事業の内容
カイオム・バイオサイエンスは、主に抗体医薬品の研究開発を行う企業です。体内の免疫システムを利用した抗体医薬品は、特定の病気の原因だけを狙い撃ちするため、副作用が少なく高い治療効果が期待されています。同社は、治療法がまだ確立されていない病気(アンメットニーズ)に特化し、独自の抗体作製技術(ADLib®システムなど)を用いて抗体医薬品候補を開発し、製薬会社に提供することで収益を得ています。また、製薬会社や研究機関向けに抗体作製などの研究支援サービスも提供しています。
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FY2025|7,958 文字|出典 docID: S100XUJT
3【事業の内容】1.事業環境(1)当社が研究開発を手掛ける抗体医薬品 ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体というタンパク質を作る能力(抗原抗体反応)が備わっています。これは免疫と言われる身体を守る防御システムの一つです。こうして体内で作られた抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができます。この抗体というタンパク質を医薬品として体の外から投与するものが抗体医薬品です。従来の低分子医薬品では、正常な細胞にも作用することで副作用を引き起こすこともありますが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞だけが持っている抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。 現在、世界で承認されている抗体医薬は100品目を超えており、がんや自己免疫疾患の領域では目覚ましい治療効果をもたらしたものもあります。しかしながら、膵臓がん、肺がん、アルツハイマー病、糖尿病合併症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等、未だに治療満足度、薬剤貢献度が低い疾患が残されており、また、既存の抗体治療薬よりも優れた抗体に対するニーズも存在します。当社は、自社の技術プラットフォームを初めとする抗体・タンパク質周辺技術を最大限に活用して、そのようなアンメットニーズ(*)の高い分野に対する抗体創薬に取り組んでおります。 <抗原抗体反応> (2)抗体医薬品市場 抗体医薬品は、がんや自己免疫疾患等を中心に医療の現場で処方されており、近年の全世界医療用医薬品の市場においては抗体薬品を中心とするバイオ医薬品処方箋薬のシェアは3割を超え、売上高の上位100品目の半数以上を占めるまでになっております。また、抗体薬物複合体(ADC(*))やバイスペシフィック抗体(*)に代表される多価抗体などの次世代型抗体については、従来よりも有用性を高めた医薬品としての開発が進められ販売されるに至っており、今後も抗体医薬品市場の一層の拡大が期待されております。(出典:Evaluate World Preview 2022) 2.当社のビジネスモデル(1)経営理念 当社は、「医療のアンメットニーズに創薬の光を」というミッションのもと、「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」という経営ビジョンを掲げ、アンメットニーズの高い疾患領域に対する抗体創薬と創薬支援を事業の基本として、成長性と安定性を兼備した経営を目指しております。 (2)ビジネスモデル 当社は、独自の抗体作製技術(ADLib®システム、Tribody®、DoppeLib™)や創薬力を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を研究開発する「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しております。「創薬事業」では、抗体医薬品の基礎・探索研究(*)、前臨床段階を主な事業領域として、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究を行い、医薬候補品を製薬企業等に導出(*)します。また、当社のパイプライン(*)のうちCBA-1205やCBA-1535については、当社の収益性を最大化するため、初期臨床試験を実施したのちに導出を行います。また、「創薬支援事業」では、製薬企業や診断薬企業、アカデミア等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有する抗体作製技術を用いた抗体作製サービスの提供、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務の提供を行います。このように、当社は拡大する抗体医薬品市場において製薬企業等に製品やサービスの提供を行うことを主たる事業としており、これにより当社は、契約一時金、マイルストーン(*)、ロイヤルティ(*)、受託サービス料等の対価を企業等から受け取り収益を獲得します。 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 <当社の収益モデル・事業系統図> <事業系統図(創薬事業)> <事業系統図(創薬支援事業)> (3)当社の基本戦略 当社は、当社が保有する複数の抗体作製技術を用いて標的抗原に対する多様な抗体を作製し、リード抗体(*)を取得することで、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心とした、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品を生み出す、No.1ベンチャー企業を目指します。 (4)当社の基本戦略を遂行するための3つの強み・医薬品候補抗体を継続的に創出するための独自のADLib®システム、Tribody®、DoppeLib™等の複数の抗体作製技術、タンパク質調製や抗体エンジニアリングに関する技術やノウハウ等からなる技術プラットフォームを保有していること・臨床開発機能を有し、自社による創薬テーマの設定から非臨床パッケージの構築、開発戦略および薬事戦略の立案、ならびにCMC(*)開発によるCMO(*)マネジメントなど、医薬品候補の創製から初期臨床開発までを最速で実施できる体制を確立していること・専門性の高い人材が持つネットワークを通じて、当社の研究開発の推進に最適なリソースや資源を獲得できること 3.事業内容(1)創薬事業 創薬事業は、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究と開発(共同開発を含む)を行い、その研究成果物であるリード抗体等の知的財産を製薬企業等に実施許諾し、契約一時金、マイルストーンおよびロイヤルティ、並びに共同開発等に係る収入等を獲得する事業です。 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、前臨床開発、臨床開発、申請・承認、製造・販売のプロセスがありますが、当社の創薬事業においては、基礎・探索研究段階から前臨床開発および初期臨床開発段階までの抗体医薬品開発の上流工程を主な事業領域としております。本事業においては、自社で開発候補抗体(ヒト化抗体(*)、ヒト抗体)の前臨床データパッケージまでを作成し、早期導出を図ることを基本戦略としますが、CBA-1205やCBA-1535のように特定のプログラムにおいては抗体の価値を高め、収益性の向上が期待できる自社での初期臨床開発も行ってまいります。 また、当該事業領域におけるパイプラインは、自社の抗体作製技術等を用いた創薬研究活動や外部からの新規パイプラインの導入(*)によって、拡充を図ってまいります。 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。 CBA-1205は、肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現している抗原DLK-1というタンパク質に選択的に結合する遺伝子組換えヒトIgG1型モノクローナル抗体(*)です。糖鎖改変技術によって抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性(*))を増強させたファースト・イン・クラス(*)抗体で、DLK-1を発現するがん細胞を移植したマウスに対して強力な抗腫瘍活性を示します。DLK-1は、幹細胞(*)や前駆細胞(*)のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかにされていましたが、肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においてもDLK-1が発現しており、その増殖に関与していることが明らかにされています。そのためDLK-1はがん治療における新たな標的分子としての可能性が期待されています。 CBA-1535は3つの抗原結合部位を有する多重特異性抗体で、抗原結合部位の内の2つは多くの固形がんに発現がみられるタンパク質5T4に結合し、残りの1つが免疫細胞であるT細胞(*)上のタンパク質CD3に結合する、Tribody®技術を用いて創製されたT cell engager(*)というカテゴリに入る、がん治療用候補抗体です。患者さんが元来保有している免疫を司るT細胞の働きを活性化することで、がん細胞を攻撃します。想定される適応疾患としては、悪性中皮腫、小細胞肺がんや非小細胞肺がんなどのアンメットニーズが高い領域での開発が期待されます。 PCDC(*)は、幅広い固形がん(肺がん、膵臓がん等)で発現が確認されているCDCP-1というタンパク質をターゲットとし、結合特性等に基づく広い有効域・安全域が期待される抗体です。がん細胞上のCDCP-1に結合した後、細胞内に取り込まれやすい性質を利用して、抗体に薬物を結合したADC用途を中心とした開発が期待されます。 PTRY(*)は3つの分子を認識するTribody®技術を用いて創製したがん治療用候補抗体で、固形がんに発現が認められる「5T4」、免疫細胞であるT細胞上の「CD3」、免疫チェックポイント阻害に関与する「PD-L1」に結合するがん治療用の多重特異性抗体です。T cell engagerに加えて免疫チェックポイント阻害機能を加えることで従来のがん免疫療法では十分に効果が期待できなかった患者さんへの新たな治療薬となることを期待しています。また、複数の機能を一つの薬剤に持たせることで患者さんや医療現場の負担軽減、薬価抑制による医療経済への貢献にも有用な薬剤として期待されます。 PXLR(*)は、がん細胞により呼び寄せられる薬剤耐性環境の原因細胞である免疫抑制細胞を減少させ、薬剤耐性のがん微小環境を改善、再発抑制が期待される、がん治療用候補抗体です。 PFKR(*)はFractalkine (CX3CR1) receptorの機能阻害抗体であり、自己免疫性神経疾患等の病態進行を抑制することが期待されます。また、2024年11月に旭化成ファーマ株式会社(以下、旭化成ファーマ)との間で、ライセンス契約を締結いたしました。 また、当社では、自社単独または共同研究により新規のターゲットに対する複数の抗体創薬プロジェクトを推進しております。新規創薬プロジェクトの発足においては、大学・研究機関等から、従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手するなど、ターゲット(抗原)の獲得も積極的に行っております。それらの抗原に対する抗体が、疾患モデル動物などを用いた評価により、治療効果を有する事を確認した場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保した上で研究活動を推進いたします。また当社の創薬力を向上するため、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、当社が保有する抗体作製技術の改良や、創薬基盤技術における課題解決を図るなど技術革新にも取り組んでおります。 (2)創薬支援事業 製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有する抗体作製技術を用いた抗体作製サービス、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を提供することによってサービス料等の収入を獲得する事業です。<主なサービスの内容>サービス項目内 容タンパク質・抗原調製、抗体の発現精製抗体作製に必要な組換えタンパク質(抗原)や、研究開発用途の抗体などを細胞に発現させ、精製を行います。種類に応じた発現・精製方法を選び、純度や物性の分析を行います。安定発現細胞株作製安定的に組換えタンパク質(抗原や抗体)を供給できるように、遺伝子組換え技術を用いて、組換えタンパク質を効率よく発現する細胞株を作製します。ADLib®システム等による抗体作製ADLib®システムやハイブリドーマ法(*)といった抗体作製技術を用い、創薬研究に用いるモノクローナル抗体作製を行います。当社の抗体創薬の知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせた抗体作製プランを提案いたします。ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務当社で培ったADLib®システムの技術・ノウハウを活かし抗体の結合力(抗体親和性)を向上させることで、より薬効の高い抗体医薬の精製が期待できます。 4.当社の抗体作製技術(1) 抗体作製技術 当社は抗体作製技術のADLib®システムやTribody®作製技術など独自の抗体作製技術を保有し、また、汎用的な技術であるハイブリドーマ法などの複数の技術を用いて抗体作製を行っております。また、それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力を最大化してまいります。また、新たに多重特異性抗体作製技術であるDoppeLib™の開発も進めており、当社の抗体作製技術の強化にも努めております。 <抗体作製技術とその特徴>抗体作製技術技術の特性ADLib®システム・抗原があれば10日前後という短期間で直接ヒトIgG抗体が獲れる・自律的多様化という独創的な抗体ライブラリ(*)の特徴を生かし、抗原特異的抗体(*)の取得から抗体の高親和性化までを連続的に行うことが可能・動物免疫(*)と異なり、自己抗原への免疫寛容(*)の影響を受けないため、理論的にはあらゆる配列のタンパク質を認識する抗体を取得できる可能性がある Tribody®・3つ以上の異なる抗原結合部位を持つ抗体であるTribody®およびその発展型多重特異性抗体のデザイン・エンジニアリング・創薬開発を可能にする技術プラットフォームをいう・CBA-1535のように腫瘍細胞の近傍でT細胞を活性化することにより、がん細胞を叩くT cell engagerというカテゴリや、複数の疾患関連細胞を架橋することでがん以外の疾患の治療薬も設計可能ハイブリドーマ法・動物免疫による抗体作製法で、最もよく用いられる・手法が確立されており、医薬品化された実績も多い・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる DoppeLib™・2つの異なる抗原結合部位を持つ多重特異性抗体を迅速かつ網羅的にスクリーニングする技術・培養細胞表面上に多重特異性抗体を発現させるため、標的の組合せ、親モノクローナル抗体の最適組合せを効率的に評価できる技術・多重特異性抗体の探索研究において強力な課題解決手法となるものと期待 (2) 当社独自の抗体作製技術ADLib®システム① ADLib®システムの仕組み ニワトリのB細胞由来のDT40細胞(*)は、様々な種類の抗体を生み出すメカニズムを持っています。当社では薬剤処理により人為的に活性化させて、試験管内において短期間で多種多様なモノクローナル抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。そのライブラリの中からターゲットである抗原に特異的に結合する抗体を取得します。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。 <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図> ② ヒトADLib®システムについて ヒトADLib®システムは、遺伝子組換え技術によりDT40細胞のトリ抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に置き換えられており、ヒト化の工程を経ることなく、ヒト抗体を直接取得することができます。 <ヒトADLib®システムの概略> ③ 従来の抗体作製技術との主な違い ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。a.迅速な抗体取得 ADLib®システムでは、抗体セレクションの全工程を試験管内で実現したことにより、10日程度でターゲット特異的な抗体を判定することが可能で、他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。競争の激しい医薬開発の分野では、いち早い特許取得が重要であり、この点で他の方法に比べて短期間で抗体を作製できるADLib技術には大きなメリットがあります。b.従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得 ヒトを含む動物は、体内に入ってきた異物に対しては免疫反応(*)が起きて抗体を作りますが、がんの様に、自分を構成している成分が何かのきっかけにより過剰に体内で増えて病気を引き起こすような場合には、そもそも自身の体の成分なので異物とはみなされず、免疫寛容とよばれる仕組みにより抗体を作ることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を超えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であってもマウスで抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、生体外で抗体を作製するシステムなので、免疫寛容による制限を受けることはありません。 (3) 多重特異性抗体作製技術「DoppeLib™」 多重特異性抗体は、新しい作用機序に基づく治療用抗体設計を可能にするなど、近年急速に発展を遂げている新しい抗体モダリティの1つです。自由度高く抗体設計が可能なことから、標的の組合せ、親モノクローナル抗体の最適組合せなどについて、多サンプルを効率的に評価できるスクリーニング技術が求められます。当社は、迅速かつ網羅的に最適な多重特異性抗体取得を可能にする多重特異性抗体ハイスループットスクリーニング技術「DoppeLibTM」の研究開発を進めており、本技術は、多重特異性抗体の探索研究において強力な課題解決手法となるものと期待します。 5.特許ポートフォリオ(1)基盤技術に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況ヒトADLib®システムヒト抗体を産生する細胞当社日本・欧州・中国で成立。抗体の取得方法当社日本・米国・欧州・中国で成立。抗体可変領域の多様化を促進する方法当社日本・米国・欧州・中国で成立。 (2)リード抗体に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況CBA-1205in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む計7ヵ国で成立。がん治療用医薬(レンバチニブ併用)当社日本、欧州、中国を含む計4ヵ国で成立。米国他で出願済。がん治療用医薬(FGFR4阻害剤併用)当社PCT出願済抗体組成物の精製方法当社PCT出願済CBA-15355T4及びCD3に対する3つの結合ドメインを含む融合タンパク質当社 日本・米国・欧州・英国・中国を含む計10ヵ国で成立。PCDC抗CDCP1抗体当社日本、中国を含む計4ヵ国で成立。米国、欧州他で出願済。PTRY融合タンパク質イタリア CEINGE社当社PCT出願済PXLR抗ヒトCXCL1抗体公立大学法人大阪当社PCT出願済PFKR抗ヒトCX3CR1抗体国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター当社PCT出願済LIV-2008in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(ヒト化)当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む計10ヵ国で成立。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(マウス)当社(リブテックから承継)米国を含む計7ヵ国で成立。 BMAA(*)抗セマフォリン3A抗体、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療(公)横浜市立大学、当社 日本、米国、欧州で成立。
FY2024|7,630 文字|出典 docID: S100VI6N
