事業の内容
オンコリスバイオファーマは、がんのウイルス療法や重症ウイルス感染症治療薬などの開発・事業化を進める創薬バイオ企業です。特に、がんのウイルス療法OBP-301やOBP-702、ウイルス感染症治療薬OBP-2011、神経難病治療薬OBP-601を主力パイプラインとしています。これまではライセンス契約による一時金やマイルストーン、ロイヤリティ収入が主な収益源でしたが、今後は自社での製造販売も行うハイブリッド型事業モデルへの移行を進めています。OBP-301の国内承認申請を行い、自社販売開始を目指しています。
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FY2025|6,978 文字|出典 docID: S100XTMG
3 【事業の内容】当社は創薬バイオ企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性の高いがんのウイルス療法や重症ウイルス感染症治療薬などの開発と事業化を推進しています。特に、がんのウイルス療法OBP-301やOBP-702などの「がんのウイルス療法領域」と、ウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症ウイルス感染症領域」でパイプラインを構築し、「ウイルス創薬企業」として成長を目指しています。また、これまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601はドラッグリポジショニングにより神経難病治療薬として開発されています。今後は、自社によるOBP-301の販売開始や日本以外のアライアンスを推進し、各パイプラインの開発進展や製薬企業とのアライアンス活動を進め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。 これまで当社は、パイプラインの開発を一定段階まで進め、その後の開発や販売は製薬企業へライセンスを許諾し、その対価として契約一時金やマイルストーン、ロイヤリティ収入などを得るというライセンス型事業モデルを展開してきました。しかし、今後は従来のライセンス型事業モデルに加えて、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルの展開を行う「ライセンス型事業モデルと製薬会社型事業モデルのハイブリッド」へ移行を進めています。この方針に則り、2020年6月にTransposon社とOBP-601のライセンス契約を締結し、契約一時金やマイルストーン収入などを受領するなどライセンス型事業モデルを具体化しています。また、製薬会社型事業モデルを具体化するために、2025年12月にOBP-301の国内承認申請を行いました。 「オンコリスなしでは医療現場が、ひいては患者様が困る」そういう存在感ある創薬を展開し、いち早く医療現場の課題解決に貢献してゆきたいと考えています。なお、当社の事業系統図は以下のとおりです。 [事業系統図] (1) 主要なパイプライン当社は創薬バイオ企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性の高いがんのウイルス療法や重症ウイルス感染症治療薬などの開発と事業化を推進しています。特に、がんのウイルス療法OBP-301やOBP-702などの「がんのウイルス療法領域」と、ウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症ウイルス感染症領域」でパイプラインを構築しています。さらに、核酸系逆転写酵素阻害剤のメカニズムを活かしてHIV感染症治療薬として開発して参りましたOBP-601は、LINE-1阻害剤としてドラッグリポジショニングを行い、ライセンス先のTransposon社により神経難病治療薬として開発が進められています。 ① がんのウイルス療法OBP-301OBP-301は、5型のアデノウイルス[*1]を遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスです。5型のアデノウイルスは風邪の症状を引き起こすもので、自然界にも存在します。OBP-301は、細胞の寿命を決定づけるテロメラーゼの活性が高いがん細胞で特異的に増殖することによって、がん細胞を破壊します。一方、がん細胞と比較してテロメラーゼ活性が低い正常な細胞の中では、増殖能力が極めて低いため、臨床的な安全性を保つことが期待されています。また、用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、さらに強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a) 対象疾患食道がんなどの固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況OBP-301は、内視鏡を用いる投与方法に関する用法特許が日本国内で特許が成立しており(特許第7674738号)、米国及び欧州では審査中です。この用法特許は当社が単独で保有しています。c) アライアンスの状況2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結し、2024年12月には台湾での商業化権を許諾しました。また、2024年2月に富士フイルム富山化学と日本における販売提携契約を締結しました。d) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。なお、食道がん治療再生医療等製品として開発を進め、2025年12月に製造販売承認申請を行いました。また、2020年6月に米国においてオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)の指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から、2025年12月に厚生労働省から希少疾病用再生医療等製品(オーファンドラッグ)の指定を受けております。e) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造しております。f) 販売体制日本国内に関しては、富士フイルム富山化学が販売する予定です。また、台湾はMedigen社へ商業化権を許諾しています。その他の海外に関しては、大手製薬企業等とライセンス契約又は販売提携契約を締結し、契約先が販売する予定です。 <OBP-301の構造> OBP-301は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、さらに同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。OBP-301のDNA構造は以下のとおりです。 ② LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)OBP-601(censavudine)は、神経変性疾患への応用が新たに期待されるLINE-1阻害剤です。レトロトランスポゾン[*4]というヒトの遺伝子がRNAからDNAに逆転写されて、DNAの様々な場所に入り込んでしまうことで神経組織の炎症反応が起こり、その結果、筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)などの神経変性疾患を引き起こされることが近年明らかになりました。OBP-601は、このRNAからDNAへの逆転写を司る酵素を抑制する作用を有しており、これまでにない新しい作用機序をもった神経変性疾患の治療薬になることが期待されています。 a) 対象疾患PSP(進行性核上性麻痺)、C9-ALS(筋萎縮性側索硬化症)、アルツハイマー病などの神経変性疾患を対象にします。b) 技術導入の概況当社は、神経変性疾患治療薬の開発を目的に設立されたTransposon社と、2020年6月に全世界における再許諾権付き独占的ライセンス導出契約を締結しました。今後の開発は、Transposon社が全額費用を負担し、欧米を中心に実施します。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。なお、2024年5月に米国においてPSPへのファスト・トラック指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。d) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、製造はライセンス導出先のTransposon社が行います。e) 販売体制Transposon社が第三者である大手製薬企業等へOBP-601のライセンスを再許諾した場合、ライセンス再許諾先が販売を行います。 <OBP-601(censavudine)の作用メカニズム> ③ 次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702 OBP-702は、OBP-301に強力ながん抑制遺伝子p53を搭載した次世代腫瘍溶解ウイルスです。p53遺伝子[*5]の欠失又は変異によって細胞ががん化する割合は、がん全体の30~40%になると報告されています。OBP-702はがん細胞に投与されると、ウイルス自体ががん細胞のテロメラーゼ活性を介して増殖し、がん細胞を破壊するのに加え、同時にp53蛋白をがん細胞の中で生成させることにより、さらに強力にがん細胞をアポトーシスさせる機能を有しています。これまでの非臨床試験の結果では、OBP-301と比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆され、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果が示されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、OBP-301で効果が得られにくかったがん種等、アンメット・メディカル・ニーズを充足させる治療薬を目指して開発してゆきます。 a) 対象疾患膵臓がんなどの各種固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況当社は、2015年に次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702をパイプラインに加えています。OBP-702は、OBP-301と同様に内視鏡を用いる投与方法に関する用法特許を日本国内で取得しており、米国及び欧州では審査中です。この用法特許は当社が単独で保有しています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売する予定です。 <次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702の構造> ④ ウイルス感染症治療薬OBP-2011OBP-2011は、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を強く阻害する新規メカニズムを持った治療薬として開発を行っていました。これまでに行われた前臨床試験の結果から、経口投与が可能であることが確認され、探索的毒性試験や探索的遺伝毒性試験においても問題となるような検査の異常は認められていません。また、アルファ株・ベータ株・ガンマ株・デルタ株・オミクロン株などの変異型コロナウイルス株に対しても、野生型と同等の活性を示すことが細胞培養系の実験で確認されています。今後は、開発優先順位を引き下げ、メカニズム解明を進めるとともに、他のウイルス感染症治療薬としての可能性を探索していきます。 a) 対象疾患ウイルス感染症を対象に効果を探っています。b) 技術導入の概況 当社は、2020年6月に鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬用途特許の特許譲受に関する契約を締結しました。日本国内では、本特許が成立しています(特許第7765835号)。さらに、2021年11月に抗SARS-CoV-2薬物質特許の出願を行いました。これらについても鹿児島大学から持分を譲り受けることで、当社は一元的に権利を保有しています。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制 当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制 大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行う予定です。 ⑤ 検査薬OBP-401OBP-401は、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったOBP-301にクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <OBP-401の構造模式図>OBP-401を用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cell)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a) 技術導入の概況OBP-401は、今後AIを用いた検査系の立ち上げを行い、検査感度・精度及びスループットの向上を目指してゆきます。 OBP-1101は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。b) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。c) 製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。d) 販売体制国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬企業へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供してゆきます。 ⑥ HDAC阻害剤OBP-801OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)阻害剤[*6]です。OBP-801は、正常細胞のがん化に強く関係しているHDACという酵素の活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制や細胞死などを誘導する効果を示すことを期待して開発されていました。しかし、米国での各種固形がんを対象にしたPhase1臨床試験で用量制限毒性が生じたため、がん領域での開発を中断しています。現在、眼科領域への応用が試みられています。 a) 対象疾患 眼科疾患領域への応用b) 技術導入の概況 当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。OBP-801は、眼科領域の用途に関する特許を日本国内で取得しております(特許第7542799号)。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。 d) 製造体制 当社は本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 e) 販売体制 将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1] アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。 [*2] E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。 [*3] IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。 [*4] レトロトランスポゾンヒトゲノムの約40%を占めており、逆転写酵素などの作用によってレトロトランスポゾンの複製が行われ、遺伝子内にランダムに転移が起きます。その結果、遺伝子の突然変異が起こりやすくなり、様々な病気が発生すると考えられています。このレトロトランスポゾンがランダムに複数コピーされてくると、様々な反応によりインターフェロンが産生され、神経細胞を傷つけることによりALSなどの神経変性疾患が発生すると考えられています。 [*5] p53遺伝子がん抑制遺伝子の中でも代表的な遺伝子の1つであり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。 [*6] ヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤染色体を構成するタンパク質を脱アセチル化することで染色体構造を緊密にし、遺伝子の発現を抑制する酵素を阻害する薬の総称です。
FY2024|7,174 文字|出典 docID: S100VIBY
3 【事業の内容】当社は創薬バイオベンチャー企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性のがんのウイルス療法や重症ウイルス感染症治療薬などの開発と事業化を推進しています。特に、がんのウイルス療法OBP-301やOBP-702などの「がんのウイルス療法領域」と、ウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症ウイルス感染症領域」でパイプラインを構築し、「ウイルス創薬企業」として成長を目指しています。また、これまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601はドラッグリポジショニングにより神経難病治療薬として開発されています。今後は、自社によるOBP-301の承認申請を推進して商業化を早め、各パイプラインの製薬企業へのライセンス活動を進め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。 これまで当社は、パイプラインの開発を一定段階まで進め、その後の開発や販売は製薬企業へライセンスを許諾し、その対価として契約一時金やマイルストーン、ロイヤリティ収入などを得るというライセンス型事業モデルを展開してきました。しかし、今後は従来のライセンス型事業モデルに加えて、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルの展開を行う「ライセンス型事業モデルと製薬会社型事業モデルのハイブリッド」で事業を展開してゆく方針です。この方針に則り、2020年6月にTransposon社とOBP-601のライセンス契約を締結し、契約一時金やマイルストーン収入などを受領するなどライセンス型事業モデルを具体化しています。また、製薬会社型事業モデルを具体化するために、2025年3月に国内承認申請に向けたOBP-301の先駆け総合評価相談を開始しています。 「オンコリスなしでは医療現場が、ひいては患者様が困る」そういう存在感ある創薬を展開し、いち早く医療現場の課題解決に貢献してゆきたいと考えています。なお、当社の事業系統図は以下のとおりです。 [事業系統図] (1) 主要なパイプライン当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。特にがん領域では、がんのウイルス療法OBP-301や次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702の開発を進めるとともに、がんの超早期発見又は予後検査を行う新しい検査薬のOBP-401を揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。 ① がんのウイルス療法OBP-301OBP-301は、5型のアデノウイルス[*1]を遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスです。5型のアデノウイルスは風邪の症状を引き起こすもので、自然界にも存在します。OBP-301は、細胞の寿命を決定づけるテロメラーゼの活性が高いがん細胞で特異的に増殖することによって、がん細胞を破壊します。一方、がん細胞と比較してテロメラーゼ活性が低い正常な細胞の中では、増殖能力が極めて低いため、臨床的な安全性を保つことが期待されています。また、用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、さらに強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a) 対象疾患食道がんなどの固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況OBP-301は、内視鏡を用いる投与方法に関する用法特許が日本国内で特許査定を受けており、米国及び欧州では審査中です。この用法特許は当社が単独で保有しています。