研究開発活動(本文)
FY2025|5,134 文字
6 【研究開発活動】当社のイノベーション推進本部を中心に、創業当時より森づくりや紙づくりで培ってきた多様な技術と国内外に保有する豊富な森林資源を余すことなく活用し、資源の循環的利用、環境負荷の低減といった社会課題解決へ資する新しい価値創造に取組んでいます。また、既存事業の競争力強化として、国内外のグループ会社や各工場の研究開発部門は当社のグループ技術本部と連携し、新製品開発及び既存製品の品質向上、先端技術の導入等による操業の安定化やコストダウンの推進を図っています。 当連結会計年度の研究開発費の総額は13,473百万円となっています。なお、セグメント毎の研究開発費は、イノベーション推進本部が属するその他セグメントが9,546百万円、生活産業資材セグメントが351百万円、機能材セグメントが2,537百万円、資源環境ビジネスセグメントが459百万円、印刷情報メディアセグメントが577百万円です。 当連結会計年度の各セグメントの主な研究開発活動は次のとおりです。 (1)その他セグメント[イノベーション推進本部] 「①木質由来新素材の開発」、「②未利用バイオマス資源の有価物化」、「③医薬・ヘルスケア分野への本格参入」、「④サステナブルパッケージの展開」の4つの軸で研究開発を進め、持続可能な社会への貢献を目指します。 ①木質由来新素材の開発化石資源に依存した燃料やプラスチック原料を、バイオマス由来原料に置き換えるべく、木質由来の「糖液」、「エタノール」、「ポリ乳酸」の技術開発を進めています。「糖液」はバイオものづくりの基幹原料として、「エタノール」はバイオ燃料(SAF、バイオ混合ガソリン)やバイオマスプラスチックをはじめ基礎化学品の製造原料としての需要拡大が見込まれます。「ポリ乳酸」は代表的なバイオマスプラスチックの一つであり、食品用容器・フィルムなどの包装材をはじめとする幅広い用途に利用拡大が期待されています。2024年12月には王子製紙米子工場内に工場のインフラを活用した国内最大級の木質由来糖液のパイロット製造設備を立ち上げ、2025年3月より稼働を開始しました。また、2025年3月には木質由来エタノールのパイロット製造設備を立ち上げました。製造条件の最適化等を行なうとともにサンプルワークを進め、事業化を推進します。また、2024年7月に(株)バッカス・バイオイノベーション、日揮ホールディングス(株)、(株)ENEOSマテリアル、大阪ガス(株)、東レ(株)と弊社で共同提案した「木質等の未利用資源を活用したバイオものづくりエコシステム構築事業」が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「バイオものづくり革命推進事業」に採択されました。本事業では、バイオものづくり製品の社会実装及びその社会受容性の醸成を促す仕組みづくりを通じて、既存の製紙工場をバイオものづくり工場へと転換し、競争力のあるバイオものづくりのハブの実現を目指します。木質由来素材のセルロースナノファイバー(CNF)は、透明で軽くて丈夫、変形にも強く、高い増粘効果を有する優れた材料として多種多様な分野での活躍が期待されています。2024年5月には天然ゴムとの複合材の量産試作設備を導入し、タイヤ市場への本格参入を目指して開発体制を強化しています。また、CNFを用いた全熱交換型換気システムの部材である全熱交換エレメントの開発のほか、燃料電池用高分子電解質膜の開発やポリカーボネート樹脂との複合材のロボット部材等への展開にも取組んでおり、今後も様々な用途で社会実装を進めます。最先端半導体向けの木質由来バイオマスレジストの開発を進めています。今後さらなる成長が見込まれる半導体市場では高性能化に伴い微細加工技術の進化が求められているなか、独自技術によりPFAS不使用(有機フッ素化合物を含まない)かつ次世代EUV(極端紫外線)露光装置にも対応可能なレジストを実現しました。環境配慮と高性能を両立したレジストで顧客ニーズに沿った開発に取り組み、事業化を目指します。抄紙パルプよりもセルロース純度の高い溶解パルプを製造しており、当社グループのコア技術を医薬品や食品添加剤などの高付加価値製品の原料への展開を目指した研究開発にも取り組んでいます。 ②未利用バイオマス資源の有価物化当社グループは豊富な森林資源、紙、エネルギー、水をうまく循環させ、資源を有効活用してきたノウハウを活かし、未利用バイオマス資源の有価物化に取組んでいます。その一つがバイオ炭による二酸化炭素削減と土壌改良です。植物をバイオ炭として炭化させることで、炭素を長期間固定し、大気中の二酸化炭素を削減することにより地球温暖化の緩和に寄与します。また土壌改良剤として、土壌の保水性や通気性を向上させ、植物の生育を促進する効果も期待されています。2025年度には植林木の未利用樹皮を原料としたバイオ炭をベトナム社有林で施用する実証試験を開始予定です。また、水環境関連の分野では、水処理に関する新規プロセスの検討や排水処理における廃棄物や副産物の有効利用などを検討しており、環境に配慮した事業展開に繋げていきます。環境負荷ゼロへ挑戦するとともに、副産物・未利用バイオマス資源から新たな価値を見出し、新たな事業へと繋げていきます。 ③医薬・ヘルスケア分野への本格参入医薬・ヘルスケア分野への本格参入のため、大きく3つのテーマを推進しています。そのうち2つのテーマは事業化を加速するため、イノベーション推進本部から立ち上げた2社において研究開発を行っています。王子ファーマ㈱は、木材中の未活用成分でパルプ製造時の副産物であるヘミセルロースから得られる「硫酸化ヘミセルロース」を原薬とした医薬品の事業化を推進しています。木質由来の原料を使用することで、人畜共通感染症のリスク低減、環境負荷の低減、トレーサビリティ向上といった動物原料依存の課題を回避することが可能となります。動物用関節炎治療薬の承認取得とヒト用医薬品の研究開発を進め、併せて医薬品販売に必要な各種業許可の取得も進めており、2025年2月にはホモシスチン尿症治療薬の製造販売承認申請を実施しました。王子薬用植物研究所㈱は、植林事業で培った植物育成の知見から薬用植物「甘草(カンゾウ)」の国内大規模栽培技術を確立しました。野生品の採取に伴う資源枯渇や輸出規制等のリスクのため、国産化が求められている背景がありました。社内シナジー創出により、2024年12月には王子ファーマ㈱より国産甘草を配合した漢方薬を商品化、テスト販売を実施しました。今後医薬・化粧品、食品分野へのさらなる展開を進めていきます。また、独自の微細加工技術を用いた、細胞培養基材の開発にも取組んでいます。生体内により近い形態を再現することで細胞成熟化を促進することが可能となり、再生医療や創薬への活用が期待されます。技術改良を進め、製品価値の向上を目指します。 ④サステナブルパッケージの展開当社グループは、抄紙・塗工技術とフィルム製膜技術を基盤に、環境課題に対応するパッケージソリューションを提供しています。独自の材料設計技術と延伸加工生産技術で開発した100%植物由来のポリ乳酸フィルムは、2024年度に㈱伊藤園のティーバッグフィルターに採用されました。