3【事業の内容】1.事業環境(1)当社が研究開発を手掛ける抗体医薬品 ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体というタンパク質を作る能力(抗原抗体反応)が備わっています。これは免疫と言われる身体を守る防御システムの一つです。こうして体内で作られた抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができます。この抗体というタンパク質を医薬品として体の外から投与するものが抗体医薬品です。従来の低分子医薬品では、正常な細胞にも作用することで副作用を引き起こすこともありますが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞だけが持っている抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。 現在、世界で承認されている抗体医薬は100品目を超えており、がんや自己免疫疾患の領域では目覚ましい治療効果をもたらしたものもあります。しかしながら、膵臓がん、肺がん、アルツハイマー病、糖尿病合併症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等、未だに治療満足度、薬剤貢献度が低い疾患が残されており、また、既存の抗体治療薬よりも優れた抗体に対するニーズも存在します。当社は、自社の技術プラットフォームを初めとする抗体・タンパク質周辺技術を最大限に活用して、そのようなアンメットニーズ(*)の高い分野に対する抗体創薬に取り組んでおります。 <抗原抗体反応> (2)抗体医薬品市場 抗体医薬品は、がんや自己免疫疾患等を中心に医療の現場で処方されており、近年の全世界医療用医薬品の市場においては抗体薬品を中心とするバイオ医薬品処方箋薬のシェアは3割を超え、売上高の上位100品目の半数以上を占めるまでになっております。また、抗体薬物複合体(ADC(*))やバイスペシフィック抗体(*)に代表される多価抗体などの次世代型抗体については、従来よりも有用性を高めた医薬品としての開発が進められ販売されるに至っており、今後も抗体医薬品市場の一層の拡大が期待されております。(出典:Evaluate World Preview 2022) 2.当社のビジネスモデル(1)経営理念 当社は、「医療のアンメットニーズに創薬の光を」というミッションのもと、「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」という経営ビジョンを掲げ、アンメットニーズの高い疾患領域に対する抗体創薬と創薬支援を事業の基本として、成長性と安定性を兼備した経営を目指しております。 (2)ビジネスモデル 当社は、独自の抗体作製技術(ADLib®システム)をはじめとする複数の抗体作製技術を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を研究開発する「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しております。「創薬事業」では、抗体医薬品の基礎・探索研究(*)、前臨床段階を主な事業領域として、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究を行い、医薬候補品を製薬企業等に導出(*)します。また、当社のパイプライン(*)のうちCBA-1205やCBA-1535については、当社の収益性を最大化するため、初期臨床試験を実施したのちに導出を行います。また、「創薬支援事業」では、製薬企業や診断薬企業、アカデミア等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有する抗体作製技術を用いた抗体作製サービスの提供、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務の提供を行います。このように、当社は拡大する抗体医薬品市場において製薬企業等に製品やサービスの提供を行うことを主たる事業としており、これにより当社は、契約一時金、マイルストーン(*)、ロイヤルティ(*)、受託サービス料等の対価を企業等から受け取り収益を獲得します。 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 <当社の収益モデル・事業系統図> <事業系統図(創薬事業)> <事業系統図(創薬支援事業)> (3)当社の基本戦略 当社はADLib®システムをはじめとする複数の抗体作製技術を用いて標的抗原に対する多様な抗体を作製し、リード抗体(*)を取得することで、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心とした、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品を生み出す、No.1ベンチャー企業を目指します。 (4)当社の基本戦略を遂行するための3つの強み・医薬品候補抗体を継続的に創出するための独自の「ADLib®システム」をはじめとする複数の抗体作製技術、タンパク質調製や抗体エンジニアリングに関する技術やノウハウ等からなる技術プラットフォームを保有していること・臨床開発機能を有し、自社による創薬テーマの設定から非臨床パッケージの構築、開発戦略および薬事戦略の立案、ならびにCMC(*)開発によるCMO(*)マネジメントなど、医薬品候補の創製から初期臨床開発までを最速で実施できる体制を確立していること・専門性の高い人材が持つネットワークを通じて、当社の研究開発の推進に最適なリソースや資源を獲得できること 3.事業内容(1)創薬事業 創薬事業は、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究と開発(共同開発を含む)を行い、その研究成果物であるリード抗体等の知的財産を製薬企業等に実施許諾し、契約一時金、マイルストーンおよびロイヤルティ、並びに共同開発等に係る収入等を獲得する事業です。 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、前臨床開発、臨床開発、申請・承認、製造・販売のプロセスがありますが、当社の創薬事業においては、基礎・探索研究段階から前臨床開発および初期臨床開発段階までの抗体医薬品開発の上流工程を主な事業領域としております。本事業においては、自社で開発候補抗体(ヒト化抗体(*)、ヒト抗体)の前臨床データパッケージまでを作成し、早期導出を図ることを基本戦略としますが、CBA-1205やCBA-1535のように特定のプログラムにおいては抗体の価値を高め、収益性の向上が期待できる自社での初期臨床開発も行ってまいります。 また、当該事業領域におけるパイプラインは、自社の抗体作製技術等を用いた創薬研究活動や外部からの新規パイプラインの導入(*)によって、拡充を図ってまいります。 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。 CBA-1205は、肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現している抗原DLK-1というタンパク質に選択的に結合する遺伝子組換えヒトIgG1型モノクローナル抗体(*)です。糖鎖改変技術によって抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性(*))を増強させたファースト・イン・クラス(*)抗体で、DLK-1を発現するがん細胞を移植したマウスに対して強力な抗腫瘍活性を示します。DLK-1は、幹細胞(*)や前駆細胞(*)のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかにされていましたが、肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においてもDLK-1が発現しており、その増殖に関与していることが明らかにされています。そのためDLK-1はがん治療における新たな標的分子としての可能性が期待されています。 CBA-1535は3つの抗原結合部位を有する多重特異性抗体で、抗原結合部位の内の2つは多くの固形がんに発現がみられるタンパク質5T4に結合し、残りの1つが免疫細胞であるT細胞(*)上のタンパク質CD3に結合する、Tribody®技術を用いて創製されたT cell engager(*)というカテゴリに入る、がん治療用候補抗体です。患者さんが元来保有している免疫を司るT細胞の働きを活性化することで、がん細胞を攻撃します。想定される適応疾患としては、悪性中皮腫、小細胞肺がんや非小細胞肺がんなどのアンメットニーズが高い領域での開発が期待されます。 PCDC(*)は、幅広い固形がん(肺がん、膵臓がん等)で発現が確認されているCDCP-1というタンパク質をターゲットとし、結合特性等に基づく広い有効域・安全域が期待される抗体です。がん細胞上のCDCP-1に結合した後、細胞内に取り込まれやすい性質を利用して、抗体に薬物を結合したADC用途を中心とした開発が期待されます。 PTRY(*)は3つの分子を認識するTribody®技術を用いて創製したがん治療用候補抗体で、固形がんに発現が認められる「5T4」、免疫細胞であるT細胞上の「CD3」、免疫チェックポイント阻害に関与する「PD-L1」に結合するがん治療用の多重特異性抗体です。T cell engagerに加えて免疫チェックポイント阻害機能を加えることで従来のがん免疫療法では十分に効果が期待できなかった患者さんへの新たな治療薬となることを期待しています。また、複数の機能を一つの薬剤に持たせることで患者さんや医療現場の負担軽減、薬価抑制による医療経済への貢献にも有用な薬剤として期待されます。 PXLR(*)は、がん細胞により呼び寄せられる薬剤耐性環境の原因細胞である免疫抑制細胞を減少させ、薬剤耐性のがん微小環境を改善、再発抑制が期待される、がん治療用候補抗体です。 PFKR(*)はFractalkine (CX3CR1) receptorの機能阻害抗体であり、自己免疫性神経疾患等の病態進行を抑制することが期待されます。また、2024年11月に旭化成ファーマ株式会社(以下、旭化成ファーマ)との間で、ライセンス契約を締結いたしました。 また、当社では、自社単独または共同研究により新規のターゲットに対する複数の抗体創薬プロジェクトを推進しております。新規創薬プロジェクトの発足においては、大学・研究機関等から、従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手するなど、ターゲット(抗原)の獲得も積極的に行っております。それらの抗原に対する抗体が、疾患モデル動物などを用いた評価により、治療効果を有する事を確認した場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保した上で研究活動を推進いたします。また当社の創薬力を向上するため、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、当社が保有する抗体作製技術の改良や、創薬基盤技術における課題解決を図るなど技術革新にも取り組んでおります。 (2)創薬支援事業 製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システム等の抗体作製技術を用いた抗体作製サービス、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を提供することによってサービス料等の収入を獲得する事業です。<主なサービスの内容>サービス項目内 容タンパク質・抗原調製、抗体の発現精製抗体作製に必要な組換えタンパク質(抗原)や、研究開発用途の抗体などを細胞に発現させ、精製を行います。種類に応じた発現・精製方法を選び、純度や物性の分析を行います。安定発現細胞株作製安定的に組換えタンパク質(抗原や抗体)を供給できるように、遺伝子組換え技術を用いて、組換えタンパク質を効率よく発現する細胞株を作製します。ADLib®システム等による抗体作製ADLib®システムやハイブリドーマ法(*)といった抗体作製技術を用い、創薬研究に用いるモノクローナル抗体作製を行います。当社の抗体創薬の知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせた抗体作製プランを提案いたします。ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務当社で培ったADLib®システムの技術・ノウハウを活かし抗体の結合力(抗体親和性)を向上させることで、より薬効の高い抗体医薬の精製が期待できます。 4.当社の抗体作製技術(1) 抗体作製技術 当社は抗体作製技術のADLib®システムやTribody®作製技術など独自の抗体作製技術を保有し、また、汎用的な技術であるハイブリドーマ法、B cell cloning(*)などの複数の技術を用いて抗体作製を行っております。また、それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力を最大化してまいります。 <抗体作製技術とその特徴>抗体作製技術技術の特性ADLib®システム・抗原があれば10日前後という短期間で直接ヒトIgG抗体が獲れる・自律的多様化という独創的な抗体ライブラリ(*)の特徴を生かし、抗原特異的抗体(*)の取得から抗体の高親和性化までを連続的に行うことが可能・動物免疫(*)と異なり、自己抗原への免疫寛容(*)の影響を受けないため、理論的にはあらゆる配列のタンパク質を認識する抗体を取得できる可能性がある Tribody®・3つ以上の異なる抗原結合部位を持つ抗体であるTribody®およびその発展型多重特異性抗体のデザイン・エンジニアリング・創薬開発を可能にする技術プラットフォームをいう・CBA-1535のように腫瘍細胞の近傍でT細胞を活性化することにより、がん細胞を叩くT cell engagerというカテゴリや、複数の疾患関連細胞を架橋することでがん以外の疾患の治療薬も設計可能ハイブリドーマ法・動物免疫による抗体作製法で、最もよく用いられる・手法が確立されており、医薬品化された実績も多い・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる B cell cloning・動物免疫を行った後、ハイブリドーマを作製せずに抗体の配列を決定するため、ハイブリドーマ法より短期間で目的の抗体を得ることができる・抗原特異的なB細胞(*)の検出率がハイブリドーマ法よりも高く、取りこぼしが少ない・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる (2) 当社独自の抗体作製技術ADLib®システム① ADLib®システムの仕組み ニワトリのB細胞由来のDT40細胞(*)は、様々な種類の抗体を生み出すメカニズムを持っています。当社では薬剤処理により人為的に活性化させて、試験管内において短期間で多種多様なモノクローナル抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。そのライブラリの中からターゲットである抗原に特異的に結合する抗体を取得します。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。 <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図> ② ヒトADLib®システムについて ヒトADLib®システムは、遺伝子組換え技術によりDT40細胞のトリ抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に置き換えられており、ヒト化の工程を経ることなく、ヒト抗体を直接取得することができます。 <ヒトADLib®システムの概略> ③ 従来の抗体作製技術との主な違い ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。a.迅速な抗体取得 ADLib®システムでは、抗体セレクションの全工程を試験管内で実現したことにより、10日程度でターゲット特異的な抗体を判定することが可能で、他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。競争の激しい医薬開発の分野では、いち早い特許取得が重要であり、この点で他の方法に比べて短期間で抗体を作製できるADLib技術には大きなメリットがあります。b.従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得 ヒトを含む動物は、体内に入ってきた異物に対しては免疫反応(*)が起きて抗体を作りますが、がんの様に、自分を構成している成分が何かのきっかけにより過剰に体内で増えて病気を引き起こすような場合には、そもそも自身の体の成分なので異物とはみなされず、免疫寛容とよばれる仕組みにより抗体を作ることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を超えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であってもマウスで抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、生体外で抗体を作製するシステムなので、免疫寛容による制限を受けることはありません。 5.特許ポートフォリオ(1)基盤技術に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況ヒトADLib®システムヒト抗体を産生する細胞当社日本・欧州・中国で成立。抗体の取得方法当社日本・米国・欧州・中国で成立。抗体可変領域の多様化を促進する方法当社日本・米国・欧州・中国で成立。 (2)リード抗体に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況CBA-1205in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む計7ヵ国で成立。がん治療用医薬(レンバチニブ併用)当社日本、中国を含む計3ヵ国で成立。米国、欧州他で出願中。がん治療用医薬(FGFR4阻害剤併用)当社PCT出願済抗体組成物の精製方法当社PCT出願済CBA-15355T4及びCD3に対する3つの結合ドメインを含む融合タンパク質当社 日本・米国・英国・中国・欧州等計10ヵ国で成立。PCDC抗CDCP1抗体当社日本、中国で成立。米国、欧州他で出願中。PTRY融合タンパク質イタリア CEINGE社当社PCT出願済PXLR抗ヒトCXCL1抗体公立大学法人大阪当社PCT出願済PFKR抗ヒトCX3CR1抗体国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター当社PCT出願済LIV-2008in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(ヒト化)当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む計10ヵ国で成立。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(マウス)当社(リブテックから承継)米国を含む計7ヵ国で成立。 BMAA(*)抗セマフォリン3A抗体、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療(公)横浜市立大学、当社 日本、米国、欧州で成立。
FY2023|8,021 文字|出典 docID: S100T4L7
3【事業の内容】1.事業環境(1)当社が研究開発を手掛ける抗体医薬品 ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体というタンパク質を作る能力(抗原抗体反応)が備わっています。これは免疫と言われる身体を守る防御システムの一つです。こうして体内で作られた抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができます。この抗体というタンパク質を医薬品として体の外から投与するものが抗体医薬品です。従来の低分子医薬品では、正常な細胞にも作用することで副作用を引き起こすこともありますが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞だけが持っている抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。 現在、世界で承認されている抗体医薬は100品目を超えており、がんや自己免疫疾患の領域では目覚ましい治療効果をもたらしたものもあります。しかしながら、膵臓がん、肺がん、アルツハイマー病、糖尿病合併症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等、未だに治療満足度、薬剤貢献度が低い疾患が残されており、また、既存の抗体治療薬よりも優れた抗体に対するニーズも存在します。当社は、自社の技術プラットフォームを初めとする抗体・タンパク質周辺技術を最大限に活用して、そのようなアンメットニーズ(*)の高い分野に対する抗体創薬に取り組んでおります。 <抗原抗体反応> (2)抗体医薬品市場 抗体医薬品は、がんや自己免疫疾患等を中心に医療の現場で処方されており、近年の全世界医療用医薬品の市場においては抗体薬品を中心とするバイオ医薬品処方箋薬のシェアは3割を超え、売上高の上位100品目の半数以上を占めるまでになっております。また、抗体薬物複合体(ADC)やバイスペシフィック抗体(*)に代表される多価抗体などの次世代型抗体については、従来よりも有用性を高めた医薬品としての開発を目指して現在多くの臨床試験(*)が行われており、今後も抗体医薬品市場の一層の拡大が期待されております。(出典:Evaluate World Preview 2022) 2.当社のビジネスモデル(1)経営理念 当社は、「医療のアンメットニーズに創薬の光を」というミッションのもと、「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」という経営ビジョンを掲げ、アンメットニーズの高い疾患領域に対する抗体創薬と創薬支援を事業の基本として、成長性と安定性を兼備した経営を目指しております。 (2)ビジネスモデル 当社は、独自の抗体作製技術(ADLib®システム)をはじめとする複数の抗体作製技術を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を研究開発する「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しております。「創薬事業」では、抗体医薬品の基礎・探索研究(*)、前臨床段階を主な事業領域として、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究を行い、医薬候補品を製薬企業等に導出(*)します。また、CBA-1205やCBA-1535のように、自社開発を進めることにより事業規模拡大の可能性が高いパイプライン(*)については初期臨床試験を実施したのちに導出を行います。また、「創薬支援事業」では、製薬企業や診断薬企業、アカデミア等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有する抗体作製技術を用いた抗体作製サービスの提供、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務の提供を行います。このように、当社は拡大する抗体医薬品市場において製薬企業等に製品やサービスの提供を行うことを主たる事業としており、これにより当社は、契約一時金、マイルストーン(*)、ロイヤルティ(*)、受託サービス料等の対価を企業等から受け取り収益を獲得します。 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 <当社の収益モデル・事業系統図> <事業系統図(創薬事業)> <事業系統図(創薬支援事業)> (3)当社の基本戦略 当社はADLib®システムをはじめとする複数の抗体作製技術を用いて標的抗原に対する多様な抗体を作製し、リード抗体(*)を取得することで、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心とした、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品を生み出す、No.1ベンチャー企業を目指します。 (4)当社の基本戦略を遂行するための3つの強み・医薬品候補抗体を継続的に創出するための独自の「ADLib®システム」をはじめとする複数の抗体作製技術、タンパク質調製や抗体エンジニアリングに関する技術やノウハウ等からなる技術プラットフォームを保有していること・臨床開発機能を有し、自社による創薬テーマの設定から前臨床パッケージの構築、開発戦略および薬事戦略の立案、ならびにCMC(*)開発によるCMO(*)マネジメントなど、医薬品候補の創製から初期臨床開発までを最速で実施できる体制を確立していること・専門性の高い人材が持つネットワークを通じて、当社の研究開発の推進に最適なリソースや資源を獲得できること 3.事業内容(1)創薬事業 創薬事業は、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究と開発(共同開発を含む)を行い、その研究成果物であるリード抗体等の知的財産を製薬企業等に実施許諾し、契約一時金、マイルストーンおよびロイヤルティ、並びに共同開発等に係る収入等を獲得する事業です。 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、前臨床開発、臨床開発、申請・承認、製造・販売のプロセスがありますが、当社の創薬事業においては、基礎・探索研究段階から前臨床開発および初期臨床開発段階までの抗体医薬品開発の上流工程を主な事業領域としております。本事業においては、自社で開発候補抗体(ヒト化抗体(*)、ヒト抗体)の前臨床データパッケージまでを作成し、早期導出を図ることを基本戦略としますが、CBA-1205やCBA-1535のように特定のプログラムにおいては抗体の価値を高め、収益性の向上が期待できる自社での初期臨床開発も行ってまいります。 また、当該事業領域におけるパイプラインは、自社の抗体作製技術等を用いた創薬研究活動や外部からの新規パイプラインの導入(*)によって、拡充を図ってまいります。 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。 CBA-1205は、肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現している抗原DLK-1というたんぱく質に選択的に結合する遺伝子組換えヒトIgG1型モノクローナル抗体です。糖鎖改変技術によって抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性(*))を増強させたファースト・イン・クラス(*)抗体で、DLK-1を発現するがん細胞を移植したマウスに対して強力な抗腫瘍活性を示します。DLK-1は、幹細胞(*)や前駆細胞(*)のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかにされていましたが、肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においてもDLK-1が発現しており、その増殖に関与していることが明らかにされています。そのためDLK-1はがん治療における新たな標的分子としての可能性が期待されています。 CBA-1535は3つの抗原結合部位を有する多重特異性抗体で、抗原結合部位の内の2つは多くの固形がんに発現がみられるタンパク質5T4に結合し、残りの1つが免疫細胞であるT細胞(*)上のタンパク質CD3に結合する、Tribody™技術を用いて創製されたT cell engager(*)というカテゴリに入る、がん治療用候補抗体です。