c) アライアンスの状況2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結し、2024年12月には台湾での商業化権を許諾しました。また、2024年2月に富士フイルム富山化学と日本における販売提携契約を締結しました。d) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。なお、食道がんへの開発に対して、2019年4月に日本国内において厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。また、2020年6月に米国においてオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)の指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。e) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造しております。f) 販売体制日本国内に関しては、富士フイルム富山化学が販売する予定です。また、台湾はMedigen社へ商業化権を許諾しています。その他の海外に関しては、大手製薬企業等とライセンス契約又は販売提携契約を締結し、契約先が販売する予定です。 <OBP-301の構造> OBP-301は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、さらに同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。OBP-301のDNA構造は以下のとおりです。 ② LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)OBP-601(censavudine)は、神経変性疾患への応用が新たに期待されるLINE-1阻害剤です。レトロトランスポゾン[*4]というヒトの遺伝子がRNAからDNAに逆転写されて、DNAの様々な場所に入り込んでしまうことで神経組織の炎症反応が起こり、その結果、筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)などの神経変性疾患を引き起こされることが近年明らかになりました。OBP-601は、このRNAからDNAへの逆転写を司る酵素を抑制する作用を有しており、これまでにない新しい作用機序をもった神経変性疾患の治療薬になることが期待されています。 a) 対象疾患PSP(進行性核上性麻痺)、C9-ALS(筋萎縮性側索硬化症)、FTD(前頭側頭型認知症)、AGS(アイカルディ・ゴーティエ症候群)、アルツハイマー病などの神経変性疾患を対象にします。b) 技術導入の概況当社は、OBP-601(censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)と独占的ライセンス導入契約を2006年6月に締結しています。また、神経変性疾患治療薬の開発を目的に設立されたTransposon社と、2020年6月に全世界における再許諾権付き独占的ライセンス導出契約を締結しました。今後の開発は、Transposon社が全額費用を負担し、欧米を中心に実施します。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。なお、2024年5月に米国においてPSPへのファスト・トラック指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。 d) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、製造はライセンス導出先のTransposon社が行います。e) 販売体制Transposon社が第三者である大手製薬企業等へOBP-601のライセンスを再許諾した場合、ライセンス再許諾先が販売を行います。 <OBP-601(censavudine)の作用メカニズム> ③ ウイルス感染症治療薬OBP-2011OBP-2011は、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を強く阻害する新規メカニズムを持った治療薬として開発を行っていました。これまでに行われた前臨床試験の結果から、経口投与が可能であることが確認され、探索的毒性試験や探索的遺伝毒性試験においても問題となるような検査の異常は認められていません。また、アルファ株・ベータ株・ガンマ株・デルタ株・オミクロン株などの変異型コロナウイルス株に対しても、野生型と同等の活性を示すことが細胞培養系の実験で確認されています。今後は、開発優先順位を引き下げ、メカニズム解明を進めるとともに、他のウイルス感染症治療薬としての可能性を探索していきます。 a) 対象疾患ウイルス感染症を対象に効果を探っています。b) 技術導入の概況 当社は、2020年6月に鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬用途特許の特許譲受に関する契約を締結しました。さらに、2021年10月に抗SARS-CoV-2薬物質特許、2023年5月に抗SARS-CoV-2薬塩及び結晶多型特許の出願を行いました。これらについても鹿児島大学から持分を譲り受けることで、当社は一元的に権利を保有しています。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制 当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制 大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行う予定です。 ④ 次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702 OBP-702は、OBP-301に強力ながん抑制遺伝子p53を搭載した次世代腫瘍溶解ウイルスです。p53遺伝子[*5]の欠失又は変異によって細胞ががん化する割合は、がん全体の30~40%になると報告されています。OBP-702はがん細胞に投与されると、ウイルス自体ががん細胞のテロメラーゼ活性を介して増殖し、がん細胞を破壊するのに加え、同時にp53蛋白をがん細胞の中で生成させることにより、さらに強力にがん細胞をアポトーシスさせる機能を有しています。これまでの非臨床試験の結果では、OBP-301と比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆され、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果が示されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、OBP-301で効果が得られにくかったがん種等、アンメット・メディカル・ニーズを充足させる治療薬を目指して開発してゆきます。 a) 対象疾患膵臓がんなどの各種固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況当社は、2015年に次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702をパイプラインに加えています。OBP-702は、OBP-301と同様に内視鏡を用いる投与方法に関する用法特許を日本国内で取得しており、米国及び欧州では審査中です。この用法特許は当社が単独で保有しています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売する予定です。 <次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702の構造> ⑤ 検査薬 OBP-401OBP-401は、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったOBP-301にクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <OBP-401の構造模式図>OBP-401を用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cell)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a) 技術導入の概況OBP-401は、日本及び欧州を含む10カ国で物質に関する特許を取得しています。今後、AIを用いた検査系の立ち上げを行い、検査感度・精度及びスループットの向上を目指してゆきます。 OBP-1101は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。b) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。c) アライアンスの状況2015年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA Inc.(米国、以下「Liquid Biotech社」)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結しましたが、2021年12月に同契約を解消しました。d) 製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。e) 販売体制国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬企業へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供してゆきます。 ⑥ HDAC阻害剤OBP-801OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)阻害剤[*6]です。OBP-801は、正常細胞のがん化に強く関係しているHDACという酵素の活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制や細胞死などを誘導する効果を示すことを期待して開発されていました。しかし、米国での各種固形がんを対象にしたPhase1臨床試験で用量制限毒性が生じたため、がん領域での開発を中断しています。現在、眼科領域への応用が試みられています。 a) 対象疾患 眼科疾患領域への応用b) 技術導入の概況 当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。OBP-801は、眼科領域の用途に関する特許を日本国内で取得しております(特許第7542799号)。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。 d) 製造体制 当社は本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 e) 販売体制 将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1] アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。 [*2] E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。 [*3] IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。 [*4] レトロトランスポゾンヒトゲノムの約40%を占めており、逆転写酵素などの作用によってレトロトランスポゾンの複製が行われ、遺伝子内にランダムに転移が起きます。その結果、遺伝子の突然変異が起こりやすくなり、様々な病気が発生すると考えられています。このレトロトランスポゾンがランダムに複数コピーされてくると、様々な反応によりインターフェロンが産生され、神経細胞を傷つけることによりALSなどの神経変性疾患が発生すると考えられています。 [*5] p53遺伝子がん抑制遺伝子の中でも代表的な遺伝子の1つであり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。 [*6] ヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤染色体を構成するタンパク質を脱アセチル化することで染色体構造を緊密にし、遺伝子の発現を抑制する酵素を阻害する薬の総称です。
FY2023|7,031 文字|出典 docID: S100T65H
3 【事業の内容】当社は創薬バイオベンチャー企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性のがんのウイルス療法や重症ウイルス感染症治療薬などの開発と事業化を推進しています。特に、がんのウイルス療法テロメライシンや次世代テロメライシンOBP-702などの「がんのウイルス療法領域」と、ウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症ウイルス感染症領域」でパイプラインを構築し、「ウイルス創薬企業」として成長を目指しています。また、これまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601はドラッグリポジショニングにより神経難病治療薬として開発されています。今後は、各パイプラインの製薬企業へのライセンス活動や自社による承認申請を推進して商業化を早め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。 これまで当社は、パイプラインの開発を一定段階まで進め、その後の開発や販売は製薬企業へライセンスを許諾し、その対価として契約一時金やマイルストーン、ロイヤリティ収入などを得るというライセンス型事業モデルを展開していました。しかし、今後は上記のライセンス型事業モデルに加えて、一部のパイプラインに関しては、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルの展開も検討し、「ライセンス型事業モデルと製薬会社型事業モデルのハイブリッド」で事業を展開してゆく方針です。 「オンコリスなしでは医療現場が、ひいては患者様が困る」そういう存在感ある創薬を展開することを基本方針とし、いち早く医療現場の課題解決に貢献してゆきたいと考えています。なお、当社は、創薬開発プランを創出し、その製造、前臨床試験及び臨床試験をアウトソーシングするファブレス経営による医薬品開発を行い、開発期間の効率化・開発経費の最適化を図っています。当社の事業系統図は以下のとおりです。 [事業系統図] 注:上記のライセンス型事業モデルに加えて、一部のパイプラインに関しては、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルの展開も行っていきます。 (1) 主要なパイプライン当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。特にがん領域では、がんのウイルス療法テロメライシンや次世代テロメライシンOBP-702の開発を進めるとともに、がんの超早期発見又は予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンを揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。 ① がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)テロメライシンは、5型のアデノウイルス[*1]を遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスです。5型のアデノウイルスは風邪の症状を引き起こすもので、自然界にも存在します。テロメライシンは、細胞の寿命を決定づけるテロメラーゼの活性が高いがん細胞で特異的に増殖することによって、がん細胞を破壊します。一方、がん細胞と比較してテロメラーゼ活性が低い正常な細胞の中では、増殖能力が極めて低いため、臨床的な安全性を保つことが期待されています。また、用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、さらに強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a) 対象疾患食道がんなどの固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況テロメライシンは、2006年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、2012年4月に米国での特許(米国特許第8163892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。(特許取得済みの国)日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダc) アライアンスの状況2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結しました。また、2024年2月に富士フイルム富山化学と日本における販売提携契約を締結しました。d) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。なお、食道がんへの開発に対して、2019年4月に日本国内において厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。また、2020年6月に米国においてオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)の指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。e) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造しております。f) 販売体制日本国内に関しては、富士フイルム富山化学が販売する予定です。海外に関しては、大手製薬企業等とライセンス契約又は販売提携契約を締結し、契約先が販売する予定です。 <テロメライシンの構造> テロメライシンは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、さらに同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。テロメライシンのDNA構造は以下のとおりです。 ② LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)OBP-601(censavudine)は、神経変性疾患への応用が新たに期待されるLINE-1阻害剤です。レトロトランスポゾン[*4]というヒトの遺伝子がRNAからDNAに逆転写されて、DNAの様々な場所に入り込んでしまうことで神経組織の炎症反応が起こり、その結果、筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)などの神経変性疾患を引き起こされることが近年明らかになりました。OBP-601は、このRNAからDNAへの逆転写を司る酵素を抑制する作用を有しており、これまでにない新しい作用機序をもった神経変性疾患の治療薬になることが期待されています。 a) 対象疾患PSP(進行性核上性麻痺)、C9-ALS(筋萎縮性側索硬化症)、FTD(前頭側頭型認知症)、AGS(アイカルディ・ゴーティエ症候群)などの神経変性疾患を対象にします。b) 技術導入の概況当社は、OBP-601(censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)と独占的ライセンス導入契約を2006年6月に締結しています。また、神経変性疾患治療薬の開発を目的に設立されたTransposon社と、2020年6月に全世界における再許諾権付き独占的ライセンス導出契約を締結しました。今後の開発は、Transposon社が全額費用を負担し、欧米を中心に実施します。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、製造はライセンス導出先のTransposon社が行います。e) 販売体制Transposon社が第三者である大手製薬企業等へOBP-601のライセンスを再許諾した場合、ライセンス再許諾先が販売を行います。 <OBP-601(censavudine)の作用メカニズム> ③ ウイルス感染症治療薬OBP-2011OBP-2011は、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を強く阻害する新規メカニズムを持った治療薬として開発を行っていました。