事業の概要
- 医薬品の製造販売第一三共グループは、医薬品の研究開発、製造、販売を一貫して行うことで収益を上げています。国内外に多数の子会社を持ち、それぞれが研究開発、製造、販売、またはそれらをサポートする役割を担い、グループ全体で医薬品事業を展開しています。特に、がん領域の新薬開発に注力しており、これが将来の収益の柱となることを目指しています。
- 国内事業の展開日本国内では、当社が医薬品の研究開発・製造・販売の中心的役割を担っています。連結子会社である第一三共プロファーマや第一三共ケミカルファーマが医薬品の製造を、第一三共ヘルスケアが一般用医薬品の研究開発・販売を、第一三共バイオテックがワクチンの研究開発・製造を行うなど、専門性を持った子会社が連携し、国内市場での事業を推進しています。
- グローバルな事業展開米国、欧州、中国、ブラジルなど世界各地に子会社を配置し、医薬品の研究開発・製造・販売をグローバルに展開しています。米国では第一三共Inc.が研究開発・販売を、欧州では第一三共ヨーロッパGmbHが各国の事業を統括するなど、地域ごとの特性に合わせた事業体制を構築し、世界中の患者に医薬品を届けることで収益を得ています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
セグメント構成
- 単一セグメント第一三共グループは、医薬品等の製造販売を主な事業内容としており、報告セグメントが単一であるため、セグメント情報の記載を省略しています。これは、グループ全体が一つの医薬品事業として統合的に運営されていることを示しており、特定の事業分野に特化していることを意味します。
- 国内事業国内では、当社が医薬品の研究開発・製造・販売の中核を担い、連結子会社が製造(第一三共プロファーマ、第一三共ケミカルファーマ)、一般用医薬品の研究開発・販売(第一三共ヘルスケア)、ワクチンの研究開発・製造(第一三共バイオテック)など、それぞれの専門分野で事業を展開しています。これらの子会社は相互に連携し、国内市場での医薬品供給を支えています。
- 海外事業海外では、米国、欧州、中国、ブラジルなど世界各地に子会社を配置し、医薬品の研究開発・製造・販売をグローバルに展開しています。例えば、米国では第一三共Inc.が研究開発・販売を、欧州では第一三共ヨーロッパGmbHが欧州各国での事業を統括するなど、地域ごとの市場特性に合わせた戦略で事業を推進し、国際的な収益基盤を構築しています。
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3【事業の内容】 当社グループは、当社と子会社48社、関連会社2社の計51社で構成され、医薬品等の製造販売を主な事業内容としております。 当社グループの営んでいる主な事業内容と当社グループを構成している各関係会社の当該事業に係る位置付けは、次のとおりであります。 なお、当社グループは、報告セグメントが単一であるため、セグメント情報の記載を省略しております。 国内(10社):当社は医薬品の研究開発・製造・販売を行っております。連結子会社の第一三共プロファーマ㈱及び第一三共ケミカルファーマ㈱は医薬品の製造を行っております。連結子会社の第一三共ヘルスケア㈱は一般用医薬品等の研究開発・販売を、第一三共バイオテック㈱はワクチンの研究開発・製造をそれぞれ行っております。第一三共プロファーマ㈱、第一三共ケミカルファーマ㈱、第一三共バイオテック㈱は当社に製品を供給しております。当社は連結子会社の第一三共バイオテック㈱に研究開発業務を委託しております。連結子会社の第一三共ビジネスアソシエ㈱は当社及び国内グループ各社に人事や経理等の事務サービスを提供しているほか不動産賃貸及び保険代理業務等多岐にわたる業務を行っております。海外(41社):米国において、持株会社である連結子会社の第一三共U.S.ホールディングスInc.のもと、連結子会社の第一三共Inc.は医薬品の研究開発・販売を行っております。当社は第一三共Inc.に製品の供給、研究開発業務の委託をしております。第一三共Inc.の子会社であるアメリカン・リージェントInc.は医薬品の研究開発・製造・販売を行っております。欧州において、連結子会社の第一三共ヨーロッパGmbH及びそのグループ会社19社は、欧州各国で医薬品の研究開発・製造・販売を行っております。当社は第一三共ヨーロッパGmbHに原料の供給、製造の委託、研究開発業務の委託をしております。その他の地域において、連結子会社の第一三共(中国)投資有限公司、第一三共製薬(上海)有限公司及び第一三共ブラジルLtda.等は医薬品の研究開発・製造・販売を行っており、当社はそれぞれの会社に中間体及び製品を供給しております。当社グループの状況について事業系統図を示すと次のとおりであります。
事業の優位性(モート)
事業の質(有価証券報告書から抽出)
数字に出ない事業の性質を、同じ物差しで全銘柄そろえています。FY2025時点の記載が出典です。
| 価格決定力値上げを通せるか。強いほどインフレ耐性が高い | 強い 新薬開発には多額の費用と長い年月が必要であり、承認審査基準も厳しいため。 |
|---|---|
| 参入障壁新規参入を阻む要因の種類 | 規制 医薬品医療機器等法を含む国内外の法規制等の下で製造販売されており、承認審査基準も厳しい。 |
| 顧客集中度特定顧客への依存度。高いほど失注リスクが大きい | 低い(分散) |
| 景気敏感度業績が景気循環にどれだけ振られるか | ディフェンシブ |
| 設備投資の性質稼いだ現金がどれだけ設備維持に消えるか | 混合 |
| 規制依存規制は障壁にも足枷にもなる | 高い |
会社が挙げる主要リスク:研究開発・他社とのアライアンス等に関するリスク / 医薬品の品質問題や副作用に関するリスク / 海外における事業展開に関するリスク
同じ条件で他の銘柄を探す → 定性スクリーニング(価格決定力・参入障壁・景気敏感度などで絞り込めます)
モート総合 11 / 25 5類型それぞれの強度と、そう判定した根拠
無形資産★★★★☆
第一三共は、がん領域を中心に強力なパイプラインと研究開発能力を持つ。特にADC(抗体薬物複合体)技術において、エンハーツ®︎(トラスツズマブ デルクステカン)が世界的に成功を収めており、これは強力な知的財産と臨床開発のノウハウに裏打ちされている。特許による保護期間は競争優位の源泉となる。
スイッチングコスト★★★☆☆
医師や病院は、有効性・安全性が確立された医薬品への切り替えに慎重になる傾向がある。特に第一三共の主力製品であるエンハーツ®︎のような画期的な新薬は、既存治療法からのスイッチングを促し、長期的な処方につながる可能性がある。ただし、医療従事者の選択肢は複数存在する。
ネットワーク効果☆☆☆☆☆
医薬品の価値は主に製品自体の有効性・安全性に依存し、ユーザー数が増えることで価値が指数関数的に増大するネットワーク効果は限定的である。
コスト優位★☆☆☆☆
医薬品の製造には高度な技術と品質管理が求められ、一般的にコスト競争力よりも製品の有効性・安全性が重視される。ジェネリック医薬品との競争はあるが、新薬メーカーとしてのコスト優位性は限定的。
規模の経済★★★☆☆
第一三共はグローバルな販売網と研究開発体制を有しており、大規模な臨床試験や販売活動を実行できる規模を持つ。特にエンハーツ®︎のようなブロックバスター製品は、グローバルな販売規模によって収益を最大化できる。しかし、武田薬品工業やアステラス製薬といった巨大製薬企業と比較すると、規模の面で劣る部分もある。
- 研究開発力と提携戦略第一三共は、がん領域に特化した新薬開発に強みを持っています。特に「エンハーツ」や「ダトロウェイ」といった抗体薬物複合体(ADC)技術を基盤とした医薬品は、他社との戦略的提携を通じて開発を加速させています。アストラゼネカ社や米国メルク社との提携は、開発費用の分担やグローバルな販売網の活用を可能にし、競争優位性を高めています。
- 多様な医薬品ポートフォリオ医療用医薬品だけでなく、第一三共ヘルスケアによる一般用医薬品(OTC医薬品)や、第一三共バイオテックによるワクチンの研究開発・製造も手掛けています。これにより、幅広い医療ニーズに対応できる製品ラインナップを持ち、特定の市場変動リスクを分散し、安定的な収益基盤を構築しています。
- グローバルな生産・販売網世界41社の子会社を通じて、米国、欧州、アジア、南米など広範な地域で医薬品の製造販売を行っています。このグローバルネットワークは、各地域の規制や市場特性に合わせた製品供給を可能にし、効率的なサプライチェーンと販売チャネルを確立しています。これにより、新薬の迅速な市場投入と普及を実現し、国際競争力を維持しています。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
経営戦略
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経営方針・経営戦略
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループにおける経営方針、経営環境及び優先的に対処すべき課題等は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであります。 (1) 第一三共の価値創造プロセスとESG経営 当社グループでは、ESG経営を「ESGの要素を経営戦略に反映させることで、財務的価値と非財務的価値の双方を高める、長期目線に立った経営」と定義し、実践しております。 社会からの多様な要請に応えるため、社内外の様々な経営資源を価値創造プロセスに投入し、「サイエンス&テクノロジー」を競争優位の最大の源泉として、各ステークホルダーや社会への価値を提供しております。この価値創造プロセスを循環させることで、企業と社会の持続的成長を両立させることができると考えております。 中長期的な企業価値へ影響を及ぼす重要度と、様々なステークホルダーを含む社会からの期待の両面から、8つの重要課題をマテリアリティとして特定し、事業に関わるマテリアリティと事業基盤に関わるマテリアリティに整理しております。 第一三共の価値創造プロセス (2) 2030年ビジョン ESG経営のもと、新たに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」となることを2030年ビジョンとして掲げました。 パーパス(存在意義)である「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」の実現に向けて、当社グループに期待される社会課題の解決(革新的医薬品の創出、SDGsへの取組等)を目指し、われわれの強みである“サイエンス&テクノロジー”に基づき、イノベーティブなソリューション提供に挑戦し続けます。 (3) 第5期中期経営計画(2021年度-2025年度) ESG経営を実践しつつ、2025年度目標「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を達成し、2030年ビジョン実現に向けた成長ステージに移行することを目指した計画として、第5期中期経営計画を策定し、4つの戦略の柱を設定いたしました。 ① 4つの戦略の柱(ⅰ) 3ADC最大化の実現 第5期中期経営計画においては、エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdの3ADC(注1)の最大化の実現が最重要課題となります。 