患者さんが元来保有している免疫を司るT細胞の働きを活性化することで、がん細胞を攻撃します。想定される適応疾患としては、悪性中皮腫、小細胞肺がんや非小細胞肺がんなどのアンメットニーズが高い領域での開発が期待されます。 ADCT-701は、CBA-1205の前身であるLIV-1205という抗DLK-1ヒト化モノクローナル抗体(*)に細胞毒性のある化合物を結合した薬物複合体であり、がん細胞の増殖を抑制することが動物モデルを用いた試験により確認されています。 PCDC(*)は、幅広い固形がん(肺がん、膵臓がん等)で発現が確認されているCDCP-1というタンパク質をターゲットとし、結合特性等に基づく広い有効域・安全域が期待される抗体です。がん細胞上のCDCP-1に結合した後、細胞内に取り込まれやすい性質を利用して、抗体に薬物を結合したADC用途を中心とした開発が期待されます。 PTRY(*)は3つの分子を認識するTribody™技術を用いて創製したがん治療用候補抗体で、固形がんに発現が認められる「5T4」、免疫細胞であるT細胞上の「CD3」、免疫チェックポイント阻害に関与する「PD-L1」に結合するがん治療用の多重特異性抗体です。T cell engagerに加えて免疫チェックポイント阻害機能を加えることで従来のがん免疫療法では十分に効果が期待できなかった患者さんへの新たな治療薬となることを期待しています。また、複数の機能を一つの薬剤に持たせることで患者さんや医療現場の負担軽減、薬価抑制による医療経済への貢献にも有用な薬剤として期待されます。 BMAA(*)はADLib®システムにより作製したヒト化抗セマフォリン3A抗体で、セマフォリン3Aを介した細胞内応答を抑制します。セマフォリン3Aは中枢神経や血管の正常な発達、がんの転移、骨の代謝等に関連していることが報告されており、これらに関連する幅広い疾患領域での適応が期待されます。 LIV-2008およびLIV-2008bは、乳がん、大腸がん、肺がんをはじめとする多くの固形がんの細胞表面に発現している抗原(標的分子)TROP-2の、それぞれ異なる領域に結合する2種類のヒト化モノクローナル抗体で、どちらもin vivoでがんの増殖阻害活性を示します。TROP-2はがん治療の標的分子として認知されており、多種の固形がんにおいて発現が亢進していることから、治療用抗体としてのニーズが期待されます。 PFKR(*)はFractalkine (CX3CR1) receptorの機能阻害抗体であり、自己免疫性神経疾患等の病態進行を抑制することが期待されます。 PXLR(*)は、がん細胞により呼び寄せられる薬剤耐性環境の原因細胞である免疫抑制細胞を減少させ、薬剤耐性のがん微小環境を改善、再発抑制が期待される、がん治療用候補抗体です。 また、当社では、自社単独または共同研究により新規のターゲットに対する複数の抗体創薬プロジェクトを推進しております。新規創薬プロジェクトの発足においては、大学・研究機関等から、従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手するなど、ターゲット(抗原)の獲得も積極的に行っております。それらの抗原に対する抗体が、疾患モデル動物などを用いた評価により、治療効果を有する事を確認した場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保した上で研究活動を推進いたします。また当社の創薬力を向上するため、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、当社が保有する抗体作製技術の改良や、創薬基盤技術における課題解決を図るなど技術革新にも取り組んでおります。 (2)創薬支援事業 製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システム等の抗体作製技術を用いた抗体作製サービス、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を提供することによってサービス料等の収入を獲得する事業です。<主なサービスの内容>サービス項目内 容タンパク質・抗原調製、抗体の発現精製抗体作製に必要な組換えタンパク質(抗原)や、研究開発用途の抗体などを細胞に発現させ、精製を行います。種類に応じた発現・精製方法を選び、純度や物性の分析を行います。安定発現細胞株作製安定的に組換えタンパク質(抗原や抗体)を供給できるように、遺伝子組換え技術を用いて、組換えタンパク質を効率よく発現する細胞株を作製します。ADLib®システム等による抗体作製ADLib®システムやハイブリドーマ法(*)といった抗体作製技術を用い、創薬研究に用いるモノクローナル抗体作製を行います。当社の抗体創薬の知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせた抗体作製プランを提案いたします。ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務当社で培ったADLib®システムの技術・ノウハウを活かし抗体の結合力(抗体親和性)を向上させることで、より薬効の高い抗体医薬の精製が期待できます。 4.当社の抗体作製技術(1) 抗体作製技術 当社は抗体作製技術のADLib®システムやTribody™作製技術など独自の抗体作製技術を保有し、また、汎用的な技術であるハイブリドーマ法、B cell cloning(*)などの複数の技術を用いて抗体作製を行っております。また、それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力を最大化してまいります。 <抗体作製技術とその特徴>抗体作製技術技術の特性ADLib®システム・抗原があれば10日前後という短期間で直接ヒトIgG抗体が獲れる・自律的多様化という独創的な抗体ライブラリ(*)の特徴を生かし、抗原特異的抗体(*)の取得から抗体の高親和性化までを連続的に行うことが可能・動物免疫(*)と異なり、自己抗原への免疫寛容(*)の影響を受けないため、理論的にはあらゆる配列のタンパク質を認識する抗体を取得できる可能性がある Tribody™・3つ以上の異なる抗原結合部位を持つ抗体であるTribody™およびその発展型多重特異性抗体のデザイン・エンジニアリング・創薬開発を可能にする技術プラットフォームをいう・CBA-1535のように腫瘍細胞の近傍でT細胞を活性化することにより、がん細胞を叩くT cell engagerというカテゴリや、複数の疾患関連細胞を架橋することでがん以外の疾患の治療薬も設計可能ハイブリドーマ法・動物免疫による抗体作製法で、最もよく用いられる・手法が確立されており、医薬品化された実績も多い・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる B cell cloning・動物免疫を行った後、ハイブリドーマを作製せずに抗体の配列を決定するため、ハイブリドーマ法より短期間で目的の抗体を得ることができる・抗原特異的なB細胞(*)の検出率がハイブリドーマ法よりも高く、取りこぼしが少ない・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる (2) 当社独自の抗体作製技術ADLib®システム① ADLib®システムの仕組み ニワトリのB細胞由来のDT40細胞(*)は、様々な種類の抗体を生み出すメカニズムを持っています。当社では薬剤処理により人為的に活性化させて、試験管内において短期間で多種多様なモノクローナル抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。そのライブラリの中からターゲットである抗原に特異的に結合する抗体を取得します。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。 <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図> ② ヒトADLib®システムについて ヒトADLib®システムは、遺伝子組換え技術によりDT40細胞のトリ抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に置き換えられており、ヒト化の工程を経ることなく、ヒト抗体を直接取得することができます。 <ヒトADLib®システムの概略> ③ 従来の抗体作製技術との主な違い ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。a.迅速な抗体取得 ADLib®システムでは、抗体セレクションの全工程を試験管内で実現したことにより、10日程度でターゲット特異的な抗体を判定することが可能で、他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。競争の激しい医薬開発の分野では、いち早い特許取得が重要であり、この点で他の方法に比べて短期間で抗体を作製できるADLib技術には大きなメリットがあります。b.従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得 ヒトを含む動物は、体内に入ってきた異物に対しては免疫反応(*)が起きて抗体を作りますが、がんの様に、自分を構成している成分が何かのきっかけにより過剰に体内で増えて病気を引き起こすような場合には、そもそも自身の体の成分なので異物とはみなされず、免疫寛容とよばれる仕組みにより抗体を作ることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を超えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であってもマウスで抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、生体外で抗体を作製するシステムなので、免疫寛容による制限を受けることはありません。 5.特許ポートフォリオ(1)基盤技術に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況ヒトADLib®システムヒト抗体を産生する細胞当社日本・欧州・中国で成立。米国で出願中。抗体の取得方法当社日本・米国・欧州・中国で成立。抗体可変領域の多様化を促進する方法当社日本・米国・欧州・中国で成立。 (2)リード抗体に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況CBA-1205in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む計7ヵ国で成立。がん治療用医薬当社PCT出願済抗体組成物の精製方法当社PCT出願済CBA-15355T4及びCD3に対する3つの結合ドメインを含む融合タンパク質当社 日本・米国・英国・中国・欧州等計10ヵ国で成立。LIV-2008in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(ヒト化)当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む計10ヵ国で成立。他の海外諸国で出願中。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(マウス)当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州を含む計13ヵ国で成立。 BMAA抗セマフォリン3A抗体、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療(公)横浜市立大学、当社 日本、米国、欧州で成立。PCDC抗CDCP1抗体当社中国で成立。日本、米国、欧州他で出願中。PXLR抗ヒトCXCL1抗体公立大学法人大阪当社PCT出願済PTRY融合タンパク質イタリア CEINGE社当社PCT出願済PFKR抗ヒトCX3CR1抗体国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター当社PCT出願済
FY2022|7,831 文字|出典 docID: S100QGF6
3【事業の内容】1.事業環境(1)当社が研究開発を手掛ける抗体医薬品 ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体というタンパク質を作る能力(抗原抗体反応)が備わっています。これは免疫と言われる身体を守る防御システムの一つです。こうして体内で作られた抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができます。この抗体というタンパク質を医薬品として体の外から投与するものが抗体医薬品です。従来の抗がん剤等では、正常な細胞にも作用することで副作用を引き起こすこともありますが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞だけが持っている抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。 現在、世界で承認されている抗体医薬は100品目を超えており、がんや自己免疫疾患の領域では目覚ましい治療効果をもたらしたものもあります。しかしながら、膵臓がん、肺がん、アルツハイマー病、糖尿病合併症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等、未だに治療満足度、薬剤貢献度が低い疾患が残されており、また、既存の抗体治療薬よりも優れた抗体に対するニーズも存在します。当社は、自社の技術プラットフォームを初めとする抗体・タンパク質周辺技術を最大限に活用して、そのようなアンメットニーズ(*)の高い分野に対する抗体創薬に取り組んでおります。 <抗原抗体反応> (2)抗体医薬品市場 抗体医薬品は、がんや自己免疫疾患等を中心に医療の現場で処方されており、2020年の全世界医療用医薬品の市場においては抗体薬品を中心とするバイオ医薬品処方箋薬のシェアは30%に達し、売上高の上位100品目の半数以上を占めるまでになっております。また、抗体薬物複合体(ADC)やバイスペシフィック抗体(*)に代表される多価抗体などの次世代型抗体については、従来よりも有用性を高めた医薬品としての開発を目指して現在多くの臨床試験(*)が行われており、今後も抗体医薬品市場の一層の拡大が期待されております。<世界の医薬品総売上高とバイオ医薬品の占有率>(出典:Evaluate World Preview 2020のデータを基に当社で作成) 2.当社のビジネスモデル(1)経営理念 当社は、「医療のアンメットニーズに創薬の光を」というミッションのもと、「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」という経営ビジョンを掲げ、アンメットニーズの高い疾患領域に対する抗体創薬と創薬支援を事業の基本として、成長性と安定性を兼備した経営を目指しております。 (2)ビジネスモデル 当社は、独自の抗体作製技術(ADLib®システム)をはじめとする複数の抗体作製技術を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を研究開発する「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しております。「創薬事業」では、抗体医薬品の基礎・探索研究(*)、前臨床段階を主な事業領域として、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究を行い、医薬候補品を製薬企業等に導出(*)します。また、CBA-1205やCBA-1535のように、自社開発を進めることにより事業規模拡大の可能性が高いパイプライン(*)については初期臨床試験を実施したのちに導出を行います。また、「創薬支援事業」では製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有する抗体作製技術を用いた抗体作製サービスの提供、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務の提供を行います。このように、当社は拡大する抗体医薬品市場において製薬企業等に製品やサービスの提供を行うことを主たる事業としており、これにより当社は、契約一時金、マイルストーン(*)、ロイヤルティ(*)、受託サービス料等の対価を企業等から受け取り収益を獲得します。 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 <当社の収益モデル・事業系統図> <事業系統図(創薬事業)> <事業系統図(創薬支援事業)> (3)当社の基本戦略 当社はADLib®システムをはじめとする複数の抗体作製技術を用いて標的抗原に対する多様な抗体を作製し、リード抗体(*)を取得することで、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心とした、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品を生み出す、No.1ベンチャー企業を目指します。 (4)当社の基本戦略を遂行するための3つの強み・医薬品候補抗体を継続的に創出するための独自の「ADLib®システム」をはじめとする複数の抗体作製技術、タンパク質調製や抗体エンジニアリングに関する技術やノウハウ等からなる技術プラットフォームを保有していること・臨床開発機能を有し、自社による創薬テーマの設定から前臨床パッケージの構築、開発戦略および薬事戦略の立案、ならびにCMC(*)開発によるCMO(*)マネジメントなど、医薬品候補の創製から初期臨床開発までを最速で実施できる体制を確立していること・専門性の高い人材が持つネットワークを通じて、当社の研究開発の推進に最適なリソースや資源を獲得できること 3.事業内容(1)創薬事業 創薬事業は、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究と開発(共同開発を含む)を行い、その研究成果物であるリード抗体等の知的財産を製薬企業等に実施許諾し、契約一時金収入、マイルストーンおよびロイヤルティ、並びに共同開発等に係る収入等を獲得する事業です。 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、前臨床開発、臨床開発、申請・承認、製造・販売のプロセスがありますが、当社の創薬事業においては、基礎・探索研究段階から前臨床開発および初期臨床開発段階までの抗体医薬品開発の上流工程を主な事業領域としております。本事業においては、自社で開発候補抗体(ヒト化抗体(*)、ヒト抗体)の前臨床データパッケージまでを作成し、早期導出を図ることを基本戦略としますが、CBA-1205やCBA-1535のように特定のプログラムにおいては抗体の価値を高め、収益性の向上が期待できる自社での初期臨床開発も行ってまいります。 また、当該事業領域におけるパイプラインは、自社の抗体作製技術等を用いた創薬研究活動や外部からの新規パイプラインの導入(*)によって、拡充を図ってまいります。 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。 ADCT-701は、がん細胞の表面に発現しているDLK-1というタンパク質に結合するヒト化モノクローナル抗体(*)に細胞毒性のある化合物を結合した薬物複合体であり、がん細胞の増殖を抑制することが動物モデルを用いた試験により確認されています。DLK-1は、幹細胞(*)や前駆細胞(*)のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかにされていましたが、肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においてもDLK-1が発現しており、その増殖に関与していることが明らかにされています。そのためDLK-1はがん治療における新たな標的分子としての可能性が期待されています。 CBA-1205は、肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現している抗原DLK-1に選択的に結合する遺伝子組換えヒトIgG1型モノクローナル抗体です。糖鎖改変技術によって抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性(*))を増強させたファースト・イン・クラス(*)抗体で、DLK-1を発現するがん細胞を移植したマウスに対して強力な抗腫瘍活性を示します。 CBA-1535は3つの抗原結合部位を有する多重特異性抗体で、抗原結合部位の内の2つは多くの固形がんに発現がみられるタンパク質5T4に結合し、残りの1つが免疫細胞であるT細胞(*)上のタンパク質CD3に結合する、Tribody™技術を用いて創製されたT cell engagerというカテゴリに入る、がん治療用候補抗体です。患者さんが元来保有している免疫を司るT細胞の働きを活性化することで、がん細胞を攻撃します。想定される適応疾患としては、悪性中皮腫、小細胞肺がんや非小細胞肺がんなどのアンメットニーズが高い領域での開発が期待されます。 PCDC(*)は、幅広い固形がん(肺癌、膵臓がん等)で発現が確認されているCDCP-1というタンパク質をターゲットとし、結合特性等に基づく広い有効域・安全域が期待される抗体です。がん細胞上のCDCP-1に結合した後、細胞内に取り込まれやすい性質を利用して、抗体に薬物を結合したADC用途を中心とした開発が期待されます。 PTRY(*)は3つの分子を認識するTribody™技術を用いて創製したがん治療用候補抗体で、固形がんに発現が認められる「5T4」、免疫細胞であるT細胞上の「CD3」、免疫チェックポイント阻害に関与する「PD-L1」に結合するがん治療用の多重特異性抗体です。T cell engagerに加えて免疫チェックポイント阻害機能を加えることで従来のがん免疫療法では十分に効果が期待できなかった患者さんへの新たな治療薬となることを期待しています。また、複数の機能を一つの薬剤に持たせることで患者さんや医療現場の負担軽減、薬価抑制による医療経済への貢献にも有用な薬剤として期待されます。 BMAA(*)はADLib®システムにより作製したヒト化抗セマフォリン3A抗体で、セマフォリン3Aを介した細胞内応答を抑制します。セマフォリン3Aは中枢神経や血管の正常な発達、がんの転移、骨の代謝等に関連していることが報告されており、これらに関連する幅広い疾患領域での適応が期待されます。 LIV-2008およびLIV-2008bは、乳がん、大腸がん、肺がんをはじめとする多くの固形がんの細胞表面に発現している抗原(標的分子)TROP-2の、それぞれ異なる領域に結合する2種類のヒト化モノクローナル抗体で、どちらもin vivoでがんの増殖阻害活性を示します。TROP-2はがん治療の標的分子として認知されており、多種の固形がんにおいて発現が亢進していることから、治療用抗体としてのニーズが期待されます。 また、当社では、自社単独または共同研究により新規のターゲットに対する複数の抗体創薬プロジェクトを推進しております。新規創薬プロジェクトの発足においては、大学・研究機関等から、従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手するなど、ターゲット(抗原)の獲得も積極的に行っております。それらの抗原に対する抗体が、疾患モデル動物などを用いた評価により、治療効果を有する事を確認した場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保した上で研究活動を推進いたします。また当社の創薬力を向上するため、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、当社が保有する抗体作製技術の改良や、創薬基盤技術における課題解決を図るなど技術革新にも取り組んでおります。 (2)創薬支援事業 製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システム等の抗体作製技術を用いた抗体作製サービス、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を提供することによってサービス料等の収入を獲得する事業です。<主なサービスの内容>サービス項目内 容タンパク質・抗原調製、抗体の発現精製抗体作製に必要な組換えタンパク質(抗原)や、研究開発用途の抗体などを細胞に発現させ、精製を行います。