研究開発費(時系列)
| 年度 | R&D費用(億円) | 設備投資(億円) |
|---|---|---|
| 2025-03 | - | 328 |
| 2024-03 | - | 584 |
| 2023-03 | - | 730 |
| 2022-03 | - | 1,094 |
| 2021-03 | - | 1,224 |
研究開発活動(本文)
FY2025|5,151 文字
6 【研究開発活動】 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は212億円であり、うち当社の研究開発費は203億円であります。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部、土木総本部等の技術開発部署で行われており、その内容は主に当社建設事業に係るものであります。 当社は、建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより、多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や、さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも、幅広く積極的に取り組んでおります。技術研究所を中心とした研究開発活動は、基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており、異業種企業、公的研究機関、国内外の大学との技術交流、共同開発も積極的に推進しております。 研究開発の成果の一部は、2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博という。)に展開しており、視覚障がい者向けナビゲーションロボット「AIスーツケース」の実証運用や、水産系廃棄物のホタテの貝殻を再利用し、当社の3Dプリンティング技術で製造したベンチ「HOTABENCH(ホタベンチ)」の展示を行っております。また、省スペース型の建築物向け水素エネルギーシステム「Hydro Q-BiC Lite」によるパビリオンへの水素エネルギーの供給も行っております。 その他、研究開発の成果として、今年度も日本建築学会、土木学会、日本コンクリート工学会、空気調和・衛生工学会をはじめ、さまざまな学協会からの賞を受賞しております。 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりであります。 (1)建築・土木に関する技術開発建築・土木分野における品質・安全性の向上、生産性の向上、環境負荷軽減に向けた多角的な研究開発を進めております。 ①外装デザインの自由度を飛躍的に向上させる3次元自由曲面ガラスファサードを初実装 技術研究所本館エントランスのガラスファサードに、自由曲面の「3Dガラススクリーン構法」を採用しました。この構法は、近年の建築ファサードデザインの複雑化を踏まえていち早く研究開発に着手し、実現したものです。化学強化ガラスを使い、従来必要だったリブガラスを排除しました。形状そのものが剛性を担保し、ガラスファサードデザインの自由度を飛躍的に向上させ、耐震・耐風圧性や施工性の課題もクリアしました。設計にはコンピュテーショナルデザインを活用し、最適なパターンを選定しました。最大300mmの起伏(凹凸)を持つガラスファサードは国内初です。今後は各種大規模施設のエントランスや商業施設のファサード等への展開を目指し、提案を進めていきます。 ②材料噴射型3Dプリンティング技術を実工事に初適用し有筋構造部材をオンサイト施工 プリント材料を圧縮空気でロボットアーム先端のノズルから噴射するモバイルプリンタと自動材料製造装置を開発し、実工事に初めて適用して有筋構造部材の現場施工を実施しました。鉄筋の外周から材料を噴射する新技術により、従来困難だった有筋構造部材の直接施工が可能となり、従来工法より工期を約4割短縮しました。また、本技術による造形体は、鉄筋コンクリート部材と同等以上の構造耐力と靱性を有し、鉄筋コンクリート構造物より木製型枠の使用量を削減可能で、環境負荷低減にも寄与します。今後は、造形精度や複雑形状への対応強化に加え、既設構造物の補修や災害時の応急復旧への応用も視野に開発を続ける方針です。 ③設計の初期段階から施設のデザイン検討、人流・音響の性能評価を同時実施可能なシステムを開発 企画・基本設計の高度化を図るデジタルプラットフォーム「Shimz DDE」に、3Dモデルの中で数万人の群集行動を評価・可視化できる「Pedex」と、コンサートホールや劇場などの反射音や残響等の音響性能を評価・可視化できる「Audix」を追加しました。両システムは、専門家でなくても一目で性能を把握できる視覚的な出力を提供でき、すでに複数の設計施工物件で信頼性も検証済みです。1日足らずで数千パターンの性能を評価し、最適案を選択することができます。従来、設計案が固まった時点で専門家に依頼していた人流・音響の性能評価を、不確定要素が多い設計の初期段階で、設計者が自らデザイン検討と同時に実行することが可能になりました。今後、両システムを活用し、最適な人流・音響性能を備えた施設の設計・提案力の高度化を図ります。 ④画像解析AIでトンネル坑内の作業状況を自動判定し関係者にリアルタイム通知 山岳トンネル工事の施工管理を効率化するため、これまで把握が難しかったトンネル内の作業状況をAIで自動判定し、リアルタイムで関係者に通知する「AIサイクル自動判定システム」を開発しました。AIがネットワークカメラの映像を解析して作業内容を即時に判断し、チャットツールを通じて現場全体に情報共有します。これにより、経験や勘に頼っていた工程調整の精度が向上し、不要な待機時間を大幅に削減できます。実際の工事現場への試験導入では、職員の待機時間を約40%削減するなど、現場の生産性向上に大きく貢献しております。 その他、建築・土木に関する技術開発の主な成果は以下のとおりです。 ⑤超高層ビル建設を効率化する国内最高の速度と最大積載量を備えた工事用エレベータを開発・実用化⑥GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球測位衛星システム)によりクレーンのブームの位置と向きをリアルタイムで検出し、衝突事故を防ぐ衝突危険警報システム「クレーンアシスト」を開発・実用化⑦最大3トンの天井工事用ステージ足場をそのまま移設可能な電動台車を開発し、天井工事の効率化と作業負担の軽減を実現⑧杉板型枠に塗布することで美しい木目調コンクリートの仕上がりと良好な施工性、型枠再利用を実現する「超撥水剤」の外販を開始⑨高速道路高架橋の支承交換工事において、重量約1~2tの支承を水平移動できる装置で狭あいな橋桁下での支承交換作業を大幅に効率化し、作業員の安全性向上と負担軽減を実現⑩高速道路高架橋の床版のはく離撤去と新設を1台の自走式装置で安全に効率よく行う「グラビングエレクター工法」を開発⑪穿孔のパターン・順序の修正計算を瞬時に行い山岳トンネルの発破掘削を効率化する、穿孔差し角自動制御システム「ブラストマスタII」を開発⑫Starlink活用によるトンネル建設現場の通信エリア化と3D点群データのリアルタイム伝送を実現し、現場の定期巡回・施工管理にかかる時間を大幅に短縮⑬従来比2.8倍のコンクリート運搬が可能な密閉・吊下げ構造のベルトコンベヤ「SCプレミアムベルコン」を開発し、ダム工事を大幅に効率化⑭大型風車施工の工期を大幅に短縮する国内最大の移動式タワークレーンを開発し、国内最大の陸上風力発電所に適用⑮腰をかがめず足元の鉄筋を結束できる「鉄筋結束アシスト装置」を開発し、作業者の身体的負担軽減と作業効率向上を実現 (2)脱炭素・資源循環・自然共生社会の実現に資する技術開発脱炭素、資源循環、自然共生により持続可能な社会を実現するため、多方面にわたる研究開発を行っております。 ①バイオ炭を活用した環境配慮型施工技術「SUSMICS」シリーズの拡充と第三者機関によるCO₂排出量の定量評価・検証を実施 CO₂固定効果のあるバイオ炭を活用した環境配慮型施工技術「SUSMICS」シリーズを開発し、CO₂排出削減に取り組んでおります。新たに「SUSMICS-S」を開発し、流動化処理土にバイオ炭を混ぜることで、セメント使用時のCO₂排出削減と施工品質の向上を実現し、約8tのCO₂固定効果を達成しました。「SUSMICS-S」の大きな特徴は、既存の流動化処理土製造設備で容易に製造可能な点です。広範な現場での適用が期待され、今後は、山留めソイルセメント壁や建物基礎下の地盤改良などにも適用領域を拡大していく予定です。そのほか、日本道路㈱と共同でバイオ炭を添加した環境配慮型アスファルト「SUSMICS-A(日本道路㈱での呼称は「バイオ炭アスコン」)」も開発・製品化しております。環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」については、施工実績に基づくCO₂排出量の定量評価を実施し、第三者機関による確認も得ております。当社はこれらの技術の適用拡大を進め、建設業界の脱炭素化と持続可能な社会実現に貢献します。 ②再生可能エネルギーで水素を製造・貯蔵・利用可能な建築物向け水素エネルギーシステム「Hydro Q-BiC」シリーズを拡充 太陽光発電による再生可能エネルギーで水素を製造、貯蔵、利用し、CO₂排出削減とエネルギーの地産地消を実現することが可能で、都市部への展開を進めております。中核技術の「水素吸蔵合金タンク」は、常温・低中圧で水素を安全に貯蔵可能なため都市部に設置でき、かつ、コスト削減と効率向上を実現しております。また、省スペース型システム「Hydro Q-BiC Lite」を開発し、水素製造から利用までを1台のコンテナで完結することを可能にしました。設置工事の簡素化とコスト低減も実現し、大阪・関西万博のパビリオンに採用されました。このほか、「Hydro Q-BiC Storage」は、外部から搬入された水素の効率的な貯蔵・供給が可能です。これらの水素の製造、貯蔵、供給を一体的に担うシステムにより、再生可能エネルギー設備の設置が難しい都市部における熱供給の脱炭素化に貢献します。 その他、脱炭素・資源循環・自然共生社会の実現に向けた技術開発の主な成果は以下のとおりです。 ③「温故創新の森 NOVARE」で、エネルギー損失とCO₂排出を抑えた再エネ電力の利用や非常時の電源確保が可能な直流配電システムを実証④ジオポリマーコンクリートで産業副産物の最大使用率96%(重量比)を実現し、コストとCO₂排出量を削減⑤セメントの約80%を高炉スラグ微粉末に置換した環境配慮型コンクリートを共同開発し、製造時のCO₂排出量を約8割削減⑥プラットフォーム「Civil-CO₂」により膨大な資機材とCO₂排出原単位の情報参照を自動化し、土木工事のCO₂排出量の算出業務を大幅に省力化⑦超高層ビルの解体現場から排出される廃板ガラスをさまざまな製品にリサイクルし、従来の廃棄処理と比べCO₂排出量を削減⑧建設現場から排出された廃プラスチックのマテリアルリサイクルを開始し、100%リサイクル材由来のカラーコーンを作成・利用開始⑨米国内で当社独自技術による実汚染土壌の浄化試験に成功し、有機フッ素化合物(PFAS)含有量の約99%を従来と比べ低コストで除去⑩従来浄化が困難だった汽水・海水環境下の土壌・地下水を、低コスト・低CO₂排出量で浄化可能な微生物であるデハロゲニモナス属細菌を発見し、単離することに成功 (3)デジタルサービスに関する技術開発デジタルゼネコンとして先端デジタル技術を活かした各種サービスにも力を入れております。 ①デジタル技術により首里城正殿復元整備工事の現場や大本山永平寺のデジタルツインを構築 首里城正殿復元整備工事において、360°カメラで撮影した施工記録データを加工してデジタルツインを構築し、今しか見られない復元工事の現場をバーチャルツアーできるようにしました。また、曹洞宗の大本山永平寺と共同で、3次元点群測量により重要文化財19棟の精緻なデジタルツインを作成し、歴史的建造物をその骨組から彫刻等の細部に至るまで、ありのままの姿でデジタル空間上に保存することを可能にしました。伽藍内全棟、大小100余棟についても、当社開発アプリ「デジトリ360」を使ったデジタル空間とオンライン参拝するための各コンテンツを、先行して製作しております。このような、歴史的建造物を合理的な費用と工期で確実に後世に残す取組みを、今後各方面に提案していきます。 その他、デジタルサービスに関する技術開発の主な成果は以下のとおりです。 ②3次元仮想空間上の固定資産管理台帳「Shimz One BIM+(プラス)」で固定資産の所在確認や維持保全情報の入力等の棚卸し業務を大幅に効率化③医療施設DXシステム「eye MIRU」で建物設備の稼働状況やヒト位置データを電子カルテや会計情報と連携し外来診療業務を効率化④各種デジタルサービスを導入してビル運営の生産性向上や利用者の利便性向上を目指すDX実証実験を開始
FY2024|10,147 文字
6 【研究開発活動】 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は199億円であり、うち当社の研究開発費は190億円であります。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部、土木総本部等の技術開発部署で行われており、その内容は主に当社建設事業に係るものであります。 当社は、建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより、多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や、さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも、幅広く積極的に取り組んでおります。技術研究所を中心とした研究開発活動は、基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており、異業種企業、公的研究機関、国内外の大学との技術交流、共同開発も積極的に推進しております。 また、2023年9月1日から運用を開始したイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」(東京都江東区)内の施設の一つである「NOVARE Lab(ノヴァーレラボ、技術研究所潮見ラボ)」に技術研究所の一部機能を移転し、社内外と連携した研究開発を推進しております。 これら研究開発の成果として、今年度も日本コンクリート工学会、土木学会、地盤工学会、空気調和・衛生工学会をはじめ、さまざまな学協会からの賞を受賞しております。 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりであります。 (1)脱炭素・資源循環・自然共生社会の実現に資する技術開発①カーボンネガティブ仕様の環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」を現場適用 バイオ炭(炭化した木質バイオマス)を混和することでコンクリート内部に炭素を貯留する環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」を千葉県印西市のグッドマンビジネスパーク ステージ6ビルディング2新築工事に適用しました。バイオ炭に固定されたCO₂量が、その他の材料製造等に起因するCO₂排出量を上回る、カーボンネガティブ仕様の配合を初めて適用し、バイオ炭を利用しない配合と比べて111%のCO₂排出削減を実現しました。また、本技術は㈱日刊工業新聞社主催の「第66回 2023年 十大新製品賞」において、本賞を受賞しました。 ②カーボンネガティブを実現する脱炭素アスファルト舗装の共同開発に着手 日本道路㈱と共同で、道路舗装に使用するアスファルト材に炭素を貯留する、脱炭素アスファルト舗装技術「SUSMICS-A」の開発に着手しました。CO₂固定効果のあるバイオ炭をアスファルト材の混合材料として用い、カーボンネガティブ舗装材の実用化を目指し、今後、実証試験を通じて施工性や耐久性を検証していきます。 ③生産施設の環境性能評価指標「F-CaS」を制定 生産施設の環境性能をCO₂排出量の観点から数値評価する独自の環境指標「F-CaS(エフキャス:Factory Carbon Score)」を制定しました。独自に開発したシミュレーションツールを用いて各生産設備のエネルギー消費量からCO₂排出量を求め、施設全体の環境性能をFーCaS値としてスコア化します。今後、FーCaS値に基づき、顧客ニーズに対し最適な施設計画の提案を行い、CO₂削減目標の達成やカーボンニュートラルに向けた中長期かつ総合的な支援を行います。 ④街区熱融通システム「ネツノワ」を開発 街区全体でエネルギーの有効利用を図る街区熱融通システム「ネツノワ」を開発し、当社施設「温故創新の森 NOVARE」に導入しました。街区内の複数建物の熱源機器を連携させ、総合的なエネルギー効率を踏まえて運転制御を最適化することで、エネルギー消費量とCO₂排出量を削減します。熱源の3割に再生可能エネルギーと未利用エネルギーを導入したケースの試算では、熱源消費エネルギーと熱搬送消費エネルギーの削減量が約20%に達することを確認しました。 ⑤グリーン水素を活用した臨海副都心の脱炭素化に向けた取組みを推進 脱炭素化に向けた取組みを推進するため、東京都港湾局、産業技術総合研究所、東京臨海熱供給㈱及び㈱東京テレポートセンターと、臨海副都心の青海地区においてグリーン水素を活用した事業に取り組み、全国初となる水素混焼ボイラーによる地域熱供給や水素と太陽光による電力供給モデルの構築に向けて共同研究を実施します。 ⑥社会連携講座「物質サーキュレーション建設学講座」を開設 東京大学大学院工学系研究科と、地球資源を考慮したサーキュラーエコノミー(循環経済)に資する物質循環型建造物の構築を研究テーマとする社会連携講座「物質サーキュレーション建設学講座」を開設しました。製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を抑制するサーキュラーエコノミーの社会実装に貢献していきます。 ⑦PFAS汚染土壌の浄化試験を米国内で開始 米国テキサス州で、人体への有害性が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)を含む土壌の浄化実証試験に着手しました。当社が独自に開発してきた土壌洗浄技術の実効性を検証し、処理効率を最大化できる技術の確立に取り組みます。今後、すでに軍用地等でのPFAS土壌汚染が顕在化し、規制面でも先行する米国での技術適用を目指します。将来的には日本国内において、PFASを含む泡消火剤が広範囲に散布された可能性のある施設や、PFASを製造・使用していた事業所等への技術展開を進めていきます。 ⑧カーボンニュートラル社会の実現に向けた包括連携協定を締結 早稲田大学と当社は「カーボンニュートラル社会の実現に向けた包括連携に関する基本協定」を締結しました。産学連携による最先端の技術や知見の活用を通じて、新たな価値の創造と社会問題や産業界の抱える諸問題の解決に導く事を目的とし、研究開発成果の創出と、研究・教育を牽引する人材の交流と育成、起業支援など新事業創出に向けた活動に取り組みます。 (2)生産性向上に資する技術①天井仕上げ工事をアシストする「スカイランナー」、「スカイテーブル」を開発 ㈱レンタルのニッケンと共同で、建築物の天井仕上げ工事のアシスト機械、電動走行作業台「スカイランナー」と無線操作式資材運搬・揚重機「スカイテーブル」を開発しました。両機を併用することで足場の移設作業が不要となり、作業員一人で天井資材の運搬・揚重・設置を連続的に進めることが可能となります。従来工法と比べ、約20%の作業効率向上が期待できます。 ②遠隔地から建物の諸検査を実施できるメタバース検査システムを開発 建築生産の効率化を目的に、遠隔地にいながら建物の諸検査を実施できるメタバース検査システムを開発しました。施工中建物の3次元スキャンをもとに、施工状況をリアルに再現した仮想空間の中に入り、設計図(3次元BIMデータ)との整合を自動計測機能により確認できます。