これまでに行われた前臨床試験の結果から、経口投与が可能であることが確認され、探索的毒性試験や探索的遺伝毒性試験においても問題となるような検査の異常は認められていません。また、アルファ株・ベータ株・ガンマ株・デルタ株・オミクロン株などの変異型コロナウイルス株に対しても、野生型と同等の活性を示すことが細胞培養系の実験で確認されています。今後は、開発優先順位を引き下げ、メカニズム解明を進めるとともに、他のウイルス感染症治療薬としての可能性を探索していきます。 a) 対象疾患ウイルス感染症を対象に効果を探っています。b) 技術導入の概況 当社は、2020年6月に鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結しました。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制 当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制 大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行う予定です。 ④ 次世代テロメライシンOBP-702 OBP-702は、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子p53を搭載した次世代テロメライシンです。p53遺伝子[*5]の欠失又は変異によって細胞ががん化する割合は、がん全体の30~40%になると報告されています。OBP-702はがん細胞に投与されると、ウイルス自体ががん細胞のテロメラーゼ活性を介して増殖し、がん細胞を破壊するのに加え、同時にp53蛋白をがん細胞の中で生成させることにより、さらに強力にがん細胞をアポトーシスさせる機能を有しています。これまでの非臨床試験の結果では、テロメライシンと比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆され、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果が示されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、テロメライシンで効果が得られにくかったがん種等、アンメット・メディカル・ニーズを充足させる治療薬を目指して開発してゆきます。 a) 対象疾患膵臓がんなどの各種固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況当社は、2015年に次世代テロメライシンOBP-702をパイプラインに加えています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売する予定です。 <次世代テロメライシンOBP-702の構造> ⑤ 検査薬 テロメスキャン(OBP-401)テロメスキャンは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <テロメスキャンの構造模式図>テロメスキャンを用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cell)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a) 技術導入の概況テロメスキャン(OBP-401)は、テロメライシンと同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。今後、AIを用いた検査系の立ち上げを行い、検査感度・精度及びスループットの向上を目指してゆきます。 テロメスキャンF35(OBP-1101)は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。b) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。c) アライアンスの状況2015年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA Inc.(米国、以下「Liquid Biotech社」)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結しましたが、2021年12月に同契約を解消しました。d) 製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。e) 販売体制国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬企業へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供してゆきます。 ⑥ HDAC阻害剤OBP-801OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)阻害剤[*6]です。OBP-801は、正常細胞のがん化に強く関係しているHDACという酵素の活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制や細胞死などを誘導する効果を示すことを期待して開発されていました。しかし、米国での各種固形がんを対象にしたPhase1臨床試験で用量制限毒性が生じたため、がん領域での開発を中断しています。現在、眼科領域への応用が試みられています。 a) 対象疾患 眼科疾患領域への応用b) 技術導入の概況 当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。 d) 製造体制 当社は本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 e) 販売体制 将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1] アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。 [*2] E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。 [*3] IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。 [*4] レトロトランスポゾンヒトゲノムの約40%を占めており、逆転写酵素などの作用によってレトロトランスポゾンの複製が行われ、遺伝子内にランダムに転移が起きます。その結果、遺伝子の突然変異が起こりやすくなり、様々な病気が発生すると考えられています。このレトロトランスポゾンがランダムに複数コピーされてくると、様々な反応によりインターフェロンが産生され、神経細胞を傷つけることによりALSなどの神経変性疾患が発生すると考えられています。 [*5] p53遺伝子がん抑制遺伝子の中でも代表的な遺伝子の1つであり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。 [*6] ヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤染色体を構成するタンパク質を脱アセチル化することで染色体構造を緊密にし、遺伝子の発現を抑制する酵素を阻害する薬の総称です。
FY2022|7,170 文字|出典 docID: S100QI26
3 【事業の内容】当社は創薬バイオベンチャー企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性の高いウイルス遺伝子改変がん治療薬、重症感染症治療薬及びがん検査薬などの開発と事業化を推進しています。特に、がんのウイルス療法テロメライシン、次世代テロメライシンOBP-702、がんの早期発見・再発予測を行うテロメスキャンを揃え、がんの発見から治療までを網羅する「がん領域」と、コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症感染症領域」でパイプラインを構築し、さらにこれまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601を神経難病治療薬として開発しており、「ウイルス創薬企業」として成長を目指しています。今後は、各パイプラインの製薬企業へのライセンス活動を推進して商業化を早め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。 これまで当社は、パイプラインの開発を一定段階まで進め、その後の開発や販売は製薬企業へライセンスを許諾し、その対価として契約一時金やマイルストーン、ロイヤリティ収入などを得るというライセンス型事業モデルを展開していました。しかし、今後は上記のライセンス型事業モデルに加えて、一部のパイプラインに関しては、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルの展開も検討し、「ライセンス型事業モデルと製薬会社型事業モデルのハイブリッド」で事業を展開してゆく方針です。 「オンコリスなしでは医療現場が、ひいては患者様が困る」そういう存在感ある創薬を展開することを基本方針とし、いち早く医療現場の課題解決に貢献してゆきたいと考えています。なお、当社は、創薬開発プランを創出し、その製造、前臨床試験及び臨床試験をアウトソーシングするファブレス経営による医薬品開発を行い、開発期間の効率化・開発経費の最適化を図っています。当社の事業系統図は以下のとおりです。 [事業系統図] 注:上記のライセンス型事業モデルに加えて、一部のパイプラインに関しては、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルの展開も行っていきます。 (1) 主要なパイプライン当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。特にがん領域では、がんのウイルス療法テロメライシンの開発を進めるとともに、がんの超早期発見又は予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンを揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。 ① がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)テロメライシンは、5型のアデノウイルス[*1]を遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスです。5型のアデノウイルスは風邪の症状を引き起こすもので、自然界にも存在します。テロメライシンは、細胞の寿命を決定づけるテロメラーゼの活性が高いがん細胞で特異的に増殖することによって、がん細胞を破壊します。一方、がん細胞と比較してテロメラーゼ活性が低い正常な細胞の中では、増殖能力が極めて低いため、臨床的な安全性を保つことが期待されています。また、用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、さらに強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a) 対象疾患食道がんなどの固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況テロメライシンは、2006年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、2012年4月に米国での特許(米国特許第8163892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。(特許取得済みの国)日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダc) アライアンスの状況2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結しました。また、2019年4月に中外製薬と日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス及び日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション契約を締結しましたが、2021年12月に同ライセンスの解消契約を締結しました。なお、2016年11月に江蘇恒瑞医薬股份有限公司(中国 以下「ハンルイ社」)と中国・香港・マカオでの研究・開発・製造・販売権に関するライセンス契約を締結しましたが、2020年6月に契約を合意解消しました。d) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。なお、食道がんへの開発に対して、2019年4月に日本国内において厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。また、2020年6月に米国においてオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)の指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。e) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造しております。f) 販売体制大手製薬企業等とライセンス契約又は販売提携契約を締結し、契約先が販売する予定です。 <テロメライシンの構造> テロメライシンは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、さらに同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。テロメライシンのDNA構造は以下のとおりです。 ② 核酸系逆転写酵素阻害剤OBP-601(censavudine)OBP-601(censavudine)は、神経変性疾患への応用が新たに期待される核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)です。レトロトランスポゾン[*4]というヒトの遺伝子がRNAからDNAに逆転写されて、DNAの様々な場所に入り込んでしまうことで神経組織の炎症反応が起こり、その結果、筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)などの神経変性疾患を引き起こされることが近年明らかになりました。OBP-601は、このRNAからDNAへの逆転写を司る酵素を抑制する作用を有しており、これまでにない新しい作用機序をもった神経変性疾患の治療薬になることが期待されています。 a) 対象疾患PSP(進行性核上性麻痺)、C9-ALS(筋萎縮性側索硬化症)、FTD(前頭側頭型認知症)などの神経変性疾患を対象にします。b) 技術導入の概況当社は、OBP-601(censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)と独占的ライセンス導入契約を2006年6月に締結しています。また、神経変性疾患治療薬の開発を目的に設立されたTransposon社と、2020年6月に全世界における再許諾権付き独占的ライセンス導出契約を締結しました。今後の開発は、Transposon社が全額費用負担し、欧米を中心に実施します。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、製造はライセンス導出先のTransposon社が行います。e) 販売体制Transposon社が第三者である大手製薬企業等へOBP-601のライセンスを再許諾した場合、ライセンス再許諾先が販売を行います。 <OBP-601(censavudine)の作用メカニズム> ③ 新型コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011OBP-2011は、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を強く阻害する新規メカニズムを持った治療薬として開発を行っています。これまでに行われた前臨床試験の結果から、経口投与が可能であることが確認され、探索的毒性試験や探索的遺伝毒性試験においても問題となるような検査の異常は認められていません。また、アルファ株・ベータ株・ガンマ株・デルタ株・オミクロン株などの変異型コロナウイルス株に対しても、野生型と同等の活性を示すことが細胞培養系の実験で確認されています。今後は、開発優先順位を引き下げ、メカニズム解明を進めます。 a) 対象疾患新型コロナウイルス感染症(COVID-19)及び他のウイルスを対象に効果を探っています。b) 技術導入の概況 当社は、2020年6月に鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結しました。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制 当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制 大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行う予定です。 ④ 次世代テロメライシンOBP-702 OBP-702は、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子p53を搭載した次世代テロメライシンです。p53遺伝子[*5]の欠失又は変異によって細胞ががん化する割合は、がん全体の30~40%になると報告されています。OBP-702はがん細胞に投与されると、ウイルス自体ががん細胞のテロメラーゼ活性を介して増殖し、がん細胞を破壊するのに加え、同時にp53蛋白をがん細胞の中で生成させることにより、さらに強力にがん細胞をアポトーシスさせる機能を有しています。これまでの非臨床試験の結果では、テロメライシンと比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆され、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果が示されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、テロメライシンで効果が得られにくかったがん種等、アンメット・メディカル・ニーズを充足させる治療薬を目指して開発してゆきます。 a) 対象疾患膵臓がんなどの各種固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況当社は、2015年に次世代テロメライシンOBP-702をパイプラインに加えています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売する予定です。 <次世代テロメライシンOBP-702の構造> ⑤ 検査薬 テロメスキャン(OBP-401)テロメスキャンは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <テロメスキャンの構造模式図>テロメスキャンを用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cell)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a) 技術導入の概況テロメスキャン(OBP-401)は、テロメライシンと同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。今後、AIを用いた検査系の立ち上げを行い、検査感度・精度及びスループットの向上を目指してゆきます。 テロメスキャンF35(OBP-1101)は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。b) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。c) アライアンスの状況2015年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA Inc.(米国、以下「Liquid Biotech社」)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結しましたが、2021年12月に同契約を解消しました。d) 製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。e) 販売体制国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬企業へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供してゆきます。 ⑥ HDAC阻害剤OBP-801OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)阻害剤[*6]です。OBP-801は、正常細胞のがん化に強く関係しているHDACという酵素の活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制や細胞死などを誘導する効果を示すことを期待して開発されていました。しかし、米国での各種固形がんを対象にしたPhase1臨床試験で用量制限毒性が生じたため新規患者様の組込みを中断しています。現在、眼科領域への応用が試みられています。 a) 対象疾患 眼科疾患領域への応用b) 技術導入の概況 当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。 d) 製造体制 当社は本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 e) 販売体制 将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1] アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。 [*2] E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。 [*3] IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。 [*4] レトロトランスポゾンヒトゲノムの約40%を占めており、逆転写酵素などの作用によってレトロトランスポゾンの複製が行われ、遺伝子内にランダムに転移が起きます。その結果、遺伝子の突然変異が起こりやすくなり、様々な病気が発生すると考えられています。このレトロトランスポゾンがランダムに複数コピーされてくると、様々な反応によりインターフェロンが産生され、神経細胞を傷つけることによりALSなどの神経変性疾患が発生すると考えられています。 [*5] p53遺伝子がん抑制遺伝子の中でも代表的な遺伝子の1つであり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。 [*6] ヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤染色体を構成するタンパク質を脱アセチル化することで染色体構造を緊密にし、遺伝子の発現を抑制する酵素を阻害する薬の総称です。