種類に応じた発現・精製方法を選び、純度や物性の分析を行います。安定発現細胞株作製安定的に組換えタンパク質(抗原や抗体)を供給できるように、遺伝子組換え技術を用いて、組換えタンパク質を効率よく発現する細胞株を作製します。ADLib®システム等による抗体作製ADLib®システムやハイブリドーマ法(*)、B cell cloning(*)といった抗体作製技術を用い、創薬研究に用いるモノクローナル抗体作製を行います。当社の抗体創薬の知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせた抗体作製プランを提案いたします。ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務当社で培ったADLib®システムの技術・ノウハウを活かし抗体の結合力(抗体親和性)を向上させることで、より薬効の高い抗体医薬の精製が期待できます。 4.当社の抗体作製技術(1) 抗体作製技術 当社は独自技術のADLib®システムのほか、ハイブリドーマ法、マウスやニワトリを用いたB cell cloningやTribody™作製技術など、複数の抗体作製技術を保有しております。また、それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力を最大化してまいります。 <抗体作製技術とその特徴>抗体作製技術技術の特性ADLib®システム・抗原があれば10日前後という短期間で直接ヒトIgG抗体が獲れる・自律的多様化という独創的な抗体ライブラリ(*)の特徴を生かし、抗原特異的抗体の取得から抗体の高親和性化までを連続的に行うことが可能・動物免疫(*)と異なり、自己抗原への免疫寛容(*)の影響を受けないため、理論的にはあらゆる配列のタンパク質を認識する抗体を取得できる可能性がある ハイブリドーマ法・動物免疫による抗体作製法で、最もよく用いられる・手法が確立されており、医薬品化された実績も多い・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる B cell cloning・動物免疫を行った後、ハイブリドーマを作製せずに抗体の配列を決定するため、ハイブリドーマ法より短期間で目的の抗体を得ることができる・抗原特異的なB細胞(*)の検出率がハイブリドーマ法よりも高く、取りこぼしが少ない・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる Tribody™・3つ以上の異なる抗原結合部位を持つ抗体であるTribody™およびその発展型多重特異性抗体のデザイン・エンジニアリング・創薬開発を可能にする技術プラットフォームをいう・腫瘍近傍でT細胞を活性化することにより、がん細胞を叩くT cell engagerというカテゴリ (2) 当社独自の抗体作製技術ADLib®システム① ADLib®システムの仕組み ニワトリのB細胞由来のDT40細胞(*)は、様々な種類の抗体を生み出すメカニズムを持っています。当社では、このメカニズムをトリコスタチンA(以下「TSA」といいます)(*)という薬剤により人為的に活性化させて、試験管内において短期間で多種多様なモノクローナル抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。そのライブラリの中からターゲットである抗原に特異的に結合する抗体を取得します。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。 <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図> ② ヒトADLib®システムについて ヒトADLib®システムは、遺伝子組換え技術によりDT40細胞のトリ抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に置き換えられており、ヒト化の工程を経ることなく、ヒト抗体を直接取得することができます。 <ヒトADLib®システムの概略> ③ 従来の抗体作製技術との主な違い ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。a.迅速な抗体取得 ADLib®システムでは、抗体セレクションの全工程を試験管内で実現したことにより、10日程度でターゲット特異的な抗体を判定することが可能で、他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。競争の激しい医薬開発の分野では、いち早い特許取得が重要であり、この点で他の方法に比べて短期間で抗体を作製できるADLib技術には大きなメリットがあります。b.従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得 ヒトを含む動物は、体内に入ってきた異物に対しては免疫反応(*)が起きて抗体を作りますが、がんの様に、自分を構成している成分が何かのきっかけにより過剰に体内で増えて病気を引き起こすような場合には、そもそも自身の体の成分なので異物とはみなされず、免疫寛容とよばれる仕組みにより抗体を作ることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を超えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であってもマウスで抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、生体外で抗体を作製するシステムなので、免疫寛容による制限を受けることはありません。 5.特許ポートフォリオ(1)基盤技術に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況ADLib®システム基盤特許体細胞相同組換え(*)の促進方法及び特異的抗体(*)の作製方法理研、当社日本、米国、欧州、中国で成立。体細胞相同組換えの誘発方法理研、当社日本、米国、欧州、中国で成立。ヒトADLib®システムヒト抗体を産生する細胞当社日本・欧州・中国で成立。米国で出願中。抗体の取得方法当社日本・米国・欧州で成立。中国で出願中。抗体可変領域の多様化を促進する方法当社日本・米国・欧州で成立。中国で出願中。 (2)リード抗体に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況CBA-1205in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む計7ヵ国で成立。がん治療用医薬当社PCT出願済CBA-15355T4及びCD3に対する3つの結合ドメインを含む融合タンパク質当社 日本・米国・英国・中国等計8ヵ国で成立。欧州等で出願中。LIV-2008in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(ヒト化)当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む計10ヵ国で成立。他の海外諸国で出願中。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(マウス)当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州を含む計13ヵ国で成立。 BMAA抗セマフォリン3A抗体、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療(公)横浜市立大学、当社 日本、米国、欧州で成立。PCDC抗CDCP1抗体当社PCT出願済
FY2021|7,590 文字|出典 docID: S100NQ6T
3【事業の内容】1.事業環境(1)当社が研究開発を手掛ける抗体医薬品 ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体というタンパク質を作る能力(抗原抗体反応)が備わっています。これは免疫と言われる身体を守る防御システムの一つです。こうして体内で作られた抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができます。この抗体というタンパク質を医薬品として体の外から投与するものが抗体医薬品です。従来の抗がん剤等では、正常な細胞にも作用することで副作用を引き起こすこともありますが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞だけが持っている抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。 現在、世界で承認されている抗体医薬は100品目を超えており、がんや自己免疫疾患の領域では目覚ましい治療効果をもたらしたものもあります。しかしながら、膵臓がん、肺がん、アルツハイマー病、糖尿病合併症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等、未だに治療満足度、薬剤貢献度が低い疾患が残されており、また、既存の抗体治療薬よりも優れた抗体に対するニーズも存在します。当社は、自社の技術プラットフォームを初めとする抗体・タンパク質周辺技術を最大限に活用して、そのようなアンメットニーズ(*)の高い分野に対する抗体創薬に取り組んでおります。 <抗原抗体反応> (2)抗体医薬品市場 抗体医薬品は、がんや自己免疫疾患等を中心に医療の現場で処方されており、2020年の全世界医療用医薬品の市場においては抗体薬品を中心とするバイオ医薬品処方箋薬のシェアは30%に達し、売上高の上位100品目の半数以上を占めるまでになっております。また、抗体薬物複合体(ADC)やバイスペシフィック抗体(*)に代表される多価抗体などの次世代型抗体については、従来よりも有用性を高めた医薬品としての開発を目指して現在多くの臨床試験(*)が行われており、今後も抗体医薬品市場の一層の拡大が期待されております。<世界の医薬品総売上高とバイオ医薬品の占有率>(出典:Evaluate World Preview 2020のデータを基に当社で作成) 2.当社のビジネスモデル(1)経営理念 当社は、「医療のアンメットニーズに創薬の光を」というミッションのもと、「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」という経営ビジョンを掲げ、アンメットニーズの高い疾患領域に対する抗体創薬と創薬支援を事業の基本として、成長性と安定性を兼備した経営を目指しております。 (2)ビジネスモデル 当社は、独自の抗体作製技術(ADLib®システム)をはじめとする複数の抗体作製技術を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を研究開発する「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しております。「創薬事業」では、抗体医薬品の基礎・探索研究(*)、前臨床段階を主な事業領域として、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究を行い、医薬候補品を製薬企業等に導出(*)します。また、CBA-1205やCBA-1535のように、自社開発を進めることにより事業規模拡大の可能性が高いパイプライン(*)については初期臨床試験を実施したのちに導出を行います。また、「創薬支援事業」では製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有する抗体作製技術を用いた抗体作製サービスの提供、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務の提供を行います。このように、当社は拡大する抗体医薬品市場において製薬企業等に製品やサービスの提供を行うことを主たる事業としており、これにより当社は、契約一時金、マイルストーン(*)、ロイヤルティ(*)、受託サービス料等の対価を企業等から受け取り収益を獲得します。 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 <当社の収益モデル・事業系統図> <事業系統図(創薬事業)> <事業系統図(創薬支援事業)> (3)当社の基本戦略 当社はADLib®システムをはじめとする複数の抗体作製技術を用いて標的抗原に対する多様な抗体を作製し、リード抗体(*)を取得することで、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心とした、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品を生み出す、No.1ベンチャー企業を目指します。 (4)当社の基本戦略を遂行するための3つの強み・医薬品候補抗体を継続的に創出するための独自の「ADLib®システム」をはじめとする複数の抗体作製技術、タンパク質調製や抗体エンジニアリングに関する技術やノウハウ等からなる技術プラットフォームを保有していること・臨床開発機能を有し、自社による創薬テーマの設定から前臨床パッケージの構築、開発戦略および薬事戦略の立案、ならびにCMC(*)開発によるCMO(*)マネジメントなど、医薬品候補の創製から初期臨床開発までを最速で実施できる体制を確立していること・専門性の高い人材が持つネットワークを通じて、当社の研究開発の推進に最適なリソースや資源を獲得できること 3.事業内容(1)創薬事業 創薬事業は、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究と開発(共同開発を含む)を行い、その研究成果物であるリード抗体等の知的財産を製薬企業等に実施許諾し、契約一時金収入、マイルストーンおよびロイヤルティ、並びに共同開発等に係る収入等を獲得する事業です。 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、前臨床開発、臨床開発、申請・承認、製造・販売のプロセスがありますが、当社の創薬事業においては、基礎・探索研究段階から前臨床開発および初期臨床開発段階までの抗体医薬品開発の上流工程を主な事業領域としております。本事業においては、自社で開発候補抗体(ヒト化抗体(*)、ヒト抗体)の前臨床データパッケージまでを作成し、早期導出を図ることを基本戦略としますが、CBA-1205やCBA-1535のように特定のプログラムにおいては抗体の価値を高め、収益性の向上が期待できる自社での初期臨床開発も行ってまいります。 また、当該事業領域におけるパイプラインは、自社の抗体作製技術等を用いた創薬研究活動や外部からの新規パイプラインの導入(*)によって、拡充を図ってまいります。 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。 ADCT-701は、がん細胞の表面に発現しているDLK-1というタンパク質に結合するヒト化モノクローナル抗体(*)に細胞毒性のある化合物を結合した薬物複合体であり、がん細胞の増殖を抑制することが動物モデルを用いた試験により確認されています。DLK-1は、幹細胞(*)や前駆細胞(*)のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかにされていましたが、肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においてもDLK-1が発現しており、その増殖に関与していることが明らかにされています。そのためDLK-1はがん治療における新たな標的分子としての可能性が期待されています。 LIV-2008およびLIV-2008bは、乳がん、大腸がん、肺がんをはじめとする多くの固形がんの細胞表面に発現している抗原(標的分子)TROP-2の、それぞれ異なる領域に結合する2種類のヒト化モノクローナル抗体で、どちらもin vivoでがんの増殖阻害活性を示します。TROP-2は正常組織と比較して、多種の固形がんにおいて発現が亢進していることから、がん治療の標的分子として期待されており、当社の研究チームは各種のマウスモデルで本抗体が強力な抗がん作用を有することを見出しております。 CBA-1205は、肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現している抗原DLK-1に選択的に結合する遺伝子組換えヒトIgG1型モノクローナル抗体です。糖鎖改変技術によって抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性(*))を増強させたファースト・イン・クラス(*)抗体で、DLK-1を発現するがん細胞を移植したマウスに対して強力な抗腫瘍活性を示します。 CBA-1535は3つの抗原結合部位を有する多重特異性抗体で、抗原結合部位の内の2つは多くの固形がんに発現がみられるタンパク質5T4に結合し、残りの1つが免疫細胞であるT細胞(*)上のタンパク質CD3に結合する、Tribody技術を用いて創製されたT cell engagerというカテゴリに入る、がん治療用候補抗体です。患者さんが元来保有している免疫を司るT細胞の働きを活性化することで、がん細胞を攻撃します。想定される適応疾患としては、悪性中皮腫、小細胞肺がんや非小細胞肺がんなどのアンメットニーズが高い領域での開発が期待されます。 BMAA(*)はADLib®システムにより作製した抗セマフォリン3AニワトリIgM抗体をヒト化したもので、セマフォリン3Aを介した細胞内応答を抑制します。セマフォリン3Aは中枢神経や血管の正常な発達、がんの転移、骨の代謝等に関連しているという論文が発表されており、これらに関連する幅広い疾患領域での適応が期待されます。 PCDC(*)は、幅広い固形がん(肺癌、膵臓がん等)で発現が確認されているCDCP-1というタンパク質をターゲットとし、結合特性等に基づく広い有効域・安全域が期待される抗体です。がん細胞上のCDCP-1に結合した後、細胞内に取り込まれやすい性質を利用して、抗体に薬物を結合したADC用途を中心とした開発が期待されます。 また、当社では、自社単独または共同研究により新規のターゲットに対する複数の抗体創薬プロジェクトを推進しております。新規創薬プロジェクトの発足においては、大学・研究機関等から、従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手するなど、ターゲット(抗原)の獲得も積極的に行っております。それらの抗原に対する抗体が、疾患モデル動物などを用いた評価により、治療効果を有する事を確認した場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保した上で研究活動を推進いたします。また当社の創薬力を向上するため、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、当社が保有する抗体作製技術の改良や、創薬基盤技術における課題解決を図るなど技術革新にも取り組んでおります。 (2)創薬支援事業 製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システム等の抗体作製技術を用いた抗体作製サービス、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を提供することによってサービス料等の収入を獲得する事業です。<主なサービスの内容>サービス項目内 容タンパク質・抗原調製、抗体の発現精製抗体作製に必要な組換えタンパク質(抗原)や、研究開発用途の抗体などを細胞に発現させ、精製を行います。種類に応じた発現・精製方法を選び、純度や物性の分析を行います。安定発現細胞株作製安定的に組換えタンパク質(抗原や抗体)を供給できるように、遺伝子組換え技術を用いて、組換えタンパク質を効率よく発現する細胞株を作製します。ADLib®システム等による抗体作製ADLib®システムやハイブリドーマ法(*)、B cell cloning(*)といった抗体作製技術を用い、創薬研究に用いるモノクローナル抗体作製を行います。当社の抗体創薬の知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせた抗体作製プランを提案いたします。ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務当社で培ったADLib®システムの技術・ノウハウを活かし抗体の結合力(抗体親和性)を向上させることで、より薬効の高い抗体医薬の精製が期待できます。 4.当社の抗体作製技術(1) 抗体作製技術 当社は独自技術のADLib®システムのほか、ハイブリドーマ法、マウスやニワトリを用いたB cell cloningやTribody作製技術など、複数の抗体作製技術を保有しております。また、それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力を最大化してまいります。 <抗体作製技術とその特徴>抗体作製技術技術の特性ADLib®システム・抗原があれば10日前後という短期間で直接ヒトIgG抗体が獲れる・自律的多様化という独創的な抗体ライブラリ(*)の特徴を生かし、抗原特異的抗体の取得から抗体の高親和性化までを連続的に行うことが可能・動物免疫(*)と異なり、自己抗原への免疫寛容(*)の影響を受けないため、理論的にはあらゆる配列のタンパク質を認識する抗体を取得できる可能性がある ハイブリドーマ法・動物免疫による抗体作製法で、最もよく用いられる・手法が確立されており、医薬品化された実績も多い・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる B cell cloning・動物免疫を行った後、ハイブリドーマを作製せずに抗体の配列を決定するため、ハイブリドーマ法より短期間で目的の抗体を得ることができる・抗原特異的なB細胞(*)の検出率がハイブリドーマ法よりも高く、取りこぼしが少ない・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる Tribody・3つ以上の異なる抗原結合部位を持つ抗体であるTribodyおよびその発展型多重特異性抗体のデザイン・エンジニアリング・創薬開発を可能にする技術プラットフォームをいう・腫瘍近傍でT細胞を活性化することにより、がん細胞を叩くT cell engagerというカテゴリ (2) 当社独自の抗体作製技術ADLib®システム① ADLib®システムの仕組み ニワトリのB細胞由来のDT40細胞(*)は、様々な種類の抗体を生み出すメカニズムを持っています。当社では、このメカニズムをトリコスタチンA(以下「TSA」といいます)(*)という薬剤により人為的に活性化させて、試験管内において短期間で多種多様なモノクローナル抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。そのライブラリの中からターゲットである抗原に特異的に結合する抗体を取得します。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。 <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図> ② ヒトADLib®システムについて ヒトADLib®システムは、遺伝子組換え技術によりDT40細胞のトリ抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に置き換えられており、ヒト化の工程を経ることなく、ヒト抗体を直接取得することができます。 <ヒトADLib®システムの概略> ③ 従来の抗体作製技術との主な違い ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。a.迅速な抗体取得 ADLib®システムでは、抗体セレクションの全工程を試験管内で実現したことにより、10日程度でターゲット特異的な抗体を判定することが可能で、他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。競争の激しい医薬開発の分野では、いち早い特許取得が重要であり、この点で他の方法に比べて短期間で抗体を作製できるADLib技術には大きなメリットがあります。b.従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得 ヒトを含む動物は、体内に入ってきた異物に対しては免疫反応(*)が起きて抗体を作りますが、がんの様に、自分を構成している成分が何かのきっかけにより過剰に体内で増えて病気を引き起こすような場合には、そもそも自身の体の成分なので異物とはみなされず、免疫寛容とよばれる仕組みにより抗体を作ることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を超えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であってもマウスで抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、生体外で抗体を作製するシステムなので、免疫寛容による制限を受けることはありません。 5.特許ポートフォリオ(1)基盤技術に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況ADLib®システム基盤特許体細胞相同組換え(*)の促進方法及び特異的抗体(*)の作製方法理研、当社日本、米国、欧州、中国で成立。体細胞相同組換えの誘発方法理研、当社日本、米国、欧州、中国で成立。ヒトADLib®システムヒト抗体を産生する細胞当社日本・欧州・中国で成立。米国で出願中。抗体の取得方法当社日本・米国で成立。欧州・中国で出願中。抗体可変領域の多様化を促進する方法当社欧州で成立。日本・米国・中国で出願中。 (2)リード抗体に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況CBA-1205in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む計7ヵ国で成立。がん治療用医薬当社PCT出願済CBA-15355T4及びCD3に対する3つの結合ドメインを含む融合タンパク質当社 日本・米国・英国・中国等計7ヵ国で成立。欧州等で出願中。LIV-2008in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(ヒト化)当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む計10ヵ国で成立。他の海外諸国で出願中。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(マウス)当社(リブテックから承継)日本、米国、欧州を含む計13ヵ国で成立。 BMAA抗セマフォリン3A抗体、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療(公)横浜市立大学、当社 日本、米国、欧州で成立。PCDC抗CDCP1抗体当社PCT出願済