実建物を対象としたシステム検証では、日本建築センターから「実用に供し得る」という評価を得ており、将来的には、このシステムを一般公開し、日本全体の建築生産の効率化に寄与していきます。 ③ロボットで床版更新工事のマーキング作業を効率化 東名高速道路所領橋他2橋床版取替工事にデンマーク製の自動マーキング(墨出し)ロボット「タイニーサーベイヤー(Tiny Surveyor)」を導入しました。事前の性能試験により、所定の測量・マーキング精度を確認できる設定を確認し、当該工事にロボット2台を投入することで、橋面のマーキング作業の生産性を約90%向上させました。今後、床版取替工事や空港等の大規模舗装工事に導入し、生産性の向上を図ります。 ④山岳トンネル工事の遠隔施工管理システム「Shimizu Tunnel Excavation Laser guidance System」を構築 施工管理業務の省人化・省力化を目的に、㈱演算工房、ニシオティーアンドエム㈱と共同で山岳トンネル工事の遠隔施工管理システム「Shimizu Tunnel Excavation Laser guidance System」を構築しました。コンクリート吹付け機に搭載した3Dスキャナや広角高精度カメラを介して、吹付け面の出来形計測や切羽の性状評価を、遠隔で効率的かつ安全に行えます。当社トンネル工事での実証施工では、吹付け面の出来形確認・調書作成の作業時間を従来の約6分の1に、切羽面の観察・判定を従来の約3分の1に短縮しました。 ⑤AI・IoTを活用した造成工事の管理システム「Shimz-Smart-Site Analyzer」を開発 AIやIoTを活用して造成工事の施工管理を効率化するシステム「Shimz-Smart-Site Analyzer」を開発しました。ダンプトラックに積載した土砂の有無を3Dスキャンによる点群データをもとにAIが判定し、GNSS(位置情報システム)によるダンプトラックの位置情報と併せてクラウド上で統合・分析します。現場内で稼働するダンプトラックの土砂運搬量や各集積場の土量をデジタル上でリアルタイムに一括管理でき、施工管理を遠隔地から少人数で行えます。本システムを福島大熊西地区基盤整備1期工事に適用し、有効性を確認しております。 ⑥山岳トンネル工事における最適発破自動設計施工システムを開発 山岳トンネル工事における発破作業の生産性向上を目的に、最適な発破パターンの自動設計施工システムを、古河ロックドリル㈱、㈱演算工房、㈱ジャペックスと共同で開発しました。地山性状のデータを自動計測・解析し、熟練技能者が経験と感覚をもとに行っていた穿孔数や火薬量など最適な発破パターンの設計を自動で行うことで、サイクルタイム・施工コストの大幅な削減が見込めます。当社トンネル工事現場での実証試験では、発破掘削の過不足を抑え、火薬使用量を削減できることを確認しました。 ⑦シールドマシンの現在位置をARで確認できる「Shimz ARシールド」を開発 ㈱菱友システムズと共同で、地中を掘進するシールドマシンの現在位置をタブレット端末のAR画面でリアルタイムに確認できるシステム「Shimz ARシールド」を開発しました。工事関係者や地域住民と、掘進イメージを円滑に共有できます。福岡県内の当社シールドトンネル工事現場で行った実証試験では、数㎝程度の誤差でシールドマシンの現在位置を捕捉できることを確認しました。今後、本システムをシールドトンネル工事の標準技術として工事現場に広く展開していきます。 (3)ものづくりを支援する技術開発①建設3Dプリント材料「構造用ラクツム」を建築構造部材の施工に初適用 3Dプリンティング用のコンクリート材として自社開発した「構造用ラクツム」を、「温故創新の森 NOVARE」における建築構造部材のプリント施工に初適用しました。構造用ラクツムは、3Dプリント材では国内で唯一、建築基準法上の指定建築材料として国土交通大臣の認定を受けているため、その積層造形体を構造部材として適用でき、施工の省力化・省人化に寄与します。今後、適用案件の拡大とプリント施工の更なる効率化に向けた技術開発に注力していきます。 ②材料噴射型3Dプリンティングで有筋構造部材を高精度に造形 材料噴射型の3Dプリンティング技術を用いて、鉄筋を内蔵した有筋構造部材を自動造形する技術を開発しました。実証試験では、所要時間2時間程度で、断面寸法510×210mm、高さ1.5mの柱部材を寸法誤差±5mm以下で造形でき、高い精度を確認しました。本技術による造形体は、在来工法による鉄筋コンクリート部材と同等以上の構造的な性能を有し、実用化されれば施工の省人化・省力化が期待できます。今後、造形精度の更なる向上、意匠性の高い複雑形状に対する技術確立を目指すとともに、新設構造物だけでなく既設構造物の補修・補強、応急復旧への適用も視野に技術開発を進めていきます。 ③トンネル切羽のリアルタイム監視システムを開発 山岳トンネル工事における安全管理の高度化を目的に、切羽の微細な変状を面的かつリアルタイムに捕捉する「トンネル切羽安全監視システム」を開発しました。切羽掘削面における振動挙動を高速・高精度に計測して可視化することで、従来では捕捉が困難だった切羽崩落の予兆を適時・的確に捉えられるようになり、作業安全性が飛躍的に高まります。当社の山岳トンネル工事現場に試験適用し、システムの有用性を確認しました。今後、本システムに注意報・警報発報機能を組み込み、切羽崩落災害の根絶につなげていきます。 ④トンネル切羽クラック検知AIシステム「みまもりマスタ」を開発 山岳トンネル工事現場の安全性向上を目的に、㈱sMedioと共同でトンネル切羽クラックを検知するAI安全支援システム「みまもりマスタ」を開発しました。従来は作業員が目視で発見していたクラックの発生を、画像解析AIがリアルタイムかつ高精度に検知し、切羽崩落の危険性が高い場合に、近傍作業者へアラートを発報して切羽からの退避を促します。実証試験では、従来よりもクラックの検知時間が短縮され、作業者に十分な退避時間を提供できることを確認しました。今後、本システムを当社施工の山岳トンネル工事現場に広く展開していきます。 ⑤車両搭載型AI監視カメラシステム「カワセミ」を商品化 建設現場における重機接触災害の根絶を目指し、㈱Lightblue、エヌディーリース・システム㈱と共同開発した建設重機用の車両搭載型安全監視カメラシステム「カワセミ」を商品化し、エヌディーリース・システム㈱を通じた外部販売を開始しました。画像解析AIを活用して建設重機オペレータの死角に入っている人や車両を瞬時に検知し、アラートを発報します。画像解析AIに組み込んだ骨格推定アルゴリズムにより、さまざまな作業姿勢の人物を高精度で検知できます。 ⑥ブルドーザーの自律施工に向けた要素機能の実効性を確認 土木工事の無人化施工の実現に向け、ボッシュエンジニアリング㈱、山﨑建設㈱と共同で、盛土工事におけるブルドーザーの自動運転システムを構築しました。操作者が盛土工事の作業内容を設定すると、AIがセンサーやカメラからの情報をもとに状況を分析・判断し、移動やブレードの上下稼働などの運転制御や、物体・人の検知による緊急停止を設定どおりに自動で行います。実証試験を通じて、運転制御や物体検知、緊急停止など要素機能の実効性を確認しました。今後、ブルドーザーの環境認識機能の高度化を図り、自律施工型ブルドーザーの開発につなげていきます。 ⑦国内最大・最高性能の陸上風車建設用移動式タワークレーン「S-Movable Towercrane」が完成 当社が、㈱エスシー・マシーナリ、IHI運搬機械㈱と共同で開発を進めてきた国内最大・最高性能の陸上風車建設用移動式タワークレーン「S-Movable Towercrane」が完成しました。5~6MWクラスの大型陸上風車の建設に対応でき、陸上風力発電施設の施工で不可欠となるクレーンの移設を短期間で行えます。 ⑧超高層ビル建設現場の高速通信を実現 KDDI㈱と共同で、超高層ビル建設現場の高速通信環境を簡易に構築する新手法の実証試験を都内の建設現場で行いました。KDDI㈱が提供する衛星通信サービス「Starlink Business」を通信インフラとして活用するもので、建設現場のタワークレーン上部に専用アンテナを設置し、タワークレーンを現場内の電波塔として活用します。実証試験では、タワークレーンの旋回時や悪天候時にも、高さ100mの施工フロアで高速通信環境を安定的に維持できることを確認しました。今後、本手法を国内の超高層ビルの建設現場に広く展開していきます。 ⑨建設現場のDX実現に向けた協業を開始 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ㈱、㈱竹中工務店と当社は、建設現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた協業を開始しました。建設現場におけるさまざまな施工管理情報をデジタル化する「施工管理業務のDX」を進めます。DXの実現に向けたソリューションの構築と建設現場への実装・定着化を行うとともに、DXにより得られたデータの利活用により、更なる施工管理業務の高度化と業務プロセスの最適化を目指します。 ⑩「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関する共同研究を本格化 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と当社は、「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関する共同研究を進めております。当社が保有する金属積層造形技術と、JAXAが保有する宇宙輸送システム技術を組み合わせることで、アルミ合金製液体燃料タンク等の大型構造体を低コストかつ短期間で製造する技術の確立を目指します。今後はこれまでの成果を踏まえ、サブスケール供試体の試作に向けた積層造形装置の整備や、造形プロセスの確認を行い、供試体の試作を通して造形精度や品質安定性などを検証していきます。さらに当社では、地上用途として本技術を建設材料の製造にも活用していきます。 (4)設計技術・構工法①AIによりZEB設計業務を支援するツール「ZEB SEEKER」を開発 設計業務の効率化・高度化を目的として、AIを活用してZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の設計業務を支援するツール「ZEB SEEKER」を開発しました。設備機器の能力設計や建物の省エネルギー性能の評価を自動化し、顧客ニーズに適した設計案をAIが探索・提案します。従来は1ヶ月以上を要していた設計者による検討を100倍以上効率化でき、顧客が脱炭素の取組方針や事業計画の方向性を決める計画の初期段階から、顧客ニーズに適した提案が可能となります。 ②設計初期段階における構造検討業務を支援するシステム「SYMPREST」を開発 設計業務の高度化と効率化を目的として、設計初期段階における鉄骨造オフィスビルの構造検討業務をAIにより支援する「SYMPREST」を開発し、社内運用を開始しました。検討対象建物の形状・寸法を入力すると、データベースから形状に概ね合致する構造架構が複数抽出され、設計者が選択した案の架構部材3DモデルをAIが作成します。今後は超高層オフィスビルや他の用途・構造形式の架構生成も行い、システムの機能拡充を図ります。 ③個室ブースの空調を最適化するパーソナル空調システムを開発 大阪公立大学健康科学イノベーションセンター、㈱総合医科学研究所と共同で、オフィス内の個室ブースの空調を最適化できる「床吹き出し型パーソナル空調システム」を開発しました。在室者は体調や好みに応じて風量や風向きを任意に選択でき、長時間執務しても疲労しにくい快適な執務環境を実現します。実証試験では、在室者の作業エラーの発生率が、一般的な空調システムと比べて30%低減されることを確認しました。新築建物はもとより、床吹出空調方式の既存建物にも簡易に導入できます。 ④鉄骨造建物の梁部材を合理化する「エコウェブ工法」を開発 鉄骨造建物の梁部材を合理化する補剛工法「エコウェブ工法」を開発し、第三者認定の建築技術性能証明を取得しました。鉄骨造建物の梁ウェブ(側面部分)端部に、鋼製の板材を取り付けることで、梁の変形性能を維持しながらウェブを薄肉化します。従来工法比で、梁単体の鉄骨量を最大30%縮減でき、コストダウンが図れます。 ⑤RC造建物の耐震性能を向上させる「シミズハイレジリエントビーム構法」を開発 RC(鉄筋コンクリート)造建物の耐震性能を向上させる「シミズハイレジリエントビーム構法」を開発し、現在都内で施工中の建設現場に初適用しました。RC造建物の梁端部の主筋を増強し、地震時に損傷が生じやすいヒンジ領域を梁の中央側に移動させることで、柱梁接合部の損傷を防ぎます。震度7相当の負荷をかけても、従来構法と同等の耐力を維持しながら、柱梁接合部の損傷を最小限に抑制できることを確認しました。 ⑥地震時の杭への負荷を低減する新構法「スリムパイルヘッド構法」を開発 基礎躯体の必要数量を縮減できる杭頭半剛接合構法「スリムパイルヘッド構法」を開発し、都内の超高層ビルに初適用しました。超高層ビルの場所打ちコンクリート杭頭部と基礎部の固定度を半剛状態にして地震時の杭への負担を低減することで、杭や地中梁の必要数量を減らし、コストダウンや工期短縮を実現します。震度7相当の負荷をかけても期待された性能を維持することを確認しており、今後、超高層案件に本構法の適用を提案していくことで、案件受注の拡大につなげていきます。 ⑦超高層ビルの環境配慮型解体工法「グリーン サイクル デモリッション」を開発・実用化 内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業解体工事に、環境配慮型超高層解体工法「グリーン サイクル デモリッション」を適用しました。本工法は、ブロック状に切断した躯体を大型クレーンで最上階から吊り降ろし、地上で破砕・分別するブロック解体工法をベースに構築され、他工法と比べて安全性が高く、騒音・粉塵の発生量も少ないため、周辺環境に与える影響を最小化できるメリットがあります。また、鉄骨躯体の切断工程に自社開発した自動プラズマ切断装置「シミズプラズマカッター」を用いることで、CO₂排出削減と作業時間短縮を実現できます。 ⑧道路橋プレキャストPC床版接合部の継手工法「アローヘッドジョイント」を開発 道路橋に使用されるプレキャストPC(プレストレストコンクリート)床版接合部の継手工法「アローヘッドジョイント」を開発しました。床版の接合技術として、端部に矢尻状の定着体を設けた機械式定着鉄筋「アローヘッド鉄筋」を用いることにより、耐久性向上と配筋作業の合理化が図れます。本工法で接合したプレキャストPC床版を用いて輪荷重走行試験を行い、高い疲労耐久性を確認しました。また、従来工法と比べて約50%の生産性向上が見込めます。 (5)デジタルな空間・サービスを提供する技術開発①淡海医療センターの医療サービスのDXに着手 淡海医療センター(滋賀県草津市)において、当社が提案する「DX-Coreスマートホスピタル構想」の具現化に向けたDXの取組みに着手しました。当社が開発した、建物設備と各種アプリケーションを連携・制御できる建物OS「DX-Core」を基盤として、受診予約システムや電子カルテなどの医療系システムデータと、ロボットの統合制御システムや各種設備の制御システム、各種センサー類などのファシリティ系システムデータの連携を進めます。これにより、医療サービスの質と生産性の向上を図り、医療施設利用者の満足度の向上、医療施設の収益改善に寄与していきます。 ②複数ロボットのエレベータ同乗技術を確立・実装 施設内で稼働する複数サービスロボットのエレベータ同乗技術を確立し、メブクス豊洲に実装しました。共通のインターフェースを介して複数ロボットを統合制御する「Mobility-Core」と「DX-Core」を連携させ、ロボットとエレベータの運用・運行を統合制御することで、ロボット同士が互いを障害物と認識することなくエレベータに同乗し、ロボットとエレベータの運行効率を合理化できます。今後、メブクス豊洲での実証運用を通じて、本技術の実効性をさらに高めていきます。 ③まちづくり計画支援サービス「マチミル」を提供 付加価値の高い、ウォーカブルな人中心のまちづくりを目的に、まちづくり計画支援サービス「マチミル」を提供しました。建物、道路、人流や災害状況などの都市データに基づく分析やさまざまな仮説の迅速な検証をもとに、地域の課題やまちづくり計画の効果を分かりやすく可視化して関係者間の合意形成を促し、地域の防災・省エネルギーや効果的なエリアマネジメントの計画を支援していきます。今後、デジタルを活用して地域の課題解決を目指す自治体やまちづくり組織に対して、本サービスを提供していきます。 ④バーチャルエコノミーの拡大に向け、産学官協働の研究開発が始動 産業技術総合研究所、早稲田大学、東京大学、㈱バンダイナムコピクチャーズと共同で、内閣府が運営する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題/バーチャルエコノミー拡大に向けた基盤技術・ルールの整備」に係る公募に対し、「コミュニケーションを拡張するインターバース技術の研究開発」プロジェクトを提案し、採択されました。本課題では、サイバー空間とフィジカル空間をつなぐインターバースを注力領域として、技術開発やルール・制度の整備により、新たなバーチャルエコノミー圏の創出・拡大を図ります。
FY2023|10,475 文字
