させることで、簡便かつ安全に高い治療効果を目指すものです。自社や大学との共同研究を通じて、新しい医薬品候補物質の探索から特許取得、非臨床試験、初期臨床試験までを実施します。
  • ライセンスアウトモデル
    同社は、開発した医薬品候補物質を国内外の製薬企業にライセンスアウトすることで収益を得ています。具体的には、契約時の一時金、開発の進捗に応じたマイルストーン収入、製品上市後の売上に応じたロイヤリティ収入、販売目標達成時の販売マイルストーン収入などがあります。これにより、自社で大規模な製造・販売網を持たずに収益を確保するビジネスモデルです。
  • 共同研究による収益と加速
    ライセンス契約に至る前の早期段階で、パートナー企業と共同研究契約を結ぶこともあります。この場合、パートナー企業からの契約一時金や共同研究収入を得ることで、研究開発費の負担を軽減し、パートナー企業の開発リソースも活用して研究開発を加速させることが可能です。これにより、リスクを分散しつつ効率的な開発を進めます。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
  • 再生誘導医薬事業
    ステムリム社の事業セグメントは「再生誘導医薬事業」の単一セグメントです。この事業では、患者自身の幹細胞を活性化させて損傷した組織の再生・治癒を促す「再生誘導医薬®」の研究開発に特化しています。脳梗塞や心筋梗塞、難治性皮膚潰瘍など、幅広い疾患への応用を目指しており、医薬品候補物質の探索から初期臨床試験までを手掛けています。
  • ライセンスアウトによる収益モデル
    再生誘導医薬事業の主な収益源は、開発した医薬品候補物質を国内外の製薬企業にライセンスアウトすることです。契約一時金、開発進捗に応じたマイルストーン収入、製品上市後のロイヤリティ収入、販売目標達成時の販売マイルストーン収入などが含まれます。これにより、自社で製造・販売を行うことなく、研究開発に特化し効率的な事業運営を目指しています。
  • 共同研究を通じた開発加速
    同事業では、ライセンス契約前の早期段階でパートナー企業との共同研究も積極的に行っています。これにより、パートナー企業からの共同研究収入を得て研究開発費の負担を軽減しつつ、パートナー企業の開発リソースを活用して研究開発を加速させることを目指しています。これは、リスクを分散し、効率的にパイプラインを進めるための重要な戦略です。
有価証券報告書「事業の内容」の全文を見る(年度切替)
FY2025|19,491 文字
3【事業の内容】 当社が創業以来、その実現を目指し研究開発に取り組んできた「再生誘導医薬®」は、怪我や病気により損傷し機能を失った生体組織の機能的再生・治癒を促進する、唯一無二の新しい作用メカニズムに基づく医薬品です。 再生誘導医薬®は、従来型の再生医療(※1)/細胞治療とは異なり、生きた細胞の投与を必要とせず、物質=医薬品の投与によって、患者自身の体内に存在する幹細胞(※2)を活性化する方法で、より簡便かつ安全に、治療効果の高い再生医療を実現します。再生誘導医薬®により、細胞製剤では難しい安定した品質による迅速な再生医療を実現する製品供給が可能となることから、広く普及可能な新しい再生医療の実現が可能となり得ます。 再生誘導医薬®の投与によって患者の体内で誘導される幹細胞は、血液循環を介して体内を巡り、損傷した組織に集積します。幹細胞は、神経や皮膚、骨、軟骨、筋肉、血管など、様々な種類の組織を構成する細胞に分化する能力を有するため、再生誘導医薬®という共通のプラットフォームによって、脳梗塞、頭部外傷、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄損傷などの中枢神経系疾患、心筋梗塞や心筋症などの循環器系疾患、難治性皮膚潰瘍などの上皮系疾患、慢性肝疾患や潰瘍性大腸炎などの消化器系疾患、難治性骨折や軟骨損傷などの骨格器系疾患、肺線維症などの呼吸器系疾患のように、多様な疾患に対して幅広い治療効果をもたらすことが期待されます。 (1)事業の内容① 事業モデル 当社は、医薬品の研究開発を主たる業務としております。自社研究若しくは大学等研究機関との共同研究を通じて、生体内における組織再生誘導メカニズム(※3)の解明と幹細胞の特性解析、幹細胞の制御技術(※4)に関する基礎研究を行い、その成果を活用したスクリーニング(※5)系によって、新規再生誘導医薬®シーズ(※6)の探索を行っております。 同定した候補物質については、自社単独若しくは共同研究を実施した大学等研究機関と共同で特許を出願し、研究開発活動の果実である知的財産の構築を進めております。大学等研究機関と共同で出願した特許については、当社が独占的な実施権の許諾を受け、以後の製品化に向けた研究開発を当社主導で進めております。 候補物質については、自社若しくは大学等研究機関/パートナー企業と共同で、製造方法の開発、非臨床薬効薬理試験(※7)、安全性試験(※8)、初期臨床試験等(※9)までを実施し、医薬品開発の成功可能性と知的財産価値を高めたうえで、国内・海外の製薬企業に対して、製品の開発権、製造権、販売権等をライセンスアウトすることで、(a)契約一時金、(b)開発の進捗に応じて支払われるマイルストーン収入、(c)製品上市後に売上高の一定割合が支払われるロイヤリティ収入、(b)売上高に対する目標値を達成するごとに支払われる販売マイルストーン収入等を得る事業モデルを採用しております。 また、パートナー企業とは、ライセンス契約に至る前の比較的早期の研究開発段階において、将来のライセンス契約を前提とした共同研究契約を締結することもあります(事業系統図の(共同研究))。この場合、当社は、パートナー企業から(a)契約一時金、(d)共同研究収入を得ることで、自社の費用負担を低減しつつ、かつパートナー企業の開発リソースも活用することで、研究開発を加速できるメリットを得られます。 このほか、研究進捗に応じてパートナー企業に対し研究データの使用権を許諾した際に収受する一時金等、(e)その他の一時金収入が発生する可能性があります。 当社の事業セグメントは、再生誘導医薬®事業のみの単一セグメントであり、事業の系統図及び事業収入の形態は以下のとおりであります。 (事業系統図) (事業収入の形態) 収入形態内容a.契約一時金共同研究やライセンス許諾の契約時に一時金として得られる収入b.マイルストーン収入医薬の開発段階毎に設定した目標(開発マイルストーン)を達成するごとに得られる一時金収入。また、製品上市後に、売上高に対する目標値(販売マイルストーン)を達成するごとに得られる一時金収入c.ロイヤリティ収入製品が上市された後に、ライセンス許諾の契約を締結した製薬会社より当該製品の売上高に対して予め契約によって設定した一定割合を得られる収入d.共同研究収入当社の知的財産を活用した共同研究の実施の対価として得られる収入e.その他一時金研究データ使用権の許諾等により得られる(a)以外の一時金収入 ② 再生誘導医薬®について/新しい再生医療 「再生誘導医薬®(Stem cell "Regeneration-Inducing Medicine™")」とは、生きた細胞や組織を用いることなく、医薬品(化合物)の投与のみによって、再生医療と同等の治療効果を得られる医薬品です。 これまでは、怪我や病気で身体の臓器や組織に大規模な損傷や不可逆的な病変による機能不全が生じた場合、一般的な医薬品によってこれを根治することは難しく、その回復には、正常な臓器と取り換える移植医療(心臓移植や腎臓移植等の臓器移植や輸血等)を行う他に方法がありませんでした。しかしながら、このような移植医療は、難治性疾患に対する根治療法となり得る一方で、臓器提供者(ドナー)の慢性的な不足と他人の臓器に対する免疫拒絶(※10)反応、また倫理的な問題等から、すべての患者が享受できる、広く普及可能な一般医療にはなり得ません。 この移植医療の限界を突破する技術として、近年注目を集めているのが再生医療/細胞治療です。再生医療/細胞治療は、患者本人若しくは健常なドナー(提供者)から採取した細胞を、生体外で大量に培養することで、治療に必要な十分量の移植用細胞を確保したうえで患者に移植する新しい移植医療技術です。この再生医療/細胞治療は、従来の移植医療が抱える普及への制約を解消し、かつ同等な治療効果を得ることが期待できる新しい医療と言えます。  しかしながら、この再生医療/細胞治療についても、その実用化に向けては数多くの解決すべき課題があります。 再生医療/細胞治療は、最終製品として生きた細胞自体を用いる必要があることから、①製造工程における品質管理の難しさ(均質な細胞製剤を安定的に製造することが難しい)、②安全性への懸念(生体外で大量培養する工程で細胞が変質・癌化するリスクがある)、③治療可能時期の制約(自家の細胞を治療に用いる場合、採取から十分量の移植細胞を得るまでに数週間におよぶ細胞培養期間が必要となり急性期~早期治療の機会は失われる)、④免疫拒絶反応(他人から提供された細胞を培養して治療に用いる場合、免疫拒絶の問題が生じる)、⑤保管・流通の制約(冷凍・冷蔵により細胞を生きたまま運搬・保存する際に非常に手間がかかり、保存期間も限られる)など、数多くの構造的な課題を抱えており、一般医療として普及するためには更なる技術革新が必要な状況にあります。 このような背景のもと、当社が大阪大学との共同研究を通じて先駆的な概念を構築し開発を進めてきた「再生誘導医薬®」は、製品として生きた細胞を一切用いることなく、『物質(化合物)の投与によって、再生医療/細胞治療を実現する』をコンセプトとする、新しい『再生医療』であります。 再生誘導医薬®は、下図に示す作用メカニズムによって、損傷した組織の再生を実現します。 (再生誘導医薬®のコンセプト) 1)静脈注射等で血液中に再生誘導医薬®を投与する。2)当該医薬品により患者自身の体内に存在する幹細胞、特に骨髄内に存在する間葉系幹細胞(※11)を刺激し、幹細胞を血液中に放出させる。3)骨髄から血液中に放出された間葉系幹細胞は、末梢血循環を介して身体中に運ばれ、損傷により低酸素状態になった組織から放出される特有の化学物質(ケモカイン(※12))を目印に患部に集積する。4)患部に集積した間葉系幹細胞は、抗炎症作用を発揮し損傷部位の炎症を鎮め、かつ組織の線維化(瘢痕形成)(※13)を抑制しながら、幹細胞の多分化能(※14)を発揮することで、行き着き生着した組織の環境に応じた、適切な種類の細胞に分化を遂げ、損傷した組織の機能的な再生を促進する。  体外で培養し加工した細胞を用いず、医薬品の投与によって患者自身の体内で間葉系幹細胞の集積誘導による再生医療を実現する再生誘導医薬®は、従来型の再生医療が抱える数多くの課題を克服する、革新的な再生医療技術であります。 <細胞治療と比較した場合の再生誘導医薬®のメリット>(ⅰ)品  質:工業生産可能な化合物医薬品であり品質管理された安定した製造が可能(ⅱ)安  全:生体外における細胞培養の工程がないため、細胞や培養液などの材料に由来する不純物による免疫反応、細胞を汚染しているウイルスやバクテリアによる感染症、細胞を培養する過程で生じる細胞の腫瘍化や癌化などのリスクがない(ⅲ)供  給:細胞とは異なり、原材料の供給が容易く、製造・保管・管理も容易。従来の医薬品と同じく医療機関(病院、薬局等)に常備しておき、必要な時にいつでも投与が可能。そのため、急性期治療(※15)への利用が可能(ⅳ)免疫拒絶:投与するのは本人の幹細胞を動員する化合物医薬品であり、他人の細胞を利用しないため、投与される細胞に対する免疫拒絶がない (2)研究開発の経緯■ 骨髄間葉系幹細胞の損傷組織への集積による体内組織再生誘導メカニズムの発見 再生誘導医薬®開発の発端は、大阪大学で進められていた遺伝性皮膚難病「栄養障害型表皮水疱症(以下、「表皮水疱症(※16)」という。)」の病態解明研究から得られた「骨髄由来間葉系幹細胞の損傷組織への集積による組織再生誘導メカニズム」の発見にあります。 当時既に、損傷臓器・組織の再生はそれぞれの臓器・組織に存在する“組織幹細胞”に依存していることは良く知られていました。しかし、表皮水疱症の患者では、皮膚の最外層にある表皮組織の接着に必要な7型コラーゲンが遺伝的に欠損しているため、生まれた直後から全身皮膚の表皮剥離を繰り返し(図1参照)、その結果、表皮内に存在する“表皮幹細胞”が大量に失われてしまいます。表皮幹細胞を失った表皮水疱症の患者は、剥離した表皮を再生できないと容易に予想されます。しかし、患者の表皮は再生能力を維持しているという診療上の観察事実から、骨髄から血液を介した皮膚への幹細胞補充メカニズム仮説が想起されました。 図1  骨髄と各臓器は血管を介して繋がっています。例えば、骨髄から血液に供給された赤血球は全身全ての臓器・組織に酸素を供給し、白血球は免疫作用を、血小板は止血作用を供給しています。その意味において、表皮水疱症の患者の皮膚に生体内で幹細胞が補充されるのだとしたら、血液を介して骨髄から補充されるのではないかという仮説は妥当に思われます。その後、当社創業者でもある大阪大学教授の玉井らによりその仮説が証明されました(出典:Am J Pathol 2008 Sep;173(3)803-14, PNAS 2011 Apr 19;108(16):6609-14,J Immunol. 2015 Feb 15;194(4):1996-2003)。即ち、壊死した表皮細胞の核から放出されたHMGB1蛋白が、骨髄内の“間葉系幹細胞”と名付けられた組織再生能力の高い幹細胞を刺激して血中へと動員すること、HMGB1蛋白により血中へと動員された間葉系幹細胞は表皮水疱症皮膚の壊死組織周囲にある血管内皮細胞が産生するケモカインSDF-1α(※17)の作用により壊死組織周囲に集積すること、壊死組織周囲に集積した骨髄由来間葉系幹細胞は、強い抗炎症作用、抗線維化作用、組織再生促進作用を発揮することにより、表皮水疱症の剥離表皮再生を誘導していることが明らかとなりました(図2参照)。 図2  HMGB1蛋白は生体内のあらゆる細胞の核内に存在していることから、これら壊死組織と骨髄間葉系幹細胞のクロストークによる組織再生誘導メカニズムは、皮膚のみならず、生体内のあらゆる臓器・組織の重度壊死性障害において、その再生誘導メカニズムとして作動していると考えられます。 ■ HMGB1蛋白の再生誘導医薬®としての可能性と想定されたリスク HMGB1蛋白は、生体内の全ての細胞の核内に存在し、DNAと結合して遺伝子発現を制御する核蛋白であることが40年以上前から知られていました。上述したHMGB1蛋白の骨髄間葉系幹細胞動員活性による組織再生誘導メカニズムの発見は、HMGB1蛋白を静脈内投与して血液中の間葉系幹細胞を人為的に増加させ、その抗炎症作用、抗線維化作用、組織再生促進作用により機能的組織再生を促進する、いわゆる再生誘導医薬®としての可能性を生み出しました(出典:Sci Rep. 2015 Jun5;5:11008)。 一方、損傷組織で壊死細胞から細胞外に放出されたHMGB1蛋白は、ヒストンやDNA、あるいは細菌・ウイルス由来因子(※18)と結合すると好中球やマクロファージ(※19)を活性化し、炎症反応を誘導することが近年明らかにされました。即ち、細胞外のHMGB1蛋白は壊死組織や感染組織において自然免疫を活性化し、壊死組織や感染組織除去反応を誘導すると共に、それに続く組織再生反応を活性化する極めて重要な生体内分子であると言えます。しかし、敗血症のような重篤な感染症では、HMGB1蛋白が細菌由来LPS(※20)と血中で結合して全身性に強い病的炎症反応を喚起することが報告されています。これらの事実は、HMGB1蛋白を医薬として静脈内投与した際に、重度な感染症を合併している患者では局所性あるいは全身性に強い炎症反応を喚起してしまうリスクがあることを示しています。 ■ 安全性の高いHMGB1ペプチド医薬の開発 HMGB1蛋白はA-box及びB-boxと呼ばれる二つのDNA結合ドメイン(※21)を持ち、炎症反応を誘導する自然免疫活性化ドメインはB-box内に存在することが明らかにされていました。