FY2021|7,003 文字|出典 docID: S100NSY7
3 【事業の内容】当社は創薬バイオベンチャー企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性の高いウイルス遺伝子改変がん治療薬、重症感染症治療薬及びがん検査薬などの開発と事業化を推進しています。特に、がんのウイルス療法テロメライシン、次世代テロメライシンOBP-702、がんの早期発見・再発予測を行うテロメスキャンを揃え、がんの発見から治療までを網羅する「がん領域」と、コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症感染症領域」でパイプラインを構築し、さらにこれまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601を神経難病治療薬として開発しており、「ウイルス創薬企業」として成長を目指しています。今後は、各パイプラインの製薬企業へのライセンス活動を推進して商業化を早め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。「オンコリスなしでは医療現場が、ひいては患者様が困る」そういう存在感ある創薬を展開することを基本方針とし、いち早く医療現場の課題解決に貢献してゆきたいと考えています。なお、当社は、創薬プランを開発し、その製造、前臨床試験及び臨床試験をアウトソーシングするファブレス経営による医薬品開発を行い、開発期間の短縮化・開発経費の最適化を図っています。当社の事業系統図は以下の通りです。また、当社は従来「医薬品事業」、「検査事業」の2つを報告セグメントとしておりましたが、当社売上高の99%以上が医薬品事業により構成されており、今後も継続が見込まれることから、当事業年度より業績管理の方法を変更し、「創薬事業」の単一セグメントへ変更いたしました。このためセグメント別の記載を省略しております。 [事業系統図] (1) 主要なパイプライン当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。特にがん領域では、がんのウイルス療法テロメライシンの開発を進めると共に、がんの超早期発見または予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンを揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。 ① がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)テロメライシンは、5型のアデノウイルス[*1]を遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスです。5型のアデノウイルスは風邪の症状を引き起こすもので、自然界にも存在します。テロメライシンは、細胞の寿命を決定づけるテロメラーゼの活性が高いがん細胞で特異的に増殖することによって、がん細胞を破壊します。一方、がん細胞と比較してテロメラーゼ活性が低い正常な細胞の中では、増殖能力が極めて低いため、臨床的な安全性を保つことが期待されています。また、用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、さらに強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a) 対象疾患食道がんなどの固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況テロメライシンは、2006年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、2012年4月に米国での特許(米国特許第8163892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。(特許取得済みの国)日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダc) アライアンスの状況2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結しました。また、2019年4月に中外製薬と日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス及び日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション契約を締結しましたが、2021年12月に同ライセンスの解消契約を締結しました。なお、2016年11月に江蘇恒瑞医薬股份有限公司(中国 以下「ハンルイ社」)と中国・香港・マカオでの研究・開発・製造・販売権に関するライセンス契約を締結しましたが、2020年6月に契約を合意解消しました。d) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。なお、食道がんへの開発に対して、2019年4月に日本国内において厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。また、2020年6月に米国においてオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)の指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。e) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造しております。f) 販売体制大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売する予定です。 <テロメライシンの構造> テロメライシンは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、さらに同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。テロメライシンのDNA構造は以下の通りです。 ② 新型コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011OBP-2011は、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を強く阻害する新規メカニズムを持った治療薬として開発を行っています。これまでに行われた前臨床試験の結果から、経口投与が可能であることが確認され、探索的毒性試験や探索的遺伝毒性試験においても問題となるような検査の異常は認められていません。また、アルファ株・ベータ株・ガンマ株・デルタ株・オミクロン株などの変異型コロナウイルス株に対しても、野生型と同等の活性を示すことが細胞培養系の実験で確認されています。今後もさらに前臨床試験とGMP製造を進め、早期臨床入りを目指してゆきます。 a) 対象疾患新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を対象としています。b) 技術導入の概況 当社は、2020年6月に鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結しました。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制 当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制 大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行う予定です。 ③ 核酸系逆転写酵素阻害剤OBP-601(Censavudine)OBP-601(censavudine)は、神経変性疾患への応用が新たに期待される核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)です。レトロトランスポゾン[*4]というヒトの遺伝子がRNAからDNAに逆転写されて、DNAの様々な場所に入り込んでしまうことで神経組織の炎症反応が起こり、その結果、筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)などの神経変性疾患を引き起こされることが近年明らかになりました。OBP-601は、このRNAからDNAへの逆転写を司る酵素を抑制する作用を有しており、これまでにない新しい作用機序をもった神経変性疾患の治療薬になることが期待されています。 a) 対象疾患PSP(進行性核上性麻痺)、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、FTD(前頭側頭型認知症)などの神経変性疾患を対象にします。b) 技術導入の概況当社は、OBP-601(censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)と独占的ライセンス導入契約を2006年6月に締結しています。また、神経変性疾患治療薬の開発を目的に設立されたTransposon社と、2020年6月に全世界における再許諾権付き独占的ライセンス導出契約を締結しました。今後の開発は、Transposon社が全額費用負担し、欧米を中心に実施します。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、製造はライセンス導出先のTransposon社が行います。e) 販売体制Transposon社が第三者である大手製薬企業等へOBP-601のライセンスを再許諾した場合、ライセンス再許諾先が販売を行います。 <OBP-601(Censavudine)の作用メカニズム> ④ 次世代テロメライシンOBP-702 OBP-702は、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子p53を搭載した次世代テロメライシンです。p53遺伝子[*5]の欠失または変異によって細胞ががん化する割合は、がん全体の30~40%になると報告されています。OBP-702はがん細胞に投与されると、ウイルス自体ががん細胞のテロメラーゼ活性を介して増殖し、がん細胞を破壊するのに加え、同時にp53蛋白をがん細胞の中で生成させることにより、更に強力にがん細胞をアポトーシスさせる機能を有しています。これまでの非臨床試験の結果では、テロメライシンと比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆され、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果が示されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、テロメライシンで効果が得られにくかったがん種等、アンメット・メディカル・ニーズを充足させる治療薬を目指して開発してゆきます。 a) 対象疾患膵臓がんなどの各種固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況当社は、2015年に次世代テロメライシンOBP-702をパイプラインに加えています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売する予定です。 <次世代テロメライシンOBP-702の構造> ⑤ 検査薬 テロメスキャン(OBP-401)テロメスキャンは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <テロメスキャンの構造模式図>テロメスキャンを用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cell)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a) 技術導入の概況テロメスキャン(OBP-401)は、テロメライシンと同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。今後、AIを用いた検査系の立ち上げを行い、検査感度・精度及びスループットの向上を目指してゆきます。 テロメスキャンF35(OBP-1101)は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。b) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。c) アライアンスの状況2015年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA Inc.(米国、以下「Liquid Biotech社」)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結しましたが、2021年12月に同契約を解消しました。d) 製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。e) 販売体制国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬企業へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供してゆきます。 ⑥ HDAC阻害剤OBP-801OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)阻害剤[*6]です。OBP-801は、正常細胞のがん化に強く関係しているHDACという酵素の活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制や細胞死などを誘導する効果を示すことを期待して開発されていました。しかし、米国での各種固形がんを対象にしたPhase1臨床試験で用量制限毒性が生じたため新規患者様の組込みを中断しています。現在、眼科領域への応用が試みられています。 a) 対象疾患 眼科疾患領域への応用b) 技術導入の概況 当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。 c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。 d) 製造体制 当社は本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 e) 販売体制 将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1] アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。 [*2] E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。 [*3] IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。 [*4] レトロトランスポゾンヒトゲノムの約40%を占めており、逆転写酵素などの作用によってレトロトランスポゾンの複製が行われ、遺伝子内にランダムに転移が起きます。その結果、遺伝子の突然変異が起こりやすくなり、様々な病気が発生すると考えられています。このレトロトランスポゾンがランダムに複数コピーされてくると、様々な反応によりインターフェロンが産生され、神経細胞を傷つけることによりALSなどの神経変性疾患が発生すると考えられています。 [*5] p53遺伝子がん抑制遺伝子の中でも代表的な遺伝子の1つであり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。 [*6] ヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤染色体を構成するタンパク質を脱アセチル化することで染色体構造を緊密にし、遺伝子の発現を抑制する酵素を阻害する薬の総称です。
FY2020|6,955 文字|出典 docID: S100L1LQ