6 【研究開発活動】 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は178億円であり、うち当社の研究開発費は169億円であります。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部、土木総本部等の技術開発部署で行われており、その内容は主に当社建設事業に係るものであります。 当社は、建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより、多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や、さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも、幅広く積極的に取り組んでおります。技術研究所を中心とした研究開発活動は、基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており、異業種企業、公的研究機関、国内外の大学との技術交流、共同開発も積極的に推進しております。 これら研究開発の成果として、今年度も土木学会技術賞、日本コンクリート工学会賞(技術賞)、日本オープンイノベーション大賞国土交通大臣賞をはじめさまざまな学協会からの賞を受賞しております。 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりであります。 (1)カーボンニュートラル関連技術①「バイオ炭コンクリート」を開発、実工事に初適用 木質バイオマスを炭化した「バイオ炭」をコンクリートに混入した環境配慮型コンクリート、「バイオ炭コンクリート」を開発し、神奈川県山北町区域で施工中の新東名高速道路川西工事の仮舗装に初適用しました。本技術は、成長過程で大気中のCO₂を吸収した木材の炭化物を利用し、コンクリート内部に炭素を固定するもので、バイオ炭混入量1kgあたり2.3kgの CO₂を固定化できるものです。今回の工事では、普通コンクリートを用いた施工に対して、排出されるCO₂を99%(6.7トン)削減しました。「バイオ炭コンクリート」は、施工性に優れ、強度性能も普通コンクリートと遜色ありません。今後は、「バイオ炭コンクリート」の適用拡大や、J-クレジット制度での認証取得など、脱炭素社会の実現に向けた取組みを進めていきます。 ②カーボンニュートラルに対応した地盤改良工法を開発 施工に起因するCO₂排出量を実質ゼロにする「脱炭素型地盤改良工法」を㈱東洋スタビと共同で開発しました。本工法は、改良対象地盤に溶融スラグとバイオ炭を使用することで、既存工法と比較してセメント系固化材の使用量を60%、コストを30%削減できます。セメント系固化材製造時に排出されるCO₂と、同量のCO₂をバイオ炭が吸収・固定化するため、CO₂排出量が実質ゼロとなる、施工のカーボンニュートラル化を実現しました。 ③CO₂を吸収しコンクリートの長寿命化を実現する含浸剤「DACコート」を開発 既設のコンクリート構造物に塗布するだけで、大気からのCO₂吸収を促進するCO₂固定化技術「DAC(Direct Air Capture)コート」を国立大学法人北海道大学と共同で開発しました。「DACコート」を塗布したコンクリート構造物は、塗布しないものと比較して、CO₂吸収量が1.5倍以上に増大します。含浸剤の主材となるアミン化合物は、CO₂の吸収性能に加え、防食性能も有しているため、鉄筋の腐食を抑制し、鉄筋コンクリートの長寿命化にも寄与します。 ④施工時CO₂排出量をタイムリーに可視化する技術を開発 建設現場で発生するCO₂排出量を、月単位で自動算出・可視化する「施工時CO₂排出モニタリングシステム」を開発し、国内の全現場での本格運用を開始しました。本システムは、施工時のカーボンニュートラル実現に向けた取組みの一環で、各現場の様々な管理システムからCO₂排出量の算出根拠となるデータを自動取得し、月単位のCO₂排出量実績として導出します。各現場で取り組む、CO₂排出削減施策のタイムリーな効果検証に寄与します。 ⑤見積データから将来のCO₂排出量を自動算出するプラットフォームを開発 精算見積データから、施工時に生じるCO₂排出量を自動算出できるCO₂排出量算出プラットフォーム「SCAT (SHIMZ Carbon Assessment Tool)」を㈱ゴーレムと共同開発しました。「SCAT」は見積項目別にCO₂排出量を算出・積算し、発注者にCO₂排出量評価データとして提供します。「SCAT」は日本建築学会の指針に準拠した上で、独自の方式にも対応可能で、建物ごとのCO₂排出量データベースに基づく設計ノウハウ蓄積や比較提案が可能となります。本システム導入によって、今後の施工段階でのCO₂排出量算出が容易になり、低炭素建築物の設計提案が可能となります。 ⑥低コスト・グリーン水素製造実証プラントが完成 大分県玖珠郡九重町において、低コスト・グリーン水素製造技術を適用したプラントの実証運転を行いました。本プラントは環境省の「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」で、当社が委託し建設しました。また、低コスト・グリーン水素製造技術は㈲市川事務所、エネサイクル㈱、大日機械工業㈱、㈱ハイドロネクストと共同開発した技術で、地熱と木材などのバイオマス資源を活用することで水素製造時のCO₂排出量と製造コストを抑えることができます。今後は、実証運転を通じて得られたノウハウを活用し、中小地熱発電所に併設する水素製造実用プラントの自社開発に取り組む予定です。 ⑦産学連携共創プロジェクト「みどりの機能建材研究開発プラットフォーム」を設立 東京理科大学研究推進機構総合研究院との共創プロジェクト「みどりの機能建材研究開発プラットフォーム」を開始しました。このプロジェクトでは、非構造部材のCO₂排出量を評価・可視化するシステムの構築や、環境性能と機能性が高度に両立する材料・工法の研究開発を進め、建築業界の環境配慮への取組みをリードします。また、省資源化や資源循環の促進を目的とした内外装材の高機能・高性能化の研究開発も行い、ネイチャーポジティブ※への貢献を目指します。※ネイチャーポジティブ:生物多様性を含めた自然資本を回復させること。 (2)働き方改革に資する技術①配筋検査システム「写らく」を製品化し、レンタルを開始 3眼カメラ配筋検査システム「写らく(しゃらく)」を ㈱カナモト、シャープ㈱と共同で製品化し、2023年4月下旬からレンタルを開始しました。「写らく」は、本体に搭載された3つのカメラで同時撮影した画像を使い、約5秒で検査結果と検査帳票が作成され、配筋検査の所要時間を約75%短縮できます。現場の天候条件やネットワーク環境の有無などの制約を受けず、高い耐環境性能とユーザビリティを実現し、2022年度「第4回 日本オープンイノベーション大賞」で『国土交通大臣賞』を受賞しました。「写らく」の国内建設現場へのレンタル開始を皮切りに、作業効率向上による省人化・省力化を通じ、サプライチェーンを含めた、建設現場における働き方改革を支援していきます。 ②コンクリートの凝結時間制御技術「ACF工法」を建築構造床に初適用 デンカ㈱と共同開発したコンクリートの凝結時間制御技術「ACF(Advanced Concrete Finish)工法」を、建築構造床の施工に初適用しました。本工法は、粉末状の混和材を生コン車で混合し、コンクリートの凝結を促進させます。これにより、次の作業への移行が、通常工法と比較して3時間程度短縮できます。今後は、「ACF工法」を積極的に展開し、作業従事者の働き方改革、仕上げ面のコンクリート品質の向上につなげていきます。 ③コンクリート表層の凝結遅延効果が長時間持続する打継ぎ面処理剤を開発 コンクリートの打継ぎ面処理剤「シーカ®ルガゾール-919UR」を日本シーカ㈱と共同で開発しました。この処理剤は、打継ぎ面に形成される脆弱層(レイタンス)の凝結を72時間にわたり抑制します。これにより、従前はコンクリート打設の翌日に行う必要があったレイタンスの除去作業を3日後まで延長できます。土日閉所の建設現場で金曜日にコンクリートを打設した場合でも、休日を挟んでの打継ぎ処理が可能となり、働き方改革へ大きく貢献します。 ④原子力発電所建屋の設計業務を効率化する設計業務統合システムを開発 原子力発電所建屋の構造設計業務の効率化に向け、BIMをベースとする設計業務統合システム「NuDIS-BIM(Nuclear Design Integration System on BIM)」を開発しました。設計の上流段階から本システムを適用することで、データ入力やチェックなどに関わる手間と時間を削減でき、設計期間の短縮が可能となります。今後は、「NuDIS-BIM」の機能を拡充し、施工・維持管理業務への適用を図り、作業時間の削減に貢献します。 ⑤病院施設の設計業務を効率化する放射線遮蔽設計アプリを開発 高エネルギー放射線医療施設設計時に必要な放射線の遮蔽性能評価を、一般の設計者でも簡易に行えるアプリ「SC-HoRS(SC-Hospital Radiation Shielding)」を開発しました。本アプリは独自の簡易式自動計算機能を有し、これまでは専門家による複雑で高度な計算が必要であった放射線の遮蔽性能評価が、一般の設計者でも短時間で可能となります。今後は「SC-HoRS」を武器に、需要増加が見込まれる放射線医療施設の建設受注拡大を目指します。 (3)建物の品質管理およびリスク管理技術①改良地盤の施工品質を30分で判定できる強度判定技術「C-QUIC」を開発 地盤改良工事における施工後の改良地盤の強度を、早期に判定する品質検査技術「C-QUIC」を開発しました。この技術は、改良地盤内の固化材が適正量かどうかを30分程度で判定できるため、改良地盤の固化を待たず施工の良否を確認でき、地盤改良工事の品質確保と合理化を促進できます。今後は、技術の外販に向けた準備を進め、品質管理技術として広く展開していきます。 ②指定確認検査機関が行う中間・完了検査をDX化、リモート検査の有効性を検証 建築確認で利用したBIMデータから構築したAR画像と、リアルタイム映像伝送技術を活用したリモート検査システムを㈱積木製作と共同で開発し、システムの有効性を(一財)日本建築センター(BCJ)と検証しました。このシステムは、建築確認申請業務を効率化するもので、躯体を対象とする中間検査と仕上げや設備機器を対象とする完了検査を、3次元データを用いてリモートで行うことができます。BCJが、本システムにより当社設計施工の三愛会総合病院の検査を実施し、従来検査の代替法となると評価しました。今後は、本システムの活用を指定確認検査機関に提案し、設計の工事監理や施工管理業務のDX化を推進していきます。 ③有機フッ素化合物(PFAS)汚染水の浄化技術を開発 人体への有害性が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)を含む汚染水を効率的に浄化する技術を開発しました。本技術は、泡沫分離処理装置を用いた水処理技術で、沖縄県内で実施したPFAS汚染水の浄化実証試験で有用性を確認しました。今後は、PFASを含む泡消火剤が広範囲に散布された可能性のある基地施設や、PFASを製造・使用していた事業所等の土壌・地下水浄化事業への展開を目指します。 ④美術館・博物館の早期供用を実現する新たなソリューションを構築 文化財に影響を与えるコンクリートから放散されるアンモニアの濃度を、確実かつ早期に低減させる手法を構築しました。本ソリューションは、アンモニアの「発生抑制」「除去」「濃度管理」の各技術を組み合わせた対策メニューを、施設ニーズに応じて提供します。この手法を適用することにより、これまでアンモニア濃度を低減させるために必要であった竣工後の“枯らし期間”を設ける必要がなく、美術館・博物館等の施設の早期供用を実現できます。今後、美術館・博物館等の建設計画のリスク管理ソリューション技術として提案活動を進めていきます。 ⑤「Deco-BIM(デコビム)」で合理的な解体計画を提案 原子力発電所の廃止措置(廃炉)エンジニアリングの効率化と、トータルコストの削減が可能な、業務代替支援システム「Deco-BIM」を開発しました。「Deco-BIM」は、2次元の図面や資料をベースにした従来の解体計画と比較し、1/5程度の時間で同レベルの検討が可能なため、同時間で複数の計画を立案・評価できます。今後、電力事業者に対して「Deco-BIM」を活用した合理的な解体計画を提案し、廃止措置の計画・検討段階からのプロジェクト参画を目指します。 (4)デジタルゼネコン関連技術①バーチャル空間で施設計画「Growing Factory」を提案 工場建設向けの新たなエンジニアリングサービス「Growing Factory(グローイングファクトリー)」の提案活動を開始しました。設計段階から工場のモデルをバーチャル空間内に構築(デジタルツイン)し、そのモデルを使って工場内の製品や設備機器の動きを事前検証することで、短時間で最適な施設計画を導出します。工場稼働後は、各種システムと連携することでデジタルツインを継続的に活用し、運用データと設計データを比較検証することで運用改善を図るなど、「時代の変化に適応し、10年後も成長し続ける工場」の具現化をサポートします。 ②複数ロボット連携による新たな地方創生モデルの実証を開始 加賀市医療センターにおいて、ブルーイノベーション㈱、オムロン ソーシアルソリューションズ㈱と共同で、病院設備と複数ロボットを連携させた清掃・案内・配送等の実証導入を実施しました。これは加賀市および3社が共同で内閣府から受託した「スーパーシティ構想の実現に向けた先端的サービスの開発・構築等に関する実証調査業務」として実施したものです。建物施設とモビリティやロボット、多彩なデータ連携による先端的サービスの開発・展開を通して、人々の生活の質の向上やスーパーシティをはじめとした「新しいまちづくり」、さらには「新たな地方創生モデルの実現」に向けた取組みを進めていきます。 ③建設3Dプリント材料「構造用ラクツム」が大臣認証を取得 建設3Dプリンティング用に独自開発した繊維補強セメント複合材料「ラクツム」を、粗骨材を混練したコンクリート材に改良し、東京コンクリート㈱と共同で大臣認定を取得しました。これにより、従来は建物躯体の埋設型枠や非構造部材として活用していた3Dプリンティングが、構造部材にも適用できるようになり、建築分野での3Dプリンティング施工の適用範囲が大きく広がります。当社は、大臣認定を取得したこの「構造用ラクツム」を、東京都江東区で建設中の自社施設「潮見イノベーションセンター(仮称)」における構造部材の一部に適用する予定です。 ④建設3Dプリンタ「Shimz Robo-Printer」を新規開発 施工場所で実大構造物を直接“印刷”できるガントリー型のオンサイト建設3Dプリンタ「Shimz Robo-Printer」を開発し、「潮見イノベーションセンター(仮称)」で実証施工を行いました。適用対象は研修施設の壁状柱で、「ラクツム」を「Shimz Robo-Printer」で積層し、外装部材を兼ねる3次元曲面形状の埋設型枠を造形しました。「Shimz Robo-Printer」を活用したオンサイトプリンティングにより、部材の運搬費用削減や施工の省力化・省人化が期待されます。 ⑤半乾式耐火被覆吹付ロボット「Robo-Spray」の施工性能を確認 6軸のロボットアームを駆使して、被覆材を万遍なく吹き付ける半乾式耐火被覆吹付ロボット「Robo-Spray」を開発しました。当社が東京都港区で施工中の虎ノ門・麻布台再開発プロジェクトのA街区タワーで、プロトタイプの施工性能を確認しました。今後は、「Robo-Spray」の台車に電動走行機能を付加し、生産性を一層向上させる予定です。また、反復・苦渋作業を代替する建設ロボットの開発・導入を継続し、省人化や現場の労働環境改善を図ります。 ⑥建物管理業務をDX化 建物のデジタル取扱説明書「デジトリ360(Digi-Tori360)」を開発しました。360˚カメラで撮影した建物内各所の画像データと、関連する建築・設備・電気などの取扱説明書や製作図面、建築仕上図、竣工図などのデータが連動した、デジタルな取扱説明書です。既存建物の取扱説明書をデジタル化し、改修履歴や設備の更新履歴をデータとしてアーカイブ化することが可能で、建物の保全記録としての活用も見込まれます。 ⑦AIを活用したクリーン空調最適制御システムを開発 清浄空気を最適化するAIを活用したクリーン空調制御システムを開発しました。センサーが捉えた室内環境の変化に応じて、AIがファンフィルターユニット(FFU)の動作をエリア単位で制御することで、必要最小限のエネルギーで要求水準を満たす清浄環境を維持できます。今後は、このAI空調制御システムをクリーンルーム施設の新設・改修計画に広く展開していきます。 ⑧建物の音響性能をリアルタイムに予測・評価するシミュレーションツールを開発 初期設計段階の3次元CADデータから、建物の音響性能をリアルタイムに予測・評価できる音響シミュレーションツールを開発しました。操作に音響の専門知識は必要なく、設計者は専門家の知見に頼らず、計画案の音環境の良否を迅速に把握できます。今後は、本ツールの機能を拡張し、音響評価が必要な施設へ積極的に活用していきます。 ⑨ビッグデータと量子コンピュータによる交通・防災・観光プラットフォームの開発に着手 交通最適化、地域活性化、都市防災の高度化等の都市課題を総合的に解決することを目的とした、データ分析プラットフォームの開発を、㈱グルーヴノーツ、㈱GEOTRAと共同で開始しました。位置情報などのビッグデータと、先端テクノロジーによるシミュレーション技術を掛け合わせたプラットフォームで、データ分析は国・自治体のオープンデータや学識者の助言を取り入れます。産官学の連携を進め、全国の自治体と連携したまちづくりに活用していきます。 (5)i-Construction技術①3次元地質モデルの逐次更新システム「SG-ReGrid」を開発 施工検討に用いる3次元地質モデルを、施工中に取得した前方探査データを反映した最新モデルに簡易にアップデートできるシステム「SG-ReGrid(Sequential 3D Geological information system using ReGrid of voxel model)」を開発しました。本システムにより、切羽前方で予測される地質分布を逐次可視化でき、対策工事の検討をタイムリーに行うことが可能となります。 ②山岳トンネル工事のロックボルト打設を完全機械化 ロックボルトの遠隔打設装置(ボルティングユニット)を2基装備した「2ブームロックボルト打設専用機」による遠隔施工システムを古河ロックドリル㈱と共同開発し、当社が富山県南砺市で施工中の東海北陸自動車道真木トンネル工事に実証導入しました。穿孔からモルタル充填、ロックボルト挿入に至る一連の打設作業を完全機械化し、災害リスクの高い切羽直下での人力作業を排除したことで、安全性の確保や施工の省人化に効果があることを確認しました。今後、山岳トンネル工事の標準技術として広く展開していきます。 ③掘削具合の可視化技術「SP-MAPS」をトンネル切羽に適用 発破掘削後、設計断面に対する掘削の過不足情報をプロジェクションマッピングで可視化するシステム「切羽版SP-MAPS」を開発し、当社が愛知県新城市で施工した三遠南信自動車三遠道路2号トンネル工事と東海北陸自動車道真木トンネル工事に適用しました。本システムにより、掘削状況を確認する作業員を切羽直下に立ち入らせる必要がなくなり、工事の安全性が飛躍的に向上します。また、掘削面に照射された画像から掘削すべき個所と掘削量を、重機オペレーターが正確に把握できるようになり、作業効率・作業精度が向上しました。 ④「走行台車付きダブルワイヤーソー工法」を開発 ワイヤーソーによる床版水平切断作業を高速化し、精度を向上させる「走行台車付きダブルワイヤーソー工法」を開発しました。この工法は、既設高速道路の大規模更新工事において、合成桁のコンクリート床版取替工事に用いるもので、高性能ワイヤーソーとレール上を移動する走行台車を組み合わせた切断装置です。切断精度の向上と作業工程の簡略化により、本工法を適用した切断作業時間の短縮効果は、従来工法との比較で約45%と見込まれます。 ⑤「床版クールカット工法」を開発 既設高速道路の合成桁コンクリート床版撤去プロセスを効率化する床版切断技術「床版クールカット工法」を開発しました。本工法は、既開発のワイヤーソー切断装置「基礎躯体クールカット」を用いて、コンクリート床版と鋼桁の接合部を床版上から橋軸直角方向に水平切断します。床版撤去に伴う作業プロセスの見直しが可能となり、約20%の生産性向上効果が見込まれます。 ⑥「SCプレミアムベルコン」を開発 ダムコンクリートを打設場所へ最短ルートで運搬できる、密閉・吊下げ構造のベルトコンベヤ「SCプレミアムベルコン」を古河産機システムズ㈱と共同で開発しました。本設備は、袋状に丸めた搬送ベルトの中にコンクリートを包み込んで運搬することで、急傾斜の法面にも直線的な配置が可能となるため、運搬効率を最大化できます。今後は、運搬能力のさらなる向上を図り、2024年春頃を目途に、大型ダム現場での実運用を目指します。 ⑦「超高精細映像転送システム」の有用性を確認 ローカル5G(第5世代移動通信システム)とAI解析を組み合わせた「超高精細映像転送システム」の実証(総務省「令和3年度 課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」)を西日本高速道路㈱、シャープ㈱と共同で実施しました。本システムは8Kカメラで撮影した超高精細映像を、ローカル5Gを介してクラウドへアップロードし、AI解析で自動抽出した人や建機にマーキング処理を行うもので、遠隔地での現場把握や超高精細映像を用いた詳細把握が可能となります。 ⑧配筋施工図の3次元モデルを自動生成するプログラムを開発 パラメトリックモデリングを活用して配筋施工図の3次元モデルを自動生成するプログラムを㈱GELと共同で開発しました。本プログラムは、これまで手作業で行われていた配筋施工図の3次元モデル化を、必要なパラメータを入力するだけで自動生成するもので、作業の省力化と正確性が大幅に向上します。当社JVがインドネシアで施工を進めているジャカルタMRT南北線2期工事CP202工区の地下鉄駅舎躯体に適用し、ユーザビリティの向上を図ります。 (6)安全・安心を提供する技術①制振システム「BILMUS(ビルマス)」を開発 大小の地震に対して絶大な制振効果を発揮し、超高層ビルのレジリエンス向上と経済設計を両立する制振システム「BILMUS」を開発し、芝浦プロジェクトS棟に採用しました。「BILMUS」は、超高層ビルの上層階と下層階が独立した構造で、互いの揺れを打ち消す方向に揺動することで、ビル自体が制振装置となり、絶大な制振効果を発揮します。また、従来の制振構造と比較し、制振装置の台数を大幅に削減できるため、有効面積の拡大・コスト削減につながります。今後は、「BILMUS」を積極的に提案し、安全で安心な超高層ビルを提供していきます。 ②水害タイムライン防災計画を策定 (独)地域医療機能推進機構 人吉医療センター、国立大学法人京都大学防災研究所と共同で、人吉医療センターの水害タイムライン防災計画を策定し、防災訓練によりその有効性を検証しました。訓練での評価結果をタイムライン防災計画に反映し、より実践的な防災計画を策定します。今後は全国の医療機関を対象に、防災計画の立案支援へ展開していきます。 ③医療継続計画支援システムの有効性を検証 「MCP(Medical Continuity Plan)支援システム」を熊本大学病院災害医療教育研究センターと、(独)地域医療機能推進機構 人吉医療センターと共同で開発しました。医療機関での災害時医療救護活動の高度化と効率化を目的として、必要な情報をリアルタイムに収集・可視化し、災害時に重要となる限られたリソースを適切に配分するための迅速かつ的確な判断を支援します。2022年10月に実施した(独)地域医療機能推進機構 人吉医療センターでの防災訓練で、システムの有効性を検証しました。今後はシステムの高度化を図り、他の医療機関に向けてシステムの提供を開始します。 ④防災システム「慈雨(じう)」を開発 文化的価値の高い伝統木造建築物などの火災リスクを低減する新たな防災システム「慈雨」を開発しました。カメラ画像から火災を認識するAIや消火装置を制御するIoTにより、火災を初期段階で発見し、火災発生エリアに集中的に放水することで、早期消火を実現します。「潮見イノベーションセンター(仮称)」内に再築する旧渋沢邸に初めて適用します。今後は、本システムを積極的に活用し、文化的価値の高い伝統建築をはじめとした木造建築物の維持・保全に寄与していきます。
