事業の内容
キャンバスは、抗がん剤の基礎研究から臨床開発(ヒトでの試験)までを手掛ける創薬企業です。独自の創薬アプローチ「創薬エンジン」を使い、医薬品候補化合物を自社で生み出し、開発パイプラインを構築しています。収益は、開発中の医薬品が承認され販売されることによる売上や、製薬企業との提携によるライセンス収入を目指していますが、現状では製品販売による収益はありません。医薬品事業の単一セグメントで事業を展開しています。
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FY2025|5,580 文字|出典 docID: S100WQRS
3【事業の内容】 当社は、抗がん剤の基礎研究(創薬コンセプトの検討、当該コンセプトに基づき構築した手法による医薬品候補化合物の選別、簡易動物実験、既に開発段階に進んだ抗がん剤候補化合物に関する基礎データの収集・解析等。)、早期臨床開発(臨床試験開始申請直前に実施する「前臨床試験」ならびに臨床試験の前半部分。)および後期臨床開発(新薬承認申請を目指す臨床試験の後半部分。)に取り組んでいる創薬企業です。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントです。 (1) 基本戦略 当社は、自社独特の創薬アプローチを活かした抗がん剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。 特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます。)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。 この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。 ・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。 ・当社の有する薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。 ・抗がん剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。 ・当社の権利を最大限確保するため、開発パイプラインの特性や開発段階、当社の財務体力等に応じ、自社で後期開発段階まで進めるほか、適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖を補完・完結する。 当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減していきたいと考えています。 (2) 創薬事業 一般に創薬(新薬の創出)は、(ア) 創薬コンセプト(科学的根拠に立脚し、ある方法によって疾患を治療し得ると考え、その作用を有する化合物等が新しい医薬品になり得るとする仮説。)に基づいて候補化合物を探索・選別する「探索」段階(イ) (ア)で獲得された候補化合物について試験管内や動物での実験を実施し候補化合物の分子構造等を調整する「最適化」段階(ウ) 臨床試験開始申請に必要なデータを揃える前臨床試験を実施する「前臨床試験」段階(エ) 規制当局の許可を得て臨床試験(医薬品としての承認を得るために行うヒト試験。)を実施する「臨床試験」段階の順に進行します。 臨床試験段階はさらに、主に候補化合物の安全性を確認する第1相試験、比較的少数の患者様で候補化合物の有効性・安全性および用法用量を探索的に検討する第2相試験、医薬品として薬効を証明する第3相試験に大別されます。 通常の医薬品において臨床第1相試験は健康なボランティアを被験者としますが、当社が開発を目指す抗がん剤の領域では、抗がん剤に多い重篤な副作用への懸念から、末期がん患者ボランティアの方を被験者として臨床第1相試験を実施します。このため、第1相試験の前半では主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのあるがん腫を選定し、当該がん腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施する手法が多く採られます。この手法によるCBP501臨床第1b相試験の結果から、膵臓がんをCBP501臨床第2相試験の対象に選定し、現在はCBP501の有効性・安全性および用法用量を検討する臨床第2相試験を成功裏に終え、次相臨床試験の準備を進めています。 (3) 当社の開発パイプライン 「開発パイプライン」とは、創薬製薬領域において、開発中の医薬品候補化合物群を指す語です。 一般に医薬品開発は成功確率が低く、リスク分散の意味でいかに豊富で有望なパイプラインを継続的に有するかが製薬企業や創薬企業の中長期的な企業価値の基本となります。 新たなパイプラインを確保する方法は、当社のような創薬企業にとっては専ら自らの創薬コンセプトに基づいた新規候補化合物の「探索」「最適化」となります。製薬企業等においては、自社による創出のほか、創薬企業等との提携に基づくライセンスによるパイプライン獲得が図られます。 創薬企業の長期的な目的は新薬の承認獲得とその売上による収益獲得です。 しかし、それに至るために必要な長期間かつ莫大な資金(一般にひとつの医薬品を開発するために必要な期間は約15年・必要な資金は数百億円といわれます。)を独力で確保することは難しく、多くの場合、短期中期的な目標として、自社で開発中の候補化合物について製薬企業等との提携を成立させ当該候補化合物を相手方開発パイプラインのひとつとすることによるライセンス収益の獲得と財務基盤の安定・強化を目指すこととなります。 しかしながら、その状況は変わりつつあり、創薬企業が製薬企業等と提携するのでなく投資家や市場から資金を調達して独力で新薬承認獲得まで進む開発戦略が採用されるケースが増加しています。 この変化の要因としては、① 製薬企業の多くが「承認されたまたは承認が確実となった超後期開発品」や「新しい作用機序やモダリティ(治療手段)の早期開発品」に集中した提携方針を採用するようになり、最もリスクとリターンの大きな開発途上の候補化合物に関する提携意欲が薄れていること② 臨床試験の平均的な規模が比較的小さくなったことと、投資家や市場からの資金調達環境が大幅に改善されたこととが相まって、必ずしも製薬企業の資金に頼らずとも新薬承認獲得までの開発が可能になったこと③ 製薬企業との提携は必ずしも最速かつ成功確率最大の開発進行に寄与せず、むしろ阻害要因にもなりかねないと知られてきたことなどが挙げられます。 したがって現在、創薬企業はこれらの選択肢の中から、各パイプラインに最適な開発戦略を立案することが求められています。 当社の開発パイプラインは次のとおりです。《CBP501》CBP501は、当社独自のスクリーニング(薬剤探索)から獲得された、蛋白質カルモジュリンの制御機能を調整し複数の作用により免疫コールド(がんを攻撃するT細胞の乏しい状態。)ながんを免疫ホット(T細胞が存在しがんを攻撃できる状態。)ながんにすることで抗がん活性を示す、独特の抗がん剤(免疫着火剤)です。過去の試験で得られたデータから、免疫系抗がん剤との併用により薬効を高める効果が期待できることがわかりました。現在は免疫チェックポイント阻害抗体との併用による臨床第2相試験(対象:膵臓がん)を終え、次相臨床試験の準備を進めています。《CBS9106》当社が創出した可逆的CRM1(XPO1)阻害剤であるCBS9106は、前臨床試験を終了した段階で、同化合物の開発・製造・商業化にかかる全世界における独占的権利を米国Stemline Therapeutics, Inc.に供与するライセンス契約を締結しました。その後Stemline社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了しています。2025年6月、開発及び商品化に関するすべての権利が当社に返還される旨の合意に達し、Stemline社とのライセンス契約を解消しました。今後当社は、追加で実施する基礎研究の成果や会社の財務状況などを勘案して、 開発方針を検討していく方針です。《後続パイプライン》上記2つの臨床開発段階のパイプラインのほか、がんの治癒を目指す新しいコンセプトから創出し前臨床試験のための準備を開始したCBT005、CBP501の研究開発過程で新たに得られた知見を踏まえて創出したCBP-A08、静岡県立大学との共同研究により最適化を進めているIDO/TDO阻害剤など、新規候補化合物の創出・開発パイプラインの拡充に向けて、探索研究を実施しています。 化合物併用対象探索創出最適化前臨床試験臨床試験提携・共同研究第1相第2相第3相CBP501シスプラチン・ニボルマブ膵臓がん3次治療■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ CBS9106なし固形がん■■■■■■■■■■■■■■■■ CBT005未定 ■■■■■■■■■ CBP-A08未定 ■■■■■■■■ IDO/TDO阻害剤未定 □□□□■■ 静岡県立大※表中の■は自社による進捗、□は他社による進捗を示す。 (4) 当社事業の当面の課題と施策 当社事業における当面の課題と施策は、概ね優先順位順に次のとおりです。① CBP501について開発を加速し、成功確率を最大化する。当社は現在、最先行の抗がん剤候補化合物CBP501に関して、製薬企業等との提携関係に依存しない「創薬パイプライン型」の開発を志向しています。 ② 基礎研究を継続し、既存パイプラインに関する知見を深め、次世代パイプラインの創出を図る。当社は、臨床開発段階のプロジェクトのほか、前述のとおり、基礎研究活動を絶えず実施しています。また、研究開発にかかる知的財産権の管理等の費用も継続的に発生しています。これらの取組みは、当社の中長期的な収益獲得と企業価値向上に欠かせないものですが、それらの成果による現実の収益を獲得するまでには一定の期間を要することから、間接金融による資金調達は極めて困難です。したがって、これらの課題と施策を可能とするための直接金融による継続的な資金調達も併せて当面の優先的な課題と施策のひとつと位置づけています。 (5) 製薬企業との戦略提携を含む開発体制の選択 医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。 このことから、当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略であるとこれまで一般に言われ、早期臨床開発と後期臨床開発の役割分担の形が世界的な標準となっていると言われてきました。 しかしながら前述のとおり、①製薬企業等の提携方針の変化に伴う開発途上化合物に対する提携意欲の低下、②臨床試験の規模が比較的小さくなったことと創薬企業の資金調達環境が大幅に改善されたことから製薬企業の資金に頼らずとも新薬承認獲得までの開発が可能になったこと、③製薬企業との提携は最速かつ成功確率最大の開発進行に寄与せず、むしろ阻害要因にもなりかねないと知られてきたこと、などの理由から、この状況は大きく変化し、創薬企業は製薬企業等との提携に依存しない各パイプラインに最適な開発戦略を立案・選択することが求められています。 一方で、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在しており、化合物の特性や開発の状況等に応じてこれらを活用することももちろん考えられます。 現在当社は、CBP501に関しては、2010年6月に武田薬品工業株式会社との共同事業化契約を解消した後、臨床試験を当社単独で進めてきました。現在は、承認申請までの臨床試験完遂を目指す資金調達を実施するとともに、すべての臨床試験を当社のリスク負担で実施し中長期的な企業価値の最大化を図る「創薬パイプライン型」開発を志向しています。これと並行して、地域等を区切った部分的な新規提携パートナーの獲得を目指す活動も進めています。 また、CBS9106については、2014年12月から継続していたStemline社へのライセンス契約を解消しました。今後当社は、Stemline社が完了しているCBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験の成果と、追加で実施する基礎研究の成果や会社の財務状況などを勘案して、開発方針を検討していく方針です。 (6) 研究開発における外部機関との連携 当社は、がん領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます。)を活用しています。 基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述の次世代化合物の創出に向けて、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(一般財団法人ふじのくに医療城下町推進機構、静岡県立大学)との共同研究を進めています。 臨床開発においては、抗がん剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。 また、当社は、抗がん剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(SAB)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米がん学会会長・米国がん治療学会会長を歴任した著名ながん臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗がん剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、2002年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
FY2024|5,606 文字|出典 docID: S100UG53
3【事業の内容】 当社は、抗がん剤の基礎研究(創薬コンセプトの検討、当該コンセプトに基づき構築した手法による医薬品候補化合物の選別、簡易動物実験、既に開発段階に進んだ抗がん剤候補化合物に関する基礎データの収集・解析等。)、早期臨床開発(臨床試験開始申請直前に実施する「前臨床試験」ならびに臨床試験の前半部分。)および後期臨床開発(新薬承認申請を目指す臨床試験の後半部分。)に取り組んでいる創薬企業です。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントです。 (1) 基本戦略 当社は、自社独特の創薬アプローチを活かした抗がん剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。 特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます。)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。 この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。 ・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。 ・当社の有する薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。 ・抗がん剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。 ・当社の権利を最大限確保するため、開発パイプラインの特性や開発段階、当社の財務体力等に応じ、自社で後期開発段階まで進めるほか、適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖を補完・完結する。 当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減していきたいと考えています。 (2) 創薬事業 一般に創薬(新薬の創出)は、(ア) 創薬コンセプト(科学的根拠に立脚し、ある方法によって疾患を治療し得ると考え、その作用を有する化合物等が新しい医薬品になり得るとする仮説。)に基づいて候補化合物を探索・選別する「探索」段階(イ) (ア)で獲得された候補化合物について試験管内や動物での実験を実施し候補化合物の分子構造等を調整する「最適化」段階(ウ) 臨床試験開始申請に必要なデータを揃える前臨床試験を実施する「前臨床試験」段階(エ) 規制当局の許可を得て臨床試験(医薬品としての承認を得るために行うヒト試験。)を実施する「臨床試験」段階の順に進行します。 臨床試験段階はさらに、主に候補化合物の安全性を確認する第1相試験、比較的少数の患者様で候補化合物の有効性・安全性および用法用量を探索的に検討する第2相試験、医薬品として薬効を証明する第3相試験に大別されます。 通常の医薬品において臨床第1相試験は健康なボランティアを被験者としますが、当社が開発を目指す抗がん剤の領域では、抗がん剤に多い重篤な副作用への懸念から、末期がん患者ボランティアの方を被験者として臨床第1相試験を実施します。このため、第1相試験の前半では主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのあるがん腫を選定し、当該がん腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施する手法が多く採られます。この手法によるCBP501臨床第1b相試験の結果から、膵臓がんをCBP501臨床第2相試験の対象に選定し、現在はCBP501の有効性・安全性および用法用量を検討する臨床第2相試験を成功裏に終え、次相臨床試験の準備を進めています。 (3) 当社の開発パイプライン 「開発パイプライン」とは、創薬製薬領域において、開発中の医薬品候補化合物群を指す語です。 