3 【事業の内容】当社の事業セグメントは、「医薬品事業」と「検査事業」の二つです[*]。「医薬品事業」は、医薬品の研究・開発・製造・販売を事業目的とし、「検査事業」は、検査薬の研究・開発・製造・販売を事業目的としています。当社は、未来のがん治療にパワーを与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくことをビジョンとしています。 医薬品事業においては、がんや重症感染症などの難病を対象に安全で有効な新薬を創出すること、検査事業においてはウイルスの遺伝子改変技術を活かしたがん検査薬の提供を基本的な事業方針としています。 なお、医薬品事業及び検査事業ともにアウトソーシングを積極的に活用することで、開発期間の短縮化・開発経費の最適化を図っています。当社の事業系統図は以下の通りです。 [事業系統図] [*] 当社は、これまで、「医薬品事業」、「検査事業」の2つを報告セグメントとして設定し、事業活動を推進してまいりましたが、2020年11月6日開催の取締役会において、2021年1月1日より両報告セグメントを廃止し、「創薬事業」の単一セグメントへ変更することを決定しております。 (1) 子会社の設立医薬品事業の研究開発活動を加速させることを目的として、2020年4月に当社100%子会社OPA社を設立しました。OPA社は米国カリフォルニア州を事業拠点とし、主として各パイプラインの非臨床試験並びにウイルス製造に関する業務を担当します。なお、OPA社の社長には、腫瘍溶解ウイルスの研究開発に30年以上の経験を持つFrank Tufaro博士(元DNAtrix Inc. 代表取締役社長)が就任しました。 (2) 主要なパイプライン当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。特にがん領域では、がんのウイルス療法テロメライシンの開発を進めると共に、がんの超早期発見または予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンを揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。 ① がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)テロメライシンは、5型のアデノウイルス[*1]を遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスです。5型のアデノウイルスは風邪の症状を引き起こすもので、自然界にも存在します。テロメライシンは、細胞の寿命を決定づけるテロメラーゼの活性が高いがん細胞で特異的に増殖することによって、がん細胞を破壊します。一方、がん細胞と比較してテロメラーゼ活性が低い正常な細胞の中では、増殖能力が極めて低いため、臨床的な安全性を保つことが期待されています。また、用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、さらに強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a) 対象疾患食道がん・肝細胞がんなどの固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況テロメライシンは、2006年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、2012年4月に米国での特許(米国特許第8163892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。(特許取得済みの国)日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダc) アライアンスの状況2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結しました。2019年4月に中外製薬と日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス及び日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション契約を締結しました。なお、2016年11月に江蘇恒瑞医薬股份有限公司(中国 以下「ハンルイ社」)と中国・香港・マカオでの研究・開発・製造・販売権に関するライセンス契約を締結しましたが、2020年6月に契約を合意解消しました。d) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。なお、食道がんへの開発に対して、2019年4月に日本国内において厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。また、2020年6月に米国においてオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)の指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。e) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造しております。f) 販売体制上記「c)アライアンスの状況」に記載の通り、中外製薬とライセンス契約を締結しました。そのため製品上市後は、中外製薬が販売します。 <テロメライシンの構造> テロメライシンは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、さらに同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。テロメライシンのDNA構造は以下の通りです。 ② 次世代テロメライシンOBP-702 OBP-702は、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子p53を搭載した次世代テロメライシンです。p53遺伝子[*4]の欠失または変異によって細胞ががん化する割合は、がん全体の30~40%になると報告されています。OBP-702はがん細胞に投与されると、ウイルス自体ががん細胞のテロメラーゼ活性を介して増殖し、がん細胞を破壊するのに加え、同時にp53蛋白をがん細胞の中で生成させることにより、更に強力にがん細胞をアポトーシスさせる機能を有しています。これまでの非臨床試験の結果では、テロメライシンと比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆され、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果が示されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、テロメライシンで効果が得られにくかったがん種等、アンメット・メディカル・ニーズを充足させる治療薬を目指して開発してゆきます。 a) 対象疾患骨肉腫、直腸がんや膵臓がんなどの各種固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況当社は、2015年に次世代テロメライシンOBP-702をパイプラインに加えています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売する予定です。 <次世代テロメライシンOBP-702の構造> ③ 新型コロナウイルス感染症治療薬OBP-2001及びその関連化合物OBP-2001は、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を強く阻害する化合物です。既に承認済みの新型コロナウイルス感染症治療薬レムデシビル(ギリアド社)と同等以上の活性を示すことを、同じ実験系での比較実験において、国立大学法人鹿児島大学が特定し、当社がその権利を獲得しました。今後、開発化合物を絞り込み前臨床試験やGMP製造を進め、早期臨床入りを目指してゆきます。 a) 対象疾患新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を対象としています。b) 技術導入の概況 当社は、2020年6月に鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結しました。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制 当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制 将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。 ④ 核酸系逆転写酵素阻害剤OBP-601(Censavudine)OBP-601(Censavudine)は、神経変性疾患への応用が新たに期待される核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)です。レトロトランスポゾン[*5]というヒトの遺伝子がRNAからDNAに逆転写されて、DNAの様々な場所に入り込んでしまうことで神経組織の炎症反応が起こり、その結果、筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)などの神経変性疾患を引き起こされることが近年明らかになりました。OBP-601は、このRNAからDNAへの逆転写を司る酵素を抑制する作用を有しており、これまでにない新しい作用機序をもった神経変性疾患の治療薬になることが期待されています。 a) 対象疾患ALSなどの神経変性疾患が主な対象となります。b) 技術導入の概況当社は、OBP-601(Censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)と独占的ライセンス導入契約を2006年6月に締結しています。また、神経変性疾患治療薬の開発を目的に設立されたTransposon社と、2020年6月に全世界における再許諾権付き独占的ライセンス導出契約を締結しました。今後の開発は、Transposon社が全世界で実施します。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、製造はライセンス導出先のTransposon社が行います。e) 販売体制Transposon社が第三者である大手製薬企業等へOBP-601のライセンスを再許諾した場合、ライセンス再許諾先が販売を行います。 <OBP-601(Censavudine)の作用メカニズム> ⑤ HDAC阻害剤OBP-801OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)阻害剤[*6]です。OBP-801は、正常細胞のがん化に強く関係しているHDACという酵素の活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制や細胞死などを誘導する効果を示すことを期待して開発されていました。しかし、米国での各種固形がんを対象にしたPhase1臨床試験で用量制限毒性が生じたため新規患者様の組込みを中断しています。現在、眼科領域への応用が試みられています。 a) 対象疾患 各種固形がん、眼科疾患領域への応用b) 技術導入の概況 当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。 c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。 d) 製造体制 当社は本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 e) 販売体制 将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。 ⑥ 検査薬 テロメスキャン(OBP-401)テロメスキャンは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <テロメスキャンの構造模式図>テロメスキャンを用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cell)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a) 技術導入の概況テロメスキャン(OBP-401)は、テロメライシンと同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。今後、AIを用いた検査系の立ち上げを行い、検査感度・精度及びスループットの向上を目指してゆきます。 テロメスキャンF35(OBP-1101)は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。b) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。c) アライアンスの状況2015年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたリキッド社(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア市)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結いたしました。今後、欧州・アジア圏へライセンスエリアを拡大していくことを目指しています。 当社は、これらのライセンス契約に伴う対価として、契約一時金、マイルストーン収入やがん検査キットの販売収入を受け取る権利を有しております。d) 製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。e) 販売体制国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬企業へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供してゆきます。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1] アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。 [*2] E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。 [*3] IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。 [*4] p53遺伝子がん抑制遺伝子の中でも代表的な遺伝子の1つであり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。 [*5] レトロトランスポゾンヒトゲノムの約40%を占めており、逆転写酵素などの作用によってレトロトランスポゾンの複製が行われ、遺伝子内にランダムに転移が起きます。その結果、遺伝子の突然変異が起こりやすくなり、様々な病気が発生すると考えられています。このレトロトランスポゾンがランダムに複数コピーされてくると、様々な反応によりインターフェロンが産生され、神経細胞を傷つけることによりALSなどの神経変性疾患が発生すると考えられています。 [*6] ヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤染色体を構成するタンパク質を脱アセチル化することで染色体構造を緊密にし、遺伝子の発現を抑制する酵素を阻害する薬の総称です。
FY2019|8,034 文字|出典 docID: S100IBOW
3 【事業の内容】当社の事業セグメントは、「医薬品事業」と「検査事業」の二つです。「医薬品事業」は、医薬品の研究・開発・製造・販売を事業目的とし、「検査事業」は、検査薬の研究・開発・製造・販売を事業目的としています。当社は、未来のがん治療にパワーを与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくことをビジョンとしています。 医薬品事業においては、がんや重症感染症などの難病を対象に安全で有効な新薬を創出すること、検査事業においてはウイルスの遺伝子改変技術を活かしたがん検査薬の提供を基本的な事業方針としています。 なお、医薬品事業及び検査事業ともにアウトソーシングを積極的に活用することで、開発期間の短縮化・開発経費の最適化を図っています。当社の事業系統図は以下の通りです。 [事業系統図] (1) 当社の収益モデルと事業領域① 効率化経営モデル当社では'Planning & Operation'を基軸に開発体制を構築しています。すなわち、創薬プランを企画し、その製造、前臨床試験及び臨床試験をアウトソーシングする、いわゆるファブレス経営[*1]による研究開発を行っており、これにより経費効率化・期間短縮を図っています。 〔本項の用語解説〕[*1] ファブレス経営ファブレス経営(Fabless Business)とは、自社で独自に企画・設計した製品を、他社に委託し製造する経営手法をいいます。生産設備のようなストックをできるだけ持たない手法であることからフロー型経営とも呼ばれる、製造業におけるアウトソーシングの一形態です。 ② 医薬品事業の収益モデルと事業展開医薬品事業においては、「がん及び重症感染症」などの難病を対象とする医薬品候補を大学等の研究機関や企業から導入し、当社で臨床開発の初期段階をアウトソーシングによって推進しています。その品目の製品的価値の初期評価であるProof of Concept(POC)を行った上で、大手製薬企業・バイオ企業等にライセンス許諾を行い、契約一時金、開発進捗に応じたマイルストーン収入、上市後のロイヤリティ収入を獲得する収益モデルを構築しています。一般的な医薬品研究開発プロセスとの関係は以下の通りです。 [医薬品研究開発の一般的なプロセス] [*1] 探索新薬のもとになる候補化合物を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの中から、将来薬になる可能性がある新しい物質(成分)を発見し、化学的に作り出す段階です。[*2] 前臨床試験基礎研究で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物化学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる試験です。化学的試験として、製造方法、原薬・製剤の規格・安定性などを調べる試験です。[*3] Phase I臨床試験第1相臨床試験とも呼ばれ、治療効果を見ることを主目的とせず、少数の健康な志願者を対象に、試験薬を初めてヒトに投与する試験で、主に安全性や体内における薬の分布や代謝を確認する試験です。[*4] Phase Ⅱ臨床試験第2相臨床試験とも呼ばれ、限定された患者様に試験薬を投与し有効性と安全性を検討し、用法・用量の推定とPhase Ⅲ臨床試験のエンドポイントを決定することを目的とした試験です。Phase Ⅱa臨床試験は探索的試験とも言われ、Phase Ⅱb臨床試験と区分されることもあります。[*5] Phase Ⅲ臨床試験第3相臨床試験とも呼ばれ、多施設にわたる多数の患者様に試験薬を投与する大規模な試験で、実際に市場で用いられる場合の有効性・安全性及び有用性を評価することを主目的とする試験です。検証的試験とも呼ばれ、承認申請に向けた効能・効果、用法・用量、使用上の注意等を最終的に決めることを目的とした試験です。[*6] 申請・承認臨床試験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、各国の規制当局に製造販売承認申請を行います。数段階の審査を受けた後に薬として承認され、市場に出ることになります。 ③ 検査事業の収益モデルと事業展開検査事業では、遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権を製薬会社等に付与するライセンス収入や、検査会社・医療機関等へのがん検査及び検査薬販売により収入を得ています。遺伝子改変ウイルス検査薬を用いた検査法は、これまでのバイオマーカーでは出来なかったがん患者様の予後検査(再発予測)やがんの超早期発見に寄与する可能性があります。さらに、がん組織の生検(針刺し採取)をすることなしにがん組織の性質や遺伝子情報を知る事が可能になると考えられるため、患者様の予後予測や適正な医薬品の選定に寄与するがん検査法として期待されています。 当社は、2015年11月にLiquid Biotech USA, Inc.(本社:米国ペンシルベニア州)と提携し、米国での新たな検査プラットフォームの確立とマーケットの獲得を目指しています。 (2) 主要なパイプライン当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬の開発を行い、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。 特にがん領域では、がんのウイルス療法テロメライシンⓇの開発を進めると共に、がんの超早期発見または予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンを揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。 ① がんのウイルス療法テロメライシンⓇ (OBP-301)テロメライシンⓇは、がん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊することができるように遺伝子改変された5型のアデノウイルス[*1]です。5型のアデノウイルス自体は風邪の症状を引き起こすもので、自然界の空気中にも存在します。 テロメライシンⓇは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖することでがん細胞を溶解させる強い抗腫瘍活性を示すことや、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いということで、臨床的な安全性を保つことが期待されています。用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、更に強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a) 対象疾患食道がん・肝細胞がんなどの固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況テロメライシンⓇは、2006年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、2012年4月に米国での特許(米国特許第8,163,892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。(特許取得済みの国)日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダc) アライアンスの状況2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結致しました。現在同社とともに、テロメライシンⓇの臨床試験を進めています。 