FY2022|9,082 文字
5 【研究開発活動】 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は162億円であり、うち当社の研究開発費は159億円であります。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部、土木総本部等の技術開発部署で行われており、その内容は主に当社建設事業に係るものであります。 当社は、建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより、多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や、さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも、幅広く積極的に取り組んでおります。技術研究所を中心とした研究開発活動は、基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており、異業種企業、公的研究機関、国内外の大学との技術交流、共同開発も積極的に推進しております。 これら研究開発の成果として、今年度も建築学会賞、土木学会賞、電気設備学会賞、日本オープンイノベーション大賞をはじめさまざまな学協会からの賞を受賞しました。また、カーボンニュートラルの実現に向けては、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のムーンショット型研究開発事業に2件参画し、産学連携の取り組みを積極的に推進しております。 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりであります。 (1)建物・街区のDXによる付加価値向上①建物設備・ロボット・自動運転車の統合制御システムを技術研究所に構築 建物設備と各種サービスロボット・自動運転車を統合制御する「Mobility-Core」を開発し当社技術研究所(東京都江東区)に導入しました。今後、自律型モビリティを活用した施設・街区内サービスの社会実装に向け、日常的に人が活動する実用環境下で、複数のモビリティが連携して提供する各種サービスの技術検証を進めていきます。自律型モビリティの開発メーカーやサービス事業者とのアライアンスの場として当施設を活用し、各種サービスの新規開発につなげていきます。 ②建物設備と連携しながらビル内を自律走行し、荷物を届ける配送ロボットを開発 館内配送プロセスを無人化できる自律配送ロボットを開発しました。ユーザビリティの高い荷受け・荷降ろし機構、自動配送ルーティング機能、建物設備との連携機能等を備えた自律走行ロボットで、走行経路上のエレベータや自動ドアを制御しながら荷物を配送します。今後、実施設での試験運用を通じて、ユーザーインターフェースや走行性能のブラッシュアップを図り、館内配送サービスへの適用を目指します。 ③建物設備とモビリティ・ロボット連携サービス開発に向け、豊洲スマートシティで実証開始 ブルーイノベーション㈱、オムロン ソーシアルソリューションズ㈱と3社で、建物設備と複数モビリティ・ロボットを連携させたサービス開発に向けた実証を2022年4月より開始しました。豊洲スマートシティの大規模オフィスビル「メブクス豊洲」において、建物OS「DX-Core」と複数のロボットプラットフォームを組み合わせたロボット連携基盤を実証運用します。当社開発の各種モビリティを連携・統合制御するプラットフォーム「Mobility-Core」による「ロボット案内サービス」と、ブルーイノベーション㈱とオムロン ソーシアルソリューションズ㈱が提供する「ロボット清掃サービス」との連携について実証を進めていきます。 ④建物運用のDX(デジタルトランスフォーメーション)で協働 「DX-Core」を東日本電信電話㈱のネットワークと接続・連携させ、建物群に建物運用ソリューションをセキュアかつ低遅延で提供する共同実証を行うことで合意しました。同一地域の建物群を運用する事業者・自治体などの導入コストとランニングコストの削減のために、建物運用ソリューションとコンピューティング基盤をパッケージで提供します。協業に先駆け、このソリューションを当社が開発した東京都江東区豊洲の大規模オフィスビル「メブクス豊洲」に適用し、その実証結果を携え全国展開していきます。 (2)生産技術・ロボット①虎ノ門・麻布台プロジェクトA街区でDXを推進 建築工事現場のデジタル化コンセプト「Shimz Smart Site」の実践として、東京都港区で施工中の虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業(虎ノ門・麻布台プロジェクト)A街区新築工事における開発を進めております。施工管理のデジタル化を担う新開発のデバイス「SmartStation」の配備を進めるとともに、近未来の現場事務所を想定した統合監視室「Smart Control Center」からデジタル化した施工管理情報の集中監視を始めております。今後、虎ノ門・麻布台プロジェクトの経験を国内外の現場に水平展開し、生産性の向上、現場の働き方改革に結び付けていきます。 ②建設施工ロボット・IoT分野における技術連携に関するコンソーシアムを設立 2021年9月22日付で当社、鹿島建設㈱及び㈱竹中工務店を幹事企業とした、建設施工ロボット・IoT分野での技術連携に関するコンソーシアム「建設RX※コンソーシアム」が発足し、当該分野における技術連携を図っております。当初正会員16社でスタートしたコンソーシアムは、2022年4月20日現在、会員数73社(正会員23社、協力会員50社)に拡大しております。 ※ RX:ロボティクス トランスフォーメーション。デジタル変革(DX)になぞらえ、 ロボット変革(Robotics Transformation)の意。 ③双腕多機能ロボット「Robo-Buddy」が±1㎜の高精度でOAフロアを施工 双腕多機能ロボット「Robo-Buddy」と職人との協調によるOAフロアの施工を進めております。大手建設各社でOAフロア施工ロボットの開発は今回が初となり、OAフロアの施工は、1枚10数㎏のパネルを中腰で取り扱う身体負荷の大きい繰り返し作業であることから、「Robo-Buddy」のOAフロア施工機能を開発し支援を図ります。これに併せて建材メーカーのニチアス㈱と共同で、「Robo-Buddy」に最適化した簡素な施工法のOAフロアを開発し、今後、広く建築工事に適用していきます。 ④フォークリフト型の自動搬送ロボットでトラックからの荷降ろし作業を自動化 建設現場における資材搬送作業の省人化・省力化を目的に、フォークリフト型の自動搬送ロボット「Robo-Carrier Fork」を開発しました。当社は、パレット積みの資材を水平搬送する「Robo-Carrier」と垂直搬送エレベータ「Autonomous-ELV」を組み合わせた自動搬送システムを既に実用化しており、搬入トラックからの荷降ろし等に対応できる「Robo-Carrier Fork」がラインナップに加わることで、ロボットによる一貫した資材搬送作業が可能となります。今後、建設現場への展開と併せて、物流事業者へのレンタルや外販にも取り組み、社会実装を進めていきます。 ⑤建設現場の巡回・監視ロボットの実用化に向けた共同実証実験をスタート ソニーグループ㈱と共同で、建設現場における巡回・監視などの施工管理業務の効率化を目的としたロボットの、実用化のための実証実験を開始しました。実際の建設現場で検証機を動作させ、ハードウェア、ソフトウェア双方の検証を行い、建設現場で実用可能な移動ロボットの技術開発の推進につなげます。 ⑥高剛性の地中連続壁を簡便に施工できる高性能継手工法を開発 地震時の構造耐力を備えた地中連続壁を簡便に施工できる場所打ち地下構築工法「SSS-N工法」を開発し、(一財)日本建築センターによる評定を取得しました。地中連続壁工事において単位壁体の接合方法を改良し、剛性の高い連続壁を効率的に施工できます。今後、大深度の地下掘削を伴う再開発プロジェクトや超高層建築物の地下構造体等への適用を目指します。 ⑦環境負荷を最小限に抑制する基礎躯体解体工法を開発・実用化 マットスラブや地中梁などのコンクリート基礎躯体を、近隣への環境負荷を最小限に抑えながら解体できる「シミズ・基礎躯体クールカット工法」を開発しました。押し切り・引き切りの双方に対応できるワイヤーソー切断装置を用いて解体部材をブロック状に切り出し、クレーンで揚重・搬出するブロック切断解体工法で、粉塵の発生量はジャイアントブレーカーによる破砕解体と比べて90%減少、騒音は周辺の交通騒音と同等レベル、振動は無感知レベルに抑制できます。さらに従来の切断解体工法と比べ、作業時間を約40%縮減できることを確認しました。 ⑧構造用接着シートを用いた天井下地接着工法を開発 天井改修工事の生産性向上を目的に、構造用接着シートを用いた天井下地接着工法を開発し、当社技術研究所本館に初適用しました。鉄骨梁と天井下地の接合に、スポンジ状の接着シートを利用する工法で、天井下地の設置工程の簡素化が図れ、作業に必要な人工数を従来工法の半分に抑制できることを確認しました。また、作業時に粉塵や騒音が発生せず、火気も不要なため、作業員の労働環境の改善にも寄与します。 (3)i-Construction①「コンクリート締固め管理システム」を開発 コンクリート打設時のバイブレータによる締固め状況を可視化する「コンクリート締固め管理システム」を開発しました。作業員のヘルメットに装着したウェアラブルカメラから送られてくる映像をAIが解析し、締固めの進行状況をモニター上の3次元モデルに投影します。本システムは法政大学、東京都市大学、東急建設㈱と共同で特許出願したコンクリート締固め状況の可視化技術をベースに当社が開発したものであります。経験の少ない作業員でも締固め完了のタイミングを適切に判断できるようになり、コンクリートの品質を安定的に確保できます。今後、コンクリート品質総合管理システム「Concrete Station」に統合し、現場に広く展開していきます。 ②3次元鉄筋モデルを活用した構造細目の照査・配筋施工図の作図を自動化 土木工事におけるBIM/CIMを活用した設計プロセスの合理化を目的に、3次元鉄筋モデルの構造細目に対する照査や配筋施工図の作図を自動化できるアドインプログラムを開発しました。3次元配筋モデルが設計仕様に合致しているかを確認する機能や、照査を終えたモデルから出力した平面図に配筋施工図として必要な情報を半自動で付加する機能等により、多大な手間と時間を要していた照査・作図業務の省力化が可能となります。海外の鉄道駅舎工事での実証適用に着手しており、順次、適用対象を拡大していきます。 ③建設機械の位置情報や法面等の地盤変位を高精度でリアルタイムに検出 i-Constructionの推進に向け、建設機械の位置情報や法面等の地盤変位を高精度でリアルタイムに検出できる新たなGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球測位衛星システム)測位システムを開発しました。既存の衛星測位手法をベースに新たなアルゴリズムを構築し、周囲の障害物により観測できる測位衛星が少ないような精度確保が困難な状況下においても高精度測位を継続することができます。今後、このシステムを商品化し建設現場に広く展開させていきます。 ④出来形計測データをブロックチェーンに格納し、改ざんリスクを排除 国立大学法人東京大学と共同で「ブロックチェーンを活用した出来形情報管理システム」の実用化に向けた研究開発に着手しました。保存情報に耐改ざん性を付与できるブロックチェーンを用いて、土工事の出来形確認に使用する点群計測データの信憑性を担保するシステムの構築に取り組みます。また、点群情報と設計情報から施工誤差を判定するための解析・閲覧技術も新たに開発し、建設生産プロセスの生産性向上につなげていきます。 ⑤切羽前方の湧水リスクを事前予報する「地山予報システム」を開発 山岳トンネル工事の生産性向上を目的に、工事の進捗に応じて変化する切羽湧水量を定量的かつ高精度に予測する「地山予報システム」を開発し、当社JV現場における実証試験によりシステムの有効性を確認しました。現場で日々取得される施工データを蓄積・反映した仮想空間上で切羽の地下水環境の経時変化を把握し、湧水に起因するリスク情報を工事関係者にタイムリーに通知します。将来を常に予測しながら施工することで想定外のリスクを大幅に減らすことができます。今後、地下水環境のみならず、切羽前方の地山性状を予測・予報できるシステムに発展させ、山岳トンネル工事の安全性と生産性のさらなる向上につなげていきます。 ⑥自律型建機の開発に着手 ~完全無人化施工の実現を目指しDXを加速~ 土木工事現場のデジタル化コンセプト「Shimz Smart Site Civil」の実践に向け、BOSCH㈱、山﨑建設㈱と共同で、ブルドーザーによる盛土工事の自律施工システムの開発に着手しました。AIによる環境認識機能・自律制御機能を備えた建機側のシステムと、施工管理や安全管理のモニタリング等を担う管理側のシステムとを核に構成します。今後、他の建機にも段階的に拡張するとともに、他社が開発した自動化・自律化建機との連携も含め、建機群による土木工事の完全無人化施工の実現を目指します。 ⑦建設発生土の運搬計画を最適化するシミュレーション技術を構築 量子コンピューティング技術を活用し、建設発生土の運搬計画を最適化するシミュレーション技術を構築しました。道路の混雑具合や他車両の走行状況を制約条件として量子コンピュータで最適化計算することで、タイムロスの最も少ない経路をリアルタイムに導出できます。実現場の約40台のダンプトラックの走行データを用いて検証し、走行台数を変えずに1日当たりの運搬量を約10%増加できることを確認しました。今後、ドライバーへのルート通知方法などについて検討し、本技術の実用化を目指します。 (4)設計技術・BCP・ニューノーマル①「Shimz DDE」の構造検討機能を強化 コンピュテーショナルデザインの社内プラットフォーム「Shimz DDE」と国内で広く活用されている構造解析ソフト「SNAP」のデータ連携プログラムを開発しました。異なる複数のソフト間で双方向データ連携を媒介するクラウドツール「KONSTRU」の検証を進め、「Shimz DDE」の3Dモデルと解析条件を「SNAP」に反映させ、また「SNAP」の解析データを「Shimz DDE」の3Dモデルへ反映することを可能としました。設計の上流段階からコンピュテーショナルデザインと構造解析とのシームレスなデータ連携が可能になり、構造品質と設計提案力の一層の向上が期待されます。 ②「3次元曲面ガラススクリーン構法」を開発 デザイン性の高いガラスファサードを高精度に構築できる「3次元曲面ガラススクリーン構法」を開発しました。従来技術では困難だった複雑な曲面形状をガラスファサードに付与することが可能になり、建築ファサードの設計自由度が飛躍的に高まります。化学強化合わせガラスで成形した曲面ガラス部材を、金属プリンタによって成形した支持部材を用いた点支持構法により接着接合します。支持部材はジェネレーティブデザイン手法を用いてガラス部材の曲面形状に最適化することで、施工性と施工品質を確保します。本構法の開発にあたり、当社技術研究所内に実大モックアップを構築し、施工性を確認しました。 ③大規模地震直後に建物群の被災可能性を瞬時にシミュレーション プロパティデータバンク㈱と共同で、大規模地震発生直後の震災対策活動の支援を目的に、BCP対応を迅速化・効率化するシミュレーションシステム「BCP-Map」を開発しました。東日本大震災後に当社が調査を行った1千棟余にも及ぶ建物の被害と構造・階数・設計年との関係から確立した評価式に基づき、地震発生後10分程度で地域ごとに建物群の被災可能性を評価し可視化します。早期に被災状況を把握できるので、応援要員や支援物資、資機材等の割り当ての検討・指示などを震災直後から実施できます。プロパティデータバンク㈱は今後、提供する不動産クラウド「@プロパティ」に「BCP-Map」をオプションサービスとして組み込み提供していきます。 ④防災対策をタイムリーにピンポイント提案し、防災タイムラインの実践を支援 被害が甚大化する風水害への備えとして、国土交通省が推奨するタイムライン(防災行動計画)の策定・実践を支援するシステム「ピンポイント・タイムライン」を開発しました。気象情報と施設情報をもとに、その時、その場で必要な防災対策をシステム利用者に自動的にSNS等で通知できます。システムの基本性能については、2021年8月豪雨の際に当社九州支店の工事現場への試験導入により確認しました。引き続き現場での実証運用を通じて使い勝手等の改善を図り早期の実用化を目指します。 ⑤CO₂濃度分布と在室者の位置情報を基に室内の感染リスク分布を可視化 順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学の堀 賢教授と共同で、新型コロナウイルスの室内における感染リスクを評価し可視化するシステムを開発しました。日常生活や執務場面に感染対策が予め織り込まれた建築「Pandemic Ready」の実現に向けた研究開発の一環として、室内のCO₂濃度分布及び在室者の位置情報から感染リスクを評価し、リスクレベルを色分けします。両者は共同でマイクロ飛沫の挙動解明にも取り組んでおり、リスク評価のさらなる精度向上につなげていきます。 ⑥ニューノーマル時代のオフィス「SHIMZ CREATIVE FIELD」を提案 ニューノーマル時代の新たなオフィスの在り方として「SHIMZ CREATIVE FIELD」を提案し、本社の一部フロアを改修しました。社内外との多様なコミュニケーションに対応できるハブとしての機能を持たせるとともに、多様な仕事の在り方に対応するゾーニングを施しました。また、位置情報システムと当社が開発した建物OS「DX-Core」を連動させた館内の設備制御による省エネや、順天堂大学と共同開発した建物内感染リスクの評価手法「感染リスクアセスメントツール」による適切なリスク低減策も織り込みました。 ⑦オープンエリアの音環境制御システム「オトノカサ」を開発 TOA㈱と共同でオープンなオフィス空間で交わされる会話音声が周囲に拡散するのを抑制する音環境制御システム「オトノカサ」を開発しました。打ち合わせ場所の上部を放物面状のカサで覆い、放物面の焦点に設置したスピーカーからカサ内の会話音声を上向きに放射することで、カサ内のみ会話を拡声させます。