(出典:J Intern Med. 2004 Mar;255(3):351-66.)これらの事実を背景として、当社は大阪大学と共同でHMGB1蛋白の骨髄間葉系幹細胞活性化ドメイン(以下、「KOI2ドメイン」という。)の探索を進め、KOI2ドメインはA-box内に存在することを明らかにしました。即ち、自然免疫活性化ドメインを含まないKOI2ドメインの化学合成ペプチド(HMGB1ペプチド、一般名:レダセムチド、以下、「レダセムチド」という。)は、炎症反応を喚起せずに間葉系幹細胞動員活性のみを持つ、安全性の高い再生誘導ペプチド医薬となることが期待されました。 大阪大学よりHMGB1蛋白及びレダセムチドの独占的実施権を得た当社は、大阪大学及び塩野義製薬株式会社(以下、「塩野義製薬」という。)のそれぞれとレダセムチド創薬の共同研究を推進し、表皮水疱症、脳梗塞、心筋梗塞、虚血性心筋症、拡張型心筋症、脊髄損傷といった、現在有効な治療法の無い難治性疾患の動物モデルにレダセムチドの静脈内投与が有効であること、炎症反応は全く喚起されないことを証明し、医薬特許取得を精力的に進め、レダセムチド医薬開発権を塩野義製薬にライセンスいたしました。 また、ヒトでの安全性及び有効性を確認する目的で行われた、大阪大学における健康成人を対象としたレダセムチド第Ⅰ相医師主導治験では、レダセムチドの安全性及び間葉系幹細胞血中動員活性が証明されました。 現在、栄養障害型表皮水疱症において第Ⅱ相医師主導治験追加試験が実施中、急性期脳梗塞においてグローバル後期第Ⅱ相試験が実施中、虚血性心筋症において第Ⅱ相医師主導治験が実施中、変形性膝関節症、慢性肝疾患において第Ⅱ相医師主導治験が完了というステータスになっております。各研究開発進捗の詳細は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績等の状況」をご参照ください。 ■ 第2世代再生誘導医薬®(TRIM3,TRIM4,TRIM5)の開発 上述したように、骨髄内に存在する間葉系幹細胞は生体内の壊死細胞が放出するHMGB1蛋白の血中濃度上昇を感知して活性化し、末梢循環を介して壊死組織周囲に集積して組織再生を促進していることが明らかとなりました。これらの発見から、HMGB1蛋白以外の壊死細胞由来因子にもHMGB1蛋白と同様の骨髄間葉系幹細胞活性化作用、組織再生誘導作用がある可能性が想起されました。そこで当社は、大阪大学と共同で壊死細胞から血中放出される可能性のある生体内蛋白を網羅的に探索し、その活性ドメインペプチドの骨髄間葉系幹細胞活性化作用を評価することにより、レダセムチドと同等あるいはそれ以上の骨髄間葉系幹細胞活性化作用を持つ生体内物質を複数同定いたしました(TRIM3,TRIM4,TRIM5)。現在、当社はこれらの第2世代再生誘導医薬®候補物質の疾患モデル動物に対する薬効評価を進めています。 (3)技術の優位性 間葉系幹細胞を利用した細胞治療が、様々な疾患に対して行われているのは、間葉系幹細胞が有する、様々な細胞種に分化する能力(分化能力)、サイトカイン(※22)・ケモカイン・成長因子(※23)を分泌する能力(トロフィック能力)、免疫応答(※24)を調整する能力(免疫調整能力)、損傷組織に遊走する能力(細胞遊走能力(※25))、線維化を調整する能力(線維化調整能力)があるためと考えられています。(図3参照; Cell Transplantation, Vol. 25, pp. 829–848,2016より引用。図の一部改変。出典:Nat Immunol. 2014 Nov;15(11):1009-16, Stem Cell Trans Med. 2012 Feb;1(2):142-9) 図3  すなわち生体内においては、組織や臓器に損傷を受けると、細胞レベルのダメージを生じ、不可逆的な障害を受けた細胞は壊死します。更に、傷口から侵入した細菌などを制御する他、壊死した細胞を除去するために、損傷組織には受傷直後から炎症細胞が集まります。間葉系幹細胞は血流を介し損傷組織まで遊走し(細胞遊走能力)、免疫反応を調節し、過剰な炎症による組織損傷の拡大を抑えます(免疫調整能力)。また、損傷組織の細胞に対し成長因子やサイトカインを分泌することで、細胞の増殖や組織の修復を促進します(トロフィック能力)。更に、間葉系幹細胞自身が、様々な種類の細胞に分化することによって(分化能力)、間葉系幹細胞由来の細胞が損傷組織の細胞に置き換わり組織を再生します。このような間葉系幹細胞の能力は、様々な組織や臓器の再生で効果を発揮するため、多種多様な疾患に対して間葉系幹細胞を細胞治療や再生医療に利用することができると考えられます。 一方で次のような課題も存在します。 ・ES細胞、iPS細胞[生命倫理上の課題(ES細胞)] ES細胞はヒトの生命の萌芽である胚を破壊して作る必要があるため、倫理的課題があります(参考文献:ヒトES細胞の樹立に関する指針平成31年文部科学省・厚生労働省告示第4号)。更に近年では、ES細胞のように多能性を有しほぼ無限に増殖可能なiPS細胞が発明され、また、iPS細胞は受精卵を利用せず本人の細胞から作成することが可能であるため、倫理的課題のみではなく免疫拒絶についても解決に向けて大きく前進しました。 [細胞の安全性の課題と医療コストの課題(ES細胞、iPS細胞)] ES細胞もiPS細胞も無限に増殖するため、増殖の過程で生じる遺伝子の変異や癌化のリスクに対応をする必要があります。 ・その他の細胞 ES細胞やiPS細胞を使用しない、幹細胞を使用した再生医療/細胞治療としては、自家細胞(自己の細胞=患者本人の細胞)を利用するものと他家細胞(他人の細胞)を利用するものがあります。表皮細胞、筋芽細胞、軟骨細胞、間葉系幹細胞など様々な細胞が再生医療、細胞治療に使用されています。 [自家細胞の課題] 自家細胞では、患者本人から採取した細胞を培養し増殖、加工し使用します。他人の細胞を使用しないので、感染症や免疫拒絶のリスクを最小限に抑えることができますが、一人の患者から採取できる細胞の量に限界があります。また、ES細胞やiPS細胞とは違い細胞を無限に増殖させることができないため、治療に十分な細胞を用意することが課題となります。また、オーダーメイドで作成する必要があるため、急性期の治療が困難で、治療費が高額になるという課題があります。 [他家細胞の課題] 他家細胞では、多数のドナーから細胞の提供を受け、細胞バンクに細胞を保存しておくことで、急性期の治療にも対応でき、医療コストも抑えることができますが、ドナーに由来する未知の感染症や免疫拒絶のリスクがあります。(参考文献:経済産業省「再生医療の実用化・産業に関する研究会」の最終報告書) [間葉系幹細胞の課題] ほぼ無限に増殖することが可能なES細胞やiPS細胞とは異なり、間葉系幹細胞が増殖する能力には限界があります。間葉系幹細胞は、細胞分裂を繰り返す過程で細胞の老化現象(senescence)を起こし、分化能力や免疫調整能力や細胞遊走能力という細胞治療の効果に寄与する重要な能力が失われることが知られています。このため、間葉系幹細胞を使用した医療を広く行うためには、継続的に大量の細胞を供給する必要があります。すなわち、多数のドナーの骨髄から細胞を採取し、大量の細胞を確保しなければならず、一般的な医療とするためには、原材料の供給の面で課題があると言えます。(出典:Stem Cells Transl Med. 2017 Dec;6(12):2173-2185.) [細胞を利用する再生医療や細胞治療の課題] このように、再生医療や細胞治療は、これまでにない新しい医療で、従来の医療では治療困難な疾患に対して優れた治療効果があるものの、既存の医薬品と異なり生きた細胞を治療用に使用するため、従来の医薬品では問題にならなかった、様々な課題を解決する必要があります。(参考文献:平成26年度「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業」原料細胞の入手等に関する調査等報告書) ■ 再生誘導医薬®(当社シーズ)による課題の解決 再生誘導医薬®は、生体内に存在する骨髄間葉系幹細胞を損傷組織へ動員する、生体が元来有する治癒能力を促進する医薬です。損傷組織を直接治療するのは、薬剤の投与によって損傷組織に動員された間葉系幹細胞であるため、間葉系幹細胞の特徴である、細胞遊走能、免疫調整能、トロフィック能、線維化調整能、組織再生能等によって一つの物質で広範な疾患領域に対する適応が期待できます。また、投与するのはペプチド、タンパクなどの物質であり、従来の医薬品と同じ方法で製造、輸送、保管、投与が可能です。そのため、再生医療や細胞治療の様々な課題を解決しながら、従来の医療では治療困難であった疾患を治療のターゲットとすることができます。 図4 (4)当社技術のターゲットとなる適応症 間葉系幹細胞を使用した細胞治療で効果が期待できる疾患領域や病態が治療のターゲットとなります。以下のように広い疾患領域や様々な病態が適応症として期待できます。 図5 (5)パイプラインの概要 当社の手掛ける研究開発パイプラインとその進捗状況は以下のとおりであります。パイプラインは、以下5つのプロジェクトに分類されます。※ レダセムチドにおける表皮水疱症治療薬について、対象となる栄養障害型表皮水疱症は、全国の患者数が400名前後と推定される希少難治性疾患であり、大規模な第Ⅲ相試験を計画することが困難であるとともに現在有効な治療法がありません。したがって、当社としては、追加第Ⅱ相試験の結果を踏まえ、医薬品の承認申請を行うことを見込んでおります。  各パイプラインの主な市場ターゲットは、日本、アジア圏(中国、韓国等)、米国、欧州などです。 各パイプラインの概要は、以下のとおりです。再生誘導医薬®レダセムチド(HMGB1ペプチド,TRIM2)概要生体内タンパク質HMGB1の生理活性ドメインから創生したペプチド製剤(※26)です。静脈内投与により患者の骨髄内間葉系幹細胞を末梢血中に動員し、損傷部位に集積させることで、患部の組織再生と治癒を促進します。間葉系幹細胞を介した治療メカニズムにより、組織損傷を伴う幅広い疾患が適応症となります。これまでに実施した疾患モデル動物を用いた非臨床薬効試験で、脳梗塞、心筋梗塞/心筋症、表皮水疱症、難治性皮膚潰瘍、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、外傷性脳損傷等に対する良好な治療効果を確認しています。開発最も先行する表皮水疱症については、第Ⅱ相試験の追加試験実施中です。急性期脳梗塞については、日本、米国、欧州及び中国においてグローバル後期第Ⅱ相試験の実施中です。虚血性心筋症については、医師主導第Ⅱ相試験の実施中です。変形性膝関節症、慢性肝疾患については、医師主導第Ⅱ相試験が完了しております。提携2014年11月に塩野義製薬との間にライセンス契約を締結しております。当社は、既に受領済みの契約一時金及びマイルストーン収入に加え、今後の開発の進捗に応じたマイルストーン収入及び製品上市後のロイヤリティ収入及びマイルストーン収入を得ることができます。 全身投与型再生誘導医薬®新規ペプチド(TRIM3,TRIM4)概要大阪大学と共同で、新規に開発したスクリーニング法によって発見した、静脈内投与により末梢血中の間葉系幹細胞を増加させる作用を有するペプチドです。レダセムチド(TRIM2)と同じく、組織損傷を伴う幅広い疾患に対する再生誘導治療薬®となることが期待されます。生体由来のペプチドの他、生体由来活性ペプチドの情報を基に作成したペプチドの開発も行っています。開発これまでのスクリーニングから多数の候補ペプチドを保有しており、その中から特に顕著な幹細胞誘導活性を示す2つの候補ペプチド(TRIM3、TRIM4)について、臨床試験の開始までに必要となる非臨床試験を実施しております。これまでの動物実験により良好な間葉系幹細胞血中動員作用を確認しており、現在、複数種類の疾患モデル動物を用いた薬効試験データの拡充を行い、最適な開発対象疾患の選定を進めております。提携GLP非臨床毒性試験(※27)~早期臨床試験(※28)の段階まで自社で開発を進め、その後、製薬企業にライセンスアウトする方針であり、現時点において、商業化(開発・製造・販売等)に係る権利は、すべて当社が保有しております。 局所投与型再生誘導医薬®新規ペプチド(TRIM5)概要生体組織から抽出された生体内タンパク質に由来するタンパク質製剤です。静脈内投与若しくは局所投与により、生体内の間葉系幹細胞を効率よく患部に集積させる作用を有しており、組織損傷を伴う幅広い疾患に対する治療薬となることが期待されます。開発これまでに得られた複数の候補タンパクの中から、最も治療効果の高いものを選定し、開発を進めていく計画です。これまでの動物実験で良好な間葉系幹細胞集積作用を確認しており、複数種類の疾患モデル動物による薬効試験によって、最適な適応症の選定を進めております。提携GLP非臨床毒性試験~早期臨床試験の段階まで自社で開発を進め、その後、製薬企業にライセンスアウトする方針であり、現時点において、商業化(開発・製造・販売等)に係る権利は、すべて当社が保有しております。 幹細胞遺伝子治療(SR-GT1)概要遺伝子欠損等に起因する重度の遺伝性疾患に対しても再生誘導医療®を可能にする治療技術です。当社がこれまでに培った独自の幹細胞培養・調整技術を駆使し、患者自身の幹細胞に対して体外で遺伝子編集を施し、欠損/変異した遺伝子を補ったうえで患者の体内に戻す、根治的再生誘導型細胞治療製品(※29)です。開発初めの適応症として、遺伝子完全欠損型の重度表皮水疱症を対象に開発を進める計画です。遺伝子編集技術を用いて正常遺伝子を組み込んだ間葉系幹細胞を動物に移植する実験により、移植を受けた動物体内に目的タンパク質(7型コラーゲン)が十分量安定的に産生されることを確認しており、想定する作用機序(※30)が機能することを証明しております。現在、疾患モデル動物による薬効試験など臨床試験の開始までに必要な非臨床試験を追加実施しております。提携非臨床毒性試験~早期臨床試験段階まで自社で開発を進め、その後、製薬企業や医療機器メーカー等にライセンスアウトする方針であり、現時点において、商業化(開発・製造・販売等)に係る権利は、すべて当社が保有しております。 (a)再生誘導医薬®レダセムチド(HMGB1ペプチド)① 栄養障害型表皮水疱症治療薬(適応症:栄養障害型表皮水疱症について) 皮膚は、表皮(E)と真皮(D)からなる2層の構造をとっています。表皮もまた体の外側から角層(①)、有棘層(②)、基底層(③)と層構造をとっています(図6参照)。基底層には表皮細胞の幹細胞(表皮幹細胞)が存在します。幹細胞から分裂した未分化な表皮細胞は次第に分化して体の外側へと移動します。一番外側まで移動すると、角質となって体のバリアーを形成し体内の水分を保持するほか、外界からの刺激やバクテリアなどの感染症から体の内部を守っています。表皮の直下にある真皮は1型コラーゲンという蛋白を主成分とする組織で皮膚に物理的な強さを与えるほか水分を保持しています。 図6  皮膚は特殊な『糊』によって表皮と真皮がしっかりと接着しています。強い機械的刺激でも表皮が皮膚からはがれることはありません。表皮と真皮を接着させる『糊』の役割をしているのが、表皮細胞や真皮に存在する線維芽細胞から分泌される7型コラーゲンと呼ばれるタンパクです。7型コラーゲンに異常があると『糊』としての機能が低下して表皮と真皮を接着する力が弱くなり、弱い刺激であっても表皮が真皮からはがれてしまいます(図7参照)。 はがれた表皮と真皮の間には組織液がたまり水ぶくれ(水疱)が生じます。水疱が破れると潰瘍となり、治癒が追い付かずに傷が遷延化(※31)すると、瘢痕化(線維化)し皮膚がひきつれるために関節などが動かないようになってしまいます。 表皮水疱症の患者は7型コラーゲンの遺伝子に異常があるため、機械的刺激により容易に表皮と真皮の間が裂けます。その結果出生時から全身の皮膚に水ぶくれができ、生涯にわたり症状が続きます。遺伝子治療をのぞいて現時点で根治的な治療法はありません。 