FY2020|7,531 文字|出典 docID: S100L137
3【事業の内容】1.事業環境(1)抗体医薬品とは ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体というタンパク質を作る能力(抗原抗体反応)が備わっています。これは免疫と言われる身体を守る防御システムの一つです。こうして体内で作られた抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができます。この抗体というタンパク質を医薬品として体の外から投与するものが抗体医薬品です。従来の抗がん剤等では、正常な細胞にも作用することで副作用を引き起こすこともありますが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞だけが持っている抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。 <抗原抗体反応> 現在、世界で承認されている抗体医薬は70品目を超えており、がんや自己免疫疾患の領域では目覚ましい治療効果をもたらしたものもあります。しかしながら、膵臓がん、肺がん、アルツハイマー病、糖尿病合併症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等、未だに治療満足度、薬剤貢献度が低い疾患が残されており、また、既存の抗体治療薬よりも優れた抗体に対するニーズも存在します。当社は、自社の技術プラットフォームを初めとする抗体・タンパク質周辺技術を最大限に活用して、そのようなアンメットニーズ(*)の高い分野に対する抗体創薬に取り組んでおります。 (2)抗体医薬品市場 抗体医薬品は、がんや自己免疫疾患等を中心に医療の現場で処方されており、近年の全世界医療用医薬品の市場においては売上高上位10位のうちの約半数を占めるまでになっております。更に、Evaluate Pharma社の予測(Evaluate Pharma World Preview 2020)によると、バイオ医薬品処方箋薬の全世界売上は、2019年から2026年にかけて年平均9.6%と急速な成長を続け、上位100品目の売上全体に占めるバイオ医薬品のシェアは2026年までに50%を超える見通しです。また、抗体薬物複合体(ADC)やバイスペシフィック抗体(*)に代表される多価抗体などの次世代型抗体については、従来よりも有用性を高めた医薬品としての開発を目指して現在多くの臨床試験(*)が行われており、今後も抗体医薬品市場の一層の拡大が期待されております。 <世界の医薬品総売上高とバイオ医薬品の占有率>(出典:Evaluate World Preview 2020のデータを基に当社で作成) 2.当社のビジネスモデル(1)経営理念 当社は、「医療のアンメットニーズに創薬の光を」というミッションのもと、「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」という経営ビジョンを掲げ、アンメットニーズの高い疾患領域に対する抗体創薬と創薬支援を事業の基本として、成長性と安定性を兼備した経営を目指しております。 (2)ビジネスモデル 当社は、独自の抗体作製技術(ADLib®システム)をはじめとする複数の抗体作製技術を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を開発する「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しております。「創薬事業」では、抗体医薬品の基礎・探索研究(*)、前臨床段階を主な事業領域として、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬開発を行い、開発した医薬候補品を製薬企業等に導出(*)します。一部のパイプライン(*)については初期臨床試験を実施したのちに導出を行います。また、「創薬支援事業」では製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システムやB cell cloning(*)といった抗体作製技術を用いた抗体作製サービスの提供、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務の提供を行います。このように、当社は拡大する抗体医薬品市場において製薬企業等に製品やサービスの提供を行うことを主たる事業としており、これにより当社は、契約一時金、マイルストーン(*)、ロイヤルティ(*)、受託サービス料等の対価を企業等から受け取り収益を獲得します。 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 <当社の収益モデル・事業系統図> <事業系統図(創薬事業)> <事業系統図(創薬支援事業)> (3)当社の基本戦略 当社は保有する複数の抗体作製技術(ADLib®システム、ハイブリドーマ法(*)、マウスやニワトリを用いたB cell cloningや、TC社のヒト抗体産生マウス/ラットのような外部の抗体作製技術を用いて標的抗原に対する多様な抗体を作製し、リード抗体(*)を取得することで、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心とした、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品を生み出す、No.1ベンチャー企業を目指します。 (4)当社の基本戦略を遂行するための3つの強み・複数の抗体作製技術を統合的に運用して創薬事業を展開していること・抗原・タンパク質調製や抗体精製、動物試験、抗体エンジニアリング等の創薬基盤技術および創薬支援機能、更に臨床開発機能を有していること・専門性の高い人材が持つネットワークを通じて外部からの創薬ターゲット(抗原)を獲得できること 3.事業内容(1)創薬事業 創薬事業は、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究と開発(共同開発を含む)を行い、その研究成果物であるリード抗体等の知的財産を製薬企業等に実施許諾し、契約一時金収入、マイルストーンおよびロイヤルティ、並びに共同開発等に係る収入等を獲得する事業です。 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、前臨床開発、臨床開発、申請・承認、製造・販売のプロセスがありますが、当社の創薬事業においては、基礎・探索研究段階から前臨床開発および初期臨床開発段階までの抗体医薬品開発の上流工程を主な事業領域としております。本事業においては、自社で開発候補抗体(ヒト化抗体(*)、ヒト抗体)の前臨床データパッケージまでを作成し、早期導出を図ることを基本戦略としますが、CBA-1205のように特定のプログラムにおいては抗体の価値を高め、収益性の向上が期待できる自社での初期臨床開発も行ってまいります。 また、当該事業領域におけるパイプラインは、自社の抗体作製技術等を用いた創薬研究活動や外部からの新規パイプラインの導入(*)によって、拡充を図ってまいります。 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。 ADCT-701は、がん細胞の表面に発現しているDLK-1というタンパク質に結合するヒト化モノクローナル抗体(*)に細胞毒性のある化合物を結合した薬物複合体であり、がん細胞の増殖を抑制することが動物モデルを用いた試験により確認されています。DLK-1は、幹細胞(*)や前駆細胞(*)のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかにされていましたが、肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においてもDLK-1が発現しており、その増殖に関与していることが明らかにされています。そのためDLK-1はがん治療における新たな標的分子としての可能性が期待されています。 LIV-2008およびLIV-2008bは、乳がん、大腸がん、肺がんをはじめとする多くの固形がんの細胞表面に発現している抗原(標的分子)TROP-2の、それぞれ異なる領域に結合する2種類のヒト化モノクローナル抗体で、どちらもin vivoでがんの増殖阻害活性を示します。TROP-2は正常組織と比較して、多種の固形がんにおいて発現が亢進していることから、がん治療の標的分子として期待されており、当社の研究チームは各種のマウスモデルで本抗体が強力な抗がん作用を有することを見出しております。 CBA-1205は、肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現している抗原DLK-1に選択的に結合する遺伝子組換えヒトIgG1型モノクローナル抗体です。糖鎖改変技術によって抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性(*))を増強させたファースト・イン・クラス(*)抗体で、DLK-1を発現するがん細胞を移植したマウスに対して強力な抗腫瘍活性を示します。 CBA-1535は3つの抗原結合部位のうち、2つは多くの固形がんに発現がみられるタンパク質5T4に結合し、残りの1つが免疫細胞であるT細胞上のタンパク質CD3に結合する、Tribody技術を用いて創製されたT cell engagerというカテゴリに入る、がん治療用候補抗体です。患者さんが元来保有している免疫機構を司るT細胞の働きを促進することで、がん細胞を攻撃します。想定される適応疾患としては、悪性中皮腫、小細胞肺がんや非小細胞肺がんなどのアンメットニーズが高い領域での開発が期待されます。 BMAA(*)はセマフォリン3Aに特異的に結合し、セマフォリン3Aを介した細胞内応答を抑制します。当社はADLib®システムによりニワトリIgM抗セマフォリン3A抗体を作製することに成功し、治療用医薬品の開発を目的としてヒト化を行いました。糖尿病黄斑浮腫(DME)をはじめ、免疫系疾患、中枢疾患等、セマフォリン3Aとの関連が知られている幅広い疾患領域での適応が期待されます。 PCDCは、幅広い固形がん(肺癌、膵臓がん等)で発現が確認されている抗原をターゲットとし、結合特性等に基づく広い有効域・安全域が期待される抗体です。がん細胞上の標的に結合した後、細胞内に取り込まれやすい性質を利用して、抗体に薬物を結合したADC用途を中心とした開発が期待されます。 また、当社では、自社単独または共同研究により新規のターゲットに対する複数の抗体創薬プロジェクトを推進しております。新規創薬プロジェクトの発足においては、大学・研究機関等から、従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手するなど、ターゲット(抗原)の獲得も積極的に行っております。それらの抗原に対する抗体が、疾患モデル動物などを用いた評価により、治療効果を有する事を確認した場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保した上で研究活動を推進いたします。また当社の創薬力を向上するため、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、当社が保有する抗体作製技術の改良や、創薬基盤技術における課題解決を図るなど技術革新にも取り組んでおります。 (2)創薬支援事業 製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システムやB cell cloningといった抗体作製技術を用いた抗体作製サービス、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を提供することによってサービス料等の収入を獲得する事業です。<主なサービスの内容>サービス項目内 容タンパク質・抗原調製、抗体の発現精製抗体作製に必要な組換えタンパク質(抗原)や、研究開発用途の抗体などを細胞に発現させ、精製を行います。種類に応じた発現・精製方法を選び、純度や物性の分析を行います。安定発現細胞株作製安定的に組換えタンパク質(抗原や抗体)を供給できるように、遺伝子組換え技術を用いて、組換えタンパク質を効率よく発現する細胞株を作製します。ADLib®システムやB cell cloningによる抗体作製ADLib®システムやB cell cloningといった抗体作製技術を用い、創薬研究に用いるモノクローナル抗体作製を行います。当社の抗体創薬の知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせた抗体作製プランを提案いたします。ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務当社で培ったADLib®システムの技術・ノウハウを活かし抗体の結合力(抗体親和性)を向上させることで、より薬効の高い抗体医薬の精製が期待できます。 4.当社の抗体作製技術(1) 抗体作製技術 当社は独自技術のADLib®システムのほか、ハイブリドーマ法、マウスやニワトリを用いたB cell cloningやTribody作製技術など、複数の抗体作製技術を保有しております。また、TC社のヒト抗体産生マウス/ラット等の外部の抗体作製技術も用いることにより、それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力を最大化してまいります。 <抗体作製技術とその特徴>抗体作製技術技術の特性ADLib®システム・ 抗原があれば10日前後という短期間で直接ヒトIgG抗体が獲れる・ 自律的多様化という独創的な抗体ライブラリ(*)の特徴を生かし、抗原特異的抗体の取得から抗体の高親和性化までを連続的に行うことが可能・ 動物免疫(*)と異なり、自己抗原への免疫寛容(*)の影響を受けないため、理論的にはあらゆる配列のタンパク質を認識する抗体を取得できる可能性がある ハイブリドーマ法・ 動物免疫による抗体作製法で、最もよく用いられる・ 手法が確立されており、医薬品化された実績も多い・ ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる B cell cloning・ 動物免疫を行った後、ハイブリドーマを作製せずに抗体の配列を決定するため、ハイブリドーマ法より短期間で目的の抗体を得ることができる・ 抗原特異的なB細胞(*)の検出率がハイブリドーマ法よりも高く、取りこぼしが少ない・ ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる Tribody・2つ以上の異なる抗原結合部位を持つ抗体であるTribodyおよびその発展型多重特異性抗体のデザイン・エンジニアリング・創薬開発を可能にする技術プラットフォームをいう・腫瘍局所へのT細胞誘導活性を有する抗体を作製することができる・2018年12月にBiotecnol社より取得 (2) 当社独自の抗体作製技術ADLib®システム① ADLib®システムの仕組み ニワトリのB細胞由来のDT40細胞(*)は、様々な種類の抗体を生み出すメカニズムを持っています。当社では、このメカニズムをトリコスタチンA(以下「TSA」といいます)(*)という薬剤により人為的に活性化させて、試験管内において短期間で多種多様なモノクローナル抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。そのライブラリの中からターゲットである抗原に特異的に結合する抗体を取得します。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。 <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図> ② ヒトADLib®システムについて ヒトADLib®システムは、遺伝子組換え技術によりDT40細胞のトリ抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に置き換えられており、ヒト化の工程を経ることなく、ヒト抗体を直接取得することができます。 <ヒトADLib®システムの概略> ③ 従来の抗体作製技術との主な違い ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。a.従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得 ヒトを含む動物は、体内に入ってきた異物に対しては免疫反応(*)が起きて抗体を作りますが、がんの様に、自分を構成している成分が何かのきっかけにより過剰に体内で増えて病気を引き起こすような場合には、そもそもが自身の体の成分なので異物とはみなされず、免疫寛容とよばれる仕組みにより抗体を作ることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を超えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であってもマウスで抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、生体外で抗体を作製するシステムなので、免疫寛容による制限を受けることはありません。b.迅速な抗体取得 ADLib®システムでは、抗体セレクションの全工程を試験管内で実現したことにより、10日程度でターゲット特異的な抗体を判定することが可能で、他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。 5.特許ポートフォリオ(1)基盤技術に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況ADLib®システム基盤特許体細胞相同組換え(*)の促進方法及び特異的抗体(*)の作製方法(国)理化学研究所、当社日本、米国、欧州、中国で成立。体細胞相同組換えの誘発方法(国)理化学研究所、当社日本、米国、欧州、中国で成立。ヒトADLib®システムヒト抗体を産生する細胞当社日本で成立。米国、欧州、中国で出願中。 (2)リード抗体に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況CBA-1205in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体当社((株)リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む6カ国で成立。他、海外で出願中。CBA-15355T4及びCD3に対する3つの結合ドメインを含む融合タンパク質当社 日本・米国・英国で成立。欧州・中国等で出願中。LIV-2008in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(ヒト化)当社((株)リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む10ヵ国で成立。他の海外諸国で出願中。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(マウス)当社((株)リブテックから承継)日本、米国、欧州を含む13ヵ国で成立。他、海外で出願中。BMAA抗セマフォリン3A抗体、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療(公)横浜市立大学、当社 日本、米国、欧州で成立。
FY2019|7,188 文字|出典 docID: S100IBTS