2016年11月にはハンルイ社(中国)との間で、中国・香港・マカオにおけるライセンス契約を締結し、ハンルイ社による中国での本剤の研究開発が開始されました。 2019年4月に中外製薬と日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス並びに、日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション契約を締結致しました。当社は、ハンルイ社および中外製薬との契約により、オプション権を含めると全世界の導出が完了致しました。d) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。e) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。f) 販売体制上記「c)アライアンスの状況」に記載の通り、ハンルイ社及び中外製薬とライセンス契約を契約しました。そのため製品上市後は、両社にて販売します。 <テロメライシンⓇの構造> テロメライシンⓇは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、更に同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。テロメライシンⓇのDNA構造は以下の通りです。 ② 次世代テロメライシンOBP-702 OBP-702は、がんのウイルス療法「テロメライシン(OBP-301)」に、がん抑制遺伝子p53を搭載した次世代テロメライシンです。がん抑制遺伝子p53による「遺伝子治療」とテロメライシン(OBP-301)の「腫瘍溶解機能」を組み合わせた2つの抗腫瘍効果を持つウイルスとして開発を進めています。 がん患者様全体の内、30%~40%でp53遺伝子[*4]の変異または欠損が認められています。p53遺伝子変異・欠損が認められるがん患者様に対して、OBP-702を投与することで、テロメライシン(OBP-301)の特徴であるテロメラーゼ陽性のがん細胞において特異的に増殖して破壊し、同時にがん細胞の中で発現されたp53蛋白質ががん細胞を自然死(アポトーシス)させる機能を有しています。これまでの前臨床試験の結果では、テロメライシン(OBP-301)と比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、テロメライシン(OBP-301)で効果が得られにくかったがん種等、アンメットメディカルニーズを充実させる治療薬へと開発してゆきます。 a) 対象疾患各種固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況当社は、2015年に次世代テロメライシンOBP-702をパイプラインに加えています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造する予定です。e) 販売体制大手製薬会社などにライセンスし、導出先が販売してまいります。 <次世代テロメライシンOBP-702の構造> ③ HDAC阻害剤OBP-801OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤です。本剤は、HDACの活性を特異的かつ強力に阻害することで、がん細胞におけるがん抑制遺伝子[*5]の発現を促し、がん細胞の増殖抑制や細胞死を誘導するなどの抗腫瘍効果を示すことを期待していました。しかし、OBP-801は米国での各種固形がんを対象にしたPhase I臨床試験で用量制限毒性が生じたため、現在新規患者様の組込みを中断し、固形がんでの開発を見直しています。また、眼科領域への応用を検討しています。a) 対象疾患 OBP-801は、眼科疾患領域への応用を検討しています。 b) 技術導入の概況 当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。 c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。 d) 製造体制 当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 e) 販売体制 将来的に大手製薬企業等へのライセンス導出し、導出先が販売を行います。 ④ HIV感染症治療薬OBP-601(Censavudine)OBP-601(Censavudine)は、HIV[*6]の複製に必須である逆転写酵素を阻害することを作用機序とする、新規のHIV感染症治療薬です。 当社のOBP-601(Censavudine)は、下図の通り細胞内に侵入したHIVウイルスの持つRNAが細胞内でDNAに逆転写される時に作用する酵素の働きを阻害することで、HIVの複製の第一段階を阻害します。しかし、依然としてHIVマーケットが過飽和状態であり新規ライセンスの可能性は非常に低下しています。今後、新規ライセンス契約の締結が不可能と判断した場合には、Yale大学へOBP-601の権利を返還し、当社経営資源を有効に活用するために、パイプラインの選択と集中を進めていきます。 <OBP-601(Censavudine)の作用メカニズム> a) 対象疾患OBP-601(Censavudine)は、HIV感染症等を対象疾患としています。b) 技術導入の概況当社は、OBP-601(Censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)との独占的ライセンス契約を2006年6月に締結しています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社では、OBP-601(Censavudine)を自社製造しておらず、治験薬は他社に委託して製造しております。e) 販売体制大手製薬会社などにライセンスし、導出先が販売してまいります。 ⑤ 検査薬 テロメスキャンテロメスキャンは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンⓇにクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <テロメスキャンの構造模式図> テロメスキャンを用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a) 技術導入の概況OBP-401(テロメスキャン)は、テロメライシンⓇと同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。現在、国内外において特許出願中です。 OBP-1101(テロメスキャンF35)は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。 また、2013年2月15日付で、当社は、Geron Corporation(米国)と全世界におけるヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターの特許についてがん検査用途での実施権の許諾に関する契約を締結していますが、2020年2月に本契約を終了しています。b) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。c) アライアンスの状況2015年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA, Inc.(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア市)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結いたしました。今後、欧州・アジア圏へライセンスエリアを拡大していくことを目指しています。 当社は、これらのライセンス契約に伴う対価として、契約一時金、マイルストーン収入やがん検査キットの販売収入を受け取る権利を有しております。d) 製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。e) 販売体制国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬会社へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供していきます。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1] アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。[*2] E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。[*3] IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。[*4] p53遺伝子p53遺伝子はがん抑制遺伝子であり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。[*5] がん抑制遺伝子がん抑制遺伝子は私たちの正常細胞にも存在しており、細胞の増殖を抑制したり、細胞のDNAに生じた傷を修復したり、細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導したりする働きをします。DNAの傷が蓄積することによるがん化をDNAの修復によって抑制したり、異常細胞の増殖を感知してその細胞に細胞死を誘導するなど、がん抑制遺伝子はがんの発生を抑制します。がん抑制遺伝子の突然変異(DNAの変化)により、がんの発生をみることがあります。がん抑制遺伝子の突然変異は、遺伝により先天的に変異を受け継ぐ場合もあれば、遺伝に関係なく後天的に発生する場合もあります。主要ながん抑制遺伝子として、p25を初めとしてp16、p53、Rb、BRCA1などがあります。[*6] HIVHIV(ヒト免疫不全ウイルス=Human Immunodeficiency Virus)は、人の免疫細胞に感染し免疫細胞を破壊して、後天的に免疫不全を発症させるウイルスです。俗称的に「エイズウイルス」と呼ばれることがありますが、正式な名称ではありません。
FY2018|6,968 文字|出典 docID: S100FIR2
3 【事業の内容】当社の事業セグメントは、「医薬品事業」と「検査事業」の二つです。「医薬品事業」は、医薬品の研究・開発・製造・販売を事業目的とし、「検査事業」は、検査薬の研究・開発・製造・販売を事業目的としています。当社は、未来のがん治療にパワーを与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくことをビジョンとしています。 医薬品事業においては、がんや重症感染症などの難病を対象に安全で有効な新薬を創出すること、検査事業においてはウイルスの遺伝子改変技術を活かしたがん検査薬の提供を基本的な事業方針としています。 なお、医薬品事業及び検査事業ともにアウトソーシングを積極的に活用することで、開発期間の短縮化・開発経費の最適化を図っています。当社の事業系統図は以下の通りです。 [事業系統図] (1) 当社の収益モデルと事業領域① 効率化経営モデル当社では'Planning & Operation'を基軸に開発体制を構築しています。すなわち、創薬プランを企画し、その製造、前臨床試験及び臨床試験をアウトソーシングする、いわゆるファブレス経営[*1]による研究開発を行っており、これにより経費効率化・期間短縮を図っています。 〔本項の用語解説〕[*1] ファブレス経営ファブレス経営(Fabless Business)とは、自社で独自に企画・設計した製品を、他社に委託し製造する経営手法をいいます。生産設備のようなストックをできるだけ持たない手法であることからフロー型経営とも呼ばれる、製造業におけるアウトソーシングの一形態です。 ② 医薬品事業の収益モデルと事業展開医薬品事業においては、「がん及び重症感染症」などの難病を対象とする医薬品候補を大学等の研究機関や企業から導入し、当社で臨床開発の初期段階をアウトソーシングによって推進しています。その品目の製品的価値の初期評価であるProof of Concept(POC)を行った上で、大手製薬企業・バイオ企業等にライセンス許諾を行い、契約一時金、開発進捗に応じたマイルストーン収入、上市後のロイヤリティ収入を獲得する収益モデルを構築しています。一般的な医薬品研究開発プロセスとの関係は以下の通りです。 [医薬品研究開発の一般的なプロセス] [*1] 探索新薬のもとになる候補化合物を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの中から、将来薬になる可能性がある新しい物質(成分)を発見し、化学的に作り出す段階です。[*2] 前臨床試験基礎研究で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物化学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる試験です。化学的試験として、製造方法、原薬・製剤の規格・安定性などを調べる試験です。[*3] Phase I臨床試験第1相臨床試験とも呼ばれ、治療効果を見ることを主目的とせず、少数の健康な志願者を対象に、試験薬を初めてヒトに投与する試験で、主に安全性や体内における薬の分布や代謝を確認する試験です。[*4] Phase Ⅱ臨床試験第2相臨床試験とも呼ばれ、限定された患者に試験薬を投与し有効性と安全性を検討し、用法・用量の推定とPhase Ⅲ臨床試験のエンドポイントを決定することを目的とした試験です。Phase Ⅱa臨床試験は探索的試験とも言われ、Phase Ⅱb臨床試験と区分されることもあります。[*5] Phase Ⅲ臨床試験第3相臨床試験とも呼ばれ、多施設にわたる多数の患者に試験薬を投与する大規模な試験で、実際に市場で用いられる場合の有効性・安全性及び有用性を評価することを主目的とする試験です。検証的試験とも呼ばれ、承認申請に向けた効能・効果、用法・用量、使用上の注意等を最終的に決めることを目的とした試験です。[*6] 申請・承認臨床試験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、各国の規制当局に製造販売承認申請を行います。数段階の審査を受けた後に薬として承認され、市場に出ることになります。 ③ 検査事業の収益モデルと事業展開検査事業では、遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権を製薬会社等に付与するライセンス収入や、検査会社・医療機関等へのがん検査及び検査薬販売により収入を得ています。遺伝子改変ウイルス検査薬を用いた検査法は、これまでのバイオマーカーでは出来なかったがん患者の予後検査(再発予測)やがんの超早期発見に寄与する可能性があります。さらに、がん組織の生検(針刺し採取)をすることなしにがん組織の性質や遺伝子情報を知る事が可能になると考えられるため、患者様の予後予測や適正な医薬品の選定に寄与するがん検査法として期待されています。 当社は、平成27年11月にLiquid Biotech USA, Inc.(本社:米国ペンシルベニア州)と提携し、米国での新たな検査プラット・フォームの確立とマーケットの獲得を目指しています。 (2) 主要なパイプライン当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬の開発を行い、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。 特にがん領域では、がんのウイルス療法テロメライシンⓇの開発を進めると共に、がんの超早期発見または予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンを揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。 ① がんのウイルス療法テロメライシンⓇ (OBP-301)テロメライシンⓇは、がん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊することができるように遺伝子改変された5型のアデノウイルス[*1]です。5型のアデノウイルス自体は風邪の症状を引き起こすもので、自然界の空気中にも存在します。 テロメライシンⓇは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖することでがん細胞を溶解させる強い抗腫瘍活性を示すことや、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いということで、臨床的な安全性を保つことが期待されています。用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や化学療法剤との併用により、更に強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a) 対象疾患食道がん・肝細胞がん・メラノーマなどの固形がんを対象にします。 b) 技術導入の概況テロメライシンⓇは、平成18年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、平成24年4月に米国での特許(米国特許第8,163,892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。 (特許取得済みの国)日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダ c) アライアンスの状況平成20年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結致しました。現在同社とともに、テロメライシンⓇの臨床試験を進めています。 平成28年11月にはHengrui社(中国)との間で、中国におけるライセンス契約を締結し、Hengrui社による中国での本剤の研究開発が開始されました。 今後は、現在進捗中もしくは準備中の臨床試験において早期に臨床上の効果を確認した後、欧米及び国内の大手製薬企業へのライセンス導出を目指します。 d) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。 e) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 f) 販売体制将来的に大手製薬会社などにライセンス導出し、導出先が販売をする予定です。 <テロメライシンⓇの構造> テロメライシンⓇは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、更に同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。テロメライシンⓇのDNA構造は以下の通りです。 ② HDAC阻害剤OBP-801OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤です。本剤は、HDACの活性を特異的かつ強力に阻害することで、がん細胞におけるがん抑制遺伝子[*4]の発現を促し、がん細胞の増殖抑制や細胞死を誘導するなどの抗腫瘍効果を示すことを期待していました。しかし、OBP-801は米国での各種固形がんを対象にしたPhase I臨床試験で用量制限毒性が生じたため、現在新規患者の組込みを中断しています。今後は、緑内障手術後の瘢痕形成抑制や加齢黄班変性症治療薬への応用を目指し、前臨床試験を進める計画です。a) 対象疾患 OBP-801は、眼科疾患領域への応用を検討しています。 b) 技術導入の概況 当社は、平成21年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。 c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。 d) 製造体制 当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 e) 販売体制 将来的に大手製薬企業等へのライセンス導出し、導出先が販売を行います。 ③ HIV感染症治療薬OBP-601(Censavudine)OBP-601(Censavudine)は、HIV[*5]の複製に必須である逆転写酵素を阻害することを作用機序とする、新規のHIV感染症治療薬です。 当社のOBP-601(Censavudine)は、下図の通り細胞内に侵入したHIVウイルスの持つRNAが細胞内でDNAに逆転写される時に作用する酵素の働きを阻害することで、HIVの複製の第一段階を阻害します。 <OBP-601(Censavudine)の作用メカニズム> a) 対象疾患OBP-601(Censavudine)は、HIV感染症を対象疾患としています。