打ち合わせ時の声量を抑えてもスムーズな会話のやり取りが可能となります。実オフィスでの実証実験では、カサの外(カサ端部から1mの距離)での音圧レベルはカサの下(中央部)での測定値より約10dB低く、物理的な音のエネルギーとしては約1/10に抑制できることを確認しました。 ⑧超指向性スピーカーと音響調整板でアナウンス音声をピンポイント放射 立命館大学、順天堂大学と共同で、必要な人に必要な音声情報を選択的に提供できる「局所音場制御システム」を開発しました。超指向性スピーカーと特殊な音響調整板で構成され、利用者は音響調整板の設置方向等を調整することで、特定の場所を狙ってピンポイントで音声情報を伝達できます。順天堂大学医学部附属順天堂医院(東京都文京区)の新型コロナウイルスワクチン職域接種会場内への試験適用により、効果を確認しました。 ⑨プロジェクション型VR技術を活用した体感型共同学習システムを開発 教育施設向けのシステムインテグレーション事業の一環として、プロジェクション型VR技術を活用した体感型共同学習システム「VR-Commons」を開発しました。室内の壁面と床面に疑似立体投影した映像コンテンツにより、利用者はVRゴーグル等のデバイスを装着せずに臨場感あふれる仮想現実の学習空間を体感することができ、関連資料や教材を投影面に重ね合わせた表示や、複数のVR-Commons拠点をつないだ映像コンテンツの共有もできます。東海大学高輪キャンパス内に試験導入し、実際の授業でも活用しております。今後、教育施設に加え、オフィスビルや工場、ホテル、病院等の施設への導入も進めていきます。 (5)カーボンニュートラル①低コスト・グリーン水素製造実証プラントの建設に着手~地熱とバイオマス資源を活用した世界初の製造技術を適用~ 大分県玖珠郡九重町において、世界初の低コスト・グリーン水素製造技術の実証プラント建設に着手しました。低コスト・グリーン水素製造技術は、地熱とバイオマス資源を活用することで製造時のCO₂排出量を市販水素の1/10以下に、かつ製造コストを太陽光などの再生可能エネルギーを活用した水電解水素の1/3以下に低減できます。今後、2025年までに大分県をはじめ、九州を中心に中小地熱発電所に併設する水素製造実用プラントを複数建設する計画であり、実用機の水素製造能力は250~1,000Nm³/hを想定しています。 ②水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」のCO₂削減効果を実証 当社と国立研究開発法人産業技術総合研究所は、郡山市総合地方卸売市場(福島県郡山市)内での実証運用を通し、建物附帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」のCO₂削減効果について、2019年7月から2年間の連続運用の結果、電力由来のCO₂排出量が、未導入時と比べて約53%、太陽光発電のみを導入した場合と比べて約21%削減できることを確認しました。「Hydro Q-BiC」はすでに、2021年5月に竣工した当社北陸支店(石川県金沢市)に実装され、実用化のステージに進んでおります。今後、メーカー等とのアライアンスの拡充を通じて導入コストの縮減を図り、適用案件の拡大につなげていきます。
FY2021|8,028 文字
5 【研究開発活動】 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は148億円であり,うち当社の研究開発費は146億円であります。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部,土木総本部等の技術開発部署で行われており,その内容は主に当社建設事業に係るものであります。 当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでおります。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進しております。 これら研究開発の成果として,今年度も建築学会賞をはじめ様々な学協会からの賞を受賞しました。また,i-Constructionが実用の段階へと進み,ロボット施工技術の展開も進行・深化しております。 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりであります。 (1)感染症対策技術①建物内の感染防止機能を評価する「感染リスクアセスメントツール」と感染対策リスト「ソリューションマトリクス」を開発 順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学の堀 賢 教授と当社は,建築設計の知見と医学的な知見とを融合し,建物内の感染防止機能を評価する「感染リスクアセスメントツール(オフィス版Ver.1.0)」と感染対策リスト「ソリューションマトリクス」を共同で策定しました。当社は今後,オフィスを対象にした感染対策のコンサルティングを展開し,お客様が求める感染リスク低減グレードに適した建築計画と運用方法を提案することで,新築・改修工事の受注増を目指します。また,両者で病院や学校,宿泊施設,大型商業施設,ホール等,各用途に対応したツールを策定し,広く感染対策を提案していきます。堀教授とは日常生活や業務の場面に感染対策が予め織り込まれた建築「Pandemic Ready」の実現に向けた要素技術の共同開発や社会実装化に取り組んでいきます。 ②遮音性能を備えた自然換気用給気スリット「しずかスリット」を開発 建物の感染症対策や省エネに有効な自然換気用の外気吸い込み口として,室内に外気を取り入れても騒音は入ってこない新たな給気スリット「しずかスリット」を開発・実用化しました。屋外の幹線道路や鉄道から給気スリットを介して室内に入ってくる騒音のうち中心となる500~2,000Hzの騒音について,5~9db低減できることを確認しております。オイレスECO㈱がユニットを製作し,当面,当社に独占的に供給した後,外販を予定しております。本給気スリットは,大規模オフィス2件の設計提案に採用されております。今後,様々な用途の建物に対して「しずかスリット」の採用を提案していくとともに,カーテンウォール一体型のユニットの開発を進めます。 (2)ロボット・AI①ロボット施工・IoT分野に置ける技術連携に合意 当社と鹿島建設㈱,㈱竹中工務店の3社は,建設業界全体の生産性及び魅力の向上を促進することを目的に,ロボット施工・IoT分野での技術連携に関する基本合意書を締結し,技術連携を進めることとしました。3社は,本協業を通じ,新規ロボットの共同開発や既存ロボットの相互利用を促進することで,研究開発費やロボット生産コストの低減につなげ,施工ロボットの普及加速を目指していきます。このような最先端技術の利活用は,協力会社の生産性を大幅に向上させ,技能労働者のワークライフバランスの向上や処遇改善,ひいては若年層の入職促進にも寄与し,業界の魅力向上に貢献するものであります。3社は今後,技術連携を広く業界全体に働きかけ,建設業が抱える諸課題の解決に尽力していきます。 ②自律型溶接ロボット「Robo-Welder」の実施工現場での適用開始 AIを搭載した自律型建設ロボットと人とがコラボしながら工事を進める次世代型生産システム「シミズスマートサイト」の第一陣として,自律型溶接ロボット「Robo-Welder」を当社施工現場に適用しました。「Robo-Welder」が溶接した地下階の鉄骨柱の板厚は100mmで,建設ロボットによる溶接実績として日本国内で最厚であります。熟練の溶接工でも柱1本当たり8人日かかる作業を5人日で対応できる省人化効果を確認しております。今後,当社施工現場において,ロボット施工を本格的に展開するとともに,施工管理のデジタル化を進め,次世代を見据えた現場運営を目指します。 ③木造床版工事を省力化できる連装ビス打ち機「Robo Slab-Fastener」を開発 「シミズスマートサイト」の一環として,木造床版のビス接合を担う連装ビス打ち機「Robo Slab-Fastener」を開発しました。ビス接合の仕様に応じて工具の間隔を調整し,タッチパネル上で工具の取り付けピッチ,ビス打ちピッチ,移動距離を設定後,開始ボタンを押すだけで,ロボットが30本/分のペースでビス打ちしながら走行します。当社施工現場のCLT床版工事に当ロボットを実適用し,生産性向上効果を確認しております。今後,木造床版工事において「Robo Slab-Fastener」の実装を進めるとともに,協働ロボットの適用工種拡大に向け,新規ロボット開発に注力していきます。 ④石膏ボードの切断作業をアシストする装置「シミズ・ボードスプリッター」を開発 「シミズスマートサイト」の一環として,作業員による石膏ボードの切断作業をアシストする装置「シミズ・ボードスプリッター」を開発しました。当社施工現場で,「シミズ・ボードスプリッター」を使用することで,手作業に比べ生産性を平均で12%,切り込み箇所が多くなると50%以上向上させることができることを確認しております。今後,石膏ボードの切断作業が多い鉄筋コンクリート造の集合住宅や病院の作業所に「シミズ・ボードスプリッター」の水平展開を図ります。 ⑤3Dコンクリートプリント用の繊維補強モルタル材料「ラクツム」の開発・実用化 3Dコンクリートプリンティングによる構造体を兼ねた柱型枠「埋設型枠」の造形を目的に,高強度・高靭性の繊維補強モルタル「ラクツム(LACTM:Laminatable Cement-based Tough Material)」を開発・実用化しました。当社施工現場において,自由曲面形状を有するコンクリート柱4本の埋設型枠を3Dプリンティング施工した結果,高さ4.2mの柱部材を短期間で構築できました。今後,「ラクツム」で積層造形した埋設型枠の現場適用を推進していくとともに,施工現場で実大型枠を直接プリントするオンサイト3Dプリンティングを実現するための研究開発を進めます。 ⑥建物運用のデジタル変革を支援する建物OS「DX-Core」を開発 建物内の建築設備やIoTデバイス,各種アプリケーションの相互連携を容易にする,建物運用デジタル化プラットフォーム機能を備えた,基本ソフトウェアである建物オペレーティングシステム「DX-Core」を開発し,自社施設への実装を進めております。建物運用にかかわる設備機器やアプリケーション間の連携を,メーカーの違いを問わずビジュアルツールで自在に図れるため,新築・既存を問わず実装できます。今後,外部企業との協業により「DX-Core」と接続するハードウェアやアプリケーションを順次拡充し,建物の用途や規模に適したサービスメニューを提案するとともに,建物デジタル化工事のEPC受注を目指します。 ⑦建物エレベータとサービスロボットの統合制御技術を開発・実装 ロボットを活用した様々なサービスを建物内で提供できる「ロボット対応型」施設の実現に向け,エレベータ等の建物設備と複数種類のサービスロボットを,共通のインターフェースを介して統合制御する技術を開発し,技術研究所本館(東京都江東区)に実装しました。本技術を導入した建物では,サービス事業者がロボットと建物設備の連動システムを独自開発する必要がなくなるため,新たなロボット活用サービスを容易に展開でき,建物利用者の利便性と建物価値の向上につながることが期待できます。今後,本技術で統合制御を行う建物設備やサービスロボットの拡充を目指し,ロボットサービス事業者等に共同実証への参加を働きかけていきます。 ⑧早期火災検知AIシステム「火災検知@Shimz.AI.evo」による木造建築の火災リスクの低減 物流施設向けに開発した早期火災検知AIシステム「火災検知@Shimz.AI.evo」が,木造建築の火災検知にも効果を発揮することを確認しました。木材の初期燃焼時に発生・拡散する一酸化炭素等を含む特有のガスを検知させることで,本システムは木造建築の火災を確実に検知できます。当社は「火災検知@Shimz.AI.evo」を,物流施設やイベント施設等の大空間建築や文化的価値が高い木造建築等に広く展開し,火災リスクの低減につなげていきます。 ⑨人と重機との接触災害を回避する重機搭載型のAIカメラ監視システムの開発 山岳トンネル現場における人と重機との接触災害の根絶を目指し,単眼カメラユニットと画像解析AIで構成する,重機搭載型のAIカメラ監視システムを㈱Lightblue Technologyと共同で開発しました。画像解析AIを用いて,重機に取り付けた単眼カメラの画像から重機周辺の危険区域内にいるヒトを瞬時に検知し,警告音,ライト点灯,モニター表示等でアラートを発報します。実証試験では,9割を超える高い検知精度が確認できており,今後,施工中のトンネル工事に本システムを装備した重機を導入し,現場環境下での適用性を検証するとともに,検知精度や使い勝手のさらなる改良を図り,商品化・外販開始を目指します。 ⑩ドローン画像から損傷情報も反映したインフラ構造物の高精度3Dモデルを形成 RC造のインフラ構造物の劣化予測技術の高度化を目的に,ドローン計測による画像情報から,RC構造物表面の微細なひび割れ等の損傷情報も反映した高精度3次元モデルを形成するシステムを米国のカーネギーメロン大学と共同開発しました。橋長200m程度の一般的なRC橋梁を対象にした場合,損傷状況の位置・形状の誤差を数mmレベルに抑えた精緻な3次元モデルの形成を,計測を含めて数日程度で完了できます。今後,この高精度3次元モデルをベースに,構造物の耐力や余寿命をシミュレーション解析する技術の開発を進め,データ計測から評価・診断まで一気通貫で対応できるインフラ劣化予測システムの確立を目指します。 (3)i-Construction①コンクリート品質総合管理システム「Concrete Station」を開発 土木工事のコンクリート品質に関するあらゆるリスクを着工前に全工期にわたって抽出し,具体的な対策の立案から打設管理に至る一連の施工管理業務を支援するコンクリート品質総合管理システム「Concrete Station」を開発しました。リスクロードマップ作成,打設計画支援,チェックリスト作成等の機能を備えており,経験の浅い若手土木技術者でも,コンクリート打設の施工管理を計画的に実施できます。今後,「Concrete Station」の現場適用を進めるとともに,「Concrete Station」による検討・対策・施工結果の評価・分析結果をAIに学習させ,将来的にはAIシステムによる精度の高い施工管理を目指します。 ②新たなコンクリート打継ぎ処理剤「シーカ®ルガゾール-919」を開発 コンクリートの打設後に形成される脆弱層の硬化を防止する新たな打継ぎ処理剤「シーカ®ルガゾール-919」を日本シーカ㈱と共同開発しました。「シーカ®ルガゾール-919」は,特定の噴霧器を使用すると泡立つため,泡を視認することで経験が浅い作業員でもムラなく散布できます。さらには,コンクリートの打設直後に散布できることから,材工(材料費・工事費込み)で約30%のコストを削減することが可能になります。今後,「シーカ®ルガゾール-919」を先に開発したコンクリート品質総合管理システム「Concrete Station」が提供するソリューション技術に加え,現場に広く展開していきます。 ③掘削形状をリアルタイムに3次元で可視化できる「リアルタイム施工管理システム」を開発 地中連続壁の掘削作業の一層の効率化に向け,地中での掘削機の位置・姿勢と掘削形状をリアルタイムに3次元で可視化できる「リアルタイム施工管理システム」を開発しました。本システムを活用することで,掘削工程のサイクルタイムを従来比で20~25%,コストを10%以上削減することが可能になります。今後,本システムを地中連続壁の採用現場に水平展開し,掘削作業を効率化していきます。 ④掘削状況の可視化技術「ケーソン版SP-MAPS」を開発 3次元スキャン技術とプロジェクションマッピング技術を活用した「SP-MAPS」を,ニューマチックケーソン工事に適用しました。掘削オペレーターは,掘削面の色光から掘削の過不足をリアルタイムで把握でき,無駄なく作業を進めることができます。本システムを当社JV施工現場に試験導入し,高気圧環境下でのシステム機能の実効性,装置の耐圧性能を確認しました。今後,計測・画像照射の所要時間の短縮,計測・照射装置のスリム化等のシステム改良を図り,実工事での適用を目指します。 ⑤コスト削減に寄与するPCaボックスカルバート「角丸(かくまる)カルバート」を開発 トンネル工事のコスト削減に寄与する新形状のPCaボックスカルバート「角丸カルバート」を千葉窯業㈱と共同開発しました。このボックスカルバートは,隅角部の形状を直角から円弧状にすることで内部に局所的に作用していた負荷を30%低減できます。側壁と頂版・底版の厚さを任意に設定できるため,従来のPCa部材に比べ,製作費を約15%削減可能であります。「角丸カルバート」は,当社JVが施工中の新東名高速道路川西工事の開削トンネルへの適用を予定しております。 ⑥施工中の設備配管や建物躯体の施工管理を支援する「Shimz AR Eye」を開発・実用化 AR技術を活用して携帯型タブレットの端末上で建物のBIMデータとリアルタイムのライブ映像を合成表示して見える化し,双方を容易に照合できるシステム「Shimz AR Eye」を開発・実用化しました。すでに,BIMで設計した建物の新築・改修工事の18現場に試験適用し,性能や使い勝手を確認しております。当社は引き続き,建築・土木工事を問わず,AR技術を活用した施工支援ツールの導入を進め,施工管理の一層の効率化を進めます。 ⑦掘削作業の負担を軽減する「ワーキングアシストAS」を開発 工事現場でのスコップを使った掘削作業の負荷低減を図るため,アシストスーツ「ワーキングアシストAS」をダイヤ工業㈱と共同開発しました。「ワーキングアシストAS」は,ベスト型で,胸回りと腰回りのベルトを締めるだけで着用でき,重量は電動タイプの1/8の約500gと非常に軽量であります。アシスト効果の計測試験では,筋肉の負担を10%程度軽減できるという結果が得られております。このアシストスーツは掘削作業だけでなく,両腕で行う重量物の持ち運び作業の負荷も軽減できることから,農業や宅配,介護等の現場への展開も視野に入れて進めております。 (4)設計技術①BIMデータを施工から製作,運用段階まで連携させるシステム「Shimz One BIM」の整備 一貫構造計算プログラムで作成した構造計算モデルと構造BIMモデルのデータ連携を拡充する機能及び構造BIMモデルのデータから柱や梁の部材断面表を自動作成する機能を構築することで,設計者が作成するBIMデータを施工から製作,運用段階まで連携させるシステム「Shimz One BIM」を効率化しました。すでに10案件に適用して両機能の有効性を確認しており,今後,全社の設計部門に水平展開し,業務を効率化します。 ②医薬品クリーンルームの設計支援ツール「GMP Visualizer」を開発 医薬品製造施設の設計支援ツールとして,医薬品GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)に準拠したクリーンルームの配置計画を効率的に立案できる3Dモデリングツール「GMP Visualizer」を開発しました。このツールは,医薬品製造施設の建築・空調計画のベースとなるクリーンルームの配置計画を検討する際に不可欠な医薬品GMPとの適合チェックを自動化します。このツールを医薬品製造施設の新築計画の設計検討に利用するとともに,既存施設のGMP適合チェックツールとしても活用し,改修提案の最適化につなげていきます。 ③100MNもの支持力を備えた場所打ちコンクリート拡底杭「花びら拡底杭」を開発 400mクラスの超高層ビルを杭基礎で経済的に建設することを目的に,高い支持力を備えた場所打ちコンクリート拡底杭「花びら拡底杭」を丸五基礎工業㈱の協力を得て開発しました。従来の拡底杭の2倍近い底面積を確保することで,1本あたり100MN(約10,000トン)という非常に高い支持力を発揮します。従来工法で支持力100MNの杭を構築した場合に比べて,排土量が20~33%,施工期間が10~20%低減できることを確認しております。本工法は(一財)日本建築センターより,その有効性を証する評定を取得しており,今後,超高層案件に対して積極的に提案し,案件受注に結びつけていきます。 ④能登ヒバと鉄骨を一体化した耐火木鋼梁「シミズ ハイウッド ビーム」を開発 木質建築技術「シミズ ハイウッド」の一環として,集成材と鉄骨を一体化した耐火木鋼梁「シミズ ハイウッド ビーム」を開発しました。能登ヒバを集成材に用いた耐火木鋼梁について1時間の耐火性能を認定する国土交通大臣認定を取得しました。初適用となる当社北陸支店新社屋では,古都金沢の伝統的な建築様式である格天井を最新の技術である耐火木鋼梁によって再現し,スパン25m超の木質大空間を実現しました。当社は今後,カラマツの集成材を用いた耐火木鋼梁についても大臣認定を取得するとともに,引き続き木質建築技術の開発に広く取り組んでいきます。 (5)カーボンニュートラル 「電気化学プロセスを主体とする革新的CO2大量資源化システムの開発」がNEDOのムーンショット型研究開発事業に採択 国立大学法人東京大学,国立大学法人大阪大学,国立研究開発法人理化学研究所,宇部興産㈱,千代田化工建設㈱,古河電気工業㈱と共同で,NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ムーンショット型研究開発事業/2050年までに,地球再生に向けた持続可能な資源循環を実現」に係る公募に対して「電気化学プロセスを主体とする革新的CO2大量資源化システムの開発」プロジェクトを提案し,採択されました。本事業は,大気中に放散された希薄なCO2及び放散される前のCO2を回収して,再生可能エネルギーを駆動力とし電気化学的に富化/還元することで有用化学原料を生成するプロセスの統合システムを開発します。最終的に,カーボンリサイクルの基盤を構築することを目指します。