図7  前述のように、表皮水疱症では、表皮が剥離する際に表皮幹細胞が失われてしまうため、新しい表皮を再生することが困難な状態になります。再生誘導医薬®により供給される骨髄間葉系幹細胞は皮膚に集積することによって、細胞成分や7型コラーゲンを供給します。病因である7型コラーゲンの異常があるため、完治はできませんが、難治性皮膚潰瘍などの症状の改善が期待できます。 ② 急性期脳梗塞治療薬(適応症:脳梗塞について) 脳梗塞は、主に脳に酸素や栄養を供給する血管が血栓によって閉そくすることが原因で生じる疾患です。脳は低酸素状態に極めて弱く、また一度障害を受けると再生をすることが極めて困難な臓器であるため、これまで有効な治療はほとんどありませんでした。血栓を溶解させる薬(血栓溶解剤)が有効ですが、発症初期の数時間後までにしか使用できないため、一部の患者にしか投与されていません。血栓溶解剤を投与できなかった場合や投与されても十分な効果が得られなかった場合、脳梗塞によって生じる麻痺などの治療はリハビリテーションなどによって行われています。骨髄間葉系幹細胞による細胞治療は、免疫寛容効果による炎症の抑制や、トロフィック効果による組織再生を期待されています。しかし、患者本人の骨髄間葉系幹細胞を利用する場合、細胞採取の後、細胞培養による増殖工程にかかる時間が必要であり、発症後すぐに患者に投与することができません。また、高額な医療コストなどの課題があります。再生誘導医薬®は、タンパクやペプチドなどの従来の医薬と同様に扱うことが可能であり、必要時にすぐに使用することが可能です。また、骨髄採取や細胞培養の設備が必要ないため、一般の病院においても治療を行うことが可能です。 ③ 虚血性心筋症治療薬(適応症:心筋症について) 心臓は全身の臓器に血液を送り出すポンプの役割を果たしています。心臓は心筋と呼ばれる筋肉でできていて心筋が伸びる際に血液を心臓に取り込み、心筋が縮む際に血液を心臓から送り出します。心筋症は、心筋が線維化などによって伸縮が不良になり心臓のポンプ機能が障害される疾患です。心筋症の原因は、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、高血圧、アルコールの多飲等が知られていますが、これらの原因が明らかな心筋症を特定(2次性)心筋症とし、原因が不明な特発性心筋症とに区分されます。 ④ 変形性膝関節症治療薬(適応症:変形性膝関節症について) 変形性膝関節症は加齢、関節軟骨の変性、及び外傷後に生じる膝関節退行性疾患です。関節軟骨の摩耗により軟骨下骨への負荷が増大し、関節全体の構造変化を伴いながら慢性疼痛や歩行運動能力及びActivities of Daily Living (ADL) が低下することで,Quality of Life (QOL) が損なわれる疾患です。変形性膝関節症の治療法は保存的治療と手術に大別されます。保存療法は対症療法であり、摩耗した年骨を修復する根治療法ではないためその効果には限界があります。保存療法で効果が十分に得られない場合や、症状が強い症例では外科的治療が施行されます。この外科的治療として関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工関節置換術等が行われています。日本人に多い内側型変形性膝関節症に対しては高位脛骨骨切り術がよい適応となりますが、その目的は下肢全体のアライメントを整えることで内側の過重負荷を軽減し残存軟骨を保護することであり、軟骨自体を修復するものではありません。人工関節置換術は骨変化や関節構造の破壊が進行した重症の変形性膝関節症に対し適応となっており、その件数は増加傾向にあります。 ⑤ 慢性肝疾患治療薬(適応症:慢性肝疾患について) 肝臓は、B、C型肝炎ウイルスなどに起因するウイルス性肝炎やアルコール性、非アルコール性脂肪性肝炎等生活習慣に起因する慢性肝障害によって、肝臓内に細胞外基質が過度に蓄積された線維化へと至ります。その進行した状態を肝硬変といい、肝機能低下、門脈圧亢進、発癌など様々な問題が生じ得る疾患です。 (b) 全身投与型再生誘導医薬®新規ペプチド(TRIM3,TRIM4) 当社は骨髄間葉系幹細胞による損傷組織の再生や再生誘導物質を発見して以来、骨髄中に存在する間葉系幹細胞、血流中に存在する間葉系幹細胞、損傷組織に存在する間葉系幹細胞など生体に存在する自然の状態の細胞に注目し研究を続けてきました。それらの知見をもとに新たに開発した間葉系幹細胞血中動員活性のスクリーニング法と組み合わせることで再生誘導医薬®の研究を加速しています。 以上のような基礎的な研究の結果、生体内に存在する骨髄間葉系幹細胞に対する新たな知見を積み重ね、新規骨髄間葉系幹細胞の血中動員新規合成ペプチドを複数得ることができました。これらの中で特に有望なペプチドであるTRIM3,TRIM4は複数の組織損傷疾患の動物モデルにおいて症状の改善が認められております。 (c) 局所投与型再生誘導医薬®新規ペプチド(TRIM5) レダセムチド(TRIM2)及びTRIM3,TRIM4の開発品は、再生誘導医薬®を静脈投与することで骨髄内の間葉系幹細胞を血中動員する物質です。一方、TRIM5では、損傷組織部位が小さく、また時間が経過している損傷部位に対して局所的に再生誘導医薬®を投与することで、より効率的に間葉系幹細胞を動員し組織損傷の修復を促します。 レダセムチドとは作用メカニズムが異なるため、レダセムチドと併用若しくは単独で使用することによって、再生誘導医療®の対象疾患の拡大が期待できます。特に、損傷組織が小さい病態においては、虚血領域も小さいため、低酸素状態で分泌量が増大するSDF-1αの量が少なく、間葉系幹細胞が損傷個所に集積できない恐れがあります。そのようなときに、本物質を患部周囲へ投与することで、循環血流中の間葉系幹細胞を治療する臓器に集積させる効果を狙います。 応用例としては、レダセムチド投与によって、末梢循環血流中に増加した間葉系幹細胞を、TRIM5の開発品投与によって末梢循環血流中から損傷組織に効率的に集積させることが考えられます。 図8 (d) 幹細胞遺伝子治療(SR-GT1) 遺伝性疾患の患者本人の間葉系幹細胞を採取し、体外で病因となる遺伝子の修復を行う技術です。一般に、遺伝子治療では病変臓器の幹細胞を治療対象とするため、疾患ごとに様々な臓器の幹細胞に対して遺伝子治療を施さなければなりません。ヒト間葉系幹細胞に正常な7型コラーゲンを遺伝子導入し、表皮水疱症モデルマウスの皮膚に細胞移植しました。その結果、ヒト由来の7型コラーゲンがマウスの皮膚で正常に機能していることが証明されました。間葉系幹細胞は、多分化能の他にも、免疫調節能などを有し、様々な疾患に対して治療効果を有するため、間葉系幹細胞を遺伝子治療の対象にすることにより、様々な遺伝性疾患に対する治療が期待できます。 図9 (6)再生誘導医薬®における医療の可能性 再生誘導医薬®は、生体が本来持っている組織再生能力を引き出すことを目的とした医薬品です。生体内に存在する幹細胞を体外で培養・加工するのではなく、直接活性化させることで、損傷組織の再生を促します。現在、当社では、骨髄に存在する間葉系幹細胞を血中に動員する再生誘導医薬®、間葉系幹細胞を損傷組織に集積する再生誘導医薬®、間葉系幹細胞を標的とした遺伝子治療と細胞治療のハイブリッド医療の研究開発を行っています。 再生誘導医薬®の特徴は、薬そのものが患部に作用するのではなく、骨髄に存在する幹細胞に作用する点にあります。患部を修復するのはあくまで活性化された患者自身の幹細胞です。このため、体外での細胞培養や移植を必要とする従来の細胞治療・再生医療に比べて、再生誘導医薬®は副作用や拒絶反応のリスクが低く、また、投与するのは化合物医薬品であるため工業的な計画生産が可能となり、低コストでの生産・品質管理・輸送が実現できるという利点があります。これらの利点により、医療アクセスの向上が期待され、患者が求める医療をより迅速に提供することが可能になります。 幹細胞分野に関する研究は日々進歩しており、当社においても最新の知見を取り入れながら、新たな再生誘導医薬®の開発を進めています。将来的には、これまで治療が困難であった疾患に対しても治癒を可能にし、より安全で負担の少ない革新的な医療を実現することが期待されます。再生誘導医薬®は、次世代の医療の扉を開く大きな可能性を秘めていると考えられます。 (7)用語解説No用語解説※1再生医療(1)患者の体外で人工的に培養した幹細胞等を、患者の体内に移植等することで、損傷した臓器や組織を再生し、失われた人体機能を回復させる医療(2)患者の体外において幹細胞等から人工的に構築した組織を、患者の体内に移植等することで、損傷した臓器や組織を再生し、失われた人体機能を回復させる医療(3)生きた細胞を組み込んだ機器等を患者の体内に移植等すること又は内因性(生体又は細胞の内部で生産される)幹細胞を細胞増殖分化因子(動物体内において、特定の細胞の増殖や分化を促進する内因性のタンパク質の総称)により活性化/分化させることにより、損傷した臓器や組織の自己再生能力を活性化することで失われた機能を回復させる広義の再生医療(←再生誘導医薬®が該当する医療)(内閣府 総合科学技術会議基本政策推進専門調査会『失われた人体機能を再生する医療の実現』(平成20年5月)参照)※2幹細胞自己複製能と分化能をあわせもつ細胞。自己複製能とは体細胞分裂を経て形成される2つの娘細胞のうち、少なくともひとつに親細胞である幹細胞と同等の自己複製能と分化能が賦与されることをいう。また、分化能とは、体細胞分裂を経て形成される娘細胞が、最終的に少なくとも1種類の、親細胞である幹細胞とは異なる表現型を有する細胞になることをいう。(引用文献 蛋白質 核酸 酵素 Vol.51 No.11(2006))※3組織再生誘導メカニズム骨髄内に存在する間葉系幹細胞が循環血流を介して損傷組織へ集積する現象の発見の結果、再生誘導医薬®であるレダセムチドの発明につながった。生体内における組織再生誘導の原理(組織再生誘導メカニズム)を明らかにすることによって、新たな再生誘導医薬®の開発が期待できる。※4幹細胞の制御技術幹細胞は、生体内における環境や培養条件などによって容易に性質を変化させ、幹細胞(自己複製能、分化能)としての性質を失ってしまう。そこで、幹細胞を維持するための細胞制御技術は必須の技術である。また、幹細胞が分化しながら組織再生に必要な機能を付与されるためには、適切な分化制御が必要になる。このように、再生医療や再生誘導医薬®の開発のために、幹細胞の制御技術の開発は必須である。※5スクリーニング有効な化合物を選定するために、種々の評価系を用いて多くの化合物を評価すること。※6再生誘導医薬シーズ再生誘導医薬®として事業化・製品化が可能な、技術、ノウハウ、アイデア、化合物など。※7非臨床薬効薬理試験動物を使用し物質の効果を評価する試験。※8安全性試験物質の毒性の有無等を評価する試験。※9臨床試験臨床現場でヒトを対象に行う試験であるが、ここでは医薬品の承認を受けるためのいわゆる治験をいう。治験は、一般的に以下の段階を経て行われる。・第Ⅰ相試験(フェーズ Ⅰ)…少数の健常成人を対象とし、候補薬の安全性や薬がどのように体内で吸収、分布、代謝され排泄されるか、などを調べる。・第Ⅱ相試験(フェーズ Ⅱ)…少数例の患者を対象に、有効性・安全性・適切な投与量などの検討を行う試験。・第Ⅲ相試験(フェーズ Ⅲ)…多数の患者を対象に、実際の医療に近い形で有効性や安全性を確認することを目的とし、比較対照試験などを含めて行われる。※10免疫拒絶人体はウイルスやバクテリアなど異物が体内に侵入した際に排除する免疫がある。同様に治療を目的として他人の細胞や臓器を移植する際にもそれらを異物と認識し排除すること。※11間葉系幹細胞生体内では、骨髄、さい帯、胎盤、脂肪、筋肉、胸腺、歯髄中といった成体組織において発見されており、生体内に存在する一般的な組織幹細胞とは異なり、多分化能を持つと考えられている。(ギルバート発生生物学10版参照)通常、成体に存在する間葉系幹細胞は、他の間葉系の細胞と同じように中胚葉由来と考えられていたが、少なくとも胎児期には外胚葉由来の間葉系幹細胞が存在することが明らかになっている。(Cell.2007 Jun 29;129(7):1377-88.参照)※12ケモカイン特定の白血球に作用し、濃度勾配の方向に白血球を遊走させる活性(走化性)を持つサイトカインの総称。 No用語解説※13線維化(瘢痕形成)組織を構成している結合組織と呼ばれる部分が異常増殖する現象のこと。例えば、心筋に線維化が生じたときには心臓の働きに異常が起き、呼吸困難や心悸亢進(動悸)などの症状が出る。また関節リウマチにおける骨の萎縮や変性、肝臓全体の線維化を示す肝硬変の病態なども、結合組織が線維化した例である。※14多分化能様々な細胞に分化する能力。多細胞生物においては、細胞が様々な特化した機能を持つ細胞へと変化(分化)し、複雑なシステムを作り上げていく。※15急性期治療症状が急激にあらわれる時期、病気のなり始めの治療。※16表皮水疱症表皮水疱症は、表皮~基底膜~真皮の接着を担っている接着構造分子が生まれつき少ないか消失しているため、日常生活で皮膚に加わる力に耐えることができずに表皮が真皮から剥がれて水ぶくれ(水疱)や皮膚潰瘍を生じてしまう病気。特に、7型コラーゲンの遺伝子異常によって、基底膜と真皮の間で剥がれる病型を栄養障害型表皮水疱症と呼ぶ。※17(ケモカイン)SDF-1αSDF(Stromal Derived Factor)-1αはケモカインCXCファミリーの一種。リンパ球の強力な化学誘引因子であり、リンパ球を新しく形成した血管へ補充、胎児と成人両方の生体の血管新生に関与する。低酸素状態の血管内皮細胞などで発現が亢進する。※18因子現象や機能の原因を因子と呼ぶが、生化学で原因が物質として特定された場合にはその物質も因子という。※19好中球やマクロファージ白血球の一種。遊走運動を行い、細菌などの異物を捕食する。炎症初期には好中球が炎症部位に集まり、細菌類を貪食殺菌する。後期になるとマクロファージが集まり死んだ細胞や細菌を食作用により処理、分解する。※20LPSリポ多糖、Lipopolysaccharide。グラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分であり、脂質及び多糖から構成される物質(糖脂質)である。LPSは内毒素(エンドトキシン、英:Endotoxin)であり、ヒトや動物など他の生物の細胞に作用すると、多彩な生物活性を発現する。※21(タンパク質)ドメインタンパク質の構造の一部で、固有の機能を持つ部分。※22サイトカインサイトカイン(cytokine)は、細胞から分泌される低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。生理活性蛋白質とも呼ばれ、細胞間相互作用に関与し周囲の細胞に影響を与える。※23成長因子体内において、特定の細胞の増殖や分化を促進する内因性のタンパク質の総称。※24免疫応答体内の抗原を察知し、排除する反応。※25細胞遊走細胞がある場所から別の場所に移動すること。創傷治癒や胚の発生の過程などで重要な役割を担っている。※26HMGB1の生理活性ドメインから創生したペプチド製剤当社と大阪大学との共同研究でA-box内に存在することが明らかとなった、HMGB1蛋白の骨髄間葉系幹細胞活性化ドメイン。※27GLPGLP(Good Laboratory Practice)とは、医薬品の非臨床試験の安全性に関する信頼性を確保するための基準をいう。※28早期臨床試験第Ⅰ相試験、初期第Ⅱ相試験などの臨床試験のこと。後期第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験など後期臨床試験に対する用語。※29根治的再生誘導型細胞治療製品再生誘導医療のメカニズムを用いた、遺伝病等に対する根治的な細胞治療製品の意。※30作用機序薬剤がその薬理学的効果を発揮するための特異的な生化学的相互作用を意味する。※31遷延化治癒までの期間が長期になること。