b) 技術導入の概況当社は、OBP-601(Censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)との独占的ライセンス契約を平成18年6月に締結しています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社では、OBP-601(Censavudine)の自社製造しておらず、治験薬は他社に委託して製造しております。e) 販売体制大手製薬会社などにライセンスし、導出先が販売してまいります。 ④ 検査薬 テロメスキャンテロメスキャンは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンⓇにクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <テロメスキャンの構造模式図> テロメスキャンを用いた検査プラット・フォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がんや婦人科がん領域でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a) 技術導入の概況OBP-401(テロメスキャン)は、テロメライシンⓇと同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。現在、国内外において特許出願中です。 OBP-1101(テロメスキャンF35)は医薬基盤研究所より平成23年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。 また、平成25年2月15日付で、当社は、Geron Corporation(米国)と全世界におけるヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターの特許についてがん検査用途での実施権の許諾に関する契約を締結しています。b) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。c) アライアンスの状況当社は平成26年12月にWONIK CUBE Corp.(韓国)に対し、韓国での独占的使用権を付与するライセンス契約を締結いたしました。 また、平成27年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA, Inc.(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア市)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結いたしました。今後、欧州・アジア圏へライセンスエリアを拡大していくことを目指しています。 当社は、これらのライセンス契約に伴う対価として、契約一時金、マイルストーン収入やがん検査キットの販売収入を受け取る権利を有しております。d) 製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸検査センターにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。e) 販売体制国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬会社へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供していきます。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1] アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。[*2] E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。[*3] IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。[*4] がん抑制遺伝子がん抑制遺伝子は私たちの正常細胞にも存在しており、細胞の増殖を抑制したり、細胞のDNAに生じた傷を修復したり、細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導したりする働きをします。DNAの傷が蓄積することによるがん化をDNAの修復によって抑制したり、異常細胞の増殖を感知してその細胞に細胞死を誘導するなど、がん抑制遺伝子はがんの発生を抑制します。がん抑制遺伝子の突然変異(DNAの変化)により、がんの発生をみることがあります。がん抑制遺伝子の突然変異は、遺伝により先天的に変異を受け継ぐ場合もあれば、遺伝に関係なく後天的に発生する場合もあります。主要ながん抑制遺伝子として、p25を初めとしてp16、p53、Rb、BRCA1などがあります。[*5] HIVHIV(ヒト免疫不全ウイルス=Human Immunodeficiency Virus)は、人の免疫細胞に感染し免疫細胞を破壊して、後天的に免疫不全を発症させるウイルスです。俗称的に「エイズウイルス」と呼ばれることがありますが、正式な名称ではありません。
FY2017|7,965 文字|出典 docID: S100CP6F
3 【事業の内容】当社の事業セグメントは、「医薬品事業」と「検査事業」の二つです。「医薬品事業」は、医薬品の研究・開発・製造・販売を事業目的とし、「検査事業」は、検査薬の研究・開発・製造・販売を事業目的としています。当社は、未来のがん治療にパワーを与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくことをビジョンとしています。医薬品事業においては、がんや重症感染症などの難病を対象に安全で有効な新薬を創出すること、検査事業においてはウイルスの遺伝子改変技術を活かしたがん検査薬の提供を基本的な事業方針としています。なお、医薬品事業及び検査事業ともにアウトソーシングを積極的に活用することで、開発期間の短縮化・開発経費の最適化を図っています。当社の事業系統図は以下の通りです。 [事業系統図] (1) 当社の収益モデルと事業領域① 効率化経営モデル当社では'Planning & Operation'を基軸に開発体制を構築しています。すなわち、創薬プランを企画し、その製造、前臨床試験及び臨床試験をアウトソーシングする、いわゆるファブレス経営[*1]による研究開発を行っており、これにより経費効率化・期間短縮を図っています。 〔本項の用語解説〕[*1] ファブレス経営ファブレス経営(Fabless Business)とは、自社で独自に企画・設計した製品を、他社に委託し製造する経営手法をいいます。生産設備のようなストックをできるだけ持たない手法であることからフロー型経営とも呼ばれる、製造業におけるアウトソーシングの一形態です。 ② 医薬品事業の収益モデルと事業展開医薬品事業においては、「がん及び重症感染症」などの難病を対象とする医薬品候補を大学等の研究機関や企業から導入し、当社で臨床開発の初期段階をアウトソーシングによって推進しています。その品目の製品的価値の初期評価であるProof of Concept(POC)を行った上で、大手製薬企業・バイオ企業等にライセンス許諾を行い、契約一時金、開発進捗に応じたマイルストーン収入、上市後のロイヤリティ収入を獲得する収益モデルを構築しています。一般的な医薬品研究開発プロセスとの関係は以下の通りです。 [医薬品研究開発の一般的なプロセス] [*1] 探索新薬のもとになる候補化合物を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの中から、将来薬になる可能性がある新しい物質(成分)を発見し、化学的に作り出す段階です。[*2] 前臨床試験基礎研究で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物化学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる試験です。化学的試験として、製造方法、原薬・製剤の規格・安定性などを調べる試験です。[*3] Phase I臨床試験第1相臨床試験とも呼ばれ、治療効果を見ることを主目的とせず、少数の健康な志願者を対象に、試験薬を初めてヒトに投与する試験で、主に安全性や体内における薬の分布や代謝を確認する試験です。[*4] Phase Ⅱ臨床試験第2相臨床試験とも呼ばれ、限定された患者に試験薬を投与し有効性と安全性を検討し、用法・用量の推定とPhase Ⅲ臨床試験のエンドポイントを決定することを目的とした試験です。Phase Ⅱa臨床試験は探索的試験とも言われ、Phase Ⅱb臨床試験と区分されることもあります。[*5] Phase Ⅲ臨床試験第3相臨床試験とも呼ばれ、多施設にわたる多数の患者に試験薬を投与する大規模な試験で、実際に市場で用いられる場合の有効性・安全性及び有用性を評価することを主目的とする試験です。検証的試験とも呼ばれ、承認申請に向けた効能・効果、用法・用量、使用上の注意等を最終的に決めることを目的とした試験です。[*6] 申請・承認臨床試験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、各国の規制当局に製造販売承認申請を行います。数段階の審査を受けた後に薬として承認され、市場に出ることになります。 ③ 検査事業の収益モデルと事業展開検査事業では、遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権を製薬会社等に付与するライセンス収入や、検査会社・医療機関等へのがん検査及び検査薬販売により収入を得ています。遺伝子改変ウイルス検査薬を用いた検査法は、これまでのバイオマーカーでは出来なかったがん患者の予後検査(再発予測)やがんの超早期発見に寄与する可能性があります。さらに、がん組織の生検(針刺し採取)をすることなしにがん組織の性質や遺伝子情報を知る事が可能になると考えられるため、患者様の予後予測や適正な医薬品の選定に寄与するがん検査法として期待されています。当社は、平成27年11月にLiquid Biotech USA, Inc.(本社:米国ペンシルベニア州)と提携し、米国での新たな検査プラット・フォームの確立とマーケットの獲得を目指しています。 (2) 主要なパイプライン当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬の開発を行い、さらにHIVやHBVの新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。特にがん領域では、腫瘍溶解ウイルスのテロメライシン並びに次世代テロメライシンの開発を進めると共に、がんの超早期発見または予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンや新規なエピジェネティックがん治療薬OBP-801を揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。 ① 腫瘍溶解ウイルスOBP-301(テロメライシンⓇ)OBP-301(テロメライシンⓇ)は、がん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊することができるように遺伝子改変された5型のアデノウイルス[*1]です。5型のアデノウイルス自体は風邪の症状を引き起こすもので、自然界の空気中にも存在します。OBP-301(テロメライシンⓇ)は、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖することでがん細胞を溶解させる強い抗腫瘍活性を示すことや、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いということで、臨床的な安全性を保つことが期待されています。用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や化学療法剤との併用により、更に強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a) 対象疾患食道がん・肝細胞がん・悪性黒色腫(メラノーマ、皮膚がん)などの固形がんを対象にします。 b) 技術導入の概況OBP-301(テロメライシンⓇ)は、平成18年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、平成24年4月に米国での特許(米国特許第8,163,892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。 (特許取得済みの国)日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダ c) アライアンスの状況平成20年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結致しました。現在同社とともに、OBP-301(テロメライシンⓇ)の臨床試験を進めています。平成28年11月にはHengrui社(中国)との間で、中国におけるライセンス契約を締結し、Hengrui社による中国での本剤の研究開発が開始されました。今後は、現在進捗中もしくは準備中の臨床試験において早期に臨床上の効果を確認した後、欧米及び国内の大手製薬企業へのライセンス導出を目指します。 d) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。 e) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 f) 販売体制将来的に大手製薬会社などにライセンス導出し、導出先が販売をする予定です。 <OBP-301(テロメライシンⓇ)の構造>OBP-301(テロメライシンⓇ)は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、更に同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。OBP-301(テロメライシンⓇ)のDNA構造は以下の通りです。 ② エピジェネティック[*4]がん治療薬OBP-801OBP-801は分子標的抗がん剤[*5]であり、先天的発がんメカニズムではなく、後天的な発がんメカニズムを抑制できるエピジェネティック治療薬であるヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤です。本剤は、細胞分裂を抑制する既存の化学療法剤とは全く異なり、HDACの活性を特異的かつ強力に阻害することで、がん細胞におけるがん抑制遺伝子[*6]の発現を促し、がん細胞の増殖抑制や細胞死を誘導するなどの抗腫瘍効果を示すことが期待されています。 同種同効品として、Merck社(米国)のZolinzaⓇ(vorinostat)が平成18年(日本では平成23年)に、Celgene社(米国)のIstodaxⓇ(romidepsin)が平成21年に、Spectrum Pharmaceuticals, Inc(米国)のBeleodaqⓇ(Beliostat)が平成26年に、それぞれT細胞リンパ腫を対象として欧米で承認・上市されています。OBP-801は、これまでの検討においてZolinzaⓇ及びIstodaxⓇを含む既存のHDAC阻害剤と比較して極めて強いHDAC阻害活性を示し、幅広いがん腫に対する効果が期待され、現在米国でPhase I臨床試験を実施中です。さらに、新たな適応症の可能性を探索する目的で、京都府立医科大学と眼科疾患領域の適応に関する共同研究を実施しています。 a) 対象疾患OBP-801は、腎臓がん、中皮腫、卵巣がんなど幅広いがん種に対して有効性が期待されます。また、眼科疾患領域への適応拡大を検討中です。b) 技術導入の概況当社は、平成21年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。e) 販売体制将来的に大手製薬企業等へのライセンス導出し、導出先が販売を行います。 ③ HIV感染症治療薬OBP-601(Censavudine)OBP-601(Censavudine)は、HIV[*7]の複製に必須である逆転写酵素を阻害することを作用機序とする、新規のHIV感染症治療薬です。当社のOBP-601(Censavudine)は、下図の通り細胞内に侵入したHIVウイルスの持つRNAが細胞内でDNAに逆転写される時に作用する酵素の働きを阻害することで、HIVの複製の第一段階を阻害します。 <OBP-601(Censavudine)の作用メカニズム> a) 対象疾患OBP-601(Censavudine)は、HIV感染症を対象疾患としています。b) 技術導入の概況当社は、OBP-601(Censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)との独占的ライセンス契約を平成18年6月に締結しています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社では、OBP-601(Censavudine)の自社製造しておらず、治験薬は他社に委託して製造しております。e) 販売体制大手製薬会社などにライセンスし、導出先が販売してまいります。 ④ 検査薬 テロメスキャンⓇテロメスキャンⓇは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったOBP-301(テロメライシンⓇ)にクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <テロメスキャンⓇの構造模式図> テロメスキャンⓇを用いた検査プラット・フォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、既存技術では効率的に検出できなかった肺がんや前立腺がんなどにおいては、CTCの個数だけではなく悪性度の評価をするサービス(T-CAS)によりがん患者の予後予測や治療法の選択を可能にすることが期待されています。更にCTCを用いた遺伝子解析サービス(T-GEN)により、危険を伴うがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者に適した抗がん剤の選択できる可能性があり、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a) 技術導入の概況OBP-401(テロメスキャンⓇ)は、OBP-301(テロメライシンⓇ)と同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。現在、国内外において特許出願中です。OBP-1101(テロメスキャンF35)は医薬基盤研究所より平成23年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。また、平成25年2月15日付で、当社は、Geron Corporation(米国)と全世界におけるヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターの特許についてがん検査用途での実施権の許諾に関する契約を締結しています。b) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。c) アライアンスの状況当社は平成26年12月にWONIK CUBE Corp.(韓国)に対し、韓国での独占的使用権を付与するライセンス契約を締結いたしました。また、平成27年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA, Inc.(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア市)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結いたしました。今後、欧州・アジア圏へライセンスエリアを拡大していくことを目指しています。当社は、これらのライセンス契約に伴う対価として、契約一時金、マイルストーン収入やがん検査キットの販売収入を受け取る権利を有しております。d) 製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸検査センターにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。e) 販売体制国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬会社へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供していきます。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1] アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。[*2] E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。[*3] IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。[*4] エピジェネティックDNA配列の変異や欠失・置換等の遺伝子そのものの先天的な構造的な変化を伴わず、DNAのメチル化や染色体タンパク質ヒストンのアセチル化など、遺伝子構造の後天的な修飾により発現調節がなされることを、遺伝子のエピジェネティックな変化と呼びます。この遺伝子のエピジェネティックな変化に作用することで効果を発揮する薬をエピジェネティック治療薬と呼びます。[*5] 分子標的抗がん剤がん細胞の増殖や転移に特異的に、あるいはがん細胞で多く発現している異常なタンパクや酵素を標的とする抗がん剤。従来の化学療法はがん細胞を殺す作用(殺細胞)によって治療効果を発揮するだけでなく、正常細胞にも障害を与えることで副作用を引き起こすのに対し、分子標的抗がん剤はがん細胞特異的にがんの増殖や転移を抑えることで副作用の軽減にも繋がることが期待されています。[*6] がん抑制遺伝子がん抑制遺伝子は私たちの正常細胞にも存在しており、細胞の増殖を抑制したり、細胞のDNAに生じた傷を修復したり、細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導したりする働きをします。DNAの傷が蓄積することによるがん化をDNAの修復によって抑制したり、異常細胞の増殖を感知してその細胞に細胞死を誘導するなど、がん抑制遺伝子はがんの発生を抑制します。がん抑制遺伝子の突然変異(DNAの変化)により、がんの発生をみることがあります。がん抑制遺伝子の突然変異は、遺伝により先天的に変異を受け継ぐ場合もあれば、遺伝に関係なく後天的に発生する場合もあります。主要ながん抑制遺伝子として、p25を初めとしてp16、p53、Rb、BRCA1などがあります。[*7] HIVHIV(ヒト免疫不全ウイルス=Human Immunodeficiency Virus)は、人の免疫細胞に感染し免疫細胞を破壊して、後天的に免疫不全を発症させるウイルスです。俗称的に「エイズウイルス」と呼ばれることがありますが、正式な名称ではありません。