一般に医薬品開発は成功確率が低く、リスク分散の意味でいかに豊富で有望なパイプラインを継続的に有するかが製薬企業や創薬企業の中長期的な企業価値の基本となります。 新たなパイプラインを確保する方法は、当社のような創薬企業にとっては専ら自らの創薬コンセプトに基づいた新規候補化合物の「探索」「最適化」となります。製薬企業等においては、自社による創出のほか、創薬企業等との提携に基づくライセンスによるパイプライン獲得が図られます。 創薬企業の長期的な目的は新薬の承認獲得とその売上による収益獲得です。 しかし、それに至るために必要な長期間かつ莫大な資金(一般にひとつの医薬品を開発するために必要な期間は約15年・必要な資金は数百億円といわれます。)を独力で確保することは難しく、多くの場合、短期中期的な目標として、自社で開発中の候補化合物について製薬企業等との提携を成立させ当該候補化合物を相手方開発パイプラインのひとつとすることによるライセンス収益の獲得と財務基盤の安定・強化を目指すこととなります。 しかしながら、その状況は変わりつつあり、創薬企業が製薬企業等と提携するのでなく投資家や市場から資金を調達して独力で新薬承認獲得まで進む開発戦略が採用されるケースが増加しています。 この変化の要因としては、① 製薬企業の多くが「承認された又は承認が確実となった超後期開発品」や「新しい作用機序やモダリティ(治療手段)の早期開発品」に集中した提携方針を採用するようになり、最もリスクとリターンの大きな開発途上の候補化合物に関する提携意欲が薄れていること② 臨床試験の平均的な規模が比較的小さくなったことと、投資家や市場からの資金調達環境が大幅に改善されたこととが相まって、必ずしも製薬企業の資金に頼らずとも新薬承認獲得までの開発が可能になったこと③ 製薬企業との提携は必ずしも最速かつ成功確率最大の開発進行に寄与せず、むしろ阻害要因にもなりかねないと知られてきたことなどが挙げられます。 したがって現在、創薬企業はこれらの選択肢の中から、各パイプラインに最適な開発戦略を立案することが求められています。 当社の開発パイプラインは次のとおりです。《CBP501》CBP501は、当社独自のスクリーニング(薬剤探索)から獲得された、蛋白質カルモジュリンの制御機能を調整し複数の作用により免疫コールド(がんを攻撃するT細胞の乏しい状態。)ながんを免疫ホット(T細胞が存在しがんを攻撃できる状態。)ながんにすることで抗がん活性を示す、独特の抗がん剤(免疫着火剤)です。過去の試験で得られたデータから、免疫系抗がん剤との併用により薬効を高める効果が期待できることがわかりました。現在は免疫チェックポイント阻害抗体との併用による臨床第2相試験(対象:膵臓がん)を終え、次相臨床試験の準備を進めています。《CBS9106》当社が創出した可逆的CRM1(XPO1)阻害剤であるCBS9106は、前臨床試験を終了した段階で、同化合物の開発・製造・商業化にかかる全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を米国Stemline Therapeutics, Inc.に供与するライセンス契約を締結しました。現在Stemline社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了し、次相臨床試験の計画が進められています。《後続パイプライン》上記2つの臨床開発段階のパイプラインのほか、がんの治癒を目指す新しいコンセプトから創出し前臨床試験のための準備を開始したCBT005、CBP501の研究開発過程で新たに得られた知見を踏まえて創出したCBP-A08、静岡県立大学との共同研究により最適化を進めているIDO/TDO阻害剤など、新規候補化合物の創出・開発パイプラインの拡充に向けて、探索研究を実施しています。 化合物併用対象探索創出最適化前臨床試験臨床試験提携・共同研究第1相第2相第3相CBP501シスプラチン・ニボルマブ膵臓がん3次治療■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ CBS9106(felezonexor)なし固形がん■■■■■■■■■■■■□□□□ Stemline社CBT005未定 ■■■■■■■■■ CBP-A08未定 ■■■■■■■■ IDO/TDO阻害剤未定 □□□□■■ 静岡県立大※表中の■は自社による進捗、□は他社による進捗を示す。(4) 当社事業の当面の課題と施策 当社事業における当面の課題と施策は、概ね優先順位順に次のとおりです。① CBP501について開発を加速し、成功確率を最大化する。当社は現在、最先行の抗がん剤候補化合物CBP501に関して、製薬企業等との提携関係に依存しない「創薬パイプライン型」の開発を志向しています。 ② 基礎研究を継続し、既存パイプラインに関する知見を深め、次世代パイプラインの創出を図る。当社は、臨床開発段階のプロジェクトのほか、前述のとおり、基礎研究活動を絶えず実施しています。また、研究開発にかかる知的財産権の管理等の費用も継続的に発生しています。これらの取組みは、当社の中長期的な収益獲得と企業価値向上に欠かせないものですが、それらの成果による現実の収益を獲得するまでには一定の期間を要することから、間接金融による資金調達は極めて困難です。したがって、これらの課題と施策を可能とするための直接金融による継続的な資金調達も併せて当面の優先的な課題と施策のひとつと位置づけています。 (5) 製薬企業との戦略提携を含む開発体制の選択 医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。 このことから、当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略であるとこれまで一般に言われ、早期臨床開発と後期臨床開発の役割分担の形が世界的な標準となっていると言われてきました。 しかしながら前述のとおり、①製薬企業等の提携方針の変化に伴う開発途上化合物に対する提携意欲の低下、②臨床試験の規模が比較的小さくなったことと創薬企業の資金調達環境が大幅に改善されたことから製薬企業の資金に頼らずとも新薬承認獲得までの開発が可能になったこと、③製薬企業との提携は最速かつ成功確率最大の開発進行に寄与せず、むしろ阻害要因にもなりかねないと知られてきたこと、などの理由から、この状況は大きく変化し、創薬企業は製薬企業等との提携に依存しない各パイプラインに最適な開発戦略を立案・選択することが求められています。 一方で、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在しており、化合物の特性や開発の状況等に応じてこれらを活用することももちろん考えられます。 現在当社は、CBP501に関しては、2010年6月に武田薬品工業株式会社との共同事業化契約を解消した後、臨床試験を当社単独で進めてきました。現在は、承認申請までの臨床試験完遂を目指す資金調達を実施するとともに、すべての臨床試験を当社のリスク負担で実施し中長期的な企業価値の最大化を図る「創薬パイプライン型」開発を志向しています。これと並行して、地域等を区切った部分的な新規提携パートナーの獲得を目指す活動も進めています。 一方、CBS9106については、2014年12月、Stemline社と全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結し、戦略提携に基づき当社にとって比較的リスクの小さな開発体制を選択しました。現在同社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了し、次相臨床試験の計画が進められています。 (6) 研究開発における外部機関との連携 当社は、がん領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます。)を活用しています。 基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述の次世代化合物の創出に向けて、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(一般財団法人ふじのくに医療城下町推進機構、静岡県立大学)との共同研究を進めています。 臨床開発においては、抗がん剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。 また、当社は、抗がん剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(SAB)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米がん学会会長・米国がん治療学会会長を歴任した著名ながん臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗がん剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、2002年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
FY2023|5,591 文字|出典 docID: S100RWI0
3【事業の内容】 当社は、抗がん剤の基礎研究(創薬コンセプトの検討、当該コンセプトに基づき構築した手法による医薬品候補化合物の選別、簡易動物実験、既に開発段階に進んだ抗がん剤候補化合物に関する基礎データの収集・解析等。)、早期臨床開発(臨床試験開始申請直前に実施する「前臨床試験」ならびに臨床試験の前半部分。)および後期臨床開発(新薬承認申請を目指す臨床試験の後半部分。)に取り組んでいる創薬企業です。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントです。 (1) 基本戦略 当社は、自社独特の創薬アプローチを活かした抗がん剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。 特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます。)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。 この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。 ・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。 ・当社の有する薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。 ・抗がん剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。 ・当社の権利を最大限確保するため、開発パイプラインの特性や開発段階、当社の財務体力等に応じ、自社で後期開発段階まで進めるほか、適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖を補完・完結する。 当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減していきたいと考えています。 (2) 創薬事業 一般に創薬(新薬の創出)は、(ア) 創薬コンセプト(科学的根拠に立脚し、ある方法によって疾患を治療し得ると考え、その作用を有する化合物等が新しい医薬品になり得るとする仮説。)に基づいて候補化合物を探索・選別する「探索」段階(イ) (ア)で獲得された候補化合物について試験管内や動物での実験を実施し候補化合物の分子構造等を調整する「最適化」段階(ウ) 臨床試験開始申請に必要なデータを揃える前臨床試験を実施する「前臨床試験」段階(エ) 規制当局の許可を得て臨床試験(医薬品としての承認を得るために行うヒト試験。)を実施する「臨床試験」段階の順に進行します。 臨床試験段階はさらに、主に候補化合物の安全性を確認する第1相試験、比較的少数の患者様で候補化合物の有効性・安全性および用法用量を探索的に検討する第2相試験、医薬品として薬効を証明する第3相試験に大別されます。 通常の医薬品において臨床第1相試験は健康なボランティアを被験者としますが、当社が開発を目指す抗がん剤の領域では、抗がん剤に多い重篤な副作用への懸念から、末期がん患者ボランティアの方を被験者として臨床第1相試験を実施します。このため、第1相試験の前半では主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのあるがん腫を選定し、当該がん腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施する手法が多く採られます。この手法によるCBP501臨床第1b相試験の結果から、膵臓がんをCBP501臨床第2相試験の対象に選定し、現在はCBP501の有効性・安全性および用法用量を検討する臨床第2相試験を実施しつつ、次相臨床試験の準備を進めています。 (3) 当社の開発パイプライン 「開発パイプライン」とは、創薬製薬領域において、開発中の医薬品候補化合物群を指す語です。 一般に医薬品開発は成功確率が低く、リスク分散の意味でいかに豊富で有望なパイプラインを継続的に有するかが製薬企業や創薬企業の中長期的な企業価値の基本となります。 新たなパイプラインを確保する方法は、当社のような創薬企業にとっては専ら自らの創薬コンセプトに基づいた新規候補化合物の「探索」「最適化」となります。製薬企業等においては、自社による創出のほか、創薬企業等との提携に基づくライセンスによるパイプライン獲得が図られます。 創薬企業の長期的な目的は新薬の承認獲得とその売上による収益獲得です。 しかし、それに至るために必要な長期間かつ莫大な資金(一般にひとつの医薬品を開発するために必要な期間は約15年・必要な資金は数百億円といわれます。)を独力で確保することは難しく、多くの場合、短期中期的な目標として、自社で開発中の候補化合物について製薬企業等との提携を成立させ当該候補化合物を相手方開発パイプラインのひとつとすることによるライセンス収益の獲得と財務基盤の安定・強化を目指すこととなります。 しかしながら、その状況は変わりつつあり、創薬企業が製薬企業等と提携するのでなく投資家や市場から資金を調達して独力で新薬承認獲得まで進む開発戦略が採用されるケースが増加しています。 この変化の要因としては、① 製薬企業の多くが「承認された又は承認が確実となった超後期開発品」や「新しい作用機序やモダリティ(治療手段)の早期開発品」に集中した提携方針を採用するようになり、最もリスクとリターンの大きな開発途上の候補化合物に関する提携意欲が薄れていること② 臨床試験の平均的な規模が比較的小さくなったことと、投資家や市場からの資金調達環境が大幅に改善されたこととが相まって、必ずしも製薬企業の資金に頼らずとも新薬承認獲得までの開発が可能になったこと③ 製薬企業との提携は必ずしも最速かつ成功確率最大の開発進行に寄与せず、むしろ阻害要因にもなりかねないと知られてきたことなどが挙げられます。 したがって現在、創薬企業はこれらの選択肢の中から、各パイプラインに最適な開発戦略を立案することが求められています。 当社の開発パイプラインは次のとおりです。《CBP501》CBP501は、当社独自のスクリーニング(薬剤探索)から獲得された、蛋白質カルモジュリンの制御機能を調整し複数の作用により免疫コールド(がんを攻撃するT細胞の乏しい状態。)ながんを免疫ホット(T細胞が存在しがんを攻撃できる状態。)ながんにすることで抗がん活性を示す、独特の抗がん剤(免疫着火剤)です。過去の試験で得られたデータから、免疫系抗がん剤との併用により薬効を高める効果が期待できることがわかったことから、現在は免疫チェックポイント阻害抗体との併用による第2相臨床試験(対象:膵臓がん)を実施しつつ、次相臨床試験の準備を進めています。《CBS9106》当社が創出した可逆的CRM1(XPO1)阻害剤であるCBS9106は、前臨床試験を終了した段階で、同化合物の開発・製造・商業化にかかる全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を米国Stemline Therapeutics, Inc.に供与するライセンス契約を締結しました。現在Stemline社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了し、次相臨床試験の計画が進められています。《後続パイプライン》上記2つの臨床開発段階のパイプラインのほか、これらの研究開発の過程で新たに得られた知見を踏まえて創出したCBP-A08、がんの治癒を目指す新しいコンセプトから創出したCBT005、静岡県立大学との共同研究により最適化を進めているIDO/TDO阻害剤など、新規候補化合物の創出・開発パイプラインの拡充に向けて、探索研究を実施しています。 化合物併用対象探索創出最適化前臨床試験臨床試験提携・共同研究第1相第2相第3相CBP501シスプラチン・ニボルマブ膵臓がん3次治療■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ CBS9106(felezonexor)なし固形がん■■■■■■■■■■■■□□□□ Stemline社CBP-A08未定 ■■■■■■■■ CBT005未定 ■■■■■■■ IDO/TDO阻害剤未定 □□□□■■ 静岡県立大※表中の■は自社による進捗、□は他社による進捗を示す。(4) 当社事業の当面の課題と施策 当社事業における当面の課題と施策は、概ね優先順位順に次のとおりです。① CBP501について開発を加速し、成功確率を最大化する。