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ROEとROICの違い完全解説
— どっちを見ればいい?日本株の実例

日本企業が「ROE経営」と叫ぶ一方、バフェットは一貫してROICを重視してきました。両者の計算式・本質的な違い・どちらを優先すべきかを、日本株の実例を交えて完全解説します。

結論を先に — 投資判断にはROICを優先せよ

本記事を読む時間がない方のために、結論から書きます:

では、なぜそうなるのか詳しく見ていきましょう。

ROE(自己資本利益率)とは

ROE = 純利益 / 自己資本 × 100

株主が出資した1円につき、企業が年間でいくら稼いだかを示します。日本企業の平均ROEは約9%、欧米企業は約13%。バフェットは「長期的にROE 15%以上を維持できる企業を好む」と公言しています。

ROEの「3つの分解」(デュポン分析)

ROEは以下の3要素に分解できます:

ROE = 売上高利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ

ここに罠があります。財務レバレッジを上げる(=借金を増やす)と、収益力が同じでもROEは見かけ上、上がってしまうのです。

ROIC(投下資本利益率)とは

ROIC = NOPAT / 投下資本 × 100
NOPAT = 営業利益 × (1 − 税率)
投下資本 = 自己資本 + 有利子負債

会社全体(株主+債権者)から預かった資金で、どれだけ稼いだかを示します。レバレッジの影響を受けないため、経営者の真の収益力が見えるのがROICの最大の強みです。

同じ会社でも ROE と ROIC は大きく違う — 数値例

項目 企業A(借金少) 企業B(借金多)
営業利益100億円100億円
純利益70億円63億円(金利支払い後)
自己資本700億円350億円
有利子負債0円350億円
ROE10%18%(見かけ上高い)
ROIC10%10%(実は同じ)

営業利益で稼ぐ力(=ROIC)は両社とも同じ10%です。しかしROEだけ見ると企業Bが優秀に見える。これがレバレッジの罠です。

金融危機やインフレ局面では、借金の多い企業Bは金利上昇や貸し剥がしで一気に窮地に立たされます。実際、リーマンショック時に多くの「高ROE企業」が破綻したのはこの構造が原因でした。

バフェットがROICを重視する理由

バフェットは1979年の株主への手紙で次のように書いています:

The primary test of managerial economic performance is the achievement of a high earnings rate on equity capital employed (without undue leverage, accounting gimmickry, etc.) and not the achievement of consistent gains in earnings per share. — ウォーレン・バフェット 1979年 株主への手紙

意訳:「経営者の真の実力は、(不当なレバレッジや会計操作なしで)資本に対し高いリターンを上げているかで判断する。EPS成長率ではない」

ここでバフェットが括弧で「不当なレバレッジ抜きで」と強調している点が重要です。ROEだけだと借金で水増しできるが、ROICはごまかせない。だからROICを見るのです。

ROIC vs WACC — 価値創造のものさし

ROICの真価は、WACC(加重平均資本コスト)と比較するときに発揮されます。

つまり、ROIC < WACC の企業は、事業を続ければ続けるほど株主価値を毀損していることになります。日本の上場企業の約40%がこのカテゴリーにあると言われています。

具体例:WACCが6%の優良大企業の場合、ROIC 10%なら「4%の余剰価値創造(=EVA)」、ROIC 5%なら「1%の価値破壊」となります。

日本株での実例 — ROEは高いがROICは低い「危ない高ROE企業」の見抜き方

ケース1: 不動産業のROE 20%

不動産デベロッパーは借入を多用するためROEが高く出やすい業種です。某大手デベロッパーはROE 15%超を維持していますが、ROICで見ると約4%しかありません。WACCが5%とすると、実は価値破壊型の事業を続けている可能性があります。

ケース2: 銀行業のROE 8%とROIC

銀行は本質的にレバレッジ事業のため、ROEとROICの乖離が大きい業種です。ROEは8%でも、リスク調整後の真の収益力(RAROC)は3%以下というケースも珍しくありません。

ケース3: ワイドモート優良企業 — キーエンス(6861)

一方、キーエンスのような無形資産型ワイドモート企業は、ROE 16%、ROIC 25%超とROICがROEを上回る逆転現象が起きます。これは現金が潤沢で実質無借金経営のため、財務レバレッジが1未満になっているからです。

このような「ROIC > ROE」企業こそ、バフェットが好む「真の高収益企業」と言えます。キーエンスの全財務指標はこちらから確認できます。

業種別の ROE・ROIC 目安

業種 ROE 平均 ROIC 平均 優良企業の目安
情報通信12%15%ROIC 20%+
医薬品10%12%ROIC 15%+
食品8%9%ROIC 12%+
機械・精密10%11%ROIC 15%+
小売9%8%ROIC 12%+
不動産12%5%ROIC 8%+
電力・ガス6%4%ROIC 6%+
銀行7%対象外RAROC使用

実践: ROIC を計算するときの注意点

  1. 営業利益はリース費用調整後を使う: IFRS16では使用権資産が計上されるため、調整不要。日本基準は要調整。
  2. のれんを差し引くべきか議論あり: M&A企業の場合、のれん込み・除く両方を見る
  3. 現金を投下資本から控除する考え方も: 営業に必要のない現金を除く「ROIC-E」
  4. 業績の悪い年だけで判断しない: 5年平均ROICで企業の真の実力を測る
  5. 業界横断比較は要注意: 業種別の資本効率水準は構造的に異なる

モート先生のROIC自動表示

各銘柄ページでは、過去5年のROEとROICが時系列で表示されます。キーエンスのように「ROIC > ROE」の優良企業、または「ROE >> ROIC」の借金依存企業を一目で判別できます。

スクリーニングページでは「ROIC 15%以上 × 連続5年」のような条件指定で、隠れたバフェット銘柄を発掘できます。

まとめ — ROE と ROIC の使い分け3原則

  1. 初期スクリーニングではROE 15%以上を入口として使う(数字が広く出回っているため)
  2. 必ずROICで二次チェック。ROEは高いがROICが低い企業は「借金依存」を疑う
  3. ROIC > WACC を満たすことが価値創造の絶対条件。これを満たさない企業は、業績が良く見えても株主価値を毀損中

ROEだけ見ていると、見せかけの高収益企業に投資してしまうリスクがあります。必ずROICまで踏み込むのがバリュー投資家の鉄則です。

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