エンハーツについては、アストラゼネカとの戦略的提携を通じた市場浸透と新適応の取得を加速していきます。また、HER2を標的とする競合品に対する優位性を確立するとともに、乳がん治療におけるHER2低発現コンセプトの定着を目指しております。 Dato-DXdについては、アストラゼネカとの戦略的提携を通じて、より早いタイミングでの承認取得とその後の適応追加を目指しております。また、効果的な上市計画を策定・実行するとともに、TROP2を標的とする競合品に対する優位性を確立して参ります。 HER3-DXdについては、自社開発による最速での上市を目指しております。また、効果的な上市計画を策定・実行した上で、がん治療ターゲットとしてのHER3を確立して参ります。 以上の取組に加え、注意すべき副作用の一つである間質性肺疾患(ILD)のモニタリングとリスク分析を通じた適正使用を促進するとともに、製品ポテンシャルに合わせて効率的かつ段階的に要員と供給キャパシティを拡大して参ります。 <2021年度-2024年度の主な進捗> エンハーツについては、着実な市場浸透、上市国・地域の拡大とHER2陽性乳がんの2次治療、化学療法既治療のHER2低発現乳がん等の新適応の取得により、当初計画を上回るペースで売上収益が拡大いたしました。加えて、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつHER2低発現又はHER2超低発現乳がんの適応を取得する等、更なる新適応の取得や適応がん種の拡大に向けた臨床試験も進捗いたしました。Dato-DXd(製品名:ダトロウェイ)については、内分泌療法及び化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性乳がんの適応を取得し、上市いたしました。加えて、前治療歴(EGFR標的療法を含む)のある非小細胞肺がんの承認申請が受理される等、新適応の取得に向けた開発が進展いたしました。HER3-DXdについては、I-DXd(抗B7-H3 ADC)及びDS-6000(抗CDH6 ADC)とともに、良好な臨床試験データが蓄積し、製品価値極大化を計画するステージに移行いたしました。加えて、ADCの開発競争が一層激化していることを受け、DXd ADCフランチャイズ極大化のためのキャパシティ、リソース、ケイパビリティ増強の必要性が高まってきたことから、より早く、より多くの患者さんにお届けするために、当該3製品について米国メルクとの戦略的提携契約を締結し、同社と共同開発・販促することを決定いたしました。さらに、米国メルクが開発中のMK-6070(DS3280:DLL3を標的とした三重特異性のT細胞エンゲ―ジャー)を上述の戦略的提携に追加し、同社との共同開発を開始いたしました。今後も、効果的な開発投資により、製品価値最大化の実現に向けた取組を着実に進めて参ります。 (注)1.ADC:Antibody Drug Conjugateの略、抗体薬物複合体。抗体医薬と薬物(低分子医薬)を適切なリンカーを介して結合させた医薬品で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体医薬を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高めた薬剤。 (ⅱ) 既存事業・製品の利益成長 持続的な成長に向けた投資を継続していくために、がん事業のみならず、既存事業・製品における利益成長も重要な課題であります。 リクシアナについては、収益性の高い、安定した利益を生み出す製品であることから、当該製品より得た収益を、3ADC及び3ADCに次ぐ成長ドライバーへの投資の源泉とすべく、売上収益の更なる拡大に取り組んで参ります。 タリージェ、Nilemdo等の新製品については、適応追加等を通じた、早期拡大を目指しております。リクシアナに加え、これら新製品の早期拡大により、がん以外の新薬事業においても持続的な成長を目指しております。 各国・各地域においては、新薬を軸とした収益構造へのトランスフォーメーションを強化することで、持続的な利益成長を支える事業構造へと転換を図って参ります。 アメリカン・リージェントについては、インジェクタファー、ジェネリック注射剤を中心とした利益成長を目指しております。第一三共ヘルスケア株式会社については、店舗販売や通販事業を中心とした利益成長を目指しております。 <2021年度-2024年度の主な進捗> リクシアナは、用法及び用量の追加等により製品価値が向上、順調に売上収益が拡大いたしました。さらに、各国・各地域においてタリージェ、ヴェノファー、Nilemdo/Nustendi等も着実に成長を遂げました。加えて、エムガルティ、フルミスト等の新製品の上市や、各国・各地域における独占販売期間満了後の製品譲渡及び日本のジェネリック医薬品事業を取り扱う第一三共エスファ株式会社の株式譲渡等が進展し、新薬を軸とした事業構造へのトランスフォーメーションが進みました。今後も、収益性の高い製品の売上を拡大することで、持続的な利益成長を支える事業構造へと転換を図って参ります。 (ⅲ) 更なる成長の柱の見極めと構築 持続的成長を図るため、3ADCに次ぐ成長ドライバーを見極めるとともに、マルチモダリティ研究戦略によりポストDXd ADCモダリティを選定することも重要な課題であります。 3ADCに次ぐ成長ドライバーについて、DXd ADCファミリー、第二世代・新コンセプトADC、改変型抗体等の領域から見極めて参ります。 様々なモダリティ技術の中から、持続的成長のためのポストDXd ADCモダリティを選定して参ります。LNP-mRNAについては、新型コロナウイルス感染症以外でのワクチンにも活用して、ワクチン事業の成長につなげて参ります。 <2021年度-2024年度の主な進捗> I-DXd、DS-6000については、良好な臨床試験データが蓄積し、製品ポテンシャルが一層高まったことから、3ADCに次ぐ成長ドライバーと位置づけ、将来の更なる成長に向けて、エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdとともに、両製品の開発を加速しております。I-DXdについては小細胞肺がん、DS-6000については卵巣がんを対象とした臨床試験が進展するとともに、両製品について多様ながん腫における探索的試験を開始いたしました。当社の6番目のDXd ADCである DS-3939(抗TA-MUC1 ADC)については、固形がんを対象とした臨床試験を実施しております。mPBD(注2)ADCであるDS-9606(抗CLDN6 ADC)について、固形がんを対象とした臨床試験における良好な初期データを獲得するとともに、COVID-19に対するmRNAワクチンの承認を取得し、供給する等、ポストDXd ADCモダリティ選定も進展いたしました。今後も、当社独自のADC技術等を用いた更なる成長の柱の見極めと構築を進めて参ります。(注)2.mPBD:modified pyrrolobenzodiazepine (ⅳ) ステークホルダーとの価値共創 長期視点でESG経営を進めていく上で、患者さん、株主、社会・環境、従業員といったステークホルダーとの価値共創も重要な課題であります。 3ADCによる様々ながん種への展開や、希少疾患の比重が高まる中、医薬品開発のみならずバリューチェーン全体で、患者さんを中心としたマインド(Patient Centric Mindset)による取組を強化し、患者さんへの貢献を果たして参ります。 持続的な企業価値の向上を図るため、バランスのとれた成長投資と株主還元を実現して参ります。 脱炭素社会、サーキュラーエコノミー、自然共生社会といった、社会・環境課題に対し、研究開発から営業に至るバリューチェーン全体で、環境負荷の低減に向けた様々な取組にチャレンジし、社会・環境へ貢献して参ります。 平時における自社生産拠点からの季節性インフルエンザワクチン等の安定供給に加え、COVID-19及び将来の新興・再興感染症ワクチンにも応用可能な技術の確立、将来のパンデミック時のワクチン供給体制の整備を通じて、社会へ貢献して参ります。 グループ共通の核となる行動様式(Core Behavior)を定め、グループ全体で実践していくことで、独自の企業文化「One DS Culture」の醸成を図り、グローバル組織と人材における強みをさらに強化して参ります。 <2021年度-2024年度の主な進捗> COVID-19に対するmRNAワクチンであるダイチロナ筋注(1価:オミクロン株 JN.1)の日本における供給等、パンデミックリスクへの対応が進捗いたしました。また、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的イニシアチブである「RE100(注3)」に加盟するとともに、日本の自社拠点における使用電力の再生可能エネルギー化等、環境課題に対する取組が進展いたしました。One DS Cultureの醸成に向けて、経営層と全従業員によるワークショップ等を通じた当社グループ共通の核となる行動様式であるCore Behaviorへの理解を深め、体現する取組を促進しております。引き続き、ステークホルダーとの価値創造プロセスの強化に向けた諸施策を実践して参ります。(注)3.RE100:国際環境NGOであるThe Climate Groupと企業に気候変動対策に関して情報開示を促しているCDPによって運営される、企業の再生可能エネルギー100%を推進する国際的イニシアチブ ② 戦略の実行を支える基盤 4つの戦略の柱の実行を支える基盤を強化するため、DX推進によるデータ駆動型経営を実現するとともに、先進デジタル技術による変革を進めて参ります。加えて、新たなグローバルマネジメント体制により迅速な意思決定を実現して参ります。 <2021年度-2024年度の主な進捗> 社内外のエンハーツの統合データ分析が可能な分析基盤をグローバルで運用開始いたしました。オンコロジービジネスユニットを新設し、がん領域における治療体系や市場環境の急速な変化に対し、ビジネスとサイエンスの両面から迅速に対応いたしました。今後も、業容の変化と拡大にあわせてデータ駆動型経営を加速するとともに、グローバルマネジメント体制を強化して参ります。 ③ 株主還元方針 利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得を実施することで、株主還元の更なる充実を図って参ります。 KPIとして、株主資本を基準とする株主資本配当率(DOE)を採用し、安定的な株主還元を行う方針とし、2025年度のDOEは株主資本コストを上回る8%以上を目標に掲げ、株主価値の最大化を目指しております。 <2021年度-2024年度の主な進捗> エンハーツの成長による利益成長や米国メルクとの戦略的提携の契約時一時金の受領等を受けて、2022年度から2024年度にかけて、3年連続の増配を決定いたしました。 ・1株当たり年間配当金の推移 2021年度:27円、2022年度:30円、2023年度:50円、2024年度(予想):60円 株主還元の更なる充実と資本効率の向上等を図るため、2024年度に2回にわたる自己株式取得を決定・実施いたしました。 ・取得自己株式 2024年4月~2025年1月 取得株数:約3,871万株、取得総額:約2,000億円 2025年3月~2025年4月 取得株数:約1,397万株、取得総額: 約500億円 引き続き、利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得により、株主還元の更なる充実を図って参ります。 ④ 計数目標 第5期中期経営計画における2025年度の計数目標として、売上収益1兆6,000億円(うち、がん領域において6,000億円以上)、研究開発費控除前コア営業利益率40%以上、ROE16%以上、DOE8%以上を目指しております。なお、2025年度の為替レートの前提は1USD=105円、1EUR=120円であります。