当社は現在、最先行の抗がん剤候補化合物CBP501に関して、製薬企業等との提携関係に依存しない「創薬パイプライン型」の開発を志向しています。 ② 基礎研究を継続し、既存パイプラインに関する知見を深め、次世代パイプラインの創出を図る。当社は、臨床開発段階のプロジェクトのほか、前述のとおり、基礎研究活動を絶えず実施しています。また、研究開発にかかる知的財産権の管理等の費用も継続的に発生しています。これらの取組みは、当社の中長期的な収益獲得と企業価値向上に欠かせないものですが、それらの成果による現実の収益を獲得するまでには一定の期間を要することから、間接金融による資金調達は極めて困難です。したがって、これらの課題と施策を可能とするための直接金融による継続的な資金調達も併せて当面の優先的な課題と施策のひとつと位置づけています。 (5) 製薬企業との戦略提携を含む開発体制の選択 医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。 このことから、当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略であるとこれまで一般に言われ、早期臨床開発と後期臨床開発の役割分担の形が世界的な標準となっていると言われてきました。 しかしながら前述のとおり、①製薬企業等の提携方針の変化に伴う開発途上化合物に対する提携意欲の低下、②臨床試験の規模が比較的小さくなったことと創薬企業の資金調達環境が大幅に改善されたことから製薬企業の資金に頼らずとも新薬承認獲得までの開発が可能になったこと、③製薬企業との提携は最速かつ成功確率最大の開発進行に寄与せず、むしろ阻害要因にもなりかねないと知られてきたこと、などの理由から、この状況は大きく変化し、創薬企業は製薬企業等との提携に依存しない各パイプラインに最適な開発戦略を立案・選択することが求められています。 一方で、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在しており、化合物の特性や開発の状況等に応じてこれらを活用することももちろん考えられます。 現在当社は、CBP501に関しては、2010年6月に武田薬品工業株式会社との共同事業化契約を解消した後、臨床試験を当社単独で進めてきました。現在は、承認申請までの臨床試験完遂を目指す資金調達を実施するとともに、すべての臨床試験を当社のリスク負担で実施し中長期的な企業価値の最大化を図る「創薬パイプライン型」開発を志向しています。これと並行して、地域等を区切った部分的な新規提携パートナーの獲得を目指す活動も進めています。 一方、CBS9106については、2014年12月、Stemline社と全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結し、戦略提携に基づき当社にとって比較的リスクの小さな開発体制を選択しました。現在同社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了し、次相臨床試験の計画が進められています。 (6) 研究開発における外部機関との連携 当社は、がん領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます。)を活用しています。 基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述の次世代化合物の創出に向けて、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(一般財団法人ふじのくに医療城下町推進機構、静岡県立大学)との共同研究を進めています。 臨床開発においては、抗がん剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。 また、当社は、抗がん剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(SAB)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米がん学会会長・米国がん治療学会会長を歴任した著名ながん臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗がん剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、2002年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
FY2022|4,956 文字|出典 docID: S100P8IV
3【事業の内容】 当社は、抗がん剤の基礎研究(創薬コンセプトの検討、当該コンセプトに基づき構築した手法による医薬品候補化合物の選別、簡易動物実験、既に開発段階に進んだ抗がん剤候補化合物に関する基礎データの収集・解析等。)および早期臨床開発(臨床試験開始申請直前に実施する「前臨床試験」ならびに臨床試験の前半部分。)に取り組んでいる創薬企業です。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントです。 (1) 基本戦略 当社は、自社独特の創薬アプローチを活かした抗がん剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。 特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます。)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。 この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。 ・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。 ・当社の有する薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。 ・抗がん剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。 ・当社の権利を最大限確保するため、開発段階と当社の財務体力等に応じた適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖を補完・完結する。 当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減していきたいと考えています。 (2) 創薬事業 一般に創薬(新薬の創出)は、(ア) 創薬コンセプト(科学的根拠に立脚し、ある方法によって疾患を治療し得ると考え、その作用を有する化合物等が新しい医薬品になり得るとする仮説。)に基づいて候補化合物を探索・選別する「探索」段階(イ) (ア)で獲得された候補化合物について試験管内や動物での実験を実施し候補化合物の分子構造等を調整する「最適化」段階(ウ) 臨床試験開始申請に必要なデータを揃える前臨床試験を実施する「前臨床試験」段階(エ) 規制当局の許可を得て臨床試験(医薬品としての承認を得るために行うヒト試験。)を実施する「臨床試験」段階の順に進行します。 臨床試験段階はさらに、主に候補化合物の安全性を確認する第1相試験、比較的少数の患者様で候補化合物の有効性・安全性および用法用量を探索的に検討する第2相試験、医薬品として薬効を証明する第3相試験に大別されます。 通常の医薬品において臨床第1相試験は健康なボランティアを被験者としますが、当社が開発を目指す抗がん剤の領域では、抗がん剤に多い重篤な副作用への懸念から、末期がん患者ボランティアの方を被験者として臨床第1相試験を実施します。このため、第1相試験の前半では主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのあるがん腫を選定し、当該がん腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施する手法が多く採られます。この手法によるCBP501臨床第1b相試験の結果から、膵臓がんをCBP501臨床第2相試験の対象に選定し、現在はCBP501の有効性・安全性および用法用量を検討する臨床第2相試験を実施しています。 (3) 当社の開発パイプライン 「開発パイプライン」とは、創薬製薬領域において、開発中の医薬品候補化合物群を指す語です。 一般に医薬品開発は成功確率が低く、リスク分散の意味でいかに豊富で有望なパイプラインを継続的に有するかが製薬企業や創薬企業の中長期的な企業価値の基本となります。 新たなパイプラインを確保する方法は、当社のような創薬企業にとっては専ら自らの創薬コンセプトに基づいた新規候補化合物の「探索」「最適化」となります。製薬企業等においては、自社による創出のほか、創薬企業等との提携に基づくライセンスによるパイプライン獲得が図られます。 創薬企業の長期的な目的は新薬の承認獲得とその売上による収益獲得ですが、それに至るために必要な長期間かつ莫大な資金(一般にひとつの医薬品を開発するために必要な期間は約15年・必要な資金は数百億円といわれます。)を独力で確保することは難しく、多くの場合、短期中期的な目標として、自社で開発中の候補化合物について製薬企業等との提携を成立させ当該候補化合物を相手方開発パイプラインのひとつとすることによるライセンス収益の獲得と財務基盤の安定・強化を目指します。 当社の開発パイプラインは次のとおりです。《CBP501》CBP501は、当社独自のスクリーニング(薬剤探索)から獲得された、蛋白質カルモジュリンの制御機能を調整し複数の作用により免疫コールド(がんを攻撃するT細胞の乏しい状態。)ながんを免疫ホット(T細胞が存在しがんを攻撃できる状態。)ながんにすることで抗がん活性を示す、独特の抗がん剤(免疫着火剤)です。過去の試験で得られたデータから、免疫系抗がん剤との併用により薬効を高める効果が期待できることがわかったことから、現在は免疫チェックポイント阻害抗体との併用による第2相臨床試験(対象:膵臓がん)を実施しています。《CBS9106》当社が創出した可逆的CRM1(XPO1)阻害剤であるCBS9106は、前臨床試験を終了した段階で、同化合物の開発・製造・商業化にかかる全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を米国Stemline Therapeutics, Inc.に供与するライセンス契約を締結しました。現在Stemline社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了し、次相臨床試験の計画が進められています。《後続パイプライン》上記2つの臨床開発段階のパイプラインのほか、これらの研究開発の過程で新たに得られた知見を踏まえて創出したCBP-A08、がんの治癒を目指す新しいコンセプトから創出したCBT005、静岡県立大学との共同研究により最適化を進めているIDO/TDO阻害剤など、新規候補化合物の創出・開発パイプラインの拡充に向けて、探索研究を実施しています。 化合物併用対象探索創出最適化前臨床試験臨床試験提携・共同研究第1相第2相第3相CBP501シスプラチン・ニボルマブ膵臓がん3次治療■■■■■■■■■■■■■■■■■■ CBS9106(felezonexor)なし固形がん■■■■■■■■■■■■□□□□ Stemline社CBP-A08未定 ■■■■■■■■ CBT005未定 ■■■■■■■ IDO/TDO阻害剤未定 □□□□■■ 静岡県立大※表中の■は自社による進捗、□は他社による進捗を示す。(4) 当社事業の当面の課題と施策 当社事業における当面の課題と施策は、概ね優先順位順に次のとおりです。① CBP501について製薬企業等との提携を獲得する。当社は現在、CBP501にかかる製薬企業等との提携関係を有していません。製薬企業等との提携を獲得して当社の中長期的開発基盤を強化し短期中期的な収益に寄与するためには、これまでの提携企業獲得活動を継続するほか、世界的な注目の集まる免疫系抗がん剤との併用試験のひとつである現在の臨床第2相試験を迅速に進めて良好なデータを獲得し、提携候補製薬企業等にとっての魅力を示すことが必要です。 ② 基礎研究を継続し、既存パイプラインに関する知見を深め、次世代パイプラインの創出を図る。当社は、臨床開発段階のプロジェクトのほか、前述のとおり、基礎研究活動を絶えず実施しています。また、研究開発にかかる知的財産権の管理等の費用も継続的に発生しています。これらの取組みは、短期中期的には既存パイプラインの提携魅力を向上させるほか、当社の長期的な収益獲得と企業価値向上に欠かせないものですが、それらの成果による現実の収益を獲得するまでには一定の期間を要することから間接金融による資金調達は極めて困難であり、当面は直接金融による継続的な資金調達によらざるを得ません。 (5) 製薬企業との戦略提携 医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略です。 創薬企業と製薬企業等とがこのような役割分担を行うようになった背景として、分子生物学を主体とした生命科学の発達により、従来とは異なり、個々の研究テーマに対する専門性の高い研究力が求められるようになったことが挙げられます。実際に米国などでは、有力な新薬の多くが創薬企業によって開発され、または創薬企業からのライセンス供与などの形で創薬企業と戦略提携した製薬企業等によって開発されており、この役割分担の形は世界的な標準となっていると言えます。 また、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在します。 CBP501に関しては、当社は、2007年3月に武田薬品工業株式会社との間でCBP501に関する共同事業化契約を締結し共同開発を進めていましたが、2010年6月に本契約を解消しています。その後、当社は、悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺がんを対象とする海外での臨床第2相試験を当社単独で進めてきました。現在は、新規提携パートナーの早期獲得を目指しつつ、その確率を高めるために、新たな併用組み合わせによる臨床試験を進めています。 CBS9106については、2014年12月、Stemline社と全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。現在同社は、CBS9106(felezonexor)の臨床第1相試験を完了し、次相臨床試験の計画が進められています。 (6) 研究開発における外部機関との連携 当社は、がん領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます。)を活用しています。 基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述の次世代化合物の創出に向けて、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(一般財団法人ふじのくに医療城下町推進機構、静岡県立大学)との共同研究を進めています。 臨床開発においては、抗がん剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。 また、当社は、抗がん剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(SAB)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米がん学会会長・米国がん治療学会会長を歴任した著名ながん臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗がん剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、2002年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
FY2021|4,974 文字|出典 docID: S100MHTV