FY2020|5,998 文字
5 【研究開発活動】 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は132億円であり,うち当社の研究開発費は129億円である。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部,土木総本部等の技術開発部署で行われており,その内容は主に当社建設事業に係るものである。 当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。 これら研究開発の成果として,今年度も学会賞をはじめさまざまな学協会からの賞を受賞した。また,i-Constructionが実用の段階へと進み,新領域技術の展開も進行・深化している。 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。 (1)生産技術・i-Construction①次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」要素技術の開発・実用化 山岳トンネル工事の生産性向上と品質管理の高度化を目的に,ICTの最新技術を活用した次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の要素技術を開発・実用化した。実証実験の継続・実用化を進め,技術提案で一層効率的な施工提案を行うことで,案件受注に結びつけていく。開発した要素技術は以下である。 a.山岳トンネルの切羽前方の三次元的な地山状況を予測する前方探査システム「S-BEAT」を改良した新システムを開発 b.発破掘削の効率化に向けデータ活用を自動化した余掘り量低減システム「ブラストマスタ」をサンドビック㈱と共同開発・実用化 c.覆工コンクリートの自動打込み・締固めシステムを岐阜工業㈱と共同開発 d.二次覆工のPCa化推進に向け,(一社)日本建設機械施工協会施工技術総合研究所,㈱IHI建材工業と共同で「分割型PCa覆工システム」を開発・実証 ②重機接触災害リスク低減システムが技術認証「Safety2.0」取得 山岳トンネル工事において展開している「重機接触災害リスク低減システム」について,(一社)セーフティグローバル推進機構(IGSAP:The Institute of Global Safety Promotion)が発行する,人と機械の協調作業によって安全を確保する技術的方策に与えられる技術認証「Safety2.0 適合基準レベルⅠ」を取得した。当社は,ロボット技術や建設機械・重機の自動運転技術,人(作業員)・モノ(建機・重機)・作業環境に関する情報を共有するICT技術の融合により,トンネル施工の生産性と安全性を飛躍的に向上させる「シミズ・スマート・トンネル」の構築を進めており,関連する技術開発にSafety2.0の概念を導入する。 ③簗川ダム堤体コンクリート打設にダムコンクリート自動打設システムを初適用 簗川ダム建設工事において,ダムの堤体を構築するコンクリート打設工事に「ダムコンクリート自動打設システム」を初適用した。本システムは,バッチャープラント(コンクリート製造設備)への材料供給から軌索式ケーブルクレーンによるコンクリート運搬・打設までの一連の作業を完全自動化するものであり,当該工事において,打設作業サイクルタイムの約10%短縮を実現した。本システムは,土木学会技術開発賞,日本建設機械施工大賞最優秀賞を受賞した。 ④人と環境に優しい紙素材の仮設利用技術「KAMIWAZA」を土木現場で適用 土木現場の仮設資材に軽量かつ加工性の高い紙素材を活用する取り組みを進めている。鋼材や木材に代わり,取り扱いが容易な紙素材を使用することで,作業員の負担が軽減され,仮設施工の生産性が向上する。これまでに,山岳トンネルの坑内に設置するトンネル風門,防音壁等の仮設防音設備,骨材貯蔵設備の温度上昇を抑制する遮熱シート等に適用している。 ⑤施工性を向上する薄肉型巻付け耐火被覆材を共同開発 鉄骨大梁の耐火被覆工事の施工性を向上させる2時間耐火の薄肉型巻付け耐火被覆材をニチアス㈱と共同で開発し,ニチアス㈱より同社製品マキベエ®の「高密度仕様 25㎜品」として商品化した。従来製品と同等の耐火性能を維持しつつ,巻付け耐火被覆材のスリム化を図り,鉄骨大梁を対象に一重巻で耐火2時間,二重巻で耐火3時間の国土交通大臣認定を取得した。従来製品に比べ施工性が10%程度向上することを確認している。 ⑥「3眼カメラ配筋検査システム」を開発,国土交通省のPRISMで性能を実証 現場で行う鉄筋配筋検査の一層の信頼性向上と省力化を目的に,三角測量の原理を応用した「3眼カメラ配筋検査システム」をシャープ㈱と共同開発し,国土交通省のPRISM(建設現場の生産性を飛躍的に向上させるための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト)を含む13現場に試験適用し,有効性を検証した。このシステムは3眼カメラで画像データの三次元情報を取得,画像から鉄筋を抽出・計測し,帳票を作成する。撮影から7秒で検査結果が自動表示され,配筋検査業務の効率化と現場の働き方改革に貢献する技術として,全国の土木現場に水平展開する。 ⑦軽量で優れた施工性を備えたPCa合成床版「SLaT-FaB床版」を開発 高速道路の大規模更新に伴う床版取替え工事向けに,軽量で優れた施工性を備えたPCa合成床版「SLaT-FaB床版」を日本ファブテック㈱と共同開発した。既設床版と同等の厚さを確保し重量を抑えたため,既設桁の補強工事が不要となるうえ,配筋にはTヘッド工法鉄筋を採用したことから施工性にも優れる。今後,高速道路の更新や修繕工事の改善提案に積極展開し,適用拡大に結びつける。 (2)設計・管理技術①コンピュテーショナルデザイン手法を展開するプラットフォーム「Shimz DDE」を構築 企画・基本設計段階における設計提案の一層の高付加価値化を目的に,高度なコンピュテーショナルデザイン手法を展開するためのプラットフォーム「Shimz DDE(Digital Design Enhancement platform)」を構築,本格的な組織的運用を開始した。設計者が3Dモデルをベースとした多様な設計検討を「直観的な操作」で行い,設計提案の高付加価値化に加え,発注者等との合意形成の期間の大幅な短縮などが可能となる。また,3Dデータは次工程の設計・施工BIMへの連動に加え,当社の設計ノウハウとして蓄積され,「組織の共有知」として次世代へ継承される。今後,AIをはじめとする最新技術を取り込みながら,プラットフォームとしての一層の機能充実を図る。 ②業務を効率化するBIMツール「Shimz One BIM(設計施工連携BIM)」の開発 設計BIMデータを施工から製作(発注),運用に至る段階まで連携し,業務を効率化するシステム「Shimz One BIM」の構築を進めている。このうち,設計者が作成する鉄骨造のRevit 構造データを鉄骨の積算や製作(発注)に必要なデータに変換する「KAP for Revit(K4R)」を開発,運用を開始した。鉄骨積算体制の強化,業務の効率化ならびに鉄骨造のコストダウンを図るとともに,引き続き基盤整備を進め,鉄筋工事や型枠工事,設備工事等の効率化を進める。 このほか,将来のBIMモデルによる建築確認申請・自動審査を先取りした新たな建築確認システムを,指定確認検査機関の(一財)日本建築センターと協議・検討を重ね,開発・整備し,今後確認業務の効率化に向け展開する。 ③未来のオフィス空間づくりに向けた実証実験オフィスの共創プロジェクトに参画 ㈱point 0(ポイントゼロ)運営の会員型コワーキングスペース「point 0 marunouchi」における,未来のオフィス空間づくりに向けた実証実験プロジェクトに参画した。実際にオフィスで働く人の動きや生体情報,設置機器等の運転データを収集・分析し,オフィス内のコミュニケーションやワークスタイルの現状評価手法の検証を進める。また音制御システムなど音環境の改善技術の検証にも着手し,空間コンテンツの高度化や新しいサービスの創出に取り組む。(3)環境・設備技術①建物に伝播する環境振動の影響を評価する「環境振動評価システム」を開発 道路や鉄道,機械,設備機器等に起因する環境振動の影響を客観的に評価する「環境振動評価システム」を開発・実用化した。設計の初期段階において建物への環境振動の影響を容易に予測・評価でき,それに基づき適切な設計を行うことが可能となる。今後,全社設計部門で有効活用し,より優れた品質の建築設計を追求する。 ②高性能・低価格な屋外遮音部材「しずかルーバー」を開発 建築物の屋上や地上部に設置された設備機器に起因する騒音問題の解決を目的に,高い遮音性能と通気性を備えた低価格のアルミ製ルーバー「しずかルーバー」を開発・製品化した。羽板部分に反射,吸音,共鳴の3つの音響要素を組み合わせた独自の遮音機構を付与し,高音域から低音域まで幅広い周波数帯に対して騒音低減効果を発揮する。製造はアルミ押し出し成形でほぼ完結するため,既存製品の50%~80%程度のコストで採用が可能となる。今後,製造委託先の㈱成和を通じた外販を予定している。 ③省エネ型クリーン空調制御システム「クリーンEYE(アイ)」を開発 クリーンルーム内作業者の滞在情報や粒子濃度を検知し,要求清浄度に適した循環風量を維持する省エネ型の空調制御システム「クリーンEYE(アイ)」を開発・実用化した。対象とする清浄度は,主な電子デバイス製造装置の組立工場等で要求される水準で,複数の電子デバイス装置メーカーの生産ラインで本システムが採用され,高い評価を得ている。実証実験では,従来システムに比べ,循環風量を50%,ランニングコストを30%削減できることを確認している。設計提案に織り込み,積極的に展開し,案件受注に結び付ける。 ④2方向気流の新型手術室空調システム「クリーンコンポ デュアルエアー」を商品化 手術室内の温熱環境と清浄度を向上させる新型手術室空調システム「クリーンコンポ デュアルエアー」を商品化した。建築系技術商品を扱う100%子会社の㈱テクネットを通じ医療機関向けに提供する。術野をカバーする下降流と周囲をカバーする水平旋回流の2方向の気流を組み合わせ,術野の執刀医と周囲の医療スタッフ,それぞれに適した快適・清浄な手術室環境を創出する。高度急性期医療に対応する医療機関の手術室の大型化に対応が可能で,今後技術提案に織り込み,医療施設の新築・大規模改修工事の受注に結び付ける。 (4)新領域技術①AIを用いた早期火災検知システムなどを「S・LOGI(エス・ロジ)新座」に実装 天井が高く,かつ大空間となる物流施設での火災を早期発見し延焼防止する「早期火災検知システム」を開発した。ガスセンサ,炎センサ,レーザーセンサなどから得られる情報を学習し,AIによって初期火災を高い精度で検出できるシステムを構築,当社が開発した先進的物流施設「S・LOGI(エス・ロジ)新座」に実装した。その他にも,画像解析からトラックバースの空き状況や日々の混雑予想時間帯を情報提供する「車両管理・誘導システム」など,AIを活用したソリューションの開発を加速している。 ②自動運転技術と歩行者ナビを連携した施設内移動サービスを構築 建物と自動運転車両やロボット間の連携基盤(自動運転プラットフォーム)を活用し,自動運転車両の配車リクエスト機能と歩行者ナビゲーションシステム(歩行者ナビ)の経路案内機能を組み合わせた新たな施設内移動サービスを構築した。当社が開発した自動運転プラットフォームのプロトタイプに,歩行者ナビと,㈱ティアフォーの自動運転技術を組み合わせたもので,引き続き,自動運転技術を活用した移動・搬送サービスの実証実験を通じて,車両・ロボットと施設の連携技術の高度化を図り,自動運転プラットフォームの2021年度内の実用化を目指す。 ③AIを活用した次世代移動を支援する統合技術ソリューション「AIスーツケース」開発プロジェクトに参画 視覚障がい者のアクセシビリティと生活の質向上を目指し,アルプスアルパイン㈱,オムロン㈱,日本アイ・ビー・エム㈱,三菱自動車工業㈱,当社の5社は,「(一社)次世代移動支援技術開発コンソーシアム」を設立,視覚障がい者が自立して街を移動することを助ける統合ソリューション「AIスーツケース」の開発に取り組む。業種を超えた複数の企業が技術や知見を持ち寄り,「AIスーツケース」の開発とともに,実証実験を通じて社会実装に必要な要件を特定し,視覚障がい者の移動とコミュニケーションの課題を解決するソリューションの実現を目指す。 ④建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」の実用化 国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同開発した建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」を,郡山市総合地方卸売市場内の管理棟にて運用を開始した。郡山市総合地方卸売市場内の管理棟におけるCO2排出量は導入前と比較して約40%削減を見込んでいる。また当社北陸支店新社屋でも採用することとしており,水素エネルギー使用ビルとしては,国内最大級の水素蓄電設備(容量2,000kWh)を採用する。今後は,工場やホテル,病院に対して本システムを提案することで普及を推進し,建物の省エネルギー化やCO2排出量の削減に努める。 ⑤中層マンションに木質耐火構造技術「スリム耐火ウッド」「シミズ ハイウッド」を適用 木質耐火構造の中層マンションに,木質耐火部材「スリム耐火ウッド」を初適用した。また,木質耐火部材の接合方法として木質構造架構技術「シミズ ハイウッド」を開発し,柱・梁の接合に耐震性,耐火性,施工性に優れた接合部材(PCa接合部材)を適用した。本計画は木造とRC造の最適な組み合わせを追求した取り組みが評価され,国土交通省から2018年度の「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択された。今後,構造体に木材を用いる建築物の増加が見込まれており,付加価値の高い建築物を提供する一つの手法として,中・大規模の耐火建築の発注者に対して木質構造の提案を進める。
FY2019|5,492 文字
5 【研究開発活動】 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は125億円であり,うち当社の研究開発費は123億円である。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部,土木総本部等の技術開発部署で行われており,その内容は主に当社建設事業に係るものである。 当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。 (1)生産技術・i-Construction①「シミズ・スマート・サイト」の導入 人とロボットが協働して建設作業を行う次世代型生産システム「Shimz Smart Site(シミズ・スマート・サイト)」の建設現場への適用を開始した。初適用した新大阪の現場では,水平スライドクレーン「Exter」で資材を搬入し,水平搬送ロボット「Robo-Carrier」によって,天井ボードとエアコンユニットを20フロア分,各階50~60パレット,計1,000~1,200パレットを搬送した。また,多能工ロボット「Robo-Buddy」が,ロビーや一部の客室天井を施工した。今後,首都圏の大規模現場へ水平展開するとともに,ロボット開発を加速し,導入現場の拡大を図る。 ②IoT,AI技術によるトンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の開発に着手 今後想定される熟練技能労働者の大量離職を見据え,生産性の向上と一層の安全性確保を目的として,ICT,IoT,人工知能(AI)などの最新技術を活用した次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の開発に着手した。本システムは,ヒューマンエラーをセンシング技術でカバーする「支援的保護システム」,AI等を組み込んだ建設機械と相番作業者が協調しながら安全な協働作業を実現する「Safety2.0」のコンセプトを導入する。また,熟練工が持つ経験知を定量化し,AIによる建設機械の自動運転等を実現することで,大幅な省人化・省力化を図る。 ③AIにより掘進計画を最適化する「シールド掘進計画支援システム」を開発 シールドトンネル工事の掘進計画をAIで最適化する「シールド掘進計画支援システム」を名古屋工業大学と共同で開発した。AIが試行錯誤しながら自己学習することで最適解を導く強化学習手法により,トンネル線形に応じたシールド機操作の計画値,セグメントの配置計画を導き出すことができる。トンネル掘進開始前の計画段階のみならず,施工段階における日々の掘進管理への活用も可能となる。 ④振動を可視化し切羽を監視する「切羽崩落振動監視レーダーシステム」を開発 ミリ波レーダーを用いて,切羽全面をモニタリングする切羽崩落振動監視レーダーシステムを開発した。物体表面を面的に探査しながら目視では確認できない微細な振動挙動を捉えることができるミリ波レーダーによって,崩落の予兆検知が可能となる。本システムの現場適用を進めるとともに,崩落・落石現象が発生する以前の予兆条件をデジタルデータとして蓄積し,将来の無人化施工技術の構築につなげていく。 ⑤山岳トンネル工事の業務を効率化する「リアルタイム遠隔立会システム」を開発 山岳トンネル工事における検査・管理業務の合理化を目指し,タブレット端末を用いたリアルタイム遠隔立会システムを開発し,現場に適用した。本システムは,建設現場の働き方改革が官民を挙げて進められている中,ICTを活用して物理的な距離を克服し,発注者・施工者双方の検査・管理業務の生産性向上を図るツールであり,発注者の検査員が現場に赴くことなく,遠隔地の端末上で施工状況の確認から記録写真・帳票類の承認に至る一連の検査プロセスを完結できる。 ⑥騒音下におけるコミュニケーションツール「骨伝導ヘッドセット」を開発 トンネル内の騒音下においても,入坑者が防じんマスクや防音耳栓を着用したままの状態で円滑にコミュニケーションできる通話システム「骨伝導ヘッドセット(仮称)」を開発した。骨伝導は音声をこめかみの骨を介して聴覚神経に伝える仕組みであり,通話時に保護具の脱着が不要であるうえ,通話がトンネル内の騒音の影響を受けることがない。使用者は,マスクを着用したまま通信相手の名前を声にするだけで,音声認識AIアプリが自動的に通話相手を選定し,通話を開始できる。 ⑦ICTにより工事を自動化する「ダムコンクリート自動打設システム」を開発 軌索式ケーブルクレーンを利用するダムコンクリートの打設工事を対象とした「ダムコンクリート自動打設システム」を開発した。ダム工事において総工費の約6割を占めるコンクリート打設工事における,コンクリートの製造から運搬・打設に至る一連の繰り返し作業を完全自動化できる。施工監理者が事前に作成した打設計画を入力するだけで使い始められ,リアルタイムの打設状況をタブレット端末から確認することができる。 (2)品質管理技術①物理特性の化学的評価手法「CW-QUIC」を開発 既製杭の先端部を支持層と一体化するソイルセメントの強度を化学的に評価する技術「CW-QUIC」を開発・実用化した。ソイルセメントの強度を,セメントと水の混合比率並びにセメント含有量から求める技術であり,従来の圧縮強度試験では数日を要していた判定時間がわずか1時間程度,費用も従来試験同等であるうえ,現場で即座に確認できる。今後は既製杭を採用する全現場に展開するとともに,本技術の外部へのライセンス供与を予定している。 ②既存杭の活用に不可欠な杭長診断法「コンピタ」を開発 地中に打設された基礎杭の頭部を打撃するだけで杭の全長を正確に推定できる杭長診断法「コンピタ」を開発した。近年,市街地等の建替工事においてニーズが高まっている既存杭の再利用に向けて,杭の先端が支持層に到達していることの確認は不可欠である。コンピタは,周辺地盤における表層から支持層に至る各地層の土質の影響を考慮したモデルを構築し,三次元有限要素解析で弾性波伝播速度の変化を評価することで,杭長を精度よく推定する。日本建築センターより杭長診断法として初の技術評定を取得した。 ③基礎梁開孔部補強工法により基礎を合理化する「大開孔基礎梁工法」を開発 鉄筋コンクリート造の基礎梁に貫通孔を設けるための工法「大開孔基礎梁工法」を㈱鴻池組,㈱錢高組,東急建設㈱,コーリョー建販㈱と共同開発した。これまでの工法に比べて基礎梁せいを抑えることができるため,基礎部の掘削土量やコンクリート量を削減でき,コスト削減や工期短縮も見込める。日本建築総合試験所より,本工法の信頼性を認証する建築技術性能証明を取得している。 ④ICTによる品質検査システム「遮水シート施工検査支援システム」を開発 廃棄物処分場などに敷設する遮水シートの品質検査結果を管理する「遮水シート施工検査支援システム」を㈱菱友システムズと共同開発・実用化した。タブレット端末とGNSS衛星測位システムによって,クラウドサーバに保存した遮水シート図面上に色別した検査済箇所と不具合箇所を見える化し,リアルタイム確認を可能とした。検査箇所の重複や検査漏れを防止するとともに,手作業で行っていた検査記録作業の効率化を図ることができる。 ⑤触媒添加型ポリウレタン系止水材「NLクイック」を開発 地下のコンクリート構造物に生じた漏水を短時間かつ確実に抑える止水材「NLクイック」を,ピングラウト協議会とともに開発・実用化した。NLクイックは,加水反応型ポリウレタン樹脂に専用触媒を添加した止水材で,触媒量で反応時間を制御することができるため,漏水状況に応じた使い分けが可能となり,止水工事の生産性向上が期待できる。今後,ピングラウト協議会会員企業への展開・普及を進め,インフラ構造物の長寿命化への貢献を目指す。 (3)環境・設備技術①CO2フリー水素の利用実証「ゼロエミッション・水素タウン連携研究室」を設立 建物や街区の低炭素化,災害に強いまちづくりを目指して,産業技術総合研究所とともに「清水建設‐産総研 ゼロエミッション・水素タウン連携研究室」を設立した。産総研の水素吸蔵合金を核とした水素貯蔵技術と当社のエネルギーマネジメント技術の融合によるイノベーションを推進し,CO2フリー水素の地産地消を狙った水素エネルギー利用システムの実証を通じて,ゼロエミッション・水素タウンの構築を目指す。 ②AIによるサーバ室管理システム「SMTクラウド」を開発・事業化 サーバ室の温度環境制御をクラウドからリアルタイムで行うサービス「SMT(Smart Management Technology)クラウド」を,三谷産業㈱と共同で開発した。本サービス導入によって最大25%程度の省エネ効果が見込まれるとともに,温度環境を遠隔から見える化することで管理業務の大幅削減を実現した。また,空調制御機能の大部分をクラウドに集約しAIを活用することで,サーバ室の運用変更や空調機器更新に伴うシステム調整にも速やかに対応することができる。 ③3DモデルによるZEBシミュレーションツール「ZEB Visualizer」を開発 ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)実現に向けて,施設の省エネルギー性能をシミュレーションするコンピュテーショナル・デザインツール「ZEB Visualizer」を開発・実用化した。本ツールを使うことで,従来手法では困難であった設計初期段階における性能評価指標の算出を迅速に行うことができる。設計建築物の一次エネルギー消費量を計算し,ZEBの達成度合いを確認しながら,複数のデザイン案を繰り返しシミュレーションすることで提案の最適化が可能となる。 ④病院物流動線計画支援システム「サプライくん」を開発 病院内の複雑な物流動線をわかりやすく見える化する病院物流動線計画支援システム「サプライくん」を開発・実用化した。当社が培ってきた病院運営経験に基づくノウハウを活かし,医療材料,薬剤,リネンなどの物品カテゴリー別に,搬送の時間帯や頻度などをデータベース化し,標準的な院内物流方式をモデルとして初期設定することで,簡単な操作で短時間に物流動線を評価・見える化できる。今後,本技術とBIMとの連動を目指すとともに,コンサルティング業務を積極的に展開していく。 (4)新領域技術①次世代の素材「ロジックス構造材」の産学共同研究開始 鉄筋コンクリートに代わる新素材「ロジックス構造材」の開発を目的に,北海道大学と次世代高性能材料に関する産学共同研究に着手した。コンクリートに生じるひび割れや鉄筋の腐食など,これまで解決が困難であった鉄筋コンクリート構造物の問題点を克服する新素材を開発する。2021年3月末までの第1フェーズでは,コンクリートの分子(ナノ)レベルから構造体(マクロ)レベルにいたる各レベルで生じる化学・物理現象を統合して,時間の経過とともに変化する鉄筋コンクリートの物性をシミュレーションする技術を構築し,続く第2フェーズではロジックス構造材の開発を具体化させる予定である。 ②自動運転車両の安全・効率的な走行を支援する施設側システムの実証開始 完全自動運転技術を導入した施設・街区内移動システムの構築を目指し,自動運転車両の安全かつスムーズな走行を施設側からサポートする管制・監視システムを構築,システムの実効性を検証する実証実験に着手した。敷地内での自動運転の鍵となる高精度三次元マップを整備するとともに,構内建物群のBIMデータの施設情報と自動運転車両の位置,走行状態などの情報を一元管理する。今後は,車両とエレベーターの統合制御技術や,歩行者ナビゲーションシステムとの連携技術などの開発・実証実験にも取り組む。 ③スリム耐火ウッドの高性能化と適用 優れた耐火性能を備えたスリムな木質柱「スリム耐火ウッド」の2時間耐火仕様について,国土交通大臣認定を取得した。スリム耐火ウッドは,競合製品より20%以上細いことを特長として菊水化学工業㈱と共同開発した。2時間耐火認定取得により,最大14階建ての建築物の木質柱として使用可能となる。あわせて,スリム耐火ウッド柱と鉄骨梁を接合した木質ハイブリッド架構「シミズハイウッド」の2時間の耐火性能も独自に実施した耐火実験により確認し,名古屋市内に建設する中層集合住宅に初適用した。 ④木目調打放しコンクリートへのアート型枠の適用 1,000㎡を超える杉板型枠による木目調打放しコンクリートの施工に,東洋アルミニウム㈱と共同開発した超撥水型枠「アート型枠」を適用した。近年,ニーズが高まっている木目調コンクリートにおける施工上の課題である,コンクリート表面の気泡痕や型枠付着を,蓮の葉の表面機構を模した超撥水層によって抑制する。アート型枠の製作コストは通常に比べて増加するものの,表面仕上げ工程の大幅削減により吸収し,トータルコストは同等以下となることを確認した。
FY2018|4,768 文字
5 【研究開発活動】 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は111億円であり,うち当社の研究開発費は109億円である。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部,土木総本部等の技術開発部署で行われており,その内容は主に当社建設事業に係るものである。 当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。 (1)生産技術・i-Construction①次世代型生産システム「シミズ・スマート・サイト」 建築工事現場の生産性向上,苦渋・反復作業の軽減,検査・管理業務の高効率化を目的に,BIMを核とする情報化施工により,最先端技術を搭載した自律型ロボットと人が協調しながら工事を進める次世代型生産システム「シミズ・スマート・サイト」を構築した。シミズ・スマート・サイトは,水平スライドクレーン「Exter」,柱溶接ロボット「Robo-Welder」,天井や床材を施工する多能工ロボット「Robo-Buddy」,水平搬送ロボット「Robo-Carrier」で構成されている。各ロボットは,自己位置を認識しながら現場内を移動し,自律的に動作する。稼働状況や作業結果はリアルタイムに記録・蓄積され,ロボットを適用する工種において70%以上の省人化を目指す。②世界初の水平スライドクレーン「Exter」 建設現場の自動化,省力化を目指して開発を進めている次世代型生産システム「シミズ・スマート・サイト」において揚重機能を担う,水平スライドクレーン「Exter」を開発した。Exterは,水平方向に伸縮するブームにより作業半径を自由に調整できる世界初の水平スライドクレーンであり,建物の頂部をすっぽり覆う全天候カバー内で効率よく稼働できる仕組みになっている。③プロジェクションマッピングで山岳トンネルの掘削管理 山岳トンネルの底盤コンクリートの施工効率化と安全性向上を目的に,三次元スキャナとプロジェクタを一体化し,プロジェクションマッピングにより底盤の掘削具合を可視化するシステムを開発した。トンネル底盤の三次元形状のデータ取得から,解析,照射までわずか1分程度で済み,掘削効率が格段に向上するとともに,足元が不安定な場所での作業がなくなるため作業の安全性も向上する。④木質構造の中大規模建築向けハイブリッド構法を開発 木質構造と鉄骨造,鉄筋コンクリート造の合理的な組み合わせを可能にしたハイブリッド木質構法「シミズ ハイウッド(Shimizu Hy-wood)」を開発した。公共建築物等木材利用促進法の施行や建築基準法の改正による木造規制の緩和などによって活性化しつつある市場に向けた技術として,木質構造を採用した中高層や大スパンの中大規模の耐火建築への適用が見込まれる。⑤コンクリートの施工性低下を抑制できる混和材「チキソリデュース」を開発 ポンプ施工時の圧送や,鉄筋間隙内への充填の妨げとなるチキソトロピーと呼ばれる性質を低減する混和剤「チキソリデュース」を㈱フローリックと共同で開発した。コンクリート静置時に生じるチキソトロピーが打ち込み中に発生すると,品質上の不具合や作業効率の低下につながる。チキソリデュースを練混ぜ直後のコンクリートに添加することでチキソトロピーの低減が図れ,施工性が著しく改善する。 ⑥タフネスコートの諸性能を全検証 コンクリート構造物の耐久性を向上させる「タフネスコート」の性能検証を完了した。これまでに確認した耐衝撃性能,剥落防止性能に加えて,保水性能,塩害・凍害防止性能を検証したことで,あらゆる工事に対応することが可能となった。 タフネスコートは,当社と三井化学産資㈱が2012年に共同開発した技術で,ポリウレア樹脂を構造物の表面に吹き付けるだけで済むため,工費を同等以下に抑えた上で工期を40~70%短縮できる。(2)防災・BCP技術①超高層ビルの長周期地震動用制振装置「シミズ・スイングマスダンパー」を開発 複雑な揺れが生じる超高層ビルの長周期地震動対策として,屋上設置型制振装置「シミズ・スイングマスダンパー」を開発した。超高層ビルでは地震時に,周期の異なる二通りの揺れが生じる場合があるが,屋上スペース,装置重量の制約から性能の異なる制振装置を複数設置することは困難である。シミズ・スイングマスダンパーは,制振装置全体の動きを内蔵する別の制振装置で制御することによって1台で二通りの揺れに対応でき,省スペース,軽量化に寄与する。②減衰性能が切り替わる可変減衰型「デュアルフィットダンパー」を開発 一つで中小地震から巨大地震にまで対応できる「デュアルフィットダンパー」をカヤバシステムマシナリー㈱と共同開発し,併せてその性能を認証する国土交通大臣認定を取得した。免震装置の減衰性能を決めるオイルダンパーのセッティングは,巨大地震に合わせると発生頻度の高い中小地震時の免震効果を損ない,中小地震に合わせると巨大地震時に免震装置の破損につながる可能性がある。デュアルフィットダンパーは,免震ビルの揺れ幅に応じて減衰性能が自動的に切り替わる機構により,幅広い地震において適切な免震効果を得ることができる。③「ダイナミックスクリュー」が制振ダンパー初の日本建築センター評定を取得 すでに13件の適用実績がある高性能制振ダンパー「ダイナミックスクリュー」が日本建築センターの評定を取得した。同評定は,ダイナミックスクリューの制振性能とそれを用いた建物の耐震設計手法の信頼性を認証するものであり,耐震設計手法を含めて制振ダンパーに付与されたのは今回が初めてである。評定取得によって同ダンパーに係る部分の設計審査が簡素化されるため,設計期間の短縮が見込まれる。④特定天井向けの落下防止対策「フェイルサポート工法」を開発 天井の落下防止機構を備えた特定天井向けの耐震改修工法「フェイルサポート工法」を開発した。既存天井の解体を最小限に抑えることで,工事期間中も施設の継続使用が可能で,短工期・低コストが実現できる。本工法は,既存吊り天井の後付け改修工法として,先に開発したグリッドサポート工法と併せて,日本建築総合試験所(GBRC)の建築技術性能証明を取得している。(3)環境・設備技術①建物付帯型の水素エネルギー利用システムが本格稼働 来るべき水素社会に対応する水素エネルギー利用システムの実現を目指し,建物付帯型のコンパクトで安全なシステムを産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所(FREA)内に建設し,実証運転を開始した。システム性能検証ならびにシミズ・スマートBEMSによる最適制御技術を確立し,2020年までに建物,街区への導入を目指す。②四国支店ビルが年間運用実績で「ZEB Ready」達成 2016年3月に完成した「清水建設四国支店ビル(香川県高松市)」が,稼働後1年間の運用実績において,経済産業省が定める省エネビル基準「ZEB Ready」に相当するエネルギー削減率を達成した。当ビルでは,2016年4月から2017年3月までの年間一次エネルギー消費量を,標準的な仕様の建物と比べて68.7%削減し,計画時の削減率目標を5.5%上回る省エネルギー性能を実現した。③再生医療用の細胞培養管理システムを開発 再生医療用の細胞加工・調製施設(CPF)における細胞培養管理システムを開発した。培養作業プロセスは,タブレット端末に表示される作業指図とQRコードで管理され,各作業の実施記録は,時刻歴ならびにCPF内温湿度などの計測データとともに,自動的に作成・保存される。昨年度,技術研究所内に開設した「S-Cellラボ」において,製薬会社や医療機関との連携によるシステム運用を進める。④中間貯蔵施設向けの除去土壌改質材「SCカラッ土」を開発 高粘性土を砂状に改質する中性土壌改質材「SCカラッ土」を開発した。SCカラッ土は水を多く含む粘性の高い土壌に投入することで,土壌に含まれる植物根等の有機物を効率的に分離することができる。また,分別処理後の土壌の取り扱いが容易になるため,運搬・転圧・再利用作業の効率化も期待できる。福島県内の除染作業において除去土壌を貯蔵・保管する中間貯蔵施設での適用を視野に入れ,既開発技術を組み合わせた一気通貫の受入・分別処理システムを構築し,除去土壌処理の効率性・安全性を高める。(4)維持管理・FM技術①IoT基盤を活用し,オフィスの使われ方を見える化 人やモノの動きに関するデータを集積してビッグデータ解析を行う「施設内IoT基盤システム」を開発し,オフィスの使われ方を見える化する共同実証をNTTテクノクロス㈱と行う。オフィスのレイアウト変更や施設の改修など,オフィスビルの効率的な運営管理のあり方の提案に活用するとともに,人やモノの動きと連動した新たなビル管理システムの構築を目指す。②地方自治体向けの公共資産マネジメント支援ツールを開発 地方自治体による公共資産マネジメント計画等の策定支援を目的に,公共施設・インフラ統合評価システム「パブリック・アセット・シミュレーター(Public Asset Simulator:PAS)」を㈱ピリカと共同で開発した。PASは,公共サービスの基盤となる道路インフラのネットワーク分析をベースに公共資産の価値を評価するもので,個別施設の利用度・劣化度の評価に留まらず,アクセス方法等も含めた利用者視点に近い資産評価が可能となる。③建物維持管理支援システム「s-BMマスター」を開発 建物竣工後の維持管理業務の効率化を目的とした建物維持管理支援システム「s-BMマスター」を㈱シミズ・ビルライフケアと共同で開発した。s-BMマスターは,設備機器台帳をベースに竣工図書や修繕・改修記録,維持保全計画等の電子データを連動させ,ビル管理業務に必要な建物情報を一元化したシステムであり,不具合発生時の迅速な初期対応などに効果を発揮する。④隠ぺい空間を手軽にくまなく撮影できるカメラ架台を開発 天井裏や床下などの隠ぺい空間を手軽にくまなく撮影できる照明付き全方位撮影カメラ架台「PanoShot R」を㈱和興計測,㈲岩手電機製作所,㈲津田山製作所と共同で開発し,販売を開始した。自撮り棒に着脱可能な照明付きの円筒形架台で,全方位撮影カメラ「RICOH THETA(㈱リコー製)」をセットして使用する。宅建業法改正に伴う診断需要に対応する検査支援装置として,大きな潜在需要が想定される。⑤健康で快適なオフィス環境の普及に向けて,アライアンスに参画 健康・快適性の観点から建物・室内環境を評価する「WELL認証(WELL Certifications)」の取得推進に向けたグローバル・コーポレート・アライアンスに参画した。WELL認証制度は米国DELOS社が創設した,健康・快適性に焦点を当てた世界初の建物・室内環境評価システムであり,2014年の認証開始以降,米国を中心に認証登録件数が急拡大している。日本においても,従業員の健康保持・増進に企業が主体的に関与する健康経営が推進される中,今後の普及が見込まれる。
FY2017|4,821 文字