このフィルムは日本バイオプラスチック協会から生分解性バイオマスプラスチックとして認定され、高い透明性と厚みの均一性、強度を持つことが特徴です。また、企業・業界の枠を超えた資源循環型社会への取り組みも進めています。2024年度には外食企業と協同し、紙コップを再び紙製品の原材料として活用する持続的なマテリアルリサイクルシステムを構築しました。回収規模の拡大や本取り組みに賛同・参画する企業・団体を積極的に募り、より効果的・効率的なリサイクルを推進します。イノベーション推進本部は、日々変化する市場のニーズに対応するため、オープンイノベーションを通じて新しい価値の共創を進めるとともにDX推進にも取り組んでいます。今後も新たな企業価値を構築するため多方面からの研究・技術開発を進めていきます。 [液体紙容器事業]アセプティック(無菌)紙容器事業では、アセプティック紙容器及び無菌充填機を取り揃え、主に牛乳やジュースをお取り扱いのお客様にソリューションを提供しています。現行製品よりもさらに環境に配慮したパッケージや充填機の開発や、東南アジア向けに特化した充填機の開発も進めています。また、充填機の安定性向上にも注力しています。 [サステナブルパッケージ事業]Walki社では、これまで培ってきたコア技術を活用し、欧州の包装材規制に基づき、2030年までにEU内で流通するすべての包装材を100%リサイクル可能にする目標に対応するため、高いリサイクル性にフォーカスしたバリア紙包材、リサイクル可能なモノマテリアルプラスチックフィルム、環境に優しいラミネート材料等の開発に注力しています。これにより、環境に配慮し、持続可能で競争力のある製品を提供し、循環型社会の実現に貢献することを目指しています。 (2)生活産業資材セグメント古紙利用拡大、抄紙条件、薬品の最適化によるコストダウン、品質・操業性改善を推進してきました。パッケージング関係では、お菓子用包装やボールペンパッケージ、自動車部品パッケージなど、従来はプラスチックが採用されていた用途において紙製品の採用が進み、「環境価値」と「生活・感性価値」を高める商品開発を行い、脱プラスチック社会への移行に貢献しています。 (3)機能材セグメント温室効果ガスの排出量削減や循環型社会の実現に貢献するサステナブル素材及び製品を積極的に開発しています。特殊紙事業では、環境と健康に配慮した非フッ素耐油紙「O-hajiki(オハジキ)」や、セルロースを主体原料とした作業負荷軽減型及び環境配慮型の農業用紙製マルチシート「OJIサステナマルチ」、成形性が良く深絞りや打抜きなどの成形加工に適したプレス成形用紙「ファインプレスW(ホワイト)」等のプラスチック代替素材の開発・販売をしています。不織布事業は、既存商品価値の向上や、土木・準医療関係を中心に、新製品開発、新分野の顧客への展開等を実施しました。感熱事業では、米国の化学物質規制に対応する切替や顧客需要に応じた新技術・新製品の開発、市中回収古紙100%配合の環境対応製品の開発等を実施しました。粘着事業では、タッチパネルの機能進化に追随し、高機能粘着フィルム等の開発に注力しており、ノートPC、ゲーム機、車載ディスプレイ等への採用が進んでいます。自動車用遮熱ウィンドフィルムを開発し、建材用途への展開も進めています。フィルム事業では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムで培った延伸製膜技術による電動車用の薄物コンデンサ用フィルムの開発やバイオマスプラスチックを配合したポリプロピレンフィルム「アルファンGPP」等の開発・販売を進めています。 (4)資源環境ビジネスセグメント持続可能な森林経営と競争力向上のため、各林地の生育条件に最適なクローン開発などの品種改良や、広大な植林地において最新技術を活用した肥料散布や林地データ取得など林地の生産性向上のための研究開発を実施しています。 (5)印刷情報メディアセグメントパルプ製造工程から紙製造工程までの製紙工程全般に関する技術開発に取組んでいます。需要が減少する中、生産体制の最適化や他の用途開発に取組んでおり、さらに、使用薬品や操業条件の最適化によるコストダウン、欠点・断紙削減等の操業性改善を推進し、収益向上に繋げています。また、製品の安定供給を図るため、BCP(事業継続計画)対応強化も進めています。 当社グループは、知的財産を重要な経営資源として位置付け、事業競争力及び持続可能な価値創造の源泉として戦略的に活用しています。また、当社グループの知的財産権は当社が集中的に保有・管理し、グループ方針に基づき権利の取得及び行使を行うとともに、当社グループ内での有効活用を図るため、グループ各社に対してライセンスを供与しています。今後も、将来の事業基盤となる知的財産権をグローバルに強化していきます。当連結会計年度末における当社グループの保有特許権・実用新案権・意匠権の総数は国内2,784件、海外944件です。また、保有商標権の総数は国内1,039件、海外1,160件です。
FY2024|4,119 文字
6 【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、各事業会社の研究開発部門や、各工場の研究技術部等とイノベーション推進本部が、品質課題解決などの強化のため、新たに加わったグループ技術本部と連携しながら取り組んでいます。新事業の創出並びに既存事業の競争力強化を念頭に、創業当時から森づくりや紙づくりで培ってきた多様な技術と国内外に保有する豊富な森林資源を活用することにより、当社ならではの新たな価値を創造し、社会的課題を解決するためにイノベーションを推進しています。 グループ全体の既存事業の競争力強化として、植林、パルプ、抄紙、塗工の各分野で蓄積・体系化された技術と、海外拠点との連携、新製品開発及び既存製品の品質改善に取り組んでいます。国内外の工場では、品質向上・操業の安定化、コストダウンの推進を図っています。 当連結会計年度末における当社グループの保有特許権・実用新案権・意匠権の総数は国内2,772件、海外978件です。また、保有商標権の総数は国内970件、海外1,007件です。当連結会計年度の研究開発費の総額は10,418百万円となっています。なお、当連結会計年度における各セグメントの研究開発活動を示すと、次のとおりです。 (1) 生活産業資材産業資材事業では、古紙利用拡大、抄紙条件、薬品の最適化によるコストダウン、品質・操業性改善を推進してきました。これらの国内で培った基盤技術を活用して新製品開発を進めるとともに、カンパニーの枠を越え、当社グループ会社の各海外拠点へ水平展開を進めています。パッケージング関係では、環境配慮型紙製品として、お菓子用包装やボールペンパッケージ、自動車部品パッケージなど、従来はプラスチックが使用されていた用途において、当社グループの紙製品の採用が進んでいます。今後も様々な包装用途についての紙化を進めることで、脱プラスチック社会への移行に貢献していきます。当事業に係る研究開発費は387百万円です。 (2) 機能材機能材事業では、温室効果ガスの排出量削減や循環型社会の実現に貢献する環境配慮型素材及び製品を積極的に開発しています。また、当社グループのコア技術であるシートの製造・加工技術を活用した新製品開発も進めています。特殊紙関連では「SILBIOシリーズ」として、酸素や水蒸気の侵入を防ぎ、内容物の劣化を抑えることができるバリア性紙素材にヒートシール性、透明性、遮光性などの機能を有する製品をラインアップしています。その他、医薬用包材や衛生材料関連素材など、成長市場に向けた製品開発も進めています。また、世界的に有機フッ素化合物の規制が厳しくなる中、非フッ素耐油紙「O-hajiki」を開発し、王子エフテックスより販売を開始しました。「O-hajiki」には晒タイプと未晒タイプがあり、揚げ物袋などで採用が進んでいます。粘着関連では、機能進化するタッチパネルに対応した各種粘着シートや高機能粘着フィルムの開発に注力しており、ノートPC、ゲーム機、車載ディスプレイなどへの採用が進んでいます。また、ディスプレイ用途で培った技術を応用して、自動車用ウィンドフィルムを開発し、建材用途への展開も進めています。フィルム関連では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムで培った延伸製膜技術によるコンデンサ用フィルムの開発や、バイオプラスチックフィルムの開発を進めています。脱炭素社会への転換がグローバルに進行し、電動車が急速に普及しています。電動車の電気駆動系に用いられるフィルムコンデンサは、その主力材料である高性能ポリプロピレンフィルムの厚みが薄いほど小型化が可能になります。当社グループは高耐電圧ポリプロピレンフィルムの超薄型化技術の開発を推進し、電動車両向けの電子部品の小型軽量化に貢献しています。また、バイオプラスチックフィルムでは、植物由来原料のポリ乳酸樹脂をポリプロピレン樹脂に配合した二軸延伸フィルムを開発し、バイオマスマーク認定商品「アルファンG(グリーン)」の、営業生産を開始しています。当事業に係る研究開発費は2,626百万円です。 (3) 資源環境ビジネス資源環境ビジネス事業では、王子製紙米子工場で生産している溶解パルプに関する技術開発を行っています。溶解パルプは、レーヨン、医薬品や食品の添加剤、セルロース誘導体などの原料として使用され、今後は世界的な人口増加により需要拡大が期待されています。既に繊維原料メーカーや医薬品原料メーカーへの販売を行っており、脱石油依存の動きが加速しポリエステルの成長が鈍化するとともに、コットンの大幅な増産も見込めないため、溶解パルプの需要は高まると予想されています。現在、高価格品の生産性アップやコストダウンによる収益向上を進めています。当事業に係る研究開発費は493百万円です。 (4) 印刷情報メディア印刷情報メディア事業では、パルプ製造工程から紙製造工程までの製紙工程全般に関する技術開発に取り組んでいます。需要が減少する中、生産体制の最適化や他の用途開発に取り組んでおり、さらに、使用薬品や操業条件の最適化によるコストダウン、欠点・断紙削減等の操業性改善、代替薬品の利用促進によるBCP(事業継続計画)対応強化を推進し、収益向上に繋げています。当事業に係る研究開発費は658百万円です。 (5) その他の研究開発活動イノベーション推進本部は、日々変化する市場ニーズへ対応するため、研究開発体制を見直し、「木質由来の新素材」や「メディカル&ヘルスケア」、「環境配慮型製品」の三つのテーマを中心に研究開発活動を進めています。まず「木質由来の新素材」では、石油由来の燃料やプラスチックからの脱却に向けて、非可食の木質由来の「エタノール」、「糖液」、「ポリ乳酸」の事業化にむけた技術開発に取り組んでいます。木質由来のエタノールは航空業界向け燃料(SAF)や化学業界における基礎化学品製造の原料として期待され、木質由来の糖液はバイオマスプラスチックや合成繊維等の様々なバイオものづくりの基幹原料として、ニーズ拡大が見込まれており、その一つとしてポリ乳酸の開発にも取り組んでいます。2024年度下期には王子製紙米子工場に製紙工場のインフラを活用した国内初のエタノールおよび糖液のパイロット製造設備が稼働予定です。今後、実用化を見据えたユーザー様に対してエタノール・糖液を提供していくとともに、継続した技術改良を行い、社会実装に向けた取り組みを加速させていきます。さらに、レジストに木質由来の原料を採用することで、PFASフリーでかつ微細化に繋がることを見出し、半導体の2nm世代以降で求められるサイズのパターン形成を確認できました。木質由来素材のセルロース・ナノ・ファイバー(CNF)は、従来の石油や鉱物由来の機能材からの置き換えにより、環境負荷低減への貢献が期待されています。CNFを天然ゴムと複合させることにより補強効果(硬さ)と伸びの両立に成功し、実用化に向けたサンプルワークを進めております。タイヤ等の自動車用ゴム製品をはじめ様々な用途での採用を見据え、複合素材の量産試作設備を導入し、社会実装に向けた実証試験を加速していきます。また、CNFを用いた燃料電池用「高分子電解質膜」の開発、実用化に向けた研究開発を進めています。さらに、CNFで培ったノウハウを活かし、ガラス繊維強化に匹敵する衝撃強度を持つ、セルロースを補強材とした樹脂ペレットを開発し、「タフセル」の名称で顧客への提供を進めています。また、生分解性プラスチックと木質由来のセルロース(パルプ)の複合材料「リソイルグリーン」を開発しました。生分解性プラスチックの強度や剛性などの特性を向上させるとともに、構成するすべての原料が土中の微生物によって分解されるため、意図せず環境中に流出した場合でも、通常のプラスチックに比べ、環境への負荷を減らすことが出来ます。現在は、幅広い用途での採用を目指しています。 次に「メディカル&ヘルスケア」として、未来の医療を見据えて、新たな領域へ事業を展開しています。木材の主要成分の一つであるヘミセルロースを用いて、動物由来に依存する課題を回避できる医薬品の開発に取り組んでいます。また、医薬品や化粧品、食品などに使用されている薬用植物「甘草(カンゾウ)」について、国内での大規模栽培技術を確立し、市場の要求に応じた商品化を進めています。さらに、創薬における動物実験回避や再生医療への促進を目指し配向性細胞培養基材(CellArray-Heart)の開発にも力を入れています。そして、「環境配慮型製品」では、既存のプラスチック製食品トレイなどに紙素材を活用した脱プラスチックソリューションを提供しています。また、植物由来のポリ乳酸を使用したラミネート紙や現行の紙リサイクルシステムでも再生可能な紙コップ原紙などの開発を進めています。一方で、ポリエチレンでラミネート加工されたチルド向け紙容器および紙コップから段ボールへリサイクルするシステムを構築し、さらに従来ほとんどが焼却処分されているアルミ付き紙容器のマテリアルリサイクルシステムを確立しました。これらは、二酸化炭素排出量削減やプラスチック使用量の低減に繋がる取り組みであり、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現に貢献していきます。水処理技術の分野では、当社グループが長年培ってきた技術や操業ノウハウを活かし、国内外の顧客に水処理システムを提供することで、水資源の有効活用に貢献しています。また、イノベーション推進本部におけるDX推進の一環として、新材料の設計や開発を効率的に行うための手法であるMI(マテリアルズインフォマティクス)を導入し、研究開発活動への適用を進めています。その他の研究開発活動に係る研究開発費は6,253百万円です。 なお、(1)~(4)の各セグメントに関わる研究開発活動のうち、事業化段階に無い、探索段階及び開発段階の研究開発活動の研究開発費が含まれます。