3【事業の内容】1.事業環境(1)抗体医薬品とは ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体というタンパク質を作る能力(抗原抗体反応)が備わっています。これは免疫と言われる身体を守る防御システムの一つです。こうして体内で作られた抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができます。この抗体というタンパク質を医薬品として体の外から投与するものが抗体医薬品です。従来の抗がん剤等では、正常な細胞にも作用することで副作用を引き起こすこともありますが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞だけが持っている抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。 <抗原抗体反応> 現在、世界で承認されている抗体医薬は70品目を超えており、がんや自己免疫疾患の領域では目覚ましい治療効果をもたらしたものもあります。しかしながら、膵臓がん、肺がん、アルツハイマー病、糖尿病合併症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等、未だに治療満足度、薬剤貢献度が低い疾患が残されており、また、既存の抗体治療薬よりも優れた抗体に対するニーズも存在します。当社は、自社の技術プラットフォームを初めとする抗体・タンパク質周辺技術を最大限に活用して、そのようなアンメットニーズ(*)の高い分野に対する抗体創薬に取り組んでおります。 (2)抗体医薬品市場 2019年に米国FDAによって承認された抗体医薬は7品目あり、この内3品目ががん領域、4品目がその他の領域でした。このように、抗体医薬品は、がんや自己免疫疾患等を中心に医療の現場で処方されており、近年の全世界医療用医薬品の市場においては売上高上位10位のうちの半数を占めるまでになっております。オプジーボ(一般名ニボルマブ)等に代表される免疫チェックポイント阻害剤(*)は、抗体によるがんの治療法に大きな影響を与えました。また、抗体薬物複合体(ADC)やバイスペシフィック抗体(*)に代表される多価抗体などの次世代型抗体については、従来よりも有用性を高めた医薬品としての開発を目指して現在多くの臨床試験(*)が行われており、今後も抗体医薬品市場の一層の拡大が期待されております。 Evaluate Pharma®の「Evaluate World Preview 2019,Outlook to 2024」によりますと、抗体医薬を含むバイオ医薬品の売上高は2020年には医薬品総売上高に占める割合の30%に達すると予測されており、バイオ医薬品の売上の増加は今後もしばらく継続するものと見込まれております。<世界の医薬品総売上高とバイオ医薬品の占有率>(出典:Evaluate World Preview 2019のデータを基に当社で作成) 2.当社のビジネスモデル(1)経営理念 当社は、「医療のアンメットニーズに創薬の光を」というミッションのもと、「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」という経営ビジョンを掲げ、アンメットニーズの高い疾患領域に対する抗体創薬と創薬支援を事業の基本として、成長性と安定性を兼備した経営を目指しております。 (2)ビジネスモデル 当社は、独自の抗体作製技術(ADLib®システム)をはじめとする複数の抗体作製技術を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を開発する「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しております。「創薬事業」では、抗体医薬品の基礎・探索研究(*)、前臨床段階を主な事業領域として、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬開発を行い、開発した医薬候補品を製薬企業等に導出(*)します。一部のパイプライン(*)については初期臨床試験を実施したのちに導出を行います。また、「創薬支援事業」では製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システムやB cell cloning(*)といった抗体作製技術を用いた抗体作製サービスの提供、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務の提供を行います。このように、当社は拡大する抗体医薬品市場において製薬企業等に製品やサービスの提供を行うことを主たる事業としており、これにより当社は、契約一時金、マイルストーン(*)、ロイヤルティ(*)、受託サービス料等の対価を企業等から受け取り収益を獲得します。 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 <当社の収益モデル・事業系統図> <事業系統図(創薬事業)> <事業系統図(創薬支援事業)> (3)当社の基本戦略 当社は保有する複数の抗体作製技術(ADLib®システム、ハイブリドーマ法(*)、マウスやニワトリを用いたB cell cloning、TC社のヒト抗体産生マウス/ラットを利用した作製法など)を用いて標的抗原に対する多様な抗体を作製し、リード抗体(*)を取得することで、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心とした、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品を生み出す、No.1ベンチャー企業を目指します。 (4)当社の基本戦略を遂行するための3つの強み・複数の抗体作製技術を統合的に運用して創薬事業を展開していること・抗原・タンパク質調製や抗体精製、動物試験、抗体エンジニアリング等の創薬基盤技術および創薬支援機能を有していること・専門性の高い人材が持つネットワークを通じて外部からの創薬ターゲット(抗原)を獲得できること 3.事業内容(1)創薬事業 創薬事業は、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究と開発(共同開発を含む)を行い、その研究成果物であるリード抗体等の知的財産を製薬企業等に実施許諾し、契約一時金収入、マイルストーンおよびロイヤルティ、並びに共同研究等に係る収入等を獲得する事業です。 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、前臨床開発、臨床開発、申請・承認、製造・販売のプロセスがありますが、当社の創薬事業においては、基礎・探索研究段階から前臨床開発および初期臨床開発段階までの抗体医薬品開発の上流工程を主な事業領域としております。本事業においては、自社で開発候補抗体(ヒト化抗体(*)、ヒト抗体)の前臨床データパッケージまでを作成し、早期導出を図ることを基本戦略としますが、特定のプログラムにおいては抗体の価値を高め、収益性の向上が期待できる自社での初期臨床開発も行ってまいります。 また、当該事業領域におけるパイプラインは、自社の抗体作製技術等を用いた創薬研究活動や外部からの新規パイプラインの導入(*)によって、拡充を図ってまいります。 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。 ADCT-701は、がん細胞の表面に発現しているDLK-1というタンパク質に結合するヒト化モノクローナル抗体(*)に細胞毒性のある化合物を結合した薬物複合体であり、がん細胞の増殖を抑制することが動物モデルを用いた試験により確認されています。DLK-1は、幹細胞(*)や前駆細胞(*)のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかにされていましたが、肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においてもDLK-1が発現しており、その増殖に関与していることが明らかにされています。そのためDLK-1はがん治療における新たな標的分子としての可能性が期待されています。 CBA-1205(ADCC活性(*)増強型 ヒト化抗DLK-1モノクローナル抗体) CBA-1535(ヒト化抗5T4・抗CD3二重特異性抗体)ターゲットDLK-15T4、CD3想定適応疾患難治性の癌種である肝細胞がん、肺がん等悪性中皮腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん等期待DLK-1は幹細胞や前駆細胞のような未熟な細胞の増殖・分化を制御し、これまでに肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においても発現し、その増殖に関与していることが明らかとなった新しいがん治療の標的になる可能性がある分子。ファースト・イン・クラス(*)候補抗体。臨床での安全性が確認されているがん抗原に対する抗体と、ヒト化抗CD3抗体をTribody(*)プラットフォームに載せて多価抗体とすることで、薬効・安全性を高めた医薬としての開発が期待される。 LIV-2008/2008b(ヒト化抗TROP-2モノクローナル抗体)BMAA(*)(ヒト化抗セマフォリン3Aモノクローナル抗体)ターゲットTROP-2セマフォリン3A想定適応疾患乳がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん等糖尿病黄斑浮腫(DME)期待TROP-2は、正常組織に比べ、乳がん、大腸がんのほか、膵がん、前立腺がん、肺がん等の複数の固形がんにおいて発現が増大しており、がんの悪性度に関連していることが複数報告されている分子。Naked抗体(*)に加えてADC等の強い薬効を期待した開発を狙う。免疫系疾患、中枢疾患等、セマフォリン3Aとの関連が知られている幅広い疾患領域での適応が期待される。 また、当社では、自社単独または共同開発により新規のターゲットに対する複数の抗体創薬プロジェクトを推進しております。新規創薬プロジェクトの発足においては、大学・研究機関等から、従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手するなど、ターゲット(抗原)の獲得も積極的に行っております。それらの抗原に対する抗体が、疾患モデル動物などを用いた評価により、治療効果を有する事を確認した場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保した上で研究活動を推進いたします。また当社の創薬力を向上するため、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、当社が保有する抗体作製技術の改良や、創薬基盤技術における課題解決を図るなど技術革新にも取り組んでおります。 (2)創薬支援事業 製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システムやB cell cloningといった抗体作製技術を用いた抗体作製サービス、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を提供することによってサービス料等の収入を獲得する事業です。<主なサービスの内容>サービス項目内 容タンパク質・抗原調製、抗体の発現精製抗体作製に必要な組換えタンパク質(抗原)や、研究開発用途の抗体などを細胞に発現させ、精製を行います。種類に応じた発現・精製方法を選び、純度や物性の分析を行います。安定発現細胞株作製安定的に組換えタンパク質(抗原や抗体)を供給できるように、遺伝子組換え技術を用いて、組換えタンパク質を効率よく発現する細胞株を作製します。ADLib®システムやB cell cloningによる抗体作製ADLib®システムやB cell cloningといった抗体作製技術を用い、創薬研究に用いるモノクローナル抗体作製を行います。当社の抗体創薬の知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせた抗体作製プランを提案いたします。ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務当社で培ったADLib®システムの技術・ノウハウを活かし抗体の結合力(抗体親和性)を向上させることで、より薬効の高い抗体医薬の精製が期待できます。 4.当社の抗体作製技術(1) 抗体作製技術 当社は独自技術のADLib®システムのほか、ハイブリドーマ法、マウスやニワトリを用いたB cell cloning、TC社のヒト抗体産生マウス/ラットを利用した抗体作製、Tribody作製技術など、複数の抗体作製技術を保有しています。また、それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力を最大化してまいります。 <抗体作製技術とその特徴>抗体作製技術技術の特性ADLib®システム・ 抗原があれば10日前後と短期間でヒトIgG抗体が獲れる・ ヒト化が不要・ 抗体ライブラリ(*)の多様性を自律的に高めることができる・ 動物免疫(*)と異なり、自己抗原への免疫寛容(*)の影響を受けないため、理論的にはあらゆる配列のタンパク質を認識する抗体が取得できる可能性がある ハイブリドーマ法・ 動物免疫による抗体作製法で、最もよく用いられる・ 手法が確立されており、医薬品化された実績も多い・ ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる B cell cloning・ 動物免疫を行った後、ハイブリドーマを作製せずに抗体の配列を決定するため、ハイブリドーマ法より短期間で目的の抗体を得ることができる・ 抗原特異的なB細胞(*)の検出率がハイブリドーマ法よりも高く、取りこぼしが少ない・ ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる Tribody・2つ以上の異なる抗原結合部位を持つ抗体であるTribodyおよびその発展型多重特異性抗体のデザイン・エンジニアリング・創薬開発を可能にする技術プラットフォームをいう・腫瘍局所へのT細胞誘導活性を有する抗体を作製することができる・2018年12月にBiotecnol社より取得 (2) 当社独自の抗体作製技術ADLib®システム① ADLib®システムの仕組み ニワトリのB細胞由来のDT40細胞(*)は、様々な種類の抗体を生み出すメカニズムを持っています。当社では、このメカニズムをトリコスタチンA(以下「TSA」といいます)(*)という薬剤により人為的に活性化させて、試験管内において短期間で多種多様なモノクローナル抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。そのライブラリの中からターゲットである抗原に特異的に結合する抗体を取得します。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。 <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図> ② ヒトADLib®システムについて ヒトADLib®システムは、遺伝子組換え技術によりDT40細胞のトリ抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に置き換えられており、ヒト化の工程を経ることなく、ヒト抗体を取得することができます。 <ヒトADLib®システムの概略> ③ 従来の抗体作製技術との主な違い ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。a.従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得 ヒトを含む動物は、体内に入ってきた異物に対しては免疫反応(*)が起きて抗体を作りますが、がんの様に、自分を構成している成分が何かのきっかけにより過剰に体内で増えて病気を引き起こすような場合には、そもそもが自身の体の成分なので異物とはみなされず、免疫寛容とよばれる仕組みにより抗体を作ることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を超えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であってもマウスで抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、生体外で抗体を作製するシステムなので、免疫寛容による制限を受けることはありません。b.迅速な抗体取得 ADLib®システムでは、抗体セレクションの全工程を試験管内で実現したことにより、10日程度でターゲット特異的な抗体を判定することが可能で、他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。 5.特許ポートフォリオ(1)基盤技術に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況ADLib®システム基盤特許体細胞相同組換え(*)の促進方法及び特異的抗体(*)の作製方法(国)理化学研究所、当社日本、米国、欧州、中国で成立。体細胞相同組換えの誘発方法(国)理化学研究所、当社日本、米国、欧州、中国で成立。ヒトADLib®システムヒト抗体を産生する細胞当社日本、米国、欧州、中国で出願中。 (2)リード抗体に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況CBA-1205in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体当社((株)リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む5カ国で成立。他の海外諸国で出願中。LIV-2008in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(ヒト化)当社((株)リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国を含む8ヵ国で成立。他の海外諸国で出願中。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(マウス)当社((株)リブテックから承継)日本、米国、欧州を含む12ヵ国で成立。他の海外諸国で出願中。BMAA抗セマフォリン3A抗体、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療(公)横浜市立大学、当社 日本、米国、欧州で成立。
FY2018|6,949 文字|出典 docID: S100FH44
3【事業の内容】1.事業環境(1)抗体医薬品とは ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体を作って身体を守る防御システム(抗原抗体反応)が備わっています。こうして得られた抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができます。この特徴を医薬品に活かしたものが抗体医薬品です。従来の抗がん剤等では、正常な細胞にも作用することで副作用を引き起こすこともありますが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞に特異的に発現が認められる抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。 <抗原抗体反応> 現在、世界で承認されている抗体医薬は約70品目あり、がんや自己免疫疾患の領域では目覚ましい治療効果をもたらしたものもあります。しかしながら、膵臓がん、肺がん、アルツハイマー病、糖尿病合併症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等、未だに治療満足度、薬剤貢献度が低い疾患が残されており、また、既存の抗体治療薬よりも優れた抗体に対するニーズも存在します。当社は、自社の技術プラットフォームを最大限に活用して、そのようなアンメットニーズ(*)の高い分野に対する抗体創薬に取り組んでおります。 (2)抗体医薬品市場 バイオ医薬の牽引役である抗体医薬において、京都大学高等研究員の本庶佑特別教授がノーベル医学生理学賞を受賞したことで話題になったオプジーボ(一般名ニボルマブ)などに代表される免疫チェックポイント阻害剤(*)は、製品化された後、その適応症が順次拡大されるとともに、他の抗体医薬品との併用療法によるがん治療の向上を目指した開発研究が多数実施されており、今後も抗体医薬品市場の一層の拡大が期待されております。さらに、抗体の創出・改変・修飾などに関する技術は多方面で発展が認められており、抗体に強力な抗がん剤を結合させた抗体薬物複合体が進化したり、がん細胞などに発現する二種類の抗原に結合できるように改変されたバイスペシフィック抗体(*)が創出されるなど、抗体を基盤とした創薬が一層活性化してきております。 Evaluate Pharma®の「Evaluate World Preview 2018,Outlook to 2024」によりますと、バイオ医薬品の売上高は2022年には医薬品総売上高に占める割合の30%に達すると予測されており、バイオ医薬品の売上の増加は今後もしばらく継続するものと見込まれております。 <世界の医薬品総売上高とバイオ医薬品の占有率>(出典:Evaluate World Preview 2018のデータを基に当社で作成) 2.当社のビジネスモデル(1)経営理念 当社は、「医療のアンメットニーズに創薬の光を」というミッションのもと、「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」という経営ビジョンを掲げ、アンメットニーズの高い疾患領域に対する抗体創薬と創薬支援を事業の基本として、成長性と安定性を兼備した経営を目指しております。 (2)ビジネスモデル 当社は、独自の抗体作製技術(ADLib®システム)をはじめとする複数の抗体作製技術を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を開発する「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しております。「創薬事業」では、抗体医薬品の基礎・探索研究(*)、前臨床段階を主な事業領域として、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬開発を行い、開発した医薬候補品を製薬企業等に導出(*)します。一部のパイプライン(*)については初期臨床開発を行ったのちに導出を行います。また、「創薬支援事業」では製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システムやB cell cloning(*)といった抗体作製技術を用いた抗体作製サービスの提供を行います。このように、当社は拡大する抗体医薬品市場において製薬企業等に製品やサービスの提供を行うことを主たる事業としており、これにより当社は、契約一時金、マイルストーン(*)、ロイヤルティ(*)、受託サービス料等の対価を企業等から受け取り収益を獲得します。 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 <当社の収益モデル・事業系統図> <事業系統図(創薬事業)> <事業系統図(創薬支援事業)> (3)当社の基本戦略 当社は保有する複数の抗体作製技術(ADLib®システム、ハイブリドーマ法(*)、マウスやニワトリを用いたB cell cloning、TC社のヒト抗体産生マウス/ラットを利用した作製法など)を用いて標的抗原に対する多様な抗体を作製し、リード抗体(*)取得の可能性を高め、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心にアンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品を生み出す、No.1ベンチャー企業を目指します。 (4)当社の基本戦略を遂行するための3つの強み・複数の抗体作製技術を統合的に運用して創薬事業を展開していること・抗原・タンパク質調製や抗体精製、動物試験等の創薬基盤技術および創薬支援機能を有していること・専門性の高い人材が持つネットワークを通じて外部からの創薬ターゲット(抗原)を獲得できること 3.事業内容(1)創薬事業① 事業の内容 創薬事業は、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬開発(共同開発を含む)を行い、その研究成果物であるリード抗体等の知的財産を製薬企業等に実施許諾し、契約一時金収入、マイルストーンおよびロイヤルティ、並びに共同研究等に係る収入等を獲得する事業です。 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、前臨床開発、臨床開発、申請承認、製造・販売のプロセスがありますが、当社の創薬事業においては、基礎・探索研究段階から前臨床開発および初期臨床開発段階までの抗体医薬品開発の上流工程を主な事業領域としております。本事業においては、自社で開発候補抗体(ヒト化抗体(*)、ヒト抗体)の前臨床データパッケージまでを作成し、早期導出を図ることを基本戦略としますが、特定のプログラムにおいては導出の可能性を高め、収益性の向上が期待できる自社での初期臨床開発も行ってまいります。 また、当該事業領域におけるパイプラインは、自社の抗体作製技術等を用いた創薬研究活動や外部からの新規パイプラインの導入(*)によって、拡充を図ってまいります。 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。 ADCT-701は、がん細胞の表面に発現しているDLK-1というタンパク質に結合するヒト化モノクローナル抗体(*)であり、がん細胞の増殖を抑制することが動物モデルを用いた試験により確認されています。DLK-1は、幹細胞(*)や前駆細胞(*)のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかにされていましたが、肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においてもDLK-1が発現しており、その増殖に関与していることが明らかにされています。そのためDLK-1はがん治療における新たな標的分子としての可能性が期待されています。 CBA-1205(ADCC活性(*)増強型 ヒト化抗DLK-1モノクローナル抗体) CBA-1535(ヒト化抗5T4・抗CD3二重特異性抗体)ターゲットDLK-15T4、CD3想定適応疾患難治性の癌腫である肝細胞がん、肺がん等悪性中皮腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん等期待DLK-1は幹細胞や前駆細胞のような未熟な細胞の増殖・分化を制御し、これまでに肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においても発現し、その増殖に関与していることが明らかとなった新しいがん治療の標的になる可能性がある分子。 