3【事業の内容】 当社は、抗癌剤の基礎研究(創薬コンセプトの検討、当該コンセプトに基づき構築した手法による医薬品候補化合物の選別、簡易動物実験、既に開発段階に進んだ抗癌剤候補化合物に関する基礎データの収集・解析等)および早期臨床開発(臨床試験開始申請直前に実施する「前臨床試験」ならびに臨床試験の前半部分)に取り組んでいる創薬企業です。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントです。 (1) 基本戦略 当社は、自社独特の創薬アプローチを活かした抗癌剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。 特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。 この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。 ・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。 ・当社の有する薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。 ・抗癌剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。 ・当社の権利を最大限確保するため、開発段階と当社の財務体力等に応じた適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖を補完・完結する。 当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減していきたいと考えています。 (2) 創薬事業 一般に創薬(新薬の創出)は、(ア) 創薬コンセプト(科学的根拠に立脚し、ある方法によって疾患を治療し得ると考え、その作用を有する化合物等が新しい医薬品になり得るとする仮説)に基づいて候補化合物を探索・選別する「探索」段階(イ) (ア)で獲得された候補化合物について試験管内や動物での実験を実施し候補化合物の分子構造等を調整する「最適化」段階(ウ) 臨床試験開始申請に必要なデータを揃える前臨床試験を実施する「前臨床試験」段階(エ) 規制当局の許可を得て臨床試験(医薬品としての承認を得るために行うヒト試験)を実施する「臨床試験」段階の順に進行します。 臨床試験段階はさらに、主に候補化合物の安全性を確認する第1相試験、比較的少数の患者様で候補化合物の有効性・安全性および用法用量を探索的に検討する第2相試験、医薬品として薬効を証明する第3相試験に大別されます。 通常の医薬品において臨床第1相試験は健康なボランティアを被験者としますが、当社が開発を目指す抗癌剤の領域では、抗癌剤に多い重篤な副作用への懸念から、末期癌患者ボランティアの方を被験者として臨床第1相試験を実施します。このため、第1相試験の前半では主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのある癌腫を選定し、当該癌腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施する手法が多く採られます。当社の進めているCBP501臨床第1b相試験も、提携先Stemline社の進めているCBS9106(SL-801、felezonexor)臨床第1相試験も、この手法によるものです。 (3) 当社の開発パイプライン 「開発パイプライン」とは、創薬製薬領域において、開発中の医薬品候補化合物群を指す語です。 一般に医薬品開発は成功確率が低く、リスク分散の意味でいかに豊富で有望なパイプラインを継続的に有するかが製薬企業や創薬企業の中長期的な企業価値の基本となります。 新たなパイプラインを確保する方法は、当社のような創薬企業にとっては専ら自らの創薬コンセプトに基づいた新規候補化合物の「探索」「最適化」となります。製薬企業等においては、自社による創出のほか、創薬企業等との提携に基づくライセンスによるパイプライン獲得が図られます。 創薬企業の長期的な目的は新薬の承認獲得とその売上による収益獲得ですが、それに至るために必要な長期間かつ莫大な資金(一般にひとつの医薬品を開発するために必要な期間は約15年・必要な資金は数百億円といわれます)を独力で確保することは難しく、多くの場合、短期中期的な目標として、自社で開発中の候補化合物について製薬企業等との提携を成立させ当該候補化合物を相手方開発パイプラインのひとつとすることによるライセンス収益の獲得と財務基盤の安定・強化を目指します。 当社の開発パイプラインは次のとおりです。《CBP501》CBP501は、当社独自のスクリーニング(薬剤探索)から獲得された、蛋白質カルモジュリンの制御機能を調整し複数の作用により免疫コールド(癌を攻撃するT細胞の乏しい状態)な癌を免疫ホット(T細胞が存在し癌を攻撃できる状態)な癌にすることで抗癌活性を示す、独特の抗癌剤(免疫着火剤)です。過去の試験で得られたデータから、免疫系抗癌剤との併用により薬効を高める効果が期待できることがわかったことから、現在は免疫チェックポイント阻害抗体との併用による臨床試験(フェーズ1b試験)を実施しています。同臨床試験は現在、後半部分である拡大相(対象:膵臓癌・直腸大腸癌)の投与を終えた最終盤段階にあります。第2相臨床試験の開始申請は既に承認され、投与開始に向けて準備を進めています。 《CBS9106》当社が創出した可逆的CRM1(XPO1)阻害剤であるCBS9106は、前臨床試験を終了した段階で、同化合物の開発・製造・商業化にかかる全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を米国Stemline Therapeutics, Inc(以下「Stemline社」といいます。)に供与するライセンス契約を締結しました。現在は、Stemline社が進めている臨床第1相試験の支援を行い、これに伴う技術アドバイザリーフィー収益を得ています。 《後続パイプライン》上記2つの臨床開発段階のパイプラインのほか、これらの研究開発の過程で新たに得られた知見を踏まえて創出したCBP-A08、静岡県立大学との共同研究により最適化を進めているIDO/TDO阻害剤など、新規候補化合物の創出・開発パイプラインの拡充に向けて、探索研究を実施しています。 化合物併用対象探索創出最適化前臨床試験臨床試験提携・共同研究第1相第2相第3相CBP501シスプラチン・ニボルマブ膵臓がん3次治療■■■■■■■■■■■■■■■■■ CBS9106(SL-801)なし固形癌■■■■■■■■■■■■□□□ Stemline社CBP-A08未定 ■■■■■■■■ IDO/TDO阻害剤未定 □□□□■■ 静岡県立大※表中の■は自社による進捗、□は他社による進捗を示す。(4) 当社事業の当面の課題と施策 当社事業における当面の課題と施策は、概ね優先順位順に次のとおりです。① CBP501について製薬企業等との提携を獲得する。当社は現在、CBP501にかかる製薬企業等との提携関係を有していません。製薬企業等との提携を獲得して当社の中長期的開発基盤を強化し短期中期的な収益に寄与するためには、これまでの提携企業獲得活動を継続するほか、世界的な注目の集まる免疫系抗癌剤との併用試験のひとつである現在の臨床第1b相試験の拡大相を迅速に進めて良好なデータを獲得し、提携候補製薬企業等にとっての魅力を示すことが必要です。 ② 基礎研究を継続し、既存パイプラインに関する知見を深め、次世代パイプラインの創出を図る。当社は、臨床開発段階のプロジェクトのほか、前述のとおり、基礎研究活動を絶えず実施しています。また、研究開発にかかる知的財産権の管理等の費用も継続的に発生しています。これらの取組みは、短期中期的には既存パイプラインの提携魅力を向上させるほか、当社の長期的な収益獲得と企業価値向上に欠かせないものですが、それらの成果による現実の収益を獲得するまでには一定の期間を要することから間接金融による資金調達は極めて困難であり、当面は直接金融による継続的な資金調達によらざるを得ません。 (5) 製薬企業との戦略提携 医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略です。 創薬企業と製薬企業等とがこのような役割分担を行うようになった背景として、分子生物学を主体とした生命科学の発達により、従来とは異なり、個々の研究テーマに対する専門性の高い研究力が求められるようになったことが挙げられます。実際に米国などでは、有力な新薬の多くが創薬企業によって開発され、または創薬企業からのライセンス供与などの形で創薬企業と戦略提携した製薬企業等によって開発されており、この役割分担の形は世界的な標準となっていると言えます。 また、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在します。 CBP501に関しては、当社は、2007年3月に武田薬品工業株式会社との間でCBP501に関する共同事業化契約を締結し共同開発を進めていましたが、2010年6月に本契約を解消しています。その後、当社は、悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌を対象とする海外での臨床第2相試験を当社単独で進めてきました。現在は、新規提携パートナーの早期獲得を目指しつつ、その確率を高めるために、新たな併用組み合わせによる臨床試験を進めています。 CBS9106については、2014年12月、Stemline社と全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。現在同社は、CBS9106(同社における開発コード:SL-801、一般名felezonexor)の臨床第1相試験を実施しています。 (6) 研究開発における外部機関との連携 当社は、癌領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます)を活用しています。 基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述の次世代化合物の創出に向けて、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(一般財団法人ふじのくに医療城下町推進機構、静岡県立大学)との共同研究を進めています。 臨床開発においては、抗癌剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。 また、当社は、抗癌剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(SAB)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米癌学会会長・米国癌治療学会会長を歴任した著名な癌臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗癌剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、2002年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
FY2020|5,298 文字|出典 docID: S100JRLO
3【事業の内容】 当社は、抗癌剤の基礎研究(創薬コンセプトの検討、当該コンセプトに基づき構築した手法による医薬品候補化合物の選別、簡易動物実験、既に開発段階に進んだ抗癌剤候補化合物に関する基礎データの収集・解析等)および早期臨床開発(臨床試験開始申請直前に実施する「前臨床試験」ならびに臨床試験の前半部分)に取り組んでいる創薬企業です。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントです。 (1) 基本戦略 当社は、自社独特の創薬アプローチを活かした抗癌剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。 特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。 この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。 ・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。 ・当社の有する薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。 ・抗癌剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。 ・当社の権利を最大限確保するため、開発段階と当社の財務体力等に応じた適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖を補完・完結する。 当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減していきたいと考えています。 (2) 創薬事業 一般に創薬(新薬の創出)は、(ア) 創薬コンセプト(科学的根拠に立脚し、ある方法によって疾患を治療し得ると考え、その作用を有する化合物等が新しい医薬品になり得るとする仮説)に基づいて候補化合物を探索・選別する「探索」段階(イ) (ア)で獲得された候補化合物について試験管内や動物での実験を実施し候補化合物の分子構造等を調整する「最適化」段階(ウ) 臨床試験開始申請に必要なデータを揃える前臨床試験を実施する「前臨床試験」段階(エ) 規制当局の許可を得て臨床試験(医薬品としての承認を得るために行うヒト試験)を実施する「臨床試験」段階の順に進行します。 臨床試験段階はさらに、主に候補化合物の安全性を確認する第1相試験、比較的少数の患者様で候補化合物の有効性・安全性および用法用量を探索的に検討する第2相試験、医薬品として薬効を証明する第3相試験に大別されます。 通常の医薬品において臨床第1相試験は健康なボランティアを被験者としますが、当社が開発を目指す抗癌剤の領域では、抗癌剤に多い重篤な副作用への懸念から、末期癌患者ボランティアの方を被験者として臨床第1相試験を実施します。このため、第1相試験の前半では主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのある癌腫を選定し、当該癌腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施する手法が多く採られます。当社の進めているCBP501臨床第1b相試験も、提携先Stemline社の進めているCBS9106(SL-801、felezonexor)臨床第1相試験も、この手法によるものです。 (3) 当社の開発パイプライン 「開発パイプライン」とは、創薬製薬領域において、開発中の医薬品候補化合物群を指す語です。 一般に医薬品開発は成功確率が低く、リスク分散の意味でいかに豊富で有望なパイプラインを継続的に有するかが製薬企業や創薬企業の中長期的な企業価値の基本となります。 新たなパイプラインを確保する方法は、当社のような創薬企業にとっては専ら自らの創薬コンセプトに基づいた新規候補化合物の「探索」「最適化」となります。製薬企業等においては、自社による創出のほか、創薬企業等との提携に基づくライセンスによるパイプライン獲得が図られます。 創薬企業の長期的な目的は新薬の承認獲得とその売上による収益獲得ですが、それに至るために必要な長期間かつ莫大な資金(一般にひとつの医薬品を開発するために必要な期間は約15年・必要な資金は数百億円といわれます)を独力で確保することは難しく、多くの場合、短期中期的な目標として、自社で開発中の候補化合物について製薬企業等との提携を成立させ当該候補化合物を相手方開発パイプラインのひとつとすることによるライセンス収益の獲得と財務基盤の安定・強化を目指します。 当社の開発パイプラインは次のとおりです。《CBP501》創業時からの創薬アプローチに基づいた探索から獲得された、当社の主要パイプラインです。多様な細胞機能に関わる蛋白質カルモジュリンの制御機能を調整し複数の作用により抗癌活性を示す独特の抗癌剤(カルモジュリンモジュレーター)です。過去に、既存の抗癌剤シスプラチンおよびペメトレキセドとの併用で悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌(扁平上皮癌を除きます。)を対象とする臨床第2相試験を完了しており、その試験で得られた新たなデータから、免疫系抗癌剤との併用により薬効を高める効果が期待できることがわかったことから、現在は抗癌剤シスプラチンと免疫系抗癌剤ニボルマブ(商品名:オプジーボ)との併用による臨床第1b相試験(最初の臨床第1相試験と内容の異なる試験なので区別のため呼称にbを付しています)を2017年10月から実施中です。2018年中に臨床第1b相の前半の試験を終え、この試験の手応えを踏まえ、現在は対象を膵臓癌と直腸大腸癌に絞り込んだ「拡大相」試験を実施中です。 《CBS9106》当社が創出した可逆的CRM1(XPO1)阻害剤であるCBS9106は、前臨床試験を終了した段階で、同化合物の開発・製造・商業化にかかる全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を米国Stemline Therapeutics, Inc(以下「Stemline社」といいます。)に供与するライセンス契約を締結しました。現在は、Stemline社が進めている臨床第1相試験の支援を行い、これに伴う技術アドバイザリーフィー収益を得ています。 《次世代化合物》上記2つの臨床開発段階のパイプラインのほか、当社は、癌免疫に着目した独自のスクリーニングによる新たな薬剤候補化合物の探索と、既存パイプラインの化合物に関する基礎研究の成果を活かした改良等により、次世代化合物の創出を図っています。多数のアプローチで創出を図る中、CBP501に改良を加えて「最適化」段階を進めた結果、マウスを用いた動物実験で抗癌活性においてCBP501を上回る次世代候補化合物CBP-A08を2017年6月に獲得できています。 化合物併用対象探索創出最適化前臨床試験臨床試験提携・共同研究第1相第2相第3相CBP501シスプラチン・ペメトレキセド悪性胸膜中皮腫■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 非小細胞肺癌■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ シスプラチン・ニボルマブ固形癌(拡大相:膵臓癌・直腸大腸癌)■■■■■■■■■■■■■■■ CBS9106(SL-801)なし固形癌■■■■■■■■■■■■□□□ Stemline社CBP-A08未定 ■■■■■■■■ CBP-B未定 ■■■■■■■ IDO/TDO阻害剤未定 □□□□■■ 静岡県立大非公表非公表 ■■■ ファルマバレー非公表非公表 ■■ 富士フイルム※表中の■は自社による進捗、□は他社による進捗を示す。(4) 当社事業の当面の課題と施策 当社事業における当面の課題と施策は、概ね優先順位順に次のとおりです。① CBP501について製薬企業等との提携を獲得する。当社は現在、CBP501にかかる製薬企業等との提携関係を有していません。