対処すべき課題
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループにおける経営方針、経営環境及び優先的に対処すべき課題等は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであります。 (1) 第一三共の価値創造プロセスとESG経営 当社グループでは、ESG経営を「ESGの要素を経営戦略に反映させることで、財務的価値と非財務的価値の双方を高める、長期目線に立った経営」と定義し、実践しております。 社会からの多様な要請に応えるため、社内外の様々な経営資源を価値創造プロセスに投入し、「サイエンス&テクノロジー」を競争優位の最大の源泉として、各ステークホルダーや社会への価値を提供しております。この価値創造プロセスを循環させることで、企業と社会の持続的成長を両立させることができると考えております。 中長期的な企業価値へ影響を及ぼす重要度と、様々なステークホルダーを含む社会からの期待の両面から、8つの重要課題をマテリアリティとして特定し、事業に関わるマテリアリティと事業基盤に関わるマテリアリティに整理しております。 第一三共の価値創造プロセス (2) 2030年ビジョン ESG経営のもと、新たに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」となることを2030年ビジョンとして掲げました。 パーパス(存在意義)である「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」の実現に向けて、当社グループに期待される社会課題の解決(革新的医薬品の創出、SDGsへの取組等)を目指し、われわれの強みである“サイエンス&テクノロジー”に基づき、イノベーティブなソリューション提供に挑戦し続けます。 (3) 第5期中期経営計画(2021年度-2025年度) ESG経営を実践しつつ、2025年度目標「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を達成し、2030年ビジョン実現に向けた成長ステージに移行することを目指した計画として、第5期中期経営計画を策定し、4つの戦略の柱を設定いたしました。 ① 4つの戦略の柱(ⅰ) 3ADC最大化の実現 第5期中期経営計画においては、エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdの3ADC(注1)の最大化の実現が最重要課題となります。 エンハーツについては、アストラゼネカとの戦略的提携を通じた市場浸透と新適応の取得を加速していきます。また、HER2を標的とする競合品に対する優位性を確立するとともに、乳がん治療におけるHER2低発現コンセプトの定着を目指しております。 Dato-DXdについては、アストラゼネカとの戦略的提携を通じて、より早いタイミングでの承認取得とその後の適応追加を目指しております。また、効果的な上市計画を策定・実行するとともに、TROP2を標的とする競合品に対する優位性を確立して参ります。 HER3-DXdについては、自社開発による最速での上市を目指しております。また、効果的な上市計画を策定・実行した上で、がん治療ターゲットとしてのHER3を確立して参ります。 以上の取組に加え、注意すべき副作用の一つである間質性肺疾患(ILD)のモニタリングとリスク分析を通じた適正使用を促進するとともに、製品ポテンシャルに合わせて効率的かつ段階的に要員と供給キャパシティを拡大して参ります。 <2021年度-2024年度の主な進捗> エンハーツについては、着実な市場浸透、上市国・地域の拡大とHER2陽性乳がんの2次治療、化学療法既治療のHER2低発現乳がん等の新適応の取得により、当初計画を上回るペースで売上収益が拡大いたしました。加えて、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつHER2低発現又はHER2超低発現乳がんの適応を取得する等、更なる新適応の取得や適応がん種の拡大に向けた臨床試験も進捗いたしました。Dato-DXd(製品名:ダトロウェイ)については、内分泌療法及び化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性乳がんの適応を取得し、上市いたしました。加えて、前治療歴(EGFR標的療法を含む)のある非小細胞肺がんの承認申請が受理される等、新適応の取得に向けた開発が進展いたしました。HER3-DXdについては、I-DXd(抗B7-H3 ADC)及びDS-6000(抗CDH6 ADC)とともに、良好な臨床試験データが蓄積し、製品価値極大化を計画するステージに移行いたしました。加えて、ADCの開発競争が一層激化していることを受け、DXd ADCフランチャイズ極大化のためのキャパシティ、リソース、ケイパビリティ増強の必要性が高まってきたことから、より早く、より多くの患者さんにお届けするために、当該3製品について米国メルクとの戦略的提携契約を締結し、同社と共同開発・販促することを決定いたしました。さらに、米国メルクが開発中のMK-6070(DS3280:DLL3を標的とした三重特異性のT細胞エンゲ―ジャー)を上述の戦略的提携に追加し、同社との共同開発を開始いたしました。今後も、効果的な開発投資により、製品価値最大化の実現に向けた取組を着実に進めて参ります。 (注)1.ADC:Antibody Drug Conjugateの略、抗体薬物複合体。抗体医薬と薬物(低分子医薬)を適切なリンカーを介して結合させた医薬品で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体医薬を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高めた薬剤。 (ⅱ) 既存事業・製品の利益成長 持続的な成長に向けた投資を継続していくために、がん事業のみならず、既存事業・製品における利益成長も重要な課題であります。 リクシアナについては、収益性の高い、安定した利益を生み出す製品であることから、当該製品より得た収益を、3ADC及び3ADCに次ぐ成長ドライバーへの投資の源泉とすべく、売上収益の更なる拡大に取り組んで参ります。 タリージェ、Nilemdo等の新製品については、適応追加等を通じた、早期拡大を目指しております。リクシアナに加え、これら新製品の早期拡大により、がん以外の新薬事業においても持続的な成長を目指しております。 各国・各地域においては、新薬を軸とした収益構造へのトランスフォーメーションを強化することで、持続的な利益成長を支える事業構造へと転換を図って参ります。 アメリカン・リージェントについては、インジェクタファー、ジェネリック注射剤を中心とした利益成長を目指しております。第一三共ヘルスケア株式会社については、店舗販売や通販事業を中心とした利益成長を目指しております。 <2021年度-2024年度の主な進捗> リクシアナは、用法及び用量の追加等により製品価値が向上、順調に売上収益が拡大いたしました。さらに、各国・各地域においてタリージェ、ヴェノファー、Nilemdo/Nustendi等も着実に成長を遂げました。加えて、エムガルティ、フルミスト等の新製品の上市や、各国・各地域における独占販売期間満了後の製品譲渡及び日本のジェネリック医薬品事業を取り扱う第一三共エスファ株式会社の株式譲渡等が進展し、新薬を軸とした事業構造へのトランスフォーメーションが進みました。今後も、収益性の高い製品の売上を拡大することで、持続的な利益成長を支える事業構造へと転換を図って参ります。 (ⅲ) 更なる成長の柱の見極めと構築 持続的成長を図るため、3ADCに次ぐ成長ドライバーを見極めるとともに、マルチモダリティ研究戦略によりポストDXd ADCモダリティを選定することも重要な課題であります。 3ADCに次ぐ成長ドライバーについて、DXd ADCファミリー、第二世代・新コンセプトADC、改変型抗体等の領域から見極めて参ります。 様々なモダリティ技術の中から、持続的成長のためのポストDXd ADCモダリティを選定して参ります。LNP-mRNAについては、新型コロナウイルス感染症以外でのワクチンにも活用して、ワクチン事業の成長につなげて参ります。 <2021年度-2024年度の主な進捗> I-DXd、DS-6000については、良好な臨床試験データが蓄積し、製品ポテンシャルが一層高まったことから、3ADCに次ぐ成長ドライバーと位置づけ、将来の更なる成長に向けて、エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdとともに、両製品の開発を加速しております。I-DXdについては小細胞肺がん、DS-6000については卵巣がんを対象とした臨床試験が進展するとともに、両製品について多様ながん腫における探索的試験を開始いたしました。当社の6番目のDXd ADCである DS-3939(抗TA-MUC1 ADC)については、固形がんを対象とした臨床試験を実施しております。mPBD(注2)ADCであるDS-9606(抗CLDN6 ADC)について、固形がんを対象とした臨床試験における良好な初期データを獲得するとともに、COVID-19に対するmRNAワクチンの承認を取得し、供給する等、ポストDXd ADCモダリティ選定も進展いたしました。今後も、当社独自のADC技術等を用いた更なる成長の柱の見極めと構築を進めて参ります。(注)2.mPBD:modified pyrrolobenzodiazepine (ⅳ) ステークホルダーとの価値共創 長期視点でESG経営を進めていく上で、患者さん、株主、社会・環境、従業員といったステークホルダーとの価値共創も重要な課題であります。 3ADCによる様々ながん種への展開や、希少疾患の比重が高まる中、医薬品開発のみならずバリューチェーン全体で、患者さんを中心としたマインド(Patient Centric Mindset)による取組を強化し、患者さんへの貢献を果たして参ります。 持続的な企業価値の向上を図るため、バランスのとれた成長投資と株主還元を実現して参ります。 脱炭素社会、サーキュラーエコノミー、自然共生社会といった、社会・環境課題に対し、研究開発から営業に至るバリューチェーン全体で、環境負荷の低減に向けた様々な取組にチャレンジし、社会・環境へ貢献して参ります。 平時における自社生産拠点からの季節性インフルエンザワクチン等の安定供給に加え、COVID-19及び将来の新興・再興感染症ワクチンにも応用可能な技術の確立、将来のパンデミック時のワクチン供給体制の整備を通じて、社会へ貢献して参ります。 グループ共通の核となる行動様式(Core Behavior)を定め、グループ全体で実践していくことで、独自の企業文化「One DS Culture」の醸成を図り、グローバル組織と人材における強みをさらに強化して参ります。 <2021年度-2024年度の主な進捗> COVID-19に対するmRNAワクチンであるダイチロナ筋注(1価:オミクロン株 JN.1)の日本における供給等、パンデミックリスクへの対応が進捗いたしました。また、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的イニシアチブである「RE100(注3)」に加盟するとともに、日本の自社拠点における使用電力の再生可能エネルギー化等、環境課題に対する取組が進展いたしました。One DS Cultureの醸成に向けて、経営層と全従業員によるワークショップ等を通じた当社グループ共通の核となる行動様式であるCore Behaviorへの理解を深め、体現する取組を促進しております。引き続き、ステークホルダーとの価値創造プロセスの強化に向けた諸施策を実践して参ります。(注)3.RE100:国際環境NGOであるThe Climate Groupと企業に気候変動対策に関して情報開示を促しているCDPによって運営される、企業の再生可能エネルギー100%を推進する国際的イニシアチブ ② 戦略の実行を支える基盤 4つの戦略の柱の実行を支える基盤を強化するため、DX推進によるデータ駆動型経営を実現するとともに、先進デジタル技術による変革を進めて参ります。加えて、新たなグローバルマネジメント体制により迅速な意思決定を実現して参ります。 <2021年度-2024年度の主な進捗> 社内外のエンハーツの統合データ分析が可能な分析基盤をグローバルで運用開始いたしました。オンコロジービジネスユニットを新設し、がん領域における治療体系や市場環境の急速な変化に対し、ビジネスとサイエンスの両面から迅速に対応いたしました。今後も、業容の変化と拡大にあわせてデータ駆動型経営を加速するとともに、グローバルマネジメント体制を強化して参ります。 ③ 株主還元方針 利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得を実施することで、株主還元の更なる充実を図って参ります。 KPIとして、株主資本を基準とする株主資本配当率(DOE)を採用し、安定的な株主還元を行う方針とし、2025年度のDOEは株主資本コストを上回る8%以上を目標に掲げ、株主価値の最大化を目指しております。 <2021年度-2024年度の主な進捗> エンハーツの成長による利益成長や米国メルクとの戦略的提携の契約時一時金の受領等を受けて、2022年度から2024年度にかけて、3年連続の増配を決定いたしました。 ・1株当たり年間配当金の推移 2021年度:27円、2022年度:30円、2023年度:50円、2024年度(予想):60円 株主還元の更なる充実と資本効率の向上等を図るため、2024年度に2回にわたる自己株式取得を決定・実施いたしました。 ・取得自己株式 2024年4月~2025年1月 取得株数:約3,871万株、取得総額:約2,000億円 2025年3月~2025年4月 取得株数:約1,397万株、取得総額: 約500億円 引き続き、利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得により、株主還元の更なる充実を図って参ります。 ④ 計数目標 第5期中期経営計画における2025年度の計数目標として、売上収益1兆6,000億円(うち、がん領域において6,000億円以上)、研究開発費控除前コア営業利益率40%以上、ROE16%以上、DOE8%以上を目指しております。なお、2025年度の為替レートの前提は1USD=105円、1EUR=120円であります。
MD&A(経営者による分析)
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月20日)現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 業績等の概要当社グループの当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)の連結業績は、次のとおりであります。 <連結業績(コアベース)> (単位:億円) 前連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)増減売上収益16,01718,8632,84617.8%売上原価(注)4,1484,157100.2%販売費及び一般管理費(注)6,2737,24897515.5%研究開発費(注)3,6434,32968518.8%コア営業利益(注)1,9533,1281,17660.2%一過性の収益(注)273222△51△18.7%一過性の費用(注)10931△79△71.9%営業利益2,1163,3191,20356.9%税引前利益2,3723,5561,18449.9%親会社の所有者に帰属する当期利益2,0072,95895047.3%当期包括利益合計額3,0842,898△186△6.0%(注)当社グループは、経常的な収益性を示す指標として、営業利益から一過性の収益・費用を除外したコア営業利益を開示しております。一過性の収益・費用には、固定資産売却損益、事業再編に伴う損益(開発品や上市製品の売却損益を除く)、有形固定資産及び無形資産並びにのれんに係る減損損失、損害賠償や和解等に伴う損益の他、非経常的かつ多額の損益が含まれます。本表では、売上原価、販売費及び一般管理費、研究開発費について、一過性の収益・費用を除く実績を示しております。<主要通貨の日本円への換算レート(期中平均レート)> 前連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)米ドル/円144.62152.57ユーロ/円156.79163.74 売上収益売上収益は、前連結会計年度比2,846億円(17.8%)増収の1兆8,863億円となりました。グローバル主力品エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン:T-DXd/DS-8201)、リクシアナ(一般名:エドキサバン)等の伸長及び円安の進行による為替の増収影響等により、増収となりました。売上収益に係る為替の増収影響は513億円でありました。 コア営業利益コア営業利益は、前連結会計年度比1,176億円(60.2%)増益の3,128億円となりました。売上原価は、売上収益が増加したものの、製品構成の変化に伴う原価率改善等により、10億円(0.2%)増加の4,157億円に留まりました。販売費及び一般管理費は、エンハーツに係るアストラゼネカとのプロフィット・シェアの増加による費用増等により、975億円(15.5%)増加の7,248億円となりました。研究開発費は、5DXd ADCs(トラスツズマブ デルクステカン、ダトポタマブ デルクステカン:Dato-DXd/DS-1062、パトリツマブ デルクステカン:HER3-DXd/U3-1402、イフィナタマブ デルクステカン:I-DXd/DS-7300、DS-6000)への研究開発投資の増加等により、前連結会計年度比685億円(18.8%)増加の4,329億円となりました。コア営業利益に係る為替の増益影響は8億円でありました。 営業利益営業利益は、前連結会計年度比1,203億円(56.9%)増益の3,319億円となりました。 税引前利益税引前利益は、前連結会計年度比1,184億円(49.9%)増益の3,556億円となりました。 親会社の所有者に帰属する当期利益親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比950億円(47.3%)増益の2,958億円となりました。 当期包括利益合計額当期包括利益合計額は、海外子会社の純資産に係る為替換算差額が減少したこと等により、前連結会計年度比186億円(6.0%)減益の2,898億円となりました。 <連結業績(IFRSベース)> (単位:億円) 前連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)増減売上収益16,01718,8632,84617.8%売上原価4,1534,15850.1%販売費及び一般管理費6,3707,31294214.8%研究開発費3,6524,36070819.4%その他の収益275287134.6%その他の費用11021.7%営業利益2,1163,3191,20356.9%税引前利益2,3723,5561,18449.9%親会社の所有者に帰属する当期利益2,0072,95895047.3%当期包括利益合計額3,0842,898△186△6.0% <グローバル主力品売上収益>(単位:億円)一般名(主な製品名)前連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)増減トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)抗悪性腫瘍剤(抗 HER2 抗体薬物複合体)4,4926,5142,02245.0%エドキサバン(リクシアナ)抗凝固剤2,8773,44056219.5% エンハーツは、既上市国での市場浸透及び上市国の拡大により、前連結会計年度比2,022億円(45.0%)増収の6,514億円となりました。エドキサバンは、日本、欧州等で売上が伸長し、前連結会計年度比562億円(19.5%)増収の3,440億円となりました。当社は、第5期中期経営計画でエンハーツを始めとした「3ADC最大化の実現」及び「既存事業・製品の利益成長」を戦略目標として定めております。第5期中期経営計画の内容につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。 当社グループのユニット別売上収益状況は次のとおりであります。 ① ジャパンビジネスユニット(JBU)ジャパンビジネスユニットの売上収益には、イノベーティブ医薬品事業及びワクチン事業の製品売上収益が含まれております。当ユニットの売上収益は、リクシアナ、タリージェ、エンハーツ等が伸長したものの、第一三共エスファ株式会社の連結除外に伴い、2024年4月以降、ジェネリック事業の製品売上収益が含まれなくなったことから、前連結会計年度比420億円(8.1%)減収の4,769億円となりました。 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2024年6月、抗悪性腫瘍剤エザルミアの再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)の承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2024年7月、不眠症治療剤ベルソムラのMSD株式会社から当社への販売移管を決定いたしました。・2024年9月、COVID-19 mRNAワクチン ダイチロナ筋注(オミクロン株JN.1対応)を発売いたしました。・2024年10月、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン フルミスト点鼻液を発売いたしました。・2025年2月、抗凝固剤リクシアナの慢性血栓塞栓性肺高血圧症の承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2025年3月、抗悪性腫瘍剤ダトロウェイ(適応:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の乳がん)を発売いたしました。 <ジャパンビジネスユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)増減リクシアナ抗凝固剤1,1561,33017515.1%タリージェ疼痛治療剤45755610021.8%プラリア骨粗鬆症治療剤・関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制剤428422△6△1.3%ビムパット抗てんかん剤2573044618.0%エンハーツ抗悪性腫瘍剤(抗 HER2 抗体薬物複合体)2393107129.7%ランマークがん骨転移による骨病変治療剤204201△3△1.3%エフィエント抗血小板剤2563155922.9%カナリア2型糖尿病治療剤159156△3△2.0%ロキソニン消炎鎮痛剤155123△32△20.6%イナビル抗インフルエンザウイルス薬1591994025.3%ミネブロ高血圧症治療剤83961416.6%ベルソムラ不眠症治療薬-9999-エムガルティ片頭痛発作の発症抑制薬761073140.9% ② 第一三共ヘルスケアユニット(DSHCU)第一三共ヘルスケアユニットの売上収益は、マイティア、ロキソニン等の伸長により、前連結会計年度比107億円(14.1%)増収の867億円となりました。 ③ オンコロジービジネスユニット(OBU)オンコロジービジネスユニットの売上収益には、第一三共Inc.(米国)及び第一三共ヨーロッパGmbHのがん製品売上収益が含まれております。当ユニットの売上収益は、欧米におけるエンハーツの伸長により、前連結会計年度比1,292億円(38.6%)増収の4,638億円、現地通貨ベースでは、726百万米ドル(31.4%)増収の3,040百万米ドルとなりました。 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2024年4月、エンハーツのHER2陽性の複数の固形がんを対象とした米国における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2025年1月、米国における抗悪性腫瘍剤ダトロウェイ(適応:内分泌療法及び化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性(IHC 0, IHC 1+ 又は IHC 2+/ISH-)の乳がん)を発売いたしました。・2025年1月、エンハーツの化学療法未治療のHER2低発現又はHER2超低発現の乳がんを対象とした米国における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2025年3月、エンハーツの化学療法未治療のHER2低発現又はHER2超低発現の乳がんを対象とした欧州における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。 <オンコロジービジネスユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)増減エンハーツ抗悪性腫瘍剤(抗 HER2 抗体薬物複合体)3,2744,5161,24237.9% エンハーツ(米)2,2553,02076533.9%エンハーツ(欧)1,0191,49647746.8%TURALIO抗腫瘍剤53661323.9% ④ アメリカンリージェントユニット(ARU)アメリカンリージェントユニットの売上収益は、ジェネリック注射剤等の増収により、前連結会計年度比138億円(6.8%)増収の2,172億円、現地通貨ベースでは、17百万米ドル(1.2%)増収の1,424百万米ドルとなりました。 <アメリカンリージェントユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)増減インジェクタファー鉄欠乏性貧血治療剤501534336.6%ヴェノファー鉄欠乏性貧血治療剤609620111.8% ⑤ EUスペシャルティビジネスユニット(EUSBU)EUスペシャルティビジネスユニットの売上収益には、がん製品を除く第一三共ヨーロッパGmbHの製品売上収益が含まれております。当ユニットの売上収益は、リクシアナ、Nilemdo/Nustendiの伸長により、前連結会計年度比482億円(25.5%)増収の2,374億円、現地通貨ベースでは243百万ユーロ(20.2%)増収の1,450百万ユーロとなりました。 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2024年5月、Nilemdo/Nustendiの心血管疾患の抑制の承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。 <EUスペシャルティビジネスユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)増減リクシアナ抗凝固剤1,4621,79032822.4%Nilemdo / Nustendi高コレステロール血症治療剤184369185100.1%オルメサルタン高血圧症治療剤196183△13△6.7% ⑥ ASCAビジネスユニット(ASCABU)ASCA(注)ビジネスユニットの売上収益には、海外ライセンシーへの売上収益等が含まれております。当ユニットの売上収益は、ブラジルにおけるエンハーツの伸長等により、前連結会計年度比272億円(14.8%)増収の2,112億円となりました。(注)Asia, South & Central Americaの略。 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2024年8月、エンハーツのHER2陽性胃がんを対象とした中国における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2024年10月、エンハーツのHER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がんを対象とした中国における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。 ユニット別売上収益構成比は次のとおりであります。 (2) 生産、受注及び販売の実績① 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)医薬品事業859,923102.8合計859,923102.8(注)金額は正味販売価格によっております。 ② 受注実績当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これにより生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)医薬品事業1,886,256117.8合計1,886,256117.8 (注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。相手先前連結会計年度当連結会計年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)アルフレッサ ホールディングス株式会社及びそのグループ会社199,73212.5221,81411.8センコラ社162,71310.2207,38911.0マッケソン社173,34810.8203,46110.8 (3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析① 財務戦略の基本的な考え方当社グループは、ESG経営のもと、新たに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」となることを2030年ビジョンとして掲げております。2025年ビジョンである「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を実現し、2030年ビジョン達成に向けた持続的な成長ステージへの移行を可能とするべく、2021年に第5期中期経営計画(2021~2025年度)を策定いたしました。その後4年間の計画進捗により、2025年度経営目標を達成すると見込んでおります。具体的には、売上収益2兆円(第5期中計策定時プラス4,000億円)、がん領域売上収入9,000億円以上(同プラス3,000億円)、研究開発費控除前コア営業利益(注)率40%(同変更なし)、ROE16%以上(同変更なし)、株主資本配当率(DOE)8.5%(同プラス0.5ポイント)を見込んでおります。また、期間中のキャッシュ・アロケーションについても、成長投資と株主還元の双方をバランス良く実施するという基本方針は変更しておりません。成長投資については、DXd-ADC開発を優先する形で第5期中期経営計画である5年間で総額1兆8,500億円規模の研究開発投資(同プラス3,500億円)、また、ADCの供給体制強化を中心とした同じく8,000億円規模の設備投資(同プラス3,000億円)を見込んでおります。株主還元については、2024年度はエンハーツ等を中心に業績が好調に推移していることから、年間配当を1株当たり10円増配の60円とし、さらに2025年度については年間配当を1株当たり18円増配の78円とする計画としております。これにより、2025年度のDOEは8.5%以上の達成を見込んでおります。また、株主還元の強化・充実を図るため、以下のとおり、自己株式の取得を実施いたしました。 取得期間取得総額取得株数2024年4月決議2024年4月26日~2025年1月9日2,000億円3,871万株2025年2月決議2025年3月3日~2025年4月8日500億円1,397万株なお、2025年度においても、株価水準を踏まえた機動的な自己株式取得を可能とするため、新たな自己株式取得枠(取得総額2,000億円または取得株数8,000万株を上限)を設定しております。今後も利益成長に応じた増配、あるいは機動的な自己株式取得を実施することで、引き続き株主価値の最大化を目指します。(注)固定資産売却、事業再編、減損、訴訟等に関連する特殊要因を除く ② 資金調達の方法及び状況当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本的な考えとしており、手元資金及び外部資金を有効に活用しております。当社グループは、戦略的投資もしくは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、手元流動性残高(現預金及び短期投資債券等)から有利子負債を控除した、ネット・キャッシュを重視しております。手元資金としては、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応のため、十分な現金及び現金同等物を保有しております。適正な現金及び現金同等物の保有額は、月商の3ヶ月程度を考えており、これを超える部分については企業価値向上に資する事業戦略投資の資金として確保しております。これらは金融情勢などを勘案しつつ、安全性並びに流動性の極めて高い短期金融商品で運用しております。外部からの資金調達については、直接金融又は間接金融の多様な手段の中から、その時々の市場環境を考慮した上で当社にとって有利なものを機動的に選択しております。直接金融としては、国内社債発行登録枠として3,000億円及びコマーシャル・ペーパー発行枠として1,500億円を有しております。