FY2023|3,597 文字
6 【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、全体の研究開発を統括するイノベーション推進本部と各事業会社の研究開発部門、各工場の研究技術部等が連携しながら取り組んでいます。イノベーション推進本部は、新事業の創出並びに既存事業の競争力強化を念頭に、創業当時から森づくりや紙づくりで培ってきた多様な技術と国内外に保有する豊富な森林資源を活用することにより、当社ならではの新たな価値を創造し、社会的課題を解決するためにイノベーションを推進しています。 グループ全体の既存事業の競争力強化として、植林、パルプ、抄紙、塗工の各分野で蓄積・体系化された技術と、海外拠点との連携、新製品開発及び既存製品の品質改善に取り組んでいます。国内外の工場では、品質向上・操業の安定化、コストダウンの推進を図っています。 当連結会計年度末における当社グループの保有特許権・実用新案権・意匠権の総数は国内2,498件、海外747件です。また、保有商標権の総数は国内937件、海外1,015件です。当連結会計年度の研究開発費の総額は9,346百万円となっています。なお、当連結会計年度における各セグメントの研究開発活動を示すと、次のとおりです。 (1) 生活産業資材産業資材事業では、古紙利用拡大、抄紙条件、薬品の最適化によるコストダウン、品質・操業性改善を推進してきました。これらの国内で培った基盤技術を活用して新製品開発を進めるとともに、カンパニーの枠を越え、当社グループ会社の各海外拠点へ水平展開を進めています。パッケージング関係の紙容器関連事業では、国内でミルクカートン原紙の生産を開始し、抄紙から飲料パッケージングまでの国内一貫生産を実現しました。これら日本国内での一貫した生産体制を基盤に、大きな需要が期待される海外での事業も拡大していきます。段ボール事業では、インターネット通販市場の急速な拡大に伴うさまざまな業界での梱包・物流に関する課題解決に向けて、次世代の包装ソリューション「OJI FLEX PACK'AGE」の提供を行っています。「OJI FLEX PACK'AGE」では、当社グループの連続段ボールシート「らくだん」を使用した、商品のサイズにあわせた梱包を可能とする「3辺可変システム」等のラインアップを取り揃えており、顧客やパートナーに企業との連携を含め販路拡充を進めています。当事業に係る研究開発費は455百万円です。 (2) 機能材機能材事業では、温室効果ガスの排出量削減や循環型社会の実現に貢献する環境配慮型素材及び製品を積極的に開発しています。また、当社グループのコア技術であるシートの製造・加工技術を活用した新製品開発も進めています。特殊紙関連の環境配慮型素材及び製品としては、酸素や水蒸気の侵入を防ぎ、内容物の劣化を抑えることができるバリア性紙素材にヒートシール性、透明性、遮光性などの機能を有する製品を追加し、「SILBIOシリーズ」としてのラインアップを拡充しました。その他、医薬用包材や衛生材料関連素材など、成長市場に向けた製品開発も進めています。粘着関連では、機能進化するタッチパネルに対応した各種粘着シートや高機能粘着フィルムの開発に注力しており、ノートPC、ゲーム機、車載ディスプレイなどへの採用が進んでいます。また、透明性と高い遮熱性能を両立した遮熱ウィンドウフィルムを開発しました。自動車フロントガラス用のフィルムとして販売中で、建材用途にも展開検討を進めています。フィルム関連では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの技術によるコンデンサ用フィルムの開発や、バイオプラスチックフィルムの開発を進めています。脱炭素社会への転換がグローバルに進行し、電動車が急速に普及しています。電動車の電気駆動系に用いられるフィルムコンデンサは、その主力材料である高性能ポリプロピレンフィルムの厚みが薄いほど小型化が可能になります。当社グループは高耐電圧ポリプロピレンフィルムの超薄型化技術の開発を推進し、電動車両向けの電子部品の小型軽量化に貢献しています。また、バイオプラスチックフィルムでは、植物由来原料のポリ乳酸樹脂を配合した二軸延伸ポリプロピレンフィルムを開発し、バイオマスマーク認定商品の「アルファンG(グリーン)」として、営業生産を開始しています。当事業に係る研究開発費は2,239百万円です。 (3) 資源環境ビジネス資源環境ビジネス事業では、王子製紙株式会社米子工場で生産している溶解パルプに関する技術開発を行っています。溶解パルプは、レーヨン、医薬品や食品の添加剤、セルロース誘導体などの原料として使用され、今後は世界的な人口増加により需要拡大が期待されています。既に繊維原料メーカーや医薬品原料メーカーへの販売を行っており、現在は高価格品の生産性アップやコストダウンによる収益向上を進めています。当事業に係る研究開発費は580百万円です。 (4) 印刷情報メディア印刷情報メディア事業では、パルプ製造工程から紙製造工程までの製紙工程全般に関する技術開発に取り組んでいます。使用薬品や操業条件の最適化によるコストダウン、欠点・断紙削減等の操業性改善、代替薬品の利用促進によるBCP(事業継続計画)対応強化を推進し、収益向上に繋げています。当事業に係る研究開発費は943百万円です。 (5) その他の研究開発活動グループ内の関連部門と連携しながら、イノベーション推進本部では、「木質由来の新素材開発」や「メディカル&ヘルスケア領域への挑戦」、「環境配慮型紙製品の開発」の三つのテーマを中心に研究開発活動を進めています。まず「木質由来の新素材開発」では、石油由来の燃料やプラスチックからの脱却に向けて、非可食の「木質由来エタノール」や「木質由来糖液」の製造を検討しています。木質由来エタノールは航空業界向け燃料(SAF)や化学業界における基礎化学品製造の原料として、また、木質由来糖液はポリ乳酸などのバイオマスプラスチックをはじめとした様々なバイオものづくりの基幹原料として、ニーズ拡大が見込まれます。今後、王子製紙米子工場にパイロット製造設備を導入し、実用化を見据えたユーザー様に対してエタノール・糖液を提供していくとともに、継続した技術改良を行い、将来の事業化に向けた取り組みを加速させていきます。木質由来素材のセルロース・ナノ・ファイバー(CNF)は、従来の石油や鉱物由来の機能材からの置き換えにより、環境負荷低減への貢献が期待されています。