事業の優位性(モート)

事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い 強い
唯一無二の新しい作用メカニズムに基づく医薬品であり、新規性の高い再生医療技術であるため。
参入障壁新規参入を阻む要因の種類 技術
再生誘導医薬®という新しい作用メカニズムに基づく医薬品の研究開発と知的財産の構築
顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい 高い(依存)
景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか ディフェンシブ
設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか 軽い(資本不要)
規制依存規制は障壁にも足枷にもなる 高い
会社が挙げる主要リスク:医薬品パイプラインの開発及び収益獲得の不確実性 / 再生誘導医薬®の開発に関する先端医療由来のリスク / 特定のパイプラインに関する提携契約への依存
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 0 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産☆☆☆☆☆
根拠:弱いブランド・特許・許認可

ステムリムは、特定の医薬品開発に特化しており、現時点では強力なブランド、特許ポートフォリオ、または規制ライセンスによる明確な無形資産の優位性は確認できません。開発パイプラインの進捗が今後の評価に影響する可能性があります。

スイッチングコスト☆☆☆☆☆
根拠:弱い乗り換えの手間・コスト

医療用医薬品の分野では、医師や病院の処方習慣は一定のスイッチング・コストを生む可能性がありますが、ステムリムが開発・販売する特定の製品群において、顧客(医療機関・患者)が他社製品へ乗り換えることによる顕著な損失や手間が発生するという情報は現時点では確認できません。

ネットワーク効果☆☆☆☆☆
根拠:弱い利用者増が価値を生む

医薬品業界、特に個別の医薬品開発・販売においては、ネットワーク効果が直接的に競争優位性をもたらすケースは限定的です。ステムリムの事業モデルにおいて、ユーザー(医師、患者、研究者など)の増加が製品価値を指数関数的に高めるような構造は見られません。

コスト優位☆☆☆☆☆
根拠:弱い同じ物を安く作れる

医薬品開発は研究開発費が先行し、製造コストの構造的な優位性を確立することは容易ではありません。ステムリムが他社と比較して、研究開発、製造、販売において持続的なコスト優位性を有するという具体的な証拠は現時点では見当たりません。

規模の経済☆☆☆☆☆
根拠:弱い規模が参入障壁になる

医薬品業界は研究開発投資や販売網構築に巨額の資金が必要であり、規模の経済が働く側面はありますが、ステムリムはまだ成長途上の企業であり、業界全体に対して最適化された少数寡占を形成するほどの規模の経済的優位性は現時点では確認できません。

  • 独自の再生誘導医薬技術
    ステムリム社は、生きた細胞を投与せず、医薬品の投与によって患者自身の幹細胞を活性化し、組織再生を促す「再生誘導医薬®」という独自の技術を開発しています。これは、従来の再生医療が抱える品質管理の難しさ、安全性への懸念、治療時期の制約、免疫拒絶反応、保管・流通の課題を克服する可能性を秘めており、新しい再生医療の実現を目指しています。
  • 幅広い疾患への応用可能性
    再生誘導医薬®によって誘導される幹細胞は、神経、皮膚、骨、軟骨、筋肉、血管など多様な組織に分化する能力を持つため、脳梗塞、心筋梗塞、難治性皮膚潰瘍、慢性肝疾患、難治性骨折、肺線維症など、非常に幅広い疾患への治療効果が期待されています。共通のプラットフォームで多様な疾患に対応できる点は、大きな強みとなり得ます。
  • 知的財産の構築と独占的実施権
    同社は、自社単独または大学等研究機関との共同研究を通じて得られた成果に基づき、積極的に特許を出願し、知的財産の構築を進めています。特に、大学等と共同で出願した特許については、ステムリム社が独占的な実施権の許諾を受けることで、製品化に向けた研究開発を主導できる体制を整えており、技術的な優位性を確保しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)