製薬企業等との提携を獲得して当社の中長期的開発基盤を強化し短期中期的な収益に寄与するためには、これまでの提携企業獲得活動を継続するほか、世界的な注目の集まる免疫系抗癌剤との併用試験のひとつである現在の臨床第1b相試験の拡大相を迅速に進めて良好なデータを獲得し、提携候補製薬企業等にとっての魅力を示すことが必要です。 ② 基礎研究を継続し、既存パイプラインに関する知見を深め、次世代パイプラインの創出を図る。当社は、臨床開発段階のプロジェクトのほか、前述のとおり、基礎研究活動を絶えず実施しています。また、研究開発にかかる知的財産権の管理等の費用も継続的に発生しています。これらの取組みは、短期中期的には既存パイプラインの提携魅力を向上させるほか、当社の長期的な収益獲得と企業価値向上に欠かせないものですが、それらの成果による現実の収益を獲得するまでには一定の期間を要することから間接金融による資金調達は極めて困難であり、当面は直接金融による継続的な資金調達によらざるを得ません。 (5) 製薬企業との戦略提携 医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略です。 創薬企業と製薬企業等とがこのような役割分担を行うようになった背景として、分子生物学を主体とした生命科学の発達により、従来とは異なり、個々の研究テーマに対する専門性の高い研究力が求められるようになったことが挙げられます。実際に米国などでは、有力な新薬の多くが創薬企業によって開発され、または創薬企業からのライセンス供与などの形で創薬企業と戦略提携した製薬企業等によって開発されており、この役割分担の形は世界的な標準となっていると言えます。 また、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在します。 CBP501に関しては、当社は、2007年3月に武田薬品工業株式会社との間でCBP501に関する共同事業化契約を締結し共同開発を進めていましたが、2010年6月に本契約を解消しています。その後、当社は、悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌を対象とする海外での臨床第2相試験を当社単独で進めてきました。現在は、新規提携パートナーの早期獲得を目指しつつ、その確率を高めるために、新たな併用組み合わせによる臨床試験(フェーズ1b試験)を進めています。 CBS9106については、2014年12月、Stemline社と全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。現在同社は、CBS9106(同社における開発コード:SL-801、一般名felezonexor)の臨床第1相試験を実施しています。 (6) 研究開発における外部機関との連携 当社は、癌領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます)を活用しています。 基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述の次世代化合物の創出に向けて、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(一般財団法人ふじのくに医療城下町推進機構、静岡県立大学)、富士フイルム株式会社との共同研究を進めています。 臨床開発においては、抗癌剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。 また、当社は、抗癌剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(SAB)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米癌学会会長・米国癌治療学会会長を歴任した著名な癌臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗癌剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、2002年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
FY2019|5,343 文字|出典 docID: S100H0O1
3【事業の内容】 当社は、抗癌剤の基礎研究(創薬コンセプトの検討、当該コンセプトに基づき構築した手法による医薬品候補化合物の選別、簡易動物実験、既に開発段階に進んだ抗癌剤候補化合物に関する基礎データの収集・解析等)および早期臨床開発(臨床試験開始申請直前に実施する「前臨床試験」ならびに臨床試験の前半部分)に取り組んでいる創薬企業です。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントです。 (1) 基本戦略 当社は、自社独特の創薬アプローチを活かした抗癌剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。 特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。 この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。 ・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。 ・当社の細胞表現型薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。 ・抗癌剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。 ・当社の権利を最大限確保するため、開発段階と当社の財務体力等に応じた適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖を補完・完結する。 当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減していきたいと考えています。 (2) 創薬事業 一般に創薬(新薬の創出)は、(ア) 創薬コンセプト(科学的根拠に立脚し、ある方法によって疾患を治療し得ると考え、その作用を有する化合物等が新しい医薬品になり得るとする仮説)に基づいて候補化合物を探索・選別する「探索」段階(イ) (ア)で獲得された候補化合物について試験管内や動物での実験を実施し候補化合物の分子構造等を調整する「最適化」段階(ウ) 臨床試験開始申請に必要なデータを揃える前臨床試験を実施する「前臨床試験」段階(エ) 規制当局の許可を得て臨床試験(医薬品としての承認を得るために行うヒト試験)を実施する「臨床試験」段階の順に進行します。 臨床試験段階はさらに、主に候補化合物の安全性を確認する第1相試験、比較的少数の患者様で候補化合物の有効性・安全性および用法用量を探索的に検討する第2相試験、医薬品として薬効を証明する第3相試験に大別されます。 通常の医薬品において臨床第1相試験は健康なボランティアを被験者としますが、当社が開発を目指す抗癌剤の領域では、抗癌剤に多い重篤な副作用への懸念から、末期癌患者ボランティアの方を被験者として臨床第1相試験を実施します。このため、第1相試験の前半では主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのある癌腫を選定し、当該癌腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施する手法が多く採られます。当社の進めているCBP501臨床第1b相試験も、提携先Stemline社の進めているCBS9106(SL-801)臨床第1相試験も、この手法によるものです。 (3) 当社の開発パイプライン 「開発パイプライン」とは、創薬製薬領域において、開発中の医薬品候補化合物群を指す語です。 一般に医薬品開発は成功確率が低く、リスク分散の意味でいかに豊富で有望なパイプラインを継続的に有するかが製薬企業や創薬企業の中長期的な企業価値の基本となります。 新たなパイプラインを確保する方法は、当社のような創薬企業にとっては専ら自らの創薬コンセプトに基づいた新規候補化合物の「探索」「最適化」となります。製薬企業等においては、自社による創出のほか、創薬企業等との提携に基づくライセンスによるパイプライン獲得が図られます。 創薬企業の長期的な目的は新薬の承認獲得とその売上による収益獲得ですが、それに至るために必要な長期間かつ莫大な資金(一般にひとつの医薬品を開発するために必要な期間は約15年・必要な資金は数百億円といわれます)を独力で確保することは難しく、多くの場合、短期中期的な目標として、自社で開発中の候補化合物について製薬企業等との提携を成立させ当該候補化合物を相手方開発パイプラインのひとつとすることによるライセンス収益の獲得と財務基盤の安定・強化を目指します。 当社の開発パイプラインは次のとおりです。《CBP501》創業時からの創薬アプローチに基づいた探索から獲得された、当社の主要パイプラインです。多様な細胞機能に関わる蛋白質カルモジュリンの制御機能を調整し複数の作用により抗癌活性を示す独特の抗癌剤(カルモジュリンモジュレーター)です。過去に、既存の抗癌剤シスプラチンおよびペメトレキセドとの併用で悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌(扁平上皮癌を除きます。)を対象とする臨床第2相試験を完了しており、その試験で得られた新たなデータから、免疫系抗癌剤との併用により薬効を高める効果が期待できることがわかったことから、現在は抗癌剤シスプラチンと免疫系抗癌剤ニボルマブ(商品名:オプジーボ)との併用による臨床第1b相試験(最初の臨床第1相試験と内容の異なる試験なので区別のため呼称にbを付しています)を2017年10月から実施中です。2018年中に臨床第1b相の前半の試験を終え、この試験の手応えを踏まえ、現在は対象を膵臓癌と直腸大腸癌に絞り込んだ「拡大相」試験を実施中です。 《CBS9106》当社が創出した可逆的CRM1(XPO1)阻害剤であるCBS9106は、前臨床試験を終了した段階で、同化合物の開発・製造・商業化にかかる全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を米国Stemline Therapeutics, Inc(以下「Stemline社」といいます。)に供与するライセンス契約を締結しました。現在は、Stemline社が進めている臨床第1相試験の支援を行い、これに伴う技術アドバイザリーフィー収益を得ています。 《次世代化合物》上記2つの臨床開発段階のパイプラインのほか、当社は、独自のスクリーニングによる新たな薬剤候補化合物の探索と、既存パイプラインの化合物に関する基礎研究の成果を活かした改良等により、次世代化合物の創出を図っています。多数のアプローチで創出を図る中、CBP501に改良を加えて「最適化」段階を進めた結果、マウスを用いた動物実験で抗癌活性においてCBP501を上回る次世代候補化合物CBP-A08を2017年6月に獲得できています。 化合物併用対象探索創出最適化前臨床試験臨床試験提携・共同研究第1相第2相第3相CBP501シスプラチン・ペメトレキセド悪性胸膜中皮腫■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 非小細胞肺癌■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ シスプラチン・ニボルマブ固形癌(拡大相:膵臓癌・直腸大腸癌)■■■■■■■■■■■■■■ CBS9106(SL-801)なし固形癌■■■■■■■■■■■■□□□ Stemline社CBP-A08未定 ■■■■■■■■ CBP-B未定 ■■■■■■■ IDO/TDO阻害剤未定 □□□□■■ 静岡県立大非公表非公表 ■■■ ファルマバレー非公表非公表 ■■ 富士フイルム※表中の■は自社による進捗、□は他社による進捗を示す。(4) 当社事業の当面の課題と施策 当社事業における当面の課題と施策は、概ね優先順位順に次のとおりです。① CBP501について製薬企業等との提携を獲得する。当社は現在、CBP501にかかる製薬企業等との提携関係を有していません。製薬企業等との提携を獲得して当社の中長期的開発基盤を強化し短期中期的な収益に寄与するためには、これまでの提携企業獲得活動を継続するほか、世界的な注目の集まる免疫系抗癌剤との併用試験のひとつである現在の臨床第1b相試験の拡大相を迅速に進めて良好なデータを獲得し、提携候補製薬企業等にとっての魅力を示すことが必要です。 ② 基礎研究を継続し、既存パイプラインに関する知見を深め、次世代パイプラインの創出を図る。当社は、臨床開発段階のプロジェクトのほか、前述のとおり、基礎研究活動を絶えず実施しています。また、研究開発にかかる知的財産権の管理等の費用も継続的に発生しています。これらの取組みは、短期中期的には既存パイプラインの提携魅力を向上させるほか、当社の長期的な収益獲得と企業価値向上に欠かせないものですが、それらの成果による現実の収益を獲得するまでには一定の期間を要することから間接金融による資金調達は極めて困難であり、当面は直接金融による継続的な資金調達によらざるを得ません。③ CBP-A08のパイプライン化前述のCBP-A08を当社の3番目のパイプラインとするには、このあと「前臨床試験」段階に進みこれをクリアする必要があります。 (5) 製薬企業との戦略提携 医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略です。 創薬企業と製薬企業等とがこのような役割分担を行うようになった背景として、分子生物学を主体とした生命科学の発達により、従来とは異なり、個々の研究テーマに対する専門性の高い研究力が求められるようになったことが挙げられます。実際に米国などでは、有力な新薬の多くが創薬企業によって開発され、または創薬企業からのライセンス供与などの形で創薬企業と戦略提携した製薬企業等によって開発されており、この役割分担の形は世界的な標準となっていると言えます。 また、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在します。 CBP501に関しては、当社は、2007年3月に武田薬品工業株式会社との間でCBP501に関する共同事業化契約を締結し共同開発を進めていましたが、2010年6月に本契約を解消しています。その後、当社は、悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌を対象とする海外での臨床第2相試験を当社単独で進めてきました。現在は、新規提携パートナーの早期獲得を目指しつつ、その確率を高めるために、新たな併用組み合わせによる臨床試験(フェーズ1b試験)を進めています。 CBS9106については、2014年12月、Stemline社と全世界(当初は日本および中国・台湾・韓国を除いていましたが、2018年8月にこれら除外地域をなくす修正を実施しました。)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。現在同社は、CBS9106(同社における開発コード:SL-801)の臨床第1相試験を実施しています。 (6) 研究開発における外部機関との連携 当社は、癌領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます)を活用しています。 基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述の次世代化合物の創出に向けて、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(一般財団法人ふじのくに医療城下町推進機構、静岡県立大学)、富士フイルム株式会社との共同研究を進めています。 臨床開発においては、抗癌剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。 また、当社は、抗癌剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(SAB)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米癌学会会長・米国癌治療学会会長を歴任した著名な癌臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗癌剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、2002年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
FY2018|5,473 文字|出典 docID: S100E5ZH