CNFを天然ゴムと複合させることにより補強効果(硬さ)と伸びの両立に成功し、石油由来の既存補強材であるカーボンブラックを木質由来に置換えた新規ゴム素材としての可能性を見出しました。将来的にはCNFの使用量が見込めるタイヤ用途への採用を見据え、開発・実用化を進めていきます。さらに、CNFで培ったノウハウを活かし、ガラス繊維強化に匹敵する衝撃強度を持つ、セルロースを補強材とした樹脂ペレットを開発し、顧客への提供を進めています。また、生分解性プラスチックと木質由来のセルロース(パルプ)を複合化した樹脂材料の「リソイルグリーン」を開発しました。生分解性プラスチックの強度や剛性などの特性を向上させることができ、構成するすべての原料が土中の微生物によって分解されるため、通常のプラスチックに比べ、環境への負荷を減らすことが出来ます。現在は、幅広い用途での採用を目指しています。 次に「メディカル&ヘルスケアへの挑戦」として、未来の医療を見据えて、新たな領域へ事業を展開しています。木材の主要成分の一つであるヘミセルロースを用いた医薬品創薬の開発や、高品質な国産の漢方薬原料を安定供給するため、薬用植物の大規模栽培を進めています。また、再生医療への応用が期待される配向性細胞培養基材(CellArray-Heart)の開発も進めています。そして、「環境配慮型紙製品の開発」では、既存のプラスチック製食品トレイなどに紙素材を活用した脱プラスチックソリューションを提供しています。また、植物由来のポリ乳酸を使用したラミネート紙や現行の紙リサイクルシステムで再生可能な紙コップ原紙などの開発を進め、二酸化炭素排出量削減やプラスチック使用量の低減に繋がる取組みを行っています。水処理技術の分野では、当社グループが長年培ってきた技術や操業ノウハウを活かし、国内外の顧客に水処理システムを提供することで、水資源の有効活用に貢献しています。その他の研究開発活動に係る研究開発費は5,127百万円です。 なお、(1)~(4)の各セグメントに関わる研究開発活動のうち、事業化段階に無い、探索段階及び開発段階の研究開発活動の研究開発費が含まれます。
FY2022|4,104 文字
5 【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、全体の研究開発を統括するイノベーション推進本部と各事業会社の研究開発部門、各工場の研究技術部等が連携しながら取り組んでいます。イノベーション推進本部は、新事業の創出並びに既存事業の競争力強化を念頭に、技術革新のシーズ開発から、よりビジネスに密着した新市場の開拓と新製品開発を行っています。 グループ全体の既存事業の競争力強化として、植林、パルプ、抄紙、塗工の各分野で蓄積・体系化された技術と、海外拠点との連携、新製品開発及び既存製品の品質改善に取り組んでいます。国内外の工場では、品質向上・操業の安定化、コストダウンの推進を図っています。 当連結会計年度末における当社グループの保有特許権・実用新案権・意匠権の総数は国内2,332件、海外648件です。また、保有商標権の総数は国内895件、海外1,011件です。当連結会計年度の研究開発費の総額は9,209百万円となっています。なお、当連結会計年度における各セグメントの研究開発活動を示すと、次のとおりです。 (1) 生活産業資材産業資材事業では、古紙利用拡大、抄紙条件、薬品の最適化によるコストダウン、品質・操業性改善を推進してきました。これらの国内で培った基盤技術を活用して新製品開発を進めるとともに、カンパニーの枠を越え、当社グループ会社の各海外拠点へ水平展開を進めています。パッケージング関係では、紙容器関連事業のさらなる発展のため、国内原紙の抄紙から飲料パッケージングまでの国内一貫生産システムを構築しています。これら日本国内での一貫した生産体制を基盤に、大きな需要が期待される海外での事業も拡大していきます。段ボール事業では、インターネット通販市場の急速な拡大に伴うさまざまな業界での梱包・物流に関する課題解決に向けて、次世代の包装ソリューション「OJI FLEX PACK’AGE」の提供を行っています。「OJI FLEX PACK’AGE」では、当社グループの連続段ボールシート「らくだん」を使用した、商品のサイズにあわせた梱包を可能とする「3辺可変システム」等のラインアップを取り揃えており、梱包作業の省人化や配送料削減など物流コストの削減をサポートします。この取り組みは、世界包装機構主催のワールドスターコンテスト2022において、ワールドスター賞を受賞しています。当事業に係る研究開発費は444百万円です。 (2) 機能材機能材事業では、温室効果ガスの排出量削減や循環型社会の実現に貢献する環境配慮型素材及び製品を積極的に開発しています。また、当社グループのコア技術であるシートの製造・加工技術を活用した新製品開発も進めています。特殊紙関連の環境配慮型素材及び製品としては、酸素や水蒸気の侵入を防ぎ、内容物の劣化を抑えることができるバリア性紙素材として、プラスチックに代わる紙素材「SILBIO BARRIER」を製品化し、続けて、蒸着フィルム並みの高いバリア性を有する「SILBIO ALBA」、中身が見える「SILBIO CLEAR」、フィルムなしで熱シール可能な「SILBIO EZ SEAL」をラインアップしました。さらなる機能向上にも取り組んでいます。また、バイオマスプラスチックを利用したラミネート紙やヒートシール紙などの開発をしています。その他、医薬用包材や衛生材料関連素材など、成長市場に向けた製品開発も進めています。粘着関連では、機能進化するタッチパネルに対応した各種粘着シートや高機能粘着フィルムの開発に注力しており、ノートPC、ゲーム機、車載ディスプレイなどへの採用が進んでいます。また、高い遮熱性と光線透過性を両立した自動車用ウィンドウフィルムなど、新たな市場開拓を目指した製品開発にも取り組んでいます。フィルム関連では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの技術によるコンデンサ用フィルムの開発や、バイオプラスチックフィルムの開発を進めています。ハイブリッド車や電気自動車の電気駆動系に用いられるフィルムコンデンサは、その主力材料である高性能ポリプロピレンフィルムの厚みが薄いほど小型化が可能になります。当社グループは高耐電圧ポリプロピレンフィルムの超薄型化技術の開発を推進し、世界的な需要拡大が見込まれる電動車両向けの電子部品の小型軽量化に貢献しています。バイオプラスチックフィルムでは、植物由来原料のポリ乳酸樹脂を配合した二軸延伸ポリプロピレンフィルムを開発し、バイオマスマーク認定商品「アルファンG(グリーン)」を製品化しました。当事業に係る研究開発費は2,259百万円です。 (3) 資源環境ビジネス資源環境ビジネス事業では、王子製紙株式会社米子工場で生産している溶解パルプに関する技術開発を行っています。溶解パルプは、レーヨン、医薬品や食品の添加剤、セルロース誘導体などの原料として使用され、今後は世界的な人口増加により需要拡大が期待されています。