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経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。(1)経営方針 当社は、人体が本来備えている組織修復能力を引き出す「再生誘導医薬®」をはじめとした最先端生命科学研究の成果をもとに、新しいコンセプトの治療薬を生み出し続けることで、世界の健康と幸福の実現に貢献することを経営理念として掲げております。 (2)目標とする経営指標等 現在、研究開発段階にある当社は、ROA、ROEその他の数値的な目標となる経営指標等は用いておりません。現在、当社の主要な開発品目であるレダセムチドについては、栄養障害型表皮水疱症、脳梗塞を適応症とする開発が先行する段階にあり、慢性肝疾患、変形性膝関節症、心筋症を適応症とする開発が続いております。当社は、これらの開発を推進することはもちろん、更なる他の適応症への展開や後発パイプラインの開発推進、新たな開発候補品の探索等を行い、開発パイプラインを質・量ともに充実させることが、企業価値を高め、経営を安定させる上で不可欠の目標と認識しております。当該目標達成のために、共同研究や事業提携を推進するとともに、より充実した研究・開発体制の確立のための設備導入等の施策を実施してまいります。 (3)経営環境及び対処すべき課題等 当社が属する再生医薬品分野は、世界的にも普及段階まで至っておらず、このような最先端医療分野は環境変化のスピードが極めて早いと考えられ、潜在的な競争相手に先行し、他社の知的財産権を上回る開発をする必要性があります。 このような経営環境の下、当社が対処すべき当面の課題としては、主に下記①~④の4点があります。 ① 既存事業の展開支援と新規事業の開発推進 レダセムチドについては、塩野義製薬への導出が完了していることから、今後も引き続き、導出先企業による臨床開発が滞りなく進められ、さらに、将来幅広い適応症に対して開発が展開されるよう、導出先企業に対する側面支援を継続していくことが、当社の重要な役割であると考えております。また、大阪大学において虚血性心筋症を対象として実施されている医師主導治験、新潟大学において慢性肝疾患を対象として実施されている医師主導治験、弘前大学において変形性膝関節症を対象として実施されている医師主導治験に対する継続的な支援も、引き続き、当社の重要な役割であると認識しております。 レダセムチド以外の再生誘導医薬®開発候補品については、再生誘導医学協働研究所における産学連携による大阪大学をはじめとした各大学とのコラボレーションの推進など、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物質スクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する複数の新規候補化合物を同定するに至っております。それらの再生誘導医薬®開発候補品の導出活動を促進し、新たな事業提携に繋げていくことが、今後の当社の重要な経営課題であると考えております。 具体的には以下のような内容になります。 ■ 新規再生誘導医薬®の開発について 開発リスクの分散と企業価値の向上を目指して、当社では、新規再生誘導医薬®候補物質の探索研究を積極的に進めております。これまでの研究を通じて同定した複数の候補物質について、疾患モデル動物を用いた薬効試験で治療効果を確認し、その一部につき特許出願を完了するなど、着実に成果を積み重ねております。この探索研究を更に推し進め、既存の開発品を補完する新たな薬効プロファイルを有する新規再生誘導医薬®の開発を進めます。 ■ 間葉系幹細胞を標的とした遺伝子治療技術開発について 脳梗塞、心筋梗塞といった後天的組織障害の治療に対して、再生誘導医薬®は循環血流を介した骨髄由来間葉系幹細胞供給という極めて画期的な治療効果を発揮します。しかし、表皮水疱症、血友病、代謝異常症など、先天的機能障害の根治的治療を実現するためには、それぞれの病態における根本原因である遺伝子異常の改善、すなわち遺伝子治療が必要であることは言うまでもありません。遺伝子治療の成功は、生体内のどの細胞をどのように遺伝子治療するかにかかっており、特に長期間の根治的な治療効果を得るためには、それぞれの臓器・組織で長期間細胞を供給し続ける組織幹細胞の遺伝子治療が必要不可欠です。再生誘導医薬®開発の経験を活かし、生体内で長期間機能する可能性のある骨髄間葉系幹細胞を標的とした、遺伝子治療の開発を目指します。直近では、現在治療法の全くない遺伝性皮膚難病に苦しむ患者に向けて、低侵襲性生体組織採取法による高度な根治的治療の研究を進めています。■ 生体組織の網羅的単一細胞機能評価技術を基盤にした生体幹細胞高機能化医薬開発について 創薬成功確率を高める鍵は、開発候補品を投与した後の各臓器・組織の生体反応を如何に正確かつ漏れなく把握できるかにあります。当社は大阪大学と共同で、生体内間葉系幹細胞の単一細胞レベルの遺伝子発現解析、網羅的遺伝子構造解析の研究を進め、その技術を確立しています。 以上の技術を利用して、現在当社と大阪大学は、第1、第2、第3世代の再生誘導医薬®が生体の各臓器・組織の個々の細胞に与える網羅的遺伝子発現変化、網羅的遺伝子構造変化について、詳細なデータベースの蓄積を進めております。現在、本邦はもとより世界的視点から見ても、単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析、網羅的遺伝子構造解析が可能な施設はNIH(アメリカ国立衛生研究所)などの限られた大規模研究施設に限定されており、ベンチャー企業レベルでその技術を有していることは当社の創薬開発技術が世界に通用し得ることを示すものと確信しております。今後、当社の創薬研究のみならず、国内外のアカデミア研究者や製薬企業とこの技術を共有することにより、国内外の創薬開発の確率向上、安全性及び有効性評価に大きく貢献するとともに、組織幹細胞のもつ組織再生作用を安全に最大化する、世界に類の無い再生誘導医療®の開発を進めて行く予定です。 ■ 細胞治療分野の再生誘導技術基盤における今後の展開について 当社が注力してきた再生誘導技術基盤は、効率よく循環血流中に幹細胞を動員し、動員した幹細胞を損傷組織に集積させ、分化能を損なわせることなく、自己の幹細胞を活用し損傷組織の再生を誘導する技術です。これらの技術基盤は、医薬品で生体の組織再生を促進するという、細胞治療領域において計り知れないポテンシャルを有するものと考えております。 当社は、当該技術基盤を用いて、低コストかつ高い安全性を保ちながら機能回復や組織再生を可能にすることにより、「細胞治療の常識を変えていく」ことを課題として開発を推進していきます。 ② 臨床応用の加速 再生誘導医薬®は生体内に存在する間葉系幹細胞を活性化することにより、損傷組織の機能的再生を促進しますが、生体内における間葉系幹細胞については、正確な局在、機能、性質、種類など不明な点も数多く存在します。 一方で、大阪大学と当社は、これまで10年以上の長期間にわたり、再生誘導医薬®の共同研究を続け、数多くの知見やノウハウを手にしています。また、これまでに再生誘導医薬®における表皮水疱症、急性期脳梗塞、慢性肝疾患及び変形性膝関節症を対象とした臨床治験が実施されております。大阪大学と当社が蓄積してきた基礎研究の膨大なデータと臨床研究及び治験のデータの相互評価及び相互利用によって、今後も引き続き再生誘導医薬®における臨床応用を加速させることが、当社の重要な経営課題であると認識しております。 ③ 研究助成金の獲得 医薬品の研究開発には、多額の先行投資が必要とされ、同時に少なからぬ開発リスクが伴います。当社では、プロジェクトが非臨床試験若しくは早期臨床開発段階に達した時点で、製薬企業との提携若しくは候補品の導出を行い、比較的早期に自社の開発費負担を低減させることを基本戦略としておりますが、それでもなお、候補物質スクリーニング法の開発と薬効メカニズム検討のための基礎研究、候補化合物の探索研究、パイロット製造、薬効薬理・安全性試験など、臨床試験に至るまでの過程で多大な研究開発費を自社で負担する必要が生じます。 これまで当社は、公的研究助成金を積極的に活用することで、これらリスクの高い早期探索研究に要する研究開発費の負担を補ってまいりました。既存プロジェクトの導出が完了し、今後、探索研究段階にある新規プロジェクトの数が増加していくことからも、引き続き、公的研究助成金を積極的に獲得し活用していくことが、当社の重要な経営課題であると認識しております。 ④ 優秀な人材の育成及び獲得 当社が取り組む再生誘導医薬®の分野は、今後、国内外バイオ・製薬企業との競争が激化することが予想され、より一層の研究開発の加速と競合他社との差別化が必要になると考えております。そのため、独創的な研究活動を支える優秀な研究人材の育成及び獲得は、当社の喫緊の経営課題であると認識しております。また、当社においては、従業員を対象にストック・オプションとしての新株予約権を付与するなど、研究進捗に対するインセンティブ報酬制度を取り入れておりますが、これらを継続して実施することは経営課題解決に向けた重要な施策であると認識しております。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。(1)経営方針 当社は、人体が本来備えている組織修復能力を引き出す「再生誘導医薬®」をはじめとした最先端生命科学研究の成果をもとに、新しいコンセプトの治療薬を生み出し続けることで、世界の健康と幸福の実現に貢献することを経営理念として掲げております。 (2)目標とする経営指標等 現在、研究開発段階にある当社は、ROA、ROEその他の数値的な目標となる経営指標等は用いておりません。現在、当社の主要な開発品目であるレダセムチドについては、栄養障害型表皮水疱症、脳梗塞を適応症とする開発が先行する段階にあり、慢性肝疾患、変形性膝関節症、心筋症を適応症とする開発が続いております。当社は、これらの開発を推進することはもちろん、更なる他の適応症への展開や後発パイプラインの開発推進、新たな開発候補品の探索等を行い、開発パイプラインを質・量ともに充実させることが、企業価値を高め、経営を安定させる上で不可欠の目標と認識しております。当該目標達成のために、共同研究や事業提携を推進するとともに、より充実した研究・開発体制の確立のための設備導入等の施策を実施してまいります。 (3)経営環境及び対処すべき課題等 当社が属する再生医薬品分野は、世界的にも普及段階まで至っておらず、このような最先端医療分野は環境変化のスピードが極めて早いと考えられ、潜在的な競争相手に先行し、他社の知的財産権を上回る開発をする必要性があります。 このような経営環境の下、当社が対処すべき当面の課題としては、主に下記①~④の4点があります。 ① 既存事業の展開支援と新規事業の開発推進 レダセムチドについては、塩野義製薬への導出が完了していることから、今後も引き続き、導出先企業による臨床開発が滞りなく進められ、さらに、将来幅広い適応症に対して開発が展開されるよう、導出先企業に対する側面支援を継続していくことが、当社の重要な役割であると考えております。また、大阪大学において虚血性心筋症を対象として実施されている医師主導治験、新潟大学において慢性肝疾患を対象として実施されている医師主導治験、弘前大学において変形性膝関節症を対象として実施されている医師主導治験に対する継続的な支援も、引き続き、当社の重要な役割であると認識しております。 レダセムチド以外の再生誘導医薬®開発候補品については、再生誘導医学協働研究所における産学連携による大阪大学をはじめとした各大学とのコラボレーションの推進など、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物質スクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する複数の新規候補化合物を同定するに至っております。それらの再生誘導医薬®開発候補品の導出活動を促進し、新たな事業提携に繋げていくことが、今後の当社の重要な経営課題であると考えております。 具体的には以下のような内容になります。 ■ 新規再生誘導医薬®の開発について 開発リスクの分散と企業価値の向上を目指して、当社では、新規再生誘導医薬®候補物質の探索研究を積極的に進めております。これまでの研究を通じて同定した複数の候補物質について、疾患モデル動物を用いた薬効試験で治療効果を確認し、その一部につき特許出願を完了するなど、着実に成果を積み重ねております。この探索研究を更に推し進め、既存の開発品を補完する新たな薬効プロファイルを有する新規再生誘導医薬®の開発を進めます。 ■ 間葉系幹細胞を標的とした遺伝子治療技術開発について 脳梗塞、心筋梗塞といった後天的組織障害の治療に対して、再生誘導医薬®は循環血流を介した骨髄由来間葉系幹細胞供給という極めて画期的な治療効果を発揮します。しかし、表皮水疱症、血友病、代謝異常症など、先天的機能障害の根治的治療を実現するためには、それぞれの病態における根本原因である遺伝子異常の改善、すなわち遺伝子治療が必要であることは言うまでもありません。遺伝子治療の成功は、生体内のどの細胞をどのように遺伝子治療するかにかかっており、特に長期間の根治的な治療効果を得るためには、それぞれの臓器・組織で長期間細胞を供給し続ける組織幹細胞の遺伝子治療が必要不可欠です。再生誘導医薬®開発の経験を活かし、生体内で長期間機能する可能性のある骨髄間葉系幹細胞を標的とした、遺伝子治療の開発を目指します。直近では、現在治療法の全くない遺伝性皮膚難病に苦しむ患者に向けて、低侵襲性生体組織採取法による高度な根治的治療の研究を進めています。■ 生体組織の網羅的単一細胞機能評価技術を基盤にした生体幹細胞高機能化医薬開発について 創薬成功確率を高める鍵は、開発候補品を投与した後の各臓器・組織の生体反応を如何に正確かつ漏れなく把握できるかにあります。当社は大阪大学と共同で、生体内間葉系幹細胞の単一細胞レベルの遺伝子発現解析、網羅的遺伝子構造解析の研究を進め、その技術を確立しています。 以上の技術を利用して、現在当社と大阪大学は、第1、第2、第3世代の再生誘導医薬®が生体の各臓器・組織の個々の細胞に与える網羅的遺伝子発現変化、網羅的遺伝子構造変化について、詳細なデータベースの蓄積を進めております。