ファースト・イン・クラス(*)候補抗体。臨床での安全性が確認されているがん抗原に対する抗体と、ヒト化抗CD3抗体をTribody(*)プラットフォームに載せて多価抗体とすることで、薬効・安全性を高めた医薬としての開発が期待される。 LIV-2008/2008b(ヒト化抗TROP-2モノクローナル抗体)BMAA(ヒト化抗セマフォリン3Aモノクローナル抗体)ターゲットTROP-2セマフォリン3A想定適応疾患乳がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん等糖尿病黄斑浮腫(DME)期待TROP-2は、正常組織に比べ、乳がん、大腸がんのほか、膵がん、前立腺がん、肺がん等の複数の固形がんにおいて発現が増大しており、がんの悪性度に関連していることが複数報告されている分子。Naked抗体(*)に加えてADC等の強い薬効を期待した開発を狙う。免疫系疾患、中枢疾患等、セマフォリン3Aとの関連が知られている幅広い疾患領域での適応が期待される。 また、当社では、自社単独または共同開発により新規のターゲットに対する複数の抗体創薬プロジェクトを推進しております。新規創薬プロジェクトの発足においては、大学・研究機関等から、従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手するなど、ターゲット(抗原)の獲得も積極的に行っております。それらの抗原に対する抗体が、疾患モデル動物などを用いた検討により、治療効果を有する事を確認した場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保した上で研究活動を推進いたします。また当社の創薬力を向上するため、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、当社が保有する抗体作製技術の改良や、創薬基盤技術における課題解決を図るなど技術革新にも取り組んでおります。 (2)創薬支援事業 製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システムやB cell cloningといった抗体作製技術を用いた抗体作製サービスを提供することによってサービス料等の収入を獲得する事業です。<主なサービスの内容>サービス項目内 容タンパク質・抗原調製、抗体の発現精製抗体作製に必要な組換えタンパク質(抗原)や、研究開発用途の抗体などを細胞に発現させ、精製を行います。種類に応じた発現・精製方法を選び、純度や物性の分析を行います。安定発現細胞株作製安定的に組換えタンパク質(抗原や抗体)を供給できるように、遺伝子組換え技術を用いて、組換えタンパク質を効率よく発現する細胞株を作製します。ADLib®システムやB cell cloningによる抗体作製ADLib®システムやB cell cloningといった抗体作製技術を用い、創薬研究に用いるモノクローナル抗体作製を行います。当社の抗体創薬の知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせた抗体作製プランを提案いたします。 4.当社の抗体作製技術(1) 抗体作製技術 当社は独自技術のADLib®システムのほか、ハイブリドーマ法、マウスやニワトリを用いたB cell cloning、TC社のヒト抗体産生マウス/ラットを利用した作製法など、複数の抗体作製技術を保有しています。また、2018年12月にはTribody作製技術であるTrisoma®を新たに取得いたしました。 それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力を最大化してまいります。 <抗体作製技術とその特徴>抗体作製技術技術の特性ADLib®システム・ ヒトADLib®システムを用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる・ 動物免疫(*)が不要なので、抗体取得にかかる時間が短縮できる・ 抗体ライブラリ(*)の多様性を自律的に高めることができる・ 動物免疫と異なり、自己抗原への免疫寛容(*)の影響を受けないため、理論的にはあらゆる配列のタンパク質を認識する抗体が取得できる可能性があるハイブリドーマ法・ 動物免疫による抗体作製法で、最もよく用いられる・ 手法が確立されており、医薬品化された実績も多い・ ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる B cell cloning・ 動物免疫を行った後、ハイブリドーマを作製せずに抗体の配列を決定するため、ハイブリドーマ法より短期間で目的の抗体を得ることができる・ 抗原特異的なB細胞(*)の検出率がハイブリドーマ法よりも高く、取りこぼしが少ない・ ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる Trisoma®・2つ以上の異なる抗原結合部位を持つ抗体であるTribodyおよびその発展型多重特異性抗体のデザイン・エンジニアリング・創薬開発を可能にする技術プラットフォームをいう・腫瘍局所へのT細胞誘導活性を有する抗体を作製することができる・2018年12月にBiotecnol社より取得 (2) 当社独自の抗体作製技術ADLib®システム① ADLib®システムの仕組み ニワトリのB細胞由来のDT40細胞(*)は、様々な種類の抗体を生み出すメカニズムを持っています。当社では、このメカニズムをトリコスタチンA(以下「TSA」といいます)(*)という薬剤により人為的に活性化させて、試験管内において短期間で多種多様なモノクローナル抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。そのライブラリの中からターゲットである抗原に特異的に結合する抗体を取得します。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。 <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図> ② ヒトADLib®システムについて ヒトADLib®システムは、遺伝子組換え技術によりDT40細胞のトリ抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に置き換えられており、ヒト化の工程を経ることなく、ヒト抗体を取得することができます。 <ヒトADLib®システムの概略> ③ 従来の抗体作製技術との主な違い ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。a.従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得 ヒトを含む動物は、体内に入ってきた異物に対しては免疫反応(*)が起きて抗体を作りますが、自分を構成している成分に対しては、免疫寛容とよばれる仕組みにより抗体を作ることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を超えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であっても抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、生体外で抗体を作製するシステムなので、免疫寛容による制限を受けることはありません。b.迅速な抗体取得 ADLib®システムでは、抗体セレクションの全工程を試験管内で実現したことにより、10日程度でターゲット特異的な抗体を判定することが可能で、他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。 5.特許ポートフォリオ(1)基盤技術に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況ADLib®システム基盤特許体細胞相同組換え(*)の促進方法及び特異的抗体(*)の作製方法(国)理化学研究所、当社日本、米国、欧州、中国で成立。体細胞相同組換えの誘発方法(国)理化学研究所、当社日本、米国、欧州、中国で成立。ヒトADLib®システムヒト抗体を産生する細胞当社日本、米国、欧州、中国で出願中。 (2)リード抗体に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況CBA-1205in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体当社((株)リブテックから承継)日本、米国、欧州、中国で成立。他の海外諸国で出願中。LIV-2008in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(ヒト化)当社((株)リブテックから承継)日本、米国、中国を含む5ヵ国で成立。欧州等で出願中。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(マウス)当社((株)リブテックから承継)日本、米国、欧州を含む9ヵ国で成立。他の海外諸国で出願中。BMAA抗セマフォリン3A抗体(*)、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療(公)横浜市立大学、当社 米国で成立。日本、欧州で出願中。
FY2017|7,275 文字|出典 docID: S100CMFH
3【事業の内容】1.事業環境(1)抗体医薬品市場 バイオ医薬品は、遺伝子組換え技術等のバイオテクノロジーにより創出された医薬品であり、1980年代から実用化されています。その後、抗体作製技術等の技術革新により、分子量が大きく、構造が複雑な抗体医薬品の創出が可能となり、新たな治療手段として、その有用性の高さが臨床的に示されています。 Evaluate Pharma®の「Evaluate World Preview 2017,Outlook to 2022」によりますと、バイオ医薬品の売上高は、2016年には約2,020億ドルに達しており、2020年には約3,200億ドルに達し、医薬品の総売上高に占める割合はほぼ30%に達すると予測されております。売上高上位100位以内の医薬品を見れば、バイオ医薬品の占める割合は2016年には40%を超えており、2020年には52%に達するとも予測されており、バイオ医薬品の売上の増加は今後もしばらく継続するものと見込まれております。 <世界の医薬品総売上高とバイオ医薬品の占有率>(出典:Evaluate World Preview 2017のデータを基に当社で作成) バイオ医薬の牽引役である抗体医薬においては、2017年に国内で新たに5品目が承認されました。特に、オプジーボに代表される抗体の特徴を活かして創出された免疫チェックポイント阻害剤(*)と呼ばれる新しい免疫療法ががん治療の分野で注目されております。さらに、抗体の創出・改変・修飾などに関する技術は多方面で発展が認められており、抗体に強力な抗がん剤を結合させた抗体薬物複合体が進化したり、がん細胞などに発現する二種類の抗原に結合できるように改変されたバイスペシフィック抗体(*)が創出されるなど、抗体を基盤とした創薬が一層活性化してきております。このような状況から、抗体医薬品の市場は今後も拡大傾向にあると推測されます。 (2)抗体医薬品とは何か ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体を作って身体を守る防御システム(抗原抗体反応)が備わっています。こうして得られた抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができます。この特徴を医薬品に活かしたものが抗体医薬品です。従来の抗がん剤等では、正常な細胞にも作用することで副作用を引き起こすこともありますが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞に特異的に発現が認められる抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。 <抗原抗体反応> (3)抗体医薬品が使われている主な疾患 抗体医薬品は、様々な疾患の治療に使われています。次に代表的な疾患を記載します。分 類病 気がん大腸がん、乳がん、非小細胞肺がん、メラノーマ、腎がん、前立腺がん、胃がん、急性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫等アレルギー・免疫関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、キャッスルマン病、喘息、腎臓移植後の急性拒絶(正)反応その他黄斑変性症、骨粗鬆症、感染症(国立医薬品食品衛生研究所 生物医薬品部ホームページより抜粋) 2.当社のビジネスモデル(1)経営理念 当社は、「医療のアンメットニーズ(*)に創薬の光を」というミッションのもと、「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」という経営ビジョンを掲げ、アンメットニーズの高い疾患領域に対する抗体創薬と創薬支援を事業の基本として、成長性と安定性を兼備した経営を目指しております。 (2)ビジネスモデル 当社は、独自の抗体作製技術(ADLib®システム)をはじめとする複数の抗体作製技術を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を開発する「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しております。「創薬事業」では、抗体医薬品の基礎・探索研究(*)、前臨床段階を主な事業領域として、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬開発を行い、開発した医薬候補品を製薬企業等に導出します。また、「創薬支援事業」では製薬企業等に受託研究等を通じて抗原・タンパク質の製造や抗体作製、抗体創薬関連サービスの提供を行います。このように、当社は拡大する抗体医薬品市場において製薬企業等に製品やサービスの提供を行うことを主たる事業としており、これにより当社は、契約一時金、マイルストーン(*)、ロイヤルティ(*)、受託サービス料等の対価を企業等から受け取り収益を獲得します。 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 <当社の収益モデル・事業系統図>(当社作成) <事業系統図(創薬事業)>(当社作成) <事業系統図(創薬支援事業)>(当社作成) (3)当社の基本戦略 当社は保有する複数の抗体作製技術(ADLib®システム、ハイブリドーマ法(*)、マウスやニワトリを用いたB Cell Cloning(*)、TC社のヒト抗体産生マウス/ラットを利用した作製法など)を用いて標的抗原に対する多様な抗体を作製し、リード抗体(*)取得の可能性を高め、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心にアンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品を生み出す、No.1ベンチャー企業を目指します。 (4)当社の基本戦略を遂行するための3つの強み・複数の抗体作製技術を統合的に運用して創薬事業を展開していること・抗原・タンパク質調製や抗体精製、動物試験等の創薬基盤技術および創薬支援機能を有していること・専門性の高い人材が持つネットワークを通じて外部からの創薬ターゲット(抗原)を獲得できること 3.事業内容(1)創薬事業① 事業の内容 創薬事業は、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬開発(共同開発を含む)を行い、その研究成果物であるリード抗体等の知的財産を製薬企業等に導出(*)し、契約一時金収入、マイルストーンおよびロイヤルティ、並びに共同研究等に係る収入等を獲得する事業です。 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、前臨床開発、臨床開発、申請承認、製造・販売のプロセスがありますが、当社の創薬事業においては、基礎・探索研究段階から前臨床開発および初期臨床開発段階までの抗体医薬品開発の上流工程を主な事業領域としております。本事業においては、自社で開発候補抗体(ヒト化抗体(*)、ヒト抗体)の前臨床データパッケージまでを作成し、早期導出を図ることを基本戦略としますが、特定のプログラムにおいては導出の可能性を高め、収益性の向上が期待できる自社での初期臨床開発も行ってまいります。 また、当該事業領域におけるパイプライン(*)は、自社の抗体作製技術等を用いた創薬研究活動や外部からの新規パイプラインの導入(*)によって、拡充を図ってまいります。 ② 当社のパイプライン 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。 LIV-1205は、がん細胞の表面に発現しているDLK-1というタンパク質に結合するヒト化モノクローナル抗体(*)であり、がん細胞の増殖を抑制することが動物モデルを用いた試験により確認されています。DLK-1は、幹細胞(*)や前駆細胞(*)のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかにされていましたが、肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においてもDLK-1が発現しており、その増殖に関与していることが明らかにされています。そのためDLK-1はがん治療における新たな標的分子としての可能性が期待されています。 LIV-2008/2008bは、種々の固形がんの細胞表面に発現するTROP-2に結合するヒト化モノクローナル抗体であり、がん細胞の増殖活性を阻害することが動物モデルを用いた試験により確認されています。TROP-2は、正常組織に比べ、乳がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肺がん等の複数の固形がんにおいて発現が増大していることが認められています。さらに、がんの悪性度にも関連していることが複数報告され、海外企業による開発も進められています。 LIV-1205(ヒト化抗DLK-1モノクローナル抗体)LIV-2008/2008b(ヒト化抗TROP-2モノクローナル抗体)ターゲットDLK-1TROP-2高発現がん種(開発ターゲット)肝臓がん、小細胞肺がん、神経芽細胞腫等乳がん、肺がん、大腸がん等ターゲットの新規性新規既知競合なしあり(ADC)ヒトでの有効性未知Immunomedics社がADCで承認申請を予定期待標準療法に不応答のがんを対象疾患としたファースト・イン・クラス(*)の治療等抗体候補乳がん、肺がん等を対象疾患としたベスト・イン・クラス(*)の治療等抗体候補Naked抗体動物モデルでの単独投与試験で、顕著な腫瘍増殖阻害効果を示す動物モデルでの単独投与試験で複数のがん細胞腫において、顕著な腫瘍増殖阻害効果を示すインターナリゼーション(*)活性ありあり(LIV-2008b) BMAA(抗セマフォリン3A抗体(*))は、神経軸索の伸長を抑制するセマフォリン3Aに結合するヒト化モノクローナル抗体で、公立大学法人横浜市立大学、五嶋研究室との共同研究において、ADLib®システムにより取得した抗体です。セマフォリン3Aは現在も世界中で研究が行われており、これまでの研究により、セマフォリン3Aを阻害することにより神経再生が起こること、また炎症・免疫反応やがん、骨の形成、アルツハイマー病、糖尿病合併症等とも関連していることが報告されております。抗セマフォリン3A抗体は、この因子の働きを抑えることによりアンメットニーズの高い各種疾患の治療薬開発に結びつくことが期待される抗体です。 BMAA(ヒト化抗セマフォリン3Aモノクローナル抗体)ターゲットセマフォリン3A(Semaphorin 3A、SEMA3A)想定適応疾患中枢、免疫・炎症疾患、神経疾患、眼科疾患期待免疫系疾患、神経疾患等、セマフォリン3Aとの関連が知られている幅広い疾患領域での適応が期待される。 ③ 創薬プロジェクト 当社では、自社単独または共同開発により新規のターゲットに対する複数の抗体創薬プロジェクトを推進しております。新規創薬プロジェクトの発足においては、大学・研究機関等から、従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手するなど、ターゲット(抗原)の獲得も積極的に行っております。それらの抗原に対する抗体が、疾患モデル動物などを用いた検討により、治療効果を有する事を確認した場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保した上で研究活動を推進いたします。また当社の創薬力を向上するため、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、当社が保有する抗体作製技術の改良や、創薬基盤技術における課題解決を図るなど技術革新にも取り組んでおります。 (2)創薬支援事業 製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システムやB Cell Cloningといった抗体作製技術を用いた抗体作製サービスを提供することによってサービス料等の収入を獲得する事業です。<主なサービスの内容>サービス項目内 容タンパク質・抗原調製、抗体の発現精製抗体作製に必要な組換えタンパク質(抗原)や、研究開発用途の抗体などを細胞に発現させ、精製を行います。種類に応じた発現・精製方法を選び、純度や物性の分析を行います。安定発現細胞株作製安定的に組換えタンパク質(抗原や抗体)を供給できるように、遺伝子組換え技術を用いて、組換えタンパク質を効率よく発現する細胞株を作製します。ADLib®システムやB Cell Cloningによる抗体作製ADLib®システムやB Cell Cloningといった抗体作製技術を用い、創薬研究に用いるモノクローナル抗体作製を行います。当社の抗体創薬の知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせた抗体作製プランを提案いたします。 4.当社の抗体作製技術(1) 抗体作製技術 当社は独自技術のADLib®システムのほか、ハイブリドーマ法、マウスやニワトリを用いたB Cell Cloning、TC社のヒト抗体産生マウス/ラットを利用した作製法など、複数の抗体作製技術を保有しています。それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力を最大化してまいります。 <抗体作製技術とその特徴>抗体作製技術技術の特性ADLib®システム・ 動物免疫(*)が不要なので、抗体取得にかかる時間が短縮できる・ 抗体ライブラリ(*)の多様性を自律的に高めることができる・ 動物免疫と異なり、自己抗原への免疫寛容(*)の影響を受けないため、理論的にはあらゆる配列のタンパク質を認識する抗体が取得できる可能性がある・ ヒトADLib®システムを用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができるハイブリドーマ法・ 動物免疫による抗体作製法で、最もよく用いられる・ 手法が確立されており、医薬品化された実績も多い・ ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができるB Cell Cloning・ 動物免疫を行った後、ハイブリドーマを作製せずに抗体の配列を決定するため、ハイブリドーマ法より短期間で目的の抗体を得ることができる・ 抗原特異的なB細胞(*)の検出率がハイブリドーマ法よりも高く、取りこぼしが少ない・ ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる (2) 当社独自の抗体作製技術ADLib®システム① ADLib®システムの仕組み ニワトリのB細胞由来のDT40細胞(*)は、様々な種類の抗体を生み出すメカニズムを持っています。当社では、このメカニズムをトリコスタチンA(以下「TSA」といいます)(*)という薬剤により人為的に活性化させて、試験管内において短期間で多種多様なモノクローナル抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。そのライブラリの中からターゲットである抗原に特異的に結合する抗体を取得します。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。 <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図>(当社作成) ② ヒトADLib®システムについて ヒトADLib®システムは、遺伝子組換え技術によりDT40細胞のトリ抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に置き換えられており、ヒト化の工程を経ることなく、ヒト抗体を取得することができます。 <ヒトADLib®システムの概略>(当社作成) ③ 従来の抗体作製技術との主な違い ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。a.従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得 ヒトを含む動物は、体内に入ってきた異物に対しては免疫反応(*)が起きて抗体を作りますが、自分を構成している成分に対しては、免疫寛容とよばれる仕組みにより抗体を作ることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を超えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であっても抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、生体外で抗体を作製するシステムなので、免疫寛容による制限を受けることはありません。b.迅速な抗体取得 ADLib®システムでは、ELISA(*)等の免疫化学的アッセイ(*)により10日程度でターゲット特異的な抗体を判定することが可能で、他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。 5.特許ポートフォリオ(1)基盤技術に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況ADLib®システム基盤特許体細胞相同組換え(*)の促進方法及び特異的抗体(*)の作製方法(国)理化学研究所、当社日本、米国、欧州、中国で成立。体細胞相同組換えの誘発方法(国)理化学研究所、当社日本、米国、欧州、中国で成立。ヒトADLib®システムヒト抗体を産生する細胞当社日本、米国、欧州、中国で出願中。 (2)リード抗体に係る主要特許関連発明の名称出願人登録状況LIV-1205in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体(株)リブテック(当社が承継)日本、米国、欧州、中国で成立。他の海外諸国で出願中。LIV-2008in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(ヒト化)(株)リブテック(当社が承継)日本、米国、中国を含む5ヵ国で成立。欧州等で出願中。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(マウス)(株)リブテック(当社が承継)日本、米国、欧州を含む9ヵ国で成立。他の海外諸国で出願中。BMAA抗セマフォリン3A抗体、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療(公)横浜市立大学、当社 米国で成立。日本、欧州で出願中。