3【事業の内容】 当社は、抗癌剤の基礎研究(創薬コンセプトの検討、当該コンセプトに基づき構築した手法による医薬品候補化合物の選別、簡易動物実験、既に開発段階に進んだ抗癌剤候補化合物に関する基礎データの収集・解析等)および早期臨床開発(臨床試験開始申請直前に実施する「前臨床試験」ならびに臨床試験の前半部分)に取り組んでいる創薬企業です。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントです。 (1) 基本戦略 当社は、自社独特の創薬アプローチを活かした抗癌剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。 特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。 この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。 ・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。 ・当社の細胞表現型薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。 ・抗癌剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。 ・当社の権利を最大限確保するため、開発段階と当社の財務体力等に応じた適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖を補完・完結する。 当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減していきたいと考えています。 (2) 創薬事業 一般に創薬(新薬の創出)は、(ア) 創薬コンセプト(科学的根拠に立脚し、ある方法によって疾患を治療し得ると考え、その作用を有する化合物等が新しい医薬品になり得るとする仮説)に基づいて候補化合物を探索・選別する「探索」段階(イ) (ア)で獲得された候補化合物について試験管内や動物での実験を実施し候補化合物の分子構造等を調整する「最適化」段階(ウ) 臨床試験開始申請に必要なデータを揃える前臨床試験を実施する「前臨床試験」段階(エ) 規制当局の許可を得て臨床試験(医薬品としての承認を得るために行うヒト試験)を実施する「臨床試験」段階の順に進行します。 臨床試験段階はさらに、主に候補化合物の安全性を確認する第1相試験、比較的少数の患者様で候補化合物の有効性・安全性および用法用量を探索的に検討する第2相試験、医薬品として薬効を証明する第3相試験に大別されます。 通常の医薬品において臨床第1相試験は健康なボランティアを被験者としますが、当社が開発を目指す抗癌剤の領域では、抗癌剤に多い重篤な副作用への懸念から、末期癌患者ボランティアの方を被験者として臨床第1相試験を実施します。このため、第1相試験の前半では主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのある癌腫を選定し、当該癌腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施する手法が多く採られます。当社の進めているCBP501臨床第1b相試験も、提携先Stemline社の進めているCBS9106(SL-801)臨床第1相試験も、この手法によるものです。 (3) 当社の開発パイプライン 「開発パイプライン」とは、創薬製薬領域において、開発中の医薬品候補化合物群を指す語です。 一般に医薬品開発は成功確率が低く、リスク分散の意味でいかに豊富で有望なパイプラインを継続的に有するかが製薬企業や創薬企業の中長期的な企業価値の基本となります。 新たなパイプラインを確保する方法は、当社のような創薬企業にとっては専ら自らの創薬コンセプトに基づいた新規候補化合物の「探索」「最適化」となります。製薬企業等においては、自社による創出のほか、創薬企業等との提携に基づくライセンスによるパイプライン獲得が図られます。 創薬企業の長期的な目的は新薬の承認獲得とその売上による収益獲得ですが、それに至るために必要な長期間かつ莫大な資金(一般にひとつの医薬品を開発するために必要な期間は約15年・必要な資金は数百億円といわれます)を独力で確保することは難しく、多くの場合、短期中期的な目標として、自社で開発中の候補化合物について製薬企業等との提携を成立させ当該候補化合物を相手方開発パイプラインのひとつとすることによるライセンス収益の獲得と財務基盤の安定・強化を目指します。 当社の開発パイプラインは次のとおりです。《CBP501》創業時からの創薬アプローチに基づいた探索から獲得された、当社の主要パイプラインです。多様な細胞機能に関わる蛋白質カルモジュリンの制御機能を調整し複数の作用により抗癌活性を示す独特の抗癌剤(カルモジュリンモジュレーター)です。過去に、既存の抗癌剤シスプラチンおよびペメトレキセドとの併用で悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌(扁平上皮癌を除きます。)を対象とする臨床第2相試験を完了しており、その試験で得られた新たなデータから、免疫系抗癌剤との併用により薬効を高める効果が期待できることがわかったことから、現在は抗癌剤シスプラチンと免疫系抗癌剤ニボルマブ(商品名:オプジーボ)との併用による臨床第1b相試験(最初の臨床第1相試験と内容の異なる試験なので区別のため呼称にbを付しています)を2017年10月から実施中です。2018年中に臨床第1b相の前半の試験を終え、この試験の手応えを踏まえ複数の癌腫を選定した上で「拡大相」試験を開始できる見込みです。 《CBS9106》当社が創出した可逆的CRM1(XPO1)阻害剤であるCBS9106は、前臨床試験を終了した段階で、同化合物の開発・製造・商業化にかかる全世界(日本および中国・台湾・韓国を除きます。)における独占的権利を米国Stemline Therapeutics, Inc(以下「Stemline社」といいます。)に供与するライセンス契約を締結しました。現在は、Stemline社が進めている臨床第1相試験の支援を行いこれに伴う技術アドバイザリーフィー収益を得る傍ら、日本・中国・台湾・韓国地域における追加提携パートナー獲得を図っています。 《次世代化合物》上記2つの臨床開発段階のパイプラインのほか、当社は、独自のスクリーニングによる新たな薬剤候補化合物の探索と、既存パイプラインの化合物に関する基礎研究の成果を活かした改良等により、次世代化合物の創出を図っています。多数のアプローチで創出を図る中、CBP501に改良を加えて「最適化」段階を進めた結果、マウスを用いた動物実験で抗癌活性においてCBP501を上回る次世代候補化合物CBP-A08を2017年6月に獲得できています。 化合物併用対象探索創出最適化前臨床試験臨床試験提携・共同研究第1相第2相第3相CBP501シスプラチン・ペメトレキセド悪性胸膜中皮腫■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 非小細胞肺癌■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ シスプラチン・ニボルマブ固形癌■■■■■■■■■■■■■■ CBS9106(SL-801)なし固形癌■■■■■■■■■■■■□□□ Stemline社(除・日中台韓)CBP-A08未定 ■■■■■■■■ CBP-B未定 ■■■■■■■ IDO/TDO阻害剤未定 □□□□■■ 静岡県立大非公表非公表 ■■■ ファルマバレー非公表非公表 ■■ 富士フイルム※表中の■は自社による進捗、□は他社による進捗を示す。(4) 当社事業の当面の課題と施策 当社事業における当面の課題と施策は、概ね優先順位順に次のとおりです。① CBP501について製薬企業等との提携を獲得する。当社は現在、CBP501にかかる製薬企業等との提携関係を有していません。製薬企業等との提携を獲得して当社の中長期的開発基盤を強化し短期中期的な収益に寄与するためには、これまでの提携企業獲得活動を継続するほか、世界的な注目の集まる免疫系抗癌剤との併用試験のひとつである現在の臨床第1b相試験の拡大相を迅速に進めて良好なデータを獲得し、提携候補製薬企業等にとっての魅力を示すことが必要です。 ② CBS9106にかかる追加の提携獲得CBS9106にかかるStemline社とのライセンス契約は、日本および中国・台湾・韓国が除外されています。当該地域における追加の提携を獲得することにより、継続的な収益基盤の追加獲得を図ります。なお、「重要な後発事象」に記載のとおり、当社は2018年8月、Stemline社に対し上記除外地域にかかる権利を拡大供与しました。 ③ 基礎研究を継続し、既存パイプラインに関する知見を深め、次世代パイプラインの創出を図る。当社は、臨床開発段階のプロジェクトのほか、前述のとおり、基礎研究活動を絶えず実施しています。また、研究開発にかかる知的財産権の管理等の費用も継続的に発生しています。これらの取組みは、短期中期的には既存パイプラインの提携魅力を向上させるほか、当社の長期的な収益獲得と企業価値向上に欠かせないものですが、それらの成果による現実の収益を獲得するまでには一定の期間を要することから間接金融による資金調達は極めて困難であり、当面は直接金融による継続的な資金調達によらざるを得ません。④ CBP-A08のパイプライン化前述のCBP-A08を当社の3番目のパイプラインとするには、このあと「前臨床試験」段階に進みこれをクリアする必要があります。 (5) 製薬企業との戦略提携 医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略です。 創薬企業と製薬企業等とがこのような役割分担を行うようになった背景として、分子生物学を主体とした生命科学の発達により、従来とは異なり、個々の研究テーマに対する専門性の高い研究力が求められるようになったことが挙げられます。実際に米国などでは、有力な新薬の多くが創薬企業によって開発され、または創薬企業からのライセンス供与などの形で創薬企業と戦略提携した製薬企業等によって開発されており、この役割分担の形は世界的な標準となっていると言えます。 また、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在します。 CBP501に関しては、当社は、2007年3月に武田薬品工業株式会社との間でCBP501に関する共同事業化契約を締結し共同開発を進めていましたが、2010年6月に本契約を解消しています。その後、当社は、悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌を対象とする海外での臨床第2相試験を当社単独で進めてきました。現在は、新規提携パートナーの早期獲得を目指しつつ、その確率を高めるために、新たな併用組み合わせによる臨床試験(フェーズ1b試験)を進めています。 CBS9106については、2014年12月、Stemline社と全世界(日本および中国・台湾・韓国を除く)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。現在同社は、CBS9106(同社における開発コード:SL-801)の臨床第1相試験を実施しています。 (6) 研究開発における外部機関との連携 当社は、癌領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます)を活用しています。 基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述の次世代化合物の創出に向けて、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(一般財団法人ふじのくに医療城下町推進機構、静岡県立大学)、富士フイルム株式会社との共同研究を進めています。 臨床開発においては、抗癌剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。 また、当社は、抗癌剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(SAB)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米癌学会会長・米国癌治療学会会長を歴任した著名な癌臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗癌剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、2002年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
FY2017|9,042 文字|出典 docID: S100BEBZ
3【事業の内容】 当社は、細胞周期に関する基礎研究の成果をもとに、正常細胞に影響が少ない抗癌剤の研究および開発を単一事業として行っている、創薬企業であります。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントであります。 (1) 基本戦略 当社は、癌細胞の細胞周期(細胞分裂に至る過程)が正常細胞と異なることに着目する独特の創薬アプローチを活かした抗癌剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。 この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。 ・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。 ・当社の細胞表現型薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。 ・抗癌剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。 ・当社の権利を最大限確保するため、開発段階と当社の財務体力等に応じた適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖(*)を補完・完結する。 当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減してまいりたいと考えております。 (2) 創薬事業① 医薬品の一般的な研究開発プロセス 医薬品の研究開発プロセスは一般に、テーマに沿った化合物を探索し((a)探索研究)、獲得・創出された化合物をより最適なものに改良し((b)最適化)、動物での検証((c)前臨床試験(非臨床試験(*)))を実施した後、各国の医薬品許認可審査機関(日本の場合は厚生労働省、米国の場合はFDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)など。以下「許認可当局」といいます。)に臨床試験開始を申請((d)IND申請)し、その監督下でヒトでの検証を行い((e)臨床試験)、許認可当局に対する申請((f)新薬承認申請、NDA申請)を経て医薬品としての承認取得に至り、その後上市・販売するというものであります。 この過程のうち、(a)探索研究から(e)臨床試験の初期段階に至る領域の活動は、「製薬」全般と区別し「創薬」(Drug Discovery)と一般に呼ばれており、当社は、主にこの領域の活動を担う「創薬」企業であります。 (a) 探索研究 新薬のもとになる候補化合物を探し出す研究を探索研究といいます。 一般にこの段階では、大量の化合物の中から目的の作用を持つものを探し出すための薬剤スクリーニング法によって、一定以上の活性を持つ化合物(一般に「ヒット化合物」と呼ばれます)を選別します。 (b) 最適化 探索研究で得られたヒット化合物をもとに、構造の一部を改変して異なる物理的・化学的特性を持つ複数の化合物を新規に合成し、スクリーニングによる選別と病態モデル動物(*)による実験を繰り返して、期待どおりの作用を示すひとつまたは少数の開発候補化合物(一般に「リード化合物」と呼ばれます)を獲得します。 (c) 前臨床試験(非臨床試験) 最適化が終了しその後の開発続行を決定した医薬品候補化合物について、動物実験でデータを収集し、許認可当局に対するIND申請の準備を行う段階です。 非臨床試験のうち、許認可当局へのIND申請に必要なデータを収集するために実施される試験については、特に「前臨床試験」と呼ばれます。臨床試験における医薬品候補化合物の投与量や投与期間を選択するために十分な信頼性のある情報を得る必要があることから、許認可当局の定めた基準に則って実施されます。 (d) IND(Investigational New Drug)申請 米国における臨床試験申請で使われる用語で、医薬品候補化合物についての情報をまとめた臨床試験実施申請資料を「新薬臨床試験開始届」としてFDAに提出し、臨床試験実施の承認を得るものです。 (e) 臨床試験 前臨床試験の結果、有効性および安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、臨床試験が実施されます。 臨床試験においては、個々の医薬品候補化合物について特徴を科学的に検討し、論理的で段階的な手続によって開発が進められます。 一般に臨床試験は、3つの「相」に分かれていると理解されています。第1相では、少人数(一般に10名から50名程度)のヒトに投与して、許容投与量などを確認します。続いて第2相では、中規模(50名から200名程度)の被験者に投与し、安全性とともに、医薬品候補化合物の有効性が評価されます。第3相では、多数(200名から1,000名、場合によってはそれ以上の人数)の被験者に投与し、第1相・第2相で得られた安全性や有効性に関するデータを確認・実証します。 (ⅰ) 第1相 第1相は、医薬品候補化合物を初めてヒトに投与することから開始されます。 通常、この相の試験は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者で実施されます。強い毒性を持つ可能性のある候補薬剤(たとえば抗癌剤)では、対象疾患を持つ被験者を対象として試験が実施されます。 第1相で実施される試験は、通常、次のうちひとつまたはその組合せの観点から行われます。(ア) 初期の安全性・許容投与量の推測 第2相以降の臨床試験のために必要と想定される用量範囲の許容投与量を決定し、予測される副作用の性質を判断します。(イ) 薬物動態試験(*) 医薬品候補化合物の吸収、分布、代謝、排泄に関する特徴を検出します。薬物動態試験は開発計画全体を通して行われます。