現在、本邦はもとより世界的視点から見ても、単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析、網羅的遺伝子構造解析が可能な施設はNIH(アメリカ国立衛生研究所)などの限られた大規模研究施設に限定されており、ベンチャー企業レベルでその技術を有していることは当社の創薬開発技術が世界に通用し得ることを示すものと確信しております。今後、当社の創薬研究のみならず、国内外のアカデミア研究者や製薬企業とこの技術を共有することにより、国内外の創薬開発の確率向上、安全性及び有効性評価に大きく貢献するとともに、組織幹細胞のもつ組織再生作用を安全に最大化する、世界に類の無い再生誘導医療®の開発を進めて行く予定です。 ■ 細胞治療分野の再生誘導技術基盤における今後の展開について 当社が注力してきた再生誘導技術基盤は、効率よく循環血流中に幹細胞を動員し、動員した幹細胞を損傷組織に集積させ、分化能を損なわせることなく、自己の幹細胞を活用し損傷組織の再生を誘導する技術です。これらの技術基盤は、医薬品で生体の組織再生を促進するという、細胞治療領域において計り知れないポテンシャルを有するものと考えております。 当社は、当該技術基盤を用いて、低コストかつ高い安全性を保ちながら機能回復や組織再生を可能にすることにより、「細胞治療の常識を変えていく」ことを課題として開発を推進していきます。 ② 臨床応用の加速 再生誘導医薬®は生体内に存在する間葉系幹細胞を活性化することにより、損傷組織の機能的再生を促進しますが、生体内における間葉系幹細胞については、正確な局在、機能、性質、種類など不明な点も数多く存在します。 一方で、大阪大学と当社は、これまで10年以上の長期間にわたり、再生誘導医薬®の共同研究を続け、数多くの知見やノウハウを手にしています。また、これまでに再生誘導医薬®における表皮水疱症、急性期脳梗塞、慢性肝疾患及び変形性膝関節症を対象とした臨床治験が実施されております。大阪大学と当社が蓄積してきた基礎研究の膨大なデータと臨床研究及び治験のデータの相互評価及び相互利用によって、今後も引き続き再生誘導医薬®における臨床応用を加速させることが、当社の重要な経営課題であると認識しております。 ③ 研究助成金の獲得 医薬品の研究開発には、多額の先行投資が必要とされ、同時に少なからぬ開発リスクが伴います。当社では、プロジェクトが非臨床試験若しくは早期臨床開発段階に達した時点で、製薬企業との提携若しくは候補品の導出を行い、比較的早期に自社の開発費負担を低減させることを基本戦略としておりますが、それでもなお、候補物質スクリーニング法の開発と薬効メカニズム検討のための基礎研究、候補化合物の探索研究、パイロット製造、薬効薬理・安全性試験など、臨床試験に至るまでの過程で多大な研究開発費を自社で負担する必要が生じます。 これまで当社は、公的研究助成金を積極的に活用することで、これらリスクの高い早期探索研究に要する研究開発費の負担を補ってまいりました。既存プロジェクトの導出が完了し、今後、探索研究段階にある新規プロジェクトの数が増加していくことからも、引き続き、公的研究助成金を積極的に獲得し活用していくことが、当社の重要な経営課題であると認識しております。 ④ 優秀な人材の育成及び獲得 当社が取り組む再生誘導医薬®の分野は、今後、国内外バイオ・製薬企業との競争が激化することが予想され、より一層の研究開発の加速と競合他社との差別化が必要になると考えております。そのため、独創的な研究活動を支える優秀な研究人材の育成及び獲得は、当社の喫緊の経営課題であると認識しております。また、当社においては、従業員を対象にストック・オプションとしての新株予約権を付与するなど、研究進捗に対するインセンティブ報酬制度を取り入れておりますが、これらを継続して実施することは経営課題解決に向けた重要な施策であると認識しております。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。 ① 経営成績等の状況 当事業年度(2024年8月1日~2025年7月31日)の再生医療・医薬品業界においては、引き続き新規モダリティや新薬創出のための研究開発が進展し、革新的な治療法の実用化が加速しています。 米国FDAでは、医薬品の審査プロセスを迅速かつ柔軟にするための取り組みが進められており、政策的に重要な治療分野における早期承認の促進が期待されています。その一環として、国家の重点領域に資する医薬品を対象に審査期間を大幅に短縮できる「National Priority Vouchers」制度の導入が予定されているほか、申請を段階的に受け付けて並行審査を行うローリングレビューや、AIや臓器チップといった先端技術を活用した評価手法の導入も検討されています。これにより、従来よりも短期間で承認可否を判断できる体制の整備が進んでいます。さらに希少疾患領域では、単群試験に基づく限られたデータでも条件付き承認を可能とする制度改正が提案されており、アンメットメディカルニーズの高い分野における患者アクセスの改善が期待されています。こうした米国での取組は日本における承認審査に直接影響を与えるものではないものの、国際的な安全性・有効性・社会的受容性の裏付けとなり、国内開発品の実用化へ向けた間接的な追い風となることが期待されます。 また、日本政府においても創薬力強化を目的とした支援策が講じられており、文部科学省では、医学研究・ライフサイエンス研究の研究開発支援の強化、革新的シーズを創出するための分野横断的な基礎研究の推進、感染症有事を見据えた体制整備等が挙げられています。厚生労働省では、創薬エコシステム強化や新規モダリティ対応、有望なシーズの医薬品・医療機器の実用化促進等を重点施策としています。経済産業省では、医薬品・再生医療等製品の国産化促進、バイオ産業の拠点整備・技術支援、バイオベンチャー等の実用化支援等が重点施策として挙げられています。 このような創薬力強化に向けた動きが加速する一方、安全性・有効性に関する問題や、品質管理の難しさ、製造コストの増大等、再生医療・医薬品業界には依然として多くの課題が残されています。加えて、2025年5月に施行された再生医療等安全性確保法の改正によって、再生医療・遺伝子治療に関する承認審査が更に厳格化されることにより、開発期間の延伸やコストの増加といった課題が懸念されており、実用化へのハードルが一層高まる可能性もあります。 このような状況のもと、当社では、再生誘導医薬®開発品レダセムチド(HMGB1より創製したペプチド医薬)における臨床試験が進捗するとともに、レダセムチドに続く第二世代の再生誘導医薬®TRIM3、TRIM4について、非臨床開発及びライセンスアウトに向けた事業開発活動が引き続き進捗いたしました。 再生誘導医薬®は、従来の再生医療とは異なり、体外で人工的に培養した細胞の移植や投与を一切必要とせず、医薬品の投与によって患者自身の体内で間葉系幹細胞の集積誘導による再生医療を実現する、全く新しい作用メカニズムに基づく医薬品です。投与するのはペプチド、タンパクなどの物質であり、従来の医薬品と同じ方法で製造、輸送、保管、投与が可能であるため、再生医療・細胞治療と比較し、より手軽かつ安価に損傷組織の再生を促すことが可能であり、かつ再生医療・細胞治療と同等もしくはそれ以上の効果を発揮することが可能です。「生きた細胞を一切用いることなく、物質(化合物)の投与によって、再生医療/細胞治療を実現する」をコンセプトとする再生誘導医薬®は、移植治療や従来型の再生医療が抱える数多くの問題を克服する革新的な再生医療技術として、日本のみならず世界的な再生医療業界のゲームチェンジャーになることが期待されます。(*)「再生誘導」、「再生誘導医薬」、「再生誘導医学」、「再生誘導医療」は当社の登録商標です。  各パイプラインにおける対象疾患ごとの進捗は以下のとおりです。 ■レダセムチド(TRIM2:HMGB1より創製したペプチド医薬)a)対象疾患:栄養障害型表皮水疱症 研究進捗:2015年8月 第Ⅰ相医師主導治験 開始2017年3月 第Ⅰ相医師主導治験 終了2017年12月 第Ⅱ相医師主導治験 開始2019年9月 第Ⅱ相医師主導治験 終了2020年3月 第Ⅱ相医師主導治験追跡調査 終了2022年7月 追加第Ⅱ相臨床試験 開始2023年3月 追加第Ⅱ相臨床試験 第一症例の登録2025年7月 追加第Ⅱ相臨床試験 最終症例の登録 進捗状況: 2022年7月より追加第Ⅱ相臨床試験が開始され、2023年3月に第一例目の患者への投与が開始、2025年7月に最終症例の患者への投与が完了しております。本試験は難治性潰瘍を伴う栄養障害型表皮水疱症患者を対象に、レダセムチドの難治性潰瘍に対する有効性を検討することを目的としており、有効性評価の指標として、治験薬投与開始から52週以内における難治性潰瘍の閉鎖の有無を評価する予定です。また2020年3月に終了した栄養障害型表皮水疱症患者を対象とした医師主導治験及び追跡調査(第Ⅱ相試験)においては、第Ⅱ相試験に参加した栄養障害型表皮水疱症患者全例(9例)の解析で、レダセムチド投与により主要評価項目(全身皮膚の水疱、びらん、潰瘍の合計面積の治療前値からの変化率)で、統計学的に有意な改善が確認されております。レダセムチド投与終了後の最終観察時点(投与開始28週後)においても、9例中7例が治療前値を下回る改善を示し、そのうち4例は50%以上の著明な改善を示しました。また、有効性維持の評価を目的とした追跡調査の観察時点(投与開始52週後)においても有効性を確認したことから、栄養障害型表皮水疱症に対するレダセムチド治療効果の長期持続性も確認されました。副次評価項目(安全性評価)では懸念となる有害事象は観察されず、本治験において栄養障害型表皮水疱症患者におけるレダセムチド投与の有効性と安全性が確認されております。 表皮水疱症治療薬について、対象となる栄養障害型表皮水疱症は、全国の患者数が400名前後と推定される希少難治性疾患であり現在有効な治療法が存在せず、大規模な第Ⅲ相試験を計画することが困難であります。そのため、追加第Ⅱ相臨床試験の結果を踏まえ医薬品の承認申請を行う予定です。 なお、レダセムチドは2023年5月に厚生労働省より栄養障害型表皮水疱症を対象とした希少疾病用医薬品の指定を受けました。レダセムチドが希少疾病用医薬品の指定を受けたことは、表皮水疱症に対して有効である可能性及び現在の開発計画の妥当性について厚生労働省から一定の評価を受けたことになります。また、塩野義製薬においては、レダセムチドをできるかぎり早く医療の現場に提供できるよう、他の医薬品に優先して承認審査を受けることやその他の支援措置を享受することが可能になり、審査期間の短縮による早期の承認取得、販売開始が期待されます。 b)対象疾患:急性期脳梗塞 研究進捗:2019年4月 第Ⅱ相企業治験 開始2021年10月 第Ⅱ相企業治験 終了2023年4月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験(日本及び米国) 開始2023年7月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験(欧州及び中国) 開始2025年2月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験 治験計画の変更2025年4月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験 中間解析 進捗状況: 2023年4月10日より日本において、2023年4月28日より米国において、2023年7月25日より欧州及び中国において、グローバル後期第Ⅱ相臨床試験がそれぞれ開始しており、本治験は、血管内再開通療法が実施できない急性期脳梗塞患者に対するレダセムチドの有効性及び安全性を評価するためにレダセムチド(1.5mg/kg:高用量群)、レダセムチド(0.75mg/kg:低用量群)またはプラセボを5日間投与する試験になります。2025年4月に実施された中間解析では事前に一定の無益性基準を設け、各用量群においてプラセボ群と比較してその基準を満たした場合は中止、満たさない場合は継続とする判断をすることとしておりました。盲検性を保つために独立した評価委員会で評価された上、塩野義製薬には各用量群に対する継続、中止の勧告がされることとなっており、中間解析の結果、レダセムチド高用量群については治験を継続し、レダセムチド低用量群については治験を中止すべきとの勧告が評価委員会から提示されました。本治験の計画当初、有効性が期待できる用量としてレダセムチド高用量群(1.5mg/kg)を計画しておりましたが、規制当局の指示によりレダセムチド低用量群(0.75mg/kg)も併せて検討することになっていたことから、今回の中間解析結果は当初より想定されていた範囲内の結果であります。 また、2022年10月に開示された第Ⅱ相臨床試験においては、薬剤投与開始90日後のmRS(脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの神経疾患といった神経運動機能に異常を来す疾患の重症度を評価するためのスケールであり、スコア0(症状なし)~スコア6(死亡)の7段階評価)を評価した結果、5日間投与完了の翌日に介助が必要な状態(mRS≧3)の患者が投与開始90日後に介助不要(mRS≦2)になった(症状が改善した)割合について、プラセボ投与群では18%(11例/60例)であることに対し、レダセムチド投与群では34%(23例/68例)となり、急性期脳梗塞患者に対するレダセムチドの有効性が示唆されました。要介護の脳梗塞患者において、介助不要となり社会的自立が可能なレベルにまで症状が改善することの社会的意義は大きく、レダセムチドの投与による急性期脳梗塞患者のQOL(Quality of Life)の向上が見込まれます。 c)対象疾患:虚血性心筋症 研究進捗:2024年3月 第Ⅱ相医師主導治験 開始2024年12月 第Ⅱ相医師主導治験 第一症例の登録 進捗状況: 2024年3月より、大阪大学医学部附属病院を中心とした複数の施設において第Ⅱ相医師主導治験が開始され、2024年12月に第一例目の患者への投与が完了いたしました。本治験は冠動脈バイパス手術を施行した虚血性心筋症患者に対し、レダセムチド若しくはプラセボ(各10例)を5日間投与し、レダセムチドの有効性、安全性を評価することを主たる目的としています。有効性においては投与開始52週後の心エコーなどによる各種心機能検査等について評価することが予定されております。 