2016年には超低金利の環境を活かし、国内ヘルスケアセクターでは初となる償還年限が20年、30年の超長期無担保社債を発行し、1,000億円の長期低コスト資金を確保いたしました。間接金融としては、当社は前期に全ての金融機関借入を完済している一方で、取引先金融機関とは引き続き良好な取引関係を維持しております。また、複数の銀行との間で当座貸越契約を設定し、緊急時の流動性担保の手段も確保しております。なお、円滑な外部資金調達を行うため、当社は株式会社格付投資情報センター(R&I)と、ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody's)の2社から格付を取得しております。当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりであります。格付会社長期格付け短期格付け格付投資情報センター(R&I)AA/安定的a-1+ムーディーズ・ジャパン(Moody's)A2/安定的-なお、連結子会社は、原則として銀行などの外部からの資金調達を行わず、親会社もしくは現地法人などの資金調達拠点を通じたキャッシュ・マネジメント・サービスやグループ・ファイナンスの活用により、資金調達の集約と資金効率化、流動性の確保を図っております。 ③ 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析(ⅰ)財政状態当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末から50億円減少し、3兆4,561億円となりました。営業債権及びその他の債権が1,649億円、有形固定資産が768億円、並びに棚卸資産が768億円それぞれ増加した一方で、その他の金融資産(流動)が4,962億円減少いたしました。当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末から602億円増加し、1兆8,327億円となりました。その他の非流動負債が359億円減少した一方で、契約負債(流動負債及び非流動負債)が814億円、並びに営業債務及びその他の債務が228億円増加いたしました。当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末から652億円減少し、1兆6,234億円となりました。当期利益の計上による増加があった一方で、配当金の支払及び自己株式の取得(5,117万株、2,461億円)による減少等により減少いたしました。以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は47.0%となり、前連結会計年度末より1.8%減少いたしました。 第5期中計期間中は、成長投資と株主還元へのキャッシュ・アロケーションをバランスよく行う方針であります。具体的には、キャッシュ・アロケーションの原資の一定部分を成長投資(研究開発投資、設備投資)と株主還元にアロケーションした上で、残る部分については、研究開発パイプラインの進捗を踏まえ、さらなる成長の柱の構築に向けた研究開発投資と株主還元に、バランスを考慮しながら機動的に配分いたします。 (ⅱ)キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、73億円減少の6,398億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、538億円の収入(前連結会計年度は5,993億円の収入)となりました。税引前利益3,556億円、減価償却費及び償却費686億円等の非資金項目の他、パトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402)の戦略的提携の契約一時金の収入があった一方で、運転資金の減少等がありました。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、3,342億円の収入(前連結会計年度は2,826億円の支出)となりました。設備投資や無形資産の取得による支出があった一方で、投資の売却・償還や定期預金の払戻による収入等がありました。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払、並びに自己株式の取得等により、3,778億円の支出(前連結会計年度は1,236億円の支出)となりました。 (4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、2025年度における計数目標として、売上収益1兆6,000億円(うち、がん領域において6,000億円以上)、研究開発費控除前コア営業利益率40%以上、ROE16%以上、株主資本配当率(DOE)8%以上を目指しております。当連結会計年度においては、売上収益1兆8,863億円、研究開発費控除前コア営業利益率39.5%、ROE17.9%、DOE6.9%となりました。また、エンハーツの当初計画を上回る売上拡大等により、2025年4月時点において、以下の通りの達成を見込んでおります。 なお、目標達成に向けた主な取り組み課題と実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。 (5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり行った重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
事業リスク
- 新薬開発の不確実性新薬の研究開発には莫大な費用と長い年月がかかりますが、臨床試験で期待通りの効果が得られなかったり、承認審査基準の変更によって承認が得られなかったりするリスクがあります。特に、がん領域のフラグシップアセットである「エンハーツ」や「ダトロウェイ」などの開発が遅延したり、期待した有効性・安全性が得られなかったりした場合、経営成績や財政状態に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。
- 他社との提携関係リスクアストラゼネカ社や米国メルク社との戦略的提携は、新薬開発や販売において重要ですが、提携契約の条件変更や終了、あるいは提携先との意見の相違が生じた場合、開発計画の遅延や販売戦略の見直しを余儀なくされる可能性があります。これにより、期待していた収益が得られず、経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
- 製造・供給体制のリスク新薬の需要が予測を上回った場合、製造体制の構築が遅れることで、製品の安定供給に支障をきたす可能性があります。また、開発計画の変更によって設備投資が過剰になったり、過剰在庫が発生して廃棄費用が生じたりするリスクもあります。医薬品は人々の生命に関わるため、安定供給ができない場合は企業の信頼性にも影響を及ぼす可能性があります。
出典: FY2025 有価証券報告書(AI要約)
有価証券報告書「事業等のリスク」の全文を見る(年度切替)
3【事業等のリスク】 当社グループでは、組織の目的・目標の達成を阻害する可能性を有し、かつ事前に想定し得る要因をリスクとして特定し、企業活動に潜在するリスクへの適切な対応(保有、低減、回避、移転)を行うとともに、リスクが顕在化した際の人・社会・企業への影響を最小限に留めるべく、リスクマネジメントを推進しております。具体的には、潜在するリスクへの適切な対応を定めるリスクマネジメント体制を構築するとともに、事業に影響を与えかねない災害等が万が一起こった場合においても事業の継続を可能とするためのBCPや、想定以上のリスクが顕在化した際の損失を最小とするクライシスマネジメント体制を整えております。 (1) リスクマネジメント当社グループのリスクマネジメントの推進にあたっては、ヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントが当社グループ全体のリスクマネジメントを統括し、事業計画策定・実行の年次サイクルに合わせたリスクマネジメント体制を運営しております。各ユニット及び機能長はリスクオーナーとして、組織の目的・目標の達成に向け、リスクの抽出、リスクアセスメントの実施、対応策の策定・実行、組織内でのリスクマネジメントに関わる情報提供・教育・啓発等自律的にリスクマネジメントを推進しております。また、ユニット長及び機能長のリスクマネジメント活動の実務を補佐する役割として、ユニット及び機能内でリスクコーディネーターを選任します。リスクコーディネーターは、自組織のリスクマネジメント活動を推進し、グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントや他のユニット及び機能のリスクコーディネーターと連携してリスクマネジメントを実施します。リスクマネジメント事務局では、各ユニットから抽出されたリスクについて、影響度と発生可能性の観点からリスクアセスメントを確認・調整し、企業経営に重大な影響が想定されると評価したリスク項目を、毎年、経営会議及び取締役会において重大リスクとして特定いたします。なおリスクに関する経営会議の広範な意思決定を補完するため、当社グループのリスクについて集中的な議論を行う会議体として「リスクマネジメントコミッティ(以下「RMC」という。)」を2025年度より設立しました。(下図「当社グループにおけるリスクレベル分類の概念図」「リスクマネジメント体制図」参照)。さらに特定した重大リスクごとにリスクオーナーが任命され、関係組織と連携の上、リスク対応策を実行しております。その進捗状況は、年2回のリスクモニタリングを通じて確認され、必要に応じた是正・改善がなされます。重大リスク顕在化の予兆が確認された際は、速やかにCEO及びヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントに情報が報告され、適切な対応を図る体制としております。 (2) 事業継続計画(BCP)当社グループのBCPは、事業継続へ影響を及ぼす様々な脅威に対処するべくオールハザード型BCPとして整備し、有事においても社会からの要請に応えるために医薬品等の安定供給及び品質確保を可能とする体制、並びに研究開発の継続性を確保できる体制を構築しています。当社グループでは、クライシスの多様化とビジネスのグローバル化に対応するべく、脅威が顕在化した際により適切に対応できるよう継続的な改善を図っています。また、優先して供給する品目については、製薬企業としての社会的責任の大きな製品や、事業継続のために重要な製品等について速やかな供給の実現を目指し、定期的に見直しを行っています。当社グループでは、新型インフルエンザウイルスの世界的な大流行(パンデミック)に備え、従業員及びその家族の安全を確保し、医薬品の供給を継続することを目的とした「新型インフルエンザ等対策行動計画」を2009年より策定しております。また、当社は、新型インフルエンザ等対策特別措置法において指定公共機関に指定されており、国や地方の行政機関が行う対策に協力する責務があります。医薬品の供給継続により、医療体制の維持に貢献することで、社会的責任を果たして参ります。 (3) クライシスマネジメント当社グループのグローバルクライシスマネジメントポリシーでは、企業活動に潜在するリスクのうち、顕在化し緊急な対応が必要な事象、発生可能性が極めて高くなった事象を総称して「クライシス」と定義しており、その発生による損失の最小化を図ることを目的に、クライシスマネジメントに関わる基本的事項を定めております。