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【完全ガイド】PER(株価収益率)の計算と使い方
— 業種別の罠と実例

「PER 10倍以下は割安」── そう聞いて飛びついた銘柄が、5年経っても割安のまま、というのはバリュー投資初心者の典型的な失敗です。本記事では、PERの正しい計算方法、業種別の妥当水準、シクリカル株の罠、PEGレシオへの発展まで、PERを使いこなすための知識を体系的に解説します。

PERとは何か — 「投資回収に何年かかるか」

PER(Price Earnings Ratio、株価収益率)は、株価が1株あたり当期純利益(EPS)の何倍で売買されているかを示す指標です。直感的には「今の利益が永続したとして、株価を回収するのに何年かかるか」を表します。

PER = 株価 ÷ 1株あたり当期純利益(EPS)

例:株価3,000円、EPS 200円の銘柄 → PER = 3,000 ÷ 200 = 15倍
これは「200円の利益が15年続けば株価3,000円分を取り戻せる」という意味です。

PERの2種類 — 実績PERと予想PER

同じPERでも、2つの計算方法があります:

種類 計算式 特徴
実績PER株価 ÷ 直近実績EPS確定数字、過去ベース
予想PER株価 ÷ 来期予想EPS将来ベース、株価との整合性高い

株価は将来期待を織り込むので、投資判断には予想PERを使うのが基本です。会社四季報や証券会社のサイトで「PER」と表示されているのはほぼ予想PER。

PERの目安 — 何倍なら割安か?

「PERが何倍なら割安か」に絶対の答えはありません。市場全体の水準と業種特性で評価する必要があります。

日本株市場全体の目安

市場平均より大きく低ければ「割安候補」、大きく高ければ「割高候補」というのが第一歩。ただし業種によって妥当水準が大きく異なります。

業種別 妥当PER水準

業種 妥当PER 理由
情報通信(高成長)25〜40倍高成長期待
医薬品18〜25倍パイプライン価値
食品・日用品15〜25倍ディフェンシブ・安定
小売・サービス15〜20倍成長性中位
機械・電気機器12〜18倍景気感応度中
自動車8〜12倍シクリカル・成熟
商社・銀行7〜12倍成熟・低成長
海運・鉄鋼5〜10倍激しいシクリカル
不動産10〜15倍資産ベース

例えば日本郵船(9101)のような海運株がPER 8倍でも、それは「業種としての妥当水準内」であり、特別に割安とは言えません。

シクリカル株のPER — 最大の罠

バリュー投資初心者が最も騙される指標が、シクリカル株(景気循環株)の低PERです。

シクリカル株とは

業績が景気の波で激しく上下する業種。代表的には:

シクリカル株のPERパラドックス

シクリカル株では、PERが低いときに買うと最も危険です。理由:

  1. 景気のピークで利益が最大化 → EPS が大きい → PER が小さく見える
  2. 「割安だ」と買う
  3. その後、景気後退 → 利益激減 → 株価半減

逆に、PER 50倍など「異常に高い」ときが、利益のボトム = 株価のボトムであることが多い。これが「シクリカル株は高PERで買い、低PERで売れ」と言われる理由です。

シクリカル株の評価には、過去5〜10年の平均利益を分母にした「ノーマライズドPER(CAPE)」を使うのが安全です。

低PERが「罠」である5つのパターン

1. シクリカル株のピーク利益(前述)

2. 構造的衰退業種

新聞・出版、固定電話、地方銀行など、業界全体が縮小している業種は、PER 5倍でも安易に手を出すべきではありません。市場は「将来利益の減少」を織り込んでいる正当な評価です。

3. 一過性利益(特別利益)の混入

子会社売却益、不動産売却益、補助金などで一時的にEPSが膨らむと、PERが見かけ上低くなります。営業利益ベースで純粋な事業利益のPERを再計算してください。

4. 不正会計・粉飾の疑い

同業他社よりPERが顕著に低いのに業績が好調すぎる場合、財務諸表に何かある可能性があります。営業CFと純利益の乖離(アクルーアル)を必ずチェック。

5. 大株主の売り圧力

政策保有解消、創業家相続、外資ファンドの撤退など、需給要因で株価が圧迫されてPERが低い場合。これは時間の経過で解消する可能性があり、必ずしも「罠」ではないが、株価が動かない期間の長さを覚悟する必要があります。

PEGレシオ — 成長性を加味したPER

ピーター・リンチが愛用したのが PEG(Price Earnings Growth)レシオです。

PEG = PER ÷ 利益成長率(%)

例:PER 20倍、年利益成長率10% → PEG = 2.0
PER 20倍、年利益成長率20% → PEG = 1.0

リンチの判断基準:

「PER 30倍だから高すぎる」と切り捨てる前に、その企業が年30%成長していれば PEG = 1.0 で適正、という見方ができるのがPEGの強みです。

益利回り(PERの逆数)で債券と比較する

PER 20倍の株は、「益利回り 5%」と読み替えられます(1÷20=0.05)。

益利回り(Earnings Yield)= 1 ÷ PER = EPS ÷ 株価

10年国債利回りが1.5%、ある株のPERが10倍(益利回り10%)なら、「無リスクの債券より8.5%も高いリターンが期待できる」ということ。バフェットはこの比較で投資魅力を判断しています。

米国では「FRBモデル」と呼ばれる、S&P500の益利回りと10年国債利回りを比較する手法もあります。日本では金利が低すぎて使いにくいですが、概念として知っておく価値があります。

実例:トヨタ自動車(7203)のPER分析

指標 数値 解釈
予想PER10.5倍自動車業界の妥当水準(8〜12倍)の中位
過去5年平均PER10.8倍レンジ内、過熱なし
業界平均PER9.5倍トヨタはやや高め=プレミアム
益利回り9.5%10年国債1.5%対比で十分魅力的
利益成長率(5年)3〜5%PEG = 2.1〜3.5(やや割高感)

業種特性を考えると「妥当水準内、特段の割安・割高なし」というのが客観的評価。詳しい分析はトヨタの企業分析ページをご覧ください。

PERを使いこなす5つの実践ポイント

  1. 絶対値ではなく相対比較で見る:市場平均、業界平均、その企業の過去レンジと比べる
  2. シクリカル株は逆張り:低PERで売り、高PERで買う(ノーマライズドPER必須)
  3. 成長性とセットで評価:PEGレシオで成長性を加味する
  4. 益利回り目線も持つ:債券利回りとの比較で投資妙味を判定
  5. PER単独で買わない:必ずPBR・ROE・FCF・モートと組み合わせる

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まとめ — PERは「最も誤用される指標」

PERは単純で分かりやすい指標ですが、それゆえに最も誤用される指標でもあります。「PER 10倍だから割安」という単純判断は、シクリカル株の罠、構造衰退業種の正当評価、一過性利益の混入など、数々の落とし穴に直結します。

PERは「同じ業種の企業を比較する第一フィルター」として使い、その後にPBR・ROE・FCF・モートなど多面的指標で深掘りするのが正しい使い方です。

関連記事:PBR完全ガイド / ROE vs ROIC 完全比較 / DCF完全ガイド

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