虚血性心筋症は心筋が血流不足や酸素不足により損傷を受ける状態を指し、心筋の主な血流供給源である冠動脈が狭窄または閉塞することによって発生します。発症すると心筋の機能障害を引き起こし、最終的には心不全を招く可能性があります。非臨床においては、レダセムチドの投与による心筋の壊死部分の縮小や心臓の繊維化の減少が確認されており、虚血性心筋症の新たな治療薬となることが期待されます。 d)対象疾患:変形性膝関節症 研究進捗:2020年11月 第Ⅱ相医師主導治験 開始2021年2月 第Ⅱ相医師主導治験 第一症例の登録2021年12月 第Ⅱ相医師主導治験 最終症例の登録2022年12月 第Ⅱ相医師主導治験 終了 進捗状況: 2023年3月に、弘前大学医学部附属病院において実施された医師主導治験(第Ⅱ相試験、レダセムチド群10例、プラセボ群10例)について、主要目的として設定したレダセムチド投与時の安全性評価について、重篤な有害事象及び本剤との関連性が認められると判定された副作用は認められず、変形性膝関節症を対象とする本剤投与時の安全性について確認された旨の開示をいたしました。また、副次目的として設定した本剤投与時の有効性評価について、変形性膝関節症の根本的な原因の一つである軟骨の損傷部位の形態学的評価としてMRI撮像を行ったところ、投与開始後52週時点の大腿骨内側顆軟骨欠損面積率の変化量(中央値)はプラセボ群で-3.5%であったのに対し、レダセムチド群では-7.5%であり、レダセムチド群でより欠損部位が縮小した傾向でした。なお、事後解析の結果になりますが、専門医師による内視鏡での肉眼観察においても、良好な軟骨再生の所見がレダセムチド群では5例に認められました(プラセボ群では2例)。現在、今後の開発方針を検討しております。 変形性膝関節症は膝関節軟骨の摩耗により膝の形が変形し、痛みや腫れをきたす疾患で、重度の症例では強い痛みのため歩行困難になることも多く、QOL及び日常生活動作の低下が顕著になります。国内の潜在患者数は約2,500万人、そのうち自覚症状を有する患者数は約1,000万人と推定されています。主な原因は加齢によるものが多く、40代以降の中高年に多く発症します。損傷をうけた関節軟骨は自己修復しにくいことが知られており、損傷した軟骨組織の修復促進、あるいは人工関節置換術への移行を回避できるような新たな治療法の開発が望まれています。レダセムチドは、マウス膝関節軟骨欠損モデルを用いた本剤の非臨床試験で軟骨修復作用等が確認されており、変形性膝関節症患者に対する新たな治療薬となることが期待されます。 e)対象疾患:慢性肝疾患 研究進捗:2020年11月 第Ⅱ相医師主導治験 開始2021年3月 第Ⅱ相医師主導治験 第一症例の登録2022年6月 第Ⅱ相医師主導治験 最終症例の登録2022年12月 第Ⅱ相医師主導治験 終了 進捗状況: 2023年4月に、新潟大学医歯学総合病院により実施された医師主導治験(第Ⅱ相試験、レダセムチド群10例)について、主要評価項目を達成いたしました。第Ⅱ相試験においては、主要目的として設定したレダセムチド投与時の安全性評価について、10例の患者のうち2例で治験薬との因果関係が否定できない有害事象(発声障害、発熱)が発現しましたが、いずれも軽度で回復しています。また、重篤な有害事象(肝生検実施時の出血)が1例発現しましたが、処置なく回復し、レダセムチドとの因果関係は否定されたことから、レダセムチドの忍容性は良好であると考えられます。副次目的として設定した探索的な有効性評価について、レダセムチド 1.5mg/kg(体重換算)を週1回4週間投与(計4回投与)した5例において、投与開始78日後及び162日後の時点で、MRエラストグラフィを指標とした肝硬度の改善傾向が認められました(投与開始前と比較して平均12%及び8%の減少率)。また、MRエラストグラフィによる肝硬度の改善だけでなく、他の線維化指標(線維化インデックス、線維化マーカー、modified HAIのFibrosis stage値)も随伴して改善傾向を示す症例が複数例認められました。これら各種有効性評価指標結果をふまえた治験責任医師による総合評価では、レダセムチド1.5mg/kg(体重換算)を週1回4週間投与(計4回投与)した5例のうち3例(60%)、1週目に4日間連続投与及び2~4週目に週1回投与(計7回投与)した5例のうち2例(40%)で肝線維化の改善傾向が示唆されました。以上の結果を踏まえ、慢性肝疾患に対する今後の開発方針が検討されています。 線維化が進行した肝硬変は、肝機能低下、門脈圧亢進、発癌など生命予後を左右する様々な問題が生じうる疾患であり、肝硬変の患者数は国内40~50万人と推定されております。現状、一般治療において、線維化が進行した肝硬変に対し完治が期待できる治療法は肝移植を除き確立されておらず、移植医療に頼らない新たな肝線維化改善薬や組織再生促進薬の開発が期待されております。レダセムチドは、有効な治療法の乏しい線維化を伴う慢性肝疾患の患者に対し、新たな治療の選択肢になり得る可能性があります。 ■TRIM3、TRIM4(全身投与型再生誘導医薬®新規ペプチド) レダセムチドに続く新規再生誘導医薬®候補物質の探索プロジェクトについて、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物質スクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する新規候補化合物(TRIM3、TRIM4、TRIM5)を同定するに至っております。次世代の再生誘導医薬®TRIM3,TRIM4はレダセムチドと同様に抹消血中の間葉系幹細胞を増加させることで、組織損傷を伴う幅広い疾患に対する組織再生を誘導します。当事業年度においては、各疾患モデル動物での実験データを着実に蓄積し、ライセンスアウトに向けた事業開発活動が引き続き進捗いたしました。 ■SR-GT1(表皮水疱症の根治治療を目的とした幹細胞遺伝子治療) 当社が大阪大学との共同研究で開発を進めている幹細胞遺伝子治療(SR-GT1)は、表皮水疱症患者の水疱から間葉系幹細胞を採取する独自の開発技術を基盤として、レンチウイルスベクタ―を用いてⅦ型コラーゲン遺伝子を患者皮膚由来間葉系幹細胞に効率的に導入し、水疱内へと戻して持続的Ⅶ型コラーゲン供給を可能にする根治的表皮水疱症治療技術です。患者由来皮膚細胞を用いて表皮水疱症モデル皮膚組織を作製し、吸引法により水疱を人工的に形成したところ、Ⅶ型コラーゲン遺伝子を導入した間葉系幹細胞を水疱内と同じ領域に投与して作製した表皮水疱症モデル皮膚組織では、Ⅶ型コラーゲンタンパク質を広範囲に基底膜領域へ供給しており、水疱が形成されないことが確認されました。また、他の投与経路と比較して水疱内投与は生体内において高い生着能を確認しております。遺伝子導入細胞の表皮シートを介した移植や皮内投与と比較し、より患者の負担が少なく高い薬効を長期間持続的に示す幹細胞遺伝子治療は、現在有効な根治療法のない栄養障害型表皮水疱症の根治的治療法となることが期待されます。 これらの結果、当事業年度の経営成績の状況は以下のとおりであります。 (事業収益) 当事業年度における事業収益はなし(前年同期の事業収益はなし)となりました。 (事業費用) 当事業年度における研究開発費は前事業年度に比べて59,318千円減少し1,394,651千円(前年同期比4.0%減)、販売費及び一般管理費は前事業年度に比べて45,233千円減少し576,881千円(前年同期比7.2%減)となりました。研究開発費の減少は、主に研究用材料費の減少及び研究員に対する株式報酬費用の減少によるものであります。販売費及び一般管理費の減少は、主に役員及び管理部門の従業員に対する株式報酬費用の減少によるものであります。この結果、当事業年度における事業費用は前事業年度に比べて104,552千円減少し1,971,532千円(前年同期比5.0%減)となりました。 (営業損益) 当事業年度において、事業収益なし、事業費用1,971,532千円を計上した結果、営業損失は1,971,532千円(前年同期は2,076,084千円の営業損失)となりました。 (営業外損益・経常損益) 当事業年度における営業外収益は前事業年度に比べて817千円増加し1,113千円(前年同期比276.6%増)、営業外費用は前事業年度に比べて2,058千円減少し24千円(前年同期比98.8%減)となりました。営業外収益の主な内訳は還付金収入579千円、物品売却益463千円であります。また、営業外費用の主な内訳は撤去費用20千円であります。これらの結果、経常損失は1,970,444千円(前年同期は2,077,872千円の経常損失)となりました。 (特別損益・税引前当期純損益) 当事業年度における特別利益は42,870千円(前年同期比27.4%減)、特別損失は210千円(前年同期の特別損失はなし)となりました。特別利益の主な内訳は従業員の退職に伴う新株予約権戻入益42,850千円であります。また、特別損失の主な内訳は固定資産売却損140千円であります。これらの結果、税引前当期純損失は1,927,784千円(前年同期は2,018,825千円の税引前当期純損失)となりました。 (当期純損益) 当事業年度における法人税等は1,652千円となりました。この結果、当期純損失は1,929,437千円(前年同期は2,022,166千円の当期純損失)となりました。 なお、当社は再生誘導医薬®事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。 ② 財政状態(資産)当事業年度末における流動資産合計は7,325,049千円となり、前事業年度末に比べ1,552,439千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が1,415,857千円減少したことによるものです。また、固定資産合計は193,610千円となり、前事業年度末に比べ9,315千円減少いたしました。これは、有形固定資産の減価償却により有形固定資産が5,618千円減少、ソフトウエアの減価償却により無形固定資産が139千円減少、長期前払費用の流動資産への振替により投資その他の資産が3,558千円減少したことによるものです。この結果、資産合計は7,518,659千円となり、前事業年度末に比べ1,561,755千円減少となりました。 (負債)当事業年度末における流動負債合計は87,884千円となり、前事業年度末に比べ20,357千円増加いたしました。これは主に前受金が27,126千円増加したことによるものです。また、固定負債合計は116,545千円となり、前事業年度末に比べ1,807千円減少いたしました。これは主に繰延税金負債が1,980千円減少したことによるものです。この結果、負債合計は204,430千円となり、前事業年度末に比べて18,549千円増加となりました。 (純資産)当事業年度末における純資産合計は7,314,229千円となり、前事業年度末に比べ1,580,305千円減少いたしました。これは主に当期純損失1,929,437千円を計上した一方、新株予約権が137,831千円増加、新株予約権の行使及び役員の株式報酬としての譲渡制限付株式の発行により資本金及び資本準備金がそれぞれ105,650千円増加したことによるものです。なお、2025年7月30日効力発生の減資により資本金が106,400千円減少し、資本準備金が106,400千円増加しております。この結果、資本金10,000千円、資本剰余金9,634,875千円、利益剰余金△3,783,253千円となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は6,994,592千円と前事業年度末と比べ1,415,857千円の減少となりました。営業活動の結果支出した資金は1,414,608千円(前事業年度は1,881,497千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失の計上1,927,784千円、株式報酬費用の計上391,553千円、未収消費税等の減少79,495千円等によるものであります。投資活動の結果支出した資金は42,498千円(前事業年度は4,784千円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものであります。なお、研究用機器については取得時に研究開発費として費用処理しております。財務活動の結果得られた資金は41,250千円(前事業年度は78,966千円の収入)となりました。これは新株予約権の行使による株式発行収入によるものであります。 ④ 生産、受注及び販売の実績a)生産実績 当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。 b)受注実績 当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。 c)販売実績 当社は再生誘導医薬®事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。また、前事業年度および当事業年度における販売実績はないため記載を省略しております。 (2)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。当社の財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計方針」に記載のとおりであります。また、当社における重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計上の見積り」に記載の通りであります。 (3)資本の財源及び資金の流動性についての分析 当社の資金需要の主なものは、継続的な候補物質の探索や候補物質の製品化に向けた開発に関する研究開発費と、販売費及び一般管理費などの事業費用であります。これらの資金需要に対して安定的な資金供給を行うための財源については主に内部資金を活用することにより確保しております。手元資金については、資金需要に迅速かつ確実に対応するため、流動性の高い銀行預金により確保しております。 (4)経営成績に重要な影響を与える要因について 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