既に繊維原料メーカーや医薬品原料メーカーへの販売を行っており、現在は高価格品の生産性アップやコストダウンによる収益向上を進めています。当事業に係る研究開発費は379百万円です。 (4) 印刷情報メディア印刷情報メディア事業では、パルプ製造工程から紙製造工程までの製紙工程全般に関する技術開発に取り組んでいます。使用薬品や操業条件の最適化によるコストダウン、欠点・断紙削減等の操業性改善、代替薬品の利用促進によるBCP(事業継続計画)対応強化を推進し、収益向上に繋げています。当事業に係る研究開発費は1,009百万円です。 (5) その他の研究開発活動グループ内の関連部門と強く連携しながら、イノベーション推進本部を中心に機動的かつ効率的な研究開発活動を実施しています。セルロースナノファイバー(CNF)や、環境配慮型素材及び製品をはじめ、木材成分のヘミセルロースを利用した医薬品原薬、セルロースからのバイオマスプラスチック開発等の多角的な革新的価値創造に取り組んでいます。セルロースナノファイバー(CNF)は、引き続き用途開発に精力的に取り組んでいます。CNFスラリー「アウロ・ヴィスコ」は、個々のお客様のニーズに応じてスラリーの特性である透明性や粘度などをカスタマイズした開発を推進し、生コンクリートの圧送先行剤への採用に加え、化粧品原料として国内外の化粧品メーカーでの採用が進んでいます。さらに、グローバルに大きな市場を持つ工業用製品にも採用されています。また、自動車の窓ガラス用途で、当社グループ独自のCNFシート「アウロ・ヴェール」をポリカーボネートと複合化する素材開発を進めています。CNFシートを複合化することで、透明樹脂の透明性を保持したまま、弾性率向上と熱膨張率低減を実現できました。無機ガラスに比べて大幅な重量低減効果が期待され、今後も製品化に向けた開発を継続していきます。さらに、個々のお客様のニーズに応じ、シートの特性である強度やフレキシブル性などをカスタマイズした開発を進め、様々な産業分野における適用性検討を継続しています。更に、CNFで培ったノウハウと当社グループのコア技術を活かし、マイクロサイズのセルロース繊維と樹脂繊維を複合化させた変形に強く割れにくいセルロースマットの開発も進めています。今後も上記の用途に加え、樹脂、ゴムの補強等、より幅広い分野での用途開発を進め、CNFの実用化を牽引し、市場普及を積極的にリードしていきます。環境配慮型素材及び製品として、生分解性プラスチックとセルロースの複合材「リソイルグリーン」の量産体制が整い、試験販売を開始しました。また、滑らかな表面と自由な立体成形性が特徴のパルプモールド製品「PaPiPress」(iFデザインアワード2021・2022、グッドデザイン賞2021受賞)は、プラスチックの代替パッケージとして様々な分野のお客様からの引き合いに対応しています。パルプを原料としたプラスチックの製造についても目下開発中です。従来の石油を原料としたプラスチックを持続可能なバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックに置き換えることにより、温室効果ガスの排出量削減し、地球温暖化防止に貢献することを目指します。一般的なバイオマスプラスチックはトウモロコシなどの可食原料から製造されますが、当社グループのバイオマスプラスチックは非可食である樹木由来のパルプを原料とすることにより食品資源との競合を無くすことができます。これにより、持続可能な社会にさらに深く貢献できる非可食バイオマスプラスチックの普及を目指すことができます。 新規開発分野として、独自の微細構造形成技術「ナノドットアレイ」を用いて、ライフサイエンス分野への展開を進めており、iPS創薬や再生医療開発などに役立つ微細構造つき細胞培養基材を開発し、培養シャーレを試験販売中です。その他、反射防止構造体や光取出し構造体等、各種光学材料分野の開発も行っています。また、木質主要成分の一つであるヘミセルロースの産業利用においては、化学修飾した「硫酸化ヘミセルロース」の医薬品化を王子ファーマ株式会社が進めています。医薬事業への参入に向けた取り組みを加速するため、大学や製薬企業との連携を推進しています。水処理技術の分野では、当社グループが長年培ってきた製紙技術を通じて蓄積された用水製造・排水処理のノウハウを多様なニーズと組み合わせることにより、あらゆる水環境に適した水処理システムを提供しています。またIoTを導入した遠隔監視システムにも対応しています。今後も、水処理システムの技術革新を進めながら、国内のみならずアジア各国をはじめとする諸国の水環境発展に貢献していきます。その他の研究開発活動に係る研究開発費は5,116百万円です。 なお、(1)~(4)の各セグメントに関わる研究開発活動のうち、事業化段階に無い、探索段階及び開発段階の研究開発活動の研究開発費が含まれます。
FY2021|4,775 文字
5【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、全体の研究開発を統括するイノベーション推進本部と各事業会社の研究開発部門、各工場の研究技術部等が連携しながら取り組んでいます。イノベーション推進本部は、新事業の創出並びに既存事業の競争力強化を念頭に、技術革新のシーズ開発から、よりビジネスに密着した新市場の開拓と新製品開発を行っています。 グループ全体の既存事業の競争力強化として、植林、パルプ、抄紙、塗工の各分野で蓄積・体系化された技術と、海外拠点との連携、新製品開発及び既存製品の品質改善に取り組んでいます。国内外の工場では、品質向上・操業の安定化、コストダウンの推進を図っています。 当連結会計年度末における当社グループの保有特許権・実用新案権・意匠権の総数は国内2,348件、海外719件です。また保有商標権の総数は国内874件、海外968件です。当連結会計年度の研究開発費の総額は9,704百万円となっています。なお、当連結会計年度における各セグメントの研究開発活動を示すと、次のとおりです。 (1)生活産業資材産業資材事業では、古紙利用拡大、抄紙条件、薬品の最適化によるコストダウン、品質・操業性改善を推進してきました。これらの国内で培った基盤技術を活用して新製品開発を進めるとともに、カンパニーの枠を越え、当社グループ会社の各海外拠点へ水平展開を進めています。パッケージング関係では、紙容器関連事業のさらなる発展のため、国内原紙の抄紙から飲料パッケージングまでの国内一貫生産システムを構築しています。同事業は石塚硝子株式会社(以下、「石塚硝子」といいます。)と合弁にて参画することにより、当社グループの原紙製造技術と石塚硝子の充填機・メンテナンス技術が融合し、新たな事業分野を構築することが可能になります。これら日本国内での一貫した生産体制を基盤に、大きな需要が期待される海外での事業も拡大していきます。段ボール事業では、インターネット通販市場の急速な拡大に伴うさまざまな業界での梱包・物流に関する課題解決に向けて、次世代の包装ソリューション「OJI FLEX PACK’AGE」の提供を行っています。