(ウ) 薬力学的な評価 薬力学試験(*)および血中濃度と反応に関する試験を行うことによって、医薬品候補化合物の有効性について初期的な推測が可能になる場合もあり、また、用法・用量の設定の参考にします。(エ) 初期の薬効評価 薬効または予想される治療上の利益の予備的検討が、副次的な目的として第1相試験で行われることがあります。 (ⅱ) 第2相 第2相は、通常、対象疾患を持つ被験者における治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。 第1相試験よりも被験者数を増やし、その後に続けられる試験での用法・用量を決定し、設定される可能性のある評価項目や治療方法(他剤との併用を含む)等を検討・評価します。 (ⅲ) 第3相 第3相は、通常、治療上の利益を証明もしくは確認することを主目的とする試験を開始する段階です。 第2相試験よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、意図した適応疾患および対象患者群において医薬品候補化合物が安全かつ有効であるという第2相試験で蓄積された予備的な証拠をさらに検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とします。 (f) 新薬承認申請(New Drug Application) 新薬承認申請書類を作成し、許認可当局に提出します。この申請が承認されれば、対象の国や地域における販売が可能になります。 なお、医薬品の承認後に、承認された適応に関連する追加的な試験が行われることがあり、これを第4相試験と呼ぶことがあります。 ② 当社の創薬事業の特色 当社の有する創薬アプローチならびに創薬基盤技術、これらに基づき実施している研究開発業務(「創薬事業」と総称されます)の特色は以下のとおりです。 (a) 当社の創薬アプローチについて 世界中の製薬企業やベンチャー企業、大学等の研究者開発者たちは、「癌を特異的(*)に殺す方法」すなわち「正常細胞や正常組織に影響を与えず癌だけを殺す方法」の開発実用化を目指し、それぞれの強み・特色を活かした研究開発に日々しのぎを削っています。 この実現のために、さまざまなコンセプトが生まれ、さまざまなアプローチで開発が進められてきました。 たとえば、癌にまつわる特徴的なシグナル伝達経路(*)上の分子をターゲットとするアプローチ(一般には「分子標的薬」と呼ばれます)や、癌細胞が提示する特徴的な抗原に反応する抗体によるアプローチは、「特定の癌細胞でだけ作用する(正常細胞には影響しない)薬剤」を創ろうとするコンセプトです。また他の例では、DDS(薬剤運搬システム)を用いるアプローチは、正常細胞に抗癌剤を触れさせないコンセプトです。 その中でキャンバスは、「大部分の癌細胞の細胞周期(細胞分裂に至る過程)が正常細胞と異なること」に着目する独特の創薬アプローチで、この研究開発競争に挑んでいます。 (b) 当社独自の細胞表現型薬剤スクリーニング法について(ⅰ) 生細胞の挙動に着目したスクリーニング 生きた細胞で起きる現象の多くは、さまざまな分子群が複雑に絡み合ったシグナル伝達経路を介して現れ、また、そのシグナル伝達経路の多くは未解明です。 薬剤のスクリーニングでは多くの場合、最初のステップとして「ハイスループットスクリーニング(*)」(単一もしくは少数の特定標的分子(*)に対する化合物の活性を高速に分析する技術)を実施し、大量の候補化合物の中から「外れ」を早期にふるい落とす作業を実施します。これは一般に、分子標的型のアプローチと呼ばれます。 このアプローチは、標的とした分子の働きへの依存が大きい(バイパス経路の少ない)ケースでは、「癌を特異的に殺す」ための有効な手段です。しかしながら、標的分子が判明していないケースやシグナル伝達経路が複雑で標的分子を特定できないケースでは、分子標的型のアプローチは対応できません。 これに対し、当社のスクリーニング法は、特定の標的分子に対する活性ではなく、生きた細胞の挙動に着目したものです。 細胞内で働いている分子を取り出してスクリーニングする「ハイスループットスクリーニング」は採用せず、細胞の中で起きることはブラックボックスであると考え、生きている細胞の挙動(表現型)に答を訊く「細胞の表現型によるスクリーニング」を行っています。 細胞の挙動という最終アウトプットを基準とした当社独自の薬剤スクリーニング法は、標的分子があらかじめ特定されている必要がなく、シグナル伝達経路が複雑・未知でも対応が可能という特色を有しています。 当社は、未解明の部分の多い癌領域においてはこの薬剤スクリーニング法が効果的であると考えており、現在までに当社が保有している医薬品候補化合物パイプラインはいずれも、この薬剤スクリーニング法によって探索・創出されたものであります。 このスクリーニング法には、生細胞を用いるので自動化が難しく、そのためスループットを向上し難いという欠点があります。しかし、そのことが逆に、一般に高いスループットを追求する傾向にある他の製薬企業や創薬企業による模倣や追従に対する障壁となっています。 (ⅱ) 当社のスクリーニング法で獲得される化合物 当社のスクリーニングにおいては、未知のものも含むさまざまな作用メカニズムの、薬剤候補化合物がまず見出されます。 それらの共通点は、「正常細胞に影響が少なく癌細胞に作用する」化合物であることです。 当社は、この化合物(当社ではこれを「ヒット化合物」と呼んでいます)の最適化と作用メカニズム解析を行います。(ア) 最適化 ヒット化合物の分子構造を少しずつ変化させ、初期スクリーニングで獲得した化合物をより最適なもの(抗癌活性の強いもの、癌特異的な作用の強いものなど)に改良する作業です。(イ) 作用メカニズム解析 非臨床試験や臨床試験から得られたデータをもとに、その化合物が作用するしくみ(作用メカニズム)を解析する作業です。 作用メカニズムがわかっていることは必ずしも医薬品として開発するための必要条件ではありません。 しかしながら、作用メカニズムの解析は、 ・最適化作業へのフィードバックができる ・前臨床試験や臨床試験の設計へのフィードバックができ、成功確率を上げることができる ・提携獲得活動での説得力が増すなどのメリットがあります。 当社では、自社動物実験施設を含む基礎研究チームが時宜に応じた機動的で柔軟な体制で、ヒット化合物や臨床試験ステージの化合物の作用メカニズム解析に臨んでいます。 また、この解析業務を通じて得られた知見は、その中の特定のメカニズムを強化した改良化合物の創出に繋がる場合があります。 (c) 開発パイプラインについて 当社は現在、CBP501およびCBS9106、ならびに次世代化合物群によって開発パイプラインを構築し、事業化を意識した優先順位づけと管理に基づき研究開発を進めています。 ◆開発パイプライン (ⅰ) CBP501 「カルモジュリン・モジュレーター」 CBP501は、当社独自のスクリーニングから獲得された抗癌剤候補化合物です。 米国FDAの規制下において、CBP501・シスプラチン・ペメトレキセドの3剤併用による悪性胸膜中皮腫を対象とする臨床第2相試験、同じ3剤併用による非小細胞肺癌(扁平上皮癌を除く)を対象とする臨床第2相試験の、2つの臨床第2相試験を終了しました。 このうち、非小細胞肺癌に対する臨床第2相試験の結果は、主要評価項目「無増悪生存期間」(PFS)は達成しなかったものの、被験者のうち投与前の白血球数の少ない群(n=96、投与群・対照群ほぼ同数)を抽出したサブグループ解析の結果、重要な副次的評価項目である「全生存期間」(OS)において、CBP501の顕著な効果が示唆されるものでした。 当初当社は、CBP501の抗癌活性を主に「G2チェックポイント阻害」によるものであると考えてきました。 その後、CBP501はG2チェックポイント阻害活性を示すよりも低い濃度で、併用するシスプラチンなどプラチナ系抗癌剤の細胞流入を癌細胞でのみ高めていることがわかり、それら両方の作用を示す理由を追求する中で、多様な細胞機能に関わる蛋白質カルモジュリンに作用していることがわかっていました。 臨床第2相試験データの獲得後、さらに詳細な解析と追加的研究を進めたその結果、上記のようなサブグループ解析結果が生じる原因を科学的に矛盾なく説明し得る仮説の樹立と、それを支持するデータの獲得に成功しました。すなわち、CBP501は、既に発見されていたカルモジュリンへの作用(カルモジュリンの制御機能を調整)を経由して、癌細胞に直接作用するのみならず、「癌微小環境」「癌免疫」「癌幹細胞」などに関わる広範な作用により抗癌活性を示す、独特の抗癌剤(カルモジュリンモジュレーター)であることが判明しています。 現在当社は、これらの知見を踏まえ、CBP501とシスプラチン・免疫チェックポイント阻害抗体の併用による新たな臨床試験(フェーズ1b試験)の準備を進めています。 (ⅱ) CBS9106 「可逆的XPO1阻害剤」 CBS9106は、当社独自のスクリーニングから得られたXPO1阻害剤です。 臨床試験開始に必要な前臨床試験を終え、平成26年12月、Stemline社と全世界(日本および中国・台湾・韓国を除く)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。 現在Stemline社は、米国FDAの規制下において、CBS9106(同社における開発コード:SL-801)について固形癌を対象とする臨床第1相試験を実施しています。 この低分子化合物は、核外輸送因子XPO1(CRM1)を可逆的に阻害し、細胞周期停止およびアポトーシスを誘導します。動物実験までの段階では、多発性骨髄腫など幅広い癌細胞株に対して抗癌活性を有することが確認されています。 XPO1は、核外輸送シグナル(NES)を持つ輸送基質(蛋白質、mRNA-蛋白質複合体)を核から細胞質へ輸送する役割を担う蛋白質です。XPO1によって制御される輸送基質には癌関連因子(IκB、p53、FOXOs)が含まれており、XPO1阻害剤はこれらが核外へ輸送されるのを抑制し、抗癌活性を示すと考えられています。 一般的なXPO1阻害剤と比較したCBS9106の強みは、標的であるXPO1という蛋白質を分解に導く点です。 XPO1は大変安定的な蛋白質であり、通常の阻害剤の場合、それが作用したまま分解されず細胞内に存在し続けてしまいます。その場合、XPO1の作用が(本来あるべき作用も)失われたままになり、副作用の原因のひとつになるおそれがあります。 CBS9106は、この蛋白質を分解するので、細胞は新たに(阻害されていない)XPO1を作ることができます。(このことを「可逆的阻害」と呼んでいます)これによって、正常組織が回復できる投与方法の樹立を可能にし、XPO1阻害剤の作用と副作用の間の幅(セラピューティックインデックス)を拡げられる、すなわち、副作用の少ない抗癌剤となる可能性があると考えています。 (ⅲ) 次世代パイプラインの拡充 当社のような創薬企業にとって、新規の候補化合物を継続的に創出・獲得し、開発パイプラインを拡充するしくみ(以下ではこれを「創薬エンジン」と呼びます)の確保は、将来の継続的な成長のために必須のものであります。 当社では、(ア) 正常細胞と癌細胞の細胞分裂過程の違いに着目した独自のスクリーニング(イ) CBP501の新知見に基づく「次世代CBPプロジェクト」の2つの創薬エンジンにより、将来の開発候補品となり得る新規化合物の探索創出を継続的に行っています。 これらを効果的に推進するため当社は、東京大学医学部附属病院、ファルマバレープロジェクト(静岡県産業振興財団、静岡県立大学)と、それぞれ共同研究実施しています。これらの取り組みから当社は現在、CBP-A、CBP-B、IDO/TDO阻害剤など複数の次世代パイプラインを有しています。さらに当社は平成29年6月、新たな免疫系抗癌剤の創出を目指し、富士フイルム株式会社と共同研究契約を締結しました。 (d) 製薬企業との戦略提携について 医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略です。 創薬企業と製薬企業等とがこのような役割分担を行うようになった背景として、分子生物学を主体とした生命科学の発達により、従来とは異なり、個々の研究テーマに対する専門性の高い研究力が求められるようになったことが挙げられます。実際に米国などでは、有力な新薬の多くが創薬企業によって開発され、または創薬企業からのライセンス供与などの形で創薬企業と戦略提携した製薬企業等によって開発されており、この役割分担の形は世界的な標準となっていると言えます。 また、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在します。 CBP501に関しては、当社は、平成19年3月に武田薬品工業株式会社との間でCBP501に関する共同事業化契約を締結し共同開発を進めておりましたが、平成22年6月に本契約を解消しております。その後、当社は、悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌を対象とする海外での臨床第2相試験を当社単独で進めてきました。現在は、新規提携パートナーの早期獲得を目指しつつ、その確率を高めるための新たな臨床試験(フェーズ1b試験)の準備を進めています。 CBS9106については、平成26年12月、Stemline社と全世界(日本および中国・台湾・韓国を除く)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。現在同社は、CBS9106(同社における開発コード:SL-801)の臨床第1相試験を実施しています。 (e) 研究開発における外部機関との連携について 当社は、癌領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます)を活用しています。 基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述のとおり、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(静岡県産業振興財団、静岡県立大学)、富士フイルム株式会社との共同研究を進めております。 臨床開発においては、抗癌剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。 また、当社は、抗癌剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(以下「SAB」といいます)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米癌学会会長・米国癌治療学会会長を歴任した著名な癌臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗癌剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、平成14年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
FY2016|8,921 文字|出典 docID: S1008Q68
3【事業の内容】 当社は、細胞周期に関する基礎研究の成果をもとに、正常細胞に影響が少ない抗癌剤の研究および開発を単一事業として行っている、創薬企業であります。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントであります。 (1) 基本戦略 当社は、癌細胞の細胞周期(細胞分裂に至る過程)が正常細胞と異なることに着目する独特の創薬アプローチを活かした抗癌剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。 この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。 ・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。 ・当社の細胞表現型薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。 ・抗癌剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。 ・当社の権利を最大限確保するため、開発段階と当社の財務体力等に応じた適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖(*)を補完・完結する。 当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減してまいりたいと考えております。 (2) 創薬事業① 医薬品の一般的な研究開発プロセス 医薬品の研究開発プロセスは一般に、テーマに沿った化合物を探索し((a)探索研究)、獲得・創出された化合物をより最適なものに改良し((b)最適化)、動物での検証((c)前臨床試験(非臨床試験(*)))を実施した後、各国の医薬品許認可審査機関(日本の場合は厚生労働省、米国の場合はFDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)など。以下「許認可当局」といいます。)に臨床試験開始を申請((d)IND申請)し、その監督下でヒトでの検証を行い((e)臨床試験)、許認可当局に対する申請((f)新薬承認申請、NDA申請)を経て医薬品としての承認取得に至り、その後上市・販売するというものであります。 この過程のうち、(a)探索研究から(e)臨床試験の初期段階に至る領域の活動は、「製薬」全般と区別し「創薬」(Drug Discovery)と一般に呼ばれており、当社は、主にこの領域の活動を担う「創薬」企業であります。 (a) 探索研究 新薬のもとになる候補化合物を探し出す研究を探索研究といいます。 