FY2016|8,700 文字|出典 docID: S1009Y9T
3【事業の内容】 当社は、当社独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした、抗体医薬品の研究開発等による抗体医薬品の創薬事業及び創薬支援事業を展開しております。 当社は、抗体医薬品の研究段階のうち、基礎・探索(*)研究、創薬研究を主な事業領域とし、創薬基盤技術であるADLib®システムを核として、「創薬事業」「創薬支援事業」を展開しております。市場が拡大している抗体医薬品市場において、当社は製薬企業等にサービスや製品の提供を行なうことを主たる事業としております。これにより当社は、契約一時金、マイルストーン、ロイヤルティ等の対価をクライアントである製薬企業等から受け取ります。 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。 <当社事業の系統図>(当社作成) 1.当社の基本戦略 当社の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした事業戦略の重要なポイントは、想定される顧客のニーズに応じた技術改良が可能なADLib®システムの特性を活かすことであると考えております。当社は創業時から、ADLib®システムが持つこの特性を活用し、技術の進化とともに事業を拡大するよう努めてまいりました。さらに、株式会社リブテック(以下、「リブテック」といいます)を吸収合併後、がん領域の創薬研究開発が可能となり、活発な研究活動を推し進めております。今後の事業展開においても創薬基盤技術および創薬研究開発の2本柱を連動させていくことを当社の基本戦略としてまいります。 2.当社のビジネスモデルの特徴 当社のビジネスモデルの大きな特徴は次のとおりです。・独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした事業を展開していること・各事業において、複数の企業と提携していること・個々の企業と複数のターゲット(抗原(*))についての契約を締結していること (事業内容)① 創薬事業 創薬事業は、当社の研究成果物である医療用抗体作製のための基盤技術やリード抗体(*)等の知的財産を活用したライセンス導入に係る一時金収入、マイルストーン収入およびロイヤルティ収入、並びに共同研究等に係る収入等を獲得する事業です。 ② 創薬支援事業 製薬企業等で実施される創薬研究を支援するため、当社で抗体作製関連業務を請け負い、収入を獲得する、または、研究用並びに診断用抗体作製のための基盤技術を提供し、収入を獲得する事業です。 <当社の収益モデル>(当社作成) このように、当社は独自の創薬基盤技術に基づく多様な事業展開を図ることにより、基礎・探索研究から上市後に至るバリューチェーンの各段階において収益を計上することができるビジネスモデルを有しています。 (1)抗体医薬品① 抗体医薬品とは何か ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、異物を抗体が攻撃する仕組み(抗原抗体反応)で身体を守る防御システムが備わっています。ヒトが本来持っているこの反応を、正常な細胞と疾患に関連している細胞や分泌されるタンパク質との違いに着目し、医薬品に活かしたものが抗体医薬品です。正常な細胞にも作用する従来の抗がん剤等とは違い、疾患関連細胞に特異的に認められる抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。② 抗体医薬品が使われている主な疾患 抗体医薬品は、様々な疾患の治療に使われています。次に代表的な疾患を記載します。 分 類病 気がん大腸がん、乳がん、非小細胞肺がん、メラノーマ、腎がん、急性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫アレルギー・免疫関節リウマチ、クローン病、キャッスルマン病、喘息、腎臓移植後の急性拒絶(正)反応その他加齢黄斑変性症、骨粗鬆症、感染症 ③ 抗体医薬品市場に関する当社の見解 バイオ医薬品は、遺伝子組換え技術等のバイオテクノロジーにより製造された医薬品であり、1980年代から実用化されています。その後、ヒト抗体作製技術等の技術革新により、分子量が大きく、構造が複雑な抗体医薬品の創出が可能となり、新たな治療手段として、その有用性の高さが臨床的にも示されています。また、マルチスペシフィック(多重特異性)抗体(*)やAntibody Drug Conjugate(抗体薬物複合体、以下「ADC(*)」といいます)抗体等の次世代抗体技術を駆使した新薬の開発が順調に進捗していることに加え、バイオ後続品(バイオシミラー)の開発も急増しています。さらに、近年、抗体医薬品の特徴を活かしたイピリムマブ、ニボルマブのような免疫チェックポイント阻害剤(*)と呼ばれる新しい免疫療法ががん治療の分野で注目されており、今後も市場は拡大傾向にあると推測されます。 バイオ医薬品の売上高は、Evaluate Phama®の「Evaluate World Preview 2016」によりますと、2015年には約1,840億ドルに達しており、2020年には、約3,354億ドルに達するとも予測されております。今後の売上の増加はしばらく継続するものと見込まれております。 <世界の医薬品総売上高とバイオ医薬品の占有率>(出典:Evaluate World Preview 2016のデータを基に当社で作成) (2)創薬基盤技術(ADLib®システム)について 当社の創薬基盤技術は、ニワトリのBリンパ細胞(*)由来のDT40細胞(*)が持つ様々な種類の抗体を生み出すメカニズムをトリコスタチンA(以下「TSA」といいます)(*)という薬剤で人為的に活性化させて、多種多様なモノクローナル抗体(*)を試験管内において短期間で創出する方法です。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。① ADLib®システムの原理 ADLib®システムによる抗体の作製方法を次に記載します(イメージ図A)。なお、作製方法がイメージしやすいように、ADLib®システムによる抗体の作製方法を“魚釣り”に例えて簡略化して説明します(イメージ図B)。“様々な種類の魚(「抗体産生細胞」)を意図的に育て、バラエティに富んだ釣り堀(「ライブラリ(*)」)を作り出し、その中から消費者ニーズが高い卵(「抗体」)を産む特定の魚だけを捕まえ、大量の卵を取得すること”になります。 <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図>(当社作成)(イメージ図A) (イメージ図B) 手順1:多種多様な細胞を有するライブラリの作製 ニワトリのDT40細胞にTSAを添加して培養すると、遺伝子の相同組換え(*)が活性化し、細胞分裂により抗体遺伝子(*)配列が異なるDT40細胞が次から次へと生み出されます。その結果、多種多様な抗体遺伝子配列を持つ細胞集団としてのライブラリが構成されます。<イメージ>“生簀の中の一匹の魚に特殊な餌を与え、人工的に様々な種類の魚に変化させ飼育することで、バラエティに富んだ釣り堀を作りあげます” 手順2:抗体産生細胞の釣り上げ 抗原と磁気ビーズを結合させ、抗原にだけ結合する性質のある抗体を産生する細胞を釣り上げるための“しかけ”を作製します。この磁気ビーズと抗原の“しかけ”をライブラリの中に投入します。この時ライブラリの中では、“しかけ”の抗原にだけ反応する抗体を生み出すDT40細胞が抗原と結合します。ある程度時間がたったところで、別の磁石で“しかけ”と結合したDT40細胞を釣り上げます。<イメージ>“(当社が欲しい卵を産む)特定の魚だけを捕まえるための特殊な釣り針(磁気ビーズ+抗原)を作製します。手順2で作製した特殊な釣り針を手順1のバラエティに富んだ釣り堀に投げ入れて、当社が欲しい卵(抗体)を産む特定の魚だけを釣り上げます” 手順3:釣り上げた抗体産生細胞から分泌された抗体の回収 釣り上げたDT40細胞を培養液の中で1週間程度培養します。この間にDT40細胞が増殖すると共に、培養液中に抗体を分泌します。分泌された抗体は、培養液から不純物を分離・除去して、回収します。<イメージ>“手順2で釣り上げた特定の魚を別の水槽に移します。特定の魚は、全く同種の魚を急速に増殖させると同時に、当社が欲しい卵(抗体)を産卵します。当社はこの卵(抗体)を回収します” なお、回収した抗体はニワトリ型の抗体であるため、ヒトの医薬品として効果と安全性を発揮させるため、抗体をヒトの抗体に近づける作業を行います。このヒトの抗体に近づけたヒト化抗体(*)が医薬品候補となります。 ② 完全ヒトADLib®システムへの進化 オリジナルのADLib®システムをさらに発展させ、DT40細胞の抗体遺伝子をヒトの抗体遺伝子に置き換えることにより、ニワトリのDT40細胞から直接ヒト抗体が作製できるシステムを開発しました。 <オリジナルと完全ヒトADLib®システムの概略>(当社作成) これまでのオリジナルのADLib®システムやトリ・マウスキメラIgG(*)を産生するADLib®システムの場合、抗体がヒトの体内に入ると異物として認識され、アレルギー反応を引き起こすことや、抗抗体(免疫グロブリンに対する抗体)ができることで効果が弱まってしまうことが予想されるため、遺伝子工学の手法を利用して、ニワトリ抗体の部分を最小限にし、残りをヒト抗体に置き換えるという対応があります。しかし、このヒト抗体に近づける過程(ヒト化)において、もともとの抗体の特性が減じてしまう可能性があることから、この作業工程を避けてヒト抗体を得ることが望まれていました。 こうした課題を克服したのが、完全ヒトADLib®システムであり、ニワトリのDT40細胞から直接ヒト抗体が生み出されるため、ヒト化を行う必要がありません。従って、ヒト化にかかる時間やコストを削減することができます。 ライブラリの多様性を高める等の技術改良を進めながら、first-in-class(*)の抗体作製と並行して、アンメットメディカルニーズ(*)の高い疾患領域の抗体作製実績の蓄積を目指しております。 ③ 従来の抗体作製技術との主な違い ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。 a.困難抗原に対する抗体取得 ヒトを含む動物は、自分を構成している成分に対しては、異物と認識しないため免疫反応(*)を示さない免疫寛容(*)とよばれる仕組みを持っており、自己を構成している成分に関して抗体をつくることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を越えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であってもマウスに免疫を行なう方法では、抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、DT40細胞の持つ独自の多様化メカニズムを利用する生体外抗体作製系であり、免疫寛容による制限を受けることはありません。それ故に、従来の免疫法では実験動物の生存が困難になるような毒素や病原体に対する抗体の取得も可能となります。 また、ADLib®システムの応用技術であるADLib® axCELL(*)法では、免疫原として調製が困難な複数回膜貫通型タンパク質(「GPCR(*)」を含む)を遺伝子工学の技術を用いて動物細胞の表面に発現させたものを用意し、ADLib®システムと組み合わせることにより、これまで抗体の取得が困難とされていた医薬品のターゲットとして注目されている複数回膜貫通型タンパク質に対する抗体の取得においても優位性を発揮します。 b.迅速な抗体取得 ADLib®システムでは、実験動物を使用せずに、試験管内において10日程度でELISA(*)等の免疫化学的アッセイ(*)でターゲット特異的な抗体を判定することが可能です。 一般的に、抗体医薬品として開発する過程では、多くの候補抗体から選抜していく必要があります。従来の抗体取得方法では、候補となる抗体選定の過程において、動物免疫のやり直しや、新たな抗体ライブラリの準備等で数週間~数ヶ月の期間が必要となる可能性がありますが、ADLib®システムは他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。 ④ ADLib®システムを核とした事業展開 当社の戦略は、独自のADLib®システムを用いて、抗体を創出することを強みとしているため、従来の技術では抗体作製が困難な様々な抗原に対する抗体を作製することにより、アンメットメディカルニーズにつなげる事業展開を連続的・長期的に図ることを目指しております。 また、当社の創薬基盤技術は、ADLib®システムに関連する特許権と当社独自の運用ノウハウ(例:多様な抗体を発現した細胞のライブラリ作製法、セレクション方法)で成り立っております。特許戦略を考慮した上での知的財産の保護、ADLib®システムの標準化を実現していることから、他社では同様の技術レベルを容易には実現できないと考えております。 現状、当社の事業の柱となっている契約は、オリジナルのADLib®システムの標準化やADLib® Combo(*)、ADLib® axCELLの開発を通じて獲得されたものです。トリIgM(*)を産生するオリジナルのライブラリに加え、トリ・マウスキメラIgGを産生するライブラリを用いた抗体作製を実施しております。また、抗体遺伝子(*)をヒト由来のものに置き換えた完全ヒトADLib®システムについても、多様性が増加したライブラリを拡充し抗体取得実績を蓄積することでライセンス契約獲得を目指してまいります。 さらに、パイプラインの拡充に向けて、ADLib®システムを中心に他の抗体創製技術も駆使して、アンメットメディカルニーズに対する医薬品開発に有用な抗体作製実績を積み重ねております。 ⑤ ADLib®システム発明の経緯 ADLib®システムは、理研の太田邦史研究ユニットリーダー(現:東京大学大学院教授、当社社外取締役)が率いる遺伝ダイナミクス研究ユニットと財団法人埼玉県中小企業振興公社(現:財団法人埼玉県産業振興公社)との共同研究により開発され、平成14年7月に抗体作製技術として確立、平成17年5月にその論文が専門誌「Nature Biotechnology」(*)で発表されました。 上記研究ユニットは、それまでの酵母等を用いた研究から、「相同組換えは染色体を構成するクロマチン構造(*)によって制御されており、クロマチンが弛緩する条件で組換えが著しく活性化する」ことを明らかにしてきました。(EMBO J.1994,1998,2004;Cell 2003;Genes Dev 1997;PNAS 1998等) この科学的知見に基づき、ニワトリDT40細胞にクロマチン弛緩を誘導する薬剤であるTSAを作用させ、抗体遺伝子座(*)の組換えへの影響を調べたところ、DT40細胞の抗体遺伝子座が多様化し、多様な受容体型IgMを提示した細胞クローン(*)集団が得られることを見出しました。 TSA処理を行って得られたDT40細胞をベースとした自律多様化ライブラリ(現在のADLib®システム)から磁気ビーズに固着した任意の抗原を用い、ターゲット(抗原)に対して特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するDT40細胞クローンを選択したところ、10日程度という短期間でELISA等の免疫化学的アッセイに利用可能なモノクローナル抗体を取得することに成功し、新規の抗体作製技術として確立しました。 (3) パイプライン 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。 LIV-1205は、がん細胞の細胞表面に発現しているDLK-1に結合し、がん細胞の増殖を抑制することが動物モデルを用いた試験により確認されています。DLK-1は幹細胞や前駆細胞のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかとなっていましたが、これまでに肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においても発現し、その増殖に関与していることが明らかとなった新しいがん治療の標的になる可能性がある分子です。 LIV-2008/2008bは、様々な固形がんの細胞表面に発現するTROP-2に結合し、がんの増殖活性を阻害する効果があることが動物モデルを用いた試験により確認されています。TROP-2は、正常組織に比べ、乳がん、大腸がんのほか、膵がん、前立腺がん、肺がん等の複数の固形がんにおいて発現が増大しており、がんの悪性度に関連していることが複数報告されていることから、海外企業による開発も進められています。 LIV-1205およびLIV-2008/2008bは、いずれも2015年に吸収合併したリブテックで開発が進められてきたマウスハイブリドーマ法(*)で取得した抗体です。 LIV-1205(ヒト化抗DLK-1モノクローナル抗体)LIV-2008/2008b(ヒト化抗TROP-2モノクローナル抗体)ターゲットDLK-1TROP-2高発現がん種 (開発ターゲット)肝臓がん、小細胞肺がん、神経芽細胞腫等乳がん、肺がん、大腸がん等ターゲットの新規性新規既知競合なし有り(ADC)ヒトでの有効性未知ADCで承認申請へ期待標準療法に不応答のがんを標的としたファースト・イン・クラスの治療等抗体候補乳がん、肺がん等をターゲットとしたベスト・イン・クラスの治療等抗体候補Naked抗体動物モデルでの単独投与試験で、顕著な腫瘍増殖阻害効果を示す動物モデルでの単独投与試験で複数のがん細胞腫において、顕著な腫瘍増殖阻害効果を示すインターナリゼーション活性ありあり(LIV-2008b) BMAA(抗セマフォリン3A抗体(*))は、神経軸索の伸長を抑制するセマフォリン3Aをターゲットとしたヒト化モノクローナル抗体です。公立大学法人横浜市大学、五嶋研究室との共同研究において、ADLib®システムにより取得した抗体です。これまでがん、炎症疾患領域での開発を試みてきました。現時点では、疾患とセマフォリン3Aの関連性が明らかになっている領域において、ライセンス活動および検討を行なっております。 BMAA(ヒト化抗セマフォリン3Aモノクローナル抗体)ターゲットセマフォリン3A(Semaphorin 3A、SEMA3A)想定適応疾患免疫・炎症疾患、神経疾患期待免疫系疾患、神経疾患等、セマフォリン3Aとの関連が知られている幅広い疾患領域での適応が期待される。 この他にも新規のターゲットに対する抗体作製を進めながら、パイプラインの拡充に努めております。 (4)抗体医薬品開発における当社の事業領域について 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、創薬研究、臨床開発、製造、販売のプロセスがあります。当社の創薬事業は、基礎・探索段階から前臨床研究、および初期の臨床開発段階までの、抗体医薬品開発の上流工程を主な対象としており、当社の基盤技術であるADLib®システムに加えて、外部からの新規パイプラインの導入、新規の抗体作製技術等を利用して開発パイプラインの創製を行なっております。 3.特許ポートフォリオ基盤技術に係る主要特許発明の名称出願人登録国体細胞相同組換えの促進方法及び特異的抗体(*)の作製方法(国)理化学研究所、当社日本、米国、欧州、中国で成立。体細胞相同組換えの誘発方法(国)理化学研究所、当社日本、米国、欧州、中国で成立。 リード抗体(*)に係る主要特許発明の名称出願人出願国in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体(株)リブテック(当社が承継)米国で成立。日本、欧州、中国等で出願中。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体(株)リブテック(当社が承継)日本、米国を含む6ヵ国で成立。欧州、中国等で出願中。in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(株)リブテック(当社が承継)日本、米国を含む3ヵ国で成立。欧州、中国等で出願中。 4.提携機関との関係 当社は、単に製薬企業との提携に留まらず、ターゲット(抗原)の獲得や技術革新を目的として、大学・研究機関等と提携し事業拡大を図っております。当社は、大学・研究機関等から様々な疾患に対して従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手し、その抗原に対する抗体を作製します。その抗体が疾患の原因となるターゲットを特異的に認識し、ターゲットを発現する細胞を死滅させることや症状を改善させる等疾患に対する効果が確認された場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保いたします。また技術革新については、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、課題解決を図っております。 <当社と提携機関との関係図>(当社作成)