「OJI FLEX PACK’AGE」では、当社グループの連続段ボールシート「らくだん」を使用した、商品のサイズにあわせた梱包を可能とする「3辺可変システム」等のラインナップを取り揃えており、梱包作業の省人化や配送料削減など物流におけるコスト全般の削減をサポートします。この取り組みは、日本包装技術協会主催の2020年日本パッケージングコンテストにおいて、最高位にあたる経済産業大臣賞を受賞しています。さらに、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みの一貫で、紙素材を活用した仮設施工の生産性向上技術を「KAMIWAZA」として、清水建設株式会社と共同開発しています。従来から仮設資材に利用されていた鋼材や木材の代替として、取り扱いが容易な紙素材を使用することにより、作業員の負担を軽減し、仮設施工の生産性を向上することが可能となります。この取り組みは、日刊工業新聞社主催の第49回日本産業技術大賞において、審査員特別賞を受賞しています。当事業に係る研究開発費は404百万円です。 (2)機能材機能材事業では、海洋プラスチック問題への解決策として、環境配慮型製品を積極的に開発しています。また、当社グループのコア技術であるシートの製造・加工技術を活用した新製品開発も進めています。環境配慮型製品としては、酸素や水蒸気の侵入を防ぎ、内容物の劣化を抑えることができるバリア性紙素材として、プラスチックに代わる紙素材「SILBIO BARRIER」を製品化しました。一般的なバリアフィルムより高い、蒸着フィルム並みのバリア性を有する高性能品や、高透明グレード品を開発する等、さらなる機能向上にも取り組んでいます。また、生分解性プラスチックとセルロースの複合材は、量産体制を構築し、さまざまなユーザーでのテストを進めています。滑らかな表面と自由な立体成形性が特徴のパルプモールド製品「PaPiPress」(iFデザインアワード2021受賞)は、プラスチックの代替パッケージとして様々な分野のお客様からの引き合いに対応しています。特殊紙事業では、バイオマスプラスチックを利用した特殊紙シート、あるいは医薬用包材やヘルスケア関連素材など、成長市場に向けた製品開発を進めています。また、半導体や二次電池などの製造工程で使用される各種高機能フィルター用素材として、より高性能かつ環境に配慮した無機繊維ペーパーを開発しています。粘着事業では、機能進化するタッチパネルに対応した各種粘着シートや高機能フィルム開発に注力しています。タッチペン適性を向上させる粘着シート、性能劣化を抑制する粘着シート、画面の見やすさを向上させるフィルム等の製品は、スマートフォンやノートPC、ゲーム機などへ新規採用が進んでいます。進化する車載ディスプレイ向け製品でも、高度な耐久性を有しながら、高級感も付与できる粘着シートなどが好評を得て採用実績が拡大しているほか、軽量化に寄与する粘着シートも開発しています。今後も新たな市場開拓を目指した製品開発に取り組んでいきます。フィルム事業では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの技術によるコンデンサ用フィルムの開発や、高機能フィルムの開発を進めています。ハイブリッド車や電気自動車の電気駆動系に用いられるフィルムコンデンサは、その主力材料である高性能ポリプロピレンフィルムの厚みが薄いほど小型化が可能になります。当社グループは高耐電圧ポリプロピレンフィルムの超薄型化技術の開発を推進し、世界的な需要拡大が見込まれる電動車両向けの電子部品の小型軽量化に貢献しています。高機能フィルムでは、コンデンサ用フィルムの技術を活かし、バイオプラスチックフィルム等の開発を開始しています。当事業に係る研究開発費は2,144百万円です。 (3)資源環境ビジネス資源環境ビジネス事業では、王子製紙株式会社米子工場で生産している溶解パルプに関する技術開発を行っています。溶解パルプは、レーヨン、医薬品や食品の添加剤、セルロース誘導体などの原料として使用され、今後は世界的な人口増加により需要拡大が期待されています。既に繊維原料メーカーや医薬品原料メーカーへの販売を行っており、現在は高価格品の生産性アップやコストダウンによる収益向上を進めています。当事業に係る研究開発費は337百万円です。 (4)印刷情報メディア印刷情報メディア事業では、パルプ製造工程から紙製造工程までの製紙工程全般に関する技術開発に取り組んでいます。使用薬品や操業条件の最適化によるコストダウン、欠点・断紙削減等の操業性改善、代替薬品の利用促進によるBCP(事業継続計画)対応強化を推進し、収益向上に繋げています。当事業に係る研究開発費は966百万円です。 (5)その他の研究開発活動グループ内の関連部門と強く連携しながら、イノベーション推進本部を中心に機動的かつ効率的な研究開発活動を実施しています。セルロースナノファイバー(CNF)や、水処理技術をはじめ、木材成分のヘミセルロースを利用した医薬品原薬、セルロースからのバイオマスプラスチック開発等の多角的な革新的価値創造に取り組んでいます。次世代素材として注目をされているセルロースナノファイバー(CNF)については、引き続き用途開発に精力的に取り組んでいます。CNFスラリー「アウロ・ヴィスコ」については、個々のお客様のニーズに応じてスラリーの特性である透明性や粘度などをカスタマイズした開発を推進し、より幅広い分野での適用を目指します。用途開発の具体例としては、これまでにおける生コンクリートの圧送先行剤への採用に加え、化粧品原料「アウロ・ヴィスコ CS」は、国内外の化粧品メーカーでの採用が進んでいます。さらに、グローバルに大きな市場を持つ工業用製品にも採用されています。また、自動車の窓ガラス用途での開発を進めているCNFとポリカーボネートを複合した樹脂ガラスは、無機ガラスに比べて軽量なため、大幅な自動車重量の低減効果が期待され、今後も製品化に向けた開発を継続していきます。さらに当社グループ独自のCNFシート「アウロ・ヴェール」につきましても、個々のお客様のニーズに応じ、シートの特性である強度やフレキシブル性などをカスタマイズした開発を進め、様々な産業分野における適用性検討を継続しています。反発力や弾力を両立したCNFシートが採用された卓球ラケットは、卓球専門誌のアンケートにおいてグランプリ(ペンホルダーラケット部門)を受賞しました。2021年度も新たな卓球ラケットに採用されています。今後も上記の用途に加え、樹脂、ゴムの補強等、より幅広い分野での用途開発を進め、CNFの実用化を牽引し、市場普及を積極的にリードしていきます。水処理技術の分野では、当社グループが長年培ってきた製紙技術を通じて蓄積された用水製造・排水処理のノウハウを多様なニーズと組み合わせることにより、あらゆる水環境に適した水処理システムを提供しています。水質分析・ラボ試験・パイロット試験などの現地調査を実施し、より適切な設備の設計・施工を進めるための体制を確立しています。具体的には水資源を有効活用するため膜ろ過装置を用いた工業・生活用水の製造設備や排水基準値を大幅に下回る排水処理設備が東南アジアでも採用されています。