一般にこの段階では、大量の化合物の中から目的の作用を持つものを探し出すための薬剤スクリーニング法によって、一定以上の活性を持つ化合物(一般に「ヒット化合物」と呼ばれます)を選別します。 (b) 最適化 探索研究で得られたヒット化合物をもとに、構造の一部を改変して異なる物理的・化学的特性を持つ複数の化合物を新規に合成し、スクリーニングによる選別と病態モデル動物(*)による実験を繰り返して、期待どおりの作用を示すひとつまたは少数の開発候補化合物(一般に「リード化合物」と呼ばれます)を獲得します。 (c) 前臨床試験(非臨床試験) 最適化が終了しその後の開発続行を決定した医薬品候補化合物について、動物実験でデータを収集し、許認可当局に対するIND申請の準備を行う段階です。 非臨床試験のうち、許認可当局へのIND申請に必要なデータを収集するために実施される試験については、特に「前臨床試験」と呼ばれます。臨床試験における医薬品候補化合物の投与量や投与期間を選択するために十分な信頼性のある情報を得る必要があることから、許認可当局の定めた基準に則って実施されます。 (d) IND(Investigational New Drug)申請 米国における臨床試験申請で使われる用語で、医薬品候補化合物についての情報をまとめた臨床試験実施申請資料を「新薬臨床試験開始届」としてFDAに提出し、臨床試験実施の承認を得るものです。 (e) 臨床試験 前臨床試験の結果、有効性および安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、臨床試験が実施されます。 臨床試験においては、個々の医薬品候補化合物について特徴を科学的に検討し、論理的で段階的な手続によって開発が進められます。 一般に臨床試験は、3つの「相」に分かれていると理解されています。第1相では、少人数(一般に10名から50名程度)のヒトに投与して、許容投与量などを確認します。続いて第2相では、中規模(50名から200名程度)の被験者に投与し、安全性とともに、医薬品候補化合物の有効性が評価されます。第3相では、多数(200名から1,000名、場合によってはそれ以上の人数)の被験者に投与し、第1相・第2相で得られた安全性や有効性に関するデータを確認・実証します。 (ⅰ) 第1相 第1相は、医薬品候補化合物を初めてヒトに投与することから開始されます。 通常、この相の試験は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者で実施されます。強い毒性を持つ可能性のある候補薬剤(たとえば抗癌剤)では、対象疾患を持つ被験者を対象として試験が実施されます。 第1相で実施される試験は、通常、次のうちひとつまたはその組合せの観点から行われます。(ア) 初期の安全性・許容投与量の推測 第2相以降の臨床試験のために必要と想定される用量範囲の許容投与量を決定し、予測される副作用の性質を判断します。(イ) 薬物動態試験(*) 医薬品候補化合物の吸収、分布、代謝、排泄に関する特徴を検出します。薬物動態試験は開発計画全体を通して行われます。(ウ) 薬力学的な評価 薬力学試験(*)および血中濃度と反応に関する試験を行うことによって、医薬品候補化合物の有効性について初期的な推測が可能になる場合もあり、また、用法・用量の設定の参考にします。(エ) 初期の薬効評価 薬効または予想される治療上の利益の予備的検討が、副次的な目的として第1相試験で行われることがあります。 (ⅱ) 第2相 第2相は、通常、対象疾患を持つ被験者における治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。 第1相試験よりも被験者数を増やし、その後に続けられる試験での用法・用量を決定し、設定される可能性のある評価項目や治療方法(他剤との併用を含む)等を検討・評価します。 (ⅲ) 第3相 第3相は、通常、治療上の利益を証明もしくは確認することを主目的とする試験を開始する段階です。 第2相試験よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、意図した適応疾患および対象患者群において医薬品候補化合物が安全かつ有効であるという第2相試験で蓄積された予備的な証拠をさらに検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とします。 (f) 新薬承認申請(New Drug Application) 新薬承認申請書類を作成し、許認可当局に提出します。この申請が承認されれば、対象の国や地域における販売が可能になります。 なお、医薬品の承認後に、承認された適応に関連する追加的な試験が行われることがあり、これを第4相試験と呼ぶことがあります。 ② 当社の創薬事業の特色 当社の有する創薬アプローチならびに創薬基盤技術、これらに基づき実施している研究開発業務(「創薬事業」と総称されます)の特色は以下のとおりです。 (a) 当社の創薬アプローチについて 世界中の製薬企業やベンチャー企業、大学等の研究者開発者たちは、「癌を特異的(*)に殺す方法」すなわち「正常細胞や正常組織に影響を与えず癌だけを殺す方法」の開発実用化を目指し、それぞれの強み・特色を活かした研究開発に日々しのぎを削っています。 この実現のために、さまざまなコンセプトが生まれ、さまざまなアプローチで開発が進められてきました。 たとえば、癌にまつわる特徴的なシグナル伝達経路(*)上の分子をターゲットとするアプローチ(一般には「分子標的薬」と呼ばれます)や、癌細胞が提示する特徴的な抗原に反応する抗体によるアプローチは、「特定の癌細胞でだけ作用する(正常細胞には影響しない)薬剤」を創ろうとするコンセプトです。また他の例では、DDS(薬剤運搬システム)を用いるアプローチは、正常細胞に抗癌剤を触れさせないコンセプトです。 その中でキャンバスは、「大部分の癌細胞の細胞周期(細胞分裂に至る過程)が正常細胞と異なること」に着目する独特の創薬アプローチで、この研究開発競争に挑んでいます。 (b) 当社独自の細胞表現型薬剤スクリーニング法について (ⅰ) 生細胞の挙動に着目したスクリーニング 生きた細胞で起きる現象の多くは、さまざまな分子群が複雑に絡み合ったシグナル伝達経路を介して現れ、また、そのシグナル伝達経路の多くは未解明です。 薬剤のスクリーニングでは多くの場合、最初のステップとして「ハイスループットスクリーニング(*)」(単一もしくは少数の特定標的分子(*)に対する化合物の活性を高速に分析する技術)を実施し、大量の候補化合物の中から「外れ」を早期にふるい落とす作業を実施します。これは一般に、分子標的型のアプローチと呼ばれます。 このアプローチは、標的とした分子の働きへの依存が大きい(バイパス経路の少ない)ケースでは、「癌を特異的に殺す」ための有効な手段です。しかしながら、標的分子が判明していないケースやシグナル伝達経路が複雑で標的分子を特定できないケースでは、分子標的型のアプローチは対応できません。 これに対し、当社のスクリーニング法は、特定の標的分子に対する活性ではなく、生きた細胞の挙動に着目したものです。 細胞内で働いている分子を取り出してスクリーニングする「ハイスループットスクリーニング」は採用せず、細胞の中で起きることはブラックボックスであると考え、生きている細胞の挙動(表現型)に答を訊く「細胞の表現型によるスクリーニング」を行っています。 細胞の挙動という最終アウトプットを基準とした当社独自の薬剤スクリーニング法は、標的分子があらかじめ特定されている必要がなく、シグナル伝達経路が複雑・未知でも対応が可能という特色を有しています。 当社は、未解明の部分の多い癌領域においてはこの薬剤スクリーニング法が効果的であると考えており、現在までに当社が保有している医薬品候補化合物パイプラインはいずれも、この薬剤スクリーニング法によって探索・創出されたものであります。 このスクリーニング法には、生細胞を用いるので自動化が難しく、そのためスループットを向上し難いという欠点があります。しかし、そのことが逆に、一般に高いスループットを追求する傾向にある他の製薬企業や創薬企業による模倣や追従に対する障壁となっています。 (ⅱ) 当社のスクリーニング法で獲得される化合物 当社のスクリーニングにおいては、未知のものも含むさまざまな作用メカニズムの、薬剤候補化合物がまず見出されます。 それらの共通点は、「正常細胞に影響が少なく癌細胞に作用する」化合物であることです。 当社は、この化合物(当社ではこれを「ヒット化合物」と呼んでいます)の最適化と作用メカニズム解析を行います。(ア) 最適化 ヒット化合物の分子構造を少しずつ変化させ、初期スクリーニングで獲得した化合物をより最適なもの(抗癌活性の強いもの、癌特異的な作用の強いものなど)に改良する作業です。(イ) 作用メカニズム解析 非臨床試験や臨床試験から得られたデータをもとに、その化合物が作用するしくみ(作用メカニズム)を解析する作業です。 作用メカニズムがわかっていることは必ずしも医薬品として開発するための必要条件ではありません。 しかしながら、作用メカニズムの解析は、 ・最適化作業へのフィードバックができる ・前臨床試験や臨床試験の設計へのフィードバックができ、成功確率を上げることができる ・提携獲得活動での説得力が増すなどのメリットがあります。 当社では、自社動物実験施設を含む基礎研究チームが時宜に応じた機動的で柔軟な体制で、ヒット化合物や臨床試験ステージの化合物の作用メカニズム解析に臨んでいます。 また、この解析業務を通じて得られた知見は、その中の特定のメカニズムを強化した改良化合物の創出に繋がる場合があります。 (c) 開発パイプラインについて 当社は現在、CBP501およびCBS9106によって開発パイプラインを構築し、事業化を意識した優先順位づけと管理に基づき研究開発を進めています。 ◆開発パイプライン (ⅰ) CBP501 「カルモジュリン・モジュレーター」 CBP501は、当社独自のスクリーニングから獲得された抗癌剤候補化合物です。 米国FDAの規制下において、CBP501・シスプラチン・ペメトレキセドの3剤併用による悪性胸膜中皮腫を対象とする臨床第2相試験、同じ3剤併用による非小細胞肺癌(扁平上皮癌を除く)を対象とする臨床第2相試験の、2つの臨床第2相試験を終了しました。 このうち、非小細胞肺癌に対する臨床第2相試験の結果は、主要評価項目「無増悪生存期間」(PFS)は達成しなかったものの、被験者のうち投与前の白血球数の少ない群(n=96、投与群・対照群ほぼ同数)を抽出したサブグループ解析の結果、重要な副次的評価項目である「全生存期間」(OS)において、CBP501の顕著な効果が示唆されるものでした。 当初当社は、CBP501の抗癌活性を主に「G2チェックポイント阻害」によるものであると考えてきました。 その後、CBP501はG2チェックポイント阻害活性を示すよりも低い濃度で、併用するシスプラチンなどプラチナ系抗癌剤の細胞流入を癌細胞でのみ高めていることがわかり、それら両方の作用を示す理由を追求する中で、多様な細胞機能に関わる蛋白質カルモジュリンに作用していることがわかっていました。 臨床第2相試験データの獲得後、さらに詳細な解析と追加的研究を進めたその結果、上記のようなサブグループ解析結果が生じる原因を科学的に矛盾なく説明し得る仮説の樹立と、それを支持するデータの獲得に成功しました。すなわち、CBP501は、既に発見されていたカルモジュリンへの作用(カルモジュリンの制御機能を調整)を経由して、癌細胞に直接作用するのみならず、「癌微小環境」「癌免疫」「癌幹細胞」などに関わる広範な作用により抗癌活性を示す、独特の抗癌剤(カルモジュリンモジュレーター)であることが判明しています。 現在当社は、これらの知見を踏まえ、CBP501について次の臨床試験を開始するための準備を進めつつ、今後の臨床試験の遂行に必要な提携パートナーの獲得を目指しています。 (ⅱ) CBS9106 「可逆的XPO1阻害剤」 CBS9106は、当社独自のスクリーニングから得られたXPO1阻害剤です。 臨床試験開始に必要な前臨床試験を終え、平成26年12月、Stemline社と全世界(日本および中国・台湾・韓国を除く)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。 現在Stemline社は、米国FDAの規制下において、CBS9106(同社における開発コード:SL-801)について固形癌を対象とする臨床第1相試験を実施しています。 この低分子化合物は、核外輸送因子XPO1(CRM1)を可逆的に阻害し、細胞周期停止およびアポトーシスを誘導します。動物実験までの段階では、多発性骨髄腫など幅広い癌細胞株に対して抗癌活性を有することが確認されています。 XPO1は、核外輸送シグナル(NES)を持つ輸送基質(蛋白質、mRNA-蛋白質複合体)を核から細胞質へ輸送する役割を担う蛋白質です。XPO1によって制御される輸送基質には癌関連因子(IκB、p53、FOXOs)が含まれており、XPO1阻害剤はこれらが核外へ輸送されるのを抑制し、抗癌活性を示すと考えられています。 一般的なXPO1阻害剤と比較したCBS9106の強みは、標的であるXPO1という蛋白質を分解に導く点です。 XPO1は大変安定的な蛋白質であり、通常の阻害剤の場合、それが作用したまま分解されず細胞内に存在し続けてしまいます。その場合、XPO1の作用が(本来あるべき作用も)失われたままになり、副作用の原因のひとつになるおそれがあります。 CBS9106は、この蛋白質を分解するので、細胞は新たに(阻害されていない)XPO1を作ることができます。(このことを「可逆的阻害」と呼んでいます)これによって、正常組織が回復できる投与方法の樹立を可能にし、XPO1阻害剤の作用と副作用の間の幅(セラピューティックインデックス)を拡げられる、すなわち、副作用の少ない抗癌剤となる可能性があると考えています。 (ⅲ) 開発パイプラインの拡充 当社のような創薬企業にとって、新規の候補化合物を継続的に創出・獲得し、開発パイプラインを拡充するしくみ(以下ではこれを「創薬エンジン」と呼びます)の確保は、将来の継続的な成長のために必須のものであります。 当社では、(ア) 「正常細胞と癌細胞の細胞分裂過程の違いに着目した独自のスクリーニング(イ) CBP501の新知見に基づく「次世代CBPプロジェクト」の2つの創薬エンジンにより、将来の開発候補品となり得る新規化合物の探索研究を継続的に行っています。 これらを効果的に推進するため当社は、平成28年2月に東京大学医学部附属病院と、また、平成28年4月にファルマバレープロジェクト(静岡県産業振興財団)と、それぞれ共同研究を開始しました。 (d) 製薬企業との戦略提携について 医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略です。 創薬企業と製薬企業等とがこのような役割分担を行うようになった背景として、分子生物学を主体とした生命科学の発達により、従来とは異なり、個々の研究テーマに対する専門性の高い研究力が求められるようになったことが挙げられます。実際に米国などでは、有力な新薬の多くが創薬企業によって開発され、または創薬企業からのライセンス供与などの形で創薬企業と戦略提携した製薬企業等によって開発されており、この役割分担の形は世界的な標準となっていると言えます。 また、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在します。 CBP501に関しては、当社は、平成19年3月に武田薬品工業株式会社との間でCBP501に関する共同事業化契約を締結し共同開発を進めておりましたが、平成22年6月に本契約を解消しております。その後、当社は、悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌を対象とする海外での臨床第2相試験を当社単独で進めてきましたが、今後実施する計画の臨床第3相試験に向けて、現在、新規提携パートナーの早期獲得を目指した活動を行っています。 CBS9106については、平成26年12月、Stemline社と全世界(日本および中国・台湾・韓国を除く)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。現在同社は、CBS9106(同社における開発コード:SL-801)のIND申請を終え、平成28年5月には臨床第1相試験を開始しています。 (e) 研究開発における外部機関との連携について 当社は、癌領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます)を活用しています。 基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述のとおり、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(静岡県産業振興財団)との共同研究を進めております。 臨床開発においては、抗癌剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。 また、当社は、抗癌剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(以下「SAB」といいます)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米癌学会会長・米国癌治療学会会長を歴任した著名な癌臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗癌剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、平成14年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。