事業リスク

  • 医薬品開発の不確実性
    医薬品開発は、多額の研究開発投資と長い年月を要しますが、臨床試験で期待する効果が得られない、安全性に問題が見つかるなどの理由で、開発が予定通りに進まない、あるいは中止される可能性があります。特に、同社のパイプラインは研究開発段階であり、上市の遅延や断念は、業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
  • 先端医療特有のリスクと法規制
    再生誘導医薬®は新規性の高い先端医療技術であり、常に技術革新の波に追い越されるリスクや、想定外の副作用が発生するリスクがあります。また、再生医療に関連する法規制は常に変化する可能性があり、法律やガイドラインの改正によって、薬事承認に想定以上の時間がかかったり、薬価が想定よりも低くなるなど、事業戦略や経営成績に影響を与える可能性があります。
  • 特定の提携契約への依存
    同社は、塩野義製薬株式会社との提携契約による収益を中心とした事業計画を持っています。この提携契約は、相手先企業の経営方針変更や経営環境の悪化など、同社がコントロールできない事情により、期間満了前に終了する可能性があります。契約が終了した場合や、マイルストーン収益の発生時期が遅延した場合には、業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
FY2025|9,233 文字
3【事業等のリスク】 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしも事業上のリスク要因に該当しないと考えられる事項についても、投資家の判断において重要と考えられる事項は、積極的な情報開示の観点から記載しています。当社は、これら事業等のリスクを認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応を図り事業活動を行っていますが、このような諸策の成否には不確実性が存在します。また、当社の事業はこれら以外にも様々なリスクを伴っており、下記の記載はリスクを網羅するものではありません。当社は、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。 なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。 (1)再生医療事業全般に係るリスク① 医薬品パイプラインの開発及びそれに伴う収益獲得の不確実性 医療用医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い年月を要しますが、臨床試験で有用な効果を発見できないこと等により、研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断を行うことは稀ではありません。また、日本国内はもとより、海外市場の展開においては、各国の薬事関連法等の法的規制の適用を受けており、新薬の製造及び販売には各国別に厳格な審査に基づく承認を取得しなければならないため、有効性、安全性及び品質等に関する十分なデータが得られず、予定していた時期に上市できずに延期になる、又は上市を断念する可能性があります。 これは、当社のパイプラインを他社にライセンスアウトした場合も同様であり、当社が研究開発を行った医療用医薬品候補及び他社にライセンスアウトした医療用医薬品の候補の上市が延期又は中止された場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。 ② 再生誘導医薬®の開発に関するリスク(ⅰ)先端医療に関する事業であることに由来するリスク 当社が研究開発を進める再生誘導医薬®とは、患者本人の体内に存在する幹細胞の働きを高めることで、怪我や病気によって損傷した組織や臓器の自己修復/再生を促進させる新しいタイプの医薬品です。再生誘導医薬®は、細胞の採取や生体外培養を一切必要とせず、医薬品の投与のみによって、患者本人の体内に存在する幹細胞を損傷部位に動員し、組織の機能的な再生を促します。医薬品により「再生医療」を実現する再生誘導医薬®は、細胞を一旦生体外に取り出し培養したのちに体内に戻す、従来型の「再生医療」の実用化に伴う課題を一気にクリアし、難病に苦しむ世界中の患者の手に届く、革新的な治療手段となり得るものと考えております。 しかしながら、現在において、再生誘導医薬®が医療用医薬品として当局から製造承認を受けたものはありません。また、他の再生医療技術についても、現時点では本格的な普及段階には至っておらず、主に特定の医療機関や研究機関が用いる高度な医療技術として比較的限定された範囲での臨床研究・臨床試験を中心として行われております。 こういった現状の背景には、最先端の医療・医薬品に特有の課題やリスクが存在します。まず再生医療の基盤となる学問や技術が急速な進歩を遂げている中で再生医療そのものに関する研究開発も非常に速いスピードで進んでおり、日々新しい研究開発成果や安全性・有効性に関する知見が生まれてきております。 当社の再生誘導医薬®は現時点では新規性の高い再生医療技術であり、また学術的に見ても安全性・有効性・応用可能性ともに他の再生細胞薬等よりも優れていると自負しておりますが、一方で常に急激な技術革新の波に追い越されるリスクや想定していない副作用が出るリスクが存在し、またそのために当社の事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (ⅱ)法規制改正・政府推進政策等の変化に由来するリスク 再生誘導医薬®に関連する法規制についても、最新の技術革新の状況に対応すべく常時変更や見直しがなされる可能性があります。例えば、法律・ガイドライン等の追加・改正により、これまで使用が認められてきた原材料が突然全く使用できなくなるといったリスクや当社の想定通りの内容で薬事承認が下りない又は薬事承認の取得に想定以上の時間を要するといったリスクも否定できません。また世界的な医療費抑制の流れの中で、当社が想定している製品価値よりも低い薬価・保険償還価格となる可能性もあります。当然このような場合には、当社の事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また現在、米国や日本をはじめとする医療先進国においては先端医療に係る各種の推進政策が実施されております。これらの推進政策は、当社が推進する再生誘導医薬®に大きな影響を与える可能性がありますが、その影響の内容・大きさはまだ定かではないことから、当社の今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。③ 副作用発現、製造物責任 医薬品には、臨床試験段階から更には上市後以降において、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。当社は、こうした事態に備えて、製造物責任を含めた各種賠償責任に対応するための適切な保険に加入する予定ですが、最終的に当社が負担する賠償額の全てに相当する保険金が支払われる保証はありません。 また、当社に対する損害賠償の請求が認められなかったとしても、製造物責任請求等がなされたこと自体によるネガティブ・イメージにより、当社及び当社の製品に対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。これら予期せぬ副作用が発現した場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響が及ぶ可能性があるとともに、社会的信頼の失墜を通じて当社の事業展開にも重大な影響を及ぼす可能性があります。 ④ 競合 医薬品業界は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの企業や研究機関等による激しい競争状態にあり、その技術革新は急速に進んでいる状況であります。これら競合相手との競争において必ずしも当社が優位性をもって継続できるとは限らず、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動における競争の結果により、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 医療費抑制策 世界各国において、政府は増え続ける医療費に歯止めをかけるため、医療費の伸びを抑制していく方針を示しており、定期的な薬価引き下げをはじめ、ジェネリック医薬品の使用促進等が進んでいます。今後の医療費政策の動向が当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (2)固有のパイプラインに関するリスク① 特定のパイプラインに関する提携契約への依存、収益の不確実性 当社は、塩野義製薬株式会社に、レダセムチド又は同化合物を有効成分として含有する医薬品の医薬品用途、及びそれらの製法又は製剤に関連する全世界における特許に基づき、全世界において当該医薬品の医薬品用途での独占的な開発、製造、使用又は販売するための再実施許諾権付のライセンスを付与しており、これらの提携契約による収益を中心とした事業収益計画を有しています。 しかしながら、このような提携契約は、相手先企業の経営方針の変更や経営環境の極端な悪化等の、当社がコントロールし得ない何らかの事情により、期間満了前に終了する可能性があります。現時点ではこれらの契約が終了となる状況は発生していませんが、本契約が終了した場合は、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、製品上市前の収益として、所定の成果達成に基づくマイルストーン収益を見込んでいますが、この発生時期は開発の進捗に依存した不確定なものであり、開発に遅延が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社では今後、後続パイプラインによる収益化に努め、現状の提携契約に基づく収益への依存度を低減していく方針ですが、それらの収益化についても、開発の進捗に依存した不確実なものであり、これらの開発に遅延が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (3)その他事業活動に関するリスク① マイナスの繰越利益剰余金の計上 当社は、医薬品の研究開発を主軸とするベンチャー企業であります。医薬品の研究開発には多額の初期投資を要し、その投資資金回収も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、ベンチャー企業が当該事業に取り組む場合は、一般的に期間損益のマイナスが先行する傾向にあります。当社も過去5事業年度において第18期(2023年7月期)は、営業利益及び当期純利益を計上しておりますが、第16期(2021年7月期)、第17期(2022年7月期)、第19期(2024年7月期)及び第20期(2025年7月期)と営業損失及び当期純損失を計上しています。 当社は、レダセムチドを始めとするパイプラインの開発を推し進めることにより、将来の利益拡大を目指しております。しかしながら、開発の進捗状況によっては、将来において計画通りに当期純利益を計上できない可能性もあります。仮に、当社事業が計画通りに進展せず収益を獲得できない場合には、繰越利益剰余金がプラスとなる時期が著しく遅れる可能性があります。 ② 剰余金の分配について 当社は、当面は、多額の先行投資を行う研究開発活動の継続的かつ計画的な実施に備えた資金の確保を優先するため、配当等の株主還元は行わない方針としております。しかし、株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を行うことを考えております。 剰余金の分配には、配当可能利益が必要となりますが、「① マイナスの繰越利益剰余金の計上」に記載したとおり、当社事業の進捗いかんによっては、繰越利益剰余金がマイナスとなり、配当可能利益が確保できる時期が著しく遅れる可能性があります。この場合、剰余金の分配を行う時期についても遅延する可能性があります。③ 収益計上が大きく変動する傾向 当社の事業収益は、レダセムチドを始めとする現在開発中のパイプラインのライセンスアウト時の契約一時金及び開発進捗に伴うマイルストーン収入に大きく影響されるため、過年度の事業収益、当期純損益は不安定に推移しています。この傾向は、現在開発中のパイプラインが上市され安定的な収益基盤となるまで続くと見込まれます。 ④ 再生誘導医薬®の市場規模に係るリスク 当社が研究開発を進める再生誘導医薬®は、投与によって患者の体内で誘導される幹細胞が、血液循環を介して体内を巡り、損傷した組織特異的に集積し、神経や皮膚、骨、軟骨、筋肉、血管など、様々な種類の組織に分化する能力を有するため、再生誘導医薬®という共通のプラットフォームによって、脳梗塞や脊髄損傷などの中枢神経系疾患、心筋梗塞や心筋症などの循環器系疾患、難治性皮膚潰瘍などの上皮系疾患、難治性骨折などの間葉系疾患など、組織損傷を伴う数多くの難病に対して幅広い治療効果をもたらすことが期待されます。 よって、再生誘導医薬®は、大きな市場を獲得できると考えており、当社収益にも大きく寄与するものと考えております。しかしながら、何らかの事情により当社の想定通りに適応範囲が拡大できない場合、将来の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 小規模組織及び少数の事業推進者への依存 当社は、提出日現在、取締役4名、監査役3名(非常勤監査役2名を含む。)及び、2025年7月末現在、従業員68名(執行役員、臨時雇用者含む)の小規模組織であり、現在の内部管理体制はこのような組織規模に応じたものとなっています。今後、業容拡大に応じて内部管理体制の拡充を図る方針であります。 また、当社の事業活動は、現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者及び少数の研究開発人員に強く依存するところがあります。そのため、常に優秀な人材の確保と育成に努めていますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 特定の提携契約に依存した事業計画について 当社は、現時点で、特定の製薬企業との限られた共同研究契約及びライセンス契約を主軸とする事業計画を有しております。 しかしながらこのような提携契約は、相手先企業の経営環境の極端な悪化や経営方針の変更など、当社がコントロールし得ない何らかの事情により、期間満了前に終了する可能性及び当社の想定と異なる事態が生じる可能性があります。 このような事態が発生した場合には、他の製薬企業との新たな提携等により当社事業計画への影響を最小限に食い止める所存ではありますが、これが適時に実現できる保証はなく、このため当社の希望通りの事業活動ができず、若しくは制約を受け、その結果、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社が現時点で有している提携契約としては、2014年11月に塩野義製薬株式会社との間で締結した、レダセムチド又は同化合物を有効成分として含有する医薬品の医薬品用途、及びそれらの製法又は製剤に関連する全世界における特許に基づき、全世界において当該医薬品の医薬品用途での独占的な開発、製造、使用又は販売するための再実施許諾権付のライセンス契約があります。 塩野義製薬株式会社とは2010年4月よりレダセムチドに関する共同研究を開始しております。一般論として、候補物質に係る研究を進め、およそ2億円から3億円の投資である非臨床試験の研究ステージから、最終的には少なくとも数百億円規模の投資となる臨床開発ステージに進むことは、巨大な製薬企業といえども、大きな決定です。塩野義製薬株式会社がステージを進めることを決定するためには、多面的な審査をうけ、塩野義製薬株式会社の要求する基準を充足する必要があります。 当社プロジェクトは当該基準をクリアし、2014年11月にレダセムチドに係るライセンス契約を締結しております。当社は当該ライセンス契約に基づき、これまでに契約一時金、マイルストーン収益として、総額4,046百万円を受領しております。 ライセンス契約によるライセンスアウト後の収入については、所定条件の達成が条件となることから、ライセンスアウト後の開発の進捗状況によっては予定された収益の計上時期が遅れる、それが得られない等の事態があり得ます。 なお、塩野義製薬株式会社とのライセンス契約に係る開発の進捗状況としては、先行する栄養障害型表皮水疱症の追加第Ⅱ相医師主導治験が2022年7月より開始され、2023年3月には一例目となる患者への投与が開始し、2025年7月に最終症例の治験組み入れが完了いたしました。また、急性期脳梗塞については日本、米国、欧州及び中国においてグローバル後期第Ⅱ相試験の実施中、慢性肝疾患、変形性膝関節症においては第Ⅱ相医師主導治験が完了し、虚血性心筋症においては2024年3月より第Ⅱ相医師主導治験が開始されております。 これらの治験の実施においては前述のとおり相当の費用が発生することが見込まれるため、当然将来的な上市を期待した上で、治験を実施することになりますが、必ずしも望ましい結果が得られるとは限りません。仮に、治験の結果が望ましいものとならなかった場合、当社事業にも重要な影響を及ぼす可能性があります。 これらを含め、当社の事業展開上、重要と思われる契約の概要は「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載しておりますが、当該契約が期間満了、解除、その他の理由に基づき終了した場合若しくは当社にとって不利な改定が行われた場合、又は契約の相手方の財務状況が悪化したり、経営方針が変更されたりした場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 資金繰り 当社は、研究開発型企業として多額の研究開発資金を必要とし、また研究開発費用の負担により長期にわたって先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。当事業年度においては、営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しており、かつ現状では、当社は継続的なロイヤリティ収入などの安定的な収益源を有しておらず、今後の収益獲得については、レダセムチドの開発の進捗状況や、その他のパイプラインのライセンス交渉等の結果に大きく左右されるため、未だ、営業活動から安定的に資金が得られる状況にあるとは言えません。 このため、安定的な収益源を確保するまでの期間においては、必要に応じて適切な時期に資本市場からの資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合は、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。 ⑧ 設備投資に係るリスク 当社は、研究事業拡大のために、2020年6月に大阪大学と共同で再生誘導医学協働研究所を開設し、2021年1月に本社研究所を拡張し、同建屋内に動物実験施設を新設いたしました。当社として研究開発を推進する上でその意義は大きく、今後事業進展の拡大に寄与するものと考えております。 しかしながら、現時点において当該設備投資の効果が十分に実現する保証はありません。仮に、当社が想定したとおりに事業を展開できない場合、減損会計の適用による減損処理が必要となるなど、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。 ⑨ 新株発行による資金調達 当社は医薬品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ⑩ 株式の希薄化について 当社は医薬品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 また、当社は取締役(社外取締役を含む)及び監査役に対する中長期的なインセンティブの付与及び株主価値の共有を目的として譲渡制限付株式報酬制度を導入しており、また、役職員に対して、業績向上意欲や士気を高めることを目的として、ストック・オプション制度を採用しています。今後、譲渡制限付株式報酬制度に基づき新株式が発行された場合又は発行済みの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。今後も優秀な人材の確保のため、株式価値の希薄化に配慮しつつも同様のインセンティブ・プランを継続する可能性があります。従って、今後割当が行われる譲渡制限付株式及び付与される新株予約権等によっても、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。 ⑪ 知的財産権 当社では研究開発をはじめとする事業展開において様々な知的財産権を使用しており、これらは当社所有の権利であるか、あるいは適法に使用許諾を受けた権利であるものと認識しています。 また、当社が保有している現在出願中の特許が全て成立する保証はありません。更に、特許が成立した場合でも、当社の研究開発を超える優れた研究開発により、当社の特許に含まれる技術が淘汰される可能性は常に存在しています。当社の特許権の権利範囲に含まれない優れた技術が開発された場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、当社では他社の特許権の侵害を未然に防止するため、当社として必要と考える特許の調査を実施しており、これまでに、当社の開発パイプラインに関する特許権等の知的財産権について第三者との間で訴訟が発生した事実はありません。しかし、当社のような研究開発型企業にとって知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 ⑫ 国立大学法人大阪大学との関係について 当社は、自社での研究活動の他、国立大学法人大阪大学と共同研究を実施しており、特許権について共同保有するなどしております。 当社は、同大学との間で、レダセムチドにかかる同大学との共有特許について同大学から独占的実施権の許諾を受け、その対価として、当社の新株予約権1,460個を同大学に割り当てること、契約一時金及びかかる特許権を第三者に実施許諾したことによる収入(契約一時金、マイルストーン収入、ロイヤリティ収入)の一定料率に相当する金額を同大学に支払うこと等を定めた契約を締結しており、当該契約に基づき、塩野義製薬株式会社等から上記に該当する収入を受け取った場合には、一定率の金額を大阪大学に支払うことになります。 当社は、今後も同大学との間で良好な関係を維持し、共同研究を継続していく方針であります。また、2020年4月より、同大学と共同で再生誘導医学協働研究所を設置しており、研究拠点を確保すると共に、幅広い学部・学科との緊密かつ横断的・効率的な連携を図り、より一層研究能力を強化しております。しかしながら、何らかの理由で、これらの契約の更新が困難となった場合又は解除等により取引が困難となった場合、当社の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、同大学との取引については、良好な関係を維持しつつも当社又は株主の利益を害することのないよう、法規制を遵守するとともに、取締役会の監視等を通じて十分留意しております。しかしながら、このような留意にかかわらず、利益供与を疑われるなどの事態が発生した場合には、当社の利益及び社会的評価を損ねる可能性があり、その結果として当社の事業、業績や財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。

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