FY2016|8,071 文字|出典 docID: S100A09X
3【事業の内容】当社の事業セグメントは、「医薬品事業」と「検査事業」の二つです。「医薬品事業」は、医薬品の研究・開発・製造・販売を事業目的とし、「検査事業」は、検査薬の研究・開発・製造・販売及び検査機器の開発・製造・販売並びに検査サービスの提供を事業目的としています。当社はウイルス学に立脚した創薬技術を駆使した研究開発を行い、「がんと重症感染症」を初めとする難病の治療法にイノベーションを起こし、世界の医療に寄与することを使命としています。医薬品事業においてはがんや重症感染症などの難病を対象に安全で有効な新薬を創出すること、また、検査事業においてはウイルスの遺伝子改変技術を活かした新しい検査法による特殊検査プラットホームビジネスの提供を基本的な事業方針としています。なお、医薬品事業及び検査事業ともにアウトソーシングを積極的に活用することで、開発期間の短縮化・開発経費の最適化を図っています。当社の事業系統図は以下の通りです。 [事業系統図] (1) 当社の収益モデルと事業領域① 効率化経営モデル当社では'Planning & Operation'を基軸に開発体制を構築しています。すなわち、創薬プランを企画し、その製造、前臨床試験及び臨床試験をアウトソーシングする、いわゆるファブレス経営 [*1]による研究開発を行っており、これにより経費効率化・期間短縮を図っています。 〔本項の用語解説〕[*1]ファブレス経営ファブレス経営(Fabless Business)とは、自社で独自に企画・設計した製品を、他社に委託し製造する経営手法をいいます。生産設備のようなストックをできるだけ持たない手法であることからフロー型経営とも呼ばれる、製造業におけるアウトソーシングの一形態です。 ② 医薬品事業の収益モデルと事業展開医薬品事業においては、「がん及び重症感染症」などの難病を対象とする医薬品候補を大学等の研究機関や企業から導入し、当社で臨床開発の初期段階をアウトソーシングによって推進しています。その品目の製品的価値の初期評価であるProof of Concept(POC)を行った上で、大手製薬企業・バイオ企業等にライセンス許諾を行い、契約一時金、開発進捗に応じたマイルストーン収入、上市後のロイヤリティ収入を獲得する収益モデルを構築しています。一般的な医薬品研究開発プロセスとの関係は以下の通りです。 [医薬品研究開発の一般的なプロセス] [*1]探索新薬のもとになる候補化合物を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの中から、将来薬になる可能性がある新しい物質(成分)を発見し、化学的に作り出す段階です。 [*2]前臨床試験基礎研究で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物化学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる試験です。化学的試験として、製造方法、原薬・製剤の規格・安定性などを調べる試験です。 [*3]Phase I臨床試験第1相臨床試験とも呼ばれ、治療効果を見ることを主目的とせず、少数の健康な志願者を対象に、試験薬を初めてヒトに投与する試験で、主に安全性や体内における薬の分布や代謝を確認する試験です。 [*4]Phase Ⅱ臨床試験第2相臨床試験とも呼ばれ、限定された患者に試験薬を投与し有効性と安全性を検討し、用法・用量の推定とPhase Ⅲ臨床試験のエンドポイントを決定することを目的とした試験です。Phase Ⅱa臨床試験は探索的試験とも言われ、Phase Ⅱb臨床試験と区分されることもあります。 [*5]Phase Ⅲ臨床試験第3相臨床試験とも呼ばれ、多施設にわたる多数の患者に試験薬を投与する大規模な試験で、実際に市場で用いられる場合の有効性・安全性及び有用性を評価することを主目的とする試験です。検証的試験とも呼ばれ、承認申請に向けた効能・効果、用法・用量、使用上の注意等を最終的に決めることを目的とした試験です。 [*6]申請・承認臨床試験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、各国の規制当局に製造販売承認申請を行います。数段階の審査を受けた後に薬として承認され、市場に出ることになります。 ③ 検査事業の収益モデルと事業展開検査事業では、当社開発の遺伝子改変ウイルス検査薬を用いた検査システムを検査ユニットとして検査会社・医療機関に提供し、技術利用料、技術移転料、検査キット販売代金などの収入を獲得します。本事業により継続的かつ安定的な収益性のある事業構造の構築を目指しています。この検査法は、これまでのバイオマーカーでは出来なかったがん患者の予後検査(再発予測)やがんの超早期発見に寄与する可能性があります。さらに、がん組織の生検(針刺し採取)をすることなしにがん組織の性質や遺伝子情報を知る事が可能になると考えられるため、患者様の予後予測や適正な医薬品の選定に寄与する全く新しいがん検査法として期待されています。当社は、平成27年11月にLiquid Biotech USA, Inc.(本社:米国ペンシルベニア州)と提携し、米国での新たな検査プラット・フォームの確立とマーケットの獲得を目指しています。 (2) 主要なパイプライン当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬の開発を行い、さらにHIVやHBVの新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。特にがん領域では、腫瘍溶解ウイルスのテロメライシン並びに次世代テロメライシンの開発を進めると共に、がんの超早期発見または予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンや新規なエピジェネティックがん治療薬OBP-801を揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。 ① 腫瘍溶解ウイルスOBP-301(テロメライシンⓇ)OBP-301(テロメライシンⓇ)は、がん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊することができるように遺伝子改変された5型のアデノウイルス[*1]です。5型のアデノウイルス自体は風邪の症状を引き起こすもので、自然界の空気中にも存在します。OBP-301(テロメライシンⓇ)は、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖することでがん細胞を溶解させる強い抗腫瘍活性を示すことや、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いということで、臨床的な安全性を保つことが期待されています。用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や化学療法剤との併用により、更に強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a)対象疾患食道がん・肝臓がん・悪性黒色腫(メラノーマ、皮膚がん)などの固形がんを対象にします。 b)技術導入の概況OBP-301(テロメライシンⓇ)は、平成18年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、平成24年4月に米国での特許(米国特許第8,163,892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。 (特許取得済みの国)日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダ c)アライアンスの状況平成20年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結致しました。現在同社とともに、韓国及び台湾での肝臓がんを対象としたPhase I/Ⅱ臨床試験を進めています。平成28年11月にはHengrui社(中国)との間で、中国におけるライセンス契約を締結し、Hengrui社による中国での本剤の研究開発が開始されました。今後は、現在進捗中もしくは準備中の臨床試験において早期に臨床上の効果を確認した後、欧米及び国内の大手製薬企業へのライセンス導出を目指します。 d)研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。 e)製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 f)販売体制将来的に大手製薬会社などにライセンス導出し、導出先が販売をする予定です。 <OBP-301(テロメライシンⓇ)の構造>OBP-301(テロメライシンⓇ)は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、更に同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。OBP-301(テロメライシンⓇ)のDNA構造は以下の通りです。 ② エピジェネティック[*4]がん治療薬OBP-801OBP-801は分子標的抗がん剤[*5]であり、先天的発がんメカニズムではなく、後天的な発がんメカニズムを抑制できるエピジェネティック治療薬であるヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤です。本剤は、細胞分裂を抑制する既存の化学療法剤とは全く異なり、HDACの活性を特異的かつ強力に阻害することで、がん細胞におけるがん抑制遺伝子[*6]の発現を促し、がん細胞の増殖抑制や細胞死を誘導するなどの抗腫瘍効果を示すことが期待されています。 同種同効品として、Merck社(米国)のZolinzaⓇ(vorinostat)が平成18年(日本では平成23年)に、Celgene社(米国)のIstodaxⓇ(romidepsin)が平成21年に、Spectrum Pharmaceuticals, Inc(米国)のBeleodaq®(Beliostat)が平成26年に、それぞれT細胞リンパ腫を対象として欧米で承認・上市されています。OBP-801は、これまでの検討においてZolinzaⓇ及びIstodaxⓇを含む既存のHDAC阻害剤と比較して極めて強いHDAC阻害活性を示し、幅広いがん腫に対する効果が期待され、現在米国でPhase I臨床試験を実施中です。さらに、新たな適応症の可能性を探索する目的で、京都府立医科大学と眼科疾患領域の適応に関する共同研究を実施しています。 a)対象疾患OBP-801は、腎臓がん、中皮腫、卵巣がんなど幅広いがん種に対して有効性が期待されます。また、眼科疾患領域への適応拡大を検討中です。 b)技術導入の概況当社は、平成21年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。 c)研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。 d)製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 e)販売体制将来的に大手製薬企業等へのライセンス導出し、導出先が販売を行います。 ③ HIV感染症治療薬OBP-601(Censavudine)OBP-601(Censavudine)は、HIV[*7]の複製に必須である逆転写酵素を阻害することを作用機序とする、新規のHIV感染症治療薬です。当社のOBP-601(Censavudine)は、下図の通り細胞内に侵入したHIVウイルスの持つRNAが細胞内でDNAに逆転写される時に作用する酵素の働きを阻害することで、HIVの複製の第一段階を阻害します。 <OBP-601(Censavudine)の作用メカニズム>a)対象疾患OBP-601(Censavudine)は、HIV感染症を対象疾患としています。 b)技術導入の概況当社は、OBP-601(Censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)との独占的ライセンス契約を平成18年6月に締結しています。 c)研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。 d)製造体制当社では、OBP-601(Censavudine)の自社製造しておらず、治験薬は他社に委託して製造しております。 e)販売体制大手製薬会社などにライセンスし、導出先が販売してまいります。 ④ 検査薬 テロメスキャンⓇテロメスキャンⓇは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったOBP-301(テロメライシンⓇ)にクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <テロメスキャンⓇの構造模式図> テロメスキャンⓇを用いた検査プラット・フォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、既存技術では効率的に検出できなかった肺がんや前立腺がんなどにおいては、CTCの個数だけではなく悪性度の評価をするサービス(T-CAS)によりがん患者の予後予測や治療法の選択を可能にすることが期待されています。更にCTCを用いた遺伝子解析サービス(T-GEN)により、危険を伴うがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者に適した抗がん剤の選択できる可能性があり、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a)技術導入の概況OBP-401(テロメスキャンⓇ)は、OBP-301(テロメライシンⓇ)と同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。現在、国内外において特許出願中です。OBP-1101(テロメスキャンF35)は医薬基盤研究所より平成23年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。また、平成25年2月15日付で、当社は、Geron Corporation(米国)と全世界におけるヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターの特許についてがん検査用途での実施権の許諾に関する契約を締結しています。 b)研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。 c)アライアンスの状況当社は平成26年12月にWONIK CUBE Corp.(韓国)に対し、韓国での独占的使用権を付与するライセンス契約を締結いたしました。また、平成27年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA, Inc.(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア市)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結いたしました。今後、欧州・アジア圏へライセンスエリアを拡大していくことを目指しています。当社は、これらのライセンス契約に伴う対価として、契約一時金、マイルストーン収入やがん検査キットの販売収入を受け取る権利を有しております。 d)製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸検査センターにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。 e)販売体制当面の活動は、テロメスキャンⓇを用いた自由診療の範囲における血中循環がん細胞(CTC)検出の受託検査及び研究機関へのウイルス販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供していきます。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1]アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36 kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。[*2]E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。[*3]IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。[*4]エピジェネティックDNA配列の変異や欠失・置換等の遺伝子そのものの先天的な構造的な変化を伴わず、DNAのメチル化や染色体タンパク質ヒストンのアセチル化など、遺伝子構造の後天的な修飾により発現調節がなされることを、遺伝子のエピジェネティックな変化と呼びます。この遺伝子のエピジェネティックな変化に作用することで効果を発揮する薬をエピジェネティック治療薬と呼びます。[*5]分子標的抗がん剤がん細胞の増殖や転移に特異的に、あるいはがん細胞で多く発現している異常なタンパクや酵素を標的とする抗がん剤。従来の化学療法はがん細胞を殺す作用(殺細胞)によって治療効果を発揮するだけでなく、正常細胞にも障害を与えることで副作用を引き起こすのに対し、分子標的抗がん剤はがん細胞特異的にがんの増殖や転移を抑えることで副作用の軽減にも繋がることが期待されています。[*6]がん抑制遺伝子がん抑制遺伝子は私たちの正常細胞にも存在しており、細胞の増殖を抑制したり、細胞のDNAに生じた傷を修復したり、細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導したりする働きをします。DNAの傷が蓄積することによるがん化をDNAの修復によって抑制したり、異常細胞の増殖を感知してその細胞に細胞死を誘導するなど、がん抑制遺伝子はがんの発生を抑制します。がん抑制遺伝子の突然変異(DNAの変化)により、がんの発生をみることがあります。がん抑制遺伝子の突然変異は、遺伝により先天的に変異を受け継ぐ場合もあれば、遺伝に関係なく後天的に発生する場合もあります。主要ながん抑制遺伝子として、p25を初めとしてp16、p53、Rb、BRCA1などがあります。[*7]HIVHIV(ヒト免疫不全ウイルス=Human Immunodeficiency Virus)は、人の免疫細胞に感染し免疫細胞を破壊して、後天的に免疫不全を発症させるウイルスです。俗称的に「エイズウイルス」と呼ばれることがありますが、正式な名称ではありません。