基本方針として、「クライシス発生時は、『第一三共グループの社員及び関係者の生命や地域社会の安全を確保する』『生命関連企業の一員としての責任を全うする』ことを基本に、迅速かつ確実にクライシスマネジメントを展開し、人・社会・企業への影響を最小限に止め、事業の継続や早期復旧を図るべく努力する」ことを定めております。当社グループでは、クライシスの種類(災害・事故、事件<テロを含む>・不祥事・法令違反、情報管理に関する問題、製品に関する問題)やクライシスの影響度合いに応じて、機動的な対応を可能とする体制を構築しております(下図「クライシス発生時の初期対応」参照)。報告基準や報告ルートを明確に定め、クライシスマネジメント責任者(CEO又はCEOが指名した者)、クライシス初期対応責任者(ヘッド オブ グローバル リスクマネジメント)を設置し、グローバルに影響が大きく、全社対応の必要性があるクライシスについては、ヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントとも当該情報を共有し、迅速かつ的確な初期対応により、事態の拡大防止と早期収束に努めて参ります。また、クライシス収束後は、事後分析により、再発の防止や対応の改善を図って参ります。 (4) 重大リスクとして認識している事項重大リスク(Material risk;全社レベルで管理するリスク)はRMCにおいて議論され、経営会議にて承認されます。有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであり、既知若しくは未知のリスク、不確実性又はその他の要因により、実際の結果とは乖離する可能性があります。 ① 研究開発・他社とのアライアンス等に関するリスク・リスク新薬候補品の研究開発には、多額の費用と長い年月が必要ですが、その間に期待された有用性が確認できず研究開発を中止する可能性があります。また、臨床試験で良好な結果が得られても承認審査基準の変更等により承認が得られなくなる可能性があります。さらに、第三者との研究開発に係る提携に関して契約の条件変更・終了等が起こった場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて開発計画の変更により、設備投資が過剰となり投資額を回収できない、あるいは過剰在庫が発生し廃棄費用が生じる可能性があります。 当社は、重点領域であるがん領域において、特にエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン T-DXd/DS-8201)とダトロウェイ(一般名:ダトポタマブ デルクステカン Dato-DXd/DS-1062)をフラグシップアセットと位置付け、開発の拡大・加速化に取り組んでおり、それぞれ2019年3月、2020年7月にアストラゼネカ社と戦略的提携を開始いたしました。さらにパトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402)、イフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300)、及びDS-6000(R-DXd)について2023年10月に、MK-6070(DS3280)について2024年8月に米国メルク社と戦略提携を開始しました。当該品目について、研究開発・承認申請・上市の遅延、期待した有効性・安全性が得られない、需要に応じた製造体制の構築遅延、あるいは販売計画からの進捗遅延等が生じた場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社ではアストラゼネカ社及び米国メルク社との戦略的提携を統合的にガバナンスする仕組みとして各種の共同委員会を設置し、ビジョンと戦略の策定、提携事業の損益管理、設備投資面や開発面及び営業面での投資判断、業績と主要マイルストーン管理、グローバルな上市準備等を推進しております。また、当局との継続的なコミュニケーションを通じた薬事リスクの管理・低減にも努めております。 ② 医薬品の品質問題や副作用に関するリスク・リスク医薬品は医薬品医療機器等法を含む国内外の法規制等の下で製造販売されておりますが、品質問題や、予期せぬ副作用発現の問題が発生した場合は、当社グループの医薬品の売上が減少するとともに、製品回収や販売中止、健康被害に関する賠償責任等に係る多額の費用が発生する等、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応品質について、安全で高品質の製品を患者さんにお届けし、安心して使用いただくために、GMP(Good Manufacturing Practice: 医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)及びGDP(Good Distribution Practice: 輸送・保管における医薬品の品質を確保することを目的とした基準)に適合する管理体制を強化し、原材料の調達から保管、医薬品の製造に加え、流通段階も含め一貫した品質保証に取り組んでいます。また、グループ会社の事業所及びビジネスパートナーに対して定期的に監査を行い、適切な品質マネジメント体制の維持・向上及びリスク低減に努めています。安全性について当社グループでは、国内外の安全管理情報(副作用情報等)を収集し、客観的に評価・検討・分析した結果を医療現場へ情報提供することで医薬品の適正使用を推進しております。さらに、全従業員を対象とした安全管理情報についての研修を毎年実施し、安全管理を徹底することで、患者さんの安全性リスクの最小化に努めております。 ③ 海外における事業展開に関するリスク・リスク当社グループは、医薬品の開発、製造、販売等の分野で、海外においても積極的に事業を展開しており、このような海外事業においては、当該地域における政治不安や経済情勢の悪化等の地政学的な要因、当該地域の法規制や行政指導等に抵触するリスク、現地の労使関係等に関するリスクが存在します。また、米国政権下での輸入関税の変更や各国対抗措置等の急激な政策変更がコストを上昇させ、当社の収益性や競争力に悪影響を与える可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループでは、海外子会社に対してリスク管理に関連する窓口担当者を任命しており、定期的に情報収集・情報交換を実施しております。また、各地で問題が発生した場合には、この窓口担当者をハブとする現地子会社との連携により、迅速な課題解決を行っております。米国における輸入関税のリスクに対しては、適時の情報収集により事業への影響可能性の把握に努めるとともに、日米欧等の業界団体等を通じた政府への要望も検討してまいります。また、米国での現地生産の強化の可能性についても検討いたします。 ④ 製造・仕入れに関するリスク・リスク地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、製品の一部は当社グループの工場において独自の技術により製造しており、製品及び原材料の一部は、特定の取引先にその供給を依存しております。また、製造委託先の品質リスク(例えば製造委託先等における品質上の問題発生により製品/治験薬を製造できないリスク)も存在します。このため、何らかの理由により製造活動や仕入れが遅延又は停止した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループのBCPは、事業継続へ影響を及ぼす様々な脅威に対処するべくオールハザード型BCPとして整備し、有事においても医療体制維持のための医薬品安定供給と品質確保を可能とする体制を整備しております。当社グループは、行政の防災計画改定や社会的要請の変化に対応して、優先供給品目に関わる業務・組織体制を見直す等、脅威が顕在化した際により適切に対応できるよう継続的なBCPの改善を図っております。また、優先供給品目については、製薬企業としての社会的責任の大きな製品や、事業継続のために重要な製品等の速やかな供給を実現するべく、定期的に見直しを行っております。特に医薬品の安定供給においては、生産・物流拠点の分散や主要原材料の複数購買の実施といったバックアップ体制を構築するとともに、自家発電装置の設置等、電力供給が停止した際の影響を最小限に抑える施策等にも取り組んでおります。また、主要システムの二重化等、IT基盤の強化も行っております。 ⑤ 環境、安全に関するリスク・リスク医薬品の研究、製造の過程等で使われる化学物質の中には、人の健康や生態系に悪影響を与える物質も含まれております。当社グループでは化学物質を用いた実験、製造、保管管理等に万全を期しておりますが、万一、社内外の人への暴露、土壌汚染、大気汚染、水質汚濁等、深刻な問題が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動に伴う気象災害や温暖化、生物多様性の喪失等により、医薬品のサプライチェーン寸断、製造コスト上昇等のリスクが顕在化した場合、医薬品の安定供給、経営成績、財政状態等に悪影響を与える可能性があります。・対応当社グループでは、人体への影響、土壌汚染、大気汚染、水質汚濁等を防ぐため、化学物質の保管や取扱い方法を厳格に定め、グループの各工場・研究所において法規制より厳しい自主管理基準値を設定し、モニタリングによる適正管理を実施しております。また、国内外の工場で労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001の取得を進めており、2024年度は国内全ての工場と中国及びブラジルの工場で認証を取得いたしました。土壌汚染対策については、関連法規制に基づく調査義務が発生した場合の的確な対応はもとより、事業所閉鎖・用途の変更等において法的な調査義務がない場合でも、法令に準拠した方法で調査を実施しております。万が一、汚染が判明した場合には、行政に報告するとともに、近隣の方々に対しても、適切に情報を開示し、汚染状況に応じた適切な対応(拡散防止、浄化対策等)を行います。既に浄化対策等を終了した事業所では、継続的にモニタリングを行い、分析結果を行政、近隣の方々に報告しております。気候変動に伴うリスクについては、シナリオ分析に基づき対策を実施しております。計画規模の洪水で浸水が想定される日本国内の研究所及び生産施設のある事業場については、事業場ごとのリスクアセスメントと水災マニュアルの作成を完了し、諸対策を進めております。その他の気候変動対策についてはサステナビリティ情報に記載したTCFD提言に基づく情報開示をご参照ください。また、パリ協定にも賛同し、2022年度に1.5℃目標に整合した野心的な目標に改め、温室効果ガス削減に取り組んでおります。気候変動を含む環境パフォーマンスデータについては、投資判断にも影響する重要指標と捉え、データの信頼性を高めるために第三者保証を取得しております。生物多様性の喪失に関するリスクについては、TNFD提言に基づいて当社の主力製品を対象に、サプライチェーンにおける自然関連リスクの概略評価を行い、重要課題の抽出や地域性分析を実施し、当社ウェブサイトに公開いたしました。重要課題に対する当社グループの取り組み例を示し、追加的な目標設定や対策実施については、ギャップ分析や関係者とのコミュニケーションを行いながら、今後検討を進める予定です。 ⑥ 知的財産権に関するリスク・リスク当社グループの事業活動が他者の特許権その他の知的財産権に抵触するとして第三者から指摘を受けた場合には、事業の断念や係争の可能性があります。一方、第三者が当社グループの知的財産権を侵害する場合には、その保護のため訴訟提起等をすることがあります。それらの動向は経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼすことがあります。ADCに代表されるバイオ医薬品や新規モダリティ医薬品のパイプラインの増大や、ジェネリック医薬品市場の拡大を背景に、訴訟提起等を含め、当社グループの知的財産権に関するリスクが一層増大する可能性があります。・対応当社グループでは、知的財産の創造と保護によってその価値の最大化とリスクの最小化を図っております。また、知的財産係争が発生したときには、社内外の関係者と協力し、事業への影響を最小限にとどめるよう対応しております。2020年10月、Seagen Inc.は、エンハーツを含む当社ADCがSeagen Inc.の保有する米国特許を侵害するとして特許侵害訴訟をテキサス州東部地区連邦地方裁判所に提起しました。2022年7月、同裁判所はエンハーツが当該特許を侵害していること、Seagen Inc.に42百万米ドルの損害が発生したこと、及び当該特許の故意侵害を認定しましたが、損害賠償額は増額しないとする判決を下しました。2023年10月、同裁判所は、上記判決を不服とする当社の申立(post-trial motions)を棄却し、当該判決で決定された42百万ドルの損害賠償額に加え、2022年4月1日からSeagen Inc.の米国特許が満了する2024年11月4日までのエンハーツの米国売上に対する8%のロイヤリティーの支払を命じる一審判決を下しました。2023年11月、当社は、一審判決に対し米国連邦巡回区控訴裁判所に控訴を提起いたしました。なお、仮にSeagen Inc.に当該米国特許の侵害に係る賠償金を支払うこととなった場合には、アストラゼネカ社と締結したエンハーツの共同開発及び販売提携に関する契約に基づき、これをアストラゼネカ社と折半して負担いたします。一方で、2020年12月、当社らは、Seagen Inc.の当該米国特許が無効であるとして、米国特許商標庁に当該米国特許の有効性を審査する特許付与後レビュー(Post Grant Review)の請求を行っていましたが、2024年1月、米国特許商標庁は、当該米国特許が無効であるとの決定を下しました。2024年5月、Seagen Inc.は米国特許商標庁の決定に対して米国連邦巡回区控訴裁判所に控訴を提起しました。2024年7月、米国連邦巡回区控訴裁判所は、特許侵害訴訟の控訴審とPGRの控訴審を関連する訴訟として同一の裁判官合議体が審理することを決定しました。 ⑦ 訴訟に関するリスク・リスク当社グループの事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題及び公正取引に関する問題等に関し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループでは、法令、契約、紛争防止・紛争解決等の観点からリーガルリスクの最小化とビジネス機会の最大化に努めております。 ⑧ 法規制、医療費抑制策等の行政動向に関するリスク・リスク国内医療用医薬品は、薬事行政の下、種々の規制を受けております。薬価基準の改定をはじめとして、医療制度や健康保険に関する行政施策の動向によっては、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海外においても同様に、医薬品として各種の規制を受けており、行政施策の動向による悪影響を受ける可能性があります。例えば、米国におけるインフレ抑制法(Inflation Reduction Act、以下「IRA」という。)の改正・拡大及びIRAとは異なる薬価抑制政策の導入(最恵国待遇価格の適用等)は、ADC製品を含む米国における販売に重大な影響を与える可能性があります。・対応 当社では、薬価制度改革並びに流通改善ガイドラインを踏まえた仕切価格・割戻改定を実施しております。また、適切な販売条件を設定・実行し、新薬創出加算品、重点品を中心に売上を拡大するよう努めております。なお、薬価の毎年改定を含めた薬価制度改革の他、海外を含めた行政動向を継続的に注視しており、即時に対応策を検討する体制としております。米国における最恵国待遇薬価の導入リスクに対しては、適時の情報収集により事業への影響可能性の把握に努めるとともに、日米欧等の業界団体等を通じた政府への要望も検討してまいります。 ⑨ 法令違反等に関するリスク・リスク当社グループは、グループ企業行動憲章及びグループ個人行動規範のもとに、コンプライアンス行動基準等を制定しているほか、グローバル エシックス&コンプライアンス コミッティやホットラインの設置等、コンプライアンス体制を構築し、販売情報提供活動ガイドライン等、事業活動に関連する法規制が遵守されるよう徹底しておりますが、役員及び従業員の個人的な不正行為等を含め重大な法令違反が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループでは、毎年、CEOのコンプライアンスメッセージを全社に発信し、コンプライアンス風土醸成を図るとともに、ヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントがチーフ・コンプライアンス・オフィサーとして、事業活動のモニタリングを実施しております。また、役員や従業員だけでなく取引先等も利用可能なグループ共通のグローバル・ホットラインの適切な運営を通じて、コンプライアンス違反の未然防止や、早期発見に努めております。違反行為が発見された場合には、迅速かつ厳正に是正措置を行うとともに必要に応じて教育・啓発等の再発防止の対応を講じる体制のもと、健全な企業文化の醸成を推進しております。 ⑩ 金融市況及び為替変動に関するリスク・リスク株式市況の低迷等により保有する株式等の売却損や評価損が生じ、金利動向により退職給付債務の増加等が生じる可能性があります。また、為替相場の変動により、不利な影響を受ける可能性があります。当社グループはグローバルに事業を展開し、生産・販売・輸出入を行っておりますので、為替相場の変動は経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社では政策保有株式の削減、年金基金資産配分の期中見直しの実行及び為替ヘッジ取引により、損失額を減少させるよう努めております。また、退職給付に関するリスクの整理と運用状況のモニタリング及び雇用関連法制動向の把握や、不動産市場のモニタリングを実施する等により、リスク低減に向けた方針を早期から準備対応しております。 ⑪ 情報セキュリティに関するリスク・リスク当社グループは、業務上、各種ITシステムを利用しており、また、個人情報を含む多くの機密情報を保有しております。マルウェアの感染、サイバー攻撃他によるコンピュータシステムの休止等、及び機密情報の漏洩事象が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループでは、CDXO(Chief Digital Transformation Officer)がグループ全体の情報・サイバーセキュリティ対策の推進を担い、新たなデジタル技術、法規制やガイドラインを取り込んだ情報管理・セキュリティに関するポリシー・ルールを整備しております。情報・サイバーセキュリティに関する規程等を整備して従業員へ情報管理の重要性を周知徹底するとともに、ITシステムへのサイバー攻撃等への対策強化として、防御機能、侵害の検知機能と対処機能等のセキュリティシステムの整備を実施していることに加え、クラウドサービス利用への対応やセキュリティ基盤の強化、運用の改善を図っております。また、工場・製造設備・システム(OTシステム)へのセキュリティ対策も重要な課題ととらえ、OTシステムの標準セキュリティ対策と管理体制を設計し、各設備への導入を順次実施しています。個人情報に関しては、定期的な管理台帳更新状況の把握・委託先の安全管理措置評価等により、保有個人データ、特定個人情報等の適正な管理状況をモニタリングするとともに、内部監査結果に基づく適切な指導及び従業員研修による周知・徹底を図っております。 ⑫ 人材に関するリスク・リスク当社グループが事業活動を推進し事業目標を達成する上では、各職務に必要な高度な専門性と高い業務遂行能力を持った人材を育成・採用・確保する必要がありますが、採用市場の競争激化などによりこれらの人材を十分に確保できない場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループでは、事業目標を達成する上で必要となる人材の要件を明確に定義し、計画的な採用活動を強化するとともに、社内教育プログラムを始めとする多様なアプローチを活用して人材の育成・確保を図っております。また、グローバルでの人材活用を最大化するため、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めています。さらに、「One DS Culture」の醸成やInclusion & Diversity (I&D)を推進しながら、グローバル共通のエンゲージメントサーベイによる分析・改善施策を実施しております。 (5) エマージング・リスクエマージング・リスク(新しいリスクで、自社に対して今後複数年にわたる影響が起こりうる可能性があり、初期的な検討は開始しているが全容は把握できていないもの。)のモニタリングも行っています。RMCや経営会議での議論を反映して特定のエマージング・リスクから重大リスクやユニットレベルのリスクに評価が変更になる場合もあります。エマージング・リスクとして、以下のリスクのモニタリングを行っております。 AIの利活用に関するリスク・リスク 世界的にAI技術の研究開発及びデジタルトランスフォーメーション(以下、「DX」という。)が急速に進展する中、特に創薬研究や開発プロセスにおいてAI、とりわけ生成AIの利活用が不可欠になりつつあります。これらAIの技術革新への対応が遅れた場合、研究開発における優位性の喪失や競争力の低下を招き、当社グループの経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 また、AI技術の利用に関する法規制は国際的に強化される傾向にあります。特にEUにおける「EU AI規制法」等の新たな規制への対応が不十分な場合、制裁金や事業活動の制限等が課される可能性があります。また、AIガバナンス体制の不備により患者さんの健康や生命に悪影響を及ぼす事象が発生する可能性があります。さらに、その結果として当社グループの社会的信用の低下や損害賠償支払等により、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応これらの様々なリスクシナリオに対して、当社グループはAIによる技術革新を通じた研究開発の加速と全社的なAI利活用に基づくDXの推進を目指した体制の構築を継続しています。また、AI関連規制等の準拠に加えてAIガバナンス体制の構築(グローバルAIガバナンスポリシーの策定、リスク分類に応じたAI開発・運用に関するグローバルガイドラインの整備等)を進めています。