またこれらの設備はIoTを導入した遠隔監視システムを組み込み、設備全体を遠隔でサポートするサービスにも対応しています。今後も、水処理システムの技術革新を進めながら普及拡大を目指し、日本国内のみならず東南アジアをはじめとする新興国の水環境発展に貢献していきます。新規開発分野として、独自の微細構造形成技術「ナノドットアレイ」を用いて、ライフサイエンス分野への展開を進めており、iPS創薬や再生医療開発などに役立つ微細構造つき細胞培養基材を開発し、培養シャーレを2020年5月に製品化しています。その他、反射防止構造体や光取出し構造体等、各種光学材料分野の開発も行っています。また、木質資源由来のヘミセルロースは、化学合成した「硫酸化ヘミセルロース」の医薬品化を進めています。医薬事業への参入に向けた取り組みを加速するため、2020年4月に王子ファーマ株式会社を設立し、大学や製薬企業とのコラボレーションを推進しています。パルプを原料としたプラスチックの製造についても目下開発中です。従来の石油を原料としたプラスチックを、持続可能なバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックに置き換えることにより、化石燃料由来のCO2排出を抑制し、地球温暖化防止に貢献することを目指します。一般的なバイオマスプラスチックはトウモロコシなどの可食原料から製造されますが、当社グループのバイオマスプラスチックは非可食である樹木由来のパルプを原料とすることにより食品資源との競合を無くすことができます。これにより、持続可能な社会にさらに深く貢献できる非可食バイオマスプラスチックの普及を目指すことができます。本開発は環境省の委託事業「令和元年度脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」に採択され、研究を進めています。その他の研究開発活動に係る研究開発費は5,850百万円です。 なお、(1)~(4)の各セグメントに関わる研究開発活動のうち、事業化段階に無い、探索段階及び開発段階の研究開発活動の研究開発費が含まれます。
FY2018|2,036 文字
5【研究開発活動】当社グループの研究開発活動は、全体の研究開発を統括するイノベーション推進本部と各事業会社の研究開発部門、各工場の研究技術部等が連携しながら取り組んでいます。イノベーション推進本部は、新事業の創出ならびに既存事業の競争力強化を念頭に、技術革新のシーズ開発から、よりビジネスに密着した新市場の開拓と新製品開発を行っています。当連結会計年度末における当社の保有特許権・実用新案権・意匠権の総数は国内1,817件、海外439件です。また保有商標権の総数は国内835件、海外752件です。当連結会計年度における各セグメントの研究開発活動を示すと、次のとおりです。 グループ全体の既存事業の競争力強化として、植林、パルプ、抄紙、塗工の各分野で、蓄積・体系化された技術を基に、新製品開発及び品質改善に取り組んでいます。国内外の工場で、品質向上・操業の安定化、コストダウンの推進を図っています。 (1)生活産業資材産業資材事業では、古紙利用拡大、抄紙条件、薬品の最適化によるコストダウン、異物・欠陥削減等の品質・操業性改善を推進しました。これらの国内で培った基盤技術を活用して新製品開発を進めるとともに、カンパニーの枠を越え、当社グループ会社の各海外拠点へ水平展開を進めています。また、板紙・包装用紙から段ボール・紙器・製袋までのトータルパッケージング事業を強化するため、2018年4月にイノベーション推進本部にパッケージング推進センターを発足しています。当事業に係る研究開発費は540百万円です。 (2)機能材機能材事業では、研究開発型ビジネスの形成を目指し、王子グループのコア技術であるシートの製造・加工技術を活用した機能性シート・フィルム分野での新製品開発を進めています。特殊紙事業では、半導体や二次電池などの製造工程で使用される各種高機能フィルター用の素材として、従来品の性能は維持しながら、より環境に配慮した無機繊維ペーパーを開発しています。さらに、医療用途や電子機器など、成長分野への様々な製品開発も進めています。粘着事業では、機能進化するタッチパネルに対応した各種粘着シートや高機能フィルムの開発を進めています。タッチペン適性を向上させたり、性能の劣化を抑制する粘着シート、画面の見やすさを向上させるフィルムなどで、スマートフォンや最新ノートPC、ゲーム機等への採用が進んでいます。また、進化する車載ディスプレイ向製品の開発など、新たな市場開拓を目指した製品開発も進めています。フィルム事業では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの技術を生かしたコンデンサ用フィルムの開発や、塗工設備を活用した離型用フィルムの開発を進めています。コンデンサ用フィルムでは、ハイブリッド車や電気自動車向けフィルムコンデンサ用極薄ポリプロピレンフィルムを開発し、世界的な電動化の潮流に対応した自動車用電子部品の小型化に貢献しています。また、新たな高機能フィルムの開発では、半導体等電子部品の生産工程用ノンシリコーン軽剥離フィルムの開発を進めています。メディカル事業では、温かさが長持ちする身体清拭用シートを開発し、上市に向けた活動を進めています。当事業に係る研究開発費は2,321百万円です。 (3)資源環境ビジネス王子製紙株式会社米子工場に設置したバイオリファイナリー連続工業プロセスでは、溶解パルプの実機生産と並行して、副生するヘミセルロース分解物の有効活用に関する研究を行っています。溶解パルプは、レーヨン、医薬品や食品の添加剤、セルロース誘導体等の原料として使用され、今後世界的な人口増加により需要拡大が期待されています。既に繊維原料メーカーや医薬品原料メーカーへの販売を行っており、現在はセルロース誘導体用途等の高付加価値品の開発にも注力しています。また、ヘミセルロース分解物からフルフラールを製造する技術確立は完了し、現在は付加価値の高い用途開発を進めています。当事業に係る研究開発費は407百万円です。 (4)印刷情報メディア印刷情報メディア事業では、DIP品質と歩留まりを両立する技術開発や、使用薬品の最適化によるコストダウン、欠点・断紙削減等の操業性改善を推進し、収益向上に繋げています。また、インクジェット新聞用紙やフォーム印刷用インクジェット紙の開発で培った技術を応用し、さらに付加価値の高いインクジェット用紙の開発を進めています。当事業に係る研究開発費は1,079百万円です。 (5)その他の研究開発活動その他の研究開発活動につきましては、「第1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)企業集団の経営戦略 (e)研究開発の強化」に記載のとおりです。その他の研究開発活動に係る研究開発費は4,603百万円です。なお、(1)~(4)の各セグメントに関わる研究開発活動のうち、事業化段階に無い、探索段階及び開発段階の研究開発活動の研究開発費が含まれます。