6 【研究開発活動】 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は101億円であり,うち当社の研究開発費は99億円である。研究開発活動は当社の技術研究所と事業部門の技術開発部署で行われており,その内容は主に当社建設事業に係るものである。 当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。 これまでの研究開発の成果として,地震動予測で日本建築学会賞(論文)を,液状化対策技術で日本建築学会賞(技術)を受賞した他,土木学会,日本火災学会,日本建築仕上学会,日本風工学会より種々の賞を受賞した。 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。 (1)生産技術・i-Construction①屋内位置情報を基盤とした現場情報共有システムを開発 建設現場における作業関係者間のコミュニケーション効率の向上を目的に,屋内位置情報を基盤とした現場情報共有システムを,国際航業㈱と共同開発した。現場内に設置した測位インフラから現場作業者の位置情報を取得し,作業者がその場所で必要とする施工管理情報をスマート端末にプッシュ配信する。②環境負荷の少ない解体工法「シミズ・クールカット」を本格適用 環境負荷の少ない解体工法「シミズ・クールカット(2013年:㈱コンセックとの共同開発)」を本格適用した。シミズ・クールカットによって,解体に伴う振動がほぼゼロ,敷地境界での騒音は従来工法の3/4程度(85dB→63dB),粉じん量は10%以下となることを確認した。③200㎏クラスの重量鉄筋を楽に運べるアシストロボを開発 重量鉄筋の配筋作業をアシストするロボットアーム型の作業支援ロボット「配筋アシストロボ」を,アクティブリンク㈱※,㈱エスシー・マシーナリと共同開発した。従来,6~7人を要していた重量200㎏クラスにもおよぶ重量鉄筋の配筋作業を,1/2程度に省人化できる。 ※アクティブリンク㈱は2017年4月1日に社名を㈱ATOUNに変更した。④ICTを活用したダムコンクリート締固め管理システムを開発 バイブレータ付きバックホウ(バイバック)による,ダムコンクリートのICTを活用した締固め管理システムを開発した。3Dスキャナと油量センサでコンクリート打設面の平滑度評価を,バイブレータの作動油量で締固めの完了判定を行う。締固め管理を定量的に行うことが可能となり,ダムコンクリートの一層の品質向上を図る。⑤「山岳トンネル三次元前方予測・探査システム」を開発 切羽前方30~50m先までの地山性状を三次元で予測・見える化するシステム「山岳トンネル三次元前方予測・探査システム」を開発・実用化した。トンネル掘削時に打設するロックボルトの削孔エネルギーデータで切羽前方の地山性状を予測することで,山岳トンネル施工の効率化と安全性向上を図る。⑥日常探査が可能な切羽前方探査システム「S-BEAT」を開発 トンネル掘削振動の反射波を利用して,掘削作業を中断することなく,切羽前方50~100m先までの地山状況を三次元的に探査するシステム「S-BEAT」を開発した。掘削作業に使用する資機材を探査に利用するため導入が容易で日常的に使用でき,山岳トンネル施工のさらなる生産性向上が期待できる。⑦コンクリートの充填状況を予測する三次元シミュレーションシステムを開発 型枠内へのコンクリートの充填状況を予測する三次元シミュレーションシステムを開発した。高密度配筋となる高架橋などの土木構造物を対象に,最適なコンクリート材料・配合,施工方法などの組合せを施工計画に反映することが可能になる。 ⑧亀裂から出る高水圧の湧水を抑制する技術を開発 岐阜県瑞浪市にある瑞浪超深地層研究所において,高水圧の湧水を抑制するグラウチング技術を,日本原子力研究開発機構と共同開発した。深度500m水平坑道で,グラウチングによる湧水抑制技術を実施した結果,実施しない場合の予測値に対して湧水量を約1/100まで低減した。(2)防災・BCP技術①機器免震システム「安震スライダー」を開発・初適用 地震時に重要設備機器の安全性を向上させる機器免震システム「安震スライダー」を日本ピラー工業㈱と共同開発し,初適用した。安震スライダーは,2014年に両社で共同開発した立体自動倉庫向けの免震システム「ラックベーススライダー」をバージョンアップしたもので,軽荷重の機器に対応できることを特長とする。②高性能免震システム「マルチステップ免震」の適用実績が50万㎡突破 超精密環境生産施設・研究施設向け高性能免震システム「マルチステップ免震(2007年開発)」の適用実績が,延床面積50万㎡を突破した。マルチステップ免震は微振動抑制と地震対応の免震機能を兼ね備えた高性能免震システムであり,平常時には生産・研究施設の生産機能に影響を及ぼす微小な揺れを抑制,大地震時には被害を最小化し早期復旧に寄与する。③「1855年安政江戸地震」の震源と揺れを推定 近年の地震観測記録に基づき,歴史資料が残る首都直下地震の中で最大被害をもたらした「1855年安政江戸地震」の震源モデルと地震動を推定し,その特性を明らかにした。この震源モデルから推定される首都圏での地震動には,建物に大きな影響を与える周期1~2秒の揺れが卓越する特性があることが分かった。今後,この研究成果を都心部での超高層建物等の耐震設計に反映していく。④「ちきゅう」の断層掘削試料の分析と動力学解析による南海トラフ地震での断層すべり量の定 量的評価 地球深部探査船「ちきゅう」により採取された日本海溝と南海トラフのプレート境界断層の試料を大阪大学,海洋研究開発機構高知コア研究所,カリフォルニア工科大学,国立研究開発法人建築研究所,東京大学地震研究所,京都大学防災研究所と共同で分析し,2011年東北地方太平洋沖地震での海溝付近の巨大すべり約80mを再現した。また,南海トラフ地震での海溝付近の断層が,約30~50m程度すべる可能性を世界で初めて明らかにした。(3)環境・設備技術①ニーズを先取りし,再生医療エンジニアリングを展開 再生医療の普及に伴う細胞培養施設の建設ニーズに対応すべく,細胞加工・調製施設「S-Cellラボ」を当社技術研究所内に建設した。S-Cellラボは,培養の過程で細胞に影響を与える種々の環境要因をリアルタイム・モニタリングし,細胞培養環境を最適化する高度な環境制御機能を備える。今後,この研究施設の中で実際に各種細胞を培養しながら最適な培養環境を究明し,再生医療エンジニアリングに展開する。②病室内の不快な臭いをいち早くキャッチし,換気で解消する「スメルケア」を開発 病室内の快適性の向上を目的として,病室向けの臭気制御システム「スメルケア」を,新コスモス電機㈱と共同開発した。スメルケアは,オムツ交換や食事に伴う臭気を半導体センサにより拡散前に素早く感知し,給排気ファンを臭気濃度に合わせて即時に制御する。③置換空調技術を応用したクリーン空調システムを開発 クリーンルームの生産効率向上と省エネルギーを両立する,クリーン空調システム「置換クリーン空調」を開発した。清浄冷気をクリーンルームの床面に向って吹き出し,生産装置などの内部発熱により温まった室内空気と置換することで,室内空調と作業エリアの清浄化を行う。天井部に空調設備を設置する必要がないため階高を最大限活用でき,より大型の生産装置の導入が可能になる。 ④「再生の杜」ビオトープによる生物多様性への貢献を確認 「再生の杜」の10年間にわたるモニタリングによって,都市部の人工的な緑地が生物多様性を高めることを確認した。2006年4月に当社技術研究所内に建設した都市型の大規模ビオトープ「再生の杜」において,生物相や植生環境の継続的なモニタリングを実施してきた。その結果,都市部に構築された人工的な緑地が,生物生息環境を着実に形成し,生物多様性向上に寄与していることが確認できた。⑤移動式の温熱・風環境計測システムを開発 都市の屋外温熱環境を簡便に計測できる,移動式の環境計測システムを開発・実用化した。このシステムは,エリアの温熱環境を計測する「エリア計測車」と局地の温熱や風環境を計測する「スポット計測車」から構成され,ヒートアイランド現象等により酷暑化が進む都市において,酷暑緩和策が必要な地点や原因の特定に役立てる。実用化第一弾として,夏季に都心で計画されているマラソンコースの温熱環境を,東京大学と共同で計測した。⑥ベトナムの枯葉剤汚染土壌の無害化 ベトナム政府機関の要請に基づき,ダイオキシン汚染土壌,いわゆる枯葉剤汚染土壌に対する当社土壌洗浄技術の有効性確認実験を実施した。その結果,同国汚染土壌の大半を占めるとみられる汚染レベル20,000pg-TEQ/gの汚染土壌におけるダイオキシン除去率は95%に達し,洗浄後は7割程度が再利用可能な1,000pg-TEQ/g未満の浄化土に再生できることを確認した。今後,パイロットテストの実施や大規模な浄化事業の実施などの可能性について広く検討を進めていく。⑦埋め立て処理された石炭灰(エージング灰)を再生資材化 石炭火力発電所から発生する石炭灰(新生灰)のうち,処分場に埋め立てられた石炭灰(エージング灰)のリサイクル技術を恵和興業㈱,東北電力㈱と共同開発した。エージング灰にセメントと水を混合することで,砂粒状のリサイクル資材として,路盤材,盛土材に活用する。東北地方の震災復興事業での活用を目指し,自治体,省庁など関係機関に提案していく。(4)ICT・AI活用技術①車イス利用者や視覚障がい者などに対応した屋内外ナビゲーション・システムを開発 インクルーシブなまちづくりを支援する屋内外ナビゲーション・システムを,日本アイ・ビー・エム㈱東京基礎研究所と共同開発した。汎用のスマートデバイスを用い,位置測定機能・音声ナビゲーション機能・対話機能を備えたスマートフォン・アプリ,空間情報データベース,位置情報インフラが協調して,屋内外を継ぎ目なくナビゲーションすることで,車イス利用者や視覚障がい者などの円滑な移動をサポートする。 さらに,日本橋室町地区を対象として,バリアフリー・ストレスフリーな街づくりの実現に向けた公開実験を,日本アイ・ビー・エム㈱,三井不動産㈱と共同実施した。②名古屋大学と共同でシールド機操作のAI化に挑戦 熟練オペレータの経験や技量に基づくシールド機操作のAIによるモデル化を,名古屋大学と共同で実施している。これまでに構築した操作モデルで,オペレータの操作行動を7割近く再現できており,これを発展させてシールド機操作へのAI活用を目指す。③ディープラーニングで建物の電力需要を高精度で予測するシステムを開発 AI技術による建物電力需要の高精度予測システムを,中部大学の協力を得て開発した。日々の電力需要と気象データ,設備・施設利用状況等の関係を蓄積,AIを使ってピーク電力需要の予測を行った。1年分のデータで検証した結果,従来の電力需要予測システムに比べて3.6ポイントの精度向上を実現し,予測誤差が5.7%に収まることを確認した。本技術の活用により,電力関連事業ならびに施設のエネルギー運用の効率化が見込まれる。
FY2016|4,578 文字
6 【研究開発活動】 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は85億円であり,うち当社の研究開発費は84億円である。研究開発活動は当社の技術研究所等で行われており,その内容は主に当社建設事業に係るものである。 当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。 (1)生産技術①高いコンクリート品質を実現する「ゼロシュリンク」の性能を確認 超低収縮コンクリート「ゼロシュリンク」について,優れたひび割れ防止効果が得られることを実証した。いすゞ自動車㈱新研修センター(いすゞものづくりサービストレーニングセンター)の擁壁へ適用し,半年以上の経過時点においても擁壁表面のコンクリート品質に変化が生じていないことを確認した。②コンクリート表層品質を向上する「アート型枠」を開発 コンクリートの表層品質を向上させる超撥水型枠「アート型枠」を東洋アルミニウム㈱と共同開発した。水を著しくはじく“蓮の葉”の表面機構を模したバイオミメティクス(生物模倣)技術を応用し,コンクリート表面の美観を損なう気泡跡や色むらを大幅に抑制する効果を確認した。③「タフネスコート」によるトンネル覆工コンクリートの剥落防止効果を検証 コンクリート構造物の耐衝撃性や耐久性等を向上させる技術「タフネスコート」について,トンネル覆工コンクリートの剥落防止工法としての有効性ならびに実工事への適用可能性を,(公財)鉄道総合技術研究所,三井化学産資㈱と共同で検証した。④掘削サイクルタイムを短縮できる「急速ズリ処理システム」を開発 トンネル工事のズリ処理時間を大幅に短縮する「急速ズリ処理システム」を開発・実用化した。発破工法による長大山岳トンネル工事の工期を短縮できる。当社が兵庫県で施工中の三谷トンネルに適用し,ズリ処理時間33%,掘削サイクルタイム11%の短縮を確認した。⑤気象予報技術を応用した「地下水流動解析技術」を開発 大規模地下構造物等の建設時に得られる地下水観測データを継続的に活用し,予測精度を向上させる地下水流動解析技術を開発した。観測データによって解析モデルを自動修正する,気象予報分野で発展してきた「データ同化手法」を地下水流動解析に応用した。(2)ICT活用技術①掘削機の打撃振動を利用した「切羽前方探査システム」を開発 山岳トンネル工事で掘削機による打撃振動の前方反射波を捉え,地質の変化を予測する「切羽前方探査システム」を開発した。切羽を安定させるために打ち込むロックボルトを受信センサーとし,振動の反射波が戻ってくるまでの時間を計測する。②シールド機外周部の砂層を高精度に検出する「砂層探査システム」を開発 シールド機外周部の砂層を高精度に検出する「砂層探査システム」を応用地質㈱と共同で開発した。シールド機のカッターヘッド側面に装備した「比抵抗センサー」を用いて,シールド掘進中に掘削断面全周の地盤状況をリアルタイムで把握できる。③タブレット端末による「地下埋設物可視化システム」を開発 地下埋設物の存在を適切に把握する「地下埋設物可視化システム」を㈱菱友システムズ等と共同で開発・実用化した。現地の風景画像と地下埋設物のデータを重ね合わせて“見える化”することで,地下掘削工事によるライフラインの損傷を防止できる。④「覆工コンクリートの表層品質管理支援システム」を開発 トンネルの覆工コンクリート表層品質を管理する支援システムを開発した。コンクリート表層を撮影したデジタル画像を解析し,変状を示す展開図を作成する。個々の変状について従来の1/2程度の時間で評価できる。⑤コンクリートの変状を把握する「画像モニタリングシステム」を開発 タブレット端末の撮影機能を使用して,コンクリートのひび割れや剥落等の変状を点検できる「画像モニタリングシステム」を㈱菱友システムズと開発した。画像データはインターネットで確認でき,専門技術者が現場に行くことなく変状の進行をモニタリングできる。⑥視覚障がい者向けの音声による「屋内外歩行者ナビゲーション・システム」を開発 屋内外を区別なく案内・誘導できる,視覚障がい者向けの音声による「屋内外歩行者ナビゲーション・システム」を開発し,技術研究所内に常設体験施設“親切にささやく場”を開設した。日本IBM東京基礎研究所の技術協力を受け,2018年の実用化を目指す。(3)防災・BCP技術①「スリム耐火ウッド」が1時間耐火性能の認定取得 菊水化学工業㈱と共同開発した「スリム耐火ウッド」について,その耐火性能を証明する国土交通大臣認定を取得した。異なる耐火材料を組み合わせることで,スリムでありながらも1時間耐火を実現した。②地震後の建物安全性を評価する「安震モニタリングSP」を開発 地震発生後即時に建物の安全性(継続使用の可否)を高精度に評価するシステム「安震モニタリングSP」を開発し,(一財)日本建築総合試験所から評価性能を認定する建築技術性能証明を取得した。プロトタイプは,すでに7棟のオフィスビルに導入されている。③特定天井対応の耐震天井構工法「リニアブレース」を開発 特定天井に対応した新たな耐震天井構工法「リニアブレース」を開発した。斜め部材(ブレース)で躯体と天井ボードを直接連結し,建物の揺れと共振しにくい剛性の高い吊り天井をローコスト・短工期で構築できる。本構工法は,(一財)日本建築センターから一般評定を取得している。④ローコスト液状化対策「グラベルサポート工法」の適用拡大 小規模施設・外構向けローコスト液状化対策工法「グラベルサポート工法」の効果とコストパフォーマンスが高く評価され,適用実績が20件を超えた。(4)環境・eco技術①四国最高クラスのecoBCPオフィス「清水建設四国支店新社屋」が竣工 「清水建設四国支店新社屋」が竣工した。経済産業省が求める“ZEB Ready(50%以上のエネルギー削減)”を上回る省エネ性能と,南海トラフ巨大地震を想定した事業継続性能を備え,当社が提唱する“ecoBCP”を実現している。②米国ニューヨーク州でZEB実証を開始 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と清水建設㈱,Shimizu North America LLCは,ニューヨーク州立工科大学(SUNY Poly)と共同で,2015年に竣工したSUNY Poly内のZEN(Zero Energy Nanotechnology)ビルへの省エネルギー技術の導入を完了し,ZEB(Zero Energy Building)実現に向けた実証試験を開始した。③中小規模オフィス向けの天井輻射空調システム「S-ラジシステム ライト」を開発 中小規模オフィス向けの天井輻射空調システム「S-ラジシステム ライト」を開発した。天井内部に設置した冷却装置で生成した冷気によって,静粛かつ温度ムラの少ない快適な室内環境を創出,さらに,ビル全体で15%程度の消費エネルギー削減効果がある。④建物の自然換気性能を評価する「VisualNETS-3D」を開発 設計初期段階で建物の自然換気性能を評価する3次元シミュレーションシステム「VisualNETS-3D」を開発・実用化した。建築物の実態に即した効果的・経済的な自然換気方式が提案でき,空調に要するエネルギーを最大20%程度削減できる。⑤放射線医療施設の高エネルギー化に対応した遮蔽計算手法を開発 高エネルギー放射線医療施設の放射線遮蔽性能を高精度に解析するために不可欠な「光核反応データベース」を開発した。このデータベースを活用することで,リニアック(直線加速器)室や粒子線治療室等における安全性と経済性を両立した遮蔽設計が可能となる。⑥騒音対策効果をVR技術で再現できる「騒音シミュレーションシステム」を開発 バーチャルリアリティ(VR)技術を活用し,工事現場等から発生する騒音とその対策効果が体感できる「騒音シミュレーションシステム」を開発した。騒音源とその発生位置,騒音対策案を入力するだけで,任意の地点で聞こえる騒音を再現できる。⑦ルーバーによる風切音を防止する「ルーバーサイレンサー」を開発 集合住宅の手摺やオフィスビルの目隠し壁等に用いるルーバーの風切音を防止する消音材料「ルーバーサイレンサー」を開発・商品化した。技術研究所の風洞実験棟を使ったルーバーの風切音に関するコンサルティング業務の受託を始める。⑧汽水域でも緑化できる植生浮島を開発 東京都中央区の協力を得て同区佃の石川島公園船溜まりに植生浮島を2010年から設置し,汽水域における緑化性能と耐久性に関する実証実験を継続的に実施した。19種類の在来種による長期的な緑化を実現するとともに,カルガモの産卵や昆虫の生息などを確認した。(5)エネルギー技術①水素関連施設の爆発影響を予測するシミュレーションシステムを開発 水素関連施設の安全性と経済性の向上を目的に,水素ガス爆発の影響を予測するシミュレーションシステムを開発した。このシステムにより,安全性と経済性を備えた施設の意匠・構造計画を策定することが可能となる。②建物付帯型の水素エネルギー利用システムの開発に着手 水素社会の早期実現に向けて,国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究として,施設内で使用する太陽光などの再生可能エネルギーの余剰電力を水素に変換して貯蔵し,必要に応じて放出・発電する水素エネルギー利用システムの研究開発に着手した。③福島復興・浮体式ウィンドファーム実証研究事業のうち第2期工事 「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」の第2期実証研究事業のうち,福島県小名浜港における7MW油圧ドライブ型浮体式洋上風力発電設備(世界最大規模)の組立作業がこのたび完了し,実証研究実施海域への曳航・設置作業を開始した。(6)震災復興支援技術①コンクリート放射化レベルを評価する「廃炉ソリューションシステム」を開発 原子力発電所の原子炉建屋に使われているコンクリートの放射化レベルを高精度に評価する廃炉ソリューションシステムを開発し,日本原子力発電㈱東海発電所の廃炉検討に適用した。今後,国内外の電力会社を対象とした廃炉エンジニアリング業務の受注活動に活用する。②除去土壌等のトレーサビリティを確保する「シミズFITシステム」を構築 除去土壌等のトレーサビリティや輸送車両の運行状況を総合的に管理できる「シミズFITシステム」を㈱エジソンと共同で構築し,当社JVが実施した除去土壌等のパイロット輸送(環境省発注)に適用し,安全・確実